サバトとの密会
狩猟は、密会の絶好な口実である。
少数の供を人目のつかない山野に連れて行く・・・・つまり、人知れず誰かと会うには絶好の機会だ。
私の場合、ここ最近は狩猟に出かけて獲物を2体以上仕留めた記憶がない。
1体は狩るのかって?何度も手ぶらでは色々怪しまれるだろう。
「シアン卿ぉ、そろそろじゃないですかい?」
未開の山野でひっつき虫だらけになっているオドアケルが、時計を見ながら周囲を警戒している。
彼の督戦隊の精鋭、私のシス・フレイム聖騎士団の精鋭も油断無く周囲を見渡している。
狩猟中に『事故』に遭うリスクもあるから、狩猟に出かけるときは6名の精鋭を連れて行くことにしているのだ。
「あの連中は時間にルーズだったりするからな。」
「そうは言っても、ホントに大丈夫ですかい、シアン卿ぉ。」
「ふむ・・・来たようだな。」
何も無い空間に、魔力の乱れが生じる。
魔導騎士達がその乱れに狙撃魔弾を放つ準備をする。生憎、今回会う約束の相手はそう無警戒で会える相手ではない。
魔力の乱れはだんだん大きくなり、少し弾けたかと思うと、中から少女が2人現れた。
「ほう、随分と警戒されとるの。」
「遅くなりました。害意は無いので、その魔法弾を下ろして頂けますか?」
・・・・いや、幼女と言った方がいいか。
私は右手で魔導騎士に合図を送ると、攻撃魔法の気配が消える。
しかし、相変わらずの上位魔族特有のプレッシャーはそのままだ。
幼女と言っても、片方は山羊のような角、獣の手足、そして大きな鎌を持った上位種族『バフォメット』
そしてもう片方は、赤い帽子に魔導着を着た『魔女』で、同種と比べて相当手慣れのようだ。
バフォメットを長にした『サバト』と呼ばれる組織に所属している。
この場で殺り合ったら逃げ切れる自信は無い・・・もう少し護衛を増やしたほうが良かったかと思ったが、こちらもこれ以上の人数の「狩猟」は不審を招く。
「私はシアンルドール=ウェルステラ。この枢機卿領の領主です。」
「妾はミュスカデ=ペルクシヤーム。小さなサバトの長をやっておる、しがないバフォメットじゃ。お会いできて光栄、と言ったところかの。」
私はバフォメットと握手をするが、そこから伝わってくる魔力は相当のものだ。
右手で握手をしながらも、左手は一瞬で杖を握れる位置に持って行く。バフォメットはと言うと・・・余裕だ。
「ちゃんとしたテーブルすら用意できず、このような辺鄙な藪での会合になってしまい申し訳ない。」
「ふむ・・・教団の枢機卿にしては、珍しく礼儀がなっとるの。」
ぱちりとバフォメットが指を鳴らすと、その場に人数分の椅子が現れた。
私は簡単な遮蔽結界を周囲に張らす様に指示する。
「さて、ミュスカデ殿。本日のご用件ですが・・・」
「単刀直入に言えば、貴殿の領内に妾のサバトを設立したい。」
私は動揺が顔に出ないタイプだが、さすがにこの台詞には唖然とした。
オドアケルなんか間抜け顔で口をぽかんと開けている。
「ここが有史以来の教団固有領で、領民は魔物に触れたというだけでその者を村八分にする程の魔物嫌いです。実現可能と思われますか?」
「貴殿の言う事ももっともじゃ。妾の力を以ってしてもそう簡単に実現できると思っておらん。」
「ならば・・・・」
くっくっとバフォメットが笑う。従者っぽい魔女も何やら誇ったような笑みを浮かべている。
この突拍子も無い連中は何を言うつもりなのか。
「じゃが、幼女の魅力はそのような障害、ものともしないのじゃ!」
「はぁ!?」
こんな声を出したのは、父と愛人に始末されそうになった時に、母が私と弟を庇うと言い出した時以来だろうか。
「貴殿にもわかるであろう、幼女との背徳的で倒錯感を覚える禁断の交わりを!アレを一度味わってしまえばどのような御仁でも『こっち』に戻れなくなり、その深淵に自ら誘われて逝くのじゃ。妾はその最高の快楽を伝える伝道師にして、世界中をロリコンで埋め尽くす使命を帯びた牧師じゃ!どのような障害があろうともそこに迷える子羊がいる限り・・・・」
私をはじめ、オドアケルも従者も一律に固まった。
目を輝かせているのは演説を行うバフォメットと、それを聴く魔女だけだ。
しかもその演説は、10分くらい続いた。
「・・・であるからして、いかに反魔派と言えども、幼女の魅力の前には塵同然なのじゃ!」
ふふんと鼻を鳴らしながら、バフォメットがふんぞり返っている。
これがコミュニスト・プロパガンダあるいはファシスト・プロパガンダか、と言うか落ち着け、私は何を意味不明の単語を思い浮かべているんだ。
ちなみに周囲の者のフリーズはまだ解けていない。
「再度言うが、そんな訳で妾のサバトを貴殿の領内に設立したいのじゃ。」
「許可しましょう。」
「ブッ」「ブッ」「ブッ」「ブッ」「ブッ」「ブッ」「ブハッ」
許可と私が言ったことに、私の従者6名+オドアケルが一斉に吹き出す。
最後のに至っては唾を周囲に盛大に撒き散らした。
「ほう、話のわかる枢機卿よの。」
「ちょ、ちょちょちょちょまシアン卿ぉ!それは無いというか領内にカルト教団を入れるとか!」
「座れ、今から説明する。」
カルト教団、と言われた瞬間に魔女の眉がぴくりと動いた気がするが・・・
何やらモゴモゴ言いながらオドアケルと、つられて立った何名かが着席する。
「布教の尖兵が成功する条件、それは熱意だ。その土地に根付いた宗教、風習などの障害は生半可な強大さではなく、新しい宗教を布教しようとする者は多くの困難に立ちはだかるからな。」
「なら、また何でサバト設立なんかさせるんですかい!」
「ミュスカデ殿がサバトについて語っている時の目を見たか?・・・・これでも枢機卿だ、あれは心から教えに忠実な者の眼だということくらいわかる。」
バフォメットが意外そうな顔をしている。
一般的な枢機卿のイメージと私がかけ離れているからだろう。
「教団の布教も同じだ。今は多くが武力で教えを押し付ける布教方式だが、誰かが心をこめてじっくりと教えを布教していく布教方式の方が圧倒的に土着率がいい。そして、そういう布教をする者は、ああいう眼をしていなければならん。」
「・・・・・・しかし、サバトなんざ置いたら色々面倒が・・・・」
「さて、ここから先はミュスカデ殿に。」
事務的な表情を作った私に、バフォメットも事務的な顔で応える。
「知っての通り、ここは有史以来の教団固有領です。聖書はお読みになっていると思いますが、そこに出てくる聖人が生ぬるいほど布教は困難を極めるでしょう。」
「覚悟はできておる。幼女の魅力のためなら妾はどんな苦難でも受けよう。」
そのまま聖書の言葉をもじって返されるとは思わなかった私は、思わず小さく吹き出した。
このバフォメットとはいい酒が飲めるだろうな。こんな立場でなかったらラキやオドアケルも交えて一献といきたいところだ。
「ですが、その覚悟と魔女達との結束があれば、できないこともない。そう私は踏みました。」
「その通り、妾のサバトの絆は最強なのじゃ。」
「さて、私はご覧のとおり教団枢機卿です。貴殿のサバトがあまり派手に活動してくれると、私としても黙殺できません。」
一陣の殺気を込めて言い放つ。
この殺気に言いたいことは全て乗せてある。我々と争うような事態にしてくれるな、そういうことだ。
「・・・・確約しよう。妾らは『魔物』じゃからな。じゃが、貴殿も少しの事は見過ごして欲しいの。」
「好き好んでサバトと争うつもりはありません、できる限り黙殺しましょう。あと、秘密裏に技術提供や紹介などもお願いします。こちらも、教団の人脈なら粗方繋がります。」
「幼女と性生活に関する技術なら特に歓迎じゃ。協力関係を樹立しよう。」
今度は互いに殺気を放つことなく、私とバフォメットが握手をする。
魔女がこの上なく嬉しそうな顔をしているのに対し、私の従者は呆れていた。
・・・・が、会談はここで終わらなかった。
「さて、では早速布教させてもらうかの。サバトの教えを。」
「本拠地はこちらの地図に記した森の洋館をお使い下さい。父の極秘の別荘でしたが、今は誰も住んでいません。深い森の中なので交通の便は不便ですが、まず表立って教団に見つからないかと。」
「ほほう、屋敷までくれるか。では、最大限の心を込めて貴殿らをサバトの教えに染めるとするかの。」
「恐れ入り・・・・は?」
バフォメットは強かった。閃光弾を乱射しても魔力探知で追ってくるわ、雷槍オベリスクまでぶっ放してくるわ、後方に魔力撹乱陣を敷いておかなかったら間違いなく捕まっていただろう。
私の部下が1人、督戦隊が2人捕まり、その他も命からがらという状況だった。
『さすがの戦略家じゃのー!気に入った、妾の兄上にしてくれるわ!』
『私にはもう相手がいるので無理ですっ!』
『ではその姉君ともども仲良く暮らそう!大丈夫じゃ、魔界では一夫多妻がまかり通っておる!』
・・・・今思えば、バフォメットは実力の確認も兼ねて遊んでいたのだろう。
捕まった私の部下も数日後にちゃんと戻ってきた。(隠し事をしているようだったので、屯所に張り込んだら恋人らしき魔女が隠れていたが)
しかしまあ、あれほどの命の危険を感じたのは久しぶりだった。
そして、城にほうほうの体で帰還した私達を、更なる罠が待っていたのだ。
「シアン卿ぉ!今回ばかりは死ぬかと思いましたわい!」
「私としたことが、布教にかかってくるという可能性を忘れていたな。円滑に進めて最後で落とすという交渉術はデジャヴを感じる。」
「デジャヴも何も、それ卿の常套手段じゃないっすか。」
「・・・・・だったな。はぁ・・・・」
無造作に私の部屋に上がり、軽く結界を張ってから飲む体勢に入る。
と、そこで来るはずのラキがいないことに気付いた。
「およ、天使様遅いっすなあ・・・」
「えーと、そのカーテンの後ろに隠れているの、ラキ?」
「・・・・・・・(///」
ラキにしては身体が小さいような・・・。思い返して、何故そう考えなかったのか疑問に思う。
ただ、その時は疲れていて、ただラキは何をやっているんだということしか考えてなかった。
「えいっ。」
「きゃぁっ!」
カーテンから転げ出されたラキの姿を見て、言葉を失う。
「え、えーと、シアン?その、バフォメットが訪ねてきて魔法かけられちゃって、一晩で治るって言ってたんだけど・・・・」
ラキはエンジェルのまま幼女になっていた。
・・・その晩、夜這いに遭ったのは言うまでもない。
少数の供を人目のつかない山野に連れて行く・・・・つまり、人知れず誰かと会うには絶好の機会だ。
私の場合、ここ最近は狩猟に出かけて獲物を2体以上仕留めた記憶がない。
1体は狩るのかって?何度も手ぶらでは色々怪しまれるだろう。
「シアン卿ぉ、そろそろじゃないですかい?」
未開の山野でひっつき虫だらけになっているオドアケルが、時計を見ながら周囲を警戒している。
彼の督戦隊の精鋭、私のシス・フレイム聖騎士団の精鋭も油断無く周囲を見渡している。
狩猟中に『事故』に遭うリスクもあるから、狩猟に出かけるときは6名の精鋭を連れて行くことにしているのだ。
「あの連中は時間にルーズだったりするからな。」
「そうは言っても、ホントに大丈夫ですかい、シアン卿ぉ。」
「ふむ・・・来たようだな。」
何も無い空間に、魔力の乱れが生じる。
魔導騎士達がその乱れに狙撃魔弾を放つ準備をする。生憎、今回会う約束の相手はそう無警戒で会える相手ではない。
魔力の乱れはだんだん大きくなり、少し弾けたかと思うと、中から少女が2人現れた。
「ほう、随分と警戒されとるの。」
「遅くなりました。害意は無いので、その魔法弾を下ろして頂けますか?」
・・・・いや、幼女と言った方がいいか。
私は右手で魔導騎士に合図を送ると、攻撃魔法の気配が消える。
しかし、相変わらずの上位魔族特有のプレッシャーはそのままだ。
幼女と言っても、片方は山羊のような角、獣の手足、そして大きな鎌を持った上位種族『バフォメット』
そしてもう片方は、赤い帽子に魔導着を着た『魔女』で、同種と比べて相当手慣れのようだ。
バフォメットを長にした『サバト』と呼ばれる組織に所属している。
この場で殺り合ったら逃げ切れる自信は無い・・・もう少し護衛を増やしたほうが良かったかと思ったが、こちらもこれ以上の人数の「狩猟」は不審を招く。
「私はシアンルドール=ウェルステラ。この枢機卿領の領主です。」
「妾はミュスカデ=ペルクシヤーム。小さなサバトの長をやっておる、しがないバフォメットじゃ。お会いできて光栄、と言ったところかの。」
私はバフォメットと握手をするが、そこから伝わってくる魔力は相当のものだ。
右手で握手をしながらも、左手は一瞬で杖を握れる位置に持って行く。バフォメットはと言うと・・・余裕だ。
「ちゃんとしたテーブルすら用意できず、このような辺鄙な藪での会合になってしまい申し訳ない。」
「ふむ・・・教団の枢機卿にしては、珍しく礼儀がなっとるの。」
ぱちりとバフォメットが指を鳴らすと、その場に人数分の椅子が現れた。
私は簡単な遮蔽結界を周囲に張らす様に指示する。
「さて、ミュスカデ殿。本日のご用件ですが・・・」
「単刀直入に言えば、貴殿の領内に妾のサバトを設立したい。」
私は動揺が顔に出ないタイプだが、さすがにこの台詞には唖然とした。
オドアケルなんか間抜け顔で口をぽかんと開けている。
「ここが有史以来の教団固有領で、領民は魔物に触れたというだけでその者を村八分にする程の魔物嫌いです。実現可能と思われますか?」
「貴殿の言う事ももっともじゃ。妾の力を以ってしてもそう簡単に実現できると思っておらん。」
「ならば・・・・」
くっくっとバフォメットが笑う。従者っぽい魔女も何やら誇ったような笑みを浮かべている。
この突拍子も無い連中は何を言うつもりなのか。
「じゃが、幼女の魅力はそのような障害、ものともしないのじゃ!」
「はぁ!?」
こんな声を出したのは、父と愛人に始末されそうになった時に、母が私と弟を庇うと言い出した時以来だろうか。
「貴殿にもわかるであろう、幼女との背徳的で倒錯感を覚える禁断の交わりを!アレを一度味わってしまえばどのような御仁でも『こっち』に戻れなくなり、その深淵に自ら誘われて逝くのじゃ。妾はその最高の快楽を伝える伝道師にして、世界中をロリコンで埋め尽くす使命を帯びた牧師じゃ!どのような障害があろうともそこに迷える子羊がいる限り・・・・」
私をはじめ、オドアケルも従者も一律に固まった。
目を輝かせているのは演説を行うバフォメットと、それを聴く魔女だけだ。
しかもその演説は、10分くらい続いた。
「・・・であるからして、いかに反魔派と言えども、幼女の魅力の前には塵同然なのじゃ!」
ふふんと鼻を鳴らしながら、バフォメットがふんぞり返っている。
これがコミュニスト・プロパガンダあるいはファシスト・プロパガンダか、と言うか落ち着け、私は何を意味不明の単語を思い浮かべているんだ。
ちなみに周囲の者のフリーズはまだ解けていない。
「再度言うが、そんな訳で妾のサバトを貴殿の領内に設立したいのじゃ。」
「許可しましょう。」
「ブッ」「ブッ」「ブッ」「ブッ」「ブッ」「ブッ」「ブハッ」
許可と私が言ったことに、私の従者6名+オドアケルが一斉に吹き出す。
最後のに至っては唾を周囲に盛大に撒き散らした。
「ほう、話のわかる枢機卿よの。」
「ちょ、ちょちょちょちょまシアン卿ぉ!それは無いというか領内にカルト教団を入れるとか!」
「座れ、今から説明する。」
カルト教団、と言われた瞬間に魔女の眉がぴくりと動いた気がするが・・・
何やらモゴモゴ言いながらオドアケルと、つられて立った何名かが着席する。
「布教の尖兵が成功する条件、それは熱意だ。その土地に根付いた宗教、風習などの障害は生半可な強大さではなく、新しい宗教を布教しようとする者は多くの困難に立ちはだかるからな。」
「なら、また何でサバト設立なんかさせるんですかい!」
「ミュスカデ殿がサバトについて語っている時の目を見たか?・・・・これでも枢機卿だ、あれは心から教えに忠実な者の眼だということくらいわかる。」
バフォメットが意外そうな顔をしている。
一般的な枢機卿のイメージと私がかけ離れているからだろう。
「教団の布教も同じだ。今は多くが武力で教えを押し付ける布教方式だが、誰かが心をこめてじっくりと教えを布教していく布教方式の方が圧倒的に土着率がいい。そして、そういう布教をする者は、ああいう眼をしていなければならん。」
「・・・・・・しかし、サバトなんざ置いたら色々面倒が・・・・」
「さて、ここから先はミュスカデ殿に。」
事務的な表情を作った私に、バフォメットも事務的な顔で応える。
「知っての通り、ここは有史以来の教団固有領です。聖書はお読みになっていると思いますが、そこに出てくる聖人が生ぬるいほど布教は困難を極めるでしょう。」
「覚悟はできておる。幼女の魅力のためなら妾はどんな苦難でも受けよう。」
そのまま聖書の言葉をもじって返されるとは思わなかった私は、思わず小さく吹き出した。
このバフォメットとはいい酒が飲めるだろうな。こんな立場でなかったらラキやオドアケルも交えて一献といきたいところだ。
「ですが、その覚悟と魔女達との結束があれば、できないこともない。そう私は踏みました。」
「その通り、妾のサバトの絆は最強なのじゃ。」
「さて、私はご覧のとおり教団枢機卿です。貴殿のサバトがあまり派手に活動してくれると、私としても黙殺できません。」
一陣の殺気を込めて言い放つ。
この殺気に言いたいことは全て乗せてある。我々と争うような事態にしてくれるな、そういうことだ。
「・・・・確約しよう。妾らは『魔物』じゃからな。じゃが、貴殿も少しの事は見過ごして欲しいの。」
「好き好んでサバトと争うつもりはありません、できる限り黙殺しましょう。あと、秘密裏に技術提供や紹介などもお願いします。こちらも、教団の人脈なら粗方繋がります。」
「幼女と性生活に関する技術なら特に歓迎じゃ。協力関係を樹立しよう。」
今度は互いに殺気を放つことなく、私とバフォメットが握手をする。
魔女がこの上なく嬉しそうな顔をしているのに対し、私の従者は呆れていた。
・・・・が、会談はここで終わらなかった。
「さて、では早速布教させてもらうかの。サバトの教えを。」
「本拠地はこちらの地図に記した森の洋館をお使い下さい。父の極秘の別荘でしたが、今は誰も住んでいません。深い森の中なので交通の便は不便ですが、まず表立って教団に見つからないかと。」
「ほほう、屋敷までくれるか。では、最大限の心を込めて貴殿らをサバトの教えに染めるとするかの。」
「恐れ入り・・・・は?」
バフォメットは強かった。閃光弾を乱射しても魔力探知で追ってくるわ、雷槍オベリスクまでぶっ放してくるわ、後方に魔力撹乱陣を敷いておかなかったら間違いなく捕まっていただろう。
私の部下が1人、督戦隊が2人捕まり、その他も命からがらという状況だった。
『さすがの戦略家じゃのー!気に入った、妾の兄上にしてくれるわ!』
『私にはもう相手がいるので無理ですっ!』
『ではその姉君ともども仲良く暮らそう!大丈夫じゃ、魔界では一夫多妻がまかり通っておる!』
・・・・今思えば、バフォメットは実力の確認も兼ねて遊んでいたのだろう。
捕まった私の部下も数日後にちゃんと戻ってきた。(隠し事をしているようだったので、屯所に張り込んだら恋人らしき魔女が隠れていたが)
しかしまあ、あれほどの命の危険を感じたのは久しぶりだった。
そして、城にほうほうの体で帰還した私達を、更なる罠が待っていたのだ。
「シアン卿ぉ!今回ばかりは死ぬかと思いましたわい!」
「私としたことが、布教にかかってくるという可能性を忘れていたな。円滑に進めて最後で落とすという交渉術はデジャヴを感じる。」
「デジャヴも何も、それ卿の常套手段じゃないっすか。」
「・・・・・だったな。はぁ・・・・」
無造作に私の部屋に上がり、軽く結界を張ってから飲む体勢に入る。
と、そこで来るはずのラキがいないことに気付いた。
「およ、天使様遅いっすなあ・・・」
「えーと、そのカーテンの後ろに隠れているの、ラキ?」
「・・・・・・・(///」
ラキにしては身体が小さいような・・・。思い返して、何故そう考えなかったのか疑問に思う。
ただ、その時は疲れていて、ただラキは何をやっているんだということしか考えてなかった。
「えいっ。」
「きゃぁっ!」
カーテンから転げ出されたラキの姿を見て、言葉を失う。
「え、えーと、シアン?その、バフォメットが訪ねてきて魔法かけられちゃって、一晩で治るって言ってたんだけど・・・・」
ラキはエンジェルのまま幼女になっていた。
・・・その晩、夜這いに遭ったのは言うまでもない。
11/09/17 16:39更新 / 見習い教団魔導士
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