License to knight
「せいっ!せいっ!」
ここは反魔物国家アセトの都市にある訓練所。
そこで一心不乱に剣を振る男がいた。
彼の名はグラゥ。田舎の生まれのアセト軍に所属する騎士を目指す歩兵である。
彼が鍛錬を続けていると遠くで教会の鐘が鳴った。
「いけない!礼拝の時間だ!」
グラゥは道具を片付けて大急ぎで教会に向けて走り出した。
「あら、グラゥ!調子はどう?」
礼拝が終わり教会から出てきた彼に一人のシスターが話しかけた。
彼女の名はセリア。アセトの教会に勤めるシスターだ。
グラゥより少し年上で、田舎から出てきて軍に入りたての彼の世話を良く焼いていた。
「あ、セリアさん。僕はこの通り元気です。」
「ふーん、ちょっとは騎士に近づけた?」
「まぁ、なんとか・・・」
「ふふっ。頑張りなさい。」
その後、グラゥは教会書庫に向かう。
「すいませーん。エセル司書!」
声をかけると本棚の間から眼鏡をかけたシスターが歩いてきた。
「もうそろそろ来ると思ってましたわ。」
「はい、書庫を使わせてもらっていいですか?」
力だけあっても立派な騎士にはなれない。
そう考えているグラゥは度々ここで勉強していた。
「かまいませんわ。ここに頻繁に来る物好きはあなたぐらいでしょうから。」
エセルは再び本棚の方に歩いていった。
残されたグラゥは本棚から数冊の本を引っ張りだして、手近な椅子に座りそれを読み始めた。
ある日、グラゥは疲れが溜まったのか体調を崩した。
「ゲホッ、ゲホッ。」
ベッドに横になっていると扉をノックされた。
「どうぞ、開いてます。」
入ってきたのは果物入りの籠を持ったセリアだった。
「大丈夫、グラゥ?お見舞いに着たわよ。」
「ああ、セリアさん。ありがとうございます。」
セリアはグラゥの側の椅子に腰を下ろし果物をむき始めた。
「セリアさん、優しいなぁ。」
「水臭いこと言わないの。でも気をつけなさいよ。最近、教会内に魔物が入り込んでいるって噂があるわ。襲われないようにしたほうがいいわね。」
「魔物か。もし、その魔物を捕らえられたら、騎士になれるかもしれないなぁ。」
「何言ってるのよ。今あなた病人でしょ。」
セリアは笑って話題を変えた。
「ねぇ、何であなたは騎士になろうって思ったの?」
「えっと、これが理由です。」
そう言うとグラゥは棚から一冊の本を出した。
「なにこれ?絵本?」
「そうです。呼んでみてください。」
セリアはその絵本を読み始める。
「ふむふむ、若者がドラゴンからお姫様を助けて、そのお姫様と結婚し騎士になる話ね・・・ちょっと、もしかして?」
「そうです。その本の騎士に憧れて僕は騎士になる決意をしたんです。僕にとっての目標ですよ。」
胸を張るグラゥに対し唖然とするセリア。
「呆れた・・・でも夢に向かって行動し続けてるグラゥはすごいね。それに引き替え私ときたら・・・」
「セリアさんはどうしてシスターに?」
「特に理由は無いわ。何となくなった感じね。」
「だから、言葉遣いがフランクなんですね。」
「うるさいわよ!」
怒ったセリアはグラゥの頬を抓る。
「痛ててっ・・・!でもセリアさんは優しいですからきっといいシスターになれますよ。」
「よろしい。」
手を離したセリアに、
「あっそうだ、もし僕が騎士になれたらお付き合いしていただけませんか?」
グラゥが唐突に言い出した。
「あら〜、それってプロポーズ?」
「茶化さないでください!セリアさんは僕の理想の人だと思います!駄目ですか?」
「考えておいてあげるわ。でもその前に元気になりなさい。」
そう言ってグラゥの額を小突いて、セリアは出て行った。
「よ〜し、明日から頑張らなくちゃ!」
グラゥは呟きながらベッドに潜り込んだ。
体調が治って数日後、久しぶりに書庫にきたグラゥは書庫の隅に屈む人影を見つけた。
「あれ?セリアさん?」
恐る恐る近づき、声をかけるとセリアは弾かれた様に立ち上がった。
「珍しいですね。セリアさんがここにいるなんて。」
「わ、私だって調べ物くらいするわ。それより明日が試験なんでしょう?私は邪魔しないよう出て行くね。」
セリアはグラゥの横を通り、出口へ向かったが、ふと立ち止まり振り返った。
「ねぇ、騎士になることがグラゥの幸せなのよね?」
「えーっと、そうですね。僕はそのために今まで頑張って来ましたから。」
「そうよね。頑張ってね。」
「?」
首をかしげるグラゥを置いて出て行くセリア。
彼女の姿が見えなくなると、奥からエセルが姿を現した。
「今、誰かと話してませんでした?」
「セリアさんですよ。でも何か様子が変だったような・・・」
そう言いつつグラゥはいつもの様に勉強を始めた。
次の日、いつもの様に家に帰ってきたグラゥ。
だが彼は扉を開けた瞬間固まった。
ドアの前には服の裾から触手を出すセリアが立っていたからだ。
「セ、セリアさん・・・一体・・・・」
唖然とするグラゥにセリアは一言、
「・・・ごめんなさい・・・幸せになって・・・」
と言って、床を蹴って目にも留まらぬ速さでグラゥに近づいた。
次の瞬間、グラゥの意識は首への衝撃と共に失われた。
「・・・・あれ?」
グラゥが目を覚ますと見知らぬ部屋のベッドの中だった。
首の痛みに耐えつつ周囲を見回すが誰もいなかった。
「夢、かなぁ・・・?」
しかし彼の目には触手を生やしたセリアの姿が焼きついている。
考えていると、
「目が覚めたか。」
という声と共に黒い服を着た男が部屋に入ってきた。
「あなたは誰です?ここは一体?」
男は抑揚のない声で答えた。
「教会内の医務室だ。大司教様が読んでいる。身支度せよ。」
大司教室の前でグラゥは扉をノックした。
「失礼します。グラゥと申します。」
「おお、君がグラゥか。私は大司教バルガスだ。」
グラゥが部屋に入ると、机に初老の男が座っていた。
「あの・・・どのような用件で私を?」
正直グラゥは戸惑っていた。
(セリアさんのことについての尋問だろうか?)
「謙遜しなくても良い。君はこの都市の平和に貢献したのだよ。」
「はい?」
ますます意味が解らなくなる。
「ふむ、記憶が飛んでいるのかな?よろしい、思い出させてあげよう。」
グラゥの混乱をよそにバルガスは話し始める。
「前々からこの教会に魔物のスパイがいる噂があることはしっているな。」
「はい、それは。」
「実はそのスパイはシスター・セリアだったのだ。」
「ええーーっ!」
バルガスの言葉はグラゥが予想だにしないことだった。
「なぜ、その様な顔をする?彼女はローパーという魔物だった。事がばれそうになった彼女は君捕らえ、利用して逃げようとしたが、君は抵抗し相打つ形で彼女を捕らえたのだよ。」
「は、はぁ。」
呆然とするグラゥはまともに返事が出来なかったが、上機嫌なバルガスは喋り続ける。
「君の活躍は素晴らしいものだ。この功績によって君は明日から本教会直属の騎士に任命されたよ。これからも神のために忠義を尽くしてくれ。」
「あの・・・セリアさ・・・いえ、シスター・セリアは今どうしているのですか?!」
「ああ、あの魔物なら郊外の地下牢につないである。近日には、裁きが下されるだろう。」
グラゥは呆然としながら機械的に
「解りました。」
と言って部屋を出た。
家に戻ったグラゥは悩んでいた。
(セリアさんがスパイのはずがない。彼女のあの姿は魔物そのものだったけど、彼女は数日前に僕に向かって内通者の話をした。本当にスパイならそんなことはしない。でもなんで彼女はスパイとして捕まったんだろう?)
そのときグラゥはある会話を思い出した。
「もし、そのスパイを捕らえられたら、騎士になれるかもしれないなぁ。」
「ねぇ、騎士になることがグラゥの幸せなのよね?」
(そうか、多分セリアさんは僕を騎士にするためわざと捕まったんだ! 僕なんかのために・・・・早く助けないと!)
しかしすぐ別の考えが頭をよぎる。
(でも、彼女を助けたら、僕は魔物にくみした者として終われる身になってしまう。せっかく、夢が叶いそうなのにそれを諦めるのは・・・それに魔物になった彼女は助かることを望んでいるのかな・・・)
セリアを助けたい思いと騎士になりたい思いの板ばさみに悩むグラゥ。
その時
ドサッ
という音がした。
目をやるとグラゥが大切にしている絵本が棚から落ちていた。
グラゥはその表紙にある絵、甲冑を身に着けた主人公がお姫様を守るように剣を構える絵を見つめていたが、やがて決心を固めて頷いた。
一方、薄暗い牢獄の中にセリアはいた。
彼女のしたことは簡単なことだ。
グラゥの家で彼を待ち伏せ、帰ってきたところで襲い掛かり気絶させる。
その後、わざと大きな音を立て、誰かがやってくる前に自分も気絶したふりをしておく。
捕まった後は、自分がスパイという作り話をする。
そうすればグラゥがスパイを捕らえるという手柄を立てられ彼の夢に貢献できるはずだった。
逃げることなど考えていない。
もうすぐ処刑されることも怖くは無かった。
(ただ一つ心残りなのは、彼の晴れ姿を見れないことかな・・・でも・・・)
彼女は自分の体を見つめた。
そこにあるのは自分の体から生える触手。
(魔物になった私は彼のそばにはいられない・・・それに彼もきっと私のことを嫌いになったに違いないよね・・・)
そう考えて背を丸めて泣いている彼女の後ろで牢の扉が開く音がした。
(・・・・・?)
そして彼女に声がかけられる。
「セリアさん!!」
もう二度と聞くことは無いと思っていた声の主にセリアは驚いて振り返った。
「グ、グラゥ・・!」
そこにいたのは最小限の荷物を抱えたグラゥだった。
「セリアさん、助けに来ました!さぁ、行きましょう!」
しかしセリアは動かなかった。
「馬鹿なことしないで!あなたはもうすぐ夢が叶うんでしょう!私みたいな邪悪な魔物を助けてどうするのよ!今すぐ出て行って!」
グラゥはその言葉を無視してセリアに近づいた。
「来ないで!近づいたら殺すわよ!」
脅すように触手を揺らめかせるセリアにグラゥはなお近づく。
「私・・・」
「死なないでください!」
突然、グラゥが叫んだ。
「どんな姿になってもセリアさんはセリアさんだ!もしセリアさんが邪悪なら自分を犠牲にして僕に栄光を掴まそうとはしない!」
「でも・・・あなたの夢は・・・」
「大切な人を犠牲にして騎士になっても僕は夢を叶えた事にならない。僕はあなたが好きだ。あなたが必要なんだ。僕の夢はあなたを守れる騎士になることです。お願いだから、生きてください・・・」
「グラゥ・・・・」
セリアはしばらく目を伏せていたが、やがて目を開いた。
「いくわよ。」
「はい?」
「逃げるんでしょ?」
「はい!行きましょう!」
「それで、どこかに行くあてがあるの?」
「東の方に親魔物領があるはずです。そこまで逃げましょう。」
牢屋から逃げ出し、街道を避けつつ移動しながら二人はそんな会話をしていた。
「ところで、セリアさん。まさかと思いますけど、本当にスパイなんですか?」
「違うわよ。スパイは・・・」
「見つけたぞ。穢れた、魔物め。」
「あぅ・・!」
「セリアさん!」
突然、横合いから甲冑姿の男が出てきてセリアに斬りつけた。
「止めだ!」
傷を負ったセリアに向かって剣を振り下ろす男。
しかしグラゥがセリアと男の間に割って入り、剣を受け止めた。
「セリアさん!ここは僕がくい止めますからその間に逃げてください!」
「でも・・・」
「早く!」
グラゥの言葉にセリアは一言、
「死なないでね・・・」
と囁き走り出した。
「ふん、貴様はあの魔物と親しかったようだからな。独断で貴様を見張っていて正解だった。あの魔物を討ち取ってわが手柄にせん!」
「そうはさせない!」
「貴様!魔物に与するか!」
「ああ、彼女は僕の大切な人だ。お前なんかに殺されてたまるか!」
「いいだろう。わが名は聖騎士フリント!貴様は?」
「僕はグラゥ。彼女の騎士だ!」
「ふん、反逆者が騎士などと名乗りおって。わが剣の錆にしてくれる!」
「いくぞぉぉぉ!」
キン、カン、キン
何回と武器を打ち合わせる二人。
すこし立つとだんだんグラゥの方が不利になってきた。
「はっ、どうした?私の動きが見切れんのか?」
「まだだ!まだいける!」
( くそっ動きが捉えられない・・・)
「ふふっ、あまり時間をかけるわけにはいかんな。あの魔物が遠くに行く前に、この勝負にケリを付けるとしよう!」
(せめて一撃入れられれば・・・・そうだ!)
「終わりだ!」
そういってフリントは剣を振り下ろし、勝ったと確信した。
しかし次の瞬間彼の目は大きく見開かれた。
「そ、そんな・・・」
彼の目の前には肩に食い込んだ剣をつかんで動かなくしているグラゥの姿があったからだ。
その姿がフリントの見た最後の光景になる。
「うおおおおっ!」
雄たけびと共に放たれた一撃が彼の意識を遠くに飛ばした。
「はあっ!はあっ!少し・・・無茶・・・だったかな・・・」
フリントが動かなくなると、そういってグラゥは肩に食い込んだ剣を引き抜いた。
「セリア・・・さん・・・遠くまで・・・逃げれたかな・・・早く・・・追いかけて・・・安心させて・・・あげないと・・・」
その時、馬蹄の音と共に騎馬隊が彼の前に現れた。
「・・・新手・・・?」
満身創痍になりながらも武器を構える。
すると騎馬の一人が彼に話しかけた。
よく見ると馬に乗っているのではなく、下半身が馬その物のケンタウロスだ。
「グラゥというのはお前か?」
「・・・そう・・・だ・・・」
「よし!衛生班!」
掛け声と共に数人の兵士が現れ彼を担ぎ上げた。
「・・・あなた方は・・・一体・・・?」
「我々は、お前達を助けに来た。もう安心だ。」
「そう・・・ですか・・・」
「・・・!?おいっ、しっかりしろ!ええぃ、戻るぞ!急げ!」
「・・・・・!?」
小奇麗な部屋でグラゥは目を覚ました。
「参ったな・・・この二日で二回も気絶するなんて・・・それにしてもここは?」
「親魔物領の町の教会です。」
「わああっ!」
驚いて振り向くと、グラゥはさらに驚かされた。
「エセル司書!」
「驚きました?」
「そりゃ、驚きますよ。あれ?でもなぜここに?」
「あなたはケンタウロス率いる騎馬隊に助けられたのでしょう?その騎馬隊を手配したのは誰だと思います?」
そう言うなり、エセルは服から数本の触手を出して見せた。
「じゃあ、スパイは・・・」
「私ですわ。ローパーは擬態が得意ですから、気づかなかったでしょう?」
「はは・・・」
乾いた笑いを漏らすグラゥ。
「しかし、シスター・セリアには気の毒なことをしました。仕事を完了して脱出しようとしてた所を彼女に見つかり、取り押さえる過程で卵をうみつけてしまいました・・・責任を感じ、彼女も一緒に脱出させようとしたのですが、まさか彼女が自ら捕まるとは・・・」
「・・・・・」
「一足先に脱出して私を迎えにきた騎馬隊に彼女の救出をお願いしていたところに、彼女があなたを助けてほしいとやって来たのです。」
「そうだったんですか・・・そんなことが・・・」
「申し訳ありません。すべては私の責任です。
「いいんですよ。僕もセリアさんも・・・・あれ?そういえばセリアさんは?」
「ああ、彼女なら・・・」
エセルが答えかけたとき、
「グラゥ!!」
という叫びと共にセリアが部屋に入ってきた。
「よかった・・・グラゥ、死んじゃうかと思った・・・」
「セリアさん・・・苦しい・・・」
セリアは手と触手でグラゥを抱きしめているのだが、傍から見れば締め上げているようにしか見えない。
「そのくらいにしておかないとまだ彼、傷が塞がってないし、本当に死んじゃいますわよ。」
「あっ、ごめん・・・・」
エセルの言葉にセリアはようやくグラゥを放す。
「げほっ・・・僕は大丈夫です。セリアさんは?」
「私は平気よ。もう傷も治ってる。」
「ローパーは再生力が強い種族ですからね。おっと、私はこれで失礼しますわ。後は、二人で楽しみなさいな。」
そういって出て行くエセル。
「へっ?楽しむって?」
あっけにとられるグラゥの口にセリアの口が覆いかぶさる。
「んんんっ!セリアさん何を・・・!」
「グラゥは命がけで私を助けてくれたからね。これはそのお返し。」
そういって服を脱ぎ始めるセリア。
「ちょっと、ちょっと!」
「グラゥは私のこと好きって言ってくれたよね。あれは嘘?」
「嘘じゃないですけど・・・」
「じゃあ、平気ね。動けないなら、私に任せてくれていいわ。」
言いつつ触手が伸びてきてグラゥのモノを取り出した。
それを口に含むセリア。
「あううっ!」
「ふふっ!グラゥこんなことされるの初めて?」
「はっ、はい・・・」
「嬉しいわね。あなたの初めて私がもらえるなんて。」
そのままモノをしゃぶり始める。
「くくっ・・・!」
「あっ!もうでそう?」
「ああああっ!」
その瞬間グラゥはあっけなく達し、セリアの口内に精液を放った。
「んぐっ・・・初めてじゃ、こんなものかな?でもまだいけるわね?」
口から精液を滴らせ、怪しい微笑みを浮かべセリアはグラゥを見つめた。
「今度はこっちでしてあげる・・・」
そう言うとグラゥの上にまたがるセリア。
そのまま、狙いを定めて腰を下ろしていく。
「は、入ったわね・・・初めてだろうし好きなように動いていいわ・・・」
「わ、解りました・・・」
グラゥが腰を動かしていく。
「あああっ!いい!いいよ!グラゥ!」
「セリアさん!セリアさん!」
「セリア!セリアって呼んで!」
「セリア!気持ちいい!気持ちいいよ!」
「くぅ!私も、もっと気持ちよくして!」
セリアはそういって触手をグラゥの口に突っ込んだ。
「ぐむむっ!?」
「やあっ!グラゥの口の中いいっ!もっと!もっと!」
叫びながら腰を動かすセリアにグラゥは再び限界を迎える。
「ぶはっ・・・セリア・・・僕・・・また・・・!」
「いいよ!中に頂戴!グラゥの精、欲しいの!」
「くはあああああっ!」
「っっんんーーーーっっ!」
グラゥが精を放つと同時にセリアも達し、そのままグラゥに体を預ける様に倒れこんだ。
「セリアさん・・・好きです・・・」
「私もよ・・・これからはずっと一緒よ・・・」
そのまま二人はキスをし、再び交わり始めた。
「お楽しみはもうよろしいですか?」
何度と無く交わり、疲れて抱き合っていた二人は、突然声をかけられ弾かれた様に起き上がった。
「エセルさん!」
「随分、盛んでしたわね。」
「覗いてたんですか!?」
「まさか。あんなに声を出してたら、見なくても状況が想像できますわ。」
エセルの言葉に真っ赤になる二人。
その時、ふとセリアがある事に気づいた。
「あれ?グラゥ、傷が治ってない?」
「あっ、本当だ!」
見るとグラゥの体にあった小さな傷はおろか、肩にあった大きな傷もなくなっていた。
「多分、さっきのあなた方の交わりを通じてセリアの魔力の一部がグラゥに流れ込んだのでしょうね。」
「ということは・・・?」
「グラゥにもローパーの再生能力が備わったと思いますわ。」
「はぁ、そうですか。」
「あなた、いやにあっさりしてるわね。」
「まあ、日常生活に困ることではないですし。」
「ゴホン。」
咳払いと共にエセルは話題を変える。
「それで、二人はこれからどうしますの。」
それをきいて二人は改めてこれからのことを考えた。
「う〜ん・・・」
「どうしようか・・・」
悩む二人にエセルはある提案をする。
「グラゥは自警団、セリアはこの教会に勤めてはいかが?今どちらも人手が不足していますの。」
「教会ってことはグラゥと離れて暮らすの?」
「そんなことはありません。この町の教会は伴侶との同棲OKですわ。」
「じゃあ、私はいいわよ。グラゥも一緒に暮らしましょう?」
「はい、お願いします。」
セリアの問いに対しグラゥは頷いた。
しばらく後、新魔物領の教会の前で行商ゴブリンと会話をするセリアの姿があった。
「頼まれた品はこれで?」
「ええいいわよ。」
「まいどあり。しっかしこんなもん欲しがるなんてお客さん変な人だね〜」
ゴブリンは呟きながら去っていった。
夕方になってグラゥが帰ってきた。
「ただいま。」
「おかえり。自警団の仕事にはもう慣れた?」
「はい、みんな親切な人ばかりです。」
「そんな貴方に今日はプレゼントがあるの。」
「何です?」
セリアは笑顔で何かの包みをグラゥに手渡す。
「これは・・・!」
それはグラゥが騎士を目指すきっかけになった絵本だった。
「ありがとうございます・・・あれ?」
感激しながら本をめくっていたグラゥだが途中で手を止めた。
「若者は愛し合った魔物を助けるため戦いに身を投じ、やがて騎士になる・・・内容が僕の持っていた物と違いませんか?それにこの内容は・・・」
「ふふっ、あなたにはこっちの方がいいでしょ。」
「セリアさん・・・」
「さあ、中に入ってご飯にしましょう。私の騎士様・・・」
「はい、僕のお姫様!」
二人は微笑んで中に入っていった
その絵本の最後にはこう書いてあった。
昔ある所に若者がいました。
若者は悪い竜は倒していないし、人々から尊敬されているわけでもありませんが、魔物でも彼にとって大切なお姫様を守ることは出来ました。
彼は立派な騎士になりました。
ここは反魔物国家アセトの都市にある訓練所。
そこで一心不乱に剣を振る男がいた。
彼の名はグラゥ。田舎の生まれのアセト軍に所属する騎士を目指す歩兵である。
彼が鍛錬を続けていると遠くで教会の鐘が鳴った。
「いけない!礼拝の時間だ!」
グラゥは道具を片付けて大急ぎで教会に向けて走り出した。
「あら、グラゥ!調子はどう?」
礼拝が終わり教会から出てきた彼に一人のシスターが話しかけた。
彼女の名はセリア。アセトの教会に勤めるシスターだ。
グラゥより少し年上で、田舎から出てきて軍に入りたての彼の世話を良く焼いていた。
「あ、セリアさん。僕はこの通り元気です。」
「ふーん、ちょっとは騎士に近づけた?」
「まぁ、なんとか・・・」
「ふふっ。頑張りなさい。」
その後、グラゥは教会書庫に向かう。
「すいませーん。エセル司書!」
声をかけると本棚の間から眼鏡をかけたシスターが歩いてきた。
「もうそろそろ来ると思ってましたわ。」
「はい、書庫を使わせてもらっていいですか?」
力だけあっても立派な騎士にはなれない。
そう考えているグラゥは度々ここで勉強していた。
「かまいませんわ。ここに頻繁に来る物好きはあなたぐらいでしょうから。」
エセルは再び本棚の方に歩いていった。
残されたグラゥは本棚から数冊の本を引っ張りだして、手近な椅子に座りそれを読み始めた。
ある日、グラゥは疲れが溜まったのか体調を崩した。
「ゲホッ、ゲホッ。」
ベッドに横になっていると扉をノックされた。
「どうぞ、開いてます。」
入ってきたのは果物入りの籠を持ったセリアだった。
「大丈夫、グラゥ?お見舞いに着たわよ。」
「ああ、セリアさん。ありがとうございます。」
セリアはグラゥの側の椅子に腰を下ろし果物をむき始めた。
「セリアさん、優しいなぁ。」
「水臭いこと言わないの。でも気をつけなさいよ。最近、教会内に魔物が入り込んでいるって噂があるわ。襲われないようにしたほうがいいわね。」
「魔物か。もし、その魔物を捕らえられたら、騎士になれるかもしれないなぁ。」
「何言ってるのよ。今あなた病人でしょ。」
セリアは笑って話題を変えた。
「ねぇ、何であなたは騎士になろうって思ったの?」
「えっと、これが理由です。」
そう言うとグラゥは棚から一冊の本を出した。
「なにこれ?絵本?」
「そうです。呼んでみてください。」
セリアはその絵本を読み始める。
「ふむふむ、若者がドラゴンからお姫様を助けて、そのお姫様と結婚し騎士になる話ね・・・ちょっと、もしかして?」
「そうです。その本の騎士に憧れて僕は騎士になる決意をしたんです。僕にとっての目標ですよ。」
胸を張るグラゥに対し唖然とするセリア。
「呆れた・・・でも夢に向かって行動し続けてるグラゥはすごいね。それに引き替え私ときたら・・・」
「セリアさんはどうしてシスターに?」
「特に理由は無いわ。何となくなった感じね。」
「だから、言葉遣いがフランクなんですね。」
「うるさいわよ!」
怒ったセリアはグラゥの頬を抓る。
「痛ててっ・・・!でもセリアさんは優しいですからきっといいシスターになれますよ。」
「よろしい。」
手を離したセリアに、
「あっそうだ、もし僕が騎士になれたらお付き合いしていただけませんか?」
グラゥが唐突に言い出した。
「あら〜、それってプロポーズ?」
「茶化さないでください!セリアさんは僕の理想の人だと思います!駄目ですか?」
「考えておいてあげるわ。でもその前に元気になりなさい。」
そう言ってグラゥの額を小突いて、セリアは出て行った。
「よ〜し、明日から頑張らなくちゃ!」
グラゥは呟きながらベッドに潜り込んだ。
体調が治って数日後、久しぶりに書庫にきたグラゥは書庫の隅に屈む人影を見つけた。
「あれ?セリアさん?」
恐る恐る近づき、声をかけるとセリアは弾かれた様に立ち上がった。
「珍しいですね。セリアさんがここにいるなんて。」
「わ、私だって調べ物くらいするわ。それより明日が試験なんでしょう?私は邪魔しないよう出て行くね。」
セリアはグラゥの横を通り、出口へ向かったが、ふと立ち止まり振り返った。
「ねぇ、騎士になることがグラゥの幸せなのよね?」
「えーっと、そうですね。僕はそのために今まで頑張って来ましたから。」
「そうよね。頑張ってね。」
「?」
首をかしげるグラゥを置いて出て行くセリア。
彼女の姿が見えなくなると、奥からエセルが姿を現した。
「今、誰かと話してませんでした?」
「セリアさんですよ。でも何か様子が変だったような・・・」
そう言いつつグラゥはいつもの様に勉強を始めた。
次の日、いつもの様に家に帰ってきたグラゥ。
だが彼は扉を開けた瞬間固まった。
ドアの前には服の裾から触手を出すセリアが立っていたからだ。
「セ、セリアさん・・・一体・・・・」
唖然とするグラゥにセリアは一言、
「・・・ごめんなさい・・・幸せになって・・・」
と言って、床を蹴って目にも留まらぬ速さでグラゥに近づいた。
次の瞬間、グラゥの意識は首への衝撃と共に失われた。
「・・・・あれ?」
グラゥが目を覚ますと見知らぬ部屋のベッドの中だった。
首の痛みに耐えつつ周囲を見回すが誰もいなかった。
「夢、かなぁ・・・?」
しかし彼の目には触手を生やしたセリアの姿が焼きついている。
考えていると、
「目が覚めたか。」
という声と共に黒い服を着た男が部屋に入ってきた。
「あなたは誰です?ここは一体?」
男は抑揚のない声で答えた。
「教会内の医務室だ。大司教様が読んでいる。身支度せよ。」
大司教室の前でグラゥは扉をノックした。
「失礼します。グラゥと申します。」
「おお、君がグラゥか。私は大司教バルガスだ。」
グラゥが部屋に入ると、机に初老の男が座っていた。
「あの・・・どのような用件で私を?」
正直グラゥは戸惑っていた。
(セリアさんのことについての尋問だろうか?)
「謙遜しなくても良い。君はこの都市の平和に貢献したのだよ。」
「はい?」
ますます意味が解らなくなる。
「ふむ、記憶が飛んでいるのかな?よろしい、思い出させてあげよう。」
グラゥの混乱をよそにバルガスは話し始める。
「前々からこの教会に魔物のスパイがいる噂があることはしっているな。」
「はい、それは。」
「実はそのスパイはシスター・セリアだったのだ。」
「ええーーっ!」
バルガスの言葉はグラゥが予想だにしないことだった。
「なぜ、その様な顔をする?彼女はローパーという魔物だった。事がばれそうになった彼女は君捕らえ、利用して逃げようとしたが、君は抵抗し相打つ形で彼女を捕らえたのだよ。」
「は、はぁ。」
呆然とするグラゥはまともに返事が出来なかったが、上機嫌なバルガスは喋り続ける。
「君の活躍は素晴らしいものだ。この功績によって君は明日から本教会直属の騎士に任命されたよ。これからも神のために忠義を尽くしてくれ。」
「あの・・・セリアさ・・・いえ、シスター・セリアは今どうしているのですか?!」
「ああ、あの魔物なら郊外の地下牢につないである。近日には、裁きが下されるだろう。」
グラゥは呆然としながら機械的に
「解りました。」
と言って部屋を出た。
家に戻ったグラゥは悩んでいた。
(セリアさんがスパイのはずがない。彼女のあの姿は魔物そのものだったけど、彼女は数日前に僕に向かって内通者の話をした。本当にスパイならそんなことはしない。でもなんで彼女はスパイとして捕まったんだろう?)
そのときグラゥはある会話を思い出した。
「もし、そのスパイを捕らえられたら、騎士になれるかもしれないなぁ。」
「ねぇ、騎士になることがグラゥの幸せなのよね?」
(そうか、多分セリアさんは僕を騎士にするためわざと捕まったんだ! 僕なんかのために・・・・早く助けないと!)
しかしすぐ別の考えが頭をよぎる。
(でも、彼女を助けたら、僕は魔物にくみした者として終われる身になってしまう。せっかく、夢が叶いそうなのにそれを諦めるのは・・・それに魔物になった彼女は助かることを望んでいるのかな・・・)
セリアを助けたい思いと騎士になりたい思いの板ばさみに悩むグラゥ。
その時
ドサッ
という音がした。
目をやるとグラゥが大切にしている絵本が棚から落ちていた。
グラゥはその表紙にある絵、甲冑を身に着けた主人公がお姫様を守るように剣を構える絵を見つめていたが、やがて決心を固めて頷いた。
一方、薄暗い牢獄の中にセリアはいた。
彼女のしたことは簡単なことだ。
グラゥの家で彼を待ち伏せ、帰ってきたところで襲い掛かり気絶させる。
その後、わざと大きな音を立て、誰かがやってくる前に自分も気絶したふりをしておく。
捕まった後は、自分がスパイという作り話をする。
そうすればグラゥがスパイを捕らえるという手柄を立てられ彼の夢に貢献できるはずだった。
逃げることなど考えていない。
もうすぐ処刑されることも怖くは無かった。
(ただ一つ心残りなのは、彼の晴れ姿を見れないことかな・・・でも・・・)
彼女は自分の体を見つめた。
そこにあるのは自分の体から生える触手。
(魔物になった私は彼のそばにはいられない・・・それに彼もきっと私のことを嫌いになったに違いないよね・・・)
そう考えて背を丸めて泣いている彼女の後ろで牢の扉が開く音がした。
(・・・・・?)
そして彼女に声がかけられる。
「セリアさん!!」
もう二度と聞くことは無いと思っていた声の主にセリアは驚いて振り返った。
「グ、グラゥ・・!」
そこにいたのは最小限の荷物を抱えたグラゥだった。
「セリアさん、助けに来ました!さぁ、行きましょう!」
しかしセリアは動かなかった。
「馬鹿なことしないで!あなたはもうすぐ夢が叶うんでしょう!私みたいな邪悪な魔物を助けてどうするのよ!今すぐ出て行って!」
グラゥはその言葉を無視してセリアに近づいた。
「来ないで!近づいたら殺すわよ!」
脅すように触手を揺らめかせるセリアにグラゥはなお近づく。
「私・・・」
「死なないでください!」
突然、グラゥが叫んだ。
「どんな姿になってもセリアさんはセリアさんだ!もしセリアさんが邪悪なら自分を犠牲にして僕に栄光を掴まそうとはしない!」
「でも・・・あなたの夢は・・・」
「大切な人を犠牲にして騎士になっても僕は夢を叶えた事にならない。僕はあなたが好きだ。あなたが必要なんだ。僕の夢はあなたを守れる騎士になることです。お願いだから、生きてください・・・」
「グラゥ・・・・」
セリアはしばらく目を伏せていたが、やがて目を開いた。
「いくわよ。」
「はい?」
「逃げるんでしょ?」
「はい!行きましょう!」
「それで、どこかに行くあてがあるの?」
「東の方に親魔物領があるはずです。そこまで逃げましょう。」
牢屋から逃げ出し、街道を避けつつ移動しながら二人はそんな会話をしていた。
「ところで、セリアさん。まさかと思いますけど、本当にスパイなんですか?」
「違うわよ。スパイは・・・」
「見つけたぞ。穢れた、魔物め。」
「あぅ・・!」
「セリアさん!」
突然、横合いから甲冑姿の男が出てきてセリアに斬りつけた。
「止めだ!」
傷を負ったセリアに向かって剣を振り下ろす男。
しかしグラゥがセリアと男の間に割って入り、剣を受け止めた。
「セリアさん!ここは僕がくい止めますからその間に逃げてください!」
「でも・・・」
「早く!」
グラゥの言葉にセリアは一言、
「死なないでね・・・」
と囁き走り出した。
「ふん、貴様はあの魔物と親しかったようだからな。独断で貴様を見張っていて正解だった。あの魔物を討ち取ってわが手柄にせん!」
「そうはさせない!」
「貴様!魔物に与するか!」
「ああ、彼女は僕の大切な人だ。お前なんかに殺されてたまるか!」
「いいだろう。わが名は聖騎士フリント!貴様は?」
「僕はグラゥ。彼女の騎士だ!」
「ふん、反逆者が騎士などと名乗りおって。わが剣の錆にしてくれる!」
「いくぞぉぉぉ!」
キン、カン、キン
何回と武器を打ち合わせる二人。
すこし立つとだんだんグラゥの方が不利になってきた。
「はっ、どうした?私の動きが見切れんのか?」
「まだだ!まだいける!」
( くそっ動きが捉えられない・・・)
「ふふっ、あまり時間をかけるわけにはいかんな。あの魔物が遠くに行く前に、この勝負にケリを付けるとしよう!」
(せめて一撃入れられれば・・・・そうだ!)
「終わりだ!」
そういってフリントは剣を振り下ろし、勝ったと確信した。
しかし次の瞬間彼の目は大きく見開かれた。
「そ、そんな・・・」
彼の目の前には肩に食い込んだ剣をつかんで動かなくしているグラゥの姿があったからだ。
その姿がフリントの見た最後の光景になる。
「うおおおおっ!」
雄たけびと共に放たれた一撃が彼の意識を遠くに飛ばした。
「はあっ!はあっ!少し・・・無茶・・・だったかな・・・」
フリントが動かなくなると、そういってグラゥは肩に食い込んだ剣を引き抜いた。
「セリア・・・さん・・・遠くまで・・・逃げれたかな・・・早く・・・追いかけて・・・安心させて・・・あげないと・・・」
その時、馬蹄の音と共に騎馬隊が彼の前に現れた。
「・・・新手・・・?」
満身創痍になりながらも武器を構える。
すると騎馬の一人が彼に話しかけた。
よく見ると馬に乗っているのではなく、下半身が馬その物のケンタウロスだ。
「グラゥというのはお前か?」
「・・・そう・・・だ・・・」
「よし!衛生班!」
掛け声と共に数人の兵士が現れ彼を担ぎ上げた。
「・・・あなた方は・・・一体・・・?」
「我々は、お前達を助けに来た。もう安心だ。」
「そう・・・ですか・・・」
「・・・!?おいっ、しっかりしろ!ええぃ、戻るぞ!急げ!」
「・・・・・!?」
小奇麗な部屋でグラゥは目を覚ました。
「参ったな・・・この二日で二回も気絶するなんて・・・それにしてもここは?」
「親魔物領の町の教会です。」
「わああっ!」
驚いて振り向くと、グラゥはさらに驚かされた。
「エセル司書!」
「驚きました?」
「そりゃ、驚きますよ。あれ?でもなぜここに?」
「あなたはケンタウロス率いる騎馬隊に助けられたのでしょう?その騎馬隊を手配したのは誰だと思います?」
そう言うなり、エセルは服から数本の触手を出して見せた。
「じゃあ、スパイは・・・」
「私ですわ。ローパーは擬態が得意ですから、気づかなかったでしょう?」
「はは・・・」
乾いた笑いを漏らすグラゥ。
「しかし、シスター・セリアには気の毒なことをしました。仕事を完了して脱出しようとしてた所を彼女に見つかり、取り押さえる過程で卵をうみつけてしまいました・・・責任を感じ、彼女も一緒に脱出させようとしたのですが、まさか彼女が自ら捕まるとは・・・」
「・・・・・」
「一足先に脱出して私を迎えにきた騎馬隊に彼女の救出をお願いしていたところに、彼女があなたを助けてほしいとやって来たのです。」
「そうだったんですか・・・そんなことが・・・」
「申し訳ありません。すべては私の責任です。
「いいんですよ。僕もセリアさんも・・・・あれ?そういえばセリアさんは?」
「ああ、彼女なら・・・」
エセルが答えかけたとき、
「グラゥ!!」
という叫びと共にセリアが部屋に入ってきた。
「よかった・・・グラゥ、死んじゃうかと思った・・・」
「セリアさん・・・苦しい・・・」
セリアは手と触手でグラゥを抱きしめているのだが、傍から見れば締め上げているようにしか見えない。
「そのくらいにしておかないとまだ彼、傷が塞がってないし、本当に死んじゃいますわよ。」
「あっ、ごめん・・・・」
エセルの言葉にセリアはようやくグラゥを放す。
「げほっ・・・僕は大丈夫です。セリアさんは?」
「私は平気よ。もう傷も治ってる。」
「ローパーは再生力が強い種族ですからね。おっと、私はこれで失礼しますわ。後は、二人で楽しみなさいな。」
そういって出て行くエセル。
「へっ?楽しむって?」
あっけにとられるグラゥの口にセリアの口が覆いかぶさる。
「んんんっ!セリアさん何を・・・!」
「グラゥは命がけで私を助けてくれたからね。これはそのお返し。」
そういって服を脱ぎ始めるセリア。
「ちょっと、ちょっと!」
「グラゥは私のこと好きって言ってくれたよね。あれは嘘?」
「嘘じゃないですけど・・・」
「じゃあ、平気ね。動けないなら、私に任せてくれていいわ。」
言いつつ触手が伸びてきてグラゥのモノを取り出した。
それを口に含むセリア。
「あううっ!」
「ふふっ!グラゥこんなことされるの初めて?」
「はっ、はい・・・」
「嬉しいわね。あなたの初めて私がもらえるなんて。」
そのままモノをしゃぶり始める。
「くくっ・・・!」
「あっ!もうでそう?」
「ああああっ!」
その瞬間グラゥはあっけなく達し、セリアの口内に精液を放った。
「んぐっ・・・初めてじゃ、こんなものかな?でもまだいけるわね?」
口から精液を滴らせ、怪しい微笑みを浮かべセリアはグラゥを見つめた。
「今度はこっちでしてあげる・・・」
そう言うとグラゥの上にまたがるセリア。
そのまま、狙いを定めて腰を下ろしていく。
「は、入ったわね・・・初めてだろうし好きなように動いていいわ・・・」
「わ、解りました・・・」
グラゥが腰を動かしていく。
「あああっ!いい!いいよ!グラゥ!」
「セリアさん!セリアさん!」
「セリア!セリアって呼んで!」
「セリア!気持ちいい!気持ちいいよ!」
「くぅ!私も、もっと気持ちよくして!」
セリアはそういって触手をグラゥの口に突っ込んだ。
「ぐむむっ!?」
「やあっ!グラゥの口の中いいっ!もっと!もっと!」
叫びながら腰を動かすセリアにグラゥは再び限界を迎える。
「ぶはっ・・・セリア・・・僕・・・また・・・!」
「いいよ!中に頂戴!グラゥの精、欲しいの!」
「くはあああああっ!」
「っっんんーーーーっっ!」
グラゥが精を放つと同時にセリアも達し、そのままグラゥに体を預ける様に倒れこんだ。
「セリアさん・・・好きです・・・」
「私もよ・・・これからはずっと一緒よ・・・」
そのまま二人はキスをし、再び交わり始めた。
「お楽しみはもうよろしいですか?」
何度と無く交わり、疲れて抱き合っていた二人は、突然声をかけられ弾かれた様に起き上がった。
「エセルさん!」
「随分、盛んでしたわね。」
「覗いてたんですか!?」
「まさか。あんなに声を出してたら、見なくても状況が想像できますわ。」
エセルの言葉に真っ赤になる二人。
その時、ふとセリアがある事に気づいた。
「あれ?グラゥ、傷が治ってない?」
「あっ、本当だ!」
見るとグラゥの体にあった小さな傷はおろか、肩にあった大きな傷もなくなっていた。
「多分、さっきのあなた方の交わりを通じてセリアの魔力の一部がグラゥに流れ込んだのでしょうね。」
「ということは・・・?」
「グラゥにもローパーの再生能力が備わったと思いますわ。」
「はぁ、そうですか。」
「あなた、いやにあっさりしてるわね。」
「まあ、日常生活に困ることではないですし。」
「ゴホン。」
咳払いと共にエセルは話題を変える。
「それで、二人はこれからどうしますの。」
それをきいて二人は改めてこれからのことを考えた。
「う〜ん・・・」
「どうしようか・・・」
悩む二人にエセルはある提案をする。
「グラゥは自警団、セリアはこの教会に勤めてはいかが?今どちらも人手が不足していますの。」
「教会ってことはグラゥと離れて暮らすの?」
「そんなことはありません。この町の教会は伴侶との同棲OKですわ。」
「じゃあ、私はいいわよ。グラゥも一緒に暮らしましょう?」
「はい、お願いします。」
セリアの問いに対しグラゥは頷いた。
しばらく後、新魔物領の教会の前で行商ゴブリンと会話をするセリアの姿があった。
「頼まれた品はこれで?」
「ええいいわよ。」
「まいどあり。しっかしこんなもん欲しがるなんてお客さん変な人だね〜」
ゴブリンは呟きながら去っていった。
夕方になってグラゥが帰ってきた。
「ただいま。」
「おかえり。自警団の仕事にはもう慣れた?」
「はい、みんな親切な人ばかりです。」
「そんな貴方に今日はプレゼントがあるの。」
「何です?」
セリアは笑顔で何かの包みをグラゥに手渡す。
「これは・・・!」
それはグラゥが騎士を目指すきっかけになった絵本だった。
「ありがとうございます・・・あれ?」
感激しながら本をめくっていたグラゥだが途中で手を止めた。
「若者は愛し合った魔物を助けるため戦いに身を投じ、やがて騎士になる・・・内容が僕の持っていた物と違いませんか?それにこの内容は・・・」
「ふふっ、あなたにはこっちの方がいいでしょ。」
「セリアさん・・・」
「さあ、中に入ってご飯にしましょう。私の騎士様・・・」
「はい、僕のお姫様!」
二人は微笑んで中に入っていった
その絵本の最後にはこう書いてあった。
昔ある所に若者がいました。
若者は悪い竜は倒していないし、人々から尊敬されているわけでもありませんが、魔物でも彼にとって大切なお姫様を守ることは出来ました。
彼は立派な騎士になりました。
10/11/28 22:30更新 / ビッグ・リッグス