薄墨色の写真集。
「これは……、一雨来るかなぁ……」
掌をどんよりとした鉛色の空にかざして、青年は呟いた。
手には黒い箱に大きなレンズがついたような、すこし簡素なデザインの小型機械を持っている。
最近、ある港町のサバトが開発した『カメラ』という代物らしい。
詳しい原理を彼は理解できていないが、どうやらボタン一つで風景を正確に写しとる機械らしい。
青年は、そのカメラを首から提げ、背中にはスカスカのバックパックを背負っている。
「えーと、この辺に町ってあったっけ?」
そのバックパックから無造作に地図を取り出し、青年は近くにあった切り株にそれを広げた。
少し痛んでいて、古めかしい地図だが彼は関係なくそれを読みながらしきりに頷く。
「ふんふん……、こっから北に二キロ地点に小さいけど村があるのか」
すぐそこだな、そう呟いて彼は地図を閉じる。
どうやら目的地が決まったらしい。
「綺麗なところだったらいいなぁ……」
期待に満ちた、ワクワクといった表現が正しいあどけない表情でカメラを撫でる青年。
そのカメラの角には、小さく『ルナ』と刻まれていた。
「さて、先を急ぎますか」
快活にそう言い、ルナは歩き始める。
『魔界』と化した、小さな村へ。
---------------------------------------------
「あー良かった。間に合ったかも」
昼というより夜に近い鈍い薄暗さに不安を抱いていた彼は、小さく安堵のため息を吐いた。
彼の視界の奥には、細々とだが幾つかの民家が見える。
どうやら、例の村が近づいてきたようだ。
「しっかし、天気悪くなったなー」
不思議なことに、彼がその村に近づくごとに天気が目に見えて崩れ出したのだ。
彼が空を見上げると、分厚い暗雲が陽の光を完全に遮っていた。
それだけの悪天候なのに、雨が一粒も降ってこないのが逆に不気味だ。
そんなことを思いながら一歩踏み出した、そのときだった。
「……ん?」
ルナが唸る。
「なに……、この妙な空気……?」
スンスンと鼻をヒクつかせながら周囲を警戒するルナ。
ぞわぞわと背筋を蟲が這いまわるような悪寒に、彼は汗を垂らした。
「変な匂いはない、気温も平常……でも、音がないな」
その通りだった。
当然のように虫や動物の鳴き声はなく、空気の流れる音さえなく、あまりの無音にルナは耳鳴りを感じた。
その上、肌で感じる空気の重さに彼は一番の違和感を覚えた。
「……ヤな雰囲気」
一瞬、道を戻ろうかと迷うがこの悪天候だ。
雨具はあるにはあるが、あまり好んで使いたい代物ではない。
「仕方ない、行くか」
周囲を警戒しながら、彼は慎重に歩を進める。
ありえないほどの静けさに、彼が生唾を飲み込む音が一際大きく響く。
そのままゆっくりと……、民家の見える方向に進んでいくが彼はハッと息を呑んだ。
ひっそりと立つ民家の間に、明らかに異質なモノがそこにはあった。
ぼたぼたと粘っこい液体を落とすドス黒い球体。その上に、ぺたりと人が座り込んでいた。
「魔物……いや、人か……?」
大きな瞳を細めて呟くルナ。
しかし、人というにはあまりに異様な光景だ。
動く気配もなく、こちらに気付く様子もないその物体にルナは警戒心を強く抱く。
「あいつ以外……、誰もいないのか?」
逃げるべきかもしれない。彼の本能は、アレが危険だと直感していた。
だが、同時に何故かその姿に心惹かれるモノもあった。
「……他に行くアテもないし、ね」
自分に言い訳するようにそう呟いて、彼はそろそろと村に近づいていく。
近づくと同時に、その人物が女性であり、また全裸であることが分かった。
ますます魔物、という単語が警鐘を掻き鳴らすが彼はそれでも歩くのを止めなかった。
そしてついに、黒い球体に乗った少女がこちらに気付いた。
バッとすごい勢いでこちらを振り向く彼女と視線が合ったルナは、気まずげに片手を挙げた。
「えと……、こんにちは」
間の抜けたルナの挨拶に、少女はますます彼を凝視する。
吸い込まれるような真っ黒なその瞳は、どこか虚ろげだ。
「オトコ……」
ぽつりと呟いた彼女の声は、ルナの耳には届かなかった。
とりあえず、目のやり場に困ったルナが顔を背けながら問いかける。
「あ、あの、寒くないですか?」
そう言ってごそごそとバックパックを漁り、中からずるりとポンチョを取り出す。
「とりあえず、これ着ません?」
そう言って目を背けたままポンチョを差し出すルナ。
ぼたぼたぼたぼた、と球体からタールのような液体を零しつづける音が響く。
「オトコ、だぁ……♪」
にんまりと口の端を釣り上げて言う少女。が、またもルナには聞こえなかった。
そのまま黙ってポンチョを差し出すルナに、球体から触手が複数生えた。
何本かの触手が、無防備な彼の腕を捕らえる。
「う、わ!?」
いきなりの不意打ちにルナは驚いたかのような声をあげる。
粘土のような感触がぐちゅぐちゅと嫌な水音を立てながら、手足から彼にずるずると絡みつく。
「ひ……っ!?」
まるで蛇が這いずるような感触にルナは鳥肌が立つ。
くすぐったいような感覚に最初に湧いたのは嫌悪感で、今すぐにでも振り払いたかった。
ブンブンと手を振り回すが、触手は離れる気配なくそのまま胴にも巻きついてくる。
「は、な、せぇ……っ!」
触手から腕を引き剥がそうと腕を引っ張るがびくともしない。
そのまま触手は胴から足にも巻きつき、彼の体は宙に浮かされた。
「うわ……っ!」
バランスが取れずに体勢を崩した彼に、チャンスとばかりに触手が絡みつく。
そして、とうとうルナの体は頭部を残して全身を触手に巻き取られてしまった。
「放せ、放せよ、この……っ!」
ルナは暴れようとするが、触手の力は彼が思ったよりも強い。
そのまま触手は、彼を捕らえたままドス黒い球体に戻り始める。
同時に、彼に巻きついている触手がぐちゅぐちゅと活発に蠢きだす。
「あ……、ちょっ……、う、動くなぁ……!」
股間部を擦るような触手の動きに、少年の体から力が抜けた。
擦るように、絡みつくように、泥のような触手が陰茎を苛む。
服越しでも感じる、異質な快感に彼の声は上ずっていた。
「あ、はぅぅ……!」
袖や裾から触手が服の中に入り込み、そのダイレクトな感触に彼の肩がぴくりと動く。
べちゃべちゃと多分に水分を含んではいるが、同時に粘度もあるような感触。
それがいま、袖からは二の腕を、腋を伝い。
裾からは脹脛を、太腿を伝って絡んできている。
こそばゆいような感触にルナは抵抗も出来ずに悶えていた。
「や、やめっ……、あぅ!」
ぴちゃ、と。水音をたてて触手が亀頭に張り付く。
にゅるにゅると撫で回すような触手の動きに、我慢しきれず彼の陰茎が大きくなる。
その様子を見ている少女はクスクスとおかしそうに笑っている。
「ねぇ、気持ちイイ? こんな触手でタッてるの?」
「そん……な、わけ……あっ!?」
挑発するような彼女の言葉に対する反論は、またも触手によって阻まれる。
ずりずりと擦り付けるように触手が彼のペニスを包み、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音をたてて蠢いているのだ。
異様な感触、人外の未知の何かに辱められている妙な感覚に、彼は深く息を吐いて落ち着こうとする。
「あ、ふぅぅぅ……ん……ふぁ……!」
だが、そんな抵抗も虚しく耐えようとしても体は正直だ。
我慢汁でも出てきたのか、ややぬめりけの増した触手は容赦なく彼の股間を責め上げる。
その間も、撫で擦るように腋や太腿の触手は絡みついてくるのだ。
「……ん……っくぅ……!」
声を漏らさないようにぎゅっと口を閉ざすが、唇の端から自分のものとは思いがたい甘い声が漏れる。
その声に少女はかくんと首を垂れて、あはっと口をあけて笑う。
「女の子ミタイナ声あげるんだネ、キミ。あはっ、あはは♪」
歯を食い縛るように意味のない抵抗を続けるルナは、今度は反論しなかった。
そうでもしないと、耐えられないらしい。
「我慢してるノ? 無駄だと思うケドな〜♪」
無邪気な子供のような声に薄目を開くと、目の前に大きな黒球があった。
同時に、サッとルナの血の気が引いた。
さっきからこの黒球から伸びた触手だけでこんなに気持ちいいのに……、もしこの黒球に包まれたら?
ゾッと、背筋に悪寒が走った。
「は、離せぇううぁう!?」
叫んだ声は奇妙な音階でとち狂う。
竿をべちょりと舐め上げるような感触のせいだ。
「何で? 気持ちよく、シてアゲルよ?」
小首を傾げる彼女に荒い息を吐きながら、ルナは絞るような声を出す。
「ヤ、だ……、イヤなんだよ……ぉ!」
ルナは具体的に何がイヤなのかは分からない。
ただ、彼の直感が告げていた。あの黒球に呑まれたら、もう戻れない。そんな気がした。
それを察したのか、少女はうーんと可愛らしく唸り始める。
「そんなにイヤなら仕方ないカナ〜」
そう言ってニコッと見た目相応に微笑む彼女とは裏腹に、触手の責めは激化した。
「ひゃうぅあ!?」
ルナの喉の奥から甲高い悲鳴が飛び出す。
ずるるるる、と陰茎を吸うように収縮する触手。
それだけでなく、竿を、カリを、まるで無数の舌で舐めるかのような感触。
「や、めぇ……うあぅぅ……!?」
通常ではありえないような刺激に、ルナの意識が真っ白になった。
びゅく、びゅるっ、びゅるるる!
一瞬、ペニスが痙攣したかと思うと白く濁った精液が勢いよく射出される。
それを吸うように、触手が彼のペニスを吸うように収縮する。
ルナの体が、その絶頂によりぐったりと脱力した。
「あぁ……うぅ……」
情けない息を漏らして俯く彼に少女が童女のような笑みを浮かべる。
「久しブリのオトコだからはしゃいじゃったナ♪」
そう言って彼女は、ト……、と地面に飛び降りる。
黒球から伸びた触手はルナからしゅるしゅると離れ、ルナの体が地面に横たわる。
「ホントはキミが欲しいケド、これで我慢してアゲルね」
ルナを見下ろしながら、少女は妖艶に微笑んで彼の足元にまで歩み寄る。
異様な絶頂により未だに力が入らないルナは、抵抗も出来ずに荒い息を吐いている。
「何、を……する気……だ?」
切れ切れにそう問い掛けるが、彼女はにっこりと微笑むだけだ。
何をする気なのか、ルナにもおおよその見当はついていた。
「気持ちイイことだヨ?」
そう言うや否や、黒球から触手が伸びて一気に彼のズボンをずり下ろした。
ぼろりと、ルナの怒張が外気に晒される。
「へぇ、実際に見るのハ初めて……カナ」
「うぅ……」
まじまじと滾った陰茎を見つめる少女に、ルナの顔は羞恥で赤くなった。
一度果てたとはいえ、まだまだ大きかった。
「キミ、名前は?」
唐突にそう言ってかくんと首を傾げる少女。
ルナは、言うべきかどうか迷ったが彼女の背後で触手がわきわきと蠢き出したので慌てて答えた。
「る、ルナ! ルナ・スタンフォード!」
「ルナ……ね。にひっ♪ 女の子みたいダネ?」
歯を剥き出しにしてにひひと笑う少女の笑顔は歳相応でかわいらしいが、彼女の陰部付近からは黒球のものと思しき黒いタールのような液体がぽたぽたと滴っていて不気味だ。
ごくりと、ルナは生唾を呑みこんだ。
「ルナにいいこと教えてアゲル。アタシ、ダークマターだヨ」
「だーく……またー……?」
ルナは聞いたことがあった。
『闇の太陽』ダークマター。聞いた限りでは、人間にとって危険な魔物だと思っていた。
それが、目の前にいると聞いて、ルナは呆けたようにオウム返しする。
「……お前が?」
「ウン♪ どう、怖イ? 怖いヨネ? 怖いデショ?」
満面の笑みでずいっと顔を近づけてくるダークマターの少女。
残念ながら、ルナはその様子にぷっと吹き出した。
「え、ここ笑うトコ? ルナ、今から襲ワレちゃうんだヨ?」
「ふふっ……、いや、ごめっ……、でも、ぷくく……!」
口元を両手で押さえて笑いを堪えようとするルナに、ダークマターは小首を傾げる。
弄りすぎて壊れたか、そう思った。
だが、同時に怖がってないのかと内心がっかりしていた。
「キミ、緊張感ないネ」
「や、だって、どんなヤバい魔物かと思ったら結構かわいいし……」
照れもせずにそう言ってのけるルナの予想外の答えに、少女の顔が真っ赤になった。
結構かわいいし。
今まで襲ってきた男たちは、ただただ怯え、快楽に呑まれてそんなことを言うことはなかった。
故に、純粋に彼女自身が褒められたのはこれが初めてだったのだ。
「それに、本当はあの黒いので僕を取り込むつもりだったんだろ?」
そう言って、ルナはくすっと微笑んだ。
「我慢するって言って、何だかんだで優しいし」
「すす、ストップ! 褒めても何モ出ないカラ!」
ぶんぶんと両手を振りながら身を引く少女。その顔はトマトのように真っ赤だ。
その愛らしく、見た目相応の姿にルナは更にくすくすと笑った。
「うー……っ!」
黒い球体の後ろに隠れて、少女は唸りながら涙目でルナを睨みつける。
その様子は、ダークマターというより近所の小さな子どものように見えた。
「や、やっちゃえ!」
少女が照れ隠しにそう言うと、ぎゅるぎゅると黒球から触手が伸びる。
「ちょっ!?」
さすがにそれはシャレにならず、ルナは慌てて身を起こした。
その場から飛びのき、一拍置いてべちゃっとルナが寝そべっていたところが黒い液体が降り注ぐ。
あと少し遅かったら、確実に捕まっていた。
「甘いヨ!」
少女がそう言って、じゅるりとルナの足に何かが巻きつくような感触を覚える。
当然、彼女の触手だった。
「え、どこから!?」
その触手の先を目で追うと、地面から生えていた。
黒球のほうを向くと、地面に幾つかの触手を刺しこんでいた。
それを確認した瞬間に、ドバッと溢れ出すように無数の触手が地面から飛びでてくる。
「あ……」
間の抜けた声とともに、少年は触手によって地面に磔のように捕らえられる。
が、今度は先ほどと違いうぞうぞと蠢くような触手の感触はない。
ただ縛りつけるように、触手はルナの四肢に巻きついているだけだ。
「も、もう逃げラレないんだカラ……!」
黒球の後ろでどうだとか、ざまーみろとか、そんな感じのことを叫ぶ少女。
が、ヤケ気味なのか真っ赤だった。その様子に、ルナはどうしても恐怖より愛らしさを感じてしまう。
微笑ましく思っているルナの様子に気付いたのか、少女は涙目でギロリと彼を睨みつける。
「犯ス……っ!」
拗ねたようにそう言って、少女は肩を怒らせながらルナにズンズンと歩み寄る。
涙目に、耳まで真っ赤と本当に魔物と言うより童女だった。
さっきの陵辱によって、彼の肉棒はまだ反り返ったままだ。
その雄雄しい愚息の姿を見て、少女はおもむろに自分の陰部に手を伸ばす。
「ココに、キミのソレ、挿れるカラ……!」
ひくひくと蠢いている蜜壺を指で広げて、ルナに見せつける。
そして、返答も聞かずに彼女はストンと彼の腰に跨った。
当然、ルナのペニスは彼女の陰部の中に埋まる。
「うぁ……!」
「ひぐ……!」
抵抗なくペニスが彼女のナカに埋まるが、それでもやはりキツいらしい。
少女も触手では感じられない奥まで突くような陰茎の大きさに、びくっと腰が浮いた。
「ふぅー……っ、はぁー……っ」
「う……くぅ……!」
荒い息を吐く少女に、ルナは押し寄せる快楽に抵抗するようにまた歯を食い縛る。
締め上げるようなキツさと、まるで蕩けそうなほどの熱さ。
それよりも何よりも、彼のモノを撫で上げるような膣壁の動き。
「ひぅ……ぅ……!」
今まで女性との経験がなかったルナには耐えがたい快楽だった。
触手といい、少女といい、ルナの初体験は彼の予想外ばかりだ。
「ふぅぅ……、あぁ、う」
深く息を吐いていた彼女が、ようやく動き出す。
何も音のしない空間に、少女の喘ぎ声と、淫らな水音がよく響く。
「くぁ……ぁぁ……」
ずちゅずちゅと音を立てる自分の股間部に、ルナは顔を真っ赤にして目を閉じる。
その間も、彼女は騎乗位で腰を振りつづける。頬を薄く染め、目尻をとろんと垂れて。
未成熟な体に玉の汗が浮び、乳首の桜色が鮮やかになる。
「くふ……っふふ……ひゃん!」
余裕の表情を繕おうとするが、ときおりオクターブの跳ねた声をあげる少女。
耳をくすぐるような彼女の声もそうだが、ルナは何よりも自制で必死だった。
体の奥底から沸き起こる衝動、そして、それを苛む激しい快楽。
「……りゅっ……ぁぅ」
ときどき小さな嬌声が漏れる彼の唇に、少女は虚ろな目を向ける。
そして、にんまりと口角を持ち上げた。
「……んむっ!?」
「ん、んふ……んぅ……」
目を閉じていたため彼女の接近に気付かなかったルナは驚きの声をあげようとする。
が、その声は彼女によって塞がれていてくぐもっていた。
少女は、全身を彼に預けるように倒れこみ、その口を貪っていた。
「ん、んんんんっ!?」
「あむ……んむ…ぁ……」
口内に侵入してきた細っこい舌に目を白黒させるルナ。
ルナの歯に、舌に、口腔に彼女の舌が這い回る。
味を感じるわけがないのに、ルナは何故か彼女の唾液を甘く感じた。
「んっ、んむ……!?」
舌を伸ばしてささやかに抵抗しようとするが、如何せん。
そもそもルナはディープキスの知識なんか微塵もなかった。
伸ばした舌もあっけなく彼女に絡めとられ、あの時の触手のようにずるっと絡んでくる。
「んむ……ん? ……んぅ!?」
そして、忘れらていた腰の動きが再び活発になる。
自分に擦り付けるように、むしろ打ち付けるように激しく動く少女。
濃厚なキスによって蕩けたルナの思考は、すでに我慢が限界に達していた。
「んむぅぅぅ!?」
二度目の絶頂を迎える。
痙攣するように震える彼のペニスから吐き出される精子は、どくどくと彼女の蜜壺に注がれていく。
それでも、彼女は腰を動かしつづけるのを止めないうえ、舌の動きも激しさを増した。
「むむぅ、んぁっ、んむぅぅ!」
絶頂したての敏感な陰部を容赦なく責め上げる彼女。
濃密に重なる唇の隙間から、ルナの悲鳴のような声が聞こえる。
それでようやく、糸を引きながら二人の唇が離れた。
「ぷぁっ、くぁ、ちょっ、止まっ……あぁああ!?」
「イイ、イイっ! 頭ん中、ルナで一杯に……ィ!」
触手に絡め取られていて抵抗の出来ない彼に、少女の腰は躊躇なく加速する。
彼女が腰を動かすたびに、精子と愛液の入り混じった水音がルナの耳にこびりつく。
そのとき、ルナの腰が何かの弾みで軽く浮いた。
それがちょうど、彼女が腰を下ろすタイミングと重なり、ルナのペニスが彼女の最奥部に突き立った。
「ひぁああぁ!?!??」
びっくり、というよりも甘い嬌声が彼女の口から漏れて、膣がキュッと締まる。
その感触に、ルナは連続的にもう一度絶頂を迎えた。
「く……うぁ……!」
「ひゃ、や、待ッ、ひぁぁああ!?」
ドクドクと、衰えを知らない迸りに彼女がびくびくと打ち震える。
その間も彼女の膣はルナの精液を飲み込むように嚥下する。
射精感と、その膣の刺激にルナもビクビクと身を震わせてだらしなく口を開ける。
「あ……んぁぁ……」
長い射精が終わり、くたっと力が抜けたように彼女の体がルナに倒れこむ。
しゅるしゅると、ルナに巻きついていた触手は黒球に戻っていったが、しばらく彼は動けなかった。
自分の胸で、涎を垂らしながら気を失った少女がいたから……。
---------------------------------------------
「……んにゅ……? に、にぁ……?」
素っ頓狂な声をあげて意識を覚醒させた少女がルナの顔を覗き込む。
当のルナは、三十分もの間彼女に押し倒されたような形で倒れこんでいて、少し仏頂面になっていた。
さすがのダークマターの彼女も、少し申し訳なさそうに頭を垂れた。
「あ……、ソノ……、ゴメン……」
「……別にいいよ。いい寝顔撮れたし」
撮れた、という言葉の意味が分からずに少女は首を傾げながらとりあえず彼の上からどいた。
そして、彼もむくりと起き上がる。
「………………」
「………………」
お互いにかける言葉が見当たらず、気まずい沈黙が続いた。
が、その沈黙を破ったのは少女の方であった。
「あ、の……、ルナは……これから、どうスルの?」
切れ切れに、不安げにそう言う彼女。
ルナは少し考えるように顎に手をやり、思わしげにふむと唸った。
「そうだな……、僕はこれからも諸国漫遊に勤しむ、かな」
そう言ってカメラを手にとるルナ。
その言葉に、少女はしゅんとうな垂れた。
「だから」
そんな少女に、苦笑してルナは続ける。
「君も来ないかい?」
照れたように頬を掻きながら、ルナはそう言った。
その言葉に、少女はバッと顔を上げるが、その表情には戸惑いが混じっていた。
ホントにいいの……? 彼女の表情は分かりやすくそう語っていた。
「ダークマターってさ、精を得ることで魔力を撒き散らすんだろ?」
旅の身であれば、そう気にすることないしね。彼はそう付け加えた。
優しい笑顔を浮かべるルナに、少女の顔はやはり赤くなった。
「お、お願い……すゅ……」
頭から湯気が吹き出そうなくらいに顔を赤くして、少女は俯く。
その様子を見ていたルナは、おもむろにカメラを構え、シャッターを切った。
フラッシュが焚かれ、急な不意打ちに少女が目を白黒させる。
「ごめん、かわいかったから……」
「……もう」
拗ねたようにそう言って、彼女は立ち上がった。
そして、ルナに手を伸ばしてはにかんだ。
「アタシ、ノアっていうの。これカラ、よろしくネ♪」
ノアがそう言って、歳相応の笑顔を浮かべる。
花が咲いたようなその笑顔に、ルナはもう一枚写真を撮った。
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やがて、ルナの写真が様々な地域に個人写真集として店頭に並び始めた。
断崖絶壁の広がる岩場の光景。
無限に続くかのような雄大な砂漠の風景。
所々に漁船が揺れている、虹のかかった大海原の風景。
様々な場所の写真が載っていたが、そのどれにも少女がVサインをしてはにかむ姿があった。
まるで日輪のような笑顔の少女が表紙の写真集は、『ルナリス・シャイン』というタイトルらしい……。
掌をどんよりとした鉛色の空にかざして、青年は呟いた。
手には黒い箱に大きなレンズがついたような、すこし簡素なデザインの小型機械を持っている。
最近、ある港町のサバトが開発した『カメラ』という代物らしい。
詳しい原理を彼は理解できていないが、どうやらボタン一つで風景を正確に写しとる機械らしい。
青年は、そのカメラを首から提げ、背中にはスカスカのバックパックを背負っている。
「えーと、この辺に町ってあったっけ?」
そのバックパックから無造作に地図を取り出し、青年は近くにあった切り株にそれを広げた。
少し痛んでいて、古めかしい地図だが彼は関係なくそれを読みながらしきりに頷く。
「ふんふん……、こっから北に二キロ地点に小さいけど村があるのか」
すぐそこだな、そう呟いて彼は地図を閉じる。
どうやら目的地が決まったらしい。
「綺麗なところだったらいいなぁ……」
期待に満ちた、ワクワクといった表現が正しいあどけない表情でカメラを撫でる青年。
そのカメラの角には、小さく『ルナ』と刻まれていた。
「さて、先を急ぎますか」
快活にそう言い、ルナは歩き始める。
『魔界』と化した、小さな村へ。
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「あー良かった。間に合ったかも」
昼というより夜に近い鈍い薄暗さに不安を抱いていた彼は、小さく安堵のため息を吐いた。
彼の視界の奥には、細々とだが幾つかの民家が見える。
どうやら、例の村が近づいてきたようだ。
「しっかし、天気悪くなったなー」
不思議なことに、彼がその村に近づくごとに天気が目に見えて崩れ出したのだ。
彼が空を見上げると、分厚い暗雲が陽の光を完全に遮っていた。
それだけの悪天候なのに、雨が一粒も降ってこないのが逆に不気味だ。
そんなことを思いながら一歩踏み出した、そのときだった。
「……ん?」
ルナが唸る。
「なに……、この妙な空気……?」
スンスンと鼻をヒクつかせながら周囲を警戒するルナ。
ぞわぞわと背筋を蟲が這いまわるような悪寒に、彼は汗を垂らした。
「変な匂いはない、気温も平常……でも、音がないな」
その通りだった。
当然のように虫や動物の鳴き声はなく、空気の流れる音さえなく、あまりの無音にルナは耳鳴りを感じた。
その上、肌で感じる空気の重さに彼は一番の違和感を覚えた。
「……ヤな雰囲気」
一瞬、道を戻ろうかと迷うがこの悪天候だ。
雨具はあるにはあるが、あまり好んで使いたい代物ではない。
「仕方ない、行くか」
周囲を警戒しながら、彼は慎重に歩を進める。
ありえないほどの静けさに、彼が生唾を飲み込む音が一際大きく響く。
そのままゆっくりと……、民家の見える方向に進んでいくが彼はハッと息を呑んだ。
ひっそりと立つ民家の間に、明らかに異質なモノがそこにはあった。
ぼたぼたと粘っこい液体を落とすドス黒い球体。その上に、ぺたりと人が座り込んでいた。
「魔物……いや、人か……?」
大きな瞳を細めて呟くルナ。
しかし、人というにはあまりに異様な光景だ。
動く気配もなく、こちらに気付く様子もないその物体にルナは警戒心を強く抱く。
「あいつ以外……、誰もいないのか?」
逃げるべきかもしれない。彼の本能は、アレが危険だと直感していた。
だが、同時に何故かその姿に心惹かれるモノもあった。
「……他に行くアテもないし、ね」
自分に言い訳するようにそう呟いて、彼はそろそろと村に近づいていく。
近づくと同時に、その人物が女性であり、また全裸であることが分かった。
ますます魔物、という単語が警鐘を掻き鳴らすが彼はそれでも歩くのを止めなかった。
そしてついに、黒い球体に乗った少女がこちらに気付いた。
バッとすごい勢いでこちらを振り向く彼女と視線が合ったルナは、気まずげに片手を挙げた。
「えと……、こんにちは」
間の抜けたルナの挨拶に、少女はますます彼を凝視する。
吸い込まれるような真っ黒なその瞳は、どこか虚ろげだ。
「オトコ……」
ぽつりと呟いた彼女の声は、ルナの耳には届かなかった。
とりあえず、目のやり場に困ったルナが顔を背けながら問いかける。
「あ、あの、寒くないですか?」
そう言ってごそごそとバックパックを漁り、中からずるりとポンチョを取り出す。
「とりあえず、これ着ません?」
そう言って目を背けたままポンチョを差し出すルナ。
ぼたぼたぼたぼた、と球体からタールのような液体を零しつづける音が響く。
「オトコ、だぁ……♪」
にんまりと口の端を釣り上げて言う少女。が、またもルナには聞こえなかった。
そのまま黙ってポンチョを差し出すルナに、球体から触手が複数生えた。
何本かの触手が、無防備な彼の腕を捕らえる。
「う、わ!?」
いきなりの不意打ちにルナは驚いたかのような声をあげる。
粘土のような感触がぐちゅぐちゅと嫌な水音を立てながら、手足から彼にずるずると絡みつく。
「ひ……っ!?」
まるで蛇が這いずるような感触にルナは鳥肌が立つ。
くすぐったいような感覚に最初に湧いたのは嫌悪感で、今すぐにでも振り払いたかった。
ブンブンと手を振り回すが、触手は離れる気配なくそのまま胴にも巻きついてくる。
「は、な、せぇ……っ!」
触手から腕を引き剥がそうと腕を引っ張るがびくともしない。
そのまま触手は胴から足にも巻きつき、彼の体は宙に浮かされた。
「うわ……っ!」
バランスが取れずに体勢を崩した彼に、チャンスとばかりに触手が絡みつく。
そして、とうとうルナの体は頭部を残して全身を触手に巻き取られてしまった。
「放せ、放せよ、この……っ!」
ルナは暴れようとするが、触手の力は彼が思ったよりも強い。
そのまま触手は、彼を捕らえたままドス黒い球体に戻り始める。
同時に、彼に巻きついている触手がぐちゅぐちゅと活発に蠢きだす。
「あ……、ちょっ……、う、動くなぁ……!」
股間部を擦るような触手の動きに、少年の体から力が抜けた。
擦るように、絡みつくように、泥のような触手が陰茎を苛む。
服越しでも感じる、異質な快感に彼の声は上ずっていた。
「あ、はぅぅ……!」
袖や裾から触手が服の中に入り込み、そのダイレクトな感触に彼の肩がぴくりと動く。
べちゃべちゃと多分に水分を含んではいるが、同時に粘度もあるような感触。
それがいま、袖からは二の腕を、腋を伝い。
裾からは脹脛を、太腿を伝って絡んできている。
こそばゆいような感触にルナは抵抗も出来ずに悶えていた。
「や、やめっ……、あぅ!」
ぴちゃ、と。水音をたてて触手が亀頭に張り付く。
にゅるにゅると撫で回すような触手の動きに、我慢しきれず彼の陰茎が大きくなる。
その様子を見ている少女はクスクスとおかしそうに笑っている。
「ねぇ、気持ちイイ? こんな触手でタッてるの?」
「そん……な、わけ……あっ!?」
挑発するような彼女の言葉に対する反論は、またも触手によって阻まれる。
ずりずりと擦り付けるように触手が彼のペニスを包み、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音をたてて蠢いているのだ。
異様な感触、人外の未知の何かに辱められている妙な感覚に、彼は深く息を吐いて落ち着こうとする。
「あ、ふぅぅぅ……ん……ふぁ……!」
だが、そんな抵抗も虚しく耐えようとしても体は正直だ。
我慢汁でも出てきたのか、ややぬめりけの増した触手は容赦なく彼の股間を責め上げる。
その間も、撫で擦るように腋や太腿の触手は絡みついてくるのだ。
「……ん……っくぅ……!」
声を漏らさないようにぎゅっと口を閉ざすが、唇の端から自分のものとは思いがたい甘い声が漏れる。
その声に少女はかくんと首を垂れて、あはっと口をあけて笑う。
「女の子ミタイナ声あげるんだネ、キミ。あはっ、あはは♪」
歯を食い縛るように意味のない抵抗を続けるルナは、今度は反論しなかった。
そうでもしないと、耐えられないらしい。
「我慢してるノ? 無駄だと思うケドな〜♪」
無邪気な子供のような声に薄目を開くと、目の前に大きな黒球があった。
同時に、サッとルナの血の気が引いた。
さっきからこの黒球から伸びた触手だけでこんなに気持ちいいのに……、もしこの黒球に包まれたら?
ゾッと、背筋に悪寒が走った。
「は、離せぇううぁう!?」
叫んだ声は奇妙な音階でとち狂う。
竿をべちょりと舐め上げるような感触のせいだ。
「何で? 気持ちよく、シてアゲルよ?」
小首を傾げる彼女に荒い息を吐きながら、ルナは絞るような声を出す。
「ヤ、だ……、イヤなんだよ……ぉ!」
ルナは具体的に何がイヤなのかは分からない。
ただ、彼の直感が告げていた。あの黒球に呑まれたら、もう戻れない。そんな気がした。
それを察したのか、少女はうーんと可愛らしく唸り始める。
「そんなにイヤなら仕方ないカナ〜」
そう言ってニコッと見た目相応に微笑む彼女とは裏腹に、触手の責めは激化した。
「ひゃうぅあ!?」
ルナの喉の奥から甲高い悲鳴が飛び出す。
ずるるるる、と陰茎を吸うように収縮する触手。
それだけでなく、竿を、カリを、まるで無数の舌で舐めるかのような感触。
「や、めぇ……うあぅぅ……!?」
通常ではありえないような刺激に、ルナの意識が真っ白になった。
びゅく、びゅるっ、びゅるるる!
一瞬、ペニスが痙攣したかと思うと白く濁った精液が勢いよく射出される。
それを吸うように、触手が彼のペニスを吸うように収縮する。
ルナの体が、その絶頂によりぐったりと脱力した。
「あぁ……うぅ……」
情けない息を漏らして俯く彼に少女が童女のような笑みを浮かべる。
「久しブリのオトコだからはしゃいじゃったナ♪」
そう言って彼女は、ト……、と地面に飛び降りる。
黒球から伸びた触手はルナからしゅるしゅると離れ、ルナの体が地面に横たわる。
「ホントはキミが欲しいケド、これで我慢してアゲルね」
ルナを見下ろしながら、少女は妖艶に微笑んで彼の足元にまで歩み寄る。
異様な絶頂により未だに力が入らないルナは、抵抗も出来ずに荒い息を吐いている。
「何、を……する気……だ?」
切れ切れにそう問い掛けるが、彼女はにっこりと微笑むだけだ。
何をする気なのか、ルナにもおおよその見当はついていた。
「気持ちイイことだヨ?」
そう言うや否や、黒球から触手が伸びて一気に彼のズボンをずり下ろした。
ぼろりと、ルナの怒張が外気に晒される。
「へぇ、実際に見るのハ初めて……カナ」
「うぅ……」
まじまじと滾った陰茎を見つめる少女に、ルナの顔は羞恥で赤くなった。
一度果てたとはいえ、まだまだ大きかった。
「キミ、名前は?」
唐突にそう言ってかくんと首を傾げる少女。
ルナは、言うべきかどうか迷ったが彼女の背後で触手がわきわきと蠢き出したので慌てて答えた。
「る、ルナ! ルナ・スタンフォード!」
「ルナ……ね。にひっ♪ 女の子みたいダネ?」
歯を剥き出しにしてにひひと笑う少女の笑顔は歳相応でかわいらしいが、彼女の陰部付近からは黒球のものと思しき黒いタールのような液体がぽたぽたと滴っていて不気味だ。
ごくりと、ルナは生唾を呑みこんだ。
「ルナにいいこと教えてアゲル。アタシ、ダークマターだヨ」
「だーく……またー……?」
ルナは聞いたことがあった。
『闇の太陽』ダークマター。聞いた限りでは、人間にとって危険な魔物だと思っていた。
それが、目の前にいると聞いて、ルナは呆けたようにオウム返しする。
「……お前が?」
「ウン♪ どう、怖イ? 怖いヨネ? 怖いデショ?」
満面の笑みでずいっと顔を近づけてくるダークマターの少女。
残念ながら、ルナはその様子にぷっと吹き出した。
「え、ここ笑うトコ? ルナ、今から襲ワレちゃうんだヨ?」
「ふふっ……、いや、ごめっ……、でも、ぷくく……!」
口元を両手で押さえて笑いを堪えようとするルナに、ダークマターは小首を傾げる。
弄りすぎて壊れたか、そう思った。
だが、同時に怖がってないのかと内心がっかりしていた。
「キミ、緊張感ないネ」
「や、だって、どんなヤバい魔物かと思ったら結構かわいいし……」
照れもせずにそう言ってのけるルナの予想外の答えに、少女の顔が真っ赤になった。
結構かわいいし。
今まで襲ってきた男たちは、ただただ怯え、快楽に呑まれてそんなことを言うことはなかった。
故に、純粋に彼女自身が褒められたのはこれが初めてだったのだ。
「それに、本当はあの黒いので僕を取り込むつもりだったんだろ?」
そう言って、ルナはくすっと微笑んだ。
「我慢するって言って、何だかんだで優しいし」
「すす、ストップ! 褒めても何モ出ないカラ!」
ぶんぶんと両手を振りながら身を引く少女。その顔はトマトのように真っ赤だ。
その愛らしく、見た目相応の姿にルナは更にくすくすと笑った。
「うー……っ!」
黒い球体の後ろに隠れて、少女は唸りながら涙目でルナを睨みつける。
その様子は、ダークマターというより近所の小さな子どものように見えた。
「や、やっちゃえ!」
少女が照れ隠しにそう言うと、ぎゅるぎゅると黒球から触手が伸びる。
「ちょっ!?」
さすがにそれはシャレにならず、ルナは慌てて身を起こした。
その場から飛びのき、一拍置いてべちゃっとルナが寝そべっていたところが黒い液体が降り注ぐ。
あと少し遅かったら、確実に捕まっていた。
「甘いヨ!」
少女がそう言って、じゅるりとルナの足に何かが巻きつくような感触を覚える。
当然、彼女の触手だった。
「え、どこから!?」
その触手の先を目で追うと、地面から生えていた。
黒球のほうを向くと、地面に幾つかの触手を刺しこんでいた。
それを確認した瞬間に、ドバッと溢れ出すように無数の触手が地面から飛びでてくる。
「あ……」
間の抜けた声とともに、少年は触手によって地面に磔のように捕らえられる。
が、今度は先ほどと違いうぞうぞと蠢くような触手の感触はない。
ただ縛りつけるように、触手はルナの四肢に巻きついているだけだ。
「も、もう逃げラレないんだカラ……!」
黒球の後ろでどうだとか、ざまーみろとか、そんな感じのことを叫ぶ少女。
が、ヤケ気味なのか真っ赤だった。その様子に、ルナはどうしても恐怖より愛らしさを感じてしまう。
微笑ましく思っているルナの様子に気付いたのか、少女は涙目でギロリと彼を睨みつける。
「犯ス……っ!」
拗ねたようにそう言って、少女は肩を怒らせながらルナにズンズンと歩み寄る。
涙目に、耳まで真っ赤と本当に魔物と言うより童女だった。
さっきの陵辱によって、彼の肉棒はまだ反り返ったままだ。
その雄雄しい愚息の姿を見て、少女はおもむろに自分の陰部に手を伸ばす。
「ココに、キミのソレ、挿れるカラ……!」
ひくひくと蠢いている蜜壺を指で広げて、ルナに見せつける。
そして、返答も聞かずに彼女はストンと彼の腰に跨った。
当然、ルナのペニスは彼女の陰部の中に埋まる。
「うぁ……!」
「ひぐ……!」
抵抗なくペニスが彼女のナカに埋まるが、それでもやはりキツいらしい。
少女も触手では感じられない奥まで突くような陰茎の大きさに、びくっと腰が浮いた。
「ふぅー……っ、はぁー……っ」
「う……くぅ……!」
荒い息を吐く少女に、ルナは押し寄せる快楽に抵抗するようにまた歯を食い縛る。
締め上げるようなキツさと、まるで蕩けそうなほどの熱さ。
それよりも何よりも、彼のモノを撫で上げるような膣壁の動き。
「ひぅ……ぅ……!」
今まで女性との経験がなかったルナには耐えがたい快楽だった。
触手といい、少女といい、ルナの初体験は彼の予想外ばかりだ。
「ふぅぅ……、あぁ、う」
深く息を吐いていた彼女が、ようやく動き出す。
何も音のしない空間に、少女の喘ぎ声と、淫らな水音がよく響く。
「くぁ……ぁぁ……」
ずちゅずちゅと音を立てる自分の股間部に、ルナは顔を真っ赤にして目を閉じる。
その間も、彼女は騎乗位で腰を振りつづける。頬を薄く染め、目尻をとろんと垂れて。
未成熟な体に玉の汗が浮び、乳首の桜色が鮮やかになる。
「くふ……っふふ……ひゃん!」
余裕の表情を繕おうとするが、ときおりオクターブの跳ねた声をあげる少女。
耳をくすぐるような彼女の声もそうだが、ルナは何よりも自制で必死だった。
体の奥底から沸き起こる衝動、そして、それを苛む激しい快楽。
「……りゅっ……ぁぅ」
ときどき小さな嬌声が漏れる彼の唇に、少女は虚ろな目を向ける。
そして、にんまりと口角を持ち上げた。
「……んむっ!?」
「ん、んふ……んぅ……」
目を閉じていたため彼女の接近に気付かなかったルナは驚きの声をあげようとする。
が、その声は彼女によって塞がれていてくぐもっていた。
少女は、全身を彼に預けるように倒れこみ、その口を貪っていた。
「ん、んんんんっ!?」
「あむ……んむ…ぁ……」
口内に侵入してきた細っこい舌に目を白黒させるルナ。
ルナの歯に、舌に、口腔に彼女の舌が這い回る。
味を感じるわけがないのに、ルナは何故か彼女の唾液を甘く感じた。
「んっ、んむ……!?」
舌を伸ばしてささやかに抵抗しようとするが、如何せん。
そもそもルナはディープキスの知識なんか微塵もなかった。
伸ばした舌もあっけなく彼女に絡めとられ、あの時の触手のようにずるっと絡んでくる。
「んむ……ん? ……んぅ!?」
そして、忘れらていた腰の動きが再び活発になる。
自分に擦り付けるように、むしろ打ち付けるように激しく動く少女。
濃厚なキスによって蕩けたルナの思考は、すでに我慢が限界に達していた。
「んむぅぅぅ!?」
二度目の絶頂を迎える。
痙攣するように震える彼のペニスから吐き出される精子は、どくどくと彼女の蜜壺に注がれていく。
それでも、彼女は腰を動かしつづけるのを止めないうえ、舌の動きも激しさを増した。
「むむぅ、んぁっ、んむぅぅ!」
絶頂したての敏感な陰部を容赦なく責め上げる彼女。
濃密に重なる唇の隙間から、ルナの悲鳴のような声が聞こえる。
それでようやく、糸を引きながら二人の唇が離れた。
「ぷぁっ、くぁ、ちょっ、止まっ……あぁああ!?」
「イイ、イイっ! 頭ん中、ルナで一杯に……ィ!」
触手に絡め取られていて抵抗の出来ない彼に、少女の腰は躊躇なく加速する。
彼女が腰を動かすたびに、精子と愛液の入り混じった水音がルナの耳にこびりつく。
そのとき、ルナの腰が何かの弾みで軽く浮いた。
それがちょうど、彼女が腰を下ろすタイミングと重なり、ルナのペニスが彼女の最奥部に突き立った。
「ひぁああぁ!?!??」
びっくり、というよりも甘い嬌声が彼女の口から漏れて、膣がキュッと締まる。
その感触に、ルナは連続的にもう一度絶頂を迎えた。
「く……うぁ……!」
「ひゃ、や、待ッ、ひぁぁああ!?」
ドクドクと、衰えを知らない迸りに彼女がびくびくと打ち震える。
その間も彼女の膣はルナの精液を飲み込むように嚥下する。
射精感と、その膣の刺激にルナもビクビクと身を震わせてだらしなく口を開ける。
「あ……んぁぁ……」
長い射精が終わり、くたっと力が抜けたように彼女の体がルナに倒れこむ。
しゅるしゅると、ルナに巻きついていた触手は黒球に戻っていったが、しばらく彼は動けなかった。
自分の胸で、涎を垂らしながら気を失った少女がいたから……。
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「……んにゅ……? に、にぁ……?」
素っ頓狂な声をあげて意識を覚醒させた少女がルナの顔を覗き込む。
当のルナは、三十分もの間彼女に押し倒されたような形で倒れこんでいて、少し仏頂面になっていた。
さすがのダークマターの彼女も、少し申し訳なさそうに頭を垂れた。
「あ……、ソノ……、ゴメン……」
「……別にいいよ。いい寝顔撮れたし」
撮れた、という言葉の意味が分からずに少女は首を傾げながらとりあえず彼の上からどいた。
そして、彼もむくりと起き上がる。
「………………」
「………………」
お互いにかける言葉が見当たらず、気まずい沈黙が続いた。
が、その沈黙を破ったのは少女の方であった。
「あ、の……、ルナは……これから、どうスルの?」
切れ切れに、不安げにそう言う彼女。
ルナは少し考えるように顎に手をやり、思わしげにふむと唸った。
「そうだな……、僕はこれからも諸国漫遊に勤しむ、かな」
そう言ってカメラを手にとるルナ。
その言葉に、少女はしゅんとうな垂れた。
「だから」
そんな少女に、苦笑してルナは続ける。
「君も来ないかい?」
照れたように頬を掻きながら、ルナはそう言った。
その言葉に、少女はバッと顔を上げるが、その表情には戸惑いが混じっていた。
ホントにいいの……? 彼女の表情は分かりやすくそう語っていた。
「ダークマターってさ、精を得ることで魔力を撒き散らすんだろ?」
旅の身であれば、そう気にすることないしね。彼はそう付け加えた。
優しい笑顔を浮かべるルナに、少女の顔はやはり赤くなった。
「お、お願い……すゅ……」
頭から湯気が吹き出そうなくらいに顔を赤くして、少女は俯く。
その様子を見ていたルナは、おもむろにカメラを構え、シャッターを切った。
フラッシュが焚かれ、急な不意打ちに少女が目を白黒させる。
「ごめん、かわいかったから……」
「……もう」
拗ねたようにそう言って、彼女は立ち上がった。
そして、ルナに手を伸ばしてはにかんだ。
「アタシ、ノアっていうの。これカラ、よろしくネ♪」
ノアがそう言って、歳相応の笑顔を浮かべる。
花が咲いたようなその笑顔に、ルナはもう一枚写真を撮った。
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やがて、ルナの写真が様々な地域に個人写真集として店頭に並び始めた。
断崖絶壁の広がる岩場の光景。
無限に続くかのような雄大な砂漠の風景。
所々に漁船が揺れている、虹のかかった大海原の風景。
様々な場所の写真が載っていたが、そのどれにも少女がVサインをしてはにかむ姿があった。
まるで日輪のような笑顔の少女が表紙の写真集は、『ルナリス・シャイン』というタイトルらしい……。
12/06/19 18:54更新 / みかん右大臣