お話 その4
部屋の鍵も開け放たれ、安全が保障された部屋の中、俺はベッドの上に乗ったまま尋ねる。
「二人は、元々俺みたいな呑気な奴を襲うために、あんな事してたの?」
一番聞きたかった事がこれだ。部屋に入る前は、どうにも脳裏をラミア姉さんに浸食されていたが、ハーピーの娘さんに聞いた言葉が、どうしても気になっていた。その上で起きたこの出来事である。普通であれば、俺をゴブリンの娘が押し倒して精気を搾取するのに、間違いはないはずだった。
「…うん、そうだよ。だって私たち魔物娘だもん。 男の人見て押し倒したいって普通は思うよ」
妹ゴブリンが俯き加減でそう言った。やっぱり、普通はそれが魔物娘たちの信条であり、心情だろう。此処でラミア姉さんの夫の朗らかで人が良さすぎな笑顔が目の裏に出てきた。…何で出てきたんですか貴方。
「そうだよ、そうだよおねーちゃん。どうしてえっちさせてくれなかったの!?」
「………妹は、どう思う?」
突然妙な事を言われてしまったのか、妹ゴブリンは姉の言葉を聞いて驚き、黙りこくってしまった。そう、そこも気になる所だった。 何故同じ魔物娘であるゴブリンの、自分の妹が襲うのを姉は“良し”としなかったか。彼女もホブゴブリンの娘、つまりは魔物娘なのだ。自分だって本当は―――。
「…私は。……私も、この人とえっち、したい…」
本当の気持ちを、素直にお姉さんは述べた。だけど、この娘の反応は妹と比べると何処か何かが違っていて、
「…だけど、ひとを騙してまでするのは…私は、やだ」
「お、おねーちゃん……」
「…妹も、ほんとうはそう思ってるはず…」
「っわ、私は!私はそんな事ないもん!!!」
二人の論争は子供の喧嘩のようでいて、大人の論争だった。この二人は、本来どんな方法を以ってしても男を襲って精液を摂取したいと思っているだろう。だけど、この二人には悪戯をするのと同時に『良識』を持ち合わせている。本当の自分に嘘までついて、ギリギリの境界線を歩いている。…この二人は、本当に優しいんだ。
「や、妹ちゃんは優しいと思うよ」「ふぇ!?」
「ほら。何だかんだで頼んだモノはちゃんと買ってきてくれたんだしさ」
悪戯でこんなにしっかりと買い物をしてくれるとは思ってなかった。本来なら騙しているんだから、ご丁寧に買い物をしてこようだなんて普通は考えない。…と思う、多分だけど。 と同時にお姉ちゃんの方が俺の方をじっと見つめてくる。―――あれを良しとするかは…そっとしておこう。
「助かったのは本当の事だよ。ありがとう」
「…………////」
素直に感謝の言葉を述べると、それを濁そうと口をモゴモゴ動かして、何も言えない事に気付き俯いてしまった。とがった耳まで真っ赤になって、可愛いと言えば可愛い。あー…だから、嫌いになれないんだろうな、きっと。お姉さんの方がも何やら言葉を求めているようで、いい加減無視することも出来なくなってきたので…、
「お姉さんの方も、ありがと。どうするべきかはちょっと迷うけど…」
「……♪」
屈託ない笑顔で返してくれた。子供っぽいかもしれないけど、その顔つきは何処となく女性らしさも醸し出している。あんまりじっと見つめていると、こっちまで恥ずかしくなりそうで、何時の間にか顔を逸らしていた。
「でもこれで良かったのかな。本当なら―――」
「……その続きは、だめ」
口から発しかけた言葉を、近寄ってきたお姉さんに遮られた。
「………あんまり言うと、私…おにいさんの事………っ////」
「お、おにーさん////」
何時の間にか妹の方も顔の目の前までやってきて、熱の籠った視線を二人から降り注がされる。ほんのり上気した頬はとても可愛らしく、物欲しそうな視線に、俺はどうしていいか迷っていた。このまま致してしまう事、もしくは有耶無耶にして何事も無く生活する事。どっちにしたって……。
「………二人とも、俺、俺は…」
答えを簡単に求める事が出来ない。自分の欲望に忠実になるべきなのか、それとも理性を保ちお姉さんの気持ちを尊重するべきか。俺の本心はどちらにあって、彼女たちの願いはどちらにゆだねられているのか―――。それを考える前に…俺は、やっぱり臆病だった。
「……ごめん。二人の事、嫌いっていうわけじゃないんだけど…」
「………それで、いいと思う」
思わず暗い顔で返してしまう所を、またしてもお姉さんの牽制が入る。俺よりもずっと小さいはずの娘に宥められてしなうなんて、俺も男として出来てない。チクリと胸が痛んだけど、
「まーまー! とりあえずこの問題は解決!って事でいいじゃない?」
妹さんの気遣いなのか、それとも元気な所が好きなのか、とにかく大きな声でこの問題を解決の方向へ持っていこうとしている。お姉さんの顔も、妹さんの顔もまだまだ釈然としてない色を残しているけど…、確かにずっと引きずっていても仕方がない。そうだ、そうなんだよ、元気が一番だ!
「俺もそれでいいならいいと思う。ありがとな、二人とも」
精いっぱいの笑顔で二人に返すと、二人も声にこそ出さないが、元気いっぱいの笑顔で返してくれた。それで解決なら本当に良かった。そう、解決になっていれば、どれだけ良かっただろうか……。
まさか、あんな事になるとは―――。
***
和解した俺らは、その後夜も遅いと言う事で共に宿屋の部屋で夜を過ごす事にした。明日には二人ともお別れ、という事だったが、大量の荷物がある事もあってか村まで荷物を届けてくれる、という事になった。
「…あ、そうだ。報酬の方だけど」
「いらなーい。 おにーさんのお手伝いができただけで、私たちは別にいいや!」
ニカッと笑って見せた妹のゴブリンだったが、流石にそれだけじゃ俺の気持ちも収まらない(性的な意味でなく)。本来なら精力を与える事にこそ互いの利益があるはずだが…軟弱な俺にそれは出来ない。ならば出来ることは……。
「いや、受け取って欲しいモノがあるんだ」
俺はそういうと、二人が買ってきたモノの中から、ラミア姉さんから頼まれていたブツを取りだした。相変わらず根っこは太ももみたいに柔らかくてシュールだし、蜜瓶も酒瓶も正直見ててドキドキする。だけど、手伝ってくれた労いの報いくらい渡したい。
「…あれ? おにーさん、これって依頼品じゃなかったのー?」
「いや、注文した量よりもちょっと多かったみたいだから」
実は和解した直後から依頼品の数量を再度確認してみたんだが、どう計算してもやっぱり量が多いのだ。ラミア姉さんからしたら、量が多いに越したことはないかもしれないが…まぁ、これくらい黙っててもいいだろう。何せノルマはクリアしたも当然なんだから。
「……いい、の?」
「いいっていいって! 逆にこんな事しかできない俺だから、受け取ってくれると嬉しいよ」
そう言って、蜜瓶の一つをお姉さんの方へ渡す。妹さんの方にも、酒瓶を一本丸々一つを渡した。本当にこれでいいかは分からない。だけど、俺としては……。
「……大切にする////」
ぎゅぅっ、と言う擬音も似あうくらいにお姉さんが蜜瓶を抱きしめた。む、胸の谷間に挟まれた瓶がいやら…げふんげふん!っていうかそれ、そんなに大切にするようなアイテムだったりするのかな。
「……………」
酒瓶を貰った妹さんの方も嬉しそうだった。無言でこそあれ、優しい視線がこちらを向いている。あー、感謝されるって嬉しい事だね。ややお門違いな気もするけど。 さて、問題はもう一つ多かった依頼品の一つ…、
「根っこ、どうするべきかねぇ…」
机に向き直って袋の中を確認する。包装されているわけでもなく、むき出しのふともも根っこは、果たしてどう使うのだろうか? いや、もしかしたら魔物娘の彼女たちの方が使用方法に詳しいのかもしれない。うん、これもプレゼントするべきだろう。どうせなら渡せるものは渡して―――、
「きゃぅっ」
突如として背後から可愛らしい声が聞こえた。同時に、バシャッと言う水のような音も聞こえる。水を被ったか何かか。とにかく俺はふり返って……絶句した。
「―――っ!?」
「……お、おにい、さん」
床にぺたんと座りこんだお姉さん。その顔やら胸やら乳やらおっぱいやらに、得体のしれない液体がべっとりと付いていた。若干明りの暗い部屋で、その液体は妖しい色を宿し、ねばねばと糸を引いている。想像を絶するえろい光景に、息も生唾も一気に飲み込んでしまって……じゃなくて!!
「な、なにがあったのさ?!」
「おにーさん♪」
座り込んでしまったお姉さんを引き上げようとした時、身体の横から声が聞こえてきた。声の主は―――いつかに聞いた、悪戯っぽく笑う妹さんの姿。
「私たちも貰いっぱなし、そんなのやだもん。だから、“お返し”っ」
「…………」
…つまりこれは、妹さんからの“サプライズ・プレゼント”と言う事なのだろうか。それとも、先ほどから言いくるめられてばかりの妹さんが、お姉さんの身体を使ってお返しした、と言う事なのだろうか。ど、どっちにしたって…いかん危ない危ない危ない!
「んふふー♪ 喜んで貰って良かったね、おねーちゃ」
慌てふためく俺の表情に喜んでいた妹さんが、またしても視界から消える。消えた先は、床に座り込んでいるお姉さんの…おっぱい。顔ごと胸の谷間に突っ込まれて、バタバタと両手を振っている姿はややシュールだ。 そして同時に気付く。お姉さんが、こちらを見つめていた。
「…………♪」
その蕩けた目元と、上気した頬。顔いっぱいに付いた液体が、そのエロさをぐっと引き上げている。そんな魔性の瞳が、一点の虚空…というよりも、俺を見つめているようだった。
「…ぷれぜんと。わたしたちから、おにいさんへの……////」
こんな瞬間にしか分からなかった自分が残念でならない。 彼女の顔に掛った液体の正体。そして、この部屋全体を包み込むような高揚感。前に一度痛い目と言う形で味わった事がある。…あの“ブツ”だ。 アルラウネの蜜は性欲を高める効果がある。そしてこの頭がクラクラするくらいに鼓動が上がってく匂い、これは絶倫御神酒―――、
「おにーさん♪」
「おにぃさん////」
考え事をしている間に、俺は床に押さえつけられていた。それもお姉さんだけではなく、妹さんにも。彼女の顔にもべっとりとアルラウネの蜜と御神酒の複合液体が付いている。いや、良く見てみると―――二人とも気付けば一糸まとわぬ姿で、体中をベトベトにしている。
「「なめてっ////」」
二人はクラクラさせるような匂いを纏いながら、俺の顔に彼女たちの顔を近づける。身体に力を入れて二人を除けようとも、力が入らない。引きはがそうと動かした腕ですら、彼女たちを抱きあげるように包みこんでいた。同時に感じる、下半身への強い躍動感。あ、こ、これ、ヤバいです。
「ふたり、ともっ……!!」
瞬間。ブッチン!という琴線が引きちぎれる音が脳裏に響いた。
俺は二人の顔を引き寄せて、接吻と言う形で二人の唇を奪う。同時に、無意識にも俺は自らの舌を二人の舌と絡ませ、蜜と酒の格別なまでの甘さと、彼女たちの唾液でさえ一級品の甘味さに酔いしれた。
「ふぁ、ふあぁあああ!!」
「やぁああぁああ!!」
互いに舌を絡ませた、その直後。二人は柔らかくもひどく淫乱に嬌声を上げてビクンと身体を跳ねさせる。と、二人の身体から力がスゥッと抜けて、その意識のない身体が俺の身体を覆いかぶさった。その時は、まるでマシュマロが身体の上に落ちてきたのかと思うくらいに軽く、同時に俺の意識も物足りない貪欲な意識のまま、意識の無い彼女たちを貪ろうと……。
「ちょっとちょっとちょっとー! 此処でお酒使ってシてるの誰―――あら?」
扉を開け放つ音と一緒に、俺の脳みそにガゴン!と理性が突っ込まれた、そんな気がした。この声は何処かで…ああ、そうだ。この声はハーピー娘…さん? 同時に、顔を真っ赤にしながらも、全裸で俺に抱きつくお姉さんと妹さんが、目下に見えた。……ふおおぉおお!?
「なぁんだ、お兄さんもヤリ手だったの。うふふ、二人とも幸せそうな貌してるわねぇ♪」
「あァいやいやいや違うんですこれは事故ですお願いですから変な目で見ないで死んじゃうぅぅぅ!!」
意識こそはっきりしてきたが、この酒と蜜の匂いに当てられた俺の腕や身体は言う事をきかない。必死に二人を介抱しようとも、全く動かないのだ。む、無念ナリぃ……!!
「あれ、そんな事を言っちゃうの?」
「……え?」
「お兄さんを信じて身体を預けた二人に、『これは事故ですごめんなさい』って言っちゃうの?」
ほんの少し、本気な声をしているハーピー娘さん。俺も思わずその声を聞いてハッとする。
「…幸せに、してあげなさいよ?」
「―――俺が、で、出来る限りなら」「ならよろしいっ♪」
俺の意識が固まった所で、ハーピー娘さんは嬉しそうな顔をして、部屋を出て行った。
…っは。いやいや、違うんですよ!?助けてほしいんですって!ホラ、俺この通り力が全く入らないと言うか、このままじゃ二人とも風邪引いちゃうと言うか……二人の身体、暖かいナリィ…じゃなくてェ!!!
「助けてハーピー娘さぁあーん!!!」
「……おにー、さん…♪」
「…おにいさん、だいすき…♪」
「二人は、元々俺みたいな呑気な奴を襲うために、あんな事してたの?」
一番聞きたかった事がこれだ。部屋に入る前は、どうにも脳裏をラミア姉さんに浸食されていたが、ハーピーの娘さんに聞いた言葉が、どうしても気になっていた。その上で起きたこの出来事である。普通であれば、俺をゴブリンの娘が押し倒して精気を搾取するのに、間違いはないはずだった。
「…うん、そうだよ。だって私たち魔物娘だもん。 男の人見て押し倒したいって普通は思うよ」
妹ゴブリンが俯き加減でそう言った。やっぱり、普通はそれが魔物娘たちの信条であり、心情だろう。此処でラミア姉さんの夫の朗らかで人が良さすぎな笑顔が目の裏に出てきた。…何で出てきたんですか貴方。
「そうだよ、そうだよおねーちゃん。どうしてえっちさせてくれなかったの!?」
「………妹は、どう思う?」
突然妙な事を言われてしまったのか、妹ゴブリンは姉の言葉を聞いて驚き、黙りこくってしまった。そう、そこも気になる所だった。 何故同じ魔物娘であるゴブリンの、自分の妹が襲うのを姉は“良し”としなかったか。彼女もホブゴブリンの娘、つまりは魔物娘なのだ。自分だって本当は―――。
「…私は。……私も、この人とえっち、したい…」
本当の気持ちを、素直にお姉さんは述べた。だけど、この娘の反応は妹と比べると何処か何かが違っていて、
「…だけど、ひとを騙してまでするのは…私は、やだ」
「お、おねーちゃん……」
「…妹も、ほんとうはそう思ってるはず…」
「っわ、私は!私はそんな事ないもん!!!」
二人の論争は子供の喧嘩のようでいて、大人の論争だった。この二人は、本来どんな方法を以ってしても男を襲って精液を摂取したいと思っているだろう。だけど、この二人には悪戯をするのと同時に『良識』を持ち合わせている。本当の自分に嘘までついて、ギリギリの境界線を歩いている。…この二人は、本当に優しいんだ。
「や、妹ちゃんは優しいと思うよ」「ふぇ!?」
「ほら。何だかんだで頼んだモノはちゃんと買ってきてくれたんだしさ」
悪戯でこんなにしっかりと買い物をしてくれるとは思ってなかった。本来なら騙しているんだから、ご丁寧に買い物をしてこようだなんて普通は考えない。…と思う、多分だけど。 と同時にお姉ちゃんの方が俺の方をじっと見つめてくる。―――あれを良しとするかは…そっとしておこう。
「助かったのは本当の事だよ。ありがとう」
「…………////」
素直に感謝の言葉を述べると、それを濁そうと口をモゴモゴ動かして、何も言えない事に気付き俯いてしまった。とがった耳まで真っ赤になって、可愛いと言えば可愛い。あー…だから、嫌いになれないんだろうな、きっと。お姉さんの方がも何やら言葉を求めているようで、いい加減無視することも出来なくなってきたので…、
「お姉さんの方も、ありがと。どうするべきかはちょっと迷うけど…」
「……♪」
屈託ない笑顔で返してくれた。子供っぽいかもしれないけど、その顔つきは何処となく女性らしさも醸し出している。あんまりじっと見つめていると、こっちまで恥ずかしくなりそうで、何時の間にか顔を逸らしていた。
「でもこれで良かったのかな。本当なら―――」
「……その続きは、だめ」
口から発しかけた言葉を、近寄ってきたお姉さんに遮られた。
「………あんまり言うと、私…おにいさんの事………っ////」
「お、おにーさん////」
何時の間にか妹の方も顔の目の前までやってきて、熱の籠った視線を二人から降り注がされる。ほんのり上気した頬はとても可愛らしく、物欲しそうな視線に、俺はどうしていいか迷っていた。このまま致してしまう事、もしくは有耶無耶にして何事も無く生活する事。どっちにしたって……。
「………二人とも、俺、俺は…」
答えを簡単に求める事が出来ない。自分の欲望に忠実になるべきなのか、それとも理性を保ちお姉さんの気持ちを尊重するべきか。俺の本心はどちらにあって、彼女たちの願いはどちらにゆだねられているのか―――。それを考える前に…俺は、やっぱり臆病だった。
「……ごめん。二人の事、嫌いっていうわけじゃないんだけど…」
「………それで、いいと思う」
思わず暗い顔で返してしまう所を、またしてもお姉さんの牽制が入る。俺よりもずっと小さいはずの娘に宥められてしなうなんて、俺も男として出来てない。チクリと胸が痛んだけど、
「まーまー! とりあえずこの問題は解決!って事でいいじゃない?」
妹さんの気遣いなのか、それとも元気な所が好きなのか、とにかく大きな声でこの問題を解決の方向へ持っていこうとしている。お姉さんの顔も、妹さんの顔もまだまだ釈然としてない色を残しているけど…、確かにずっと引きずっていても仕方がない。そうだ、そうなんだよ、元気が一番だ!
「俺もそれでいいならいいと思う。ありがとな、二人とも」
精いっぱいの笑顔で二人に返すと、二人も声にこそ出さないが、元気いっぱいの笑顔で返してくれた。それで解決なら本当に良かった。そう、解決になっていれば、どれだけ良かっただろうか……。
まさか、あんな事になるとは―――。
***
和解した俺らは、その後夜も遅いと言う事で共に宿屋の部屋で夜を過ごす事にした。明日には二人ともお別れ、という事だったが、大量の荷物がある事もあってか村まで荷物を届けてくれる、という事になった。
「…あ、そうだ。報酬の方だけど」
「いらなーい。 おにーさんのお手伝いができただけで、私たちは別にいいや!」
ニカッと笑って見せた妹のゴブリンだったが、流石にそれだけじゃ俺の気持ちも収まらない(性的な意味でなく)。本来なら精力を与える事にこそ互いの利益があるはずだが…軟弱な俺にそれは出来ない。ならば出来ることは……。
「いや、受け取って欲しいモノがあるんだ」
俺はそういうと、二人が買ってきたモノの中から、ラミア姉さんから頼まれていたブツを取りだした。相変わらず根っこは太ももみたいに柔らかくてシュールだし、蜜瓶も酒瓶も正直見ててドキドキする。だけど、手伝ってくれた労いの報いくらい渡したい。
「…あれ? おにーさん、これって依頼品じゃなかったのー?」
「いや、注文した量よりもちょっと多かったみたいだから」
実は和解した直後から依頼品の数量を再度確認してみたんだが、どう計算してもやっぱり量が多いのだ。ラミア姉さんからしたら、量が多いに越したことはないかもしれないが…まぁ、これくらい黙っててもいいだろう。何せノルマはクリアしたも当然なんだから。
「……いい、の?」
「いいっていいって! 逆にこんな事しかできない俺だから、受け取ってくれると嬉しいよ」
そう言って、蜜瓶の一つをお姉さんの方へ渡す。妹さんの方にも、酒瓶を一本丸々一つを渡した。本当にこれでいいかは分からない。だけど、俺としては……。
「……大切にする////」
ぎゅぅっ、と言う擬音も似あうくらいにお姉さんが蜜瓶を抱きしめた。む、胸の谷間に挟まれた瓶がいやら…げふんげふん!っていうかそれ、そんなに大切にするようなアイテムだったりするのかな。
「……………」
酒瓶を貰った妹さんの方も嬉しそうだった。無言でこそあれ、優しい視線がこちらを向いている。あー、感謝されるって嬉しい事だね。ややお門違いな気もするけど。 さて、問題はもう一つ多かった依頼品の一つ…、
「根っこ、どうするべきかねぇ…」
机に向き直って袋の中を確認する。包装されているわけでもなく、むき出しのふともも根っこは、果たしてどう使うのだろうか? いや、もしかしたら魔物娘の彼女たちの方が使用方法に詳しいのかもしれない。うん、これもプレゼントするべきだろう。どうせなら渡せるものは渡して―――、
「きゃぅっ」
突如として背後から可愛らしい声が聞こえた。同時に、バシャッと言う水のような音も聞こえる。水を被ったか何かか。とにかく俺はふり返って……絶句した。
「―――っ!?」
「……お、おにい、さん」
床にぺたんと座りこんだお姉さん。その顔やら胸やら乳やらおっぱいやらに、得体のしれない液体がべっとりと付いていた。若干明りの暗い部屋で、その液体は妖しい色を宿し、ねばねばと糸を引いている。想像を絶するえろい光景に、息も生唾も一気に飲み込んでしまって……じゃなくて!!
「な、なにがあったのさ?!」
「おにーさん♪」
座り込んでしまったお姉さんを引き上げようとした時、身体の横から声が聞こえてきた。声の主は―――いつかに聞いた、悪戯っぽく笑う妹さんの姿。
「私たちも貰いっぱなし、そんなのやだもん。だから、“お返し”っ」
「…………」
…つまりこれは、妹さんからの“サプライズ・プレゼント”と言う事なのだろうか。それとも、先ほどから言いくるめられてばかりの妹さんが、お姉さんの身体を使ってお返しした、と言う事なのだろうか。ど、どっちにしたって…いかん危ない危ない危ない!
「んふふー♪ 喜んで貰って良かったね、おねーちゃ」
慌てふためく俺の表情に喜んでいた妹さんが、またしても視界から消える。消えた先は、床に座り込んでいるお姉さんの…おっぱい。顔ごと胸の谷間に突っ込まれて、バタバタと両手を振っている姿はややシュールだ。 そして同時に気付く。お姉さんが、こちらを見つめていた。
「…………♪」
その蕩けた目元と、上気した頬。顔いっぱいに付いた液体が、そのエロさをぐっと引き上げている。そんな魔性の瞳が、一点の虚空…というよりも、俺を見つめているようだった。
「…ぷれぜんと。わたしたちから、おにいさんへの……////」
こんな瞬間にしか分からなかった自分が残念でならない。 彼女の顔に掛った液体の正体。そして、この部屋全体を包み込むような高揚感。前に一度痛い目と言う形で味わった事がある。…あの“ブツ”だ。 アルラウネの蜜は性欲を高める効果がある。そしてこの頭がクラクラするくらいに鼓動が上がってく匂い、これは絶倫御神酒―――、
「おにーさん♪」
「おにぃさん////」
考え事をしている間に、俺は床に押さえつけられていた。それもお姉さんだけではなく、妹さんにも。彼女の顔にもべっとりとアルラウネの蜜と御神酒の複合液体が付いている。いや、良く見てみると―――二人とも気付けば一糸まとわぬ姿で、体中をベトベトにしている。
「「なめてっ////」」
二人はクラクラさせるような匂いを纏いながら、俺の顔に彼女たちの顔を近づける。身体に力を入れて二人を除けようとも、力が入らない。引きはがそうと動かした腕ですら、彼女たちを抱きあげるように包みこんでいた。同時に感じる、下半身への強い躍動感。あ、こ、これ、ヤバいです。
「ふたり、ともっ……!!」
瞬間。ブッチン!という琴線が引きちぎれる音が脳裏に響いた。
俺は二人の顔を引き寄せて、接吻と言う形で二人の唇を奪う。同時に、無意識にも俺は自らの舌を二人の舌と絡ませ、蜜と酒の格別なまでの甘さと、彼女たちの唾液でさえ一級品の甘味さに酔いしれた。
「ふぁ、ふあぁあああ!!」
「やぁああぁああ!!」
互いに舌を絡ませた、その直後。二人は柔らかくもひどく淫乱に嬌声を上げてビクンと身体を跳ねさせる。と、二人の身体から力がスゥッと抜けて、その意識のない身体が俺の身体を覆いかぶさった。その時は、まるでマシュマロが身体の上に落ちてきたのかと思うくらいに軽く、同時に俺の意識も物足りない貪欲な意識のまま、意識の無い彼女たちを貪ろうと……。
「ちょっとちょっとちょっとー! 此処でお酒使ってシてるの誰―――あら?」
扉を開け放つ音と一緒に、俺の脳みそにガゴン!と理性が突っ込まれた、そんな気がした。この声は何処かで…ああ、そうだ。この声はハーピー娘…さん? 同時に、顔を真っ赤にしながらも、全裸で俺に抱きつくお姉さんと妹さんが、目下に見えた。……ふおおぉおお!?
「なぁんだ、お兄さんもヤリ手だったの。うふふ、二人とも幸せそうな貌してるわねぇ♪」
「あァいやいやいや違うんですこれは事故ですお願いですから変な目で見ないで死んじゃうぅぅぅ!!」
意識こそはっきりしてきたが、この酒と蜜の匂いに当てられた俺の腕や身体は言う事をきかない。必死に二人を介抱しようとも、全く動かないのだ。む、無念ナリぃ……!!
「あれ、そんな事を言っちゃうの?」
「……え?」
「お兄さんを信じて身体を預けた二人に、『これは事故ですごめんなさい』って言っちゃうの?」
ほんの少し、本気な声をしているハーピー娘さん。俺も思わずその声を聞いてハッとする。
「…幸せに、してあげなさいよ?」
「―――俺が、で、出来る限りなら」「ならよろしいっ♪」
俺の意識が固まった所で、ハーピー娘さんは嬉しそうな顔をして、部屋を出て行った。
…っは。いやいや、違うんですよ!?助けてほしいんですって!ホラ、俺この通り力が全く入らないと言うか、このままじゃ二人とも風邪引いちゃうと言うか……二人の身体、暖かいナリィ…じゃなくてェ!!!
「助けてハーピー娘さぁあーん!!!」
「……おにー、さん…♪」
「…おにいさん、だいすき…♪」
11/03/09 18:56更新 / 緑色の何か
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