読切小説
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雪より白い旅人と
白銀の世界。
初めて見た北極の感想は、その一言でしか表すことが出来なかった。
氷雪の地平線に、降り注ぐ眩い日光。
ストールで隠された口元から、湿気を伴った白い吐息が漏れた。

「凄いなぁ……、寒い」

バタバタと腰巻をはためかせて、ポツリと呟いた。
少しずれたストールを右手で直し、僕はザクザクと雪踏みながら歩む。
そして、遠目からこちらを凝視する白熊に気付く。
じーっと、野生動物特有の何を考えているか分からない黒い瞳。

「やっほー」

手を振ってみる。
無論、返事が返ってくるはずもない。
白熊は可愛らしくきょとんと首を傾げて、ノシノシとどこかへと歩いていく。
それを見送って、肉食動物らしからぬ人懐こさに苦笑した。

「今日はこの辺で野宿するかな……」

足元の氷の分厚さを確かめて、ブーツで適当に雪を除ける。
ドーム型のテントを手早く建て、狭い入口に身を縮めて中に入る。
薄い布きれで出来た簡易テントとは思えない、ログハウスのような内装には何度見ても驚かされる。
ご都合的なこの異常空間は、魔法によって開発された空間らしい。
詳しい原理はともかくとして、内装に暖炉まで備わっているこのテントなら北国のキャンプも容易である。

「快適なのはいいけど、旅の醍醐味も薄れるなぁ……」

狭苦しいテントの中を、ランタンでもつけてのんびりする。
昔はそんな旅を続けていた僕としては、そんな野営も恋しかったりする。
キッチンから漂う香ばしい匂いに、すっかりと忘れていたことを思い出した。
肉を燻製にしようと、貴重な胡桃の薪で燻しておいたのだ。
自作の燻製窯を開いてみると、いい具合に染まったスモークチキン。

「あー……、前の町でお酒も買い足しといたら良かったかなぁ……」

ワインに合いそうなその香りに、少し涎が垂れそうになる。
いやはや贅沢。
全てが自己責任ゆえに好き放題できるこの生活は、本当に捨てれない。
いっそ酒も自分で作れるようにしようか、そう考えて思いとどまる。
世界各地の飲食を満喫するも旅の醍醐味。
これもまた失うには口惜しい。

「そう言えば、ジパング土産のお茶があったっけ」

スモークチキンに合うかどうかはともかくとして。
少し億劫になって手を出し損ねていたアレも何とかしないといけない。

「何事もチャーレンジィー」

前に訪れた国で食べた亀も、意外と絶品であった。
注目度の高いジパングの銘茶ともなれば、味も保障されるだろう。

「あれ……、この辺に置いてたと思うんだ、け、ど……」

整理整頓を全くされていない棚を散らかして、そんな風に呟いた時だった。

「おい」

テントの入り口から、凛とした女性の声が響いた。
こんな辺鄙な土地で人の声が聞けると思っていなかった僕は、慌てて振り向いた。
垂れかかる布を暖簾のように手で押して、そこには確かに女性が立っていた。
それも、かなり異様な格好の。

「アンタ、こんな所で何してる」

詰問するような口調で、そう言う彼女。
アザラシ(?)の毛皮に身を包んだ、半裸の麗人。
この極寒の地では考えられないことに、彼女は上半身の露出が激しかった。
胸部は辛うじてアザラシの手に隠されているが、主張が激しいせいかその膨らみまでは隠せていない。

「…………」

ふわりとしたブロンドの髪に、切れ長の碧眼。
どこか強気ともとれるその面構えとは不釣り合いに、頭にかぶったアザラシの顔は何とも脱力させられるものだ。

「聞いてんのか、ニンゲン」

その一言で、何となく彼女が人間ではないことを察せた。
いや、まぁ……、あんな寒そうな格好で北極を歩く人間なんているわけがない。
それに気付いていた時点で、僕は彼女を魔物と認識していたのかもしれない。

兎にも角にもそんなことはどうでもよく、重ねて問われた僕はここで流石に応答した。

「き、聞いてるけど……」
「じゃあ答えろよ。その口は飾りじゃねーんだろ?」

どこかいいとこの貴婦人のような美しさとは対照的に、乱暴で男勝りの口調。
そのギャップにドギマギしながらも、僕は何とか彼女に応える。

「えぇと……、野宿」
「ふーん? じゃあ目的は?」

そういう彼女の目はギロリと敵意が滲んでいる。
下手な答えを返せば、攻撃も辞さないという声音だった。
しかし、別に後ろめたいこともないため、僕は正直に答えた。

「ただの旅で、特に目的も……」
「ハッ、よっぽど暇なんだな、アンタ」

嘲るようにそう言い、彼女はふいっとそっぽを向く。
その仕草から、少なくとも危ういことになることはなくなったと遅ればせて理解する。
しかし、彼女の右手に掴まれて銛の鈍い光に、少し鳥肌が立つ。
どうにも僕は、ああいった物騒なものが苦手なのは何ともならない。

「ま、変なことをしない限りオレも手出しはしねぇ」

くるりと銛を回し、刃先を収める彼女にホッと胸を撫で下ろす。
荒事に耐性がないわけではないが、少なくとも一悶着起きることはないそうだ。

「が」

そこで、彼女の刃のように切れ長の瞳がギラリと光る。
吸い込まれるような碧い瞳は、明確な敵意に揺れていた。

「オレらに手ぇ出したら、容赦はしねぇぞ」

オレら、と複数の人称が誰を指すのかは分からない。
だが、尋常じゃないほどにぶつけられる敵意に僕は頷かざるを得ない。
まるで、親の仇でも見るような、そんな恐ろしい意志が垣間見えたからだ。

「……えぇと、なんかごめん」

つい、謝ってしまった。
旅先で歓迎されないことは多々あるが、魔物にここまで敵意を向けられたのは初めてだった。
それは即ち、こちらに何らかの非があったとしか思えない。
その原因はサッパリだが、僕は頭を下げる。
そんな僕に毒気を抜かれたのか、彼女はパチクリと惚けたように瞬きする。

「…………いや、謝らなくていい。別に、アンタが何かしたわけじゃないし、まだ」

まだ、という単語に引っかかったものの、僕はその態度に安心した。
別に、僕単体に恨みがあるわけではないらしい。
最初に僕を読んだ呼称、即ちニンゲン相手に何かがあったのだろう。
それをズカズカと聞く勇気はさすがになく、僕は愛想笑いを浮かべる。

「えと、僕はビャク。その、お前は?」

あ、癖でお前とか言ったぞ、僕。
失言だったか、そう思ったが彼女も自身の非礼に膨れており、そう気にしてはいなかった。

「…………アルル」

子供のように頬を膨らませて、彼女はそう言った。
それだけ言って、彼女はくるりと踵を返す。
これ以上話すことはない、そう言いたげに子供のように怒りながら。

「えぇと……、もう遅いし気をつけてな?」

場違いとは思ったが、とりあえず僕はそれだけ言って彼女を見送った。
そんな僕の言葉に、彼女のスピードは明らかに早くなった。

◆ ◆ ◆

翌日、僕は実に適当にワカサギ釣りに興じていた。
格好良く言ってみたものの、僕はワカサギの釣り方なんか知らない。
氷を適当にくり抜いてその水間に釣糸を垂らしている、ただそれだけだ。
餌は、氷づけになった赤虫である。


「ワカサギって何で食ったら美味いかな……」

イメージは、やはりムニエルである。
いや、ジパングで食ったように粗塩のみの味付けも悪くない。
幸いにも暖炉はある。
串刺しで塩でも振って、それで食べるのも美味しそうだ。

「ん?」

背中に、何かが負ぶさった。
それも、ちょっと獣臭く筋肉質な、巨大でフサフサの何かが。
僕の予想では白熊だが、それはちょっと信じたくない。

「グゥ……」

生臭い吐息と、重低音の唸り声。
振り向いてみると、やはり白熊だった。
襲われるならありそうだが、まさか背中に圧し掛かられるとは思わなかった。

「あのー……、重いんだが」
「グ?」

当然、通じてない。
僕の言葉に白熊は、きょとんと首を傾げている。
というか、人懐っこいにも程があるだろ。
見たところ人が住むような環境には見えないが、彼(?)は人に慣れているようだ。

「……おいクマ、肉食うか?」

熊の主食は、やはり肉だろう。
というか干し肉とか食うんだろうか、熊。
絶対にスモークチキンはあげない。

「グル……」

ボン、と。
固い肉球でチョップされた。
何となく、『いらねぇ』と拒否された気がする。
というか、肉球に付着していた雪が素晴らしく冷たい。

「……じゃあ何で僕に構うんだよ……、別におねだりでも無いというに」

ふんすふんす、と鼻息が臭い。
何だこれ、実は中に人とか入ってるんじゃなかろうか。
あの、アルルとか言ったアザラシ女のように、中にまた痴女でも入っているのかもしれない。

「んー……、まぁ重いけどぬくいからいいか」
「グゥ」

そう言えば、子供のころからやたらと動物にモテていたな、と思い出した。
それがまさか、野生の肉食動物にまで反映されるとは思っていなかった。
特に噛みつくでも引っ掻くでもなく、クマは僕の背中に圧し掛かるだけだ。
釣糸には、相変わらず動きはない。

「……あ、もしかしてお前、ワカサギ食いたいの?」
「グル?」
「……………………そうゆうことにしとこう」

無垢に黒いその目には、クエスチョンマークしか見えなかった。
が、適当に納得するのも処世術だ。


そうして、釣糸を垂らして数十分。
赤虫が合わないのか、ワカサギは全く釣れない。

「釣れないなー、クマ」
「そこ、釣れないぞ」

ぎょっとした。
生臭い吐息と重なった、呆れたような声。
吃驚して振り向くと、そこにはアルルの姿があった。

「び、びっくしたー……、お前かよ」
「……いや、どちらかと言うと、オレの方が驚いたぞ」

そう言って指差したのは、僕の背中に乗っかる白熊。
まぁ、傍から見れば素晴らしくシュールだろう。
噛むなり掻くなりの襲撃行為をするでもなく、ただただ僕に引っ付くだけの肉食動物。
恐らくは魔物娘であろうアルルから見ても、やはり異常な光景なのだろう。

「何やってんだ、アンタ?」
「いや……、釣糸垂らしてたらなんか」

後はご覧の有様である。
別に食べ物か何かの臭いを漂わせていたわけでもないのに、妙に懐かれてしまった。

「……アンタ、何つったっけ?」
「ん?」
「名前だよ、名前。昨日、聞いてなかったからよ」
「聞いてなかったのかよ」

まぁ、嫌いな奴の話を意図して聞かない辺りは、まだ可愛げがあるか。
そう思い、改めて名乗りなおす。

「ビャクだよ」
「ビャク、ビャク、ビャク……変わった名前だな」

口の中で小さく反芻し、彼女はそんな素朴な感想を残す。
まぁ……、よく言われる。
生まれの国でも、そんな風に言われた気がする。

「あぁ、でもアンタにはピッタリだな。実際、アンタ白い」

それは、圧し掛かる白熊を指しているのか。
それとも若白髪の結い髪を指しているのか。
まぁ、恐らくは後者なのだろうが。

「外見にちなんでイチイチ名前つけてたら、名前のダブりとか尋常じゃなくなってるよ」
「? じゃあ、なんか別の由来があるのか?」
「いや……、黒より白が良かっただけ」

昔のことを、少しだけ思い出した。
が、僕は意図的に自分の思考を遮るように続けた。

「ていうかお前、今日はあまり殺気ないな」
「……まぁな。何となく、アンタは大丈夫かと思ったから」

それは信頼なのだろうか。

「ふぅん。でも、あまり信用すべきではないぜ、僕は裏切り者だからな」

自嘲気味に、ポソリと呟く。
聞こえないように発した声は、思惑通り彼女には届かなかったらしい。
怪訝な顔で首を傾げるアルル。
そんな彼女に声をかけようとしたところで、白熊がのそっと僕から離れる。
唐突に空いた背中が、素晴らしく寒い。

「どうした、クマ」
「グルル……」

僕の問いに答えることなく、彼は僕を一瞥してノシノシとどこかへと歩いていく。
本当に何がしたかったのか分からなかったが、ふと思い至る。

「ありがとよ、おかげで暖かかった」

通じるとは思ってもいないが、それだけは伝えておいた。
そんな僕を、少し意外そうにアルルが見ていた。

「さて、お前の言うことが正しいならここにいても無駄なんだっけ」

釣糸を引き上げて、釣り具を程ほどに仕舞う。
どこなら釣れるか、何となくそれを聞く気はしない。
今日はあまり敵意がないとはいえ、少なからず嫌われている相手に聞きたくないからだろう。
となれば、正直気まずいし僕はこの場を去ることにした。

「じゃあな」

一方的にそう言って、僕は彼女に背を向けて歩き始めた。
そんな僕を引き留める程度に、僕は彼女に思われていたらしい。
それが悪意か好意かは、計りかねるが。

「おい、待てよ」

乱暴に、彼女は僕の左手を掴んだ。
正確には、左の袖を握った。
今になって言うが、僕には左腕がないから。
その空虚な感触に、彼女の目がぎょっと開かれた。

「ん、何だ」
「…………」

言いたいことは分かる。
こんな意地悪するくらいなら、事情を自分から話した方がいいのかもしれない。

「むかし、切り落とされたんだ」

それ以上は言わない。
簡単に突っ放すと、彼女はぎくりとしたように僕に視線を戻した。
それから、彼女が何もない僕の左袖を凝視していたことに気付いた。

「で、何だよ。お前こそ、その口は飾りじゃないんだろ」

意趣返しに、そんなことを言ってみる。
が、彼女は噛みつくこともなく、茫然と僕の顔を覗き込んでいた。

「……い、や……、な、何でもねぇ……」

敵意は、完全に払拭された声音だった。
ただただ、驚愕に彩られたその言葉とともに、彼女は袖を放した。

何となく。
後味は悪く感じられたが、僕はその場を後にすることにした。
ただ、隻腕を知っただけでああも驚愕する彼女に、少しだけ興味がわいた。

◆ ◆ ◆

「……ビャク、ビャク、ビャク」

昼にあった男の名前を、口の中で反芻する。
もしかしたら、声に出してしまっていたのかもしれない。
片腕の、旅人。
事もなげに、むかし切り落とされたと、アイツはそれだけ述べていた。

「何で、そんなに安く言えるんだよ……」

腕が一本無くなるなんて、大事件以上の大事件だ。
満点の星空を見上げて、自分の左腕を伸ばしてみる。
ミトンのようなアザラシの毛皮に包まれた腕は、綺麗な傷一つない色をしていた。

「オレは、まだ無理だ……」

生々しい記憶は、今も消えない。
目の前で撃ち抜かれた、友達の白熊。
下卑た笑いを口元に浮かべて、容易くも引き金を引いたニンゲンの顔は鮮明に憶えている。
その子供はそれを恨むでもなく、オレに懐き、アイツに懐いた。
受け入れるにも、受け入れたくない。
友達の血飛沫を一身に浴びて、その子供を同情の末に育てたオレには。

「グルル……」

さながら枕代わりのように、腹に頭を置かれた白熊が唸り声をあげる。
気遣うような、そんな色が見えた。

「あ? あぁ……、別に大丈夫だよ……」

名前は、付けなかった。
愛着が湧いても、また殺されるかもしれないと思ったから。
また、何の躊躇いもなくニンゲンに撃たれるのかもしれない。

「……今度は、守るから」

守って、ニンゲンどもを何とかした暁には、名前を付けてもいい。
親の白熊には、自分の名前からアルと名付けていた。
守れなくて、在ると名付けたのに、今は無い。

「……ビャク、ビャク、ビャク」

飄々と、どころか、オレにすら無関心なニンゲンだった。
まるで、害さえなければ全てがどうでもいいと思っているような、不思議な奴だった。
そんな印象を受けたのに、名前の由来で反論を受けたのは少し驚いた。
黒より白が良かった、その意味は分からない。

「わけ分かんねぇよ」

クックッと、笑いが零れた。
不思議と、もう敵意はない。
それは、ビャクが、オレの知っているニンゲンじゃないからだろう。
傲慢に、自分勝手に、この部分は似通っている。
しかし、アイツは、自分以外も見ている。

「確かに、白いな、真っ白だ」

白すぎて、無垢すぎて、眩しい。
余りにも動物的なうえに、意外に人間的だった。
ビャクと名乗った旅人は、自由と言う白紙のような存在だった。

「……ふん、どうせ短い付き合いだが……」

どうせあの調子なら、坊主で戻ったのだろう。
絶好の釣りポイントくらいは、教えてやってもいいかもしれない。
そんな風に、心からアイツを許している自分に、オレは気付かなかった。
正確には、気付く間もなかった。

乾いた発砲音。

聞き覚えのある、火薬の破裂音。
同時に、赤い噴水。
深く淡い水色の氷に、生暖かい血が飛び散った。
オレの、ではなく白熊の。

「な……ッ!?」

混乱して、動転していたせいか、その発砲音の距離を度外視していた。
すぐ傍の氷の小山から、ぬっと二人の男が飛び出してきた。
それに気付いた時には遅かった。
銛に手を伸ばすが、片割れのフードの男にアッサリと抑え込まれる。
細い割に力があり、抵抗空しく固い地面に顔面を強打することになった。

「ガッ!」

チカチカと目の前で星が飛んだが、意識が飛ぶほどではない。
その分、鈍い痛みはリアルだ。

「こりゃいい」

予想よりもずっとハスキーだが、やはり下卑た色の男の声が響く。
吐き気がする。吐き気がする。吐き気がする。
また、目の前で、オレの目の前で仲間を撃ちやがった。
それを、こりゃいい、なんて言葉を抜かして。

「熊皮なんかよりもよほどの上物じゃねぇか」
「だろ? やっぱりセルキーだったぜ、このアマ」

苦しげに呻く白熊など目もくれず、こちらを品定めするように見下ろす男。
幸いにも、アイツが撃たれた部分は足だった。
いや、別に幸いではない。
こんな所でそんな貫通痕、致命傷以外の何物でもない。

「…………ッ!!」
「どうします? こいつ」

もがくオレを抑え込みながら、フードの男は何事もないかのようにそう言う。
酷く屈辱だが、それよりも止血しないといけない。
体温を失うことの危機は、誰よりも熟知しているつもりだ。

「……とりあえず脱がせ。セルキーってのは、それで大人しくなるからよ」
「へへっ、了解っと」

背筋が凍るようなそんな話に反駁する間もなく、羽織っていた毛皮が引っぺがされる。

「やめろッ、この、下種野郎ッ!!」

さすがに、冷静さを失った。
無我夢中で拳を振るうが、腹の立つことに掠りもしない。
それどころか腕を取られ、更に確と抑え込まれる。

「ぜんぜん大人しくなんねーんだけど?」
「そのまま抑えてろ、下も脱がしゃそいつらは赤子と変わらん」
「おい、止めろっつってんだろ……!」

必死に叫ぶが、まるで無視される。
この時、オレは理解した。
こいつらは、オレを対等な生き物として見ていない。
それこそ、店に並んでいる食い物程度にしか、こいつらには見えていない。
確信し、ゾッとした。

「止めろ、止めろ下種共ッ! ぶっ殺すぞクソッタレ!!」

そんな奴らに何をされるかなど、想像は容易い。
上半身の涼しさからではない怖気に、極められた肩関節も構わずに暴れる。

「くそっ、くそっ、クソッ!!」
「おい、さっさとしろよ。こんなんじゃ折っちまうぞ」
「そぉ……らっと!」

ずるりと、尾ひれを象った毛皮もずり下ろされた。
瞬間に、背筋を粟立たせていた怖気は、一瞬で孤独感に塗り替わった。

「あ……ぁ……」

寒い、寂しい。
その二文字が、ひたすらに頭の中を埋める。

「や、やだよ……やめて……!」

寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しいやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい独りはやだ独りはやだ寒い寂しい独り嫌寒い寒い寂しいねぇやめて何でもするから独りはやだ助けて寒い寂しい寂しい寒いやだやだやだお願いやめて寒いねぇやだよ寒いよ誰かあっためてよ寒いったら寂しいったらお願いお願いお願いやだやだ助けて誰か誰でもいいから寂しいってば!!

「お、こいつ中々胸でかくないか?」

背中に乗っかったフード男が、肩関節を緩めてそんなことを呟いた。
無理矢理に私を引き起こして、長銃を担ぐ男にジロジロと不躾な視線に晒される。
足を、脇を、腹を、顔を、髪を、腕を、そして胸を。
嘗め回すような観察が、甚だしく不快だった。

「止めろって、言ってるだろがぁ……!」

言葉に力がこもらない。
怒鳴りたくても、自然と涙声になる。
たとえ怒鳴れたとしても、止めないのだろうが。

「……流石は魔物……、いい体してるな、アンタ」

そう言って、徐に取り出されたのは図太い紐だった。
幾つもあるそれに恐怖を覚えるよりもはやく、両足にきつく幾重にも巻かれる。
縛られてしまえば、抵抗は無意味だった。

「おい、手も縛るから抑えとけ」
「りょーかーい」

軽い調子でそう言い、フード男が後ろから無理矢理に両腕を引っ張り上げる。
もはや抵抗する気力も湧かず、細やかに身じろぎするも呆気なく両手首も縛られた。
マグロか何かのように横たわらせられ、その上に男が跨る。

「折角だ。せいぜい楽しませろよ、女」
「えぇー? 俺ってば見てるだけかー?」
「胸で抜いた後はお前にくれてやるよ」
「よっしゃ!」

勝手な会話が、一方的に頭上を飛び交う。
それに怒りが湧くよりも恐怖が先走るのは、仕方がないだろう。
こんな下種に犯されるなんて、屈辱どころの話ではない。

「や、やめ……!」
「うるせぇよ、女」
「んじゃ、俺も適当に遊ばせてもらおっかね」

跨る男も、フード男もそう言って自らの汚らしい怒張を露わにする。
情けなくも、それを見て悲鳴が漏れた。

「ひ……っ!」
「触り心地もなかなか悪くねぇな」

不躾に掴まれた胸を、乱暴に揉みしだかれる。
その谷間に挟まれるように反り立つ肉棒は、燃えるように熱い。

「やっ、やだ……熱いぃ……!」
「いいなその表情、そそるぜ」

嫌らしく笑い、男は胸を両側から手で挟むように揉みこむ。
ダイレクトにペニスの熱が肌に伝わり、体から力が抜けてしまう。
クラクラと頭にも熱がのぼり、考えるのが億劫になってくる。

「あ、うぅ……」
「この女、弄ばれながら感じてやがるぞ」
「いいねいいね、その表情。口ン中に突っ込んでいい?」
「やめとけ、正気に戻った時に噛み千切られるぞ」
「それもそうだな。んじゃ、お手を拝借っと」

そんな台詞とともに、縛られた両腕に胸に押し付けられた熱さと同じものを握らされる。
ぬるり、と。
熱い何かに濡れていて、ひどく気持ち悪い。

「いやぁ、やっぱムリヤリ扱かせるのは気持ちいいなぁ……♪」
「胸も最高だぜ、すげぇ柔らけぇ」

ネチネチと、粘着質な水音。
胸も手もぬるぬると何かに濡れて、更に頭がくらむ嫌悪感のする臭い。
何よりも、こんな行為をこんな下種共と行っている自分が嫌だ。
惨めで、惨めで、涙が出る。

「う、うぅ……!」
「おぉおぉ嗜虐心そそるねぇアンタ」
「遊郭に売っ払えばいいマゾに調教できんじゃね?」

ギャハハハ、と下卑た笑い。
下品、下劣、下郎、下種ッ!
生まれて初めて、ニンゲンを殺したいとまで思った。
激しく形を変える胸と、熱い何かに濡れた掌に押し付けられる、独特の臭いと熱。
吐きそうだった。

「そういう生意気な面も悪かねぇ。そろそろ一発ぶっかけてやるか」
「へへっ、俺もそろそろ出そうだ……」
「……うぅ!」

言葉の意味は分からないが、碌でもないことをされることは察せた。
身をよじらせて必死の抵抗を試みるが、まるで意味を成さない。
生臭い肉棒の先を顔に向けられた、その時だった。

びゅくっ、びゅる、びゅるるるっ!

「ひ……うっ、やめ……!」

白ばんだ熱い精液が、顔面に大量に降り注ぐ。
汚く、生臭く、熱く、何よりも悍ましい。
両掌も同じく精液をかけられているらしく、ひどく熱い。

「ひひっ、久しぶり抜いたからかなり出たなぁ……♪」
「それもこんな上物の女だ、最高だぜ」
「く……っそ、……クソッタレぇ……ッ!」

にたにたとお里の知れる嫌らしい笑みを浮かべる男二人をねめつけ、わなわなと拳が震えた。

「さって、じゃあ俺が抑えといてやるから、てめぇも楽しめよ」
「待ってましたー! 気が利くねぇ♪」

上機嫌にそう言い、男は足の紐を解く。
怪訝に思い、一瞬でそれは寒気に変わった。
強引に足を広げられ、何をされるか理解したからだ。

「この……ッ!」

さすがに、こればかりは嫌だ。
死んでも嫌だ。
その思いで突き出した足は、フード男の土手っ腹にめり込む。

「ぐぁ……!」

苦しげに呻きながら、フード男はよろよろと腹を押さえて後退る。
一矢報いた、そう思う間もなく、後ろから片足を抑えられた。

「逸るな、バカ」
「くっそ……このアマ……!」

怒りに表情を歪ませる男も、乱暴にもう片方の足を掴む。
必死に暴れるが、びくともしない。
自分の秘部に向けていきり立つフード男の一物が、ゆっくりと近づく。
それが、凶悪な光を放つナイフのように、錯覚した。

「やめ、止めろ……ッ!」
「今更言っても無駄だっつの……!」

そう言って、一気に腰を突き出した男。




その頭を、鈍く尖ったブーツの先が蹴っ飛ばした。

◆ ◆ ◆

なるほど、と。
僕はフードを被った男の頭を力一杯に蹴りながら得心していた。
そりゃ、彼女がニンゲン嫌いにもなる。
少なくとも今、僕も同じくニンゲンが嫌になっている。

「ぐぎゃ……ッ!?」

反応される前に。
右拳に握り込んだナイフを突き出す。
アルルの片足を捕えていた腕に白い刃を沈み込ませ、できるだけ乱雑に抉り抜いた。
その手が、アルルの白い足首から離れた瞬間には、再び足が突き出されていた。

「ぐぶッ……!?」

顔面の鼻っ柱を潰さんばかりの前蹴りに、男の悲鳴が途切れる。
派手に雪をまき散らしながら倒れ込む男二人を警戒しつつ、僕は上着を脱いだ。

「これ、着ろ」
「………ぇ?」

防寒機能に優れた、少しだけ高かった毛皮のコートを羽織らせて、彼女の前に立つ。
何というか、嫌だった。
これ以上、アルルの視界にあの二人を入れておくのが。

「てっめぇ……何しやがる!」

フードが脱げた男は、予想通りの悪人面だった。
その言葉に失笑し、僕は彼に刃先を向ける。

「それ、正気で聞いてるなら殺すぞ?」

なるべく冷静でいよう、そう思ったが言葉の端から殺気が滲んだ。
できることなら生け捕りにして、近国の憲兵に任せた方がいいだろう。
できることなら、だが。

「できるだけ痛めつけて、心無くてもいいからアルルに謝罪させて、絶望させてから僕はお前らを惨殺したい。絶対に、楽に死なすことなく苦しめたいんだ」

素朴な感想を漏らすと、男たちは悪態をつきながら起き上がる。
その片方が、単調な長銃をこちらに向ける。
銃口が詰まらないほどに昏く、黒かった。

「ンな格好つけてよぉ、てめぇのピンチに気付いてますか? アンタ」
「別に格好つけてなんかない。これは僕の意地だ」
「調子乗ンなよクソガキ。今なら神様にでも祈ったら、許してやってもいいんだぜ?」

その言葉に、失笑した。

「この僕が、どの面下げて神様に祈るってんだよ」

元、勇者だった僕。
使命を捨てて、左腕を捨てて、信仰を捨てた僕に、祈る神なんていない。
そんな意思が伝わるわけもなく、男は怪訝な顔つきになる。
一つ嘲笑して、一歩踏み出す。

カチリ、と。

引き金が引かれた。


ガウッ!!


銃弾は、頬を掠めた。
僕の左眼球のやや下を貫通し、頭蓋を砕くはずだった弾丸。
頬に一筋、赤い線を刻んで那由他へと飛んでいった。

「神様に祈った憶えはないけど、許してくれたのか?」

挑発するように、それだけ言って僕は歩行を再開した。
信じられない、と言わんばかりに二人の目が見開かれたが、すぐに次の引き金が引かれた。

ガウッ!!  ガウッ!!
                            ガウッ!!
ガウッ!!

連ねて射出された弾丸は、やはり当たらない。
それはそうだ。
全部躱してるから、当たるはずもない。
しかし、クマやアルルに流れ弾が当たったら事だ。
余裕を持ってプレッシャーを掛けたかったが、そこまで我儘を通すつもりはない。

「お前も、片っぽくらい無くてもいいんじゃないか?」

そう呟いて、フード男の掌をナイフで抉り、もう一人の男は左足でへし折った。
もう片方も痛めつけていいかもしれないが、銃を壊した方が手っ取り早い。
取り落とした長銃二丁を踏み砕き、僕はナイフをフード男に突き付けた。

「じゃあな、ケダモノ。凍傷してろ」

刃先に怯んだ男の首を、ナイフの柄で殴りつける。
そんな僕に慄いたフード男も同じく、いや。
私情を交えて、全力で、体重をかけて、ナイフを握り込んだ右拳で鼻っ面を殴り抜いた。

「ぐぶ……ッ!?」

片腕がない分、僕もバランスを崩して倒れ込む。
幸いにも、男は白目を剥いて仰向けに倒れた。

「ふん……、スッキリしないな」

片手と、両足でバランスを取って立ち上がる。
殺しても大差はないのだろうが、今こいつらにすべきことは余計なことも含めて終えた。
次にすべきは、僕のもっとも苦手な分野だ。

「ビャク……、どうして、……何で……?」

惚けたように見上げるアルル。
されるがままに僕に羽織らされた防寒着を見る。
どうやら、両手を縛られているらしい。

「その前に、クマの止血する。救急セットで、できる限りの処置もすべきでしょ」

なるべく、自然を装ってそう言った。
あられもなく汚された彼女の姿は、まだ精神年齢の低い僕には色々と目の毒だった。

◆ ◆ ◆

「とりあえず、クマは大人しく寝てくれた」

浴槽に浸かったアルルにそう言い、僕は彼女に背を向けて座った。
一人用のテントに、まさか女性と白熊を入れることになるとは思わなかった。
しかし、そこそこに設備が整っていたおかげでクマも彼女も落ち着く余裕があったのは幸いだった。

「だ、大丈夫そう……?」
「僕は医者じゃねえ。でも、素人目で見ても大丈夫そうだった」

何せ、またも僕に圧し掛かろうとしたほどだ。
それを伝える必要は、ホッとしたような吐息のおかげでなくなった。
体を洗う必要があり、寒いのが苦手だというアルルはいま、湯船に浸かっている。

「で、色々と聞きたいこともあると思うけど」

ん、と僕は右手を後ろに差し出した。
前置きもなく差し出されたその手に戸惑う気配が、ヒシヒシと感じられる。
あまり口にしたくなかったが、僕は付け加えた。

「何となく、寂しそうだったから」

あんなことがあった直後に、ニンゲンの手を取ることに抵抗はあるだろう。
しかし、襲われたことよりも何よりも、切なげに涙を流すアルルの姿を見てしまったため、放っておけなかった。
余計な世話かもしれない、そう思って手を引っ込めようとすると、慌てて手を握られた。

「うん……、寂しい……から、一緒にいて……」
「……まぁ、そのつもりだし」

妙にしおらしい彼女の態度に虚を突かれたが、僕も彼女の手をしっかりと握り返す。
小さくて繊細な、紛れもなく女の子の手だった。
魔物なんて、区別する必要もないほどに。

「……ビャクは、何で………………」

そこで、アルルは言葉に詰まる。
何が気まずいのかは分からないが、僕はその先を促した。

「何で助けたか?」
「……………うん」
「見過ごしたくなかったから」

素っ気ないかもしれないが、僕にはそうとしか言いようがなかった。
未だ、勇者だった頃の癖が抜けきらない。
後味が悪いものを見過ごせないタチで、気が付いたら勇者になっていた。
悔いはない。
アルルを助けて、クマを助けて、やっぱり僕はホッとしているから。

「僕はお前のことが嫌いじゃなかったから、見過ごせなかったんだ」

卑屈にも、そう答えてしまった。
まるで暗に、お前は僕のことが嫌いだろうけど、とでも言っているようだ。

「それに、僕は腐っても勇者だったからな」

そんな風に思われたくなくて、僕は爆弾を落とした。
パシャッ、と背後で激しく慄いた気配がした。

「ビャクが……勇者……!?」
「だった、だぜ。今はしがない旅人よー」

努めて、軽く薄く聞こえるようにそう訂正する。
ただでさえ信用ならないニンゲンに襲われた直後に、傍にいる男が勇者だったなんてショックな話だ。
やはり、魔物にこれを明かすと恐れられる、嫌われる。
まぁ、アルルは元から僕に敵意を持っていたから、大丈夫だろう。

「あぁ、大丈夫。別に危害加えるつもりないし……って、信じられるわけないな」

失言だった。
そう思ったとき、手を握る力がギュッと少しだけ強くなった。

「……信じる、よ」
「……変わってるな、お前」

その手が、寒いのか怖いのか小さく震えているのも伝わった。
その上で、僕は信頼されるほどの何かを為しただろうか。
どこに行っても、本当に魔物はよく分からない。

「ま、正直に言えば忌々しい肩書だけど」

何せ、勇者だったから片腕を切り落とされた。
辞めるだけで咎人となるのだから、大した英雄もあったものだ。
その英雄として身に着けた力が彼女を救ったことを、本心としては喜ぶべきではない。
だが。

「お前が助かって、やっぱ嬉しい」

紛うことなく、これは本心だった。
この言葉に返答はなかった。
沈黙だけが続き、そしてそっと手を放される。
もう大丈夫か、そう聞こうと思った。

「助けてくれて、ありがと」

その言葉とともに、後ろから抱きしめられた。
ぬるいお湯に濡れた彼女の体が、僕に密着する。
両手を胸に回され、柔らかな感触が背中に押し付けられる。

「……………………………あ、の……アルル?」

声が、掠れていた。
予想以上に、僕は動転してるらしい。
僕のささやかな問いかけに返答はなかったため、僕はドギマギしながら続けた。

「か、感謝の言葉を嬉しいんだけど……、その、なぜに抱きしめます?」

襲われたならともかく、後ろから親愛の力強さで抱きしめられている。
それを無下に突き放せるわけない。
僕は、自分で言うのもなんだが、敵意よりも悪意よりも、情に脆い。
固くなる僕とは対照的な、柔らかい体を僕に押し付けたまま、彼女は答える。

「寒いから」

実に明快な理由だった。
反論の余地もない、実に端的な理由だった。

「…………そ、そうですか」

緊張が抜けきらないまま、僕は声を上擦らせてしまう。
嫌われこそすれ、まさかこんな風に抱きしめられるとは思わなかった。
寒いから、と一蹴した割に、胸を締め付ける腕の力加減はどこか優しい。

「あと」
「はいっ!?」

唐突に付け加えられて、かなり吃驚した。
そんな僕が可笑しかったのか、クスリと笑う声が聞こえた。

「ちょっと、上書きしたかっただけ」

あんな奴らに抱かれたままなんて、やだ。
子供っぽく、イタズラっぽく、そう耳元に囁かれる。
……な、何だこれは。
おかしい、確実に変だっていうか。
アルルってこんなキャラだったか!?

「えへへ」

こんな風に笑うキャラじゃねぇよ絶対!
何これ超怖いんですけど!?
実は偽物ですみたいなオチないよな!?

「ビャク、あったかいね」
「そ、う……?」

あったかいのは、どちらかと言うと風呂に浸かっていた彼女だろう。
確かに僕も、彼女の触れる背中が心地よく温かい。
そう言えば、久しく僕は人肌に触れてなんていなかったなと、ふと思い出した。

「……うん、あったかいな」

心臓ははち切れんばかりに脈打っているが、どうにも心は穏やかになる。
いや、まったく落着けないが、不思議と穏やかだ。

「私、独りじゃないよね?」

キュッと、僕を抱きしめる腕に力がこもる。
柔らかい彼女の胸が、僕の背中に潰される。
その感触に、ゾクゾクと鳥肌が立った。

「……うん、僕がいるから」

少し、声が上擦った。
息が苦しいのは、動悸が激しいからか、力強く抱きしめられているからか。
それを考える間もなく、ずるりと僕は引っ張られた。
と言うよりも、彼女に浴槽に引き込まれた。

「うわっ!?」

唐突な行動に判断が間に合わず、踏ん張ることもできず僕の体は湯船に落ちる。
ぬるま湯を吸った衣服が肌に張り付き、そんな僕を彼女は足を絡ませて全身で抱き着いてくる。
胸どころか、全身が密着する形になり、僕はさすがに平静を保てなくなった。

「ちょ、あ、アル、ル?」
「こうした方が、もっとあったかいもん」

チャプン、と。
小さな浴槽に、波音が一つ。
僕は彼女に後ろから抱き着かれたまま、だいぶ冷めてしまっていた湯船に浸かっている。
アルルの拗ねたような口調は、再び耳元に妖しく囁かれた。

「ビャクだって、嬉しいでしょ?」

そう言うアルルの手が、胸から腹筋をなぞり、ゆっくりと下腹部を撫で、僕の股間をまさぐり始める。
チュニックを捲り、ズボンの縁を掴んでずり下ろす。
如何にも魔物らしく、彼女は僕の愚息を抵抗なく晒した。

「ほら、おっきくなってる……♥」
「いや、こ、これはその……」

正直、僕はらしくなくかなり慌てていた。
あんな、レイプ寸前に追い込まれて、トラウマになってもおかしくないというに。
何故か今、僕はその被害者であるアルルに襲われかけていた。

「それより、お前、その、大丈夫なのか……?」

自分でもデリカシーに欠ける質問だというのは分かっている。
だが、自分の貞操の危機と比べればデリカシーなど安いものだ。
僕の質問に、アルルはしばしきょとんとしていたが、何を言いたいのか理解したのか、ギュッと僕を抱きしめなおした。

「ぃう……っ!」

だから、背中に胸が。
慄くほどに柔らかい感触に、変な声が出てしまった。
そんな僕に構わず、アルルはひどく優しい声音で、僕の耳に囁く。

「私は、ビャクにあっためてほしいの」

あいつらじゃなくてと、言外に伝わった。
それに、と彼女は付け加える。

「私といま、一緒に居てくれる君が、私は大好きだから」

だから、あっためてほしい。
酷く蠱惑的な甘い声に、強張っていた僕の体から力が抜けた。
それをどう捉えたのか、アルルは背中から離れて、僕と正面から向き合う。

「えへへ……、やっぱ前の方がいいや」

そう言って、少し飛びつくように僕の体に身を預ける。
滑らかな腕を背中に回し、艶めかしい足を絡ませて、柔らかい胸を押し付けて。
繊細すぎておっかないその華奢な体躯を、僕に密着させた。
その体には、確かに人の温もりがあった。

「ねぇ、私の毛皮、どこに置いた?」

胸板に頭を押し当てて、彼女はそう尋ねる。
激しく脈打つ心音を聞かれて、かなり恥ずかしい。
ごくりと生唾を飲み込んで、僕は辛うじて彼女に応えれた。

「よ、浴槽の、すぐとなり……、風呂、出たら着るかと思って……」
「ありがと、ビャク。いま、着たい」

一緒に、着よ。
その言葉に、頭が熱病のようにクラクラした。




ジーッとチャックを閉めると、二人では窮屈なのではないのかと思っていたアルルの毛皮は意外にもかなりフィットしている。
それゆえに、途中で手を止めてしまった。

「どうしたの、ビャク?」

頭に呑気なアザラシを被ったアルルは、未だ甘え声のままだ。
子供が早く早くと急かすような、ねだるような声色に、やはり手は動かせない。
先刻にレイプされかけていた彼女に、僕は触れてもいいのか。
それにすら抵抗のあった僕は、いま何をしようとしているのか。

「……もうっ」

考える間もなく、アルルの手が腰に回され、強引に引っ付くことになる。
超えてはならないと思っていた一線、僕の逸物は何の抵抗もなく彼女の秘部に沈み込んでしまった。
処女膜を破る未知の感触が、一瞬だけ亀頭を苛む。

「あぅあ……っ!」

熱い。
寒いと言った彼女の膣内は、まるでペニスが蕩けるのではないかと思うほどに熱い。
ごりごりと彼女の蜜壺を軋ませて、最奥部にこつんと亀頭がぶつかる。
何の躊躇いもなく僕を押し込ませたアルルは、だらしなく口をあけてぶるりと一つ震えた。

「あ、あぁ……ぁ、ビャクが、全部、入ってるぅ……♥」
「は、ぁ……っ」

嬌声を上げる彼女に対して、僕は吐息ひとつ漏らすのにすら苦労した。
全身を貫く快感を堪えるのに、ただただ必死だった。
甘く締め付ける膣の感触に、咄嗟に腰を引こうとする。
が、いつの間にかファスナーは閉まっており、まともに逃げることなんてできなかった。
中途半端に腰を引いたせいで、愛液に濡れた肉洞に扱かれる。

「うあっぁ……!」
「ぁ♥ ぅん♥ んくぅぅぅ……♥」

恍惚の声を上げて、もぞもぞと腰を揺らすアルル。
温かなぬかるみの中に沈んだままの肉棒は、容赦のない快感に晒される。
狭い膣から、淫らな水音が漏れる。
カリや竿を扱く柔らかい膣の感触に、力んでいた体が脱力する。

「はっ、あ、ぅぅぅ……っ」

油断すれば、今にも射精しそうなほどだった。
堪えるように、力を込めて右腕でアルルにしがみつく。

「うっあ……待って、待ってくれ、アルル……」

しがみつく、と言うよりも、片腕でできるのせいぜい凭れかかる程度のことだった。
そんな僕の背中に手を回して、アルルはしっかりと抱きとめる。
胸板に押し付けられる圧迫感を意識することもできず、僕は呻くばかりだ。

「う、あぁ……っ」
「あぅ♥ ビャク、あったかいねぇ♥」

熱っぽい吐息が頬をくすぐり、頭の中まで蕩けてしまいそうだ。
小刻みに腰を揺する感触に、狭い膣内で絶え間なくぐちゅぐちゅと擦れあう。
僕の待って、という静止は全く届いていなかった。

「ひぅっ、あっぐ……っ」

何故か、出していけないと頭の中では警鐘が鳴り響いていた。
勇者だった頃の教えが頭に残っているのか。
それとも、未だに辱められた彼女に遠慮しているのか。
他に何かを思考するほどの余裕などなく、僕は必死に下腹部から競り上がる甘い疼きを必死に我慢し続ける。

「ダメぇ……、うぁっぁ……っ」

それでも、限界は容易く訪れる。
びくりと体が大きく痙攣し、彼女の体に右腕でしがみつく。
出るか、そう思ったが、何とか堪え切ったらしい。

「中も、中もあっためてぇ、ビャクぅ♥」

しかし容赦なく、彼女は僕に死刑宣告をする。
ぬりゅ、と。
恐ろしいほどに抵抗なく、僕の肉棒は再び彼女の最奥部まで埋められる。
絶頂しかけたペニスに与えられたその刺激は、容赦のない止めとなった。

「うっああぁ……!」

びゅくっ、びゅるるっ、びゅるるるる!

頭の中が真っ白になる。
脈打つ陰部が見えないのが幸いと言うべきか、生々しく伝わる射精感に絶望するべきか。

「ふぁっ、あっあぁぁ……あったかいぃ……、ビャクの、あったかぃぃ♥」

ギュッと僕をより一層抱きしめて、彼女はふるふると小刻みに震える。
恍惚に浸る嬌声に耳を犯され、僕は完全に力が抜けて彼女に凭れかかる。

「あっ、ぁ、ぅぁ……!」

ドクドクと、最後の一滴まで搾り取られ、尚も解放される気配なく背中を撫でる優しい手つき。
全身が火照ったように熱く、同じように彼女も体も熱い。

「あぁ、もう……どういうことなの……」

愚痴るように、独り言ちる。
犯される寸前だった彼女に、何とも情けなく犯された。
不思議と不快でないのは、きっと、彼女と同じだ。
僕も、この場で一緒に居てくれるアルルのことが好きなのだろう。
今更気づいたことが、尚更恥ずかしい。

「もっと、もっとあっためてぇ、ビャクぅ……♥」

余韻に浸っていたアルルが、甘えた声で僕にねだる。いや、強請る。
現に、僕の逸物は最奥部まで埋められたままシェイクするように嬲られている。
小刻みに腰を振り、甘い刺激が脳髄にまで響く。

「あぁ、もう……」

これで、僕の遠慮は瓦解した。
右腕を彼女の頭に回し、逃がさないように力を込めて引き寄せる。

「んむゅ」
「ん……っ!?」

情事が始まり初めて、アルルのとろんと垂れた瞳が丸くなる。
その唇の隙間に舌を割り込ませ、彼女の舌を絡め取る。
他人の唾液の味は、否。
愛しいアルルの唾液の味は、意外にも甘かった。

「ん、ぇる、ちゅ、づるっ……」
「………………っ!?」

バタバタともがくアルルを力ずくで抑え込み、そのままディープキスを続行する。
何となく、してやったり。
口腔を舌で撫でると、彼女の体がびくりと跳ねる。
どうやらここが弱いらしいが、あまり動かれるとこっちも危うい。
彼女の動きは、容赦なく僕も苛んでいるのだから。

「んっ、れる、んちゅ、ちゅむっ」
「んっ、んんんんっ、んん――!」

口内は全く抵抗することもなく、しかし僕から離れようともがくアルル。
ぬぢゅっ、と接合部から淫猥な水音が響く。
強引に離れようとする彼女に、僕は彼女がしたように全身を押し付ける。
狭い浴槽で、まるで僕が彼女を押し倒したような形になる。
そのまま抵抗するアルルとのキスをたっぷりと堪能し、僕は彼女を解放した。

「ん、ぷぁ……」

てらてらと唾液に濡れた唇が、銀色の糸を引く。
そんな僕を見つめる彼女の瞳は、熱っぽく蕩けていた。

「あったまった?」

聞くまでもない。
耳まで朱に染まった彼女の口角が、にんまりと吊り上がっている。

「んちゅっ♥」

今度は、アルルが僕に唇を押し付けた。
逃げるつもりもなかったが、背中に回されていた手がいつの間にかがっちりと頭を押さえていた。
無理に押し付けられた柔らかな唇が潰れ、ざらりとぬめった彼女の舌が僕の舌に絡みつく。

「ちゅ……んはぁ、んっ、れる……ぇる♥」

ずちゅっ、と淫猥に湿った音。
僕の口内を貪るように舌を這わせる彼女が、上下に腰を振り始めたのだ。
にぢゅっ、ずちゅっ、と、
一回の射精では萎えなかった僕の剛直が、彼女の膣肉を掻き分ける。

「んぅっ、ぅんっ、ぁっんぁ……!」

下が動き始めると、どうにも力が抜ける。
真の拷問は快楽によるもの、なんて先駆者の言葉を思い出す。
抵抗なんか、できそうもない。
喘ぎ声を漏らすまいとしようにも、彼女は容赦なく口腔を舐めまわす。

「んんっ、れろ、づぢぅ、ぇる、ぁ♥」

唇と唇の隙間から、彼女の嬌声が聞こえる。
快楽を貪るような、甘く蕩けた声色。
残念ながら、僕にはアルルのように楽しむ余裕などない。
波のように訪れる快楽を堪えるのに、ただただ必死だ。

「ぅっん、んんぁ、ぁっ、んんぁぁ……っ」

最初は小刻みに振られていた彼女のピストン運動は、かなり勢いづいていた。
ずるずると亀頭まで抜ける寸前に腰を引いたかと思えば、ごりごりと蜜壺の中を無理矢理に押し込ませる。
勢い余って何度も子宮口を小突くことになり、その度に頭の中で何かが弾けそうだ。

「んちゅぅ、んっ、ぷぁ……えへへへぇ……♥」

ようやく僕の口を解放し、糸を引いた自身の唇を指先で触りながら、彼女は甘え声を出す。
そして不意打ちに、ぐりゅ、と。
亀頭が子宮口に捻じ込まれる。
その感触に、悲鳴のような嬌声が漏れた。

「ぁっうぁぁぁぁ……!」

歯を食いしばって我慢するには、強烈な快感だった。
そのまま嬲るように、彼女は円を描くように腰を振り、ぐりぐりと亀頭を嬲る。

「これが気持ちいいの……? ねぇ、ビャクぅ……♥」

小悪魔的な声で、そう尋ねながらも腰は止めない。
返事なんてできそうもない快楽に晒され、僕は喘ぎ声しか返せなかった。

「あ、あぁぅぅぁ……っ」
「……えっへへぇ……、えいっ♥」

そんな可愛らしい掛け声とともに、彼女は力一杯に僕を抱き寄せた。
当然、更に僕の肉棒が彼女に沈み込むことになり、一層深く彼女を抉ることになる。
敏感な亀頭が、子宮口に抉り込み、堪え切れずに弾けた。

びゅるるるっ、びゅくっ、びゅるるるるるっ!

「ひっぃあぁぁぁぅぅ……っ!」
「うぁぁ♥ 大好きぃ、大好きだよビャクぅ……♥」

二度目の迸りであるにも関わらず、脈打つペニスの勢いは衰えていない。
彼女の蜜壺に溢れんばかりの白濁を注ぎ込み、ついには意識が朦朧としてきた。
力の抜けかかった右腕を懸命に伸ばし、彼女の体を力一杯抱きしめて、僕は意識を疲労に委ねた。

「アル……、ル……」

瞼も、頭も重い。
しっとりと汗ばんだ彼女の弾力のある胸に凭れて、本格的に頭が朦朧とする。
睡魔に呑まれ、ぼーっとする頭の中、そう言えばと思い出す。
彼女の言った、大好きという言葉に、返事をしていなかった。

「……僕も、お前が………大……好きで……」

そこで、ぎゅっと抱きすくめられた。
彼女の柔らかい胸に口が塞がれ、最後まで言うことはできなかった。
優しい手つきで、僕の髪を梳いて、アルルは僕に囁いた。

「ちゃんと、伝わってる……♪」

その言葉を最後に、日付変更線を越え、僕は体を彼女に預けたまま眠りに落ちた。

◆ ◆ ◆

「………………」(ぎゅー)
「……あの、アルル?」

翌日、僕は未だにアルルの、アザラシの毛皮から解放されていない。
無言で僕にしがみつく彼女に、さすがに僕は本音を口にする。

「その、動きづらい」

現在、太陽は真上に位置している。
別に真昼間まで惰眠を貪っていたわけではない。
この地域の治安管理を近国に掛け合う為にも、僕としては早朝にでも出発しようかと考えていたほどだ。
その予定がこうも遅れているのは、愛おしい彼女が僕を放してくれないからだ。

「……だって、離れたら寒いじゃん」

拗ねたような口調は、敵意こそこもっていないものの初めて会ったときに戻っている。
まさか、ここまで駄々甘えになるとは思っていなかった。
無論、甘やかしたいのだが、これでは旅どころの話ではない。

「そうだよ、ビャク。ここでずっとこうしてようぜ」

旅の話を折られた。
しかし、その誘いは魅力的だ。
文句はないし、人目を憚ることなく彼女とずっと暮らすのは、きっと悪くない。
でも、個人的な意地が、やっぱりある。

「それも悪くはないけどさ、僕としてはアルルと一緒に旅したいんだ」

彼女には、ニンゲンを悍ましく、汚らわしく、恐ろしく思ったままでいさせたくない。
今まで自分の足で歩いた国々は、大小の差こそあれど、いい人だっていっぱいいた。
ここで、ずっと独りぼっちだった彼女には知りえない世界を、僕は知ってほしい。

「というか、一緒に行こうよ、アルル」

背中から体重をかけるように抱きつく彼女に、そう聞いてみる。
ひょっとしたら、嫌だって言われるかもしれない。
いや、その可能性の方が高い。

「………………」

人の悪なるところをまざまざと見せつけられ、これ以上ニンゲンと関わりたくない。
そう思われても仕方のないほどに、彼女の負った傷は大きい筈だ。
彼女が行きたくないというなら、僕は彼女を癒してあげたい。
一人の人間として、彼女を愛する身として。

「……じゃあ」

おっかなびっくり。
意地っ張りな彼女にしては、よほど緊張しているのか、声が掠れていた。
その一言一句を聞き逃さないよう、僕は黙って耳を傾ける。

「……オレ、ビャクが今まで見てきたとこを、見てみたい」
「………………」

本当に、可愛いことを言ってくれる。
黙りこくる僕の背中にぐりぐりと、不安げに頭を押し付ける彼女に僕は大きく頷いた。

「あぁ、僕が案内してやる」

僕を気遣ったのか、本心からなのかまでは聞くつもりはない。
ただ、そんな可愛いことをねだられてしまったら。
プランニングを頑張りたくなるのが、僕だ。
彼女が安らげる、優しさに溢れた、僕が見てきたところを案内しよう。

「でも、そのときでいいから頼みたいことが一つだけあるんだ」

僕もずっと一人だったから、たぶん憧れていたことだった。
怪訝な雰囲気を醸し出す背後に、僕は苦笑する。

「僕の手を、握っててほしい」

言うや否や、僕の右の掌に、細い指が絡んだ。
ギュッと握られ、彼女がドンと背中に頭突く。

「そんなの、いつでもしてやるっつの」

お前も、ちょっとはオレに甘えろ。
そう付け加えられた。





僕の道連れは随分と甘えたがりで、甘やかしたがりだ。
左腕のない僕と、独りぼっちだった彼女と。
寄り添って歩くこれからの旅が、実はこのとき、物凄く楽しみだった。
13/05/10 17:15更新 / みかん右大臣

■作者メッセージ
セルキィィィィイイイイイ!!
フカフカさせてくれぇぇぇ!!


……ふぅ。
どうも、みかん右大臣です。
セルキーが愛しすぎてヤバく、私はいまセルキーと結婚する手段ばかり考えています。
とまぁ、冗談はさておきまして。
…………凌辱って、アレでいいのかな?
若干の不安を残しながら投稿してしまいましたが、なんというテンプレ悪役。
もしまた凌辱描写を書くときは、登場キャラも汚した方がいいのかなぁ。
あぁ、無理だ。図鑑魔物が屈辱にまみれながら犯されるとか耐えられません。
だって全部好きだし!(でも凌辱描写を書くのではなく見るのは好き)

というわけで、最後まで見ていただきありがとうございました。
感想、批判、誤字脱字報告などありましたら、あったかくお願いします。
できれば人肌の温度が好ましいです。
それでは。

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