氷の湖上にて
「さ〜て。 今日はこの辺にしておきましょか〜♪」
そりを適当なところに停め、積荷を降ろし、白銀の湖面に穴を穿ちはじめる。
天候は快晴。
しかしながら春の訪れはまだ遠く、氷の女王が微笑むこの季節、グラキエス達が舞い踊り、氷雪が湖を封印し、外界との接触を完全に遮断していた。
「今日も今日とてアイス・フィッシング〜♪誰にも〜止められネェ〜♪」
此処は欧州某湖。海からも近い湖である。
「今日はグレーリング♪昨日はパイク♪明日はパーチ♪あぁ素晴らしきかな我が釣り人生♪」
…と作詞作曲・自分の歌を口ずさみ、ドリルで湖面に穴を穿ち、15分もすると釣り糸を垂れ始めた。
青年は湖畔に住む極々普通の青年であり―少々釣りに狂っている部分もあるが―今日も仕事の成果のテストと趣味を兼ねて湖面に出ていた。
夏は湖面をボートで駆け回り、冬は今日のようにスノーモービルで駆け回り。
ちなみに、まったく関係の無いことだが、昨日は歌詞のような釣果は上がっていない。
実際にはレイクトラウトが2匹にパーチが3匹である。
釣った魚の大半は近所で宿屋を営むイエティの夫婦に寄贈した。
釣り糸を垂れ始めて半日が過ぎ、今日はボウズかと諦め、疑似餌を回収し始めた時。
竿が大きく弧を描いた。
愛竿の強度を考えると超が着くほどの大物である。
「俺は釣師エルク・ルペノ。俺の疑似餌は有象無象の区別無く全ての魚を釣り上げるッ!」
と。気合を入れ、獲物を竿の反発力とリールのドラグを最大限に使い
「うぅおぅりゃぁぁぁ!」
と、一気に引き抜いた。
が、本当に大きい獲物の様で、なんと氷に空けた穴に引っかかって、出てこれない様である。
「ぬぉぉぉぉ…」
何と言う大物か。
間違いなく釣り上げれば自身の最高記録達成は確実である。
しかし、湖に深く敷き詰められたような氷をどうにかしない限りは、如何とも出来ない状態である。
針に掛けてからすでに10分以上が経過し、エルクの体力が限界に近づいたその時……
「うひゃぁ!」
足元に鋭い金属が突き出てきた。
さらに、その金属は驚くエルクを尻目に、最初に空けた穴からざっくざっくと扇状に広がり…
ついにエルクは自身の記録達成の大物と邂逅した。
「ちょっと!痛いって言ってるでしょ!!」
「あれ?」
エルクは見とれていた。
金色の緩くウェーブのかかった髪に、オーシャンブルーの眼差し。
さらに出るところは出た体系。
十に八九は間違いなく美女と言われる顔立ち。
しかしそれを打ち消すかのような、ミスマッチな頭上と下半身の海洋獣のきぐるみ。
その辺の村娘が同じ格好をしたら間違いなく「ネタ?」と思われてしまいそうな、そのきぐるみも彼女には不思議とマッチしていて、親しみが沸いた。
「あれ?じゃないわよっ!久しぶりに湖の魚を食べようと思ったら、何かが髪の毛と毛皮に絡まるしおかげで髪は傷むし毛皮には大穴が開くし!この間リペアしたばっかりなのよどーしてくれんのよ!!」
エルクが釣り上げたもの。それはセルキーだった。
「しかも!」
さらにセルキーは続ける。
「湖面に近づいてから、氷を叩いているのに、気づかずに引き続けるなんて。ど〜ゆ〜神経してるのアンタ!? …って聞いてるのッ!?」
と。そこまで聞いてエルクはある事に気づいた。
「あ。」
「あ。じゃないでしょう!あ。じゃ !」
さらにまくし立てるセルキーさん。
「いや。その。ごめん。下…」
とエルクが指す所を見ると……
「え?きゃっ!!」
どうやらエルクのパワーファイトのおかげでファスナーが壊れてしまったらしく、いつの間にか脚の着ぐるみが脱げてしまいそれに気付かず、彼女は下半身丸出しで怒鳴り散らしていた。
「いや。その…ごめんなさい」
と。青年はセルキーに謝罪した。土下座で。
「落ち着いた?」
「うん。」
と。エルクに下半分の毛皮の事を指摘されてから、セルキー―ミェーフ―は互いに簡単な自己紹介をし、今はエルクの防寒具を借りて、さらに彼のポケットボトル―中身はジパング酒―で暖を取っている。
「ごめんね?毛皮。」
エルクは何度目か分からない謝罪を口にした。
湖面をなでる風は海が近い事もあり、潮の香りと、湿気を含んだ寒風がエルクの体温を奪う。
しかし、彼女の大切な毛皮を壊し、さらに紛失させてしまったのは自分の落ち度であるとの思いもある為、甘んじて今の状況を受け入れていた。
「ホントよ…どうしてくれようかしら?」
…と言っているミェーフの眼はエルクを睨み付けて…いなかった。じぃ…っと視線を向けてくる。
ジパング酒の所為で、顔も少し朱が指している。
「さ、寒くない?」
とエルクは話題を逸らそうとしていた。
エルクは彼女に一目惚れしてしまっていたのだ。この湖の湖畔に越してきてからと言うもの、仕事を含め、日がな一日中湖面に疑似餌を投げ続ける様な生活を送り、「女?ナニソレオイシイノ?」という生活を送ってきたのである。そこに思わぬ大物、もとい見目麗しい魔物娘である。
その破壊力は推して知るべし。
「そうね。寒いわ。すごく。この防寒着もあんまり効果ないみたいだし。」
「ホントごめんなさい。俺に出来ることがあったら何でも言ってくれ!」
するとミューフは笑顔で顔を近づけ
「じゃぁ…」
「あ…あぁ」
と。エルクはアザラシを狩る算段を練り始めたのだが…
「責任とってね♪」
ミューフはエルクにとって予想だにしない行動に出た。
「ぁん…温ったかぁい♪」
「いや、裂ける!裂けちゃうから!」
釣り人の着る防寒具というものはほとんどが自分の体のサイズより二周りほど大きなものを用意するのが通例である。
と、。言うのも街では何かと風除けになるものがあるが、湖面、海上においては、風を遮るものが何も無く、風が吹けばダイレクトにその影響を受けるからである。
また、魔法が使えれば問題ないのだろうが、火というものの取り扱いは難しい。精霊使いであれば話は違ってくるのだろうが、
エルクもその例に漏れず、さらに少し前までは腹回りの脂肪がたっぷりあったので、防寒着のサイズも市販のものではなく特注ものだったのだが…
「いつもの毛皮には少し劣るけど、コレはコレでイイモノね♪」
「くぅ…せ、狭ッ…!」
流石に二人でエルクの防寒着に収まるのは無理があると言うものだ。
事実、既に防寒着のあちこちからぷつぷつと何かが弾ける悲鳴が上がり、ファスナーも悲鳴を上げ始めている。
(ど、どーしてこーなった…)
何を思ったのかミューフは抱きついてきて、しかもあろう事かエルクを無理やり防寒着の中に入れてしまったのだ。
始めは、ズボンを脱がずに入ろうとしていたのだが、ミューフに、「そんなの穿いてたら温まらないでしょ!」と強く言われ、下半身は下着を残して無理やり一つの防寒具に収まったのだ。
「ちょっと…何か当たってるわよ?」
と。ミェーフがエルクの怒張を器用にパンツから引き出し、太腿でシッカリと挟み込んできた。
「ちょ!!待…ッ!」
「ナニ?責任とってくれるんでしょう♪」
あまりの状況にまったく着いて行けないエルクを尻目に、ミューフはさらに追い討ちを掛けた結果、彼の怒張は呆気なく限界を向かえ
「止めッ!出るッッ!!」
爆ぜてしまった。
「やん!アッツぅい!!…でもまだイケるわよね?まだコンナに硬いんだもの♪」
「いや。その…」
エルクは所謂、賢者モードになり、大それたことを!と後悔していたのだが。
「イ・ケ・る・わ・よ・ね?」
「……………ハイ」
と。ミューフに押し切られ
「じゃ〜次は…コッチね!」
と器用に挿入られてしまった。
「ぅわッ!」
「あぁ!なにコレ!すごひぃぃ!!」
エルクは女を知らないわけではなかった。しかし、魔物娘とは初めてだった。
宿屋のダンナから噂には聞いていた。
魔物娘はスゲェ。と。
正直、エルクはタカをくくっていた部分もあったし、最後に街で商売女と寝たのは大分前だ。
そんなエルクが魔物娘と交わればどうなるか。
「出てる!すっごいでてるぅぅ!!」
「あ、く…ぁ」
瞬殺されてもなんの不思議もない。
しかも狭い防寒着の中でまともに動けるはずもなく、出しても萎える事もなく、くわえ込まれたままの怒張。
さすがに只のヒトであるエルクには段々と、徐々にキツくなってくる。
「ちょ、ちょっと…一度きゅ……ッ!」
「んっふ…ちゅ…ぷ……ぁ…やだぁ!もっ…と…温めて……ぇ!」
休憩を提案することは許されずミューフの唇にふさがれてしまった。
さらにミューフはそのまま腰を振りはじめ、エルクの精は延々と貪られ、口は蹂躙され続けた。
しかし、そんな過激で甘いミューフの求愛も突然終わりを告げた。
もう、どれだけ時間が経ったのかも分からないくらい蹂躙された頃、二人の腰の動きが激しくなった所でそれは起きた。
「ちょ…止め!…ま、また!!」
「…っと出して!孕ん…じゃう…くらい!…ッ!ううん!!孕むまで離さないッ!!」
防寒着の吸水量などとうの昔に限界を超え、収まりきらなくなったエルクの精が防寒着から染み出し、凍りつき始めたその時。
「も、もうッ!!」
「ま、またイ、イク、イクぅぅぅぅ!!」
盛大に精が解き放たれ、二人の身体がY字に仰け反った瞬間。
「うわっ!!」
「きゃ!!」
防寒着も絶頂した。
「ありゃ〜…やりすぎちゃった」
「ぎぃやぁ〜!俺のっ!俺のッッ!!防寒着がッ!一張羅だってのにぃぃぃ!明日からど〜してくれんだよぉぉぉ!!」
「いやぁ〜…その。ゴメンネ♪」
ついさっきもやったような掛け合い。
と。その時、先ほどミューフを釣上げた穴から二人は視線を感じ、振り返ると。
ミューフのものであろうか、ファスナーが壊れたアザラシの毛皮と赤い羽根帽子がちょこん、と見えた。
エルクは丁度手の届くところにあった竿を使って羽根帽子にむかって疑似餌を投げた。
すると、羽帽子にしっかりと針掛かりし、ダウンっぽいものを着て、ミトンの手袋に、ネックウォーマーを身に着けた、いかにも「寒冷地仕様です。」といった格好のメロウが一人釣れた。
「たはははは…」
「見たわね?」
いつの間にかミューフはメロウが拾ってくれたであろう自身の毛皮を着ている。
「見たでしょ!?」
「ご馳走様デシタッ!!」
と言うが早いか、メロウはすばやく疑似餌ごと帽子を奪い去り、水中に消えていった。
「ドウシテクレヨウカ…」
出刃亀された事が余程気に入らないのか、ミューフが一人唸っていると
「少し…話しがあるんだけど……」
今にも追いかけんとするミューフの肩に手を置いてエルクは心に決めたことを話し出した。
…数日後
あれからエルクはミューフを「固定に沈んだ毛皮を取ってきてもらったたお礼」と宥め、そしてミューフに対して一目惚れしてしまった事を告げた。
そして、自宅付近の漁港で性懲りもなく、今度はスキュラ達のデバ亀をしようとしていた先ほどの寒冷地使用のメロウがスキュラの脚に捕獲されているのを偶然見かけ、エルクは飛び掛りそうな勢いのミューフを宥めすかし、ミューフはエルクの説得にしぶしぶ応じ、メロウに一つの条件を提示した。
それは…
「汝、エルク。貴方は穏やかなる時も時化の時も、妻ミューフに貪られ貪り、互いの温もりを以って互いに温めあい、愛し合いますか?」
「はい」
「汝、ミューフ。貴女は穏やかなる時も時化の時も夫エルクを貪り貪られ、互いの温もりを以って互いに温めあい、愛し合いますか?」
「はい」
ミューフが提示した条件、それはシー・ビショップを呼んで来る事だった。
「では偉大なるポセイドンの御名の下、誓いのまぐわいを。」
厚手の僧衣と中綿の入ったグローブをした、寒冷地仕様のシー・ビショップが宣言を終えると
「愛してるよ。ミューフ」
「私もよ。エルク」
ミューフは毛皮のファスナーを開け放ち、エルクを向かい入れた。
「今度こそ子供が出来るまで放さないんだから!」
そりを適当なところに停め、積荷を降ろし、白銀の湖面に穴を穿ちはじめる。
天候は快晴。
しかしながら春の訪れはまだ遠く、氷の女王が微笑むこの季節、グラキエス達が舞い踊り、氷雪が湖を封印し、外界との接触を完全に遮断していた。
「今日も今日とてアイス・フィッシング〜♪誰にも〜止められネェ〜♪」
此処は欧州某湖。海からも近い湖である。
「今日はグレーリング♪昨日はパイク♪明日はパーチ♪あぁ素晴らしきかな我が釣り人生♪」
…と作詞作曲・自分の歌を口ずさみ、ドリルで湖面に穴を穿ち、15分もすると釣り糸を垂れ始めた。
青年は湖畔に住む極々普通の青年であり―少々釣りに狂っている部分もあるが―今日も仕事の成果のテストと趣味を兼ねて湖面に出ていた。
夏は湖面をボートで駆け回り、冬は今日のようにスノーモービルで駆け回り。
ちなみに、まったく関係の無いことだが、昨日は歌詞のような釣果は上がっていない。
実際にはレイクトラウトが2匹にパーチが3匹である。
釣った魚の大半は近所で宿屋を営むイエティの夫婦に寄贈した。
釣り糸を垂れ始めて半日が過ぎ、今日はボウズかと諦め、疑似餌を回収し始めた時。
竿が大きく弧を描いた。
愛竿の強度を考えると超が着くほどの大物である。
「俺は釣師エルク・ルペノ。俺の疑似餌は有象無象の区別無く全ての魚を釣り上げるッ!」
と。気合を入れ、獲物を竿の反発力とリールのドラグを最大限に使い
「うぅおぅりゃぁぁぁ!」
と、一気に引き抜いた。
が、本当に大きい獲物の様で、なんと氷に空けた穴に引っかかって、出てこれない様である。
「ぬぉぉぉぉ…」
何と言う大物か。
間違いなく釣り上げれば自身の最高記録達成は確実である。
しかし、湖に深く敷き詰められたような氷をどうにかしない限りは、如何とも出来ない状態である。
針に掛けてからすでに10分以上が経過し、エルクの体力が限界に近づいたその時……
「うひゃぁ!」
足元に鋭い金属が突き出てきた。
さらに、その金属は驚くエルクを尻目に、最初に空けた穴からざっくざっくと扇状に広がり…
ついにエルクは自身の記録達成の大物と邂逅した。
「ちょっと!痛いって言ってるでしょ!!」
「あれ?」
エルクは見とれていた。
金色の緩くウェーブのかかった髪に、オーシャンブルーの眼差し。
さらに出るところは出た体系。
十に八九は間違いなく美女と言われる顔立ち。
しかしそれを打ち消すかのような、ミスマッチな頭上と下半身の海洋獣のきぐるみ。
その辺の村娘が同じ格好をしたら間違いなく「ネタ?」と思われてしまいそうな、そのきぐるみも彼女には不思議とマッチしていて、親しみが沸いた。
「あれ?じゃないわよっ!久しぶりに湖の魚を食べようと思ったら、何かが髪の毛と毛皮に絡まるしおかげで髪は傷むし毛皮には大穴が開くし!この間リペアしたばっかりなのよどーしてくれんのよ!!」
エルクが釣り上げたもの。それはセルキーだった。
「しかも!」
さらにセルキーは続ける。
「湖面に近づいてから、氷を叩いているのに、気づかずに引き続けるなんて。ど〜ゆ〜神経してるのアンタ!? …って聞いてるのッ!?」
と。そこまで聞いてエルクはある事に気づいた。
「あ。」
「あ。じゃないでしょう!あ。じゃ !」
さらにまくし立てるセルキーさん。
「いや。その。ごめん。下…」
とエルクが指す所を見ると……
「え?きゃっ!!」
どうやらエルクのパワーファイトのおかげでファスナーが壊れてしまったらしく、いつの間にか脚の着ぐるみが脱げてしまいそれに気付かず、彼女は下半身丸出しで怒鳴り散らしていた。
「いや。その…ごめんなさい」
と。青年はセルキーに謝罪した。土下座で。
「落ち着いた?」
「うん。」
と。エルクに下半分の毛皮の事を指摘されてから、セルキー―ミェーフ―は互いに簡単な自己紹介をし、今はエルクの防寒具を借りて、さらに彼のポケットボトル―中身はジパング酒―で暖を取っている。
「ごめんね?毛皮。」
エルクは何度目か分からない謝罪を口にした。
湖面をなでる風は海が近い事もあり、潮の香りと、湿気を含んだ寒風がエルクの体温を奪う。
しかし、彼女の大切な毛皮を壊し、さらに紛失させてしまったのは自分の落ち度であるとの思いもある為、甘んじて今の状況を受け入れていた。
「ホントよ…どうしてくれようかしら?」
…と言っているミェーフの眼はエルクを睨み付けて…いなかった。じぃ…っと視線を向けてくる。
ジパング酒の所為で、顔も少し朱が指している。
「さ、寒くない?」
とエルクは話題を逸らそうとしていた。
エルクは彼女に一目惚れしてしまっていたのだ。この湖の湖畔に越してきてからと言うもの、仕事を含め、日がな一日中湖面に疑似餌を投げ続ける様な生活を送り、「女?ナニソレオイシイノ?」という生活を送ってきたのである。そこに思わぬ大物、もとい見目麗しい魔物娘である。
その破壊力は推して知るべし。
「そうね。寒いわ。すごく。この防寒着もあんまり効果ないみたいだし。」
「ホントごめんなさい。俺に出来ることがあったら何でも言ってくれ!」
するとミューフは笑顔で顔を近づけ
「じゃぁ…」
「あ…あぁ」
と。エルクはアザラシを狩る算段を練り始めたのだが…
「責任とってね♪」
ミューフはエルクにとって予想だにしない行動に出た。
「ぁん…温ったかぁい♪」
「いや、裂ける!裂けちゃうから!」
釣り人の着る防寒具というものはほとんどが自分の体のサイズより二周りほど大きなものを用意するのが通例である。
と、。言うのも街では何かと風除けになるものがあるが、湖面、海上においては、風を遮るものが何も無く、風が吹けばダイレクトにその影響を受けるからである。
また、魔法が使えれば問題ないのだろうが、火というものの取り扱いは難しい。精霊使いであれば話は違ってくるのだろうが、
エルクもその例に漏れず、さらに少し前までは腹回りの脂肪がたっぷりあったので、防寒着のサイズも市販のものではなく特注ものだったのだが…
「いつもの毛皮には少し劣るけど、コレはコレでイイモノね♪」
「くぅ…せ、狭ッ…!」
流石に二人でエルクの防寒着に収まるのは無理があると言うものだ。
事実、既に防寒着のあちこちからぷつぷつと何かが弾ける悲鳴が上がり、ファスナーも悲鳴を上げ始めている。
(ど、どーしてこーなった…)
何を思ったのかミューフは抱きついてきて、しかもあろう事かエルクを無理やり防寒着の中に入れてしまったのだ。
始めは、ズボンを脱がずに入ろうとしていたのだが、ミューフに、「そんなの穿いてたら温まらないでしょ!」と強く言われ、下半身は下着を残して無理やり一つの防寒具に収まったのだ。
「ちょっと…何か当たってるわよ?」
と。ミェーフがエルクの怒張を器用にパンツから引き出し、太腿でシッカリと挟み込んできた。
「ちょ!!待…ッ!」
「ナニ?責任とってくれるんでしょう♪」
あまりの状況にまったく着いて行けないエルクを尻目に、ミューフはさらに追い討ちを掛けた結果、彼の怒張は呆気なく限界を向かえ
「止めッ!出るッッ!!」
爆ぜてしまった。
「やん!アッツぅい!!…でもまだイケるわよね?まだコンナに硬いんだもの♪」
「いや。その…」
エルクは所謂、賢者モードになり、大それたことを!と後悔していたのだが。
「イ・ケ・る・わ・よ・ね?」
「……………ハイ」
と。ミューフに押し切られ
「じゃ〜次は…コッチね!」
と器用に挿入られてしまった。
「ぅわッ!」
「あぁ!なにコレ!すごひぃぃ!!」
エルクは女を知らないわけではなかった。しかし、魔物娘とは初めてだった。
宿屋のダンナから噂には聞いていた。
魔物娘はスゲェ。と。
正直、エルクはタカをくくっていた部分もあったし、最後に街で商売女と寝たのは大分前だ。
そんなエルクが魔物娘と交わればどうなるか。
「出てる!すっごいでてるぅぅ!!」
「あ、く…ぁ」
瞬殺されてもなんの不思議もない。
しかも狭い防寒着の中でまともに動けるはずもなく、出しても萎える事もなく、くわえ込まれたままの怒張。
さすがに只のヒトであるエルクには段々と、徐々にキツくなってくる。
「ちょ、ちょっと…一度きゅ……ッ!」
「んっふ…ちゅ…ぷ……ぁ…やだぁ!もっ…と…温めて……ぇ!」
休憩を提案することは許されずミューフの唇にふさがれてしまった。
さらにミューフはそのまま腰を振りはじめ、エルクの精は延々と貪られ、口は蹂躙され続けた。
しかし、そんな過激で甘いミューフの求愛も突然終わりを告げた。
もう、どれだけ時間が経ったのかも分からないくらい蹂躙された頃、二人の腰の動きが激しくなった所でそれは起きた。
「ちょ…止め!…ま、また!!」
「…っと出して!孕ん…じゃう…くらい!…ッ!ううん!!孕むまで離さないッ!!」
防寒着の吸水量などとうの昔に限界を超え、収まりきらなくなったエルクの精が防寒着から染み出し、凍りつき始めたその時。
「も、もうッ!!」
「ま、またイ、イク、イクぅぅぅぅ!!」
盛大に精が解き放たれ、二人の身体がY字に仰け反った瞬間。
「うわっ!!」
「きゃ!!」
防寒着も絶頂した。
「ありゃ〜…やりすぎちゃった」
「ぎぃやぁ〜!俺のっ!俺のッッ!!防寒着がッ!一張羅だってのにぃぃぃ!明日からど〜してくれんだよぉぉぉ!!」
「いやぁ〜…その。ゴメンネ♪」
ついさっきもやったような掛け合い。
と。その時、先ほどミューフを釣上げた穴から二人は視線を感じ、振り返ると。
ミューフのものであろうか、ファスナーが壊れたアザラシの毛皮と赤い羽根帽子がちょこん、と見えた。
エルクは丁度手の届くところにあった竿を使って羽根帽子にむかって疑似餌を投げた。
すると、羽帽子にしっかりと針掛かりし、ダウンっぽいものを着て、ミトンの手袋に、ネックウォーマーを身に着けた、いかにも「寒冷地仕様です。」といった格好のメロウが一人釣れた。
「たはははは…」
「見たわね?」
いつの間にかミューフはメロウが拾ってくれたであろう自身の毛皮を着ている。
「見たでしょ!?」
「ご馳走様デシタッ!!」
と言うが早いか、メロウはすばやく疑似餌ごと帽子を奪い去り、水中に消えていった。
「ドウシテクレヨウカ…」
出刃亀された事が余程気に入らないのか、ミューフが一人唸っていると
「少し…話しがあるんだけど……」
今にも追いかけんとするミューフの肩に手を置いてエルクは心に決めたことを話し出した。
…数日後
あれからエルクはミューフを「固定に沈んだ毛皮を取ってきてもらったたお礼」と宥め、そしてミューフに対して一目惚れしてしまった事を告げた。
そして、自宅付近の漁港で性懲りもなく、今度はスキュラ達のデバ亀をしようとしていた先ほどの寒冷地使用のメロウがスキュラの脚に捕獲されているのを偶然見かけ、エルクは飛び掛りそうな勢いのミューフを宥めすかし、ミューフはエルクの説得にしぶしぶ応じ、メロウに一つの条件を提示した。
それは…
「汝、エルク。貴方は穏やかなる時も時化の時も、妻ミューフに貪られ貪り、互いの温もりを以って互いに温めあい、愛し合いますか?」
「はい」
「汝、ミューフ。貴女は穏やかなる時も時化の時も夫エルクを貪り貪られ、互いの温もりを以って互いに温めあい、愛し合いますか?」
「はい」
ミューフが提示した条件、それはシー・ビショップを呼んで来る事だった。
「では偉大なるポセイドンの御名の下、誓いのまぐわいを。」
厚手の僧衣と中綿の入ったグローブをした、寒冷地仕様のシー・ビショップが宣言を終えると
「愛してるよ。ミューフ」
「私もよ。エルク」
ミューフは毛皮のファスナーを開け放ち、エルクを向かい入れた。
「今度こそ子供が出来るまで放さないんだから!」
13/03/08 19:58更新 / ぼーはん