本能
飢えていた。
乾いていた。
「・・・」
まだ人を襲う "魔物" だった "彼女" は森の中を歩き・・・求める。
何を?何を求めているのだろうか?
彼女は・・・何を求め、何に飢えているのか・・・。
ふと立ち止まって雨の中、空を見上げながら・・・1人悩み、考える。
*
雨の降る中、男は森の中を歩いていた。
背中に大きいバックパックを背負っており誰でも "旅人" と認識できる。
そして男 "クローザ" は今からさらに雨が降るだろうと思い雨宿りできる場所を探していた。
「ふぅ・・・本格的に降って来たな・・・」
雨は激し差を増していく。
バックパックを担ぎなおしながら、これはまずいと思いながらひたすら歩いていく。
すると不意に棒立ちしている人影が見えて少し立ち止まる。
「こんなところに・・・人か?」
立ち止まったクローザはその人の元に駆け寄る。
雨の中、こんなところで棒立って風邪をひく事が目に見えていたからだ。
「おい、あんたこんなところで・・・」
「!?」
クローザはしまったと思った。
彼女は人間じゃない自分の目の前にいるのは。
狼型の魔物 "ワーウルフ" だと。
「グルルル」
魔物が距離を取る。
どうやら自分を標的にしたと確信をする。
標的になっては邪魔になるだろうバックパックを下ろすクローザ。
「グゥゥゥガアアァアッ」
そして本能のまま襲い掛かる。
ワーウルフは狼型の魔物、その姿は伊達ではなく速かった。
そのまま鋭い爪で切り裂・・・かれなかった。
何故ならクローザは寸でで攻撃を回避したからだ。
「!?グゥゥ」
やみくもに攻撃する。
だが1撃も当たらない。
当たるどころか完全に見切られている。
「それで終わりか?」
少し相手を見くびるように、馬鹿にするように、クローザは攻撃をよける。
どんなに攻撃しても1撃も攻撃が当たらない。
「ウ、ウガァァアアッ!?」
もはや、勢いに任せて今度は飛び掛かり牙を向けてそのまま噛みつく。
今度もよけられると思ったワーウルフ。
だがしかし、クローザは回避をせずに自分の腕を差出して防御する。
「ぐああっ」
クローザの腕から血が飛び出る。
ワーウルフもまさかガードするとは思ってもよらずさらに歯に力を入れる。
「う、く、ぐぅ・・・はぁはぁ、ど、どうだ?俺の腕は・・・うまいか?」
噛み付かれているというのに。
睨むように男の言葉に戸惑ってしまう。
「ウ、ウゥゥグゥ!?」
しかし彼女も異変に気づく。
それは魔物なら人間の血肉は美味で大の好物。
だが今口にしているのは美味しい血肉・・・ではなく "腐って不味い肉" と感じてしまう。
それは魔物の "味覚" ではない。
「ウ、ア・・・アアァ」
ゆっくりと噛みついた腕を離す。
そしてそのまま後退して両手で頭を押さえる。
その姿は困惑と拒絶が彼女を襲い苦しみ始める。
「ァアァァ、アア!ガァァアアァッ!!」
そして限界を超えたのか、糸が切れるように。
ワーウルフの少女はその場に・・・倒れた。
*
バチバチ、バチバチと焚火を焚くクローザ。
その隣には先程倒れた、ワーウルフの少女がいる。
あの後、クローザはワーウルフを見捨てる事が出来ずにバックパックとワーウルフを担ぎ移動した。
「ふぅ、よかった・・・雨宿りできる場所があって・・・はっくしゅん」
濡れたものを全て脱ぎ、タオルを腰に巻いて大事な部分は隠し温まっている。
そして時折自分を襲ったワーウルフの娘を見る。
「・・・見た目は可愛い女の子、なんだがな・・・」
っ、っと噛まれた腕を抑える。
今は止血して、血は止まっているがそれでも痛みは引くことがなかった。
「はは・・・俺も甘いな」
噛みつく攻撃は回避できた。
だがそれでは何も解決しないと思ったクローザは "わざと" 回避をやめて防御した。
結果ワーウルフは意識を失った・・・だが同時に無視できなくなった。
「まぁ・・・この雨だしばらくは動け」
動けないと同時に腹の音が鳴る。
そういえばまだ何も食べていないことを思い出す。
仕方なくバックパックから食料を探す。
「えっと、まだ保存食が・・・」
がさごそとバックパックの中身を手探りで食料を探す。
そしてようやく見つけて食べようとするクローザ。
しかし横で寝ている、ワーウルフの事が気にかかり食べるのを拒んでしまう。
「・・・食べる訳には、いかない・・・か」
もしもの事を考えて、食べずにもう少しバックパックを調べる。
横で気を失っているワーウルフの事も考えて。
「ウ・・・ゥゥ」
「ん?あ、気が付いた・・・のか?」
1度探すのをやめて、ゆっくりとワーウルフの様子を伺う。
「お、おい・・・大丈夫・・・か?」
「ウ、ウゥ・・・ウ!?」
目が覚めたワーウルフは、戸惑いを隠せなかった。
何故この男がいる?自分を食べるのが目的か?
「グ、グゥゥ!」
警戒してクローザを睨み付ける。
だが自分はこの男に勝てるのか?
自分はこの男に・・・この男ののど元を食いちぎることができるのか?と考えてしまう。
「・・・大丈夫だ」
ゆっくりと、ゆっくりと近づいてくる。
そして持っていた保存食を見せつける。
「ほら、食糧だ食べるか?」
「グゥゥウウッウ・・・スンスン」
ゆっくりと自分も歩み寄るワーウルフ。
そして匂いを嗅ぐワーウルフはいつしか尻尾も振っている。
「ほら、口を開けるんだ」
「・・・ガァー」
ワーウルフは口を開け、ガブっと保存食をモグモグと噛みしめる。
その姿を見たクローザは、少しだけなついたか?と思ってしまう。
「よし、ちょっと待って」
「ワフ!」
クローザがバックパックに手に掛けるよりもワーウルフの方が早く動き、クローザを押し倒す。
まるで "もっと食べたい" と言うように尻尾を振っている。
「よ、よしよしわかった、わかったからお、降りろ」
少し頭を撫でる。
どうやら自分はかなり懐かれたんだと思ってホッとするクローザであった。
*
保存食を食べて空腹を満たしこれからの事を考えるクローザ。
だがワーウルフはそんなことどうでもいいようにクローザに頬ずりしている。
「あはは、すっかり懐かれたな・・・なぁ、お前仲間は?」
「ガウゥ」
ワーウルフの耳が少し垂れ下がる。
きっと仲間はいない、それともはぐれたとクローザは表情で分かろうとする。
「そうか・・・こりゃ困ったな」
「ウゥ・・・ン」
さっきまでは殺意に満ちていたワーウルフ。
しかし今は媚びたように密着してくる。
「ひょっとして・・・離れたくない?のか」
「ワフ!」
尻尾を振りまた、瞳をウルウルするワーウルフ。
その仕草に流石のクローザも「っう」っと悩んでしまう。
「・・・はぁ・・・心配すんな」
頭を撫でる。
可愛がっているうちに1つ理解するクローザ。
「1人は寂しいもんな・・・俺も一緒だ、だから一緒に仲間・・・探しに行くか」
「・・・ワフ!!」
旅の中で見つけた。
1匹の・・・否1人のワーウルフ。
服が渇き、そらを見れば。
二人の旅が始まりを・・・告げた・・・。
乾いていた。
「・・・」
まだ人を襲う "魔物" だった "彼女" は森の中を歩き・・・求める。
何を?何を求めているのだろうか?
彼女は・・・何を求め、何に飢えているのか・・・。
ふと立ち止まって雨の中、空を見上げながら・・・1人悩み、考える。
*
雨の降る中、男は森の中を歩いていた。
背中に大きいバックパックを背負っており誰でも "旅人" と認識できる。
そして男 "クローザ" は今からさらに雨が降るだろうと思い雨宿りできる場所を探していた。
「ふぅ・・・本格的に降って来たな・・・」
雨は激し差を増していく。
バックパックを担ぎなおしながら、これはまずいと思いながらひたすら歩いていく。
すると不意に棒立ちしている人影が見えて少し立ち止まる。
「こんなところに・・・人か?」
立ち止まったクローザはその人の元に駆け寄る。
雨の中、こんなところで棒立って風邪をひく事が目に見えていたからだ。
「おい、あんたこんなところで・・・」
「!?」
クローザはしまったと思った。
彼女は人間じゃない自分の目の前にいるのは。
狼型の魔物 "ワーウルフ" だと。
「グルルル」
魔物が距離を取る。
どうやら自分を標的にしたと確信をする。
標的になっては邪魔になるだろうバックパックを下ろすクローザ。
「グゥゥゥガアアァアッ」
そして本能のまま襲い掛かる。
ワーウルフは狼型の魔物、その姿は伊達ではなく速かった。
そのまま鋭い爪で切り裂・・・かれなかった。
何故ならクローザは寸でで攻撃を回避したからだ。
「!?グゥゥ」
やみくもに攻撃する。
だが1撃も当たらない。
当たるどころか完全に見切られている。
「それで終わりか?」
少し相手を見くびるように、馬鹿にするように、クローザは攻撃をよける。
どんなに攻撃しても1撃も攻撃が当たらない。
「ウ、ウガァァアアッ!?」
もはや、勢いに任せて今度は飛び掛かり牙を向けてそのまま噛みつく。
今度もよけられると思ったワーウルフ。
だがしかし、クローザは回避をせずに自分の腕を差出して防御する。
「ぐああっ」
クローザの腕から血が飛び出る。
ワーウルフもまさかガードするとは思ってもよらずさらに歯に力を入れる。
「う、く、ぐぅ・・・はぁはぁ、ど、どうだ?俺の腕は・・・うまいか?」
噛み付かれているというのに。
睨むように男の言葉に戸惑ってしまう。
「ウ、ウゥゥグゥ!?」
しかし彼女も異変に気づく。
それは魔物なら人間の血肉は美味で大の好物。
だが今口にしているのは美味しい血肉・・・ではなく "腐って不味い肉" と感じてしまう。
それは魔物の "味覚" ではない。
「ウ、ア・・・アアァ」
ゆっくりと噛みついた腕を離す。
そしてそのまま後退して両手で頭を押さえる。
その姿は困惑と拒絶が彼女を襲い苦しみ始める。
「ァアァァ、アア!ガァァアアァッ!!」
そして限界を超えたのか、糸が切れるように。
ワーウルフの少女はその場に・・・倒れた。
*
バチバチ、バチバチと焚火を焚くクローザ。
その隣には先程倒れた、ワーウルフの少女がいる。
あの後、クローザはワーウルフを見捨てる事が出来ずにバックパックとワーウルフを担ぎ移動した。
「ふぅ、よかった・・・雨宿りできる場所があって・・・はっくしゅん」
濡れたものを全て脱ぎ、タオルを腰に巻いて大事な部分は隠し温まっている。
そして時折自分を襲ったワーウルフの娘を見る。
「・・・見た目は可愛い女の子、なんだがな・・・」
っ、っと噛まれた腕を抑える。
今は止血して、血は止まっているがそれでも痛みは引くことがなかった。
「はは・・・俺も甘いな」
噛みつく攻撃は回避できた。
だがそれでは何も解決しないと思ったクローザは "わざと" 回避をやめて防御した。
結果ワーウルフは意識を失った・・・だが同時に無視できなくなった。
「まぁ・・・この雨だしばらくは動け」
動けないと同時に腹の音が鳴る。
そういえばまだ何も食べていないことを思い出す。
仕方なくバックパックから食料を探す。
「えっと、まだ保存食が・・・」
がさごそとバックパックの中身を手探りで食料を探す。
そしてようやく見つけて食べようとするクローザ。
しかし横で寝ている、ワーウルフの事が気にかかり食べるのを拒んでしまう。
「・・・食べる訳には、いかない・・・か」
もしもの事を考えて、食べずにもう少しバックパックを調べる。
横で気を失っているワーウルフの事も考えて。
「ウ・・・ゥゥ」
「ん?あ、気が付いた・・・のか?」
1度探すのをやめて、ゆっくりとワーウルフの様子を伺う。
「お、おい・・・大丈夫・・・か?」
「ウ、ウゥ・・・ウ!?」
目が覚めたワーウルフは、戸惑いを隠せなかった。
何故この男がいる?自分を食べるのが目的か?
「グ、グゥゥ!」
警戒してクローザを睨み付ける。
だが自分はこの男に勝てるのか?
自分はこの男に・・・この男ののど元を食いちぎることができるのか?と考えてしまう。
「・・・大丈夫だ」
ゆっくりと、ゆっくりと近づいてくる。
そして持っていた保存食を見せつける。
「ほら、食糧だ食べるか?」
「グゥゥウウッウ・・・スンスン」
ゆっくりと自分も歩み寄るワーウルフ。
そして匂いを嗅ぐワーウルフはいつしか尻尾も振っている。
「ほら、口を開けるんだ」
「・・・ガァー」
ワーウルフは口を開け、ガブっと保存食をモグモグと噛みしめる。
その姿を見たクローザは、少しだけなついたか?と思ってしまう。
「よし、ちょっと待って」
「ワフ!」
クローザがバックパックに手に掛けるよりもワーウルフの方が早く動き、クローザを押し倒す。
まるで "もっと食べたい" と言うように尻尾を振っている。
「よ、よしよしわかった、わかったからお、降りろ」
少し頭を撫でる。
どうやら自分はかなり懐かれたんだと思ってホッとするクローザであった。
*
保存食を食べて空腹を満たしこれからの事を考えるクローザ。
だがワーウルフはそんなことどうでもいいようにクローザに頬ずりしている。
「あはは、すっかり懐かれたな・・・なぁ、お前仲間は?」
「ガウゥ」
ワーウルフの耳が少し垂れ下がる。
きっと仲間はいない、それともはぐれたとクローザは表情で分かろうとする。
「そうか・・・こりゃ困ったな」
「ウゥ・・・ン」
さっきまでは殺意に満ちていたワーウルフ。
しかし今は媚びたように密着してくる。
「ひょっとして・・・離れたくない?のか」
「ワフ!」
尻尾を振りまた、瞳をウルウルするワーウルフ。
その仕草に流石のクローザも「っう」っと悩んでしまう。
「・・・はぁ・・・心配すんな」
頭を撫でる。
可愛がっているうちに1つ理解するクローザ。
「1人は寂しいもんな・・・俺も一緒だ、だから一緒に仲間・・・探しに行くか」
「・・・ワフ!!」
旅の中で見つけた。
1匹の・・・否1人のワーウルフ。
服が渇き、そらを見れば。
二人の旅が始まりを・・・告げた・・・。
15/06/04 23:19更新 / ゆっくりシャル