序章
男は逃げている、男には名前がないが、自らをジョン・スミシーと名乗る
身元不明の死体と、架空の映画監督を合わせた名前。
自分自身の身の上を現した
男なりの洒落のつもりなのだろう。
何故、男が逃げているかとゆうと、時を3時間程遡らなければならない
3時間前、ドナルドッグ教国という国で、1人の男が処刑されようとしていた。
この男こそ、今、逃走しているジョン・スミシーである
「囚人番号0000!!刑法第1条に基づき、今から、貴様を死刑に処する」
ジョンの独房に、5人の看守が現れ、その中の看守長らしき男が重々しい口調で読み上げる
「チッ!もう、死刑の日か」
悪態をつき、立ち上がった
その身長は、2メートルを優に越え筋骨隆々。身体の至る所に傷があり。まるで、旧時代のオーガのようである
「何をしている!早く出……」
中でも1番若そうな看守がジョンを急かす、が、その時
"ドゴガァン!!"
ジョンは牢監の壁を蹴破り走り出した、ちなみに、壁の厚さは40センチ以上あり、計算ではドラゴンの襲撃にも耐えられる設計だ。
「貴様!!」
直様、警報器を鳴らしたが、後の祭りである。
ケンタウロスの用に駆け、ワーラビットの用な跳躍力で、8メートルはありそうな壁を、跳び越え山の中に、消えていった。
「糞!!所長に報告し。非番問わず、人をかき集めろ」
それから、5分もしないうちに
所長も駆け付け、捜索隊編成と並行し、緊急作戦会議が開かれる
「まさか、壁を蹴破り逃走するとは!!化け物め!!
隣国に逃げられたら、厄介だ。
生死は問わん、射殺と上級魔法の使用を許可する!」
市民の為を思い、街から遠く離れた山麓に、刑務所を作ったことが仇になった。
山を三つ越えた先は巨大親魔国のディーネ王国だ。
軍事力は、ほぼ互角、逃げ込まれては手を出しにくい
ある程度、作戦が纏まった所で追跡魔法と奔馬を駆使し、捜索が始まった。そして、今に至る
(ここまで来れば、彼奴らも簡単には追いつけないだろ)
ジョンが、一息ついたのも、束の間
「あっら〜?いい男発見」
頭上から、声を掛けられると同時に、粘着性の糸で拘束され、巻き上げられてしまった。
どうやら、アラクネという魔物娘に目を付けられたようだ。
「悪りぃな、姉ちゃん
構ってる時間はねぇんだよ」
"ヌゥン"
睨みつけ、持ち前の怪力で引き千切るろうと腕に力を入れるが、粘着性が強いの為、力を吸収されてしまう
「その反抗的な目素敵よ!
こんな屈強そうな人を服従させるなんて、想像しただけで濡れて来ちゃうわ」
だが、その態度が裏目に出てしまった。アラクネという種族は、抵抗されればされる程、燃え上がる性質があるのだ。
それを知らないジョンは、更にアラクネを喜ばせる行動をとってしまう。
「生憎、縛られる趣味は無いんでね。どちらかというと、縛る(誘拐の方法的な意味)方が好きだな」
今度は、足にも力を入れ更に力んでみるが、結果は先程と程同じだった
「私も縛る(性的な意味)の好きなのよ〜。
その態度、気に入ったわ!!
貴方には、縛られる快感を教えこんであげる」
目は愛欲の色に染まり、顔は上気し、秘部は甲皮の間から愛液が溢れている
完全にスイッチが入ってしまったようだ。今にも、ペニスと言う名の獲物に喰いつかんと、襲いかかろうとするが、そこに、違う魔物が、乱入してきた。
「ちょっと!待ちな!
こいつは、あたいが先に目をつけたんだよ!!」
その魔物は、ジョン匹敵する、身長の巨大なオーガがだった
「なによ!!オーガス!
邪魔しないで、獲物は早いもの勝ちよ」
「そんなこと言うなよ〜
クラウド!こんな、精の匂いが強い、犯りがいが、ありそうな男は始めだぜ!」
「あら?もしかして、男勝りのオーガス様が一目惚れかしら?」
「おう!その、まさかだぜ」
「でも、私も……」
どうやら、オーガとアラクネは友人関係のようだ。
あと、今更だが、アラクネの名前が判明した。そんなことは、どうでもいいが、逃げるなら今がチャンスだ
先程から、嫌な会話が耳に入るが、気にせず
今度は、全身に力を入れて更に力んでみる
「じゃあ、二人であいつを共有……」
"ブチュブチュブチュブチ"
今度は、上手くいった、限界まで引き伸ばされた糸は奇妙な音をたて千切れた
「「えっ!」」
「悪りぃ、時間がねぇんだ
今度、あった時にまた、相手してやるよ」
「お兄さん、最高よ!!
ここまで、抵抗するなんて
アラクネ日和に尽きるわ
私の、婿になりなさい」
「やっぱ、あたいが見込んだだけはあるぜ!あたいの、婿になれ」
「それは、お断りだ!じゃあな」
「待ちなさい!」
「待て!あたいと、犯りあえ」
止める間もなく、再びケンタウロスの様な早さで、走り去っていく。
「行っちゃったわね」
「だな」
「たしか、この先はディーネ王国だったよね?」
「よし、ディーネに行くぞ」
「ちょっと!!そこに彼がいるとは、限らないじゃない」
「とりあえず、デカい所に行きゃあ、手がかりくらいあるだろ」
「はぁ〜。わかったわよ
準備してくるから、ちょっと待ってなさい」
「おう」
このオーガとは、物心着いた時からの友人だ。オーガスの竹を割ったような性格は、心置きなく話すことが出来き
がさつで単細胞だが、情に熱く面倒見のいい、どこか憎めない奴だ
(はぁ。めんどくさいのに、絡まれたな!フン!行く前に、炒り豆と殺虫剤を持ってくるんだったな)
一方、ジョンはというと1キロほど離れた所にある、手頃な切り株に腰掛け、逃走経路の確認を兼ね、小休止をしていた。そして、逃走中の身で、無用なトラブルは避けたいのだが、初っ端からオーガとアラクネに絡まれる、幸先の悪さを心の中でぼやいていた。
(たしか、この先はディーネのはずだ。上手く潜り込めば、ドッグも迂闊には手をだせねぇ。壁塁を、飛び越えるのも目立つ。かといって、下水道から行くと、デビルバグやバブルスライムに、遭遇する危険性がある。ここは、門から素直に入るのが妥当か)
そう、オーガスの考えは強ち間違ってはいなかった
それから、1時間程走るとディーネの関門が見えて来た。
門番所には、サラマンダーらしき姿が見える。
サラマンダーは、交戦的な種族だ。なんとか、穏便に済ませたいのだが
言い訳を思案しながら、関所に近づいて行くと
「おい!!お前!こんな、時間になんのようだ?」
「野生のオーガとアラクネから逃げてきた。匿ってくれないか?」
息を切らしたフリをして、さっき会った奴らの事を、大げさに伝える
リザード族は、交戦的だが素直で情熱的な者が多い、それっぽい事を言えば、信じてくれるはずだ。
「まて、オーガとアラクネから逃げたといったな
それに、その体躯に疵。身体からする、血の匂い、一時も緩まぬ警戒心
我の見立てだと、歴戦の戦士だと見受ける
よろしかったら、手合わせ願いたいのだが」
なんだか、雲行きが怪しくなってきた。自分の体格から、戦士と勘違いされている
たしかに、250センチ?キロ
顔には大きな疵
どうみても、堅気には見えない
良くて、傭兵上がりのチンピラ
最悪、男装癖のオーガと思われるのが落ちだ。
まあ、血の匂いと、警戒心を察知するとは、流石、大国の門番といった所か
「俺は、身長と体重だけで強くないぞ」
「うむ!そうだ!手合わせをしたら、門を通してやろう!!丸腰の某には、剣は使わん、安心せい」
「はぁ、見立て違いだぞ?」
「そんな、謙遜はいらん!!
かかってこい!」
どうやら、染み付いた血の匂いが、リザード族特有の素直な習性ではなく、交戦的な方に炎を着けてしまったようだ。
こうなったら、鎮火するまで付き合うしか無い。
もし、闘いを断り後を付け回されたら、後々面倒だ。
仮に、口封じに消したら、門番が消えたとなり、更に面倒な事になる
「わかった!怪我しても知らんぞ」
「心配無用!我は、サラマンダーのエリーフ!
いざ、尋常に勝負」
「おう!」
(身体への打撃は、分厚い筋肉で、効果は薄そうだ。狙うは膝と頭を中心にした攻撃か)
爛々と尾っぽの紅炎を滾らかせエリーフが仕掛ける。
まず、懐に潜り前蹴りで右膝を打ち抜き、グラ付き屈みかけた膝を、踏み台にし、胴回し回転蹴りを、前頭骨と頭頂骨の間に、叩き込む。
だいぶ、手加減をしているが
普通の人間なら、脳震盪で卒倒し、まるまる一日は起きないだろう。
だが、ジョンは何事もなかったかのように、平然としている
彼にとって、今のは子供にじゃれつかれた程度の事にすぎない
「サラマンダーが、この程度か
全力で来い!!」
「今のは、小手調べ!それでこそ、闘いがいあると言うもの」
「今度は、俺から行くぞ」
「うぬ!!」
モーションの大きいアッパーカットを放ち、轟音と共に顎を目掛け襲いかかる
エリーフは、それを、最小限の動きで躱し、完全に打ち上がり上体が起き上がった所を、素早く、スピアー気味に膝を狙いにくる
(ただの怪力か、些か残念……)
僅かな失望と共に、尾っぽの紅炎も弱くなっていく
某も普通の男だと、思っていると
"ズゴォン"
スピアーに対し、カウンターで砲弾の様な、膝蹴りをお見舞いした。
あえて、モーションの大きい攻撃をしたのは、懐に誘い込む為の作戦だったのだ。
反射的に身体を後方に逸らし
衝撃を分散させる、それでも、5メートル程、後ろに吹き飛ばされてしまった。何とか立ち上がるが、軽い脳震盪を起こしている為に、視点が上手く定まらない
「満足したか?」
揺れゆく意識の中で、今までに感じた事の無い、高揚感が、身体を駆け巡っていた。
(オーガ以上の攻撃力!!タフネスさ!!最高だ!!
某なら、我の望みを叶えてくれるか?)
「いや〜!効いた効いた!!
某に、頼みたい事があるのだが?」
「何だ?」
「我の全力を受け止めてくれぬか?」
「最初から、そのつもりだ!
かかってこい!」
「ハァアアアアア」
雄叫びと、共に先程とは比べ物にならない、スピードで突っ込んでくる。それを、ストレートで迎え撃つが、寸前の所を飛び上がり、蝶形骨と側頭骨の接合部に、ピンポイントで右膝を叩き込み。そして、そのまま左膝裏を首に掛け引き倒し、三角絞めに移行する。
だが、分厚い筋肉のせいで上手い具合に締まらない
「ヌォオオオオオ」
立ち上がり、力任せに振りほどき、左足首を掴み叩きつけようとするが、左足を軸に右足で、延髄を蹴り飛ばす。
ジョンも、度重なる頭部への攻撃に、少しよろめくが、負けじと頭を鷲掴み地面に叩きつける。
「それでこそ、サラマンダー」
「ア〜ハハハハハハハ!!
某、いや、貴殿は最高だ」
尾っぽの紅炎は、全身を包まんばかりに燃え上がり
逆に、秘部からは其れを消さんばかりに愛液が溢れ出ている
「これが、我が生み出した。
奥義だ、確と、我が思い(好きだ!!的な)を受け止めよ」
レイーフはサラマンダーだ。
サラマンダーは、闘いに生きる種族である。彼女たちは、好敵手(旦那)を探し旅する者が多い。
レイーフも、その中の1人だ
だが、どんなに、戦っても、何かが、満たされなかった。
理由は、全力を出せない事だ
人間のオスとは、身体能力が違いすぎる。
人間が、どんなに鍛え上げても
サラマンダーが、少し強めに殴れば卒倒してしまう。
ましてや、本気で殴れば即死だ
本気で闘いたい。しかし、人間を殺したくない。
この矛盾した感情が、解消され時、伴侶が出来ると考えていた
その悩みが、今日、解消されたのだ。目の前の男は、エリーフの全力を受けても、平然としている。
そこで、エリーフは、日頃の鍛錬を欠かさない我にくれた、魔王様からの、プレゼントと考え至った。
「奥義、飛翔螺旋底」
そうはさせぬと、剛拳を打ち下ろすが、しゃがみ込みながら、身体を極限まで捻じり、全身の筋肉を連動させ飛び上がり、掌底をカウンターで下顎骨の先端に打ち込んだ。
その間、僅か一秒
全体重と跳躍力と遠心力に、加え魔物娘の膂力だ。
おまけに、カウンターでそれを決めた。
同じ、魔物娘でもタダでは済まないだろう。
流石の、ジョンも脳震盪を起こし、片膝を着いてしまう。暫くしたら、立ち上がれたが、未だに、頭がふらつく
「貴様の思い(闘争本能)受け止めたぞ」
「そうか!!なら、結婚しよ
う!!」
「はっ?」
「いや!その前に、この猛る思いを受け止めてくれ!!」
「まて!何故?そんな話になった?」
「何故って?これは、運命だ!好きだ!愛してる!結婚してくれ」
「断固断る!!頭でも打ちすぎたか?もう、イイだろ?行くぞ、じゃあな!」
これ以上、付き合いきれないと、ばかり、闇夜のディーネ王国に消えて行った。
「待て!!我は、諦めないからな!何処にいようとも、必ず見つけ出すぞ!!」
ジョンには届いて居ないだろうが、消えた闇夜に向かい高らかと、宣言するのであった。
(名前を聞き忘れたな。思い出しただけでも、身体が疼く
嘸かし、夜の闘いも凄いのだろう)
闘いの疼きが抜けないエリーフは、門番の仕事そっちのけで、自らを慰めはじめた。
「ここが、ディーネか」
やはり、親魔国、至る所から喘ぎ声や、何かをしゃぶる音が聞こえてくる。
まあ、時間が時間なだけに仕方ない事なのだが。
「まずは、泊まる所か。
金はない、恐喝はリスクが高い、残るは、野宿か」
なにかと、トラブルに見舞われたが、無事にディーネ王国に潜り込めた。
これからが、終わりの見えない潜伏生活の始まりである。
まずは、山を三つ越えサラマンダーと戦闘した、身体を休めるのが、大事だ。出来るだけリスクが少なく、野宿の出来る場所を探すのであった。
おまけ1
出発直前のオーガスと、クラウド
「準備が、出来たわよ?行くんでしょ?早く、行きましょ」
「いつも、悪いな〜」
「フフフ、いつもの事だから大丈夫よ」
いざ、愛しい男を追いかけようとした、その時、腰を折るように無粋な物達が訪れた。
「フン!彼奴を追っていたら
不浄の物達に出くわしたか
今は、其れどころではない
我等の、目の前から消え失せろ!!」
「はぁ?」
「あぁ?」
そこからは、素早かった、一瞬でクラウドが、相手の口を糸で塞ぎ、オーガスが、鳩尾を蹴り飛ばす。
「恋する乙女は、無敵なのよ」
「邪魔すんな!」
普段なら、ここで、お仕置きと言う名の、セックスをするのだが、今は、眼中にない。
目指すは、あの逞しい肉体をもつ大男。
そのまま、放置しディーネ目指し旅立っていった。
その後、男はと言うと、マンティコアにお持ち帰りされたとさ。
おまけ2
オーガスと、クラウドと、エリーフ
エリーフとジョンの戦闘の一時間後に、ディーネについた。
オーガスと、クラウド
「着いたな」
「ええ、そうね。門番さんは、何処かしら。」
門番に話を通そうと、探していると。何処からか、湿った音と喘ぎ声が聞こえてきた。
音源に近づいてみると
「あっん…。はぁはぁはぁ……。
其方の、子種を我の子壺に注いでくれ!!あっあん!逝く〜」
なにやら、サラマンダーがお楽しみ中のようだ。
もしかして、彼女が門番なのか?
「お楽しみ中?悪いけど、貴方が門番」
声を掛けられた、サラマンダーは、我に返る。
即座に、情けを求める雌の顔から、任務を追行する、軍人のような、顔つきになる
「いかにも、我は、サラマンダーのエリーフ」
「私は、アラクネのクラウド」
「あたいは、オーガのオーガス」
互いに、軽い自己紹介を終えてから、本題に移行する。
「ここに、顔に疵がある。大男が、来なかったか?」
その瞬間、再び雌の表情が浮かびかける
「彼奴の?ことか?」
「知ってるの?」
「ああ!彼奴は、私の運命の人に間違いない。」
「いや、彼は私のよ?」
「いや、あたいのだ」
「なに?貴様らもか!彼奴は…」
それから、小一時間話し合い
エリーフも、ハレム計画の一員になりました。
身元不明の死体と、架空の映画監督を合わせた名前。
自分自身の身の上を現した
男なりの洒落のつもりなのだろう。
何故、男が逃げているかとゆうと、時を3時間程遡らなければならない
3時間前、ドナルドッグ教国という国で、1人の男が処刑されようとしていた。
この男こそ、今、逃走しているジョン・スミシーである
「囚人番号0000!!刑法第1条に基づき、今から、貴様を死刑に処する」
ジョンの独房に、5人の看守が現れ、その中の看守長らしき男が重々しい口調で読み上げる
「チッ!もう、死刑の日か」
悪態をつき、立ち上がった
その身長は、2メートルを優に越え筋骨隆々。身体の至る所に傷があり。まるで、旧時代のオーガのようである
「何をしている!早く出……」
中でも1番若そうな看守がジョンを急かす、が、その時
"ドゴガァン!!"
ジョンは牢監の壁を蹴破り走り出した、ちなみに、壁の厚さは40センチ以上あり、計算ではドラゴンの襲撃にも耐えられる設計だ。
「貴様!!」
直様、警報器を鳴らしたが、後の祭りである。
ケンタウロスの用に駆け、ワーラビットの用な跳躍力で、8メートルはありそうな壁を、跳び越え山の中に、消えていった。
「糞!!所長に報告し。非番問わず、人をかき集めろ」
それから、5分もしないうちに
所長も駆け付け、捜索隊編成と並行し、緊急作戦会議が開かれる
「まさか、壁を蹴破り逃走するとは!!化け物め!!
隣国に逃げられたら、厄介だ。
生死は問わん、射殺と上級魔法の使用を許可する!」
市民の為を思い、街から遠く離れた山麓に、刑務所を作ったことが仇になった。
山を三つ越えた先は巨大親魔国のディーネ王国だ。
軍事力は、ほぼ互角、逃げ込まれては手を出しにくい
ある程度、作戦が纏まった所で追跡魔法と奔馬を駆使し、捜索が始まった。そして、今に至る
(ここまで来れば、彼奴らも簡単には追いつけないだろ)
ジョンが、一息ついたのも、束の間
「あっら〜?いい男発見」
頭上から、声を掛けられると同時に、粘着性の糸で拘束され、巻き上げられてしまった。
どうやら、アラクネという魔物娘に目を付けられたようだ。
「悪りぃな、姉ちゃん
構ってる時間はねぇんだよ」
"ヌゥン"
睨みつけ、持ち前の怪力で引き千切るろうと腕に力を入れるが、粘着性が強いの為、力を吸収されてしまう
「その反抗的な目素敵よ!
こんな屈強そうな人を服従させるなんて、想像しただけで濡れて来ちゃうわ」
だが、その態度が裏目に出てしまった。アラクネという種族は、抵抗されればされる程、燃え上がる性質があるのだ。
それを知らないジョンは、更にアラクネを喜ばせる行動をとってしまう。
「生憎、縛られる趣味は無いんでね。どちらかというと、縛る(誘拐の方法的な意味)方が好きだな」
今度は、足にも力を入れ更に力んでみるが、結果は先程と程同じだった
「私も縛る(性的な意味)の好きなのよ〜。
その態度、気に入ったわ!!
貴方には、縛られる快感を教えこんであげる」
目は愛欲の色に染まり、顔は上気し、秘部は甲皮の間から愛液が溢れている
完全にスイッチが入ってしまったようだ。今にも、ペニスと言う名の獲物に喰いつかんと、襲いかかろうとするが、そこに、違う魔物が、乱入してきた。
「ちょっと!待ちな!
こいつは、あたいが先に目をつけたんだよ!!」
その魔物は、ジョン匹敵する、身長の巨大なオーガがだった
「なによ!!オーガス!
邪魔しないで、獲物は早いもの勝ちよ」
「そんなこと言うなよ〜
クラウド!こんな、精の匂いが強い、犯りがいが、ありそうな男は始めだぜ!」
「あら?もしかして、男勝りのオーガス様が一目惚れかしら?」
「おう!その、まさかだぜ」
「でも、私も……」
どうやら、オーガとアラクネは友人関係のようだ。
あと、今更だが、アラクネの名前が判明した。そんなことは、どうでもいいが、逃げるなら今がチャンスだ
先程から、嫌な会話が耳に入るが、気にせず
今度は、全身に力を入れて更に力んでみる
「じゃあ、二人であいつを共有……」
"ブチュブチュブチュブチ"
今度は、上手くいった、限界まで引き伸ばされた糸は奇妙な音をたて千切れた
「「えっ!」」
「悪りぃ、時間がねぇんだ
今度、あった時にまた、相手してやるよ」
「お兄さん、最高よ!!
ここまで、抵抗するなんて
アラクネ日和に尽きるわ
私の、婿になりなさい」
「やっぱ、あたいが見込んだだけはあるぜ!あたいの、婿になれ」
「それは、お断りだ!じゃあな」
「待ちなさい!」
「待て!あたいと、犯りあえ」
止める間もなく、再びケンタウロスの様な早さで、走り去っていく。
「行っちゃったわね」
「だな」
「たしか、この先はディーネ王国だったよね?」
「よし、ディーネに行くぞ」
「ちょっと!!そこに彼がいるとは、限らないじゃない」
「とりあえず、デカい所に行きゃあ、手がかりくらいあるだろ」
「はぁ〜。わかったわよ
準備してくるから、ちょっと待ってなさい」
「おう」
このオーガとは、物心着いた時からの友人だ。オーガスの竹を割ったような性格は、心置きなく話すことが出来き
がさつで単細胞だが、情に熱く面倒見のいい、どこか憎めない奴だ
(はぁ。めんどくさいのに、絡まれたな!フン!行く前に、炒り豆と殺虫剤を持ってくるんだったな)
一方、ジョンはというと1キロほど離れた所にある、手頃な切り株に腰掛け、逃走経路の確認を兼ね、小休止をしていた。そして、逃走中の身で、無用なトラブルは避けたいのだが、初っ端からオーガとアラクネに絡まれる、幸先の悪さを心の中でぼやいていた。
(たしか、この先はディーネのはずだ。上手く潜り込めば、ドッグも迂闊には手をだせねぇ。壁塁を、飛び越えるのも目立つ。かといって、下水道から行くと、デビルバグやバブルスライムに、遭遇する危険性がある。ここは、門から素直に入るのが妥当か)
そう、オーガスの考えは強ち間違ってはいなかった
それから、1時間程走るとディーネの関門が見えて来た。
門番所には、サラマンダーらしき姿が見える。
サラマンダーは、交戦的な種族だ。なんとか、穏便に済ませたいのだが
言い訳を思案しながら、関所に近づいて行くと
「おい!!お前!こんな、時間になんのようだ?」
「野生のオーガとアラクネから逃げてきた。匿ってくれないか?」
息を切らしたフリをして、さっき会った奴らの事を、大げさに伝える
リザード族は、交戦的だが素直で情熱的な者が多い、それっぽい事を言えば、信じてくれるはずだ。
「まて、オーガとアラクネから逃げたといったな
それに、その体躯に疵。身体からする、血の匂い、一時も緩まぬ警戒心
我の見立てだと、歴戦の戦士だと見受ける
よろしかったら、手合わせ願いたいのだが」
なんだか、雲行きが怪しくなってきた。自分の体格から、戦士と勘違いされている
たしかに、250センチ?キロ
顔には大きな疵
どうみても、堅気には見えない
良くて、傭兵上がりのチンピラ
最悪、男装癖のオーガと思われるのが落ちだ。
まあ、血の匂いと、警戒心を察知するとは、流石、大国の門番といった所か
「俺は、身長と体重だけで強くないぞ」
「うむ!そうだ!手合わせをしたら、門を通してやろう!!丸腰の某には、剣は使わん、安心せい」
「はぁ、見立て違いだぞ?」
「そんな、謙遜はいらん!!
かかってこい!」
どうやら、染み付いた血の匂いが、リザード族特有の素直な習性ではなく、交戦的な方に炎を着けてしまったようだ。
こうなったら、鎮火するまで付き合うしか無い。
もし、闘いを断り後を付け回されたら、後々面倒だ。
仮に、口封じに消したら、門番が消えたとなり、更に面倒な事になる
「わかった!怪我しても知らんぞ」
「心配無用!我は、サラマンダーのエリーフ!
いざ、尋常に勝負」
「おう!」
(身体への打撃は、分厚い筋肉で、効果は薄そうだ。狙うは膝と頭を中心にした攻撃か)
爛々と尾っぽの紅炎を滾らかせエリーフが仕掛ける。
まず、懐に潜り前蹴りで右膝を打ち抜き、グラ付き屈みかけた膝を、踏み台にし、胴回し回転蹴りを、前頭骨と頭頂骨の間に、叩き込む。
だいぶ、手加減をしているが
普通の人間なら、脳震盪で卒倒し、まるまる一日は起きないだろう。
だが、ジョンは何事もなかったかのように、平然としている
彼にとって、今のは子供にじゃれつかれた程度の事にすぎない
「サラマンダーが、この程度か
全力で来い!!」
「今のは、小手調べ!それでこそ、闘いがいあると言うもの」
「今度は、俺から行くぞ」
「うぬ!!」
モーションの大きいアッパーカットを放ち、轟音と共に顎を目掛け襲いかかる
エリーフは、それを、最小限の動きで躱し、完全に打ち上がり上体が起き上がった所を、素早く、スピアー気味に膝を狙いにくる
(ただの怪力か、些か残念……)
僅かな失望と共に、尾っぽの紅炎も弱くなっていく
某も普通の男だと、思っていると
"ズゴォン"
スピアーに対し、カウンターで砲弾の様な、膝蹴りをお見舞いした。
あえて、モーションの大きい攻撃をしたのは、懐に誘い込む為の作戦だったのだ。
反射的に身体を後方に逸らし
衝撃を分散させる、それでも、5メートル程、後ろに吹き飛ばされてしまった。何とか立ち上がるが、軽い脳震盪を起こしている為に、視点が上手く定まらない
「満足したか?」
揺れゆく意識の中で、今までに感じた事の無い、高揚感が、身体を駆け巡っていた。
(オーガ以上の攻撃力!!タフネスさ!!最高だ!!
某なら、我の望みを叶えてくれるか?)
「いや〜!効いた効いた!!
某に、頼みたい事があるのだが?」
「何だ?」
「我の全力を受け止めてくれぬか?」
「最初から、そのつもりだ!
かかってこい!」
「ハァアアアアア」
雄叫びと、共に先程とは比べ物にならない、スピードで突っ込んでくる。それを、ストレートで迎え撃つが、寸前の所を飛び上がり、蝶形骨と側頭骨の接合部に、ピンポイントで右膝を叩き込み。そして、そのまま左膝裏を首に掛け引き倒し、三角絞めに移行する。
だが、分厚い筋肉のせいで上手い具合に締まらない
「ヌォオオオオオ」
立ち上がり、力任せに振りほどき、左足首を掴み叩きつけようとするが、左足を軸に右足で、延髄を蹴り飛ばす。
ジョンも、度重なる頭部への攻撃に、少しよろめくが、負けじと頭を鷲掴み地面に叩きつける。
「それでこそ、サラマンダー」
「ア〜ハハハハハハハ!!
某、いや、貴殿は最高だ」
尾っぽの紅炎は、全身を包まんばかりに燃え上がり
逆に、秘部からは其れを消さんばかりに愛液が溢れ出ている
「これが、我が生み出した。
奥義だ、確と、我が思い(好きだ!!的な)を受け止めよ」
レイーフはサラマンダーだ。
サラマンダーは、闘いに生きる種族である。彼女たちは、好敵手(旦那)を探し旅する者が多い。
レイーフも、その中の1人だ
だが、どんなに、戦っても、何かが、満たされなかった。
理由は、全力を出せない事だ
人間のオスとは、身体能力が違いすぎる。
人間が、どんなに鍛え上げても
サラマンダーが、少し強めに殴れば卒倒してしまう。
ましてや、本気で殴れば即死だ
本気で闘いたい。しかし、人間を殺したくない。
この矛盾した感情が、解消され時、伴侶が出来ると考えていた
その悩みが、今日、解消されたのだ。目の前の男は、エリーフの全力を受けても、平然としている。
そこで、エリーフは、日頃の鍛錬を欠かさない我にくれた、魔王様からの、プレゼントと考え至った。
「奥義、飛翔螺旋底」
そうはさせぬと、剛拳を打ち下ろすが、しゃがみ込みながら、身体を極限まで捻じり、全身の筋肉を連動させ飛び上がり、掌底をカウンターで下顎骨の先端に打ち込んだ。
その間、僅か一秒
全体重と跳躍力と遠心力に、加え魔物娘の膂力だ。
おまけに、カウンターでそれを決めた。
同じ、魔物娘でもタダでは済まないだろう。
流石の、ジョンも脳震盪を起こし、片膝を着いてしまう。暫くしたら、立ち上がれたが、未だに、頭がふらつく
「貴様の思い(闘争本能)受け止めたぞ」
「そうか!!なら、結婚しよ
う!!」
「はっ?」
「いや!その前に、この猛る思いを受け止めてくれ!!」
「まて!何故?そんな話になった?」
「何故って?これは、運命だ!好きだ!愛してる!結婚してくれ」
「断固断る!!頭でも打ちすぎたか?もう、イイだろ?行くぞ、じゃあな!」
これ以上、付き合いきれないと、ばかり、闇夜のディーネ王国に消えて行った。
「待て!!我は、諦めないからな!何処にいようとも、必ず見つけ出すぞ!!」
ジョンには届いて居ないだろうが、消えた闇夜に向かい高らかと、宣言するのであった。
(名前を聞き忘れたな。思い出しただけでも、身体が疼く
嘸かし、夜の闘いも凄いのだろう)
闘いの疼きが抜けないエリーフは、門番の仕事そっちのけで、自らを慰めはじめた。
「ここが、ディーネか」
やはり、親魔国、至る所から喘ぎ声や、何かをしゃぶる音が聞こえてくる。
まあ、時間が時間なだけに仕方ない事なのだが。
「まずは、泊まる所か。
金はない、恐喝はリスクが高い、残るは、野宿か」
なにかと、トラブルに見舞われたが、無事にディーネ王国に潜り込めた。
これからが、終わりの見えない潜伏生活の始まりである。
まずは、山を三つ越えサラマンダーと戦闘した、身体を休めるのが、大事だ。出来るだけリスクが少なく、野宿の出来る場所を探すのであった。
おまけ1
出発直前のオーガスと、クラウド
「準備が、出来たわよ?行くんでしょ?早く、行きましょ」
「いつも、悪いな〜」
「フフフ、いつもの事だから大丈夫よ」
いざ、愛しい男を追いかけようとした、その時、腰を折るように無粋な物達が訪れた。
「フン!彼奴を追っていたら
不浄の物達に出くわしたか
今は、其れどころではない
我等の、目の前から消え失せろ!!」
「はぁ?」
「あぁ?」
そこからは、素早かった、一瞬でクラウドが、相手の口を糸で塞ぎ、オーガスが、鳩尾を蹴り飛ばす。
「恋する乙女は、無敵なのよ」
「邪魔すんな!」
普段なら、ここで、お仕置きと言う名の、セックスをするのだが、今は、眼中にない。
目指すは、あの逞しい肉体をもつ大男。
そのまま、放置しディーネ目指し旅立っていった。
その後、男はと言うと、マンティコアにお持ち帰りされたとさ。
おまけ2
オーガスと、クラウドと、エリーフ
エリーフとジョンの戦闘の一時間後に、ディーネについた。
オーガスと、クラウド
「着いたな」
「ええ、そうね。門番さんは、何処かしら。」
門番に話を通そうと、探していると。何処からか、湿った音と喘ぎ声が聞こえてきた。
音源に近づいてみると
「あっん…。はぁはぁはぁ……。
其方の、子種を我の子壺に注いでくれ!!あっあん!逝く〜」
なにやら、サラマンダーがお楽しみ中のようだ。
もしかして、彼女が門番なのか?
「お楽しみ中?悪いけど、貴方が門番」
声を掛けられた、サラマンダーは、我に返る。
即座に、情けを求める雌の顔から、任務を追行する、軍人のような、顔つきになる
「いかにも、我は、サラマンダーのエリーフ」
「私は、アラクネのクラウド」
「あたいは、オーガのオーガス」
互いに、軽い自己紹介を終えてから、本題に移行する。
「ここに、顔に疵がある。大男が、来なかったか?」
その瞬間、再び雌の表情が浮かびかける
「彼奴の?ことか?」
「知ってるの?」
「ああ!彼奴は、私の運命の人に間違いない。」
「いや、彼は私のよ?」
「いや、あたいのだ」
「なに?貴様らもか!彼奴は…」
それから、小一時間話し合い
エリーフも、ハレム計画の一員になりました。
14/02/20 21:03更新 / アルチュウ2
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