バカな娘ほどかわいい・・・・・・?
町医者を務めるソラニ・ノックスに一報が入ったのはある昼下がりのことだった。
鉱山における最も恐ろしい、落盤事故が発生したらしい。
幸い、落盤で怪我をしたのは入り口付近の作業員のみらしく、ソラニは全員の応急治療を無事に終えた。
「ふぅ……、これで一応の処置はしました。異常がありましたら、僕の診療所に来てくださいね」
筋骨隆々の男に人差し指を立ててそう言い、彼は額の汗を拭った。
落盤の音を聞いて診療所から駆けつけ、さきほどまでずっと怪我人の治療をしていたせいだろう。
そんな彼の背中を、バシバシと鉱夫の棟梁が荒っぽく叩いた。
「ガッハッハ、すまねぇなソラニ! おかげで大事にならず済んだよ!」
「あだっ、あだだ……、い、痛いですグァベルさん……」
そう言われてもなおバシバシと彼の背中を叩くのはいつものことである。
ソラニはそんなグァベルに苦笑いして、落下した岩石を一部取り除いた坑道をふと見た。
点々と並ぶ豆電球は当然ついておらず、奥までは見通せない暗闇が広がっている。
「あ、あの……この鉱山って魔物は住んでないんでしょうか?」
「ん? そうだなぁ……。そういえば前に何か鱗のついた長い尻尾を見たような……」
「……そ、それって大変じゃないですか! 中で怪我して動けなかったら大事ですよ!!」
こうしちゃいられない、そう言って彼は足元の救急箱を引っ掴んで立ち上がった。
「ま、まさか中に入ろうってのかい? や、止めときな! また落盤するかもしれねぇぞ!」
「そのときはお願いしますねグァベルさん!」
そう言って彼は鉱夫の詰め所からランタンを一つ借りて、坑道の中へ走り始めた。
グァベルの制止の声は、彼の耳に届かなかった。
◆
「誰かいませんかー!」
ランタンの光だけが頼りの薄暗い坑道の中を走りながら、ソラニは大きな声を張り上げる。
――グァベルさんの話だとラミア系統の魔物かな……。
鱗の尻尾という情報を頼りにそれらしい姿を探すが、坑道の中には人っ子一人いない。
「もしかして、もう逃げたのかなぁ……」
だとすれば町医者としては嬉しい話である。
が、更に走りつづけて彼は急速に不安になるものを見た。
落盤により崩れ落ちた岩石が、行く手を阻んでいてこれ以上先に進めないのである。
「……だっ、誰かいませんかー!!」
ありったけの声量を通行止めされた坑道の奥に吐き出す。
これで返事がなければ、安心すべきかゾッとすべきか分からない。
バクバクと不安に脈打つ心音にぎゅっと目を瞑り、声があるならば無事であることを彼は祈る。
そして、彼の祈りは斜めの方向に通じた。
ゴシャッ!!
そんな音にソラニが顔を上げると、そこには大きな穴があった。
非現実的な破砕音とともに、目の前を塞いでいた岩石の山が吹き飛んだのである。
そしてそこから、鉱石のような鱗に包まれた手のようなものが突き出されていた。
明らかに、ラミア系統というよりドラゴンのような手である。
「………………………い、いやな予感が…………………」
そんな彼の呟きを掻き消すように、ずるりと長い何かが這うような音が響く。
その穴から素肌を晒した女性の体がにゅっと現われ、頬を薄赤く染めてソラニを凝視する。
ワームだ。色欲に狂った無垢な瞳に、ソラニは直感する。
たわわに実った双丘を揺らして、ずるりとワームは彼に這いよった。
「オスっ!」
無邪気な声をあげて肌が触れ合いそうなほどに近づいた顔に後退り、ソラニはどうしたものかと悩んだ。
まず、彼自身も分かっているが逃げ切れるわけがない。
先ほどの怪力から推察する通り、ワームの厄介なところはその無尽蔵の体力だ。
今は睨みあい(見つめあい?)で済んでいるが、犯されるのも時間の問題である。
半ば諦めかけたところに、ソラニは彼女の右の肩口に目が行った。
何かで切ったかのような傷が、生身の身体に痛々しく走っていた。
「オス、オスオスオス! 美味しそう美味しそう美味しそう!!」
無垢に物騒なことを連呼しながら、目をキラキラと子どものように光らせるワーム。
そのまま彼女は巨体を引き摺って素早く回り込み、彼の退路を塞がれる。
が、そんなことは気にも留めずにソラニは苦笑いで手を挙げる。
「あ、あの〜……」
「ね、クーシャと交尾しよ? 一緒に気持ち良くなろ? いっぱいいっぱい……ね?」
そんな彼に構わずに頬を上気させ、自らをクーシャと名乗るワームは彼に迫る。
ソラニは彼女の巨体と巨乳に圧倒されて後ずさるが、すぐ後ろの岩石にぶつかり下がれなくなる。
その隙を見逃さず、クーシャは硬そうな尾をしなやかに動かし彼を巻き取る。
グルグルと何重にも巻き取られ、その尻尾にカンテラが当たりそうになって彼は慌てて投げ捨てた。
「あ、あっぶな!?」
ガシャンとカンテラが割れ、周囲が暗闇に支配される。
危うく互いに火傷しそうになったのを未然に防げ、彼は安堵のため息をついた。
が、その息を吐く口……どころか顔全体にむぎゅっと柔らかい素肌が押し当てられる。
弾力があり、どこか甘い匂いのする柔肌にバッとソラニは身を逸らした。
「ちょちょ、ま、待って待って!」
「待てないよぅ♥ ね、早く交尾しよ? 一緒にぐちゅぐちゅって、クーシャと早く気持ち良くなろ?」
すりすりと頬に頬擦りされ、ソラニは初心にも顔を真っ赤に染めて身をよじる。
そして自由になっている手で、鋭い切り傷のあるクーシャの肩口を指先でつついた。
「ひぐっ!?」
クーシャは頬をすり寄せていた顔をバッと放し、その純粋な瞳には涙が浮かべる。
その様子に未だ顔を赤くしたまま、ソラニは呆れたように肩をすくめた。
「ほら、痛いでしょ? 放っておいたら化膿するよ? ほら、治療するから放して」
そうソラニが諭すが、クーシャはむしろ反対に彼に全身でぎゅっと抱きついてきた。
彼の下半身に巻きつく尻尾の圧迫感も増し、上半身を押し付けるように柔らかい身体に縋られる。
その唐突なハグに、ソラニの顔がボッと赤くなった。
「な、何してるの! む、胸が当たってるってば!」
「痛いのやだぁ……!」
折檻に怯える子どものように抱きつくクーシャに、ソラニは慌てて諭した。
「い、痛くない痛くない! むしろその痛いのを治すんだって!」
「ほんとぉっ!?」
そう言ってようやく、クーシャを彼から体を離した。
涙の浮かんでいた瞳には、子どものような無垢な期待の色が灯っている。
そんな彼女にコクコクと何度も頷き、ソラニは苦笑いで畳み掛ける。
「ホントホント! だからちょっと放してくれる? すぐ治すから!」
(これでどうだ?)
恐る恐る下半身に巻きつく尻尾の反応を待つが、一向に放そうとする気配はしない。
むしろ、さっきよりもきゅっと締め付ける力が加わった。
そんな彼女の反応にダメかと思ったとき、ずいっと彼女の顔が近づく。
不安げに濡れた瞳が上目遣いで、ソラニの顔を覗き込む。
「に、逃げちゃやぁだから……逃げちゃやぁだから、ね? お願い、ね?」
何度も首を傾けて不安そうにお願いする大きな子どもに、ソラニはそのあまりの愛らしさに顔が真っ赤になった。
上の空でこくんと頷き、しゅるしゅると名残惜しそうにクーシャの尻尾が離れる。
寂しそうに人差し指を咥えながら、慌てて彼女はソラニに身を寄せる。
「こ、ここが痛いの。は、早く治してね? それでクーシャと交尾しよ? いっぱい気持ち良くするから、ね?」
「う、うん……」
赤い顔で頷いて、ソラニは落ち着いてゆっくりと救急箱を開ける。
中から消毒液とガーゼを取り出し、少し深呼吸してようやく落ち着きを取り戻す。
(か、かわいいなこの娘……)
不安げにじっとこちらを見つめつづけるクーシャにそう思い、ソラニはガーゼに消毒液を垂らす。
「ば、バイ菌が入ってるといけないから、傷口拭くよ? ちょおっとだけ沁みるから我慢してね〜」
「し、沁みる……?」
どういう意味か分からないのか、クーシャは小首を傾げる。
それがまた大きな体とのギャップがあって、非常に愛らしい。
愛おしさをグッと堪えて、彼は心を鬼にして傷口にガーゼを当てた。
「ひんっ! じ、ジンジンするぅぅ……!」
「ご、ごめんね?」
ぎゅっと閉じた瞼から涙が零れるのを見て、ソラニは申し訳なさそうに謝った。
しっかりと傷口を拭き取り、彼はまた別のガーゼを傷口に当てて上から包帯を巻いた。
暴れて取れても問題なので、少し力強く巻き、最後はぎゅっと包帯を結んだ。
その間も小刻みに震えながら瞼を閉じたままのクーシャに、ソラニは苦笑いしながら声をかけた。
「はい、もう大丈夫だよ。突っついたりしないかぎりは痛くないからね」
その言葉に恐る恐る瞼を開き、涙に濡れた瞳で彼女は包帯の巻かれた肩口を見る。
「お、終わった?」
「うん、終わった終わった」
その言葉にようやくぱぁーっと表情が明るくなり、治した甲斐があったとソラニも満足げに頷く。
えへへ、と笑いながら姿勢を低くして擦り寄るクーシャ。
まるで、頭を撫でてとせがむ子どものようで、ソラニはくしゃくしゃと彼女の頭を撫でた。
「んん〜♥」
気持ち良さそうに目を細める姿は、ドラゴンというより愛玩動物に近い。
和やかな彼女の姿に気を緩め、ソラニは腰を伸ばしてグッと体を逸らした。
そんな彼の足回りをしゅるしゅると遠慮がちに尻尾が回り始めるのに気付いた。
視線を戻すと、抱きつこうか抱きつかまいかと大人しく悩むクーシャと目が合う。
その瞳に若干の怯えの色を見たソラニは、傷口をつつかれるのに怯えていることが分かった。
そのことに少し後悔を覚えて渇いた笑いを零し、クーシャは躊躇いがちに尋ねた。
「つ、突っつかない?」
「しない……けど……」
実はちょっとしたいとは口が裂けても言えない。
心の中でそう呟くが、もちろんそんなことが聞こえるはずのないクーシャはパッと明るくなる。
そんな彼女とは対照的に、ソラニの顔はこれから先のことを思い笑顔で青ざめる。
そのまま彼の体に我が身を預けるように飛び込み、ぐるぐると蛇腹を彼の体に巻きつける。
「あうっ!?」
出会い始めも抱きつかれてその体に包まれたことを思い返し、ソラニは真っ赤になった。
クーシャはそんなソラニに気付かずぐりぐりと頭を胸に押し付け、そして唐突に顔を上げる。
「むぅー……これ、やっ!」
「ちょ、待っ……!?」
そう言って彼女は彼が着ている衣服を力任せに引っ張る。
止める間もなく服を破り取られ、さすがにソラニも唖然とした。
そのまま固まった彼のズボンも躊躇なく剥ぎ取り、クーシャは満足げに自らの体を彼に押し付ける。
柔らかく、すべらかな肌が直接触れあい、ソラニの顔は赤くなる。
何よりの困り種はその豊満な胸である。
みっちりと弾力のある胸が自身に押し付けられ、形を変えるその様を間近に見せつけられる。
医者であり、性交に関して知識程度にしか持ち合わせていないソラニにとっては恥ずかしい限りである。
「んふ〜……美味しそう……れるっ」
「うっ……わ……!?」
そんな彼の赤い頬を、クーシャは無遠慮に舐めあげる。
彼女の熱い唾液がべっとりと頬に滴り、ソラニは思考がフリーズする。
「……? アナタ、初めて?」
先ほどからまったく動こうともしないソラニを怪訝に思い、クーシャは首を傾げて尋ねる。
その言葉に、緊張したようにこくんとソラニは耳まで真っ赤な顔で頷いた。
ぞんざいなその反応に、クーシャは花が咲いたようにぱぁーっと明るくなった。
「やたっ! えっとね、えっとね! クーシャも初めて! おあいこ!」
初めて同士、というのがそんなに嬉しいのか彼女は胸を押し付けるようにソラニに抱きつく。
そんな彼の体は緊張に強張り、肉棒も当然のようにいきり勃っていた。
ちょうどその怒張が彼女の柔肌に当たり、彼はびくっと身をすくめた。
「あり?」
「う、ううぅ……」
敏感な素肌に猛る肉棒が当たり、魔物が気付かないわけがない。
興味深そうに自分の体に押し当てられるそれを見つめるクーシャに、ソラニは羞恥で俯いた。
が、下半身に巻きつく尻尾が緩み、一番敏感な亀頭をザラリとした何かに撫で上げられ、彼は驚いて顔を上げた。
「あっ、ちょぉ……!」
「にゃにこれぇ……いいにおひィ……♥」
とろんと目尻を垂れて、大きな舌をちろちろと出し入れするクーシャ。
どうやら、亀頭を舐めたらしい。
そのまま彼女はうっとりしたようにペニスに見入り、不意打ちにそれを咥えこんだ。
「んんっ、あっく!?」
「じゅりゅ……じゅる、じゅるるるる、じゅる、じゅじゅ♥」
陰部全てを咥えこまれた瞬間、物凄い勢いで吸いつかれソラニは情けない声をあげた。
口内がすぼまり、絡みつくような舌使いに頭が真っ白になる。
ただ単調に吸っているだけで、この快感である。
「あっ、あ、あっあっ!
「ちゅぢゅっ、ぢゅるる……づぶゅぢるる?」
「く、咥えたまま喋んないでぇぇ……!」
気持ちいい? そう聞いたであろう濁音に懇願し、ソラニは彼女のフェラに必死に我慢する。
拙くはあるものの、躊躇いのない動きにソラニは追い込まれる一方である。
その上、単純思考とはいえそこは魔物。
ただ吸うだけだったクーシャはそれだけじゃ出ないと理解し、色々な動きをし始める。
例えば、肉棒に巻きつけた舌で裏筋を舐めあげたり。
「ちゅぢゅっ、れるるっ、ちゅぅ、れろ……んはぁん……、お汁もっと、もっともっとぉ……♥」
「こ、っらぁ……! そ、そこはダメ! ヤバい!」
屹立した先端から滲み出る汁に、彼女は恍惚とした表情になり甘えるような声を出して再度陰茎を咥えこむ。
その勢いがよすぎたせいか、ソラニの亀頭が彼女の喉に触れる。
充血し、張り詰めた亀頭にぬめりとしたその感触に彼の嬌声が漏れる。
「ふぁ……ぁ……!」
「ずじゅっ、ぢゅるるる、ぢゅぷっ!じゅぽっ、じゅぽっ……!」
無論、そんな彼に躊躇するクーシャではない。
腰が抜けるほど激しく吸い、太く逞しい陰茎は余すところなくねぶられる。
裏筋を何度も舐め上げられ、尿道をほじくるように舌先が愛撫する。
彼女の魔物としての性が、彼の肉棒を妖しく責めたて絶えることのない快楽を彼に与えつづける。
「じゅぶっ、じゅるるぅ、れるる、ちゅぽん……? 先っぽ、ひくひくしてる……?」
「も、もうダメだから……、こ、これ以上はもうっ……!」
だらしなく口を開けて、ソラニは身を震わせて彼女にそう言う。
が、彼女は興味しんしんにその屹立をじっくりと観察し、閃いたかのようにまたその口で呑みこむ。
そして、最初にそうしてきたように、口をすぼめ舌を絡ませ肉棒を吸いたて始める。
「ずじゅっ、ぢゅるるるるっ、ちゅる、じゅるるる!」
「だ、ダメぇ……!」
容赦のないその口淫に、ソラニは意識が吹っ飛んだ。
白濁の奔流が溢れ出て、彼女の口腔を真っ白に満たす。
「んぶっ? んん? んむっ、んくっ……んぐんぐ、ずじゅっ、じゅるるる!」
「は、ああああぁぁぁ……!?」
濃厚なソラニの子種に、一瞬だけクーシャの目が丸くなる。
小首を傾げて喉を動かして白濁を嚥下し、そして搾り出すように吸いたてを再開する。
絶頂したての敏感な陰部を吸われ、尿道に残っていた精子が引き出される。
そんな快楽に初めての彼が耐えられるはずがなく、オクターヴが跳ね上がる。
「じゅちゅっ、ぢゅるっ、づるるるるっ……ふやぁ……、ごちそうしゃまぁ……♥」
とろけた笑顔でようやく陰部を解放され、ソラニは絶頂による脱力で彼女にもたれかかる。
それを、甘えられたと、クーシャは勘違いした。
「ふぇへへぇ……、えへっ、えへへぇ♪」
そんな彼をぎゅっと抱きしめ、ゴツゴツとした鱗の腕を彼の背に回す。
背中だけでなく、もう一方の腕は彼の腰に回されぐったりとした彼には抵抗する気力もなかった。
「こっ……、こんなにハードだとは……」
「えへぇ、気持ちイイ? ね、気持ちイイ? もっと気持ち良くなろぉ……ねぇ?」
「へ……ぇ?」
そこでようやく、彼は彼女の涎を垂らし目の前の得物を今にも狩ろうとする表情に危機感を覚えた。
熱っぽく濡れた瞳に、抱きつく全身もどこか熱い。
彼は血の気が引き、身を引こうとするが腰に回された腕がそれをさせない。
「んっ、だめなのぉ……♪ 交尾っ、交尾するのぉ……♪」
「わわっ、分かった! 百歩譲って交尾しよう! でも今はちょとかんべんむぐっ!?」
「んむふふむ〜♪」(聞こえない〜♪)
珍しく策士にも自らの唇で彼の言葉を遮り、クーシャは自らの胸を彼に押しつける。
胸の感触もそうだが、何よりも彼の思考を凍りつかせたものがある。
自分の精液の味。
まだ少し彼女の口に残っていた精液は、同じく口を介して伝わりソラニは石化させた。
ねばっこくて、濃くて、ドロドロして、喉に絡む、まず男が味わうことはない味に絶句する。
ファーストキスは残酷だ。
その無抵抗を肯定と見たのか、彼女はショックに止まる彼に腰を彼の陰茎にあてがおうとする。
「んぱっ、えへぇ……♥ ね? いいよね? いいよね?」
唇を離して彼に問うが、最初とは別の意味で上の空のソラニは当然反応のしようがない。
歓喜に頬を染めて、彼女は一気に腰を沈める。
未だ張り詰めていた肉棒は彼女の膣肉を掻き分け、あっけなく薄い膜を破る。
この快感に、石化していたソラニがようやく反応を示した。
「は、あぅぅ……!」
「あぁぁんっ♥ いっ、イイ♥ これ、イイっ♥」
だらしなく舌を垂らし、クーシャは肉棒の感触に喜悦する。
ソラニを放さない尻尾もぎゅるぎゅると力強く締まり、彼女は全身で彼に抱きつく。
さすがにもうこの程度では動揺しなくなった、わけではなくソラニはそれどころではない。
未だ敏感な陰部を締め付ける濡れた膣に、否応なく意識してしまうのだ。
「ねぇ、アナタ名前なにっ? なんて呼べばいいっ?」
そんな彼に気遣うわけでもなく、彼女は今更なことを尋ねる。
強烈な快楽に身を委ねそうになる欲を抑えて、彼は何とか返答した。
「そっ、ソラニ……! ソラニ・ノックスぅ……!」
「ソラニっ! ソラニソラニソラニ! 憶えた♥ 憶えたよソラニぃ♥」
「やっめ、う、動いたら……!」
ずちゅずちゅっ、と淫猥な水音を響かせてクーシャが腰を振り始める。
ソラニはその快楽に打ち震え、彼女の体にしがみついた。
「ソラニぃ♪ ね、ずっとこうしてよぅ? ずっと繋がって、ずっと気持ち良くなろぅ?」
蜜壺から肉棒が抜ける寸前まで腰を引き、子宮に当たる勢いで一気に腰を沈める。
単調ながらムチャクチャなピストン運動に、ソラニは返答するどころではない。
クーシャを力強く抱きしめ、無意味にただ快楽に耐えて絶頂を我慢している。
「……っ! ……うぅ!」
「ずぅっと一緒にいたらぁ、ソラニもクーシャも幸せだよぉ♥」
先ほどのフェラとは比べ物にならない快楽に嬌声をあげる事もなく、クーシャは蕩けた表情で彼に言いつづける。
自分ばかりが情けないように思え、ソラニは羞恥に頬を染めて彼女の首に腕を回す。
そして彼もまた、彼女に身を預けたまま不意打ちに腰を振った。
ちょうど彼女が腰を沈める瞬間だったため、彼の逞しい肉棒は彼女の最奥部に突き立つ。
これにはたまらず、クーシャも甘い声をあげる。
「ふやぁぁぁああ♪」
「……ったく、もう……! さっきから黙って話を聞いていれば!」
ビクビクと歓喜の表情で震えるクーシャと目を合わせず、ソラニはヤケ気味に陰茎を突き出す。
自分自身にも信じられないほどの快感が襲い掛かるが、彼はそれを理性で押さえつけて彼女に叫ぶ。
「はっ、やん♥ 気持ちいぃぃ♥」
「君ばっかり勝手で、ちょっとずるいって……!」
リズミカルに膣内を掻き乱して、クーシャもそれに呼応するようにまた腰を振り始めた。
全身をソラニの体に押し付け、精液に濡れた唇から嬌声を漏らす。
「はぅぅん♥ くしゃって、クーシャって呼んでぇ♥ ソラニぃ、ソラニぃ♥」
「分かったよ、クーシャ……ぁく!」
名前で呼んだ瞬間に、クーシャの秘部がきゅっと甘く締まった。
その感触に暴発的に射精し、彼女はドクドクと流れ込む子種に身を震わせる。
子どものようにソラニを抱きしめ、彼女はだらしなく笑う。
「ふえぇ……熱い、熱いよソラニぃ……♥」
彼女の蜜壺もまた精液を搾りとるようにすぼまり、クーシャが身をよじって陰部を刺激する。
まるで揉みほぐすかのような膣の器用なうねりに、彼は二度目の射精の余韻が冷めないままの刺激に声が出る。
「ふぁ、あうぅ……や、やめ……くーしゃあ……」
だらしなく自分を抱きしめる彼女の名前を呼び、ソラニは彼女に身を委ねる。
精に貪欲な彼女がむろん止めるわけがなく、彼女の動きは徐々にエスカレートしていく。
それどころか、精液がもう出ないと知るや彼女は打ち付けるように腰を振り始めた。
躊躇どころか容赦のない三度目の責めたてに、ソラニは目を白黒させる。
「もっと、もっとぉ♥」
「ちょっ、もう出ないっ!? もう出ないってば!?」
必死に叫ぶが、彼女の耳には届かない。
火照る体を甘えるようにソラニに押し付け、彼女は彼の細い首筋を舐めまわす。
未だ濃い匂いを放つ精液の香りに、くらっと眩暈がした。
「あう……!」
「イこぉ? 一緒になろぉソラニぃ♥」
何度も聞いたその言葉に、ソラニは諦めた。
眩暈のままに混濁する意識は、段々と視界を暗くしていく。
彼が意識を手放す最後に感じたのは、陰茎に感じる激しい快感だった。
◆
「ん、んんぅ……」
眩しい。そう感じて彼の意識はようやく覚醒した。
瞼を開いてみると、そこには白い天井が広がっていた。
見覚えのあるその色合いは、紛れもなく彼の構える診療所の天井である。
状況を確認しようと起き上がろうとするが、金縛りのように体が動かない。
というか、何か柔らかい何かに押さえつけられて動けなかった。
「お、起きたかソラニ」
頭上から声がして、ソラニは首を動かして声の主を探す。
そこには、呆れたように苦笑するグァベルの姿があった。
「あー、その、何だ。お疲れ」
柄にもなく歯切れの悪いその態度に、ソラニの顔がさっと青くなる。
自分の体を見下ろすと、あのときのように自分に巻きつくクーシャの姿があった。
穏やかに寝息をたてて、彼が着ている患者用の衣服に涎を垂らしている。
無論、相変わらず裸である。
「ぐっ、グァベルさん!? こ、これは違うんです! 何かの間違いです!」
「見りゃ分かる。お前さんから襲いかかるとは思いし、気絶してるお前に腰振ってたのはそいつだからな」
「もうちょっとオヴラートに言ってくれません!?」
明け透けな言葉に悲鳴をあげ、不機嫌そうに眉をひそめるクーシャに慌ててソラニは口を押さえた。
その様子をグァベルはにやにやと嫌らしく笑い、巻き煙草を口にくわえた。
「まぁ、何だ? いい嫁さんじゃねぇか」
「胸見て言うの止めてくれません? 奥さんに言いつけますよ?」
「堪忍な、死ぬから!」
ちなみに、グァベルの奥さんはメドゥーサである。
半日ほど石化して気がついたらベッドの上……、なんてことがよくあると彼に愚痴られたことがある。
「ま、お前さんが元気っぽくて安心した。ゆっくり休みな」
「えぇ……、できそうならそうします」
自分の胸元を無意識なのかはだけさせるクーシャに苦笑して、ソラニはベッドに体を預けて脱力した。
赤い頬を気持ち良さそうに胸板に擦り付ける彼女に、同じくグァベルも苦笑した。
「ウチの嫁もこんだけ素直だったらなぁ……」
小さくそう呟いて、グァベルは診療所から出ていった。
窓から見えていた小さな蛇に軽く睨まれていたのに、彼はまったく気付いていなかった。
それが見えてしまったソラニは、背を向ける彼に合掌した。
「ん、んぅぅ……」
その小さな動きに、寝苦しそうにクーシャが唸ってむくりと体を起こす。
くしくしとゴツい手で器用に眼を擦り、寝惚け眼で周囲を見回す。
長い間暗い坑道の中に住んでいたせいで眩しいのか、その目はかなり細まっている。
が、すぐ真下にいるソラニに気付いた瞬間にその目がくわっと見開かれる。
「そ、そ……ソラミ……?」
「ソラニです」
まさか忘れられてるとは思わず、ソラニはこめかみを押さえた。
これから一緒に暮らす女性はその言葉に、あり? と首を傾げていた。
とりあえず、フェラした後にキスしないでと言ったが勿論理解してもらえなかった。
◆
それ以降、彼の経営する診療所でクーシャは手伝いをすることになった。
素直で純粋な彼女は入院する子どもたちと無邪気に触れあい、その様子を窓からソラニが覗いていた。
「……診療所なのに、託児所まで兼職することになるとは思わなかったなぁ」
人間、魔物の入り交じった子どもたちを大きな体にぶら下げて、ずるずると勢いよく這い回っている。
それを追いかける少年少女の笑顔の燦々たるや、眩しい限りである。
そんな様子を微妙な面持ちで見て、ソラニは目の前の書類に頭を抱えた。
「んー……、子どもの名前なんか考えたことないよ……」
鉱山における最も恐ろしい、落盤事故が発生したらしい。
幸い、落盤で怪我をしたのは入り口付近の作業員のみらしく、ソラニは全員の応急治療を無事に終えた。
「ふぅ……、これで一応の処置はしました。異常がありましたら、僕の診療所に来てくださいね」
筋骨隆々の男に人差し指を立ててそう言い、彼は額の汗を拭った。
落盤の音を聞いて診療所から駆けつけ、さきほどまでずっと怪我人の治療をしていたせいだろう。
そんな彼の背中を、バシバシと鉱夫の棟梁が荒っぽく叩いた。
「ガッハッハ、すまねぇなソラニ! おかげで大事にならず済んだよ!」
「あだっ、あだだ……、い、痛いですグァベルさん……」
そう言われてもなおバシバシと彼の背中を叩くのはいつものことである。
ソラニはそんなグァベルに苦笑いして、落下した岩石を一部取り除いた坑道をふと見た。
点々と並ぶ豆電球は当然ついておらず、奥までは見通せない暗闇が広がっている。
「あ、あの……この鉱山って魔物は住んでないんでしょうか?」
「ん? そうだなぁ……。そういえば前に何か鱗のついた長い尻尾を見たような……」
「……そ、それって大変じゃないですか! 中で怪我して動けなかったら大事ですよ!!」
こうしちゃいられない、そう言って彼は足元の救急箱を引っ掴んで立ち上がった。
「ま、まさか中に入ろうってのかい? や、止めときな! また落盤するかもしれねぇぞ!」
「そのときはお願いしますねグァベルさん!」
そう言って彼は鉱夫の詰め所からランタンを一つ借りて、坑道の中へ走り始めた。
グァベルの制止の声は、彼の耳に届かなかった。
◆
「誰かいませんかー!」
ランタンの光だけが頼りの薄暗い坑道の中を走りながら、ソラニは大きな声を張り上げる。
――グァベルさんの話だとラミア系統の魔物かな……。
鱗の尻尾という情報を頼りにそれらしい姿を探すが、坑道の中には人っ子一人いない。
「もしかして、もう逃げたのかなぁ……」
だとすれば町医者としては嬉しい話である。
が、更に走りつづけて彼は急速に不安になるものを見た。
落盤により崩れ落ちた岩石が、行く手を阻んでいてこれ以上先に進めないのである。
「……だっ、誰かいませんかー!!」
ありったけの声量を通行止めされた坑道の奥に吐き出す。
これで返事がなければ、安心すべきかゾッとすべきか分からない。
バクバクと不安に脈打つ心音にぎゅっと目を瞑り、声があるならば無事であることを彼は祈る。
そして、彼の祈りは斜めの方向に通じた。
ゴシャッ!!
そんな音にソラニが顔を上げると、そこには大きな穴があった。
非現実的な破砕音とともに、目の前を塞いでいた岩石の山が吹き飛んだのである。
そしてそこから、鉱石のような鱗に包まれた手のようなものが突き出されていた。
明らかに、ラミア系統というよりドラゴンのような手である。
「………………………い、いやな予感が…………………」
そんな彼の呟きを掻き消すように、ずるりと長い何かが這うような音が響く。
その穴から素肌を晒した女性の体がにゅっと現われ、頬を薄赤く染めてソラニを凝視する。
ワームだ。色欲に狂った無垢な瞳に、ソラニは直感する。
たわわに実った双丘を揺らして、ずるりとワームは彼に這いよった。
「オスっ!」
無邪気な声をあげて肌が触れ合いそうなほどに近づいた顔に後退り、ソラニはどうしたものかと悩んだ。
まず、彼自身も分かっているが逃げ切れるわけがない。
先ほどの怪力から推察する通り、ワームの厄介なところはその無尽蔵の体力だ。
今は睨みあい(見つめあい?)で済んでいるが、犯されるのも時間の問題である。
半ば諦めかけたところに、ソラニは彼女の右の肩口に目が行った。
何かで切ったかのような傷が、生身の身体に痛々しく走っていた。
「オス、オスオスオス! 美味しそう美味しそう美味しそう!!」
無垢に物騒なことを連呼しながら、目をキラキラと子どものように光らせるワーム。
そのまま彼女は巨体を引き摺って素早く回り込み、彼の退路を塞がれる。
が、そんなことは気にも留めずにソラニは苦笑いで手を挙げる。
「あ、あの〜……」
「ね、クーシャと交尾しよ? 一緒に気持ち良くなろ? いっぱいいっぱい……ね?」
そんな彼に構わずに頬を上気させ、自らをクーシャと名乗るワームは彼に迫る。
ソラニは彼女の巨体と巨乳に圧倒されて後ずさるが、すぐ後ろの岩石にぶつかり下がれなくなる。
その隙を見逃さず、クーシャは硬そうな尾をしなやかに動かし彼を巻き取る。
グルグルと何重にも巻き取られ、その尻尾にカンテラが当たりそうになって彼は慌てて投げ捨てた。
「あ、あっぶな!?」
ガシャンとカンテラが割れ、周囲が暗闇に支配される。
危うく互いに火傷しそうになったのを未然に防げ、彼は安堵のため息をついた。
が、その息を吐く口……どころか顔全体にむぎゅっと柔らかい素肌が押し当てられる。
弾力があり、どこか甘い匂いのする柔肌にバッとソラニは身を逸らした。
「ちょちょ、ま、待って待って!」
「待てないよぅ♥ ね、早く交尾しよ? 一緒にぐちゅぐちゅって、クーシャと早く気持ち良くなろ?」
すりすりと頬に頬擦りされ、ソラニは初心にも顔を真っ赤に染めて身をよじる。
そして自由になっている手で、鋭い切り傷のあるクーシャの肩口を指先でつついた。
「ひぐっ!?」
クーシャは頬をすり寄せていた顔をバッと放し、その純粋な瞳には涙が浮かべる。
その様子に未だ顔を赤くしたまま、ソラニは呆れたように肩をすくめた。
「ほら、痛いでしょ? 放っておいたら化膿するよ? ほら、治療するから放して」
そうソラニが諭すが、クーシャはむしろ反対に彼に全身でぎゅっと抱きついてきた。
彼の下半身に巻きつく尻尾の圧迫感も増し、上半身を押し付けるように柔らかい身体に縋られる。
その唐突なハグに、ソラニの顔がボッと赤くなった。
「な、何してるの! む、胸が当たってるってば!」
「痛いのやだぁ……!」
折檻に怯える子どものように抱きつくクーシャに、ソラニは慌てて諭した。
「い、痛くない痛くない! むしろその痛いのを治すんだって!」
「ほんとぉっ!?」
そう言ってようやく、クーシャを彼から体を離した。
涙の浮かんでいた瞳には、子どものような無垢な期待の色が灯っている。
そんな彼女にコクコクと何度も頷き、ソラニは苦笑いで畳み掛ける。
「ホントホント! だからちょっと放してくれる? すぐ治すから!」
(これでどうだ?)
恐る恐る下半身に巻きつく尻尾の反応を待つが、一向に放そうとする気配はしない。
むしろ、さっきよりもきゅっと締め付ける力が加わった。
そんな彼女の反応にダメかと思ったとき、ずいっと彼女の顔が近づく。
不安げに濡れた瞳が上目遣いで、ソラニの顔を覗き込む。
「に、逃げちゃやぁだから……逃げちゃやぁだから、ね? お願い、ね?」
何度も首を傾けて不安そうにお願いする大きな子どもに、ソラニはそのあまりの愛らしさに顔が真っ赤になった。
上の空でこくんと頷き、しゅるしゅると名残惜しそうにクーシャの尻尾が離れる。
寂しそうに人差し指を咥えながら、慌てて彼女はソラニに身を寄せる。
「こ、ここが痛いの。は、早く治してね? それでクーシャと交尾しよ? いっぱい気持ち良くするから、ね?」
「う、うん……」
赤い顔で頷いて、ソラニは落ち着いてゆっくりと救急箱を開ける。
中から消毒液とガーゼを取り出し、少し深呼吸してようやく落ち着きを取り戻す。
(か、かわいいなこの娘……)
不安げにじっとこちらを見つめつづけるクーシャにそう思い、ソラニはガーゼに消毒液を垂らす。
「ば、バイ菌が入ってるといけないから、傷口拭くよ? ちょおっとだけ沁みるから我慢してね〜」
「し、沁みる……?」
どういう意味か分からないのか、クーシャは小首を傾げる。
それがまた大きな体とのギャップがあって、非常に愛らしい。
愛おしさをグッと堪えて、彼は心を鬼にして傷口にガーゼを当てた。
「ひんっ! じ、ジンジンするぅぅ……!」
「ご、ごめんね?」
ぎゅっと閉じた瞼から涙が零れるのを見て、ソラニは申し訳なさそうに謝った。
しっかりと傷口を拭き取り、彼はまた別のガーゼを傷口に当てて上から包帯を巻いた。
暴れて取れても問題なので、少し力強く巻き、最後はぎゅっと包帯を結んだ。
その間も小刻みに震えながら瞼を閉じたままのクーシャに、ソラニは苦笑いしながら声をかけた。
「はい、もう大丈夫だよ。突っついたりしないかぎりは痛くないからね」
その言葉に恐る恐る瞼を開き、涙に濡れた瞳で彼女は包帯の巻かれた肩口を見る。
「お、終わった?」
「うん、終わった終わった」
その言葉にようやくぱぁーっと表情が明るくなり、治した甲斐があったとソラニも満足げに頷く。
えへへ、と笑いながら姿勢を低くして擦り寄るクーシャ。
まるで、頭を撫でてとせがむ子どものようで、ソラニはくしゃくしゃと彼女の頭を撫でた。
「んん〜♥」
気持ち良さそうに目を細める姿は、ドラゴンというより愛玩動物に近い。
和やかな彼女の姿に気を緩め、ソラニは腰を伸ばしてグッと体を逸らした。
そんな彼の足回りをしゅるしゅると遠慮がちに尻尾が回り始めるのに気付いた。
視線を戻すと、抱きつこうか抱きつかまいかと大人しく悩むクーシャと目が合う。
その瞳に若干の怯えの色を見たソラニは、傷口をつつかれるのに怯えていることが分かった。
そのことに少し後悔を覚えて渇いた笑いを零し、クーシャは躊躇いがちに尋ねた。
「つ、突っつかない?」
「しない……けど……」
実はちょっとしたいとは口が裂けても言えない。
心の中でそう呟くが、もちろんそんなことが聞こえるはずのないクーシャはパッと明るくなる。
そんな彼女とは対照的に、ソラニの顔はこれから先のことを思い笑顔で青ざめる。
そのまま彼の体に我が身を預けるように飛び込み、ぐるぐると蛇腹を彼の体に巻きつける。
「あうっ!?」
出会い始めも抱きつかれてその体に包まれたことを思い返し、ソラニは真っ赤になった。
クーシャはそんなソラニに気付かずぐりぐりと頭を胸に押し付け、そして唐突に顔を上げる。
「むぅー……これ、やっ!」
「ちょ、待っ……!?」
そう言って彼女は彼が着ている衣服を力任せに引っ張る。
止める間もなく服を破り取られ、さすがにソラニも唖然とした。
そのまま固まった彼のズボンも躊躇なく剥ぎ取り、クーシャは満足げに自らの体を彼に押し付ける。
柔らかく、すべらかな肌が直接触れあい、ソラニの顔は赤くなる。
何よりの困り種はその豊満な胸である。
みっちりと弾力のある胸が自身に押し付けられ、形を変えるその様を間近に見せつけられる。
医者であり、性交に関して知識程度にしか持ち合わせていないソラニにとっては恥ずかしい限りである。
「んふ〜……美味しそう……れるっ」
「うっ……わ……!?」
そんな彼の赤い頬を、クーシャは無遠慮に舐めあげる。
彼女の熱い唾液がべっとりと頬に滴り、ソラニは思考がフリーズする。
「……? アナタ、初めて?」
先ほどからまったく動こうともしないソラニを怪訝に思い、クーシャは首を傾げて尋ねる。
その言葉に、緊張したようにこくんとソラニは耳まで真っ赤な顔で頷いた。
ぞんざいなその反応に、クーシャは花が咲いたようにぱぁーっと明るくなった。
「やたっ! えっとね、えっとね! クーシャも初めて! おあいこ!」
初めて同士、というのがそんなに嬉しいのか彼女は胸を押し付けるようにソラニに抱きつく。
そんな彼の体は緊張に強張り、肉棒も当然のようにいきり勃っていた。
ちょうどその怒張が彼女の柔肌に当たり、彼はびくっと身をすくめた。
「あり?」
「う、ううぅ……」
敏感な素肌に猛る肉棒が当たり、魔物が気付かないわけがない。
興味深そうに自分の体に押し当てられるそれを見つめるクーシャに、ソラニは羞恥で俯いた。
が、下半身に巻きつく尻尾が緩み、一番敏感な亀頭をザラリとした何かに撫で上げられ、彼は驚いて顔を上げた。
「あっ、ちょぉ……!」
「にゃにこれぇ……いいにおひィ……♥」
とろんと目尻を垂れて、大きな舌をちろちろと出し入れするクーシャ。
どうやら、亀頭を舐めたらしい。
そのまま彼女はうっとりしたようにペニスに見入り、不意打ちにそれを咥えこんだ。
「んんっ、あっく!?」
「じゅりゅ……じゅる、じゅるるるる、じゅる、じゅじゅ♥」
陰部全てを咥えこまれた瞬間、物凄い勢いで吸いつかれソラニは情けない声をあげた。
口内がすぼまり、絡みつくような舌使いに頭が真っ白になる。
ただ単調に吸っているだけで、この快感である。
「あっ、あ、あっあっ!
「ちゅぢゅっ、ぢゅるる……づぶゅぢるる?」
「く、咥えたまま喋んないでぇぇ……!」
気持ちいい? そう聞いたであろう濁音に懇願し、ソラニは彼女のフェラに必死に我慢する。
拙くはあるものの、躊躇いのない動きにソラニは追い込まれる一方である。
その上、単純思考とはいえそこは魔物。
ただ吸うだけだったクーシャはそれだけじゃ出ないと理解し、色々な動きをし始める。
例えば、肉棒に巻きつけた舌で裏筋を舐めあげたり。
「ちゅぢゅっ、れるるっ、ちゅぅ、れろ……んはぁん……、お汁もっと、もっともっとぉ……♥」
「こ、っらぁ……! そ、そこはダメ! ヤバい!」
屹立した先端から滲み出る汁に、彼女は恍惚とした表情になり甘えるような声を出して再度陰茎を咥えこむ。
その勢いがよすぎたせいか、ソラニの亀頭が彼女の喉に触れる。
充血し、張り詰めた亀頭にぬめりとしたその感触に彼の嬌声が漏れる。
「ふぁ……ぁ……!」
「ずじゅっ、ぢゅるるる、ぢゅぷっ!じゅぽっ、じゅぽっ……!」
無論、そんな彼に躊躇するクーシャではない。
腰が抜けるほど激しく吸い、太く逞しい陰茎は余すところなくねぶられる。
裏筋を何度も舐め上げられ、尿道をほじくるように舌先が愛撫する。
彼女の魔物としての性が、彼の肉棒を妖しく責めたて絶えることのない快楽を彼に与えつづける。
「じゅぶっ、じゅるるぅ、れるる、ちゅぽん……? 先っぽ、ひくひくしてる……?」
「も、もうダメだから……、こ、これ以上はもうっ……!」
だらしなく口を開けて、ソラニは身を震わせて彼女にそう言う。
が、彼女は興味しんしんにその屹立をじっくりと観察し、閃いたかのようにまたその口で呑みこむ。
そして、最初にそうしてきたように、口をすぼめ舌を絡ませ肉棒を吸いたて始める。
「ずじゅっ、ぢゅるるるるっ、ちゅる、じゅるるる!」
「だ、ダメぇ……!」
容赦のないその口淫に、ソラニは意識が吹っ飛んだ。
白濁の奔流が溢れ出て、彼女の口腔を真っ白に満たす。
「んぶっ? んん? んむっ、んくっ……んぐんぐ、ずじゅっ、じゅるるる!」
「は、ああああぁぁぁ……!?」
濃厚なソラニの子種に、一瞬だけクーシャの目が丸くなる。
小首を傾げて喉を動かして白濁を嚥下し、そして搾り出すように吸いたてを再開する。
絶頂したての敏感な陰部を吸われ、尿道に残っていた精子が引き出される。
そんな快楽に初めての彼が耐えられるはずがなく、オクターヴが跳ね上がる。
「じゅちゅっ、ぢゅるっ、づるるるるっ……ふやぁ……、ごちそうしゃまぁ……♥」
とろけた笑顔でようやく陰部を解放され、ソラニは絶頂による脱力で彼女にもたれかかる。
それを、甘えられたと、クーシャは勘違いした。
「ふぇへへぇ……、えへっ、えへへぇ♪」
そんな彼をぎゅっと抱きしめ、ゴツゴツとした鱗の腕を彼の背に回す。
背中だけでなく、もう一方の腕は彼の腰に回されぐったりとした彼には抵抗する気力もなかった。
「こっ……、こんなにハードだとは……」
「えへぇ、気持ちイイ? ね、気持ちイイ? もっと気持ち良くなろぉ……ねぇ?」
「へ……ぇ?」
そこでようやく、彼は彼女の涎を垂らし目の前の得物を今にも狩ろうとする表情に危機感を覚えた。
熱っぽく濡れた瞳に、抱きつく全身もどこか熱い。
彼は血の気が引き、身を引こうとするが腰に回された腕がそれをさせない。
「んっ、だめなのぉ……♪ 交尾っ、交尾するのぉ……♪」
「わわっ、分かった! 百歩譲って交尾しよう! でも今はちょとかんべんむぐっ!?」
「んむふふむ〜♪」(聞こえない〜♪)
珍しく策士にも自らの唇で彼の言葉を遮り、クーシャは自らの胸を彼に押しつける。
胸の感触もそうだが、何よりも彼の思考を凍りつかせたものがある。
自分の精液の味。
まだ少し彼女の口に残っていた精液は、同じく口を介して伝わりソラニは石化させた。
ねばっこくて、濃くて、ドロドロして、喉に絡む、まず男が味わうことはない味に絶句する。
ファーストキスは残酷だ。
その無抵抗を肯定と見たのか、彼女はショックに止まる彼に腰を彼の陰茎にあてがおうとする。
「んぱっ、えへぇ……♥ ね? いいよね? いいよね?」
唇を離して彼に問うが、最初とは別の意味で上の空のソラニは当然反応のしようがない。
歓喜に頬を染めて、彼女は一気に腰を沈める。
未だ張り詰めていた肉棒は彼女の膣肉を掻き分け、あっけなく薄い膜を破る。
この快感に、石化していたソラニがようやく反応を示した。
「は、あぅぅ……!」
「あぁぁんっ♥ いっ、イイ♥ これ、イイっ♥」
だらしなく舌を垂らし、クーシャは肉棒の感触に喜悦する。
ソラニを放さない尻尾もぎゅるぎゅると力強く締まり、彼女は全身で彼に抱きつく。
さすがにもうこの程度では動揺しなくなった、わけではなくソラニはそれどころではない。
未だ敏感な陰部を締め付ける濡れた膣に、否応なく意識してしまうのだ。
「ねぇ、アナタ名前なにっ? なんて呼べばいいっ?」
そんな彼に気遣うわけでもなく、彼女は今更なことを尋ねる。
強烈な快楽に身を委ねそうになる欲を抑えて、彼は何とか返答した。
「そっ、ソラニ……! ソラニ・ノックスぅ……!」
「ソラニっ! ソラニソラニソラニ! 憶えた♥ 憶えたよソラニぃ♥」
「やっめ、う、動いたら……!」
ずちゅずちゅっ、と淫猥な水音を響かせてクーシャが腰を振り始める。
ソラニはその快楽に打ち震え、彼女の体にしがみついた。
「ソラニぃ♪ ね、ずっとこうしてよぅ? ずっと繋がって、ずっと気持ち良くなろぅ?」
蜜壺から肉棒が抜ける寸前まで腰を引き、子宮に当たる勢いで一気に腰を沈める。
単調ながらムチャクチャなピストン運動に、ソラニは返答するどころではない。
クーシャを力強く抱きしめ、無意味にただ快楽に耐えて絶頂を我慢している。
「……っ! ……うぅ!」
「ずぅっと一緒にいたらぁ、ソラニもクーシャも幸せだよぉ♥」
先ほどのフェラとは比べ物にならない快楽に嬌声をあげる事もなく、クーシャは蕩けた表情で彼に言いつづける。
自分ばかりが情けないように思え、ソラニは羞恥に頬を染めて彼女の首に腕を回す。
そして彼もまた、彼女に身を預けたまま不意打ちに腰を振った。
ちょうど彼女が腰を沈める瞬間だったため、彼の逞しい肉棒は彼女の最奥部に突き立つ。
これにはたまらず、クーシャも甘い声をあげる。
「ふやぁぁぁああ♪」
「……ったく、もう……! さっきから黙って話を聞いていれば!」
ビクビクと歓喜の表情で震えるクーシャと目を合わせず、ソラニはヤケ気味に陰茎を突き出す。
自分自身にも信じられないほどの快感が襲い掛かるが、彼はそれを理性で押さえつけて彼女に叫ぶ。
「はっ、やん♥ 気持ちいぃぃ♥」
「君ばっかり勝手で、ちょっとずるいって……!」
リズミカルに膣内を掻き乱して、クーシャもそれに呼応するようにまた腰を振り始めた。
全身をソラニの体に押し付け、精液に濡れた唇から嬌声を漏らす。
「はぅぅん♥ くしゃって、クーシャって呼んでぇ♥ ソラニぃ、ソラニぃ♥」
「分かったよ、クーシャ……ぁく!」
名前で呼んだ瞬間に、クーシャの秘部がきゅっと甘く締まった。
その感触に暴発的に射精し、彼女はドクドクと流れ込む子種に身を震わせる。
子どものようにソラニを抱きしめ、彼女はだらしなく笑う。
「ふえぇ……熱い、熱いよソラニぃ……♥」
彼女の蜜壺もまた精液を搾りとるようにすぼまり、クーシャが身をよじって陰部を刺激する。
まるで揉みほぐすかのような膣の器用なうねりに、彼は二度目の射精の余韻が冷めないままの刺激に声が出る。
「ふぁ、あうぅ……や、やめ……くーしゃあ……」
だらしなく自分を抱きしめる彼女の名前を呼び、ソラニは彼女に身を委ねる。
精に貪欲な彼女がむろん止めるわけがなく、彼女の動きは徐々にエスカレートしていく。
それどころか、精液がもう出ないと知るや彼女は打ち付けるように腰を振り始めた。
躊躇どころか容赦のない三度目の責めたてに、ソラニは目を白黒させる。
「もっと、もっとぉ♥」
「ちょっ、もう出ないっ!? もう出ないってば!?」
必死に叫ぶが、彼女の耳には届かない。
火照る体を甘えるようにソラニに押し付け、彼女は彼の細い首筋を舐めまわす。
未だ濃い匂いを放つ精液の香りに、くらっと眩暈がした。
「あう……!」
「イこぉ? 一緒になろぉソラニぃ♥」
何度も聞いたその言葉に、ソラニは諦めた。
眩暈のままに混濁する意識は、段々と視界を暗くしていく。
彼が意識を手放す最後に感じたのは、陰茎に感じる激しい快感だった。
◆
「ん、んんぅ……」
眩しい。そう感じて彼の意識はようやく覚醒した。
瞼を開いてみると、そこには白い天井が広がっていた。
見覚えのあるその色合いは、紛れもなく彼の構える診療所の天井である。
状況を確認しようと起き上がろうとするが、金縛りのように体が動かない。
というか、何か柔らかい何かに押さえつけられて動けなかった。
「お、起きたかソラニ」
頭上から声がして、ソラニは首を動かして声の主を探す。
そこには、呆れたように苦笑するグァベルの姿があった。
「あー、その、何だ。お疲れ」
柄にもなく歯切れの悪いその態度に、ソラニの顔がさっと青くなる。
自分の体を見下ろすと、あのときのように自分に巻きつくクーシャの姿があった。
穏やかに寝息をたてて、彼が着ている患者用の衣服に涎を垂らしている。
無論、相変わらず裸である。
「ぐっ、グァベルさん!? こ、これは違うんです! 何かの間違いです!」
「見りゃ分かる。お前さんから襲いかかるとは思いし、気絶してるお前に腰振ってたのはそいつだからな」
「もうちょっとオヴラートに言ってくれません!?」
明け透けな言葉に悲鳴をあげ、不機嫌そうに眉をひそめるクーシャに慌ててソラニは口を押さえた。
その様子をグァベルはにやにやと嫌らしく笑い、巻き煙草を口にくわえた。
「まぁ、何だ? いい嫁さんじゃねぇか」
「胸見て言うの止めてくれません? 奥さんに言いつけますよ?」
「堪忍な、死ぬから!」
ちなみに、グァベルの奥さんはメドゥーサである。
半日ほど石化して気がついたらベッドの上……、なんてことがよくあると彼に愚痴られたことがある。
「ま、お前さんが元気っぽくて安心した。ゆっくり休みな」
「えぇ……、できそうならそうします」
自分の胸元を無意識なのかはだけさせるクーシャに苦笑して、ソラニはベッドに体を預けて脱力した。
赤い頬を気持ち良さそうに胸板に擦り付ける彼女に、同じくグァベルも苦笑した。
「ウチの嫁もこんだけ素直だったらなぁ……」
小さくそう呟いて、グァベルは診療所から出ていった。
窓から見えていた小さな蛇に軽く睨まれていたのに、彼はまったく気付いていなかった。
それが見えてしまったソラニは、背を向ける彼に合掌した。
「ん、んぅぅ……」
その小さな動きに、寝苦しそうにクーシャが唸ってむくりと体を起こす。
くしくしとゴツい手で器用に眼を擦り、寝惚け眼で周囲を見回す。
長い間暗い坑道の中に住んでいたせいで眩しいのか、その目はかなり細まっている。
が、すぐ真下にいるソラニに気付いた瞬間にその目がくわっと見開かれる。
「そ、そ……ソラミ……?」
「ソラニです」
まさか忘れられてるとは思わず、ソラニはこめかみを押さえた。
これから一緒に暮らす女性はその言葉に、あり? と首を傾げていた。
とりあえず、フェラした後にキスしないでと言ったが勿論理解してもらえなかった。
◆
それ以降、彼の経営する診療所でクーシャは手伝いをすることになった。
素直で純粋な彼女は入院する子どもたちと無邪気に触れあい、その様子を窓からソラニが覗いていた。
「……診療所なのに、託児所まで兼職することになるとは思わなかったなぁ」
人間、魔物の入り交じった子どもたちを大きな体にぶら下げて、ずるずると勢いよく這い回っている。
それを追いかける少年少女の笑顔の燦々たるや、眩しい限りである。
そんな様子を微妙な面持ちで見て、ソラニは目の前の書類に頭を抱えた。
「んー……、子どもの名前なんか考えたことないよ……」
13/01/04 20:11更新 / みかん右大臣