01 宿屋店主は眠れない
ここは、フェルス興国に一つだけ存在する宿屋、ハイネの宿のカウンター
そこで、俺ことデメトリオ=スタンダートは今日も宿屋の業務に勤しんでいた
勤しんでいるといっても、今は昼間…昨晩のお客さんは全員チェックアウトして、俺は一人で帳面を見ながら売上の計算をしているところだ
デ「今月はまあまあ入ってるな……はぁ…まだ、アレが残ってるんだよなぁ…なんとなくだけど、嫌だなぁ…アレするの」
そう、俺は売上の計算をわざとのんびりとして、このあと待っているとある業務から目をそらしていた。
だが、あまりのんびりともしていられないのも事実……
仕方がない……やるか…っ!!
デ「さぁてと、昨晩止まったお客様のベッドのシーツ交換の時間ですよぉっと……」
そう言いながら、一人目のお客さんの部屋をあける……
デ「この部屋は、サキュバスとの夫婦だったな……あっ…布団が軽くカピカピしてやがる……また、昨晩もお楽しみだったのか……でも、軽く拭き取ってるというか、吸い取ってるというか……あまり汚れてないな。これなら、簡単に洗えそうだ」
そうっ!!俺の宿屋は決してラブホテルではないっ!!のに……
最近、魔物娘とのカップルや夫婦が宿泊するたびに、ラブホテルとして利用されているかのように、部屋が……
それに、これは俺がリフォーム費用をケチったから起こったことなのだが……
なんと…行為に及んでいると、ほんのりと声が漏れ聞こえて来るんだよ
普通のお客さんが泊まったら、俺の宿屋の評判が悪くなるかもしれないじゃないか?
まぁ……基本、普通の旅人なんて泊まりに来ないんだけどな……
今度は、しっかりとリフォーム代はケチらないって決めたね、俺は
さってと……ほとんどのお部屋はサキュバスさん御夫婦と同じような状況…
次の部屋で、今日のシーツ交換は終わり……えっと、最後の夫婦は……
バブルスライムのカップルか……
そういえば、バブルスライムがうちに泊まりに来てくれたのは始めてだったな…あの時、旦那さんが分けてくれたスライムゼリー……貴重な貿易資材になるから、本当に助かったよ
デ「さぁって、最後もぱぱっとおわらせ……っ!?」
部屋を開けると、あまりの光景に、俺は思わず言葉を失う…
そこは、布団いっぱいに大量の緑の液体と白い液体が…
しかも、緑の液体はところどころ、完全な固体とかしており、鈍い色を放っている……
こ、こいつは……掃除が大変だぞ…マジで……
俺は、恐る恐るその緑の何かがベッタリとついた布団を持ち上げ……
デ「う……っ!?ぐぐぅっ、お、重い………とにかく、家の裏の井戸まで持っていかねぇと……」
それから10分ぐらいがたったか……
2階から1階の裏口にある井戸に謎の緑の液体が付着した布団を担いで移動
正直、疲れたね……
デ「これ、水で流れるんだろうな…?流れなかったら、新しい布団を買わなきゃいけなくなってしまう……余計な出費は抑えたいんだが……」
そう言いながら、井戸から水を汲み上げて、布団を洗ってみる……
ゴシッ…ゴシッ……
布団を洗っても、依然として緑色の固形物は布団から外れる気配を見せず…
んっ!?なんか、緑色のぬるりとした液体が染み出てきた……?
こ、これは危険な香りがするな…
俺はそう思うと、そっとその液体を井戸に投げ込んだ
俺の感が正しければ、この緑色の液体?は、それを追いかけて井戸に行くはずだ……
そう思い、様子を伺う俺………
様子を伺っていると、俺の予想通り緑の液体は井戸に向かって移動を始めた
……布団も一緒にな
俺がそのことに気がついたときには、もう布団は井戸のそこに落ちるところだった
自慢じゃないが、水を含んだ布団を井戸のそこから持って上がる力なんて俺にはない!!
俺はそっと井戸の蓋を閉め、蓋に鍵をかけた
デ「さて……布団でも買いに行くか…」
それからぐーたら過ごして1時間、俺は重い腰を上げながら、布団を買いに行くことにしたんだ
もうそろそろ、お客だってくる時間だし………
そう思っていると、いきなり宿の扉がノックされたんだ
店を開ける時間にはまだ早いんだけど……お客さんか?
デ「いらっしゃいませっ…お客様、まだ開店前の準備中でして………」
??「邪魔するで?」
デ「邪魔するなら、帰って……」
??「あいよ〜…………ってアホかぁっ!!」
デ「あいたぁっ!!」
ぐぅっ………容赦ない平手うち……なんてやつだ…
このいきなり現れた謎の人物……形部狸のソメさん……
あいにくと、俺が望んでいるお客さん…というよりは、宿側…つまり、売る側の人間だ
最近、目をつけられたのか、やたらと書類にサインを書かされそうになる
店主たるもの、冷静であれ………
宿屋の店主仲間の中には、形部狸のおかげで成功したという声を聞くこともあれば、形部狸にはめられたという声を聞くこともある
いわば、この種族と商談をするときはハイリスクハイリターンのかけをしなきゃいけないってことなのさ!!
俺はな……のんびりと宿屋が営めればそれでいいんだ
だから、俺は彼女とはあまり親密になりたくないんだけど……
ソ「そろそろ、全国『愛の宿』協会に加盟する気はないん?うち…そろそろ疲れたねんけど…」
デ「ソメさんも、しつこいですね……俺はひっそりと宿屋を経営して行きたいんですけれど……それに、そもそも『愛の宿』ってどんな協会なんですか?その説明もいい加減して欲しいですし、加盟して、俺にどんなメリットがあるのかも教えて欲しいです」
いつもいつも、こう聞けば適当にはぐらかされてしまうからな…
言い方を変えれば、この話題をあっという間に終わらせるいい方法ってわけさ
だが……今日はいつもと少し違っていた…
ソ「ええで?もう待つのも疲れた、説明したるわ」
そう言いながら、どこにしまっていたのか大きなファイルを取り出したソメさん……
そのファイルの表紙には、機密事項ファイルと書かれたシールが貼ってある
ソ「『愛の宿』はな、全国…全世界の宿屋連盟の通称名や、それこそ、霧の国やジパングなど、いろんな土地の宿屋が加盟しとる。この連盟は独自の宿屋判定システムをもっとってな?その判定基準に乗っ取り、Aランク以上の宿屋にうちのような者が直接交渉に行くんや」
デ「え、Aランク以上?ちょっとその基準、すごい気になる」
ソ「うちもここの良さはクチコミで聞いてな?ものは試しにと旦那と一緒に潜入捜査させてもろたけれど、正直……驚いたわ。あんた、一人で料理やらなんやらやってて、しかも各部屋にアロマがわりに置かれているハーブ…そして、質のいい布団……人間の作った物でここまでの満足度を出せるんやから、魔物ブランドに家具を変えたりしたら、フェルス興国では1番の宿になる!!」
………ま、魔物ブランドって……何?
やばいぞ……俺ってまさか、宿屋業界のトレンドに乗り遅れているのか…!?
いや、まて………容易に新しいものに手を伸ばすのは危険だ…
ここは確実に情報を仕入れていくのが得策とみた!!
デ「魔物ブランドって……なんですか?」
ソ「えっ!?知らんの!?はぁ〜っ……まぁええ……加盟してくれたらな、『愛の宿』本部から、毎月、魔物ブランドの家具や料理が輸送されるんや」
デ「だ、だから……それが加盟特典だとして、その魔物ブランドってなんなんですか…?」
ソ「そやな………例えば、ワーシープの毛で作った羊毛布団……ドワーフ製の陶器……食べ物なら、スライムゼリーや、魔界豚の極上肉……そして、あの火鼠流の独自の製法で作り上げたという秘伝の……ほ・し・に・く…」
デ「な…!?なにぃっ!?」
火鼠流……それは、霧の大陸で武芸にたけた火鼠たちの間で、秘伝として受け継がれているらしい…伝説の干し肉…!!
その干し肉を食べる権利は、本来……強者のみに与えられ、非戦闘員である俺のような男には絶対に縁のない干し肉じゃないか!!
ぐぅっ……ほ、ほしぃ………本気で欲しい……
ソ「欲しいやろ?うちも何も情報を仕入れずきたわけやないで〜?あんたがどんな食物を好きかぐらいは調べとる……干し肉やチーズに目がないんやってなぁ……ホルスタウロスのミルクから作ったホルスタチーズとか食べたら……どれほどおいしいんかなぁ?気になるよなぁ……?」
デ「うぐぅっ!?ぐぅぅっ……う、裏は…?うまい話だけじゃないんでしょう?そっちの方も、話してくれないと信用できませんよ」
ソ「裏なんて無いで?うちらはあんたの店が最高クラスのラブホテルになって、魔物娘たちと人間との架橋にさえなってくれればええんや……幸せなカップルが増えることはええことやと思うやろ?」
た、確かに………ん……?
ラブホテル……?え、ちょっと待って?
危ない危ない……それが裏じゃないか!!
デ「待ってくださいよ!!ラブホテルじゃないんですよ?ここは、普通の民宿なんですけど……」
ソ「嘘つきぃな、クチコミでも最高のラブホテルだったと言ってたし、潜入捜査して旦那とやった時も、最高に満足したわ…布団はしっかりと旦那の体をホールドしてくれたから騎乗位で腰は振りやすかったし、気持ちを高ぶらせるお香も焚いとったやない」
そんなの………狙って……ねぇんだけど……
デ「でも、本当にラブホテルじゃないんです……すいませんが、この話はなかったことに……」
結局、その後…ソメさんには引き上げてもらった……
でも…あの目を見る限り………諦めてないな…ありゃあ…
さてと、色々あったがそろそろ布団を買いに行かないとな……
そう思い、かけてあった時計を見る……
デ「6時ぃっ!?もう、宿をあけないといけない時間じゃないか!!思ったより話し込んでしまったのか……仕方ない、あの部屋だけ今夜は使えないってことにしておこう……」
そう言いながら、カウンターに向かい、手帳を調べる…
今日は確か、予約しているお客さんはいなかったはず……だから、いつもよりは人数は少ないだろうな……
食事の備蓄の大丈夫だし…………うん、今日は大丈夫だな
さぁ……仕事の時間だ!!
デ「今日は……誰も来ないのか…?」
そうつぶやきながら、それでもいつ来てもいいように度々料理の仕込みを繰り返す……ちなみに、余った分は俺の晩飯と、晩飯に困っている人におすそ分けするから、安心してくれ
すでに、店を開いてから2時間と30分……時間はすでに9時を告げていた
コンコン……
デ「ん…?ようやくお客さんか?いらっしゃいませ」
男性「すまない……このような時間になのだが……宿は空いているだろうか?」
デ「大丈夫ですよ、お連れ様は…?」
男性「いや、一人旅でね……このフェルス興国にはたまに来るんだよ。趣味は景色の撮影でね、この国の景色は綺麗だから、今までこなかった試しがないんだよ」
そう言いながら、男性は持っているカメラをかざしながら、少しだけ笑った
こ、この宿に一人で宿泊のお客さんなんて、本当の本当に久しぶりだ!!
たぶん………2年ぶりなんじゃないだろうか……?
俺は男性を部屋に案内すると、即座に作っておいたあったかい自慢の料理を持っていく……
そして、下のカウンターのところに戻っていくと、そこに一人の魔物娘がいたんだ
次のお客さんか?魔物娘のお客さんが一人で来るなんて……お客としてだったら始めてだぞ……
なんだか、今日は初めてがおおいなぁ……
リザードマン(リ)「店主よ、宿は空いているか?」
デ「は、はいっ!!大丈夫です!!」
リ「なにをビクビクしている?宿が取れるなら、一晩お願いしたい」
デ「かしこまりました!!えっと、二階の階段を上がってすぐの部屋になります!!」
俺はそう言いながら、彼女の様子を伺う……
お、俺……どうも武闘派の魔物娘は怖いっていうか…なんていうか……
たぶんあれだな……宿屋店主として、レベルが足りてないんだな…
そして、リザードマンの彼女が二階にあがって少ししたところで、事件は起きてしまった…
なんと、彼女は階段をあがってすぐの部屋で、あがって左右ではなく、あがって右斜め前にある部屋に入ったんだ!!
その部屋は、俺がさっき男性を招待した部屋だった……
リ「貴様っ!!人の部屋でなにをしている!!むっ……その手の物は、カメラではないか!!さては……盗撮魔の類だな…その正々堂々と撮影もできない軟弱な心を、私が叩き直してやる!!」
男性「えっ!?えぇっ!?ちょ、ちょっと……誤解……」
デ「な、なんだか…上が騒がしいぞ……ま、まさか……部屋間違えたりしたんじゃないだろうな……?って、これは確実に間違えてる!!あ、あわわ…まずい、このままじゃ…信用問題だぞ!!」
しかし……そうは分かっていても、彼女の怒りを肩代わりする勇気なんて…ただの宿屋店主にあるわけがない……
ここは、あの男性客が華麗に危機を回避してくれることを願うしかない!!
男性「待ってください!!きっと、あなたが部屋を間違えたんですよ。ここは今晩、私の部屋にですね……」
リ「ふんっ……盗撮魔がこの私に意見するとは……私はこの店の店主の言う通りの部屋に入ったのだ!!間違えてなどおらぬ!!」
いやいやいやいやっ!!間違えてます、間違えてますよお客さん!!
ぐぅっ………決めた…今度から、この宿の部屋に番号でも振り分けとこう…
まぁ、間違えるような説明をした俺も……すっごく悪いしなぁ……
た、頼む男性のお客さん……なんとかしてくれ……!!
リ「だが、安心しろ……私は今…修業中の身でな……貴様も知っているだろう、私たちリザードマンと出会ったとき、わたしたちが何を求めているかを…」
男性「いや……わからないんですが……」
リ「そうっ!!私よりも強いオス……伴侶である!!だが、同時に私は剣のうでも磨いている……あとは……わかるな?」
男性「だからっ!!わからないって!!」
リ「貴様に、私と模擬試合をする権利をくれてやる!!廊下に出るがいい!!」
男性「き、聞いちゃいない……わかりましたよ……出ますよ…」
うわぁ……こ、こりゃあ……明日の朝、男性客の方から文句がある…
そんなフラグが立ってるな……今のうちに侘び金を用意しておくか…
リ「店主っ!!店主はまだ起きているかっ!!」
うわあぁぁぁぁっ!!呼ばれたよ!!呼ばれてしまったよ!!
これは、『昨日の晩にそんなことがあったんですかーー』と言ってどうにか恨みを和らげてもらおうっていう俺の作戦が実行できなくなっちまった……
リ「店主!!」
デ「はいぃぃぃっ!!ただいま参りますぅっ!!」
リザードマンの彼女に呼ばれた俺は、今までにないぐらいの俊敏な動きでカウンターを出て、階段を駆け上る……
そこには、キッと鋭い目つきで俺を見るリザードマンの彼女と、困ったような表情を浮かべている男性客の二人がいた
デ「ど、どうか……いたしましたか?」
男性「店主、困ったことに私を……」
リ「こやつはな、私のことを盗撮しようとしたのだ!!おそらくは、私のこの体を写真で取り、自分の自慰行為のためか、高値で売ろうとしていたに違いないのだ!!許せないだろう!!」
デ「なっ!?そ、そ、それは…許せませんな……」
すいませんっ!!本気ですみませんっ!!
謝ります、必死に心で謝りますから、どうか俺のことを許してやってください…
彼は俺にも見放されたのだと思い、表情を絶望の色に染めた…
それを見て、俺の心はさらに痛くなったが……
俺には、彼女に意見する勇気はなかったのだった……
リ「さぁ……この木刀を持つがいい!!私も木刀で相手をしてやろう…!!どこからでも打ち込んでくるがいい!特別だ……私の体に一撃でも与えることができたなら、貴様の勝ちにして…貴様を開放してやろう」
男性「こ、こうなったら……やってやるっ!!でやあぁぁぁぁっ!!」
リ「遅いっ!!」
男性が勢いよく木刀で攻撃を仕掛けると、それを上半身の動きだけでかわし、軽く男性の肩に木刀を当てる彼女……
や、やっぱり、戦闘系の魔物娘なんかに、ただの一般ピーポーが勝てるはずがないんだ!!
これは、わかりきった出来レース……しかし、分かっていても、俺には意見する勇気はない…
リ「今のが戦場なら、貴様の左腕は落ちていたぞ?まずはその恐怖心を捨ててかかってこい!!」
彼女はそう言って、男性に攻撃を仕掛けるように仕向け…
その攻撃を捌いては、軽く男性の体に木刀を当てている……
これは……なんだかんだで、彼女も自分の鍛錬のために彼に協力してもらっているところもあるんじゃないかなって……
微妙に俺は思い始めてる……
そして、30分が経過……さすがの俺も…見てるだけで疲れたよ…
えっ?そろそろ止めてやれって?うん…それ無理…
だって、彼女の目を見る限り……これからもまだまだ行けるって顔してるんだもん!!俺に意見する隙間なんて……あるわけないじゃないか!!
リ「どうした?逃げ腰になってるぞ?怖いのか?かかってこい!!恐怖心なんか捨ててっ!!」
男性「っ……あ、あなたなんか怖くないっ!!へ、へへっ……怖くないんだ…わ、私は倒されないぞっ…!!やろぉ!!ぶっ倒してやらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
リ「気迫はよし……来いっ!!」
男性「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
リ「右から、ななめに大雑把な切り………そんな技ではっ!!隙が大きい!!」
男性「今だっ!!カメラフラッシュッ!!!!!」
リ「なっ!?ぐぅっ……き、貴様ッ!!卑怯な……」
男性「すみませんが、こういう手荒な行動をとらなくては、私に勝ちはなさそうでしたので……失礼します」
男性はそういうと、目がくらんでフラフラしているリザードマンの彼女の肩を軽く木刀で叩いた
し、勝負あった……
やったっ!!男性が勝ったっ!!これで俺にはお咎めなし……
最高じゃないかっ!!
そ、そうだ……負けたリザードマンの彼女に、なにか気持ちを落ち着かせるものを……っと、そういえば…前にゴブリンがやたら勧めてくるきのこがあったな……この、男根みたいな形をした……これで、なにかソテーでも作ってきて、気分を上げてもらおう!!
俺はそう思うと、速攻で台所に行き、速攻で料理を作ってきた
戻ると、彼女は冷やしたタオルで頭を冷やしており、男性はまたも困った顔でそこに立っていた…
デ「ど…どうしたんですか?もう部屋に戻ってもいいと思いますが……?」
男性「いや……実は…鍵を彼女が持ってまして……そんなに急ぐことでもないですから、落ち着くまで様子見を……」
デ「そ、そうですか……っと、すみません…これ、今日の晩御飯です…彼はすでに食べているみたいなので、あなたの分だけですが……」
リ「すまない…」
彼女はそういうと、出された料理に目もくれず、一気に口の中に頬張った
すると、次第に顔が赤くなり、息が荒くなっていくという、そんな現象が彼女に起こったんだよ!!
な、なんだ……?風邪か……?それとも、あのキノコ……ヤバイやつだったのか!?
あわ……あわわわわわわわわわっ!!
リ「はぁっ……はぁっ……私に勝った…貴様、あのような卑怯な勝ち方をして……覚悟は出来ているんだろうな?本番はここからだぞ…?」
男性「えぇっ!?や、約束が違うっ!!一撃当てたら私を開放するって……」
リ「あぁ……あの話か……」
そう言いながら、リザードマンの彼女は彼の部屋の向かいのひと部屋の扉を開け、男性客に近づいていく……
リ「確か……一回でも私に攻撃を当てれば貴様の勝ちで、開放してやる…だったか?」
男性「そうですっ!!はっきりと覚えているんですからねっ!?」
リ「……あれは嘘だ」
男性「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
彼女はそういうと、ものすごい勢いで男性客を掴み、部屋に引きずっていった…
そして、ベットの上で着ている物を脱いでいく……
あ……あぁ……勝負って…そういう……
結局こうなるんですか………
デ「ごゆっくりとお楽しみください……そ、それでは…いい夜を……」
今の俺には、彼がどのような夜の戦いをするのかの予想をするぐらいしかできることはないけれど……おそらく彼は負けるんだろうな……
って、そんなことだけがわかるのだった……
今晩もまた……眠れない夜になりそうだぜ
そこで、俺ことデメトリオ=スタンダートは今日も宿屋の業務に勤しんでいた
勤しんでいるといっても、今は昼間…昨晩のお客さんは全員チェックアウトして、俺は一人で帳面を見ながら売上の計算をしているところだ
デ「今月はまあまあ入ってるな……はぁ…まだ、アレが残ってるんだよなぁ…なんとなくだけど、嫌だなぁ…アレするの」
そう、俺は売上の計算をわざとのんびりとして、このあと待っているとある業務から目をそらしていた。
だが、あまりのんびりともしていられないのも事実……
仕方がない……やるか…っ!!
デ「さぁてと、昨晩止まったお客様のベッドのシーツ交換の時間ですよぉっと……」
そう言いながら、一人目のお客さんの部屋をあける……
デ「この部屋は、サキュバスとの夫婦だったな……あっ…布団が軽くカピカピしてやがる……また、昨晩もお楽しみだったのか……でも、軽く拭き取ってるというか、吸い取ってるというか……あまり汚れてないな。これなら、簡単に洗えそうだ」
そうっ!!俺の宿屋は決してラブホテルではないっ!!のに……
最近、魔物娘とのカップルや夫婦が宿泊するたびに、ラブホテルとして利用されているかのように、部屋が……
それに、これは俺がリフォーム費用をケチったから起こったことなのだが……
なんと…行為に及んでいると、ほんのりと声が漏れ聞こえて来るんだよ
普通のお客さんが泊まったら、俺の宿屋の評判が悪くなるかもしれないじゃないか?
まぁ……基本、普通の旅人なんて泊まりに来ないんだけどな……
今度は、しっかりとリフォーム代はケチらないって決めたね、俺は
さってと……ほとんどのお部屋はサキュバスさん御夫婦と同じような状況…
次の部屋で、今日のシーツ交換は終わり……えっと、最後の夫婦は……
バブルスライムのカップルか……
そういえば、バブルスライムがうちに泊まりに来てくれたのは始めてだったな…あの時、旦那さんが分けてくれたスライムゼリー……貴重な貿易資材になるから、本当に助かったよ
デ「さぁって、最後もぱぱっとおわらせ……っ!?」
部屋を開けると、あまりの光景に、俺は思わず言葉を失う…
そこは、布団いっぱいに大量の緑の液体と白い液体が…
しかも、緑の液体はところどころ、完全な固体とかしており、鈍い色を放っている……
こ、こいつは……掃除が大変だぞ…マジで……
俺は、恐る恐るその緑の何かがベッタリとついた布団を持ち上げ……
デ「う……っ!?ぐぐぅっ、お、重い………とにかく、家の裏の井戸まで持っていかねぇと……」
それから10分ぐらいがたったか……
2階から1階の裏口にある井戸に謎の緑の液体が付着した布団を担いで移動
正直、疲れたね……
デ「これ、水で流れるんだろうな…?流れなかったら、新しい布団を買わなきゃいけなくなってしまう……余計な出費は抑えたいんだが……」
そう言いながら、井戸から水を汲み上げて、布団を洗ってみる……
ゴシッ…ゴシッ……
布団を洗っても、依然として緑色の固形物は布団から外れる気配を見せず…
んっ!?なんか、緑色のぬるりとした液体が染み出てきた……?
こ、これは危険な香りがするな…
俺はそう思うと、そっとその液体を井戸に投げ込んだ
俺の感が正しければ、この緑色の液体?は、それを追いかけて井戸に行くはずだ……
そう思い、様子を伺う俺………
様子を伺っていると、俺の予想通り緑の液体は井戸に向かって移動を始めた
……布団も一緒にな
俺がそのことに気がついたときには、もう布団は井戸のそこに落ちるところだった
自慢じゃないが、水を含んだ布団を井戸のそこから持って上がる力なんて俺にはない!!
俺はそっと井戸の蓋を閉め、蓋に鍵をかけた
デ「さて……布団でも買いに行くか…」
それからぐーたら過ごして1時間、俺は重い腰を上げながら、布団を買いに行くことにしたんだ
もうそろそろ、お客だってくる時間だし………
そう思っていると、いきなり宿の扉がノックされたんだ
店を開ける時間にはまだ早いんだけど……お客さんか?
デ「いらっしゃいませっ…お客様、まだ開店前の準備中でして………」
??「邪魔するで?」
デ「邪魔するなら、帰って……」
??「あいよ〜…………ってアホかぁっ!!」
デ「あいたぁっ!!」
ぐぅっ………容赦ない平手うち……なんてやつだ…
このいきなり現れた謎の人物……形部狸のソメさん……
あいにくと、俺が望んでいるお客さん…というよりは、宿側…つまり、売る側の人間だ
最近、目をつけられたのか、やたらと書類にサインを書かされそうになる
店主たるもの、冷静であれ………
宿屋の店主仲間の中には、形部狸のおかげで成功したという声を聞くこともあれば、形部狸にはめられたという声を聞くこともある
いわば、この種族と商談をするときはハイリスクハイリターンのかけをしなきゃいけないってことなのさ!!
俺はな……のんびりと宿屋が営めればそれでいいんだ
だから、俺は彼女とはあまり親密になりたくないんだけど……
ソ「そろそろ、全国『愛の宿』協会に加盟する気はないん?うち…そろそろ疲れたねんけど…」
デ「ソメさんも、しつこいですね……俺はひっそりと宿屋を経営して行きたいんですけれど……それに、そもそも『愛の宿』ってどんな協会なんですか?その説明もいい加減して欲しいですし、加盟して、俺にどんなメリットがあるのかも教えて欲しいです」
いつもいつも、こう聞けば適当にはぐらかされてしまうからな…
言い方を変えれば、この話題をあっという間に終わらせるいい方法ってわけさ
だが……今日はいつもと少し違っていた…
ソ「ええで?もう待つのも疲れた、説明したるわ」
そう言いながら、どこにしまっていたのか大きなファイルを取り出したソメさん……
そのファイルの表紙には、機密事項ファイルと書かれたシールが貼ってある
ソ「『愛の宿』はな、全国…全世界の宿屋連盟の通称名や、それこそ、霧の国やジパングなど、いろんな土地の宿屋が加盟しとる。この連盟は独自の宿屋判定システムをもっとってな?その判定基準に乗っ取り、Aランク以上の宿屋にうちのような者が直接交渉に行くんや」
デ「え、Aランク以上?ちょっとその基準、すごい気になる」
ソ「うちもここの良さはクチコミで聞いてな?ものは試しにと旦那と一緒に潜入捜査させてもろたけれど、正直……驚いたわ。あんた、一人で料理やらなんやらやってて、しかも各部屋にアロマがわりに置かれているハーブ…そして、質のいい布団……人間の作った物でここまでの満足度を出せるんやから、魔物ブランドに家具を変えたりしたら、フェルス興国では1番の宿になる!!」
………ま、魔物ブランドって……何?
やばいぞ……俺ってまさか、宿屋業界のトレンドに乗り遅れているのか…!?
いや、まて………容易に新しいものに手を伸ばすのは危険だ…
ここは確実に情報を仕入れていくのが得策とみた!!
デ「魔物ブランドって……なんですか?」
ソ「えっ!?知らんの!?はぁ〜っ……まぁええ……加盟してくれたらな、『愛の宿』本部から、毎月、魔物ブランドの家具や料理が輸送されるんや」
デ「だ、だから……それが加盟特典だとして、その魔物ブランドってなんなんですか…?」
ソ「そやな………例えば、ワーシープの毛で作った羊毛布団……ドワーフ製の陶器……食べ物なら、スライムゼリーや、魔界豚の極上肉……そして、あの火鼠流の独自の製法で作り上げたという秘伝の……ほ・し・に・く…」
デ「な…!?なにぃっ!?」
火鼠流……それは、霧の大陸で武芸にたけた火鼠たちの間で、秘伝として受け継がれているらしい…伝説の干し肉…!!
その干し肉を食べる権利は、本来……強者のみに与えられ、非戦闘員である俺のような男には絶対に縁のない干し肉じゃないか!!
ぐぅっ……ほ、ほしぃ………本気で欲しい……
ソ「欲しいやろ?うちも何も情報を仕入れずきたわけやないで〜?あんたがどんな食物を好きかぐらいは調べとる……干し肉やチーズに目がないんやってなぁ……ホルスタウロスのミルクから作ったホルスタチーズとか食べたら……どれほどおいしいんかなぁ?気になるよなぁ……?」
デ「うぐぅっ!?ぐぅぅっ……う、裏は…?うまい話だけじゃないんでしょう?そっちの方も、話してくれないと信用できませんよ」
ソ「裏なんて無いで?うちらはあんたの店が最高クラスのラブホテルになって、魔物娘たちと人間との架橋にさえなってくれればええんや……幸せなカップルが増えることはええことやと思うやろ?」
た、確かに………ん……?
ラブホテル……?え、ちょっと待って?
危ない危ない……それが裏じゃないか!!
デ「待ってくださいよ!!ラブホテルじゃないんですよ?ここは、普通の民宿なんですけど……」
ソ「嘘つきぃな、クチコミでも最高のラブホテルだったと言ってたし、潜入捜査して旦那とやった時も、最高に満足したわ…布団はしっかりと旦那の体をホールドしてくれたから騎乗位で腰は振りやすかったし、気持ちを高ぶらせるお香も焚いとったやない」
そんなの………狙って……ねぇんだけど……
デ「でも、本当にラブホテルじゃないんです……すいませんが、この話はなかったことに……」
結局、その後…ソメさんには引き上げてもらった……
でも…あの目を見る限り………諦めてないな…ありゃあ…
さてと、色々あったがそろそろ布団を買いに行かないとな……
そう思い、かけてあった時計を見る……
デ「6時ぃっ!?もう、宿をあけないといけない時間じゃないか!!思ったより話し込んでしまったのか……仕方ない、あの部屋だけ今夜は使えないってことにしておこう……」
そう言いながら、カウンターに向かい、手帳を調べる…
今日は確か、予約しているお客さんはいなかったはず……だから、いつもよりは人数は少ないだろうな……
食事の備蓄の大丈夫だし…………うん、今日は大丈夫だな
さぁ……仕事の時間だ!!
デ「今日は……誰も来ないのか…?」
そうつぶやきながら、それでもいつ来てもいいように度々料理の仕込みを繰り返す……ちなみに、余った分は俺の晩飯と、晩飯に困っている人におすそ分けするから、安心してくれ
すでに、店を開いてから2時間と30分……時間はすでに9時を告げていた
コンコン……
デ「ん…?ようやくお客さんか?いらっしゃいませ」
男性「すまない……このような時間になのだが……宿は空いているだろうか?」
デ「大丈夫ですよ、お連れ様は…?」
男性「いや、一人旅でね……このフェルス興国にはたまに来るんだよ。趣味は景色の撮影でね、この国の景色は綺麗だから、今までこなかった試しがないんだよ」
そう言いながら、男性は持っているカメラをかざしながら、少しだけ笑った
こ、この宿に一人で宿泊のお客さんなんて、本当の本当に久しぶりだ!!
たぶん………2年ぶりなんじゃないだろうか……?
俺は男性を部屋に案内すると、即座に作っておいたあったかい自慢の料理を持っていく……
そして、下のカウンターのところに戻っていくと、そこに一人の魔物娘がいたんだ
次のお客さんか?魔物娘のお客さんが一人で来るなんて……お客としてだったら始めてだぞ……
なんだか、今日は初めてがおおいなぁ……
リザードマン(リ)「店主よ、宿は空いているか?」
デ「は、はいっ!!大丈夫です!!」
リ「なにをビクビクしている?宿が取れるなら、一晩お願いしたい」
デ「かしこまりました!!えっと、二階の階段を上がってすぐの部屋になります!!」
俺はそう言いながら、彼女の様子を伺う……
お、俺……どうも武闘派の魔物娘は怖いっていうか…なんていうか……
たぶんあれだな……宿屋店主として、レベルが足りてないんだな…
そして、リザードマンの彼女が二階にあがって少ししたところで、事件は起きてしまった…
なんと、彼女は階段をあがってすぐの部屋で、あがって左右ではなく、あがって右斜め前にある部屋に入ったんだ!!
その部屋は、俺がさっき男性を招待した部屋だった……
リ「貴様っ!!人の部屋でなにをしている!!むっ……その手の物は、カメラではないか!!さては……盗撮魔の類だな…その正々堂々と撮影もできない軟弱な心を、私が叩き直してやる!!」
男性「えっ!?えぇっ!?ちょ、ちょっと……誤解……」
デ「な、なんだか…上が騒がしいぞ……ま、まさか……部屋間違えたりしたんじゃないだろうな……?って、これは確実に間違えてる!!あ、あわわ…まずい、このままじゃ…信用問題だぞ!!」
しかし……そうは分かっていても、彼女の怒りを肩代わりする勇気なんて…ただの宿屋店主にあるわけがない……
ここは、あの男性客が華麗に危機を回避してくれることを願うしかない!!
男性「待ってください!!きっと、あなたが部屋を間違えたんですよ。ここは今晩、私の部屋にですね……」
リ「ふんっ……盗撮魔がこの私に意見するとは……私はこの店の店主の言う通りの部屋に入ったのだ!!間違えてなどおらぬ!!」
いやいやいやいやっ!!間違えてます、間違えてますよお客さん!!
ぐぅっ………決めた…今度から、この宿の部屋に番号でも振り分けとこう…
まぁ、間違えるような説明をした俺も……すっごく悪いしなぁ……
た、頼む男性のお客さん……なんとかしてくれ……!!
リ「だが、安心しろ……私は今…修業中の身でな……貴様も知っているだろう、私たちリザードマンと出会ったとき、わたしたちが何を求めているかを…」
男性「いや……わからないんですが……」
リ「そうっ!!私よりも強いオス……伴侶である!!だが、同時に私は剣のうでも磨いている……あとは……わかるな?」
男性「だからっ!!わからないって!!」
リ「貴様に、私と模擬試合をする権利をくれてやる!!廊下に出るがいい!!」
男性「き、聞いちゃいない……わかりましたよ……出ますよ…」
うわぁ……こ、こりゃあ……明日の朝、男性客の方から文句がある…
そんなフラグが立ってるな……今のうちに侘び金を用意しておくか…
リ「店主っ!!店主はまだ起きているかっ!!」
うわあぁぁぁぁっ!!呼ばれたよ!!呼ばれてしまったよ!!
これは、『昨日の晩にそんなことがあったんですかーー』と言ってどうにか恨みを和らげてもらおうっていう俺の作戦が実行できなくなっちまった……
リ「店主!!」
デ「はいぃぃぃっ!!ただいま参りますぅっ!!」
リザードマンの彼女に呼ばれた俺は、今までにないぐらいの俊敏な動きでカウンターを出て、階段を駆け上る……
そこには、キッと鋭い目つきで俺を見るリザードマンの彼女と、困ったような表情を浮かべている男性客の二人がいた
デ「ど、どうか……いたしましたか?」
男性「店主、困ったことに私を……」
リ「こやつはな、私のことを盗撮しようとしたのだ!!おそらくは、私のこの体を写真で取り、自分の自慰行為のためか、高値で売ろうとしていたに違いないのだ!!許せないだろう!!」
デ「なっ!?そ、そ、それは…許せませんな……」
すいませんっ!!本気ですみませんっ!!
謝ります、必死に心で謝りますから、どうか俺のことを許してやってください…
彼は俺にも見放されたのだと思い、表情を絶望の色に染めた…
それを見て、俺の心はさらに痛くなったが……
俺には、彼女に意見する勇気はなかったのだった……
リ「さぁ……この木刀を持つがいい!!私も木刀で相手をしてやろう…!!どこからでも打ち込んでくるがいい!特別だ……私の体に一撃でも与えることができたなら、貴様の勝ちにして…貴様を開放してやろう」
男性「こ、こうなったら……やってやるっ!!でやあぁぁぁぁっ!!」
リ「遅いっ!!」
男性が勢いよく木刀で攻撃を仕掛けると、それを上半身の動きだけでかわし、軽く男性の肩に木刀を当てる彼女……
や、やっぱり、戦闘系の魔物娘なんかに、ただの一般ピーポーが勝てるはずがないんだ!!
これは、わかりきった出来レース……しかし、分かっていても、俺には意見する勇気はない…
リ「今のが戦場なら、貴様の左腕は落ちていたぞ?まずはその恐怖心を捨ててかかってこい!!」
彼女はそう言って、男性に攻撃を仕掛けるように仕向け…
その攻撃を捌いては、軽く男性の体に木刀を当てている……
これは……なんだかんだで、彼女も自分の鍛錬のために彼に協力してもらっているところもあるんじゃないかなって……
微妙に俺は思い始めてる……
そして、30分が経過……さすがの俺も…見てるだけで疲れたよ…
えっ?そろそろ止めてやれって?うん…それ無理…
だって、彼女の目を見る限り……これからもまだまだ行けるって顔してるんだもん!!俺に意見する隙間なんて……あるわけないじゃないか!!
リ「どうした?逃げ腰になってるぞ?怖いのか?かかってこい!!恐怖心なんか捨ててっ!!」
男性「っ……あ、あなたなんか怖くないっ!!へ、へへっ……怖くないんだ…わ、私は倒されないぞっ…!!やろぉ!!ぶっ倒してやらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
リ「気迫はよし……来いっ!!」
男性「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
リ「右から、ななめに大雑把な切り………そんな技ではっ!!隙が大きい!!」
男性「今だっ!!カメラフラッシュッ!!!!!」
リ「なっ!?ぐぅっ……き、貴様ッ!!卑怯な……」
男性「すみませんが、こういう手荒な行動をとらなくては、私に勝ちはなさそうでしたので……失礼します」
男性はそういうと、目がくらんでフラフラしているリザードマンの彼女の肩を軽く木刀で叩いた
し、勝負あった……
やったっ!!男性が勝ったっ!!これで俺にはお咎めなし……
最高じゃないかっ!!
そ、そうだ……負けたリザードマンの彼女に、なにか気持ちを落ち着かせるものを……っと、そういえば…前にゴブリンがやたら勧めてくるきのこがあったな……この、男根みたいな形をした……これで、なにかソテーでも作ってきて、気分を上げてもらおう!!
俺はそう思うと、速攻で台所に行き、速攻で料理を作ってきた
戻ると、彼女は冷やしたタオルで頭を冷やしており、男性はまたも困った顔でそこに立っていた…
デ「ど…どうしたんですか?もう部屋に戻ってもいいと思いますが……?」
男性「いや……実は…鍵を彼女が持ってまして……そんなに急ぐことでもないですから、落ち着くまで様子見を……」
デ「そ、そうですか……っと、すみません…これ、今日の晩御飯です…彼はすでに食べているみたいなので、あなたの分だけですが……」
リ「すまない…」
彼女はそういうと、出された料理に目もくれず、一気に口の中に頬張った
すると、次第に顔が赤くなり、息が荒くなっていくという、そんな現象が彼女に起こったんだよ!!
な、なんだ……?風邪か……?それとも、あのキノコ……ヤバイやつだったのか!?
あわ……あわわわわわわわわわっ!!
リ「はぁっ……はぁっ……私に勝った…貴様、あのような卑怯な勝ち方をして……覚悟は出来ているんだろうな?本番はここからだぞ…?」
男性「えぇっ!?や、約束が違うっ!!一撃当てたら私を開放するって……」
リ「あぁ……あの話か……」
そう言いながら、リザードマンの彼女は彼の部屋の向かいのひと部屋の扉を開け、男性客に近づいていく……
リ「確か……一回でも私に攻撃を当てれば貴様の勝ちで、開放してやる…だったか?」
男性「そうですっ!!はっきりと覚えているんですからねっ!?」
リ「……あれは嘘だ」
男性「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
彼女はそういうと、ものすごい勢いで男性客を掴み、部屋に引きずっていった…
そして、ベットの上で着ている物を脱いでいく……
あ……あぁ……勝負って…そういう……
結局こうなるんですか………
デ「ごゆっくりとお楽しみください……そ、それでは…いい夜を……」
今の俺には、彼がどのような夜の戦いをするのかの予想をするぐらいしかできることはないけれど……おそらく彼は負けるんだろうな……
って、そんなことだけがわかるのだった……
今晩もまた……眠れない夜になりそうだぜ
16/01/12 21:26更新 / デメトリオン mk-D
戻る
次へ