反魔物的な魔王のための研究
どうもー。エンジェルのダリエルでーす。やる気ない態度からわかると思うけど人間からは主神とか呼ばれてる童貞クソジジイの眷属やってまーす。まあスピエルよりはマシっしょー。アタシあいつが寝ぼけてる所しか見たことないんだよねー。
「しかし我ら重臣が勢ぞろいとはな」
「まさかあのことについて何かあるのか?」
今アタシがいる国はチップォークウェでーす。名前の通りマジでちっぽけな国で、資源も財政もダメダメなんだってさー。土地がやせてて作物が育たないし、資源も乏しいから仕方ないってイザベラの姐御は言ってたけど、アタシにはよくわかんねーや。反魔物国家なんてどうなってもいいけどさすがに同情するわー。
「ふはははは。待たせたな皆の者」
重臣の人たちが話しているとこの国の王が高笑いを上げながら入ってきましたー。そして威厳を持って議長席に座りましたー。
「…さて、諸君らに集まってもらったのは他でもない」
王は重苦しく口を開いたよー。重臣の人たちも緊張した様子で見守りましたー。一体どんな話をするんでしょうねー。
「周囲の国から魔物の討伐軍出せとか言われてるんだけどどうすればいいと思う?」
王が急に自信なさそうに言うと重臣の人たちはやっぱりかという顔になりましたー。アタシもそんなことだろうとは思ってたんだよねー。
「またですか。この国にそんな余裕がないことくらい知ってるのになんで頼んでくるんでしょうね」
「全くだ。そんなこと言ってくるくらいなら余裕がある自分たちがやればいいのに」
重臣たち愚痴ってるねー。やっぱり周辺国に対して不満がたまってるのかなー?
「しかたないだろう。どうせ周辺国はこの国を都合がいいパシリとでも思ってるのだろうからな」
「向こうも自分たちの国力を消耗させたくないでしょうしね」
かなり自虐入ってるねー。まあこの状況じゃ仕方ないかー。
「…すまんな。余が不甲斐ないばかりに苦労をかけてしまって」
うわー。王かなりへこんじゃってるよー。やっぱり打たれ弱いなーこの人。
「いやいや、陛下はよくやってますって」
「そうですよ。自ら先頭に立って倹約に励むお姿はとてもご立派ですよ」
重臣たち必死にフォローしてるねー。ここらへんがこの王の人望だって言えるかもねー。
「ふははは。そうだな。余の政治が間違っているわけではない」
打たれ弱いくせに復活早いなーこの人。まあそこがいいと思わなくもないっすけどねー。
「でも一体どうしたらよいのだ?この国には魔物討伐に向けられるだけの戦力も兵糧もないぞ」
軍事責任者らしき人が不安そうに言う。
「かと言ってこのまま何もしなかったら『攻めないのはこの国が親魔物側に願ったからだろう』とか言う超理論を展開して攻めて来そうだよな。本当にどうすればいいのやら」
別の重臣が溜息混じりに言った。
「ぶっちゃけもう親魔物領に寝返った方がよくね?」
チャラい感じの重臣が投げやりな口調で言ったよー。こいつ何で重臣やってんのかなー?やっぱり人材少ないからですかー?
「バカかてめー。周りは反魔物領に囲まれてんだぞ。こんなショボい国フルボッコにされたらすぐ滅んじまうだろうが」
ものすごく悪人面した重臣がチャラ男に答えたよー。この国の重臣変なのしかいないねー。
「は?バカとか脳みそ筋肉なやつに言われたくないんですけどー」
「本当のこと言ったからって逆ギレすんな。マジうぜえんだよてめー」
ガン付け合っているねー。会議でケンカするなんて余裕だねー。
「…重臣にショボいって言われた」
あちゃー。また王が落ち込んじゃったよー。相変わらずメンタル面弱すぎるねーこの人。
「いやいや、この国がショボいのは陛下が悪いんじゃないですよ」
「むしろ陛下だからこそこのレベルのショボさで留まってられるんですよ。他の王だったらすでに滅んでますって」
いや、フォローになってねーしー。いくら単純な王でもこれじゃ復活しないんじゃないですかー?
「ふははは。そうだろう。そうだろう。余でなければこんな弱小国すでになくなっておるわ!」
復活した上に自分の国をけなしてるよーこの人。もしかして自分がほめられればそれでいいのかなー?
「それにしてもどうしたらいいんでしょう?動けるだけの国力はないし、かと言って動かないと袋叩きにされてしまいます。まさに八方塞がりですね」
メガネをかけた人が神妙な顔で言ったよー。
「もう諦めて他の国に吸収とかされた方がよくね?」
…このチャラい人本当に重臣なのー?いくらなんでも投げやりすぎるんですけどー。
「ふざけんな!そんなことしたら民が他国のクソ王に虐げられるだろうが!少しは考えて物をいいやがれ」
この悪人面の人意外にいい人なんだよねー。見た目で誤解されることも多いけどさー。
「熱苦しいんですけどー。それだからお前は女にモテないんだよ」
「んだとこらあ!少し女受けがいいからっていい気になりやがって」
こいつら重臣とか大丈夫なのーこの国。まあ大丈夫じゃないからこんな状況なんだろうけどさー。
「フォッフォッフォッ。相変わらずバカばかりじゃのう。ここは大天才であるわしの出番じゃな」
そう言って重臣のおじいさんが立ち上がったよー。このおじいさんは研究するのが仕事で、周りからは教授って呼ばれてるんだよー。
「新しい武器でも作ったんですか?この国に量産するだけの予算はありませんよ?」
メガネの人の言葉を教授は鼻で笑った。
「フン。大天才のわしがそれくらいわからないはずがないじゃろう。もっと画期的で効率的な対処法じゃよ」
何か重要な話をするみたいだね。一応ハインケルの兄貴に連絡をしておいた方がいいかもね。
『よォダリエル。チッポケ国で何かあったのか?』
…ハインケルの兄貴は国名覚える気ないみたいですねー。
『チッポケじゃありませんよー。チップォークウェですってー』
『どォだっていいだろンなこと。それより何だってんだよ?』
ハインケルの兄貴と話をしている間に会話が進んでますよー。
「その対処法とは一体なんですか?」
「フォッフォッフォ。聞いて驚け!…生体兵器じゃよ」
教授がもったいぶった口調で言い放ったよー。
『ハインケルの兄貴、教授が生体兵器を作ったとか言ってるんですけどー』
『へェ。そりゃ面白…やっかいだな。ちょっと視覚と聴覚の情報を回させてもらうゼ』
絶対ハインケルの兄貴面白そうって言おうとしましたよねー。まあいいですけどー。
「生体兵器?一体どんな生物を生み出したんですか?」
メガネの男が教授に説明したよー。
「それは実際に見た方が早いじゃろう。おい、入って来い」
教授がそう呼ぶとかわいい少年が入って来た。もしかしてこの子が生体兵器なのかなー?とても魔物に対抗できるようには見えないんですけどー。
『多分戦闘以外の方法でどォにかするンだろォよ。どっかの教会ではKilling child計画とか言う魔物を燃やして消失させる精子を持つ生体兵器を生み出す研究も行われてたしよ』
さすがハインケルの兄貴ー。よくそんな機密情報まで知ってますねー。
「それが生体兵器ー?とても戦えそうには見えないんっすけどー」
おー、チャラ男が珍しくまともなことを言ってるねー。
「当たり前じゃろう。この生体兵器は戦闘用ではないのじゃからな」
教授は平然として言ったよー。
「はあ?戦闘用じゃないのにどうやって魔物に対抗するって言うんだよ」
悪人面の人がわけがわからないという顔をする。
「まず初めに聞きたいのじゃが、魔物を滅ぼさなければならない一番の理由はなんだと思うかね?」
教授がその場にいる重臣たちに聞いたよー。
「は?そんなの魔物が人々を誘惑して堕落させるからじゃね?」
チャラい男の言葉に教授は呆れたように首を振る。
「それはあくまで主神が言ってるから従ってるだけの建て前じゃろう。ほれ、もっとあるじゃろ。直接的で絶対的な理由がのう」
あー。何となく教授が言いたいことわかったよー。
「魔物からは魔物しか生まれない。このまま魔物の誘惑に負けていく人が増えていけば人類はいずれ滅びてしまうからだと教授はいいたいんですね」
メガネの人の言葉に教授はうなずいたよー。
「その通りじゃ。大天才ではない凡人の諸君らでもこれこそが魔王の侵略計画じゃと言うことがわかるじゃろうよ」
あー。結局教団のいつもの主張に行き着くわけねー。
『こいつ自分で言うほど大天才じゃネェな。もし本当に大天才だったら人間の男がいなくなったら女しかいない魔物も共倒れになる。いくら人間を滅ぼしたいからと言ってそんな方法を取るわけがない。これは魔王にとっても予想外の自体だったのかもしれない。だとすると魔王に対立する主神が何か関係しているのではないか?って言う感じに考えを広げられるだろォよ』
ハインケルの兄貴は呆れ果てた口調で言ったよー。
「そこで大天才のわしは考えたのじゃ。もし魔物から人間が生まれるように魔物の体を変えてしまえば魔物の侵略を阻止できるのではないかとな」
その発言はアタシにいつもの口調をわすれさせるぐらいの衝撃を与えた。
『……は?』
ハインケルの兄貴もあまりの衝撃で一瞬固まってしまったみたいだよー。
「そう思い立ったわしは死んだ魔物の体を解剖して魔王の呪いの分析を始めたのじゃ。そして長い年月をかけて魔王の呪いを解呪する術式を完成さえたのじゃ」
つまり教授は反魔物派でありながら主神の設定を打ち消す力を手にしちゃったわけだねー。でも魔王でさえ消せなかった主神の設定を人間が打ち消すことなんてできるのー?
『不可能とは言い切れネェかもな。我らが魔王サマは一気に全ての魔物の中にある主神の設定を消そォとしてる。だから膨大な魔力を蓄える必要があるし、主神との力の差があまりない今はできネェンだろォよ。それに比べて教授がやったのは1人の魔物の設定を書き換えるわけだから難易度はかなり下がるってわけさ。ま、それでも相当難しいだろォけどよ』
なるほどー。確かにそれならできなくもないかもねー。
「しかしその術式は膨大な魔力を消費する上、凡人に教えるのには時間がかかりすぎた。そこで大天才のわしは術式が掛かった精子を生み出す精巣をもった人間を生み出し、魔物と交わらせることで魔物の体を変化させることを思いついたのだ。その結果完成したのがこの初代『救世主』と言うわけじゃよ」
『救世主』ねー。確かに色んな意味で『救世主』かもー。
「初代?改良型でもあるのですか?」
メガネの人の言葉に教授は首を振ったよー。
「考えてみればわかるじゃろう。なぜわしが『救世主』が完成したと言ったのかをな」
教授の言葉にメガネの人はポカンと口を開けたよー。
「ま、まさかあなたはすでに魔物と交わらせたんですか?!」
メガネの人の言葉に教授はうなずいたよー。
『…そォか。だから魔王サマはいつもより多目に魔力が流れ込んできたってはしゃいでたってわけかよ』
そォ言うハインケルの兄貴はものすごく楽しそうだったよー。
「ああ。群れから離れていたデビルバグを1匹捕まえて交わらせたんじゃよ。繁殖力が高いからにはピッタリじゃったから都合がよかったしの。その結果魔物だけじゃなくちゃんと男の赤ん坊が生まれたのじゃ。その赤ん坊に成長促進呪文をかけて、別のデビルバグを捕まえたのじゃ。その結果また人間の男が生まれて『救世主』の力が遺伝してるのがわかったから便宜上こやつを初代と呼んでるというわけじゃよ」
生まれた子供にまで受け継がれてるんですかー。教授すごいの生み出したねー。
「すごいですね。生まれた魔物も人間を生めるようになってるんですか?」
メガネの人の言葉に教授は首を振った。
「それは他の男と交わらせたことがないからわからんのじゃ。陛下のご許可が頂けるなら囚人とでも交わらせて確かめてもらうのじゃが」
教授の言葉に重臣たちが全員王の方を向いたよー。
「やった方がいいんじゃないっすか?ムダな労力使わなくてすむっしょ」
チャラい男がダルそうに言ったよー。
「そうですよ。民に犠牲を強いらなくていいと思います」
本当にいい人だねー悪人面の人。怖い顔してなきゃもっとモテるなのにもったいないよー。
「これなら我が国も兵力を蓄えられるな。いつも他国にこき使われて兵が減っていたからな」
軍のトップの人が遠い目をしたよー。やっぱり苦労してたんだねーこの人。
「ふふふふ。ノーコストで大量生産できるなんてすごいですね。これを他国に高値で売りつけて親魔物領に送り込ませれば丸儲けですね」
メガネの人は黒い笑みを浮かべてるよー。いつになくイキイキしてるねー。
「どうですかな陛下?重臣たちは皆やる気ですぞ」
教授がそう言うと王は不敵な笑みを浮かべたよー。
「ふははは。いいだろう教授。思う存分実権するがいいわ!」
王の言葉に教授は恭しくお辞儀をしたよー。
「ありがたきお言葉。フォッフォッフォッ。魔物どもの絶望に染まった顔を見るのが楽しみじゃわい」
教授が高笑いをしてる一方で絶望に染まった顔をするはずの魔王軍の頭脳はというとー
『ククク、フフフフ、アーハッハッ!認めてやろォじゃねェか教授。あんたマジ大天才だゼ!』
三段笑いをするくらい喜んでるよー。まあ魔王軍としたら当然の反応だけどねー。
『それにしてもまさか教授があんな親魔物的な研究をしてるなんて思ってもみませんでしたよー』
『それは少し間違ってンぞダリエル。確かに結果的に魔王サマを助けてはいるがあくまでも反魔物的な発想だ。親魔物派ならこンな研究考えつかネェし、考えついてもやらネェだろォからな』
ハインケルの兄貴はものすごく楽しそうな口調で答えた。
『何で親魔物派なら考えついてもやらないんですかー?』
『意味がネェからだよ。親魔物派は魔王サマがいつか男も産めるようにしてくれるって知ってるからな。ンな研究した所で金のムダだと思うだろォよ。だが教授は反魔物派だから男が生まれネェのは魔王サマの侵略計画だと思ってる。だから侵略を阻止するためにこンな研究をするのはそこまで不自然なことじゃネェよ。…実際にできるかどうかは別にしてな』
ふーん。つまり教授の研究は親魔物派の盲点をついた魔王への好アシストだったわけですねー。
『そんじゃオレは魔王サマに報告してくるゼ。『救世主』関係で何かあったら連絡してくれ』
『了解しましたー』
アタシがそう言うとハインケルの兄貴との通信は途絶えましたー。
「天使様。この研究を行ってしまってよろしいですかな?」
王がアタシに最終確認を促してきたよー。そういえばアタシ主神の所の天使だったねー。
【ダメじゃ!絶対にダメじゃ!そんな研究認められんわい!!】
うわ。何か気持ち悪い思念が飛んできたよー。いきなり頭の中に入ってこないで欲しいですー。
【命令じゃ。今すぐ中止するよう言うのじゃ。わしの天使なら何をやるべきかわかるじゃろう!】
はい。もちろんわかってますってー。アタシがやるべきことはー
「すばらしい計画です。我らが父もお喜びになるでしょう。実用化した暁には私が責任を持って周辺国の同志に伝えておきましょう。必要があれば遠方との取引ができるように取り計らいます」
全力で無視に決まってるじゃないですかー。
【そ、そんなあああ】ブツッ。
あ、あまりにも耳障りだから切っちゃいましたー。できれば二度とかけてきてもらいたくないですー。
「ふははは。覚悟しろ魔王軍!小国でも魔物の侵略を阻止できることを思い知らせてやるわ!」
そんな王の高笑いが会議室に響き渡りましたー。
おわり
「しかし我ら重臣が勢ぞろいとはな」
「まさかあのことについて何かあるのか?」
今アタシがいる国はチップォークウェでーす。名前の通りマジでちっぽけな国で、資源も財政もダメダメなんだってさー。土地がやせてて作物が育たないし、資源も乏しいから仕方ないってイザベラの姐御は言ってたけど、アタシにはよくわかんねーや。反魔物国家なんてどうなってもいいけどさすがに同情するわー。
「ふはははは。待たせたな皆の者」
重臣の人たちが話しているとこの国の王が高笑いを上げながら入ってきましたー。そして威厳を持って議長席に座りましたー。
「…さて、諸君らに集まってもらったのは他でもない」
王は重苦しく口を開いたよー。重臣の人たちも緊張した様子で見守りましたー。一体どんな話をするんでしょうねー。
「周囲の国から魔物の討伐軍出せとか言われてるんだけどどうすればいいと思う?」
王が急に自信なさそうに言うと重臣の人たちはやっぱりかという顔になりましたー。アタシもそんなことだろうとは思ってたんだよねー。
「またですか。この国にそんな余裕がないことくらい知ってるのになんで頼んでくるんでしょうね」
「全くだ。そんなこと言ってくるくらいなら余裕がある自分たちがやればいいのに」
重臣たち愚痴ってるねー。やっぱり周辺国に対して不満がたまってるのかなー?
「しかたないだろう。どうせ周辺国はこの国を都合がいいパシリとでも思ってるのだろうからな」
「向こうも自分たちの国力を消耗させたくないでしょうしね」
かなり自虐入ってるねー。まあこの状況じゃ仕方ないかー。
「…すまんな。余が不甲斐ないばかりに苦労をかけてしまって」
うわー。王かなりへこんじゃってるよー。やっぱり打たれ弱いなーこの人。
「いやいや、陛下はよくやってますって」
「そうですよ。自ら先頭に立って倹約に励むお姿はとてもご立派ですよ」
重臣たち必死にフォローしてるねー。ここらへんがこの王の人望だって言えるかもねー。
「ふははは。そうだな。余の政治が間違っているわけではない」
打たれ弱いくせに復活早いなーこの人。まあそこがいいと思わなくもないっすけどねー。
「でも一体どうしたらよいのだ?この国には魔物討伐に向けられるだけの戦力も兵糧もないぞ」
軍事責任者らしき人が不安そうに言う。
「かと言ってこのまま何もしなかったら『攻めないのはこの国が親魔物側に願ったからだろう』とか言う超理論を展開して攻めて来そうだよな。本当にどうすればいいのやら」
別の重臣が溜息混じりに言った。
「ぶっちゃけもう親魔物領に寝返った方がよくね?」
チャラい感じの重臣が投げやりな口調で言ったよー。こいつ何で重臣やってんのかなー?やっぱり人材少ないからですかー?
「バカかてめー。周りは反魔物領に囲まれてんだぞ。こんなショボい国フルボッコにされたらすぐ滅んじまうだろうが」
ものすごく悪人面した重臣がチャラ男に答えたよー。この国の重臣変なのしかいないねー。
「は?バカとか脳みそ筋肉なやつに言われたくないんですけどー」
「本当のこと言ったからって逆ギレすんな。マジうぜえんだよてめー」
ガン付け合っているねー。会議でケンカするなんて余裕だねー。
「…重臣にショボいって言われた」
あちゃー。また王が落ち込んじゃったよー。相変わらずメンタル面弱すぎるねーこの人。
「いやいや、この国がショボいのは陛下が悪いんじゃないですよ」
「むしろ陛下だからこそこのレベルのショボさで留まってられるんですよ。他の王だったらすでに滅んでますって」
いや、フォローになってねーしー。いくら単純な王でもこれじゃ復活しないんじゃないですかー?
「ふははは。そうだろう。そうだろう。余でなければこんな弱小国すでになくなっておるわ!」
復活した上に自分の国をけなしてるよーこの人。もしかして自分がほめられればそれでいいのかなー?
「それにしてもどうしたらいいんでしょう?動けるだけの国力はないし、かと言って動かないと袋叩きにされてしまいます。まさに八方塞がりですね」
メガネをかけた人が神妙な顔で言ったよー。
「もう諦めて他の国に吸収とかされた方がよくね?」
…このチャラい人本当に重臣なのー?いくらなんでも投げやりすぎるんですけどー。
「ふざけんな!そんなことしたら民が他国のクソ王に虐げられるだろうが!少しは考えて物をいいやがれ」
この悪人面の人意外にいい人なんだよねー。見た目で誤解されることも多いけどさー。
「熱苦しいんですけどー。それだからお前は女にモテないんだよ」
「んだとこらあ!少し女受けがいいからっていい気になりやがって」
こいつら重臣とか大丈夫なのーこの国。まあ大丈夫じゃないからこんな状況なんだろうけどさー。
「フォッフォッフォッ。相変わらずバカばかりじゃのう。ここは大天才であるわしの出番じゃな」
そう言って重臣のおじいさんが立ち上がったよー。このおじいさんは研究するのが仕事で、周りからは教授って呼ばれてるんだよー。
「新しい武器でも作ったんですか?この国に量産するだけの予算はありませんよ?」
メガネの人の言葉を教授は鼻で笑った。
「フン。大天才のわしがそれくらいわからないはずがないじゃろう。もっと画期的で効率的な対処法じゃよ」
何か重要な話をするみたいだね。一応ハインケルの兄貴に連絡をしておいた方がいいかもね。
『よォダリエル。チッポケ国で何かあったのか?』
…ハインケルの兄貴は国名覚える気ないみたいですねー。
『チッポケじゃありませんよー。チップォークウェですってー』
『どォだっていいだろンなこと。それより何だってんだよ?』
ハインケルの兄貴と話をしている間に会話が進んでますよー。
「その対処法とは一体なんですか?」
「フォッフォッフォ。聞いて驚け!…生体兵器じゃよ」
教授がもったいぶった口調で言い放ったよー。
『ハインケルの兄貴、教授が生体兵器を作ったとか言ってるんですけどー』
『へェ。そりゃ面白…やっかいだな。ちょっと視覚と聴覚の情報を回させてもらうゼ』
絶対ハインケルの兄貴面白そうって言おうとしましたよねー。まあいいですけどー。
「生体兵器?一体どんな生物を生み出したんですか?」
メガネの男が教授に説明したよー。
「それは実際に見た方が早いじゃろう。おい、入って来い」
教授がそう呼ぶとかわいい少年が入って来た。もしかしてこの子が生体兵器なのかなー?とても魔物に対抗できるようには見えないんですけどー。
『多分戦闘以外の方法でどォにかするンだろォよ。どっかの教会ではKilling child計画とか言う魔物を燃やして消失させる精子を持つ生体兵器を生み出す研究も行われてたしよ』
さすがハインケルの兄貴ー。よくそんな機密情報まで知ってますねー。
「それが生体兵器ー?とても戦えそうには見えないんっすけどー」
おー、チャラ男が珍しくまともなことを言ってるねー。
「当たり前じゃろう。この生体兵器は戦闘用ではないのじゃからな」
教授は平然として言ったよー。
「はあ?戦闘用じゃないのにどうやって魔物に対抗するって言うんだよ」
悪人面の人がわけがわからないという顔をする。
「まず初めに聞きたいのじゃが、魔物を滅ぼさなければならない一番の理由はなんだと思うかね?」
教授がその場にいる重臣たちに聞いたよー。
「は?そんなの魔物が人々を誘惑して堕落させるからじゃね?」
チャラい男の言葉に教授は呆れたように首を振る。
「それはあくまで主神が言ってるから従ってるだけの建て前じゃろう。ほれ、もっとあるじゃろ。直接的で絶対的な理由がのう」
あー。何となく教授が言いたいことわかったよー。
「魔物からは魔物しか生まれない。このまま魔物の誘惑に負けていく人が増えていけば人類はいずれ滅びてしまうからだと教授はいいたいんですね」
メガネの人の言葉に教授はうなずいたよー。
「その通りじゃ。大天才ではない凡人の諸君らでもこれこそが魔王の侵略計画じゃと言うことがわかるじゃろうよ」
あー。結局教団のいつもの主張に行き着くわけねー。
『こいつ自分で言うほど大天才じゃネェな。もし本当に大天才だったら人間の男がいなくなったら女しかいない魔物も共倒れになる。いくら人間を滅ぼしたいからと言ってそんな方法を取るわけがない。これは魔王にとっても予想外の自体だったのかもしれない。だとすると魔王に対立する主神が何か関係しているのではないか?って言う感じに考えを広げられるだろォよ』
ハインケルの兄貴は呆れ果てた口調で言ったよー。
「そこで大天才のわしは考えたのじゃ。もし魔物から人間が生まれるように魔物の体を変えてしまえば魔物の侵略を阻止できるのではないかとな」
その発言はアタシにいつもの口調をわすれさせるぐらいの衝撃を与えた。
『……は?』
ハインケルの兄貴もあまりの衝撃で一瞬固まってしまったみたいだよー。
「そう思い立ったわしは死んだ魔物の体を解剖して魔王の呪いの分析を始めたのじゃ。そして長い年月をかけて魔王の呪いを解呪する術式を完成さえたのじゃ」
つまり教授は反魔物派でありながら主神の設定を打ち消す力を手にしちゃったわけだねー。でも魔王でさえ消せなかった主神の設定を人間が打ち消すことなんてできるのー?
『不可能とは言い切れネェかもな。我らが魔王サマは一気に全ての魔物の中にある主神の設定を消そォとしてる。だから膨大な魔力を蓄える必要があるし、主神との力の差があまりない今はできネェンだろォよ。それに比べて教授がやったのは1人の魔物の設定を書き換えるわけだから難易度はかなり下がるってわけさ。ま、それでも相当難しいだろォけどよ』
なるほどー。確かにそれならできなくもないかもねー。
「しかしその術式は膨大な魔力を消費する上、凡人に教えるのには時間がかかりすぎた。そこで大天才のわしは術式が掛かった精子を生み出す精巣をもった人間を生み出し、魔物と交わらせることで魔物の体を変化させることを思いついたのだ。その結果完成したのがこの初代『救世主』と言うわけじゃよ」
『救世主』ねー。確かに色んな意味で『救世主』かもー。
「初代?改良型でもあるのですか?」
メガネの人の言葉に教授は首を振ったよー。
「考えてみればわかるじゃろう。なぜわしが『救世主』が完成したと言ったのかをな」
教授の言葉にメガネの人はポカンと口を開けたよー。
「ま、まさかあなたはすでに魔物と交わらせたんですか?!」
メガネの人の言葉に教授はうなずいたよー。
『…そォか。だから魔王サマはいつもより多目に魔力が流れ込んできたってはしゃいでたってわけかよ』
そォ言うハインケルの兄貴はものすごく楽しそうだったよー。
「ああ。群れから離れていたデビルバグを1匹捕まえて交わらせたんじゃよ。繁殖力が高いからにはピッタリじゃったから都合がよかったしの。その結果魔物だけじゃなくちゃんと男の赤ん坊が生まれたのじゃ。その赤ん坊に成長促進呪文をかけて、別のデビルバグを捕まえたのじゃ。その結果また人間の男が生まれて『救世主』の力が遺伝してるのがわかったから便宜上こやつを初代と呼んでるというわけじゃよ」
生まれた子供にまで受け継がれてるんですかー。教授すごいの生み出したねー。
「すごいですね。生まれた魔物も人間を生めるようになってるんですか?」
メガネの人の言葉に教授は首を振った。
「それは他の男と交わらせたことがないからわからんのじゃ。陛下のご許可が頂けるなら囚人とでも交わらせて確かめてもらうのじゃが」
教授の言葉に重臣たちが全員王の方を向いたよー。
「やった方がいいんじゃないっすか?ムダな労力使わなくてすむっしょ」
チャラい男がダルそうに言ったよー。
「そうですよ。民に犠牲を強いらなくていいと思います」
本当にいい人だねー悪人面の人。怖い顔してなきゃもっとモテるなのにもったいないよー。
「これなら我が国も兵力を蓄えられるな。いつも他国にこき使われて兵が減っていたからな」
軍のトップの人が遠い目をしたよー。やっぱり苦労してたんだねーこの人。
「ふふふふ。ノーコストで大量生産できるなんてすごいですね。これを他国に高値で売りつけて親魔物領に送り込ませれば丸儲けですね」
メガネの人は黒い笑みを浮かべてるよー。いつになくイキイキしてるねー。
「どうですかな陛下?重臣たちは皆やる気ですぞ」
教授がそう言うと王は不敵な笑みを浮かべたよー。
「ふははは。いいだろう教授。思う存分実権するがいいわ!」
王の言葉に教授は恭しくお辞儀をしたよー。
「ありがたきお言葉。フォッフォッフォッ。魔物どもの絶望に染まった顔を見るのが楽しみじゃわい」
教授が高笑いをしてる一方で絶望に染まった顔をするはずの魔王軍の頭脳はというとー
『ククク、フフフフ、アーハッハッ!認めてやろォじゃねェか教授。あんたマジ大天才だゼ!』
三段笑いをするくらい喜んでるよー。まあ魔王軍としたら当然の反応だけどねー。
『それにしてもまさか教授があんな親魔物的な研究をしてるなんて思ってもみませんでしたよー』
『それは少し間違ってンぞダリエル。確かに結果的に魔王サマを助けてはいるがあくまでも反魔物的な発想だ。親魔物派ならこンな研究考えつかネェし、考えついてもやらネェだろォからな』
ハインケルの兄貴はものすごく楽しそうな口調で答えた。
『何で親魔物派なら考えついてもやらないんですかー?』
『意味がネェからだよ。親魔物派は魔王サマがいつか男も産めるようにしてくれるって知ってるからな。ンな研究した所で金のムダだと思うだろォよ。だが教授は反魔物派だから男が生まれネェのは魔王サマの侵略計画だと思ってる。だから侵略を阻止するためにこンな研究をするのはそこまで不自然なことじゃネェよ。…実際にできるかどうかは別にしてな』
ふーん。つまり教授の研究は親魔物派の盲点をついた魔王への好アシストだったわけですねー。
『そんじゃオレは魔王サマに報告してくるゼ。『救世主』関係で何かあったら連絡してくれ』
『了解しましたー』
アタシがそう言うとハインケルの兄貴との通信は途絶えましたー。
「天使様。この研究を行ってしまってよろしいですかな?」
王がアタシに最終確認を促してきたよー。そういえばアタシ主神の所の天使だったねー。
【ダメじゃ!絶対にダメじゃ!そんな研究認められんわい!!】
うわ。何か気持ち悪い思念が飛んできたよー。いきなり頭の中に入ってこないで欲しいですー。
【命令じゃ。今すぐ中止するよう言うのじゃ。わしの天使なら何をやるべきかわかるじゃろう!】
はい。もちろんわかってますってー。アタシがやるべきことはー
「すばらしい計画です。我らが父もお喜びになるでしょう。実用化した暁には私が責任を持って周辺国の同志に伝えておきましょう。必要があれば遠方との取引ができるように取り計らいます」
全力で無視に決まってるじゃないですかー。
【そ、そんなあああ】ブツッ。
あ、あまりにも耳障りだから切っちゃいましたー。できれば二度とかけてきてもらいたくないですー。
「ふははは。覚悟しろ魔王軍!小国でも魔物の侵略を阻止できることを思い知らせてやるわ!」
そんな王の高笑いが会議室に響き渡りましたー。
おわり
11/07/18 15:55更新 / グリンデルバルド