Matador
コロッセオに一人の男が現れた瞬間、会場から歓声が沸き起こった。
この男、フランシスはこれから戦うにしては、かなりの軽装……曲芸師のようなきらびやかで派手な衣装、大きな帽子、派手な赤いマント、武装らしいものといえば、腰にぶら下がったサーベル以外は見当たらなかった。
「今日は皆がこの戦い証人だ、退屈させないように頑張るよ。」
フランシスは帽子を脱ぎ、会場の中央に向かいながら客席に向かって手を振る、応援の声もあったが、とっとと負けろという罵声も多くあった、だがフランシスは全ての声に笑顔で答え手を振り続けていた。
普通こういう場面では彼を応援する声は女で、罵倒するのは男のはずだがこの会場の声は違っていた、彼を応援する声は男が多く、罵倒する声は女の声が多かった。
しばらくすれば、彼が入ってきた方向とちょうど逆の入り口の柵があがっていく、続いて闘技場に入ってきたのは体格の良い女性だった。
彼女はアニー、ミノタウロスと呼ばれる魔物だ、引き締まった細いながらもたくましい腕は巨大な斧を軽々と持ち上げ、彼女の頭からは巨大な牛の角が生えている。
「フランシス！ 本当にガチでやるんだな？」
斧を肩に担ぎながら彼女は、フランシスのいる中央へと向かう……、瞳は寂しさと怒りの混じった複雑な色を見せていた。
「ああもちろんそうだよ、あの日俺を強引に手に入れた日のように襲いかかってくれていい。」
「強引にって……今じゃアンタだってアタイの事愛しているんだろ！」
「ああ、愛しているよアニーだからこそ……俺は君に強さを証明したいんだ！」
今この闘技場で向かい合う二人は夫婦である、妻のアニーは大工だったフランシスに一目惚れし、強引に自分の住処へと連れ去った、それからの日々は魔物娘に造詣の深い皆様には説明は蛇足かもしれない。
喰う犯る寝る、非常に単純な生活サイクルをフランシスは強要された、人間の力を遥かに凌駕する彼女の抱擁からは逃れる術はない、最初は抵抗をしていたフランシスだったが、次第にアニーに対して愛しさを感じるようになっていった。
そんな生活が永遠に続くとも思えたある日、フランシスの身にある変化が起こった。
いつも先に気絶をし先に眠っていたフランシスだったが、彼より先にアニーが気絶してしまったのだ。
インキュバス化、彼自身の身体に魔力が定着し常人離れした力と精を手に入れたのだ。
アニーが先に眠るようになってから、彼はささやかな自由時間を手に入れた、彼はまず最初に思考をした、今の生活は幸せだがはたしてこのままでいいのかと。
次にフランシスは様々な知識を得ることにした、この魔界の事、そしてアニーの、ミノタウロスの事を……。
そしてフランシスは技を磨いた、魔界軍の訓練所に何度か出入りをし、剣の訓練をつけた、インキュバスの身体能力、集中力で短期間にめきめきと実力をつけていき彼のスタイルを完成させる。
自分より少し長いアニーの睡眠時間を活用し、フランシスは腕のたつ戦士になっていた。
腕を磨いた次に彼は武器を求めた、訓練所の紹介でこの街の名工ドワーフのガーベラを訪ね、己に魔界銀の剣が必要だと彼女に説いた。
「へぇ、愛するが故にかぁ、ええねぇ！ ついでにウチがその決闘の場をお膳立てしたるわ！」
彼の説得を聞き感心した……いや、おもしろがったガーベラは彼の注文通りのサーベルを鍛え上げ、さらに新しく建造されたコロッセオのこけら落としとしてフランシス夫婦の決闘を大勢の前で披露する事を提案した。
「え、あ、いやちょっとそれは……」
さすがに大勢の前でというのは気が引けたのか、公開決闘の件に関しては辞退を頼んだのだが、するとガーベラはフランシスにサーベルの代金として破格の代金のかかれた請求書を見せ……。
そして決闘の日取りも決まった、当のアニーはフランシスとのセックスと惰眠を繰り返すだけで街ではすでに夫婦の決闘が告知され、チケットが販売されすでに完売していた。
そんな事は知らないアニーは深い眠りから冷め、夫に抱擁をしようと抱きつこうとした瞬間……手袋を投げられた。
「アニー君に決闘を申し込む！」
いきなり夫から手袋を投げられ、アニーは一瞬何が起こったのか理解できなかった、だが徐々に思考が活性し、投げられたものを理解すればフランシスを睨みつけながら近寄っていく。
「フランシス何のつもりだ！」
「言葉のとおりだよアニー、僕は今のままじゃ嫌なんだ！」
「何が不満なんだ、アタイのこと、アタイのこと愛してるって言ったのは嘘だったのか？」
「嘘じゃないよアニー、僕は君を愛している……だからこそ、だからこそ決闘を申し込むんだ、今の僕は君がさらったあの頃の僕じゃないんだ！」
「フランシス……。」
「お願いだ、僕の愛に答えてくれアニー、立会人も用意した……一緒に来てくれ。」
そのままフランシスと共に決闘の場所へと向かうアニー近くの草原で決闘でもするのかと思っていたのだが、そのまま町の中央部へと進んでいくうちに、街の様子がちょっとしたお祭り騒ぎになっているのに気づく。
様々な屋台が並び、人が妙に活気付いている、何より不思議なのが街のほとんどの者が夫婦に声をかけ手を振る、中には「ガンバレ」と声援を送るものもいる……あるポスターが目に止まり、アニーはこの祭りの意味と皆が声をかけてくる理由を一瞬で理解した。
「フランシス、コレはなんだ……。」
「ああ、ちょっとワケありで僕達の決闘の立会人が、すごい数になったんだ。」
「す……すごい数？」
「ああ、あのコロッセオの観客席の全てが埋まる数……いやそれ以上か、立見席も完売らしい。」
そう言ってコロッセオを指さすフランシス、アニーはその大きさに呆然としていた。
「何の冗談だ？」
「僕だって冗談だと思いたいよ、でも……こうなった以上やり遂げたいんだ、だからアニー、君が勝ったら僕の事をこれからも好きにしていい、僕はもう口答えとかも一切しない。」
真剣な眼差しでアニーを見つめるフランシス、そのフランシスの瞳にアニーは今まで彼に感じていなかった感情が胸の奥で芽生え、きゅんと心臓がしまるような感覚がした、それに自分が勝った時のご褒美、それは彼女にとって戦うモチベーションをあげるには充分なものだった。
さて、物語は冒頭に戻る。
コロシアムの中央で対峙する二人……。
今回の決闘の代表見届け人であるガーベラが高台に立ち、その小さな身体の奥から声をはりあげた、彼女の声はコロシアム中に響いていく。
「このコロシアムのこけら落としに、このような素晴らしい戦いできるんを光栄に思いますぅ……決闘いうても夫婦の愛を確かめ合う為のもん、憎しみあって刃を交えるんとはわけがちがいます。せやけど、魔物の嫁を旦那さんとの決闘、もしかすると無事で済まんかもしれません……ですが皆さん、この夫婦の決闘を見届けようやありませんか。」
ガーベラの声に、会場はさらに熱狂の雄叫びが上がる。
「ほなお二人、準備はよろしゅうおすな、では、試合はじめ！！」
ガーベラのかけ声と共にフランシスは背のマントを外し、体の前で挑発するように激しく振っていく、マントの裏地は赤く、その色を見たアニーはフランシスの元へ勢い良く走りだした。
アニーの頭がマントに触れた瞬間、アニーは勝利を確信する。
勝った、このまま押し倒そう、皆で見てるまえでフランシスを可愛がろう、私に反抗的な態度を見せても可愛いフランシスをいたぶるように可愛がろう……そう思考をよぎらせていたが、その機体は見事に裏切られた、そこにフランシスの身体は無かったのだ。
「痛っ！」
その次の瞬間、アニーは背中に軽い痛みを感じた、振り返ればフランシスがたっており、薄く怪しい緋色に輝く魔界銀のサーベルが振り下ろされていた、アニーの着衣の上着が軽く裂け、皮膚に薄く傷がついた。
一連の動きで会場は喝采の歓声があがる、ミノタウロスであるアニーのタックルがしかけられた瞬間、この試合は終わったとほとんどの者は思った、無謀な旦那がそのまま嫁になぶられる姿をほとんどの観客は期待していたのだ、だが状況は違った、フランシスはマントの動きでアニーのタックルの機動を修正し、背中に人たち浴びせたのだ。
「な、何！？」
この会場で状況をしっかりと把握できていなかったのは、アニー本人だろう、旦那が消えいつの間にか背後から切られていた……何故と疑問を頭で整理しようとした瞬間、再びフランシスがマントを動かし、赤い布がアニーの目の前でなびいている……アニーは思考より本能で赤い布に飛びかかった。
フランシスは自分の妻であるミノタウロスの生態をしっかりと学んだ、アニーを含めミノタウロスの生態や本能を、赤い色に特に興奮するということを。
「ひう！」
さらにもう一太刀を彼女に振り落とす、彼女の皮膚を軽くかするように、細心の注意を払い剣を振るう……アニーのブラは落ち、トップレスの状態になる、ここからが正念場だ、愛する相手の悩ましい姿に動揺してはいけない、彼女に致命的な傷を負わせてはいけない、集中しただ何度もかすり傷を与えなければいけない……フランシスは己の唇を血が出そうになるほど強く噛み締め、戦いへの集中力を高める。
アニーの突進をフランシスが踊るように避け、サーベルを振り下ろす。会場はいつの間にかフランシスが避ける瞬間に「オーレ！」と掛け声をかけていく。
掛け声を上げる度、アニーの姿は徐々に露出が上がっていった、もうすでに時間は１時間も経過しようとする時、アニーの姿はほとんど裸になっていた。
魔物娘とインキュバス、無尽蔵なスタミナを持つ両者の戦いは、このままずっと続くようにも見えた、だがアニーの身体にはある変化が起こっていた。
「あ、は、はぁ！」
強靭な体力を誇るミノタウロスの彼女が、もうすでに息が上がり始めていた、顔は高揚し赤く染まり、口からはだらしなく唾液がたれ落ちていた。
アニーの思考は徐々にぼやけてきた、フランシスにサーベルで軽く切られる度、痛みだけではなく愛撫されるような快楽を得るようにも感じられてきた、体の奥から熱くなって来る感覚、今までの征服欲、支配欲とも違う快楽が頭によぎってくる。
フランシスの剣、ガーベラが鍛えた魔界銀のサーベルには強力な「発情」と「体力低下」を与える魔力が封じ込められていた、一度のダメージでは効果が薄いが、何度も傷を負うごとにその魔力は蓄積し、アニーの身体を蝕んでいく、強力な愛撫を１時間受け続けたアニーはとうとうその場で座り込んでしまった。
「ふ、フランシス、お願い、もう、もう耐えられない。」
涙目を浮かべながらフランシスに声をかけるアニー、ミノタウロスの牛の体毛で覆われていた獣の下半身はすでに人間の女性のもののように変化し柔らかなお尻が丸出しになる、獣の部分はいまやふくらはぎから下の部分しかない。
「何が耐えられないんだい、アニー」
フランシスはマントを背中に背負い、サーベルを手にアニーに近づく、地に這い蹲るアニーに冷たいような視線を投げかける。
その視線にアニーは身震いをする、あの可愛らしかったフランシスが、今や自分の前に強大な存在になって立っている……。
「ちゃんと言わないとわからないな。」
フランシスのサーベルの腹がアニーの身体を撫で、乳首を軽く叩く、金属の冷たさを感じ、背筋がさらに震え、アニーは快楽に狂いそうになる。
「お、おちんちん、フランシスのおちんちん、いれて、いれてください、おねがいしますううう」
アニーはそういうと、足を広げ指で体毛の無くなった秘所を広げてみせる、その割れ目からは濃厚なドロリとした蜜が溢れ出し、男の物が侵入してくるのを待っている。
「ああ、じゃあアニーの負けでいいんだね？」
フランシスはサーベルを振り下ろす、アニーのクリトリスに軽くサーベルがかすめた。
「あ、ひ、ひぎいいいいいいいい！ ふぁい、まけで、まけでいいでひゅ！」
アニーはクリトリスからくる痛みと快楽で気が狂いそうになる、涙や唾液、汗、あらゆる体液を垂らしながらだらしない口調で答える。
「これからは僕がセックスの主導権を握るけどいいね？ 今度が僕がアニーを可愛がる番だ」
「は、はひ、あたいは、フランシスのものれひゅ、ふらんしすのなぐしゃみものに、してくらしゃいいいい！」
「うん、いいよ、アニー！」
フランシスは服を脱ぎ捨て、そのままアニーを組み伏せた、今までアニーに握られたセックスの主導権を彼は勝ちとったのだ。
アニーは乱暴に犯される中で、フランシスに対する感情に微妙な変化が産まれた、今までただの可愛い人だったフランシスが、今ではすっかり自分を陵辱する素敵な人になったのだ。
惚れ直したアニーは、乱暴に愛される喜びをその身に感じていたのだ。
二人の激しく愛しあう姿にコロシアムの観客席から次々に、媚声が上がり始める。この二人の試合にあてられてムラムラとしはじめ、次々に客席で交わりがはじまったのだ。
フランシスにあてられた、いわゆるカカア天下の夫婦も、今日は夫が主導権を握り嫁と激しく交わっている。
その様子をオペラグラスで観察していたガーベラは今回の興行の性交、いや成功を、夫に駅弁スタイルで犯してもらいながら喜んでいた。
「ん、は、この興行、ん、成功やわ、はん、気持ちええ、ん、最近ダーリン、自信なかったみたいやし、ん、あ、ああ、ぐりぐりして、うちのおまんこ、きゅんきゅんしてきもちいええよ、ん、あ、この夫婦の決闘、ええ名物になるでぇ あ、あかん、お尻の穴に指入れたらぁ！！。」
コロシアムでの激しいセックスは、会場にいる全てのものが疲れて寝るまで何日も続いた……フランシスが気づけば、アニーが己の手を握り、今まで見た中で一番可愛らしい寝顔を浮かべていた。
「ん？ ん……」
フランシスが身体を起こすのを感じ、アニーは目を覚ました、二人の視線が合えばアニーは恥ずかしそうに、しおらしくフランシスに身を寄せた。
「フランシス、すてきだったよ……惚れ直した。」
頬を赤くしながら甘えるアニーの姿に、フランシスは優しく頭を撫でる。
「それでさ、フランシスお願いがあるんだけど……」
「ん、なんだい？」
「また、こうやって、アタイと決闘して、そのめちゃくちゃにしてほしいなって……。」
「…………え？」
どうやらアニーはこの決闘が癖になったらしい。
その後二人の決闘興行は高い人気を維持し、この街の名物となった。
この戦いに感化され、フランシスにあの独特な剣術を学ぶものも増え、コロッセオでの戦いはフランシスとアニー以外の夫婦の戦いも数多く繰り広げている。
貴方も大きなコロッセオのある魔物領に立ち寄ったときは、是非観戦することをお勧めする、とても刺激的な戦いを見ることができるだろう。
そしてできることならば、素敵なパートナーと一緒に観戦する事もお勧めする、同時にとても素敵な快楽を味わうこともできるのだから。
11/08/21 23:58更新 / 鬼謀大佐