相談
おれたちは住所を調べてからノルレがいる宿屋にやってきた。
「いらっしゃいませ衛兵さん。お楽しみしに来たんですか?」
明るい印象の宿屋の娘さんが話しかけてきた。ここで泊るのか聞かないのは衛兵には寮があるから泊ることはないとわかっているからで、娘さんの思考があれなわけではないと信じたい。
「いや、ノルレに会いに来たんだが」
「ああ、ロゼちゃんのことで来たんですか。案内するからついてきてください」
娘さんはそう言って階段を登った。
「なんでロゼちゃんのことだってわかったんでしょう?」
チャーリーが不思議そうな顔をする。
「…ソルとルナが騒いだんじゃないか?」
「ああ、なるほど」
チャーリーが納得したような顔をする。こいつは基本的に考えるのが苦手だからな。
「ノルレ先生、お客さんが来ましたよー」
宿屋の娘さんがそう言うとドアが開いた。
「あ、隊長さんとダメ副長だ〜」
「なんで隊長さんとダメ副長がここにいるの〜?」
チャーリーはどうやらダメ副長で定着したようだ。ダメなところばかり見せてたから仕方ないかもな。
「ああ、あんたらか。その様子だとロゼが目覚めたみたいだな」
ノルレが資料から目を離して言った。
「「ロゼ姉起きたの?!」」
ソルとルナがものすごい勢いで聞いてきた。
「うん。大丈夫そうだったよ」
チャーリーの言葉にソルとルナはほっとしたみたいだ。
「パパ!ロゼ姉のお見舞い行きたい!」
「ねえいいでしょ。ね、ね?」
ソルとルナの言葉にノルレは渋い顔をした。
「今子供だけで出歩くのは危険すぎる。どこにペド野郎が潜んでるかわからないぞ」
子供の前でペド野郎とか言っていいのか?
「「だったらパパがついてきてよ〜」」
ノルレは意味ありげにおれたちの方を見た。
「パパもそうしたいんだけど隊長とダメ副長と話さないといけないことがあるみたいだからなー」
「ノルレ先生にまでダメ副長って言われた?!」
チャーリーはショックを受けたようだ。それに追い討ちをかけるようにソルとルナが鋭い目を向ける。おれが魔力に敏感だったら多分すごいプレッシャーを感じてるんだろうな。
「だったら私が行きます〜」
なんだか間延びした声がベッドから聞こえた。見るとエキドナの女性がいた。多分ソルとルナのお母さんなんだろう。
「…動いて大丈夫なのかよナギニ」
ノルレが心配そうに聞いた。
「心配しなくても少しくらいの距離なら大丈夫ですよ〜。それに行く所病院ですし〜」
そう言うナギニさんのお腹は大きくふくれていた。もしかしてそういうことなのか?
「大丈夫だよ。私たちがママをちゃんと見てあげるもん」
「わたしたちもうお姉ちゃんだもん」
ソルとルナはそう言って胸を張った。
「わかった。ママを頼んだよ」
「「了解であります!」」
ソルとルナはそう言って敬礼した。
「ほら、行きますよ〜」
「「は〜い」」
3人は手を繋いで部屋を出て行った。
「それで、ロゼに会ってどう思った?」
「普通にいい子でしたよ。あれぞまさにロリの鑑でした!」
チャーリーが興奮して言った。
「隊長さんは?」
ノルレはチャーリーを完全にスルーして聞いてきた。
「…おれには何かそういう風に演じてるように見えた」
おれがそう言うとノルレは感心したような顔をした。
「へえ。ロゼの演技を見破るとはなかなかやるな」
やっぱりそうだったのか。でもなんで演技なんかしてるんだ?
「ロゼは絵を売って生活してるからな。普段から客が寄ってくるようにキャラ作りをしてるらしい」
なるほど。商売のために客に好かれるようにしてるわけか。
「じゃあなんでノルレはロゼの本性を知ってるんだ?」
「信用できる相手の前では素を出すことにしてるらしいぞ。後たまに切れて演技を忘れることがあるみたいだ」
つまりおれたちはまだ信用されてないってことか。まあ初対面からいきなり信じてもらえるなんて思ってないがな。
「…じゃあロゼちゃんはあの時ウソをついてたってことですか?」
チャーリーが軽くショックを受けたという顔で聞いた。そんなことでいちいち落ち込んでててどうする。
「ああ。可能性は高いな」
「それだったらロゼちゃんがアリスだから何も覚えてないって言うのもウソなんでしょうか?」
チャーリーの言葉に目を閉じて考え込んだ。
「…時と場合によるな。ダメ副長はなんて質問したんだ?」
「えーと、確か『何があったか覚えてる?』って聞いたような気がします」
ノルレはおれの方に目を向けた。
「おれもそう記憶している」
ノルレは重苦しく息を吐いた。
「…ロゼにしては詰めが甘いな。それだけ動揺してたってことか」
どうやらノルレは何か気付いたようだ。
「つまりロゼちゃんは覚えてるってことですか?」
「ああ。間違いなくな」
ノルレは複雑な顔をした。学者として新たな発見をできた喜びと、ロゼの精神的苦痛を心配する気持ちが入り混じってるんだろう。
「なんでそんなことがわかるんですか?」
「ロゼの答えが明らかにムジュンしてるからだ」
ムジュン?アリスだから覚えてないって答えに何かおかしいことでもあるのか?
「質問と合わせて考えてみろよ。アリスがどんな魔物か考えたら答えは見えてくるはずだぞ」
その瞬間おれの頭の中で全てがつながった。
「…そうか。そういうことだったのか」
あの時感じていた違和感がこれではっきりした。わかってみるとかなり単純な話だな。
「一体どういうことなんですか?」
「ロゼの所に言ったら話す」
おれが立ち上がって歩き出すとチャーリーもあわてて付いて来た。
「オレも行く。その方がロゼも話しやすいだろう」
ノルレもそう言って立ち上がった。
「ありがとう。それじゃロゼの病院に行くぞ」
おれたちは戸締りを確認してからロゼが入院している病院に向かった。
つづく
「いらっしゃいませ衛兵さん。お楽しみしに来たんですか?」
明るい印象の宿屋の娘さんが話しかけてきた。ここで泊るのか聞かないのは衛兵には寮があるから泊ることはないとわかっているからで、娘さんの思考があれなわけではないと信じたい。
「いや、ノルレに会いに来たんだが」
「ああ、ロゼちゃんのことで来たんですか。案内するからついてきてください」
娘さんはそう言って階段を登った。
「なんでロゼちゃんのことだってわかったんでしょう?」
チャーリーが不思議そうな顔をする。
「…ソルとルナが騒いだんじゃないか?」
「ああ、なるほど」
チャーリーが納得したような顔をする。こいつは基本的に考えるのが苦手だからな。
「ノルレ先生、お客さんが来ましたよー」
宿屋の娘さんがそう言うとドアが開いた。
「あ、隊長さんとダメ副長だ〜」
「なんで隊長さんとダメ副長がここにいるの〜?」
チャーリーはどうやらダメ副長で定着したようだ。ダメなところばかり見せてたから仕方ないかもな。
「ああ、あんたらか。その様子だとロゼが目覚めたみたいだな」
ノルレが資料から目を離して言った。
「「ロゼ姉起きたの?!」」
ソルとルナがものすごい勢いで聞いてきた。
「うん。大丈夫そうだったよ」
チャーリーの言葉にソルとルナはほっとしたみたいだ。
「パパ!ロゼ姉のお見舞い行きたい!」
「ねえいいでしょ。ね、ね?」
ソルとルナの言葉にノルレは渋い顔をした。
「今子供だけで出歩くのは危険すぎる。どこにペド野郎が潜んでるかわからないぞ」
子供の前でペド野郎とか言っていいのか?
「「だったらパパがついてきてよ〜」」
ノルレは意味ありげにおれたちの方を見た。
「パパもそうしたいんだけど隊長とダメ副長と話さないといけないことがあるみたいだからなー」
「ノルレ先生にまでダメ副長って言われた?!」
チャーリーはショックを受けたようだ。それに追い討ちをかけるようにソルとルナが鋭い目を向ける。おれが魔力に敏感だったら多分すごいプレッシャーを感じてるんだろうな。
「だったら私が行きます〜」
なんだか間延びした声がベッドから聞こえた。見るとエキドナの女性がいた。多分ソルとルナのお母さんなんだろう。
「…動いて大丈夫なのかよナギニ」
ノルレが心配そうに聞いた。
「心配しなくても少しくらいの距離なら大丈夫ですよ〜。それに行く所病院ですし〜」
そう言うナギニさんのお腹は大きくふくれていた。もしかしてそういうことなのか?
「大丈夫だよ。私たちがママをちゃんと見てあげるもん」
「わたしたちもうお姉ちゃんだもん」
ソルとルナはそう言って胸を張った。
「わかった。ママを頼んだよ」
「「了解であります!」」
ソルとルナはそう言って敬礼した。
「ほら、行きますよ〜」
「「は〜い」」
3人は手を繋いで部屋を出て行った。
「それで、ロゼに会ってどう思った?」
「普通にいい子でしたよ。あれぞまさにロリの鑑でした!」
チャーリーが興奮して言った。
「隊長さんは?」
ノルレはチャーリーを完全にスルーして聞いてきた。
「…おれには何かそういう風に演じてるように見えた」
おれがそう言うとノルレは感心したような顔をした。
「へえ。ロゼの演技を見破るとはなかなかやるな」
やっぱりそうだったのか。でもなんで演技なんかしてるんだ?
「ロゼは絵を売って生活してるからな。普段から客が寄ってくるようにキャラ作りをしてるらしい」
なるほど。商売のために客に好かれるようにしてるわけか。
「じゃあなんでノルレはロゼの本性を知ってるんだ?」
「信用できる相手の前では素を出すことにしてるらしいぞ。後たまに切れて演技を忘れることがあるみたいだ」
つまりおれたちはまだ信用されてないってことか。まあ初対面からいきなり信じてもらえるなんて思ってないがな。
「…じゃあロゼちゃんはあの時ウソをついてたってことですか?」
チャーリーが軽くショックを受けたという顔で聞いた。そんなことでいちいち落ち込んでててどうする。
「ああ。可能性は高いな」
「それだったらロゼちゃんがアリスだから何も覚えてないって言うのもウソなんでしょうか?」
チャーリーの言葉に目を閉じて考え込んだ。
「…時と場合によるな。ダメ副長はなんて質問したんだ?」
「えーと、確か『何があったか覚えてる?』って聞いたような気がします」
ノルレはおれの方に目を向けた。
「おれもそう記憶している」
ノルレは重苦しく息を吐いた。
「…ロゼにしては詰めが甘いな。それだけ動揺してたってことか」
どうやらノルレは何か気付いたようだ。
「つまりロゼちゃんは覚えてるってことですか?」
「ああ。間違いなくな」
ノルレは複雑な顔をした。学者として新たな発見をできた喜びと、ロゼの精神的苦痛を心配する気持ちが入り混じってるんだろう。
「なんでそんなことがわかるんですか?」
「ロゼの答えが明らかにムジュンしてるからだ」
ムジュン?アリスだから覚えてないって答えに何かおかしいことでもあるのか?
「質問と合わせて考えてみろよ。アリスがどんな魔物か考えたら答えは見えてくるはずだぞ」
その瞬間おれの頭の中で全てがつながった。
「…そうか。そういうことだったのか」
あの時感じていた違和感がこれではっきりした。わかってみるとかなり単純な話だな。
「一体どういうことなんですか?」
「ロゼの所に言ったら話す」
おれが立ち上がって歩き出すとチャーリーもあわてて付いて来た。
「オレも行く。その方がロゼも話しやすいだろう」
ノルレもそう言って立ち上がった。
「ありがとう。それじゃロゼの病院に行くぞ」
おれたちは戸締りを確認してからロゼが入院している病院に向かった。
つづく
10/10/05 23:22更新 / グリンデルバルド
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