魔王軍のクリスマス
「メリークリスマス!今日は存分に騒ごうゼ!」
オレが宣言すると部下たちが歓声を上げた。パーティーの始まりだ。
「今年も無事迎えられてよかったねー」
「そうですね。色々大変でしたから」
クリスとデビーが料理を皿にとりながら言った。
「本当にそうよね。やっぱり指揮官がいいからなんじゃない?」
ベルがチキンを取りながらそんなことを言い出した。
「ほめても何も出ネェぞ。それに実際オレの作戦が成功してるのはお前らの能力があるからだよ」
オレの言葉にベルはクスッと笑った。
「あたしたちもあんたの策があるから能力を最大限発揮できるのよ。どっかの無能将軍じゃこうはいかないわ」
そう手放しでほめられると照れくせェな。なんとかごまかせネェもんかネェ。
「…そのどっかの無能将軍とは私のことかね?」
突然部屋に招かれざる客の声がした。声がした方を見ると思った通り小太りの男がいた。こいつはグッチ=ムッター。一応将軍だ。親魔物領の名家の出身で、金がいっぱい回ってくるからお飾りでこんな高ェ地位にいるわけだ。本人は全く気付かネェで威張りくさってるがな。
「はァ?被害妄想激しすぎじゃないんですかァ。ご自分が無能だと思ってるからそう感じるんじゃないですかねェ聡明なる将軍閣下殿」
オレの言葉に無能将軍は顔を赤くした。
「ほう。ではこんなパーティーを開ける貴様たちはよっぽどヒマなのかね」
「我々は今日のために仕事を終わらせてますからねェ。仕事を溜め込んでるのに部下に押し付けてこんな所に来てる将軍閣下殿と同じにしないでいただけると幸いなんですけどォ」
オレの言葉に無能将軍の顔はさらに赤くなった。
「…そもそもクリスマスというのは教団の教祖の誕生日を祝ってるものじゃなかったのかね?そんなものを祝うとは反逆の意思があるということか?」
「わかってませんねェ。教団にとって神聖な日だからこそ聖夜を性夜に変えるくらいの勢いでハメを外して主神を皮肉ってるんじゃないですかァ。現に陛下も旦那様と率先して子作りに励んでるんですよォ。そんなことにも思い至らないとはやっぱり将軍閣下殿の思考回路はオレの理解の範疇を逸脱してるもののようですねェ」
オレの言葉に無能将軍は血管が切れそうなほどお怒った顔をした。
「貴様」
「…いつまで油売ってンだよ無能が。お母様に仕事さぼってるって報告されてェのかよ」
今オレと同じよォな口調で言ったのは魔王第十女のセーラだ。オレが教育係として戦術や剣術とかを教えてたら口調が移っちまったみてェだ。可愛い妹みてェな存在だが順当に行けば長女のメリル姫が王位を押し付けられるンだろォさ。セーラも含めて魔王の娘たちは王位よりも自分が好きなものに専念したいって気持ちが強いからよォ。
「ですが殿下」
「黙れつってンだよ無能が。部下に仕事を押し付けて責任も取らねェくせに口ごたえすンな」
セーラの言葉に無能将軍はオレたちを忌々しそうに見ながら去っていった。
「あンがとよセーラ。おかげで助かったゼ」
オレが頭を撫でるとセーラは気持ち良さそうに目を細めた。
「本当ウザいですよねあの無能。暗殺してきましょうか?」
「……」(コクコク)
そう言ったのはカラステングのエリカ=ハルトマンと、オレの護衛のクロコだ。エリカは法術を使ったヒットアンドアウェイ戦法が得意だ。クロコは自分を認識できる対象を選べる能力がある。あの無能は当然認識ができる対象に入ってるわけがネェ。
「…ご命令とあらばいつでもやります」
右手をライフルに変形させながらそう言ったのはシモーヌ=ヘイへ。スナイパータイプのゴーレムで狙った獲物は確実に仕留めることで有名だ。
「それより部屋を外から破壊した方が早いでしょう」
「キャノン砲の準備が整えばすぐにいけますぞ」
そんなことを言ってきたのはフォーリ=ルーデルとドラゴンのスツーカのコンビだ。フォーリは爆撃呪文が得意で探査能力が優れている。スツーカは飛行速度は遅ェがブレスの威力はドラゴンの中でも最強の部類に入る。こいつがいっているキャノン砲は翼に外付けするタイプのもので、フォーリの爆撃呪文を砲弾として圧縮して発射するというとんでもネェ武器だ。その破壊力はすさまじく、城壁をぶち壊したり教団の船団を殲滅したりしてやがる。魔王軍の中で一番教団や反魔物領に経済的打撃を与えてンのはこいつらだろォな。
「あいつからはまだ金が絞りとれる。今葬ったら間違いなくフラン姫から小言を言われるだろォさ」
フラン姫っていうのは魔王第六女で魔王軍の財務関係を取り仕切っている。特殊部隊の予算の交渉や必要経費の相談で顔を合わせることが多かったりするゼ。今の所公私ともに良好な関係を築けてるって言えるだろォな。
「まあ今日はハメを外しましょう。今ごろ陛下たちも熱い夜を過ごしてるでしょうしね」
ベルは話す合間に食べながら答えた。
「あの2人はメリークリスマスと言うよりはメリークリトリスって感じだろォな。こりゃまたセーラの妹が増えるかもしれネェぜ」
オレも適当に返しながら目の前にある料理を食べた。
「父上と母上なら十分あり得ることだな」
「ボクも姉さんと同じ意見だよ」
そう言って来たのは魔王第二女のライラ姫と魔王第十一女のシギュン姫だ。ライラ姫は魔王の娘たちの中で最強の武力を誇り、実力で元帥に上り詰めるほど軍事に精通している。シギュン姫はよくロキの所に入り浸って教えを受けている。ロキに習っているだけあって暗器と罠の扱いがうまく、スピードと瞬間の判断力には目を見張るものがある。局地戦だけならセーラよりもすげェかもしれネェな。
「よォライラ姫、シギュン姫。あんたらも混ざるかい?」
なんで無能には敬語で魔王の娘には普通の口調なのかって?オレは基本敬語は遠まわしにバカにする時にしか使わネェ主義だ。オレが敬語を使う時は相手を心の中で相当見下してると思った方がいい。当然魔王陛下にはいつもの口調で話してるゼ。
「ではお言葉に甘えさせてもらおう。ちょうど仕事も終わったところだしな」
「人が多い方が楽しいもんね」
ライラ姫とシギュン姫も輪の中に入っていった。
「あたしたちも今日ははしゃぎましょうか」
「そォだな。いつも働いてる分息抜きさせてもらおうぜ」
オレとベルはそんなことをいいながらバカ騒ぎの中に入って行った。
おわり
オレが宣言すると部下たちが歓声を上げた。パーティーの始まりだ。
「今年も無事迎えられてよかったねー」
「そうですね。色々大変でしたから」
クリスとデビーが料理を皿にとりながら言った。
「本当にそうよね。やっぱり指揮官がいいからなんじゃない?」
ベルがチキンを取りながらそんなことを言い出した。
「ほめても何も出ネェぞ。それに実際オレの作戦が成功してるのはお前らの能力があるからだよ」
オレの言葉にベルはクスッと笑った。
「あたしたちもあんたの策があるから能力を最大限発揮できるのよ。どっかの無能将軍じゃこうはいかないわ」
そう手放しでほめられると照れくせェな。なんとかごまかせネェもんかネェ。
「…そのどっかの無能将軍とは私のことかね?」
突然部屋に招かれざる客の声がした。声がした方を見ると思った通り小太りの男がいた。こいつはグッチ=ムッター。一応将軍だ。親魔物領の名家の出身で、金がいっぱい回ってくるからお飾りでこんな高ェ地位にいるわけだ。本人は全く気付かネェで威張りくさってるがな。
「はァ?被害妄想激しすぎじゃないんですかァ。ご自分が無能だと思ってるからそう感じるんじゃないですかねェ聡明なる将軍閣下殿」
オレの言葉に無能将軍は顔を赤くした。
「ほう。ではこんなパーティーを開ける貴様たちはよっぽどヒマなのかね」
「我々は今日のために仕事を終わらせてますからねェ。仕事を溜め込んでるのに部下に押し付けてこんな所に来てる将軍閣下殿と同じにしないでいただけると幸いなんですけどォ」
オレの言葉に無能将軍の顔はさらに赤くなった。
「…そもそもクリスマスというのは教団の教祖の誕生日を祝ってるものじゃなかったのかね?そんなものを祝うとは反逆の意思があるということか?」
「わかってませんねェ。教団にとって神聖な日だからこそ聖夜を性夜に変えるくらいの勢いでハメを外して主神を皮肉ってるんじゃないですかァ。現に陛下も旦那様と率先して子作りに励んでるんですよォ。そんなことにも思い至らないとはやっぱり将軍閣下殿の思考回路はオレの理解の範疇を逸脱してるもののようですねェ」
オレの言葉に無能将軍は血管が切れそうなほどお怒った顔をした。
「貴様」
「…いつまで油売ってンだよ無能が。お母様に仕事さぼってるって報告されてェのかよ」
今オレと同じよォな口調で言ったのは魔王第十女のセーラだ。オレが教育係として戦術や剣術とかを教えてたら口調が移っちまったみてェだ。可愛い妹みてェな存在だが順当に行けば長女のメリル姫が王位を押し付けられるンだろォさ。セーラも含めて魔王の娘たちは王位よりも自分が好きなものに専念したいって気持ちが強いからよォ。
「ですが殿下」
「黙れつってンだよ無能が。部下に仕事を押し付けて責任も取らねェくせに口ごたえすンな」
セーラの言葉に無能将軍はオレたちを忌々しそうに見ながら去っていった。
「あンがとよセーラ。おかげで助かったゼ」
オレが頭を撫でるとセーラは気持ち良さそうに目を細めた。
「本当ウザいですよねあの無能。暗殺してきましょうか?」
「……」(コクコク)
そう言ったのはカラステングのエリカ=ハルトマンと、オレの護衛のクロコだ。エリカは法術を使ったヒットアンドアウェイ戦法が得意だ。クロコは自分を認識できる対象を選べる能力がある。あの無能は当然認識ができる対象に入ってるわけがネェ。
「…ご命令とあらばいつでもやります」
右手をライフルに変形させながらそう言ったのはシモーヌ=ヘイへ。スナイパータイプのゴーレムで狙った獲物は確実に仕留めることで有名だ。
「それより部屋を外から破壊した方が早いでしょう」
「キャノン砲の準備が整えばすぐにいけますぞ」
そんなことを言ってきたのはフォーリ=ルーデルとドラゴンのスツーカのコンビだ。フォーリは爆撃呪文が得意で探査能力が優れている。スツーカは飛行速度は遅ェがブレスの威力はドラゴンの中でも最強の部類に入る。こいつがいっているキャノン砲は翼に外付けするタイプのもので、フォーリの爆撃呪文を砲弾として圧縮して発射するというとんでもネェ武器だ。その破壊力はすさまじく、城壁をぶち壊したり教団の船団を殲滅したりしてやがる。魔王軍の中で一番教団や反魔物領に経済的打撃を与えてンのはこいつらだろォな。
「あいつからはまだ金が絞りとれる。今葬ったら間違いなくフラン姫から小言を言われるだろォさ」
フラン姫っていうのは魔王第六女で魔王軍の財務関係を取り仕切っている。特殊部隊の予算の交渉や必要経費の相談で顔を合わせることが多かったりするゼ。今の所公私ともに良好な関係を築けてるって言えるだろォな。
「まあ今日はハメを外しましょう。今ごろ陛下たちも熱い夜を過ごしてるでしょうしね」
ベルは話す合間に食べながら答えた。
「あの2人はメリークリスマスと言うよりはメリークリトリスって感じだろォな。こりゃまたセーラの妹が増えるかもしれネェぜ」
オレも適当に返しながら目の前にある料理を食べた。
「父上と母上なら十分あり得ることだな」
「ボクも姉さんと同じ意見だよ」
そう言って来たのは魔王第二女のライラ姫と魔王第十一女のシギュン姫だ。ライラ姫は魔王の娘たちの中で最強の武力を誇り、実力で元帥に上り詰めるほど軍事に精通している。シギュン姫はよくロキの所に入り浸って教えを受けている。ロキに習っているだけあって暗器と罠の扱いがうまく、スピードと瞬間の判断力には目を見張るものがある。局地戦だけならセーラよりもすげェかもしれネェな。
「よォライラ姫、シギュン姫。あんたらも混ざるかい?」
なんで無能には敬語で魔王の娘には普通の口調なのかって?オレは基本敬語は遠まわしにバカにする時にしか使わネェ主義だ。オレが敬語を使う時は相手を心の中で相当見下してると思った方がいい。当然魔王陛下にはいつもの口調で話してるゼ。
「ではお言葉に甘えさせてもらおう。ちょうど仕事も終わったところだしな」
「人が多い方が楽しいもんね」
ライラ姫とシギュン姫も輪の中に入っていった。
「あたしたちも今日ははしゃぎましょうか」
「そォだな。いつも働いてる分息抜きさせてもらおうぜ」
オレとベルはそんなことをいいながらバカ騒ぎの中に入って行った。
おわり
12/01/25 22:20更新 / グリンデルバルド