チョコっとバレンタイン！！
今日は2月13日。
ここは親魔物領の町ジラード。
町の一画にある一軒のお菓子屋の厨房に数十名の魔物娘が集まった。
「は〜い、みなさ〜ん！！
それではこれからチョコ作り教室を始めま〜す！」
「は〜い！！」
店員のの掛け声で各調理台ごとに分かれた魔物娘達は一斉に作業を開始した。
彼女達の目的は皆同じ。
大切な人へのチョコを作ることである。
その中、ある調理台では5人の魔物娘が作業していた。
「よし、形はこれでいいわ。
後は飾りつけだけね。
どんな形にしたら気に入ってくれるかな？」
説明通りにチョコを作るのはローパーのセリア。
「あはは〜！
チョコ〜、チョコ〜、エムルへのチョコ〜！」
ケセランパサランのラフィはチョコを作る際に自分の毛玉を撒き散らしているのにまったく気付いていない。
「・・・・」
一言も喋らず黙々と作業をするマンティスのロート。
「普通のチョコじゃ面白くねぇな・・・
ま、こんなこともあろうかと虜の実のエキスを持ってきて正解だったぜ！
これを食ったあいつらとバレンタインは乱交三昧だな！！」
なにやら怪しい発言をするのはアルプのメイル。
「ふっふっふっ、このソノミスペシャルチョコで先生のハートをがっちりゲットしてやりますよ！
え〜っと、チョコは溶かしたから調味料として塩と胡椒と隠し味に・・・」
チョコと呼ぶにはおぞましい何かを作ろうとしているスフィンクスのソノミ。
暫くしてそれぞれのチョコが完成し、用意されていた箱に入れリボンを結んで・・・
「上出来ね！」
「出来た〜！」
「・・・」
「まぁ、こんなもんだな！」
「完成です！」
全員が作業を終えた後、着替えるために調理台を離れると後には同じ包みの5つのチョコが残った。
そこへ・・・
「だあ〜っ、遅れちまった！！
俺を置いて着替えに行っちまうなんてひでぇよ！！」
作業に手間取っていた別の調理台のオーガが彼女らの調理台の傍を走り向けようとした時、事件は起きた。
グワッシャ〜ン！！
オーガは調理台にわき腹をぶつけてしまった！
吹っ飛ぶチョコ。
「痛つつ・・・！
おっと、元通りにしとかないとな。」
しかし彼女は困ってしまった。
「やべぇ・・・どれが何処にあったかわかんねぇぞ・・・」
暫く考えたが、
「う〜ん・・・ま、適当でいいだろ・・・
・・・
これでよしっと！」
落ちたチョコをさっと元通りにして走り去るオーガ。
その後戻ってきた5人は自分達の作業場所に置いてあったチョコを持って自宅に戻った。
彼女達は気付いていない。
この行動がそれぞれの明日のバレンタインに波乱を生み出すことを・・・
そして明くる2月14日。
「ん〜、朝か・・・」
冒険者エムルはベッドの中で差し込んでくる朝日に目を細めた。
「もう少し寝るか・・・」
そう呟いて寝返りをうった彼の顔に・・・
「あはは〜、エムル〜！！」
「うおっ！！」
フワリとラフィがぶつかった。
「おい、ラフィ勘弁してくれ。
昨日は一日依頼を受けていて疲れてるんだ・・・」
エムルが呻いてもラフィは気にせず、ニコニコしながら箱を差し出した。
「何だこりゃ？」
「えへへ〜、きょうはなんのひ〜？」
「今日？
2月14日・・・ああ、バレンタインか！！」
「せいか〜い！！」
「まさか、これチョコか！？」
「うん、ラフィが作った〜！」
「そうか、どれどれ・・・」
エムルが箱を開けると中から豪華に飾り付けられたチョコが出て来た。
「おおっ、こりゃすごいな！！
ラフィこんなチョコ作れたのか！？」
「あはは〜！
（あれ〜、ラフィのチョコこんなだっけ〜？
でも、エムルよろこんでるしいいか〜）」
「パクッ・・・
うん、味も最高だ！
ラフィお前も食え。」
「うん、あはは〜！！」
「わっはっはっ！！」
二人はニコニコ顔でチョコを頬張った。
それとほぼ同じ時間、
「おし、全員集まったな！」
メイルは自分の屋敷の使用人達、ノーリ、ユーリク、キジェ、ネオニア、オニキス、ウォレス、ナバリの7人を自室に呼んだ。
「どうしたんです？
私達全員を一度に呼び出すなんて。」
「あー、そのことだがな、ノーリ・・・
お前達は俺のために日々、一生懸命働いてくれているな。」
「そりゃそうです。
俺達はあの日、メイル様に襲われてから一生付いていくって決めたんですから。」
「うれしいぞ、キジェ。
そこでだ、今日はそんなお前達にプレゼントがある！！」
「？」
「これだ！」
首を傾げる男達にメイルは一つの箱を差し出した。
「俺の手作りチョコだ。（媚薬入りだが）
ありがたく食べろよ。
いいか、これはあくまで日ごろの感謝を込めての報酬だ、感じ外するな！」
そう言って胸を張るメイル。
「・・・ヒソヒソ（今日ってバレンタインだったよな？）」
「（ああ、好きな相手にチョコを送る日だ）」
「（昨日用事があるとか言って出かけてたのはそういうことだったんっすか）」
「（しかし、メイル様は嘘が下手ですね）」
「（あんなこと言ってるけどわざわざ手作りにしてる時点でバレバレだよな）」
「（可愛いなぁ、メイル様）」
「（うんうん）」
「おい、コラァ！！
何をヒソヒソ話してるんだ！！」
「いいえ、何でもありません！」
「なら、さっさと食え！（そして乱交だ、ウヒヒ・・・）」
心の中で邪な笑みを浮かべるメイルの前で7人はチョコを分けてそれぞれ口に入れた。
「どうだ、旨いか？」
メイルが尋ねたとき7人の動きがピタリと止まった。
「何だ、どうした！？」
どうなったか予想が付いてるくせにわざとらしく慌てる。
「・・・」
「？」
「アーッハッハッハッ！！！！！」
突然7人が一斉に笑い出した！！
「ウォイッ！！」
メイルはビックリし思わずのけぞる。
「何だよ、急に笑い出して・・・！」
「ヒーッヒッヒッ・・・急に笑いが止まらなくなって・・・！！
メイル様・・・これは一体・・・？」
「知らねぇよ、こっちが聞きたいぐらいだ・・・あ！」
そういった時、メイルは部屋に小さな毛玉が漂っていることに気付いた。
「こりゃ、まさか！！
おい、この毛玉は何処から入ってきた！」
「あ〜、それなら箱の中に大量に入ってましたね。
チョコの緩衝材か何かじゃなかったんですか？」
「馬鹿野郎、ネオ二ア！！
これは幻覚作用のあるケセランパサランの毛玉だよ！」
スーーッ・・・
慌てるメイルの口に毛玉が吸い込まれる。
「そういえば、昨日同じ調理台でケセランパサランが作業してたな。
くそっ、何時の間に箱が摩り替わったんだよ！」
「あはは〜、いいじゃないですか〜
私達は楽しいですし〜」
「そうはいかねぇよ！
・・・ああっ・・・何だか・・・可笑しくてたまらなくなってきちまった！」
どうやらメイルにも毛玉の効果が表れ始めたらしい。
「くくくっ・・・あはははっ、せっかく媚薬入りの特性チョコで乱交としゃれ込もうとしたのに台無しだ！」
「あははっ、メイル様そんな事企んでたんですか！」
「うるせぇ、未遂なんだから無罪だ！
は〜はっはっはっ！」
「まぁ、いいでしょう！
あはっはっ！」
この日一日メイルの屋敷には笑い声が耐えなかった。
予想通りと行かなかったが沢山の笑顔に囲まれたメイルは幸せだった。
町の一画にある建物。
そこにはこんな看板が掲げられている。
「コレック探偵事務所」
「先生〜」
「何だ？」
助手のソノミの声にこの事務所の主であるコレックは新聞を読むのを止め彼女の方を向いた。
「問題です。
今日は何の日でしょう？」
コレックは少し考えた後、
「バレンタインだな。」
「正解！！
では正解した先生に私のスペシャルチョコをプレゼント・・「だが断る！！」
コレックはソノミの言葉を途中で遮った。
「そんな〜、ひどい！！」
「ひどく無いっ！
今まで俺が君の料理でどんな目にあってきたか・・・」
コレックの脳裏に最近の出来事が思い出された。
クリスマスには『チキン』という名の完全に炭と化したチキンを食わされ、正月には「『雑煮』と餅を入れたコーヒーを飲まされた。
「うっ・・・！」
思い出しただけでコレックは吐き気がした。
なお、ソノミの名誉のために言うが彼女は料理が出来ないわけではない。
ただ何かのイベントにおいて変な気合を入れて料理するとゲテモノ料理が出来上がってしまうようだ。
本人はただコレックに喜んで欲しいだけなので無理に怒ることも出来ないのが困ったところである。
「・・・とにかく、もう腹を壊すのは御免だ。」
「大丈夫ですよ〜、今回はちゃんと教室で教えて貰って作ったんですから〜」
「駄目駄目、君の事だからきっと変な味付けにしてるに決まってる。」
「ムッ・・・！」
さすがにソノミは怒った。
「ちょっと、先生その言い方はないんじゃないですか！？」
「だって実例があるし。」
「そんなに言うなら確かめてくださいよ！
もし不味かったら今日の晩御飯わたしが奢りますから！」
「ほぅ、言ったね。
じゃあ、もし箱の中のチョコが上手かったら今日の晩飯は俺が奢ろう。」
「よ〜し、じゃあ開けてください！！」
コレックはソノミからチョコが入った箱を彼女に受け取り彼女に背を向けて蓋を開けた。
「・・・こ、これは・・・！」
中身を一口食べて、コレックはゆっくりとソノミに振り返った。
「ソノミ君・・・」
「はい？」
「馬鹿な・・・素晴らしい出来だ・・・！」
「・・・！？
本当ですか！！」
「ああ、本当だ。」
「やった〜！！」
小躍りするソノミを横目にコレックは振り返って箱の中のチョコを見た。
それは・・・一枚の大きな板チョコだった。
バレンタインに贈るものとしては少しシンプルすぎる気もするがコレックにとっては彼女が普通に食べられるものをくれただけで驚きだった。
「まさか、君にこんな（シンプルな）形のチョコが作れるだなんて・・・」
「むふふ・・・私に掛かればあんな（斬新な）形は簡単に出来ますからね！」
「味も（癖が無くて）最高だよ。」
「そうでしょう、そうでしょう。
（タバスコを使った）味付けには苦労しましたからね。」
「本当にこれを君が作ったのか？」
そう言って差し出されたチョコを見てソノミは目を点にした。
「・・・あれ？」
「どうしたんだ？」
「このチョコ・・・私のじゃない・・・」
それを聞いたコレックも彼女と同じ表情になった。
「は・・・？
ということは君の本当のチョコは・・・どんなのだったんだ・・・？」
「え〜っとですね・・・かくかくしかじか・・・」
「・・・げっ！」
ソノミからチョコの内容を聞いたコレックは絶句する。
そんな彼を尻目に、
「う〜ん、なんでこんなことに？
あ、それはそうと約束どおり今日晩御飯奢ってくださいね♪」
とソノミ。
「お、おい、ちょっと待て！
このチョコは君が作ったものではないんだろう？
なら奢る必要はない！」
慌てて反論するコレック。
しかしソノミは涼しい顔。
「先生言ってじゃないですか。
『箱の中のチョコが上手かったら今日の晩飯は俺が奢ろう』って。
『君が作ったチョコが』とは言ってませんから奢ってもらいます！」
「う・・・しまった・・・！」
「にょほほ〜！
さ〜て何を食べに行くとしますかね〜！」
「出来るだけ・・・安いとこで・・・頼む・・・」
このコレックの悲痛な言葉をガン無視された。
ソノミは晩御飯に高級レストランでたらふくご馳走を食べ、幸せだった。
町の中心部にある酒場兼ギルドの集会所。
そこで働くロートは休憩室である人を待っていた。
「ふぅ・・・やっと仕事が一段落したよ。
なんだい、ロート。
用事って？」
やってきた青年の名はオーイス。
彼もこのギルドで働いており、ロートのパートナーでもある。
「・・・」
ロートは無言で箱を差し出す。
「これは？」
「・・・バレンタイン。」
「バレンタイン・・・ああ、そうか！
ありがとう、ロート。」
オーイスはロートの一言で箱の中身を察した。
「開けていい？」
「・・・コクリ。」
ニコニコしながら箱を開けたオーイス。
しかし次の瞬間、表情が固まった。
「・・・は？」
中から出てきたのは、彼が期待したチョコではなく暗褐色をしたなんだか良くわからない塊だった。
「・・・ロート、これは何？」
オーイスが尋ねるとロートは一瞬表情を強張らせたが、
バシッ！
と素早くオーイスの手から塊をひったくった。
「うわっ！」
「・・・ごめんなさい。
間違えた・・・」
「へ？」
「何処かで間違えた・・・
こんなの・・・オーイスに食べさせられない・・・」
そう言ってそっぽを向くロート。
その目には涙が溜まっていた。
「ロート・・・」
涙を見たオーイスは、
「えいっ！」
「！？」
ロートの手から塊を奪い返した。
「・・・返して。」
「駄目。
今から僕が食べるんだから。」
「でも・・・食べたら・・・お腹壊すよ。」
「大丈夫だよ。
それにロートがくれたものを粗末には出来ないしね。」
そう言うなりオーイスはチョコをパクッと食べてしまった。
「・・・・がっ！」
「・・・大丈夫？」
「うぐぐ・・・
・・・・・・・大丈夫！！」
親指を突き立てるオーイス。
「・・・！」
それを見たロートは心なしか明るい表情を浮かべ、オーイスに抱きついた。
「ちょっと・・・ロート・・・！」
「オーイス・・・大好き・・・！」
「わ、わわーっ！！
押し倒さないで！
服を破かないでぇ〜！！」
オーイスの悲鳴が響く。
この後二人は幸せな時間を過ごした。
ただオーイスにとってこの日の夜、長い時間トイレとお付き合いしなければならなかったのはちょっぴり不幸だったのかもしれない。
町外れの教会で・・・
「ただいま、セリアさん。」
「お帰り、グラゥ。」
夕暮れ時に帰ってきたパートナーのグラゥをいつものように迎えたセリアだったが、
「あれ、それは？」
彼の持っている包みに目が言った。
「ああ、これですか。」
グラゥが包みを開けると・・・
ドサッ、ドササッ
大量の包みが転がり出た。
「これって・・・」
「チョコレートですよ。
職場の人たちに貰ったんです。」
セリアはショックを受けた。
「・・・（どうしよう・・・グラゥがこんなにチョコを貰って帰って来るなんて・・・
良く見たら綺麗に作ってるのもあるし、私なんかのチョコを今更貰っても喜んでくれるのかな・・・）」
「セリアさん？」
「は・・・へ・・・？」
自己嫌悪に陥るセリアは心配そうなグラゥの声で現実に引き戻された。
「な、何・・・？」
「セリアさんはチョコをくれないんですか？」
「あ、あるにはあるけど・・・」
それを聞いたグラゥの顔がパッと明るくなった。
「よかった〜、セリアさんがチョコを貰えなかったなかったら僕どうしようかと思いました。」
「うっ・・・じゃあ、はいこれ。」
「わ〜い、ありがとうございます！！」
セリアが差し出した箱を受け取り、上機嫌で蓋を開けるグラゥ。
中からチョコを取り出し、手を合わせた。
「よ〜し、バレンタイン初チョコいただきま〜す！」
「え、初チョコ！？」
「モグモグ・・・ええ、今日初めて食べたチョコです。」
「初めてって・・・こんなにたくさんチョコ貰って、今食べたのが始めて！？」
「だって最初は大切な人のものから食べたいじゃないですか？」
「あ・・・！」
自分の心配が取り越し苦労に過ぎず、セリアは恥ずかしさを感じた。
「グラゥ。」
「はい？」
「ありがとう・・・」
「はははっ、何でセリアさんがお礼を・・・ ウッ！！！」
それまで笑顔でチョコをかじっていたグラゥが急に前のめりに倒れた！
「グラゥ・・・！？」
「あ・・・あ・・・」
問いかけてもまともな返事が返ってこない！
「ちょっと、どうしちゃったのよ！
しっかりして！！」
慌てて駆け寄るセリアの前でグラゥの顔が真っ赤に染まっていく！
「どうして・・・どうして・・・！
はっ、もしかして私のチョコが原因！？」
グラゥの手から食べかけのチョコをもぎ取る。
「・・・クンクン・・・
匂いはただのチョコレートね、正しく作ったはずなんだけど・・・」
呟きながらチョコを少し割って口に入れる。
「・・・味も普通なんだけど。」
ドクン！
そのときセリアの心臓が大きく波打った。
「・・・！」
続いて・・・
「な、何これ・・・体が・・・体が熱い！！」
見る見る内に体が上気し、呼吸が荒くなる！
「セ、セリアさん・・・」
横でゆっくり起き上がるグラゥを見たセリア。
その頭はある感情で満たされていた。
「グラゥ・・・私・・・グラゥが欲しいよぉ・・・！」
「ぼ、僕も・・・！」
「じゃあ・・・ここで・・！」
そう言っていきなり服を脱ごうとする。
「ちょ・・・せめて寝室で・・・！」
グラゥはそう言ってフラフラと立ち上がりセリアを支えるようにして寝室へと向かう。
「早くぅ・・・早くぅ・・・」
「もう少しですっ・・・僕も・・・我慢・・・してるんですから・・・！」
二人とも寝室まで服を脱ぎながら歩く。
やっとの思い出寝室にたどり着いた二人は同時にベッドに倒れ込み、そして・・・
・・・・・
チュン・・・チュン・・・
鳥のさえずりと共に窓から朝日が差し込む。
「あの・・・」
「何・・・？」
夜通し交わり、付かれきり裸のまま寄り添って二人は会話する。
「どうしてこんなことになったんでしょう？」
「私のほうが聞きたいくらいよ。
たぶん、チョコを作った際、別の誰かのと間違えたのよ。
あ〜あ、グラゥに手作りチョコ食べて欲しかったな〜！」
セリアはプクッと頬を膨らませる。
「ははは・・・でも良かったですよ。」
「む〜、何が？」
「手作りチョコは食べれませんでしたけど、代わりにその・・・セリアさんを一杯堪能できたので・・・」
「・・・プッ！」
それを聞いてセリアは可笑しくなった。
「あははっ！
なるほど、チョコの代わりに私を食べたってことね！」
「はぁ、あとその・・・」
「？」
「もう一回・・・いいですか？」
グラゥの問いにセリアはニッコリ笑った。
「いいわよ、あなたの気が済むまで何回でも付き合ってあげる。」
その後二人は幸せそうにキスして再び肌を重ねた。
こうして２月１４日は終わった。
少し波乱もあったがそれぞれ幸せなバレンタインを過ごした。
めでたし、めでたし。
ここは親魔物領の町ジラード。
町の一画にある一軒のお菓子屋の厨房に数十名の魔物娘が集まった。
「は〜い、みなさ〜ん！！
それではこれからチョコ作り教室を始めま〜す！」
「は〜い！！」
店員のの掛け声で各調理台ごとに分かれた魔物娘達は一斉に作業を開始した。
彼女達の目的は皆同じ。
大切な人へのチョコを作ることである。
その中、ある調理台では5人の魔物娘が作業していた。
「よし、形はこれでいいわ。
後は飾りつけだけね。
どんな形にしたら気に入ってくれるかな？」
説明通りにチョコを作るのはローパーのセリア。
「あはは〜！
チョコ〜、チョコ〜、エムルへのチョコ〜！」
ケセランパサランのラフィはチョコを作る際に自分の毛玉を撒き散らしているのにまったく気付いていない。
「・・・・」
一言も喋らず黙々と作業をするマンティスのロート。
「普通のチョコじゃ面白くねぇな・・・
ま、こんなこともあろうかと虜の実のエキスを持ってきて正解だったぜ！
これを食ったあいつらとバレンタインは乱交三昧だな！！」
なにやら怪しい発言をするのはアルプのメイル。
「ふっふっふっ、このソノミスペシャルチョコで先生のハートをがっちりゲットしてやりますよ！
え〜っと、チョコは溶かしたから調味料として塩と胡椒と隠し味に・・・」
チョコと呼ぶにはおぞましい何かを作ろうとしているスフィンクスのソノミ。
暫くしてそれぞれのチョコが完成し、用意されていた箱に入れリボンを結んで・・・
「上出来ね！」
「出来た〜！」
「・・・」
「まぁ、こんなもんだな！」
「完成です！」
全員が作業を終えた後、着替えるために調理台を離れると後には同じ包みの5つのチョコが残った。
そこへ・・・
「だあ〜っ、遅れちまった！！
俺を置いて着替えに行っちまうなんてひでぇよ！！」
作業に手間取っていた別の調理台のオーガが彼女らの調理台の傍を走り向けようとした時、事件は起きた。
グワッシャ〜ン！！
オーガは調理台にわき腹をぶつけてしまった！
吹っ飛ぶチョコ。
「痛つつ・・・！
おっと、元通りにしとかないとな。」
しかし彼女は困ってしまった。
「やべぇ・・・どれが何処にあったかわかんねぇぞ・・・」
暫く考えたが、
「う〜ん・・・ま、適当でいいだろ・・・
・・・
これでよしっと！」
落ちたチョコをさっと元通りにして走り去るオーガ。
その後戻ってきた5人は自分達の作業場所に置いてあったチョコを持って自宅に戻った。
彼女達は気付いていない。
この行動がそれぞれの明日のバレンタインに波乱を生み出すことを・・・
そして明くる2月14日。
「ん〜、朝か・・・」
冒険者エムルはベッドの中で差し込んでくる朝日に目を細めた。
「もう少し寝るか・・・」
そう呟いて寝返りをうった彼の顔に・・・
「あはは〜、エムル〜！！」
「うおっ！！」
フワリとラフィがぶつかった。
「おい、ラフィ勘弁してくれ。
昨日は一日依頼を受けていて疲れてるんだ・・・」
エムルが呻いてもラフィは気にせず、ニコニコしながら箱を差し出した。
「何だこりゃ？」
「えへへ〜、きょうはなんのひ〜？」
「今日？
2月14日・・・ああ、バレンタインか！！」
「せいか〜い！！」
「まさか、これチョコか！？」
「うん、ラフィが作った〜！」
「そうか、どれどれ・・・」
エムルが箱を開けると中から豪華に飾り付けられたチョコが出て来た。
「おおっ、こりゃすごいな！！
ラフィこんなチョコ作れたのか！？」
「あはは〜！
（あれ〜、ラフィのチョコこんなだっけ〜？
でも、エムルよろこんでるしいいか〜）」
「パクッ・・・
うん、味も最高だ！
ラフィお前も食え。」
「うん、あはは〜！！」
「わっはっはっ！！」
二人はニコニコ顔でチョコを頬張った。
それとほぼ同じ時間、
「おし、全員集まったな！」
メイルは自分の屋敷の使用人達、ノーリ、ユーリク、キジェ、ネオニア、オニキス、ウォレス、ナバリの7人を自室に呼んだ。
「どうしたんです？
私達全員を一度に呼び出すなんて。」
「あー、そのことだがな、ノーリ・・・
お前達は俺のために日々、一生懸命働いてくれているな。」
「そりゃそうです。
俺達はあの日、メイル様に襲われてから一生付いていくって決めたんですから。」
「うれしいぞ、キジェ。
そこでだ、今日はそんなお前達にプレゼントがある！！」
「？」
「これだ！」
首を傾げる男達にメイルは一つの箱を差し出した。
「俺の手作りチョコだ。（媚薬入りだが）
ありがたく食べろよ。
いいか、これはあくまで日ごろの感謝を込めての報酬だ、感じ外するな！」
そう言って胸を張るメイル。
「・・・ヒソヒソ（今日ってバレンタインだったよな？）」
「（ああ、好きな相手にチョコを送る日だ）」
「（昨日用事があるとか言って出かけてたのはそういうことだったんっすか）」
「（しかし、メイル様は嘘が下手ですね）」
「（あんなこと言ってるけどわざわざ手作りにしてる時点でバレバレだよな）」
「（可愛いなぁ、メイル様）」
「（うんうん）」
「おい、コラァ！！
何をヒソヒソ話してるんだ！！」
「いいえ、何でもありません！」
「なら、さっさと食え！（そして乱交だ、ウヒヒ・・・）」
心の中で邪な笑みを浮かべるメイルの前で7人はチョコを分けてそれぞれ口に入れた。
「どうだ、旨いか？」
メイルが尋ねたとき7人の動きがピタリと止まった。
「何だ、どうした！？」
どうなったか予想が付いてるくせにわざとらしく慌てる。
「・・・」
「？」
「アーッハッハッハッ！！！！！」
突然7人が一斉に笑い出した！！
「ウォイッ！！」
メイルはビックリし思わずのけぞる。
「何だよ、急に笑い出して・・・！」
「ヒーッヒッヒッ・・・急に笑いが止まらなくなって・・・！！
メイル様・・・これは一体・・・？」
「知らねぇよ、こっちが聞きたいぐらいだ・・・あ！」
そういった時、メイルは部屋に小さな毛玉が漂っていることに気付いた。
「こりゃ、まさか！！
おい、この毛玉は何処から入ってきた！」
「あ〜、それなら箱の中に大量に入ってましたね。
チョコの緩衝材か何かじゃなかったんですか？」
「馬鹿野郎、ネオ二ア！！
これは幻覚作用のあるケセランパサランの毛玉だよ！」
スーーッ・・・
慌てるメイルの口に毛玉が吸い込まれる。
「そういえば、昨日同じ調理台でケセランパサランが作業してたな。
くそっ、何時の間に箱が摩り替わったんだよ！」
「あはは〜、いいじゃないですか〜
私達は楽しいですし〜」
「そうはいかねぇよ！
・・・ああっ・・・何だか・・・可笑しくてたまらなくなってきちまった！」
どうやらメイルにも毛玉の効果が表れ始めたらしい。
「くくくっ・・・あはははっ、せっかく媚薬入りの特性チョコで乱交としゃれ込もうとしたのに台無しだ！」
「あははっ、メイル様そんな事企んでたんですか！」
「うるせぇ、未遂なんだから無罪だ！
は〜はっはっはっ！」
「まぁ、いいでしょう！
あはっはっ！」
この日一日メイルの屋敷には笑い声が耐えなかった。
予想通りと行かなかったが沢山の笑顔に囲まれたメイルは幸せだった。
町の一画にある建物。
そこにはこんな看板が掲げられている。
「コレック探偵事務所」
「先生〜」
「何だ？」
助手のソノミの声にこの事務所の主であるコレックは新聞を読むのを止め彼女の方を向いた。
「問題です。
今日は何の日でしょう？」
コレックは少し考えた後、
「バレンタインだな。」
「正解！！
では正解した先生に私のスペシャルチョコをプレゼント・・「だが断る！！」
コレックはソノミの言葉を途中で遮った。
「そんな〜、ひどい！！」
「ひどく無いっ！
今まで俺が君の料理でどんな目にあってきたか・・・」
コレックの脳裏に最近の出来事が思い出された。
クリスマスには『チキン』という名の完全に炭と化したチキンを食わされ、正月には「『雑煮』と餅を入れたコーヒーを飲まされた。
「うっ・・・！」
思い出しただけでコレックは吐き気がした。
なお、ソノミの名誉のために言うが彼女は料理が出来ないわけではない。
ただ何かのイベントにおいて変な気合を入れて料理するとゲテモノ料理が出来上がってしまうようだ。
本人はただコレックに喜んで欲しいだけなので無理に怒ることも出来ないのが困ったところである。
「・・・とにかく、もう腹を壊すのは御免だ。」
「大丈夫ですよ〜、今回はちゃんと教室で教えて貰って作ったんですから〜」
「駄目駄目、君の事だからきっと変な味付けにしてるに決まってる。」
「ムッ・・・！」
さすがにソノミは怒った。
「ちょっと、先生その言い方はないんじゃないですか！？」
「だって実例があるし。」
「そんなに言うなら確かめてくださいよ！
もし不味かったら今日の晩御飯わたしが奢りますから！」
「ほぅ、言ったね。
じゃあ、もし箱の中のチョコが上手かったら今日の晩飯は俺が奢ろう。」
「よ〜し、じゃあ開けてください！！」
コレックはソノミからチョコが入った箱を彼女に受け取り彼女に背を向けて蓋を開けた。
「・・・こ、これは・・・！」
中身を一口食べて、コレックはゆっくりとソノミに振り返った。
「ソノミ君・・・」
「はい？」
「馬鹿な・・・素晴らしい出来だ・・・！」
「・・・！？
本当ですか！！」
「ああ、本当だ。」
「やった〜！！」
小躍りするソノミを横目にコレックは振り返って箱の中のチョコを見た。
それは・・・一枚の大きな板チョコだった。
バレンタインに贈るものとしては少しシンプルすぎる気もするがコレックにとっては彼女が普通に食べられるものをくれただけで驚きだった。
「まさか、君にこんな（シンプルな）形のチョコが作れるだなんて・・・」
「むふふ・・・私に掛かればあんな（斬新な）形は簡単に出来ますからね！」
「味も（癖が無くて）最高だよ。」
「そうでしょう、そうでしょう。
（タバスコを使った）味付けには苦労しましたからね。」
「本当にこれを君が作ったのか？」
そう言って差し出されたチョコを見てソノミは目を点にした。
「・・・あれ？」
「どうしたんだ？」
「このチョコ・・・私のじゃない・・・」
それを聞いたコレックも彼女と同じ表情になった。
「は・・・？
ということは君の本当のチョコは・・・どんなのだったんだ・・・？」
「え〜っとですね・・・かくかくしかじか・・・」
「・・・げっ！」
ソノミからチョコの内容を聞いたコレックは絶句する。
そんな彼を尻目に、
「う〜ん、なんでこんなことに？
あ、それはそうと約束どおり今日晩御飯奢ってくださいね♪」
とソノミ。
「お、おい、ちょっと待て！
このチョコは君が作ったものではないんだろう？
なら奢る必要はない！」
慌てて反論するコレック。
しかしソノミは涼しい顔。
「先生言ってじゃないですか。
『箱の中のチョコが上手かったら今日の晩飯は俺が奢ろう』って。
『君が作ったチョコが』とは言ってませんから奢ってもらいます！」
「う・・・しまった・・・！」
「にょほほ〜！
さ〜て何を食べに行くとしますかね〜！」
「出来るだけ・・・安いとこで・・・頼む・・・」
このコレックの悲痛な言葉をガン無視された。
ソノミは晩御飯に高級レストランでたらふくご馳走を食べ、幸せだった。
町の中心部にある酒場兼ギルドの集会所。
そこで働くロートは休憩室である人を待っていた。
「ふぅ・・・やっと仕事が一段落したよ。
なんだい、ロート。
用事って？」
やってきた青年の名はオーイス。
彼もこのギルドで働いており、ロートのパートナーでもある。
「・・・」
ロートは無言で箱を差し出す。
「これは？」
「・・・バレンタイン。」
「バレンタイン・・・ああ、そうか！
ありがとう、ロート。」
オーイスはロートの一言で箱の中身を察した。
「開けていい？」
「・・・コクリ。」
ニコニコしながら箱を開けたオーイス。
しかし次の瞬間、表情が固まった。
「・・・は？」
中から出てきたのは、彼が期待したチョコではなく暗褐色をしたなんだか良くわからない塊だった。
「・・・ロート、これは何？」
オーイスが尋ねるとロートは一瞬表情を強張らせたが、
バシッ！
と素早くオーイスの手から塊をひったくった。
「うわっ！」
「・・・ごめんなさい。
間違えた・・・」
「へ？」
「何処かで間違えた・・・
こんなの・・・オーイスに食べさせられない・・・」
そう言ってそっぽを向くロート。
その目には涙が溜まっていた。
「ロート・・・」
涙を見たオーイスは、
「えいっ！」
「！？」
ロートの手から塊を奪い返した。
「・・・返して。」
「駄目。
今から僕が食べるんだから。」
「でも・・・食べたら・・・お腹壊すよ。」
「大丈夫だよ。
それにロートがくれたものを粗末には出来ないしね。」
そう言うなりオーイスはチョコをパクッと食べてしまった。
「・・・・がっ！」
「・・・大丈夫？」
「うぐぐ・・・
・・・・・・・大丈夫！！」
親指を突き立てるオーイス。
「・・・！」
それを見たロートは心なしか明るい表情を浮かべ、オーイスに抱きついた。
「ちょっと・・・ロート・・・！」
「オーイス・・・大好き・・・！」
「わ、わわーっ！！
押し倒さないで！
服を破かないでぇ〜！！」
オーイスの悲鳴が響く。
この後二人は幸せな時間を過ごした。
ただオーイスにとってこの日の夜、長い時間トイレとお付き合いしなければならなかったのはちょっぴり不幸だったのかもしれない。
町外れの教会で・・・
「ただいま、セリアさん。」
「お帰り、グラゥ。」
夕暮れ時に帰ってきたパートナーのグラゥをいつものように迎えたセリアだったが、
「あれ、それは？」
彼の持っている包みに目が言った。
「ああ、これですか。」
グラゥが包みを開けると・・・
ドサッ、ドササッ
大量の包みが転がり出た。
「これって・・・」
「チョコレートですよ。
職場の人たちに貰ったんです。」
セリアはショックを受けた。
「・・・（どうしよう・・・グラゥがこんなにチョコを貰って帰って来るなんて・・・
良く見たら綺麗に作ってるのもあるし、私なんかのチョコを今更貰っても喜んでくれるのかな・・・）」
「セリアさん？」
「は・・・へ・・・？」
自己嫌悪に陥るセリアは心配そうなグラゥの声で現実に引き戻された。
「な、何・・・？」
「セリアさんはチョコをくれないんですか？」
「あ、あるにはあるけど・・・」
それを聞いたグラゥの顔がパッと明るくなった。
「よかった〜、セリアさんがチョコを貰えなかったなかったら僕どうしようかと思いました。」
「うっ・・・じゃあ、はいこれ。」
「わ〜い、ありがとうございます！！」
セリアが差し出した箱を受け取り、上機嫌で蓋を開けるグラゥ。
中からチョコを取り出し、手を合わせた。
「よ〜し、バレンタイン初チョコいただきま〜す！」
「え、初チョコ！？」
「モグモグ・・・ええ、今日初めて食べたチョコです。」
「初めてって・・・こんなにたくさんチョコ貰って、今食べたのが始めて！？」
「だって最初は大切な人のものから食べたいじゃないですか？」
「あ・・・！」
自分の心配が取り越し苦労に過ぎず、セリアは恥ずかしさを感じた。
「グラゥ。」
「はい？」
「ありがとう・・・」
「はははっ、何でセリアさんがお礼を・・・ ウッ！！！」
それまで笑顔でチョコをかじっていたグラゥが急に前のめりに倒れた！
「グラゥ・・・！？」
「あ・・・あ・・・」
問いかけてもまともな返事が返ってこない！
「ちょっと、どうしちゃったのよ！
しっかりして！！」
慌てて駆け寄るセリアの前でグラゥの顔が真っ赤に染まっていく！
「どうして・・・どうして・・・！
はっ、もしかして私のチョコが原因！？」
グラゥの手から食べかけのチョコをもぎ取る。
「・・・クンクン・・・
匂いはただのチョコレートね、正しく作ったはずなんだけど・・・」
呟きながらチョコを少し割って口に入れる。
「・・・味も普通なんだけど。」
ドクン！
そのときセリアの心臓が大きく波打った。
「・・・！」
続いて・・・
「な、何これ・・・体が・・・体が熱い！！」
見る見る内に体が上気し、呼吸が荒くなる！
「セ、セリアさん・・・」
横でゆっくり起き上がるグラゥを見たセリア。
その頭はある感情で満たされていた。
「グラゥ・・・私・・・グラゥが欲しいよぉ・・・！」
「ぼ、僕も・・・！」
「じゃあ・・・ここで・・！」
そう言っていきなり服を脱ごうとする。
「ちょ・・・せめて寝室で・・・！」
グラゥはそう言ってフラフラと立ち上がりセリアを支えるようにして寝室へと向かう。
「早くぅ・・・早くぅ・・・」
「もう少しですっ・・・僕も・・・我慢・・・してるんですから・・・！」
二人とも寝室まで服を脱ぎながら歩く。
やっとの思い出寝室にたどり着いた二人は同時にベッドに倒れ込み、そして・・・
・・・・・
チュン・・・チュン・・・
鳥のさえずりと共に窓から朝日が差し込む。
「あの・・・」
「何・・・？」
夜通し交わり、付かれきり裸のまま寄り添って二人は会話する。
「どうしてこんなことになったんでしょう？」
「私のほうが聞きたいくらいよ。
たぶん、チョコを作った際、別の誰かのと間違えたのよ。
あ〜あ、グラゥに手作りチョコ食べて欲しかったな〜！」
セリアはプクッと頬を膨らませる。
「ははは・・・でも良かったですよ。」
「む〜、何が？」
「手作りチョコは食べれませんでしたけど、代わりにその・・・セリアさんを一杯堪能できたので・・・」
「・・・プッ！」
それを聞いてセリアは可笑しくなった。
「あははっ！
なるほど、チョコの代わりに私を食べたってことね！」
「はぁ、あとその・・・」
「？」
「もう一回・・・いいですか？」
グラゥの問いにセリアはニッコリ笑った。
「いいわよ、あなたの気が済むまで何回でも付き合ってあげる。」
その後二人は幸せそうにキスして再び肌を重ねた。
こうして２月１４日は終わった。
少し波乱もあったがそれぞれ幸せなバレンタインを過ごした。
めでたし、めでたし。
12/02/14 23:11更新 / ビッグ・リッグス