夏の、そんなひと時。
「暑い……」
この言葉をつぶやいたのは今日で何度目だろうか。
熱気の中コンクリートの上を歩きながら汗だくで家路を急ぐ。
昨日自転車を壊して修理に出さなくてはいけなくなったのが痛かった。
そのせいで、登校日にこの炎天下の中を歩く羽目になったのだ。
悪いことは重なるもので、水筒の中は空でありもう少し歩かなければ自動販売機もコン
ビニにもない。
ああ、登校日がなければ。自転車が壊れなければ。
「ん?」
わが身の不幸を嘆いていると、向こうから見覚えのある人影が見えた。
三ボワラ帽子をかぶっているその少女は……いや、人ではなく魔物娘だ。
その証拠に、お尻からは魚介類特有の尻尾がふよふよと動いている。
彼女は手足や耳にヒレを持つ種族、サハギン。
あざやかな青い鱗が、なんとも涼しげだ。
おーいと声をかけると、彼女は長い髪の毛を揺らしてこちらを向いた。
無表情だが端正なその顔は、暑さのせいか少し赤みを増していた。
「……こんにちは」
「今帰り?」
こくりと頷いた。
彼女の名前は蒼井雫。
今は別のクラスだけれど、中学時代からの知り合いで現在でも同じ部活に入っている間
柄だ。
青みかかった黒い髪の毛に、金色の目が特徴的な少女だ。
いつもはスク水のような鱗をまとっているのだが、今日はシャツを着ていた。
「どうしたの、その格好?」
「……水着だと、H過ぎるかもしれないとおもって…」
「いや、かえってエロくなっているぞ」
「……なぜ?」
服シャツが空けてスク水越しの胸が見えてかえって目のやり場に困る。
なんだか、裸をみるようりもかえってそそられ…いや、何でもない。
僕が言葉に詰まっていると、日光がじりじりと照りつけて来る。
こころなしか、じっと僕の方を見ている彼女も熱さでフラフラしているように見えた。
「とりあえず、どこかで涼まないか?」
僕の提案に、雫もコクリうなずいたのであった。
コンビニへ涼みに入ると、考えることは皆同じなのか特に何か買うわけでもなく涼んでいるらしい客の姿が目立った。
運よくイートインコーナーの席が二人分空いたので、シャーベットを買うと2人して席に着いた。
ちょっと狭いけれど座れるだけありがたい。
シャーベットを食べると、爽快な味わいと甘みが口の中に広がる。
何のことはない、市販の商品だが熱さにさいなまされていただけあってさわやかな気分になった。
彼女も同じようで、心なしか彼女も表情の上に喜びを浮かべているように見えた。というか尻尾がぴょこぴょこ動いているように見える。
彼女の方を見たせいか、透けてみるスクミズ越しの胸や汗でぬれた尻尾が目に入った。
思わず顔を赤くした僕は、わざとらしく咳をした。
「いやー、しかしこんな暑いのに炎天下の中歩くなんて最悪だよなー」
僕のわざとらしい世間話に頷いた後、雫はぽつりとつぶやいた。
「でも……悪いことばかりじゃなかった」
「え?」
彼女はこちらを向く。なぜか少しだけ、顔が近い。
まだ暑いのか、顔に赤みがさしているように見えた。
思わず心臓がどきどきする。
「こうやって、貴方と一緒の時間を過ごせたのだから」
そのことばに、思わず心臓が爆発しそうなくらい激しく動いた。
僕も知らず知らずその瞳に吸い込まれるように顔を近づけて。
「いらっしゃいませー」
店員の声に思わずびくりとする。
新しい客がはいってきたようで、店員はこちらの方を見ていなかった。
だがまわりに人がいるのに忘れて顔を近づけていたことに気が付き、急に羞恥心が
襲ってきた。
雫もえらのついた手を両方の方に当てて湯気が出そうなくらい目をグルグルさせている。
「とりあえず、服も乾いたし出るか!」
そう言って彼女の手を取って外に出たのだった。
でてから慌てて手を放したのだが、彼女が空を眺めているのを見て僕もつられて上を向
いた。
「わあ」
「……綺麗」
見事な夕焼けだ。
空はオレンジ色に染まっており、昼間はあれだけ存在感を持った太陽はもうはるか遠く、
地平線の向こうへ行こうとしていた。
なぜか寂寥感すら覚えるその光景に、いつもはうるさく感じるセミの音すら心地よく感
じるのだった。
「雫……手をつないでもいいか?」
思わず雫にそうたずねる。
オレンジ色の光に照らされた彼女は、少しだけ照れたように表情を浮かべる。
……たまには、暑い日に出かけるのも悪くないかな?
だが、そう思ったのも一瞬。
彼女の手は気持ちよかったが、うだるような暑さがまた僕たちに襲い掛かる。
前言撤回。
とりあえず、家に帰ったらエアコンを全開にしようと考えるのだった。
この言葉をつぶやいたのは今日で何度目だろうか。
熱気の中コンクリートの上を歩きながら汗だくで家路を急ぐ。
昨日自転車を壊して修理に出さなくてはいけなくなったのが痛かった。
そのせいで、登校日にこの炎天下の中を歩く羽目になったのだ。
悪いことは重なるもので、水筒の中は空でありもう少し歩かなければ自動販売機もコン
ビニにもない。
ああ、登校日がなければ。自転車が壊れなければ。
「ん?」
わが身の不幸を嘆いていると、向こうから見覚えのある人影が見えた。
三ボワラ帽子をかぶっているその少女は……いや、人ではなく魔物娘だ。
その証拠に、お尻からは魚介類特有の尻尾がふよふよと動いている。
彼女は手足や耳にヒレを持つ種族、サハギン。
あざやかな青い鱗が、なんとも涼しげだ。
おーいと声をかけると、彼女は長い髪の毛を揺らしてこちらを向いた。
無表情だが端正なその顔は、暑さのせいか少し赤みを増していた。
「……こんにちは」
「今帰り?」
こくりと頷いた。
彼女の名前は蒼井雫。
今は別のクラスだけれど、中学時代からの知り合いで現在でも同じ部活に入っている間
柄だ。
青みかかった黒い髪の毛に、金色の目が特徴的な少女だ。
いつもはスク水のような鱗をまとっているのだが、今日はシャツを着ていた。
「どうしたの、その格好?」
「……水着だと、H過ぎるかもしれないとおもって…」
「いや、かえってエロくなっているぞ」
「……なぜ?」
服シャツが空けてスク水越しの胸が見えてかえって目のやり場に困る。
なんだか、裸をみるようりもかえってそそられ…いや、何でもない。
僕が言葉に詰まっていると、日光がじりじりと照りつけて来る。
こころなしか、じっと僕の方を見ている彼女も熱さでフラフラしているように見えた。
「とりあえず、どこかで涼まないか?」
僕の提案に、雫もコクリうなずいたのであった。
コンビニへ涼みに入ると、考えることは皆同じなのか特に何か買うわけでもなく涼んでいるらしい客の姿が目立った。
運よくイートインコーナーの席が二人分空いたので、シャーベットを買うと2人して席に着いた。
ちょっと狭いけれど座れるだけありがたい。
シャーベットを食べると、爽快な味わいと甘みが口の中に広がる。
何のことはない、市販の商品だが熱さにさいなまされていただけあってさわやかな気分になった。
彼女も同じようで、心なしか彼女も表情の上に喜びを浮かべているように見えた。というか尻尾がぴょこぴょこ動いているように見える。
彼女の方を見たせいか、透けてみるスクミズ越しの胸や汗でぬれた尻尾が目に入った。
思わず顔を赤くした僕は、わざとらしく咳をした。
「いやー、しかしこんな暑いのに炎天下の中歩くなんて最悪だよなー」
僕のわざとらしい世間話に頷いた後、雫はぽつりとつぶやいた。
「でも……悪いことばかりじゃなかった」
「え?」
彼女はこちらを向く。なぜか少しだけ、顔が近い。
まだ暑いのか、顔に赤みがさしているように見えた。
思わず心臓がどきどきする。
「こうやって、貴方と一緒の時間を過ごせたのだから」
そのことばに、思わず心臓が爆発しそうなくらい激しく動いた。
僕も知らず知らずその瞳に吸い込まれるように顔を近づけて。
「いらっしゃいませー」
店員の声に思わずびくりとする。
新しい客がはいってきたようで、店員はこちらの方を見ていなかった。
だがまわりに人がいるのに忘れて顔を近づけていたことに気が付き、急に羞恥心が
襲ってきた。
雫もえらのついた手を両方の方に当てて湯気が出そうなくらい目をグルグルさせている。
「とりあえず、服も乾いたし出るか!」
そう言って彼女の手を取って外に出たのだった。
でてから慌てて手を放したのだが、彼女が空を眺めているのを見て僕もつられて上を向
いた。
「わあ」
「……綺麗」
見事な夕焼けだ。
空はオレンジ色に染まっており、昼間はあれだけ存在感を持った太陽はもうはるか遠く、
地平線の向こうへ行こうとしていた。
なぜか寂寥感すら覚えるその光景に、いつもはうるさく感じるセミの音すら心地よく感
じるのだった。
「雫……手をつないでもいいか?」
思わず雫にそうたずねる。
オレンジ色の光に照らされた彼女は、少しだけ照れたように表情を浮かべる。
……たまには、暑い日に出かけるのも悪くないかな?
だが、そう思ったのも一瞬。
彼女の手は気持ちよかったが、うだるような暑さがまた僕たちに襲い掛かる。
前言撤回。
とりあえず、家に帰ったらエアコンを全開にしようと考えるのだった。
18/07/20 00:52更新 / カイント