読切小説
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闇に飲まれよ!(文字通りの意味で)
「ここが情報屋『ルキペディア』か…」
別の情報屋から受け取った地図と看板を見比べてみる。どうやら間違いないようだ。
「本当にここでおれが求める情報が手に入るのか?」
今までの情報屋では情報を求める理由を言った瞬間叩き出された。今回もダメかもしれない。
「…よし。行くだけ行ってみるか」
おれは意を決して扉を開けた。

「ククク。またこの世の禁忌に触れんとする咎人が迷い込んできたか」
…この店の扉を開けた時のなけなしの勇気が早くも消え去りそうになった。
「あんたがここの店主か?」
おれはカウンターにいる銀髪に紫の目をしたサキュバスだろう魔物に問いかけた。サキュバスだと断定できなかったのは、サキュバスにしては魔力が強すぎるからだ。
「いかにも。我こそがここの主にして、この世の真理の伝承者なり」
…伝承者なのに話がわかりにくいという問題を指摘したいんだが。
「真理を欲するならば贄を捧げよ。真理の扉は贄に応じて開かれるであろう」
要するに情報に見合った情報料を払えってことか。

「…これで精霊がいる場所を教えてほしい。四精霊全部頼む」
おれはそう言ってカウンターに金貨を1枚置いた。
「…精霊が宿りし所は数多ある。人の身で探すのはあまりにも無謀なり。そも精霊と契りを交わすのは容易きことではない。欲深き者の前に顕現するとは到底思えぬ」
店主はそう言っておれを探るような目で見てきた。
「汝は何故精霊を求める?力か?富か?名声か?だとすれば汝はただ金をドブに捨てるような物ぞ」
…やっぱり理由を言わないとダメか。今までの情報屋の反応からして望みは薄いけど言ってみるしかないか。
「違う!おれはただ……精霊とイチャイチャしたいだけだ!!」
おれが言った瞬間空気が死んだ気がした。
「…ククク。フフフフ。アーハッハッ。これは傑作よ。そのような理由で精霊を求める輩と邂逅することがあるとは夢想だにせなんだわ」
笑い過ぎだぞ店主。この反応はやっぱりダメなのか?

「よかろう。我が汝に沙汰を下そうぞ」
店主はカウンターにある金貨を取ると2枚の紙を取り出した。そして1枚の紙に何かを書いた。そして一方の紙を白い封筒に、何も書き足されてない方を黒い封筒に入れた。
「この白き密書を魔界国家「ポローヴェ」のサプリエート・スピリカという学者のもとに届けよ。この黒き密書は非常事態があった時に読むがよい」
店主は封筒をおれに渡した後大きな巻物を取り出した。
「これも持ってゆくがよい。汝を安全な道へと導いてくれようぞ」
広げてみるとポローヴェという国への地図だった。しかも魔物と出くわさないルートまで完璧に網羅されている。
「…ありがとう店主!」
「我は真理の導きと等価交換の原則に従ったまでよ。その真理をどう生かすかは汝次第なり」
何だかやる気が出てきた。店主は多少変わってるけどいい人っぽいな。
「ああ。必ずその人の所にたどり着いて見せるぜ!」
おれは意気込んで『ルキペディア』を出ていった。
「ククク。容易し」
――もしこの時店主の言葉と表情に気付いていればあんなことにはならなかっただろう。

「ここが例の学者の家か…」
地図通りに進んだ結果本当にここに来るまで魔物に出会わなかった。その分道は厳しかったけどな。
「ここで本当に何かわかるのか?」
まあここまでよくしてくれた店主だ。信じてもいいだろう。
「すいません。サプリエート・スピリカさんはいらっしゃいますか?」
おれは家の扉をノックした。
「……私に何かご用ですか?」
出てきたのはメガネをかけたきれいな女の人だった。この人がサプリエート・スピリカさんか?
「『ルキペディア』の店主に紹介されてきました。ここに来れば求める物にちかづけると」
おれの言葉にサプリエートさんは一瞬表情を曇らせた。
「……わかりました。……入って下さい」
サプリエートさんについて行っておれも家に入った。

サプリエートさんの家に入ると応接間に通された。本棚にはおれには全く分からないだろう本がいっぱい並んでいる。
「あ、忘れてました。これをあなたに渡すように言われました」
おれはサプリエートさんに白い封筒を渡した。封筒を開けて手紙を読んでいくうちに
彼女の顔はどんどん赤くなっていった。
「どうしたんですか?」
おれの顔を見るとなぜかサプリエートさんの顔はさらに赤くなった。そして意を結したようにうなずくと席を立っておれのそばに来た。そしておれに無言で体を寄せてきた。

「さ、サプリエートさん?!」
あわてるおれに構わずサプリエートさんは体を密着させてきた。い、一体どうすれば…。
「そ、そうだ。黒い封筒!」
おれはあわてて懐から黒い封筒を取り出した。これに役に立つ情報が書いてあるはずだ!
「なになに、言葉もなく身体を寄せて甘えたら優しく頭を…。ってこれは何の取り扱い説明書だよ!」
おれがそう言うと彼女は顔を赤らめた。同時に何かがおれの背中に触れた。
「うおっ?!」
驚いて振り向くと黒い触手があった。よく見るとサプリエートさんの体と繋がっている。もしかして彼女はダークマターなのか。

「だ、ダメです。おれには精霊とイチャイチャするという野望が」
「私たちがどうしたのー?」
声がする方を見ると夢にまで見たシルフがそこにいた。
「おおっ!男が来てるじゃねーか」
「よかったですね主様。やっと努力が報われて」
「…ぶい」
何とイグニスにウンディーネにノームまでいる。ここはひょっとして天国か?
「……私たちをかわいがってくれますか?」
そう言えばダークマターも精霊の一種だな。なら問題ないか!(この間0.001秒)
「はい!よろこんで!」
それからすぐ激しい6Pに突入した。

サプリエートさんは長い間夫が見つからなかった。そこで魔界のガイドブックに夫を希望していることを書いたという。しかし意外にも読者は限られていて、読んで来てくれる人もいたけど途中で魔物に襲われて来れなかったらしい。そこまで襲われるって実は本を見て来る人がいると見た魔物たちが張ってたんじゃないか?
そこでサプリエートさんは情報屋『ルキペディア』に依頼して、よさそうな人に情報を流してもらえるようにした。そこに精霊とイチャイチャしたいおれと言うカモが来た。つまりおれはまんまと騙されたということだ。
「あんっ。やんっ」
今日もおれは彼女の椅子をやっている。完全にハメられた形になったけど彼女に会えたことには感謝したい。

おわり


12/11/01 18:32更新 / グリンデルバルド

■作者メッセージ
タイトルと店名からわかるでしょうけどあの『カラード』を出してみました。後書きとは違って()がないからわかりにくかったかもしれません。
どんな初夜になったのかは各自で好きに妄想して下さい。

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