泣き虫で甘えん坊な海のギャング
「…………腹減った…………」
快晴の空、穏やかな風、青く透き通る海。
目の前に広がる光景はまさしく絶景と言えるだろう。バカンスなら文句の言いようがないシチュエーションだ。
だが、今の俺の気分は良いとは言えない。寧ろ目の前の景色とは対照的に、暗くてドンヨリとした心境だ。
と言うのも……俺は観光客じゃない。それに此処は休暇を楽しむ為のオアシスでもない。
「遭難してから今日で五日目か……意外と生き長らえれるもんだな」
早い話、俺は遭難者だ。そして此処は無人島。住人はおろか、野生動物すら見当たらない島だ。
「ちっきしょー……なんでこんな目に遭わなきゃならねぇんだよぉ……」
砂浜に立ちすくみ、波の静かなせせらぎを聞きながら、俺は過去に起きた人生最大の不幸を思い返した。
事の始まりは五日前……こう見えて俺は海賊だった。ちょっとばかり人遣いの荒い船長の下でせっせと働く生活を送っていたが、それなりに充実していた。
だが、あろうことか俺の海賊人生はたった一週間で終わる羽目になってしまった。
あの……超大物海賊の手によって。
『我は黒ひげ!歯向かう者は吹き飛ばしてくれるわ!!』
……よりによって初めての海戦の相手が伝説の海賊だなんて、全くついてなかった。
俺ら下っ端は黒ひげに敵う道理なんて無いと思い、船長に逃げるよう説得したが、船長は首を縦に振らなかった。それどころか、自ら黒ひげの首を取ろうと先陣切って刃を構えたのだが……。
『覚悟しろ黒ひげ!一瞬で決着を着けてやる!』
『……爆破』
パチンッ!
ドカァァァァァン!!
『あへぇぇぇぇぇぇぇ!!』
以上、船長と黒ひげの戦いの様子。言葉通り一瞬で片付いちゃったよ、黒ひげの勝ちで。船長を空の彼方へとぶっ飛ばしてお星様にしちゃった。
しかし、指を鳴らしただけで爆破を起こすなんて、あれにはビックリさせられた。あの能力を目の当たりにして誰もがヤバいと悟り、早く逃げようと思ったのだけれど……。
『仕掛けておいて逃げるでないわぁ!!』
ドカァァァァァン!!
ドカァァァァァン!!
ドカァァァァァン!!
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『お助けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
『船長のバカヤロぉぉぉぉ!!』
喧嘩を売られておきながら逃げられるのが気に食わなかったのか、黒ひげの攻撃は本当に容赦無かった。爆破は俺らの海賊船まで巻き込むほどの威力で、たちまち焼き尽くされてしまった。
燃える海賊船の中、逃亡を決断した俺は海へ飛び込んで必死に泳いだ。どこへ向かっているのか分からなかったけど、それでも泳いで、泳いで泳いで泳ぎまくった。
「あ〜やっべぇ……喉も渇いてきた……」
その末にたどり着いたのが、この無人島。島に着いた瞬間には力尽きて気絶しちゃったけど、目を覚ました時には体力が回復していた。それから俺は島を散策しながら今日まで生き延びてきたが……何分食料と言えるものが極端に少ないこの島で生き続けるのは無理だと思えてきた。
そのうち、商船とか客船とかがこの近くを通る。最悪、海賊船でもいい。そんな淡い希望を抱きながら海を眺めているが、今日にいたるまで船なんて一隻も通らなかった。一人で過ごすうちに助からないんじゃないかと思うようになってきた。気力と体力は徐々に減る一方だけど、助かる希望はもっともっと減少するのみだ。
「……はぁ……」
あ〜あ……こんなことになるのなら、海賊にならなきゃ良かった。職を失ってから自暴自棄になって、勢い余って海賊になった時からこうなる運命だったのかもしれない。今思えば、もう少し冷静になって真面目に仕事を探した方がマシだったようだ。
……俺……本当にどうすりゃいいんだよ……。
「……ん?」
絶望感に浸っている最中だったが……ふと、海の様子がなんだか変だってことに気付いた。いや、正確には……海の一部がおかしくなってるって言った方がいいか。
「なんだあれ?」
僅かながら、海の中に黒いシルエットが潜んでいるのが見えた。
その影はどんどん大きくなっていく。まるで……こっちに近づいて来てるみたいだ。いや、間違いなくこっちに向かってる。
「あれは……魚?」
影の形がぼんやりした楕円形から徐々にハッキリと具体的に映ってきた。
「いや……人魚!?」
最初こそ魚かと思ったが、上半身の辺りは人間の身体に見えた。
と言うことは……もしかして人魚か!?
やった!ようやく希望の光が見えてきたぞ!
「おーい!こっちだー!助けてくれー!!」
俺は精一杯の大声を上げて人魚に呼びかけた。
人魚は魔物の中でも比較的大人しい性格だ。俺の話も耳を傾けてくれるはず。事情を説明して助けを呼んでもらおう。
「おーい!こっちに来てくれー!!」
俺の叫びに応えるように、人魚は泳ぐ速度を上げてこっちに向かってきてる。
ちゃんと聞こえてるようだ。よかった……これで助かる……!
安堵のため息を吐くと、人魚の身体が海面から出てきた。これでやっと人魚の正体が……。
「……え……」
……安心したのも束の間。人魚の身体を見た瞬間、背中から悪感を感じた。
天国から地獄へ堕ちるとは……このことだろうか……。
「ちょ……ちょっと待てよ……あれって……」
人魚の上半身は思ってたものと違っていた。
目つきは獲物を狙う猛獣みたいに鋭くて、口の隙間から鋭い牙が生えている。俺が想像していた穏やかな人魚のイメージとは正反対に、なんだか凶暴な雰囲気を晒している。
「まさか……まさか……!?」
更に驚くべきなのは、その下半身だ。確かに人魚と同じように魚の形をしているが、あれは明らかに普通の魚じゃない。
あの黒くて逞しいボディは、どう見てもあれだ。
そう……まさにサメ。海のギャングとも呼ばれてるあの獰猛な魚類そのものだ。
「嘘だろ……こんなのありかよ!」
俺は……あの魔物に見覚えがあった。
そうだ……間違いない。
なんで……なんで……!
「よりによってマーシャークかよ!!」
そう……こっちに近づいて来てるのは『人喰い鮫』として有名な凶暴な魔物、マーシャークだった!
「シャーハー!やっぱり男だった!あたしを呼んだのはアンタかい?あんなに積極的に呼んでくれるなんて嬉しいねぇ!」
俺に近付いてきたマーシャークは、口元の歯を不気味に光らせるように不敵な笑みを浮かべた。
間違いない……このマーシャーク、助けに来たんじゃなくて俺を食べに来たんだ!
やっと地獄のサバイバル生活におさらば出来ると思ったのに……そんなのありかよ!
「呼んでない!誰もお前なんか呼んでないよ!」
この鮫の人魚に食べられると思うと、恐怖で身体が震え上がる。
なんとかしてこの場から離れろと自分自身に言い聞かせて、ゆっくりと後ずさりする。
「あぁ?おいおい、あんなに大声上げといてそれは無いだろ。こっちに来いとか言ったのはアンタだろうが」
「それは……俺を助けて欲しくて呼んだだけだ!お前に食われるつもりは無いよ!早くどっか行けよ!」
「なんだよ!呼んでおいてあんまりじゃないか!」
「俺は鮫になんか用は無い!帰ってくれ!人食い鮫め!」
気迫に負けてはいけない。そう思った俺は相手を威嚇するように敵意をむき出しにしながら声を張り上げた。
相手は人魚だ。海中だと勝ち目は無いが、陸の奥まで走ってしまえばこっちのものだ。何とか隙を見つけて逃げ出さないと……!
「……お前までそんなことを言うのかよ……!」
「え?」
突然、声を絞るかのようにマーシャークが呟いた。その表情には、なんだか怒りと悲しみが入り混じったように見える。
なんだ?一体、どうしたんだ……?
「もうなんなんだよぉ!」
ザパァン!!
「うわぁ!?」
突然の出来事だった。マーシャークが海面から飛び出して、俺に飛びかかってきた。あまりにも凄まじい勢いになすすべもなく、俺はマーシャークに馬乗りにされてしまった。
しまった……俺としたことが。
「うわ、ちょ、やめてくれ!俺なんか美味くないぞ!」
マーシャークが俺を睨みながら徐に口を開いた。
マズイ!非常にマズイ!このままじゃ食われる!あんな牙に噛みつかれたらひとたまりもない!
畜生!俺の命運も……ここまでか……!?
覚悟を決めたその瞬間……
「なんだよ!なんだってんだよ!そんなにあたしが怖いか!?そんなにあたしと一緒に居るのが嫌か!?なんでそんなにあたしを嫌うんだよ!なぁ、どうして!?」
「……え?え?」
……予想外だった。てっきり噛みついてくるのかと思ったら、荒い声でこんなことを言ってきたのだ。
しかも……なんだか泣きそうな表情を浮かべている。
「今まで……人間たちから人喰いなんて呼ばれて怖がられて、遠ざけられてきたから寂しくて……」
「あ、あの……とりあえず離して……」
「そしたら久しぶりに男の気配を感じてちょっと様子を見に来てみたら、お前の方からあたしを呼んでくれてさ……」
「だから、俺は……」
「なのに……なのに……」
最初が怒気を含めてた声が、今にも消えそうなくらいに弱弱しくなってくる。
「……うぅ……グスッ……」
……え?泣いてる?
「こんなの……あんまりだよぉ……せっかく人間と仲良くなれると思ったのに……うぅ……なんで……なんであたしは怖がられてばかりなんだよぉ……ひっぐ……」
……正直、戸惑うしかなかった。
俺に跨ってるマーシャークは、両目の鋭い目から大粒の涙をポロポロと零している。弱弱しく泣き言を吐いてるその姿は、か弱い少女と何の変りもなかった。
マーシャークはもっと凶暴で怖い魔物かと思っていたんだが……俺が思い浮かんでいたイメージが間違ってたのか?
「……ごめん……嫌だったよな……」
マーシャークは、どこか悲しそうな表情を浮かべながら俺から離れた。
「あたし……もう行くね。これ以上嫌われたくないし……それじゃあ、元気でね……」
それだけ言うと、マーシャークは海の方へゆっくりと進んで行った。
……結果的には助かったんだろうけど……なんだか凄い罪悪感が拭えない。寧ろ俺の方が酷い事をしてしまったとしか思えない……。
……ん?
「ちょ、ちょっと待て!」
「え?」
俺に呼びかけられてマーシャークは歩みを止めて俺へ振り返った。去っていこうとしたマーシャークの背びれに、何やら小さな傷のようなものが見える。あの具合からして見ると、ごく最近に出来たばかりにものだとすぐに判断出来た。
「なぁ、その背びれの傷……」
「あぁこれ?ついさっき、海の漁師たちに猟銃で撃たれてな……まぁ掠っただけだし大丈夫だ」
やはり思った通り人為的な傷だったようだ。銃で撃たれたのなら、その大きさに納得できる。
それにしても……銃で撃ってくるなんて酷い事をするものだ。
……って、俺もさっきまで怖がって突き放したし、偉そうなことを言える立場でもないか。
「悪いがこのままジッとしててくれ。俺が手当してやるから」
流石にこのまま放っておくわけにはいかない。俺は傷の手当てをしようとマーシャークに近付いたが……
「い、いいよこんなの!放っておけば治るから!」
マーシャークは背びれを触らせまいとばかりに、俺に向き直った。更に牙をむき出しにして威嚇してくる。
「待てよ!手当しないと悪化するぞ!治りも遅くなるし、早く処置しないとダメだ!」
「大丈夫だ!あたしの事は構わないでくれよ!大体、ホントはあたしと一緒に居るのが嫌なくせに、無理させる方が余計辛いんだよ!」
「無理なんかしてない!こんな怪我を負ってる君を見捨てるなんて、俺にはできないよ!!」
「っ!!」
尚も手当を拒むマーシャークに思わず声を上げてしまった。そのせいかマーシャークは一瞬だけ怯んだ様子を見せたが、それでも威嚇する姿勢は変わらない。
「……ごめん、大声出して。でも大丈夫だから……な?」
ムキになってしまったことを反省しつつ、俺はマーシャークの背後に回り、背びれに触れるよう片膝を地面に付けた。
「こんなこともあろうかと、持っててよかった」
俺は衣服のポケットから手のひらサイズの小さな箱を取り出した。これはポケットサイズの携帯救急箱で、中には傷の手当てをするための道具が入っている。まぁほんの気持ち程度でしかならないけど、今の傷を手当するだけならちょうどいいだろう。
「すぐ終わるから、ちょっと我慢しててくれよ」
救急箱から傷に効く塗り薬を取り出して、適量を患部に塗り始めた。
なんだかザラザラした感触の背びれだ……って、そうか。これが鮫肌と言うやつか。
「……なんで?」
「ん?」
「なんで……そんなに優しくしてくれるんだ?さっきまであたしのこと、嫌ってたのに……」
俺の方を振り向いてるマーシャークは、威嚇こそ止めたものの、戸惑いの視線を送ってきた。
「え?別に嫌いなんて言った憶えはないけど?」
「じゃあなんであんなに拒絶したのさ」
「いや、さっきは食い殺されると思って……」
「……なんか誤解してない?あたしさぁ、アンタを殺すつもりはなかったんだよ。と言うか、食うつもりもない」
「え?」
ちょっと驚きながらも、箱から包帯を取り出して背びれに巻き付け始めた。
「だいたい、私たちマーシャークが人間を食い殺す訳ないんだよ。そりゃあちょっと荒っぽいところはあるかもしれないけど、少なくとも人の命を奪う真似は絶対にやらないんだ」
「そうなの?じゃあ、俺の勘違い?」
「そうだな……まぁ、人喰いって呼ばれるのも仕方ないっちゃ仕方ないんだけどな」
なんだ、よかった……。
食われる心配がなくなってちょっと安心。
「……よし、完了!」
「もう終わったのか?」
「言っただろ?すぐ終わるって」
そんなこんだしてる内に、マーシャークの背びれの手当てが終わった。
と言っても応急処置程度のものだが……まぁ何もしないよりマシだろう。
「へぇ……意外と器用なんだな」
「まぁな。細かい作業には自信あるんだ」
自分で言うのも何だが、昔から手先の器用さには自信がある。海賊をやってた時だって、大雑把な連中には出来ない仕事を難なくこなしてきたくらいだ。
……まぁ、その反面体力や腕っぷしはダメダメだけど……。
……って、そうだ。まずはさっきの仕打ちを謝らないとな。
「……なぁ、酷いこと言ってごめんな。まさか、あんなに泣くほど辛かったなんて……」
お詫びを聞いたマーシャークは、最初こそ目を丸くしたが、やがて俺に向き直って優しく微笑みかけてきた。
「……ううん、もう気にしてないから平気だよ。それに……なんだか、嬉しかった」
「え?」
嬉しかった……唐突な言葉に疑問を抱いていると、マーシャークは俺の手を掴み、両手で包むように優しく握ってきた。
「あたしさ……本当は人間とも仲良くなりたいって思ってたけど、こんな見た目だから度々怖がられてさ。近付いたら悲鳴上げられたり、海で溺れてる人を助けようとしたら逃げられたり……」
……まぁ、そりゃそうだよな。
なんて口が裂けても言えなかった。
「でもね……アンタは違った。この場から去ろうとしたあたしを逆に呼び止めて、怪我の手当をしてくれて……こんなに優しくしてくれたの、アンタが初めてだよ。ホントに嬉しい……!」
そう話すマーシャークの両目から、またしても大粒の涙が流れてきた。
ただ……今流れてる涙はさっきのものとは違って、何だか温かみを感じる涙だ。
……なんだろう……この子、よく見ると結構可愛い。それに優しそうな笑顔だし、どう見ても人に害をなすとは思えない。誤解だったとは言え、ついさっき怖がって思わず暴言を吐いてしまったことを改めて後悔した。
「ねぇアンタ、名前はなんて言うんだい?」
「え?ああ、ベイン。俺はベインだ」
「ベインか……あ、あたしはホーミィ。マーシャークのホーミィだ」
マーシャーク……いや、ホーミィは両手で包んでる俺の手を自分の方に引き寄せて、青白い頬に触れさせた。
「ベイン……ありがとう!!」
「っ!!」
……とびっきり明るい笑顔を向けられた瞬間、俺の胸の奥が大きく弾んだ。
やっぱりこの子、すごく可愛いな。ホーミィになら食われてもいいかも……なんてな。
「えへへ……ベインの手、大きくてあったかい♥」
ホーミィは更に俺の手に頬をこすり付けてきた。その姿ときたら、例えるなら主人に甘える子猫みたいでなんとも愛らしい。とても鮫の魔物とは思えない。
見た目と行動のギャップに和んでいると……。
「……へへ♥」
「ちょ、ホーミィ!?」
突然、ホーミィが俺に抱き着いてきた。あまりの勢いに尻餅を付いてしまったが、それでもホーミィは俺から離れようとしない。
「ん〜♥ベインってホントにあったかいなぁ♥」
「ホ、ホーミィ……」
俺の肩口に額を付けて、身体をグイグイと密着させてきた。ザラザラした鮫肌が俺の身体を擦ってくるが……痛みは感じないし、不快に思わない。
……いや、それよりも……ホーミィの……ホーミィの胸が……!
……てか、ホーミィって結構胸大きいんだな。それに柔らかい……!
「ベイン♥ベイン♥」
「ちょ、おい、どうしちゃったんだよ……」
嬉しそうな顔で甘えるのを止めようとしないホーミィ。
なんだか様子がおかしい……いや……おかしいのは俺かもしれない。
なんと言うか、密着する度に身体が熱くなってる気がする。摩擦とか物理的な熱じゃなくて、こう……身体の内側から熱いものが出てくる感じだ。
ホーミィの大きい胸が当たってるせいかと考えたが、それ以外にも何かあるとしか思えない。
「ホ、ホーミィ、待ってくれ……俺、なんか身体が……!」
やっぱりおかしい……擦られてる部分が変な感覚になってきてる。
これは……疼いてる、と言うべきだろうか?身体から何かが放出されてるような気分だ。いつもと違うのは間違いないが、不思議にも不快な感じにはならない。
寧ろ……身体がこの疼きをもっと欲してるような気がした。特に下半身が。
「……あ♥」
ホーミィに俺の固くなった股間の存在に気付かれてしまった。
「ベインのここ、元気になってきてるよ……♥」
「ちょっ!?なにやって……!」
するとホーミィはズボンの上から俺の股間に触り、手のひらで優しくいたわるように撫で回してきた。
ヤバい……ここ最近は無人島での過酷なサバイバル生活に明け暮れて、全然抜いてないから服越しなのに敏感になってる……!
「ベイン、このままじゃ辛いでしょ?私が気持ち良くしてあげるからね♥」
「わぁ!?」
突然ホーミィは俺を押し倒し、さっきのように馬乗り状態となった。
「こういうこと初めてだけど、ベインのために頑張るからね」
「え……って!ちょちょちょちょちょ!待て!待てってば!」
「やだ♪」
そう言いながらホーミィは俺のズボンに手を伸ばしてきた。それを見た俺は慌てて止めようとしたが、聞く耳持たずに素早くベルトを外し始めた。
「や、やめてくれ!俺は外で露出する趣味なんか無い!」
「そんなこと言われても無理。我慢できない」
「そ、それにしばらくすれば自然と収まるから!」
「それは大変!尚更早く気持ち良くしてあげなくちゃ♥」
「なんでそうなるの……って、意外とパワーある……!」
長いサバイバル生活のせいで体力が失っている所為か、ホーミィの力が思ったより強すぎるのか、思うように抵抗できない。あれよあれよと言う間にズボンごと下着を脱がされてしまった。
「おぉ〜すっごいビンビンだね……!」
「み、見ないでくれ!恥ずかしい!」
「え?でも、あたしとくっついてこんな状態になったんでしょ?あたしとしては嬉しいなぁ♥」
ガチガチに勃起した俺の逸物を目にして、目を輝かせるホーミィ。こんな野外でちんちんを丸出ししてるだけでも顔から火が出るほどなのに、そんなにマジマジと見つめられると余計恥ずかしい……。
……と言うか、我がムスコながらこの状態はなんだかおかしく思えた。さっきホーミィに抱き着かれて、大きなおっぱいを押し付けられたのもあるけど、それだけでこんなに反り立つものだろうか?
そう言えば、あの鮫肌を擦られてから身体が熱くなってるような……?
「ええっと、こうすれば良いんだよね……?」
「うっ!?」
ホーミィは俺のペニスを掴み、上下に優しくしごき始めた。
あ、ヤバい……これ気持ちいい……!
「待てホーミィ、本当にダメだって……!」
「えぇ?気持ちよくない?」
「そうじゃなくて、今の俺、汚いからやめた方がいいよ!」
「別に汚いなんて思ってないよ?」
「いやだから、ここ最近風呂にも入ってないから身体中汗まみれなんだよ!」
「それはそれで興奮するじゃない」
「興奮って……!」
そう……無人島での生活には風呂なんて贅沢なものは無い。今の俺は間違いなく不潔だろう。こんな状態でホーミィと密着するような真似は忍びない。
だが、それでもホーミィは俺のペニスを扱く手を止めようとしない。どんどん俺の肉棒が脈を打ってますます固くなってくる。
「……ベイン……」
突然、ホーミィがどこか寂しそうな表情を俺に向けてきた。さっきみたいに今にも泣きそうな目で俺を見ている。
「ベインはあたしとエッチなことするの、そんなに嫌?」
「え?い、嫌とかじゃなくてさ。今日会ったばかりなのに、こういうことをやらせるのは悪いと言うか……」
「悪いなんて思わないでよ。あたし、ベインのために何でもしてあげたいの。それに……」
ホーミィは徐に顔を俺に近付けて、優しく微笑みながら囁くようにこう言ってきた。
「あたし……ベインのこと、好きになったの!大好きなの!」
「……え?えぇ!?」
まさかの愛の告白!?
いきなりの展開に頭の中がグルグルと回ってきた。今まで悲しいくらいに女と縁が無かった俺には喜ばしい出来事だろう。だが、慣れないシチュエーションなだけにどうすれば良いのか分からず若干混乱している。
「ベインはどう?あたしのこと好き?」
「え!?そ、それは、その……」
「……もしかして、本当はあたしみたいな女は嫌いか?」
「それはない!断じてそんなことないぞ!」
またホーミィが泣きそうになるのを見て慌てて否定した。
嫌いじゃないのは間違いない。ホーミィは……見た目は可愛いし、胸は大きいし、性格も俺的には愛らしく思える。
寧ろ……こんな良い子に好かれるのは本当に嬉しいくらいだ。
「ホント!?じゃあ……あたしのこと……好き?」
「それは……ああ……好きだよ」
どう考えても……俺にはこう答えるしかなかった。
「……うぅ……ひぐっ……!」
「え!?ちょ、なんで泣くの!?」
すると、どういう訳かいきなりホーミィはすすり泣きだした。ホーミィの涙が俺の頬に滴り落ちたが、そんなことを気にしてる余裕も無かった。
「ベインから好きって言われて……初めて心から愛した人に好きなんて言われて、もうホントに嬉しくて……!」
……俺に好きなんて言われて泣いたのか?
涙流すくらい感極まったのか?
そんなに……俺のことを愛してくれてるのか?
どんだけ健気なんだよ、ホーミィって子は!
その情熱的な想いに、俺の心は射貫かれてしまった。
「えへへ……ベイン……♪」
ホーミィは指で涙を拭うと、また温かい笑みを俺の顔に近付けた。そして……!
「ん……ちゅっ♥」
「ん!?」
ホーミィの唇が俺の唇と重なった。
「ちゅ、ちゅぅ……んん、んちゅう……♥」
「んん……!」
ホーミィの方から何度も啄むようにキスしてくる。俺ももう抗う気力が無い。寧ろこうしていたい想いから、大人しくされるがままの状態となった。
「ちゅう……へへ、キスって初めてだけど気持ちいいね♥」
「え、そうだったの?」
「うん、初めては好きになった人とやるって決めてたんだ。でも良かった……その願いがやっと叶ったんだから♪ん〜ちゅっ♥」
またしてもホーミィの方から熱いキスをしてきた。今度は身体をもっと強く押し付けるように上からのしかかってくる。ホーミィの柔らかい胸の感触が俺の胸板から伝わってきた。
「んん、んちゅ……好き……しゅきぃ♥ちゅちゅ……じゅるる……ちゅう……♥」
口の隙間からねじ込むようにホーミィの舌が侵入してきた。意外にも温かくてヌルヌルの舌が俺の唇や舌を舐める度に、とろけるような快感に包み込まれる。
ホーミィもキスしながら快感に悶えるように俺の上で身体を動かしている。その度にザラザラの鮫肌が擦り、ますます俺の身体に熱と疼きを与えていた。
「んはぁ……感じる、感じるよぉ♥こうやって身体を重ねると、ベインの熱い精が私に注がれるのぉ♥」
「せ、精?なんだそれ?」
「えっと、人間が持ってるエネルギー……って言えば良いのかな?あたしたちマーシャークは、人間の男にこうやって鮫肌を擦ると精を放出させるの。それと同時に擦った人間の身体を熱くしたり疼く感覚を与えたりするんだ」
「ああ、それでか……!」
ここにきてようやく合点がいった。俺の身体の異変はホーミィの鮫肌が原因だったのか。
「ねぇベイン……キスも良いけど……」
ホーミィはほんのりと頬を赤く染めつつ、鮫の下半身を俺の反り立ったペニスに擦り付けてきた。
「やっぱり……こっちで気持ちよくなりたいなぁ♥」
「うわっ!ホーミィ!そこに擦り付けたらもう……!」
マーシャークしか持ってない特殊な鮫肌を男の性器に擦り付けるのは……色々とヤバい。
痛くはないのだが、擦られる度に逸物が熱くなる。しかも気持ちの良い疼きが肉棒に与えられ、まだそこまで激しく愛撫されてないのに、今にも大量の精液を噴出しそうだ。
「えへへ……すごい♥ビクビクって脈打ってるのが分かるよ♥」
「ホーミィ、そんなにされたら……もう出そうだ……!」
「それは嬉しいけど、まだ出しちゃダメ」
「え?そ、そんな……!」
すると、ホーミィは俺のペニスから魚の下半身を一旦離した。熱い快感が途中で止まり、ちょっと切ない気持ちになる。俺はもう、そこまでホーミィの身体を欲してしまったようだ。
「だって……ベインの精液はこっちに注いで欲しいんだもの♥」
ホーミィは上半身を起こし、人の上半身と鮫の下半身の境目に位置する部分に手を添えた。
そこには……愛液でグショグショに濡れてる女性の性器が見えた。
「それってもしかして……」
「うん……あたしのおマンコ♥ベインとキスしたり、肌を擦って精を貰ってたら、こんなに濡れちゃったの♥」
そう言いながら、ホーミィは自分の濡れた性器と俺の肉棒の先端を触れ合わせた。
「もう我慢できない……あたしの処女をベインにあげるね♥」
「えぇ!?処女って……あ、うぅっ!」
驚くのも束の間、ホーミィはゆっくりと腰を下ろして俺の勃起ペニスをマンコの中へ挿入し始めた。まだ先っぽしか入ってないにも関わらず、生暖かくてトロトロの快感が先端から伝わってくる。
「いっ!くぅ……ん!」
「待て!無理するなよ!」
「だ、大丈夫だよ。ベインはこのまま、じっとしてて……う、くぅん!」
痛く感じてるのは歪んでる表情からも一目瞭然。それなのに、ホーミィは途中で止まろうとはしないで俺のペニスをどんどん奥へ侵入させている。
「んん!はぁ……はぁ、入ったぁ……」
「ホ、ホーミィ……大丈夫か?」
やがて奥まで入り切った瞬間、僅かながらもホーミィの性器から血が流れてきた。いくら男の俺でも、今のホーミィがどれだけ痛い思いをしているのかなんてすぐに理解できた。
「はぁ、はぁ……やっと……この日が来たんだね♪あたし、大好きな男の人に初めてを奪ってもらうのが夢だったんだ……」
嬉しそうに話すホーミィの両目から薄っすらと涙があふれ出ていた。でもやっぱり相当痛いだろう。慣れてないのに無理をさせてはダメだ。
「ホーミィ、辛いんだったら無理しなくていいぞ。なんだったら、すぐに抜いてもいいから」
「え!?抜くって……やだ!そんなのやだぁ!」
「おわぁ!?」
抜いてもいいと言われた瞬間、ホーミィは繋がったまま俺に抱き付いてきた。
「ベインと一つになれたのに抜くなんて……ベインと離れるなんてやだよぉ!」
「で、でもまだ痛むんだろ?無理させたくないし……!」
「離れる方がよっぽど辛いの!このまま一緒にいたいのぉ!」
「ホーミィ……うっ!」
突然、ホーミィが俺の首筋に噛みついてきた。いや……噛んだというより甘嚙みと言うべきだろうか。牙が皮膚を傷つけない位に加減されてて、唇を主体に首筋をなぞるような動きだ。ちょっぴりくすぐったい。
「はむっはむ……ベイン、あたしを離さないで!ベイン!」
「お、落ち着けよホーミィ。大丈夫だから……」
「ん……あぁ……これ、いい♪なんだか安心する♪」
何度も甘噛みを繰り返すホーミィ。俺はそんなホーミィを優しく抱きしめて、宥めるように頭を撫でる。すると急に大人しくなり、トロンとした目で俺を見つめてきた。
なんかすごい劇的な変わりようだが……これもマーシャークの性質なのだろうか?
「じゃあ痛みも引いてきたし、そろそろ動くね……ん、んん!」
「うぁっ……!」
ホーミィが俺と繋がったまま腰を動かし始めた。初めてな所為かホーミィの中はすごくキツい。愛液でぐしょ濡れになってるとは言えぎゅうぎゅうに俺のペニスを締め付けてくる。ホーミィが腰を動かす度にマンコから滴る愛液の音が卑猥に聞こえて更に興奮してきた。
「きゃ、あはぁん!しゅごぉい♥きゃ、あぁん♥こんなの、初めてぇ!ん、んぁ、はぁ♥」
「ホ、ホーミィ、いきなり激しい……くっうぅ!」
「だって、だってぇ♥ベインのおちんちん、すっごく気持ちいいのぉ♥はぁん!こんなに気持ち良くなったら……ひゃっ!もう止まんないのぉ♥」
「で、でも、さっき血を流したばかりだし、あまり無理しなくてもいいぞ……!」
「あぁ……ベインは本当に優しいね♥こんなに素敵な人と結ばれて、幸せぇ……♥」
「ホーミィ……!」
処女を失ったばかりなのに、激しく腰を振る姿には遠慮も躊躇いも感じない。俺を貪欲に求めてる淫らな様は見ているだけでも愛おしい。俺の逸物で感じてくれてると思うと、男としての喜びが心から湧き上がってきた。
「はぁ、はぁ、ホーミィ……俺からも腰を突き上げても大丈夫か?」
「う、うん!いいよぉ♥寧ろお願い♥ベインも一緒に気持ちよくなろう♥」
「ホーミィ!」
「あ、きゃあっ!すごいぃ♥下から突き上げられるぅ♥」
このまま何もしないでいるのがもどかしくなり、我慢できなくなった俺はホーミィを抱きしめながら、その動きに合わせるように腰を突き上げ始めた。蜜壺の中の肉ヒダがペニスに絡みつき、上下に動くたびにヌルヌルの快感が駆け巡る。
「ベイン、キスしよう♥エッチしながらキスしよう♥ん、ちゅ……じゅるる、ちゅう♥」
「あ……ん、んん!」
ホーミィは俺に顔を近づけて、熱くてとろけるようなキスをしてきた。唇が触れ合った瞬間、いきなりホーミィの舌が俺の口内に侵入してきて、俺も応えるように自分の舌をホーミィと絡み合うように動かした。
「ん、ちゅ、ちゅちゅぅ!好き、好きぃ♥じゅ、じゅるぅ……ベイン♥大好き♥大好きだよぉ♥ベイン♥ちゅう、ちゅ♥」
身体が密着するようにキツく抱きしめられて、甘いキスをされて、時折愛を囁かれて、そして熱くて締め付けの強い蜜壺と俺の肉棒がピストン運動を繰り返してる。
容赦なく押し寄せる三つの快感の波には逆らう術なんて無かった。いや、あったとしても逆らう気なんて微塵も無い。俺の心と身体はもう完全にホーミィの虜になってしまった。
「ん……はぁ、はぁ、ホーミィ……俺、もう……!」
「え……もしかして、出る!?ベインのおちんちんから、熱い精液が出ちゃう!?」
「あ、あぁ……出そうだ……!」
もうそろそろ限界が近付いてきた。股間の内から溜まりに溜まった精液が、今にも爆発しそうな勢いでペニスの先端から出たがっているようだ。
「うん、いいよぉ♥ベインの精液、このままあたしの中に出してぇ!」
「な、中って……そんなことしていいのか!?」
「勿論♥あたしの子宮に注いで♥ベインの美味しい精液、たっぷり味わわせてぇ♥」
「ホ、ホーミィ!」
ホーミィの腰の動きがラストスパートに入った。これまでより強く激しく腰を打ち付けて、容赦なく射精を促してくる。一滴残らず受け止める気でいるのか、俺を抱きしめてる腕の力を強めてより身体を密着してきた。
「あはぁ!も、もうらめぇ♪あたしも、ひゃん!イッちゃいそう♪ベインのおちんちんでイカされちゃうよぉ♪ベイン、ベイン♪」
「うわ、ちょ、ヤバい……!」
身悶えながらも必死に腰を打ち付けてくるホーミィの姿を見ると、どうやら限界が来てるようだ。そんなに激しくされてしまったら……もう我慢できない!
「も、もうダメだ……出る!!」
ついに限界が来た。ホーミィのマンコの中で、俺の逸物の先端から火山の噴火のように精液が勢いよく飛び出てきた。長い間自己処理してなかったためか、自分でも驚くほどの量が噴出されていく。
「ひあぁぁ!もうイく!イッちゃうよぉ!!あ、はぁああ!んはぁぁっ!はぁぁぁぁぁん!!」
大量の精液が注がれた瞬間、ホーミィも官能的な叫びを上げて絶頂に達した。上半身を仰け反らせながら恍惚の笑みを浮かべている。
「あぁっ!す、すごいよぉ♥こんなに注がれちゃってるよぉ♥」
ビクビクと身体を痙攣しながらも、俺の精液を感じ取ってくれている。全身の力が一気に抜けたかのように、ホーミィは俺の方へ倒れこんできた。
「はぁ、はぁ……これが……恋人同士のセックスかぁ……なんて素敵なの♥」
肩で息をしながらも、潤んだ瞳で俺を見つめてくるホーミィ。愛くるしい眼差しを向けられて、胸の奥がドキンと弾んだ。
「ベイン……あたし……」
ホーミィに見惚れていると、彼女は徐に俺に顔を近づけて……
「もうベインが傍にいないと……生きていけないよ♥」
そっと、優しく唇を重ねてきた。
〜〜〜数分後〜〜〜
「えへへ♪ベインだ〜いすき♥」
「あはは……」
ホーミィはお姫様抱っこに似た姿勢で俺の膝に腰かけ、離れないように俺の首に腕を回して甘えている。時々首を甘噛みしてきたり、隙あらば唇を奪ってきたりして……あの熱い情事をひと段落させてからずっとこんな調子だ。
「そう言えばベインはなんでこんな島に居たの?ここって無人島だよね?」
「え?あ〜それがな、海の上で海賊と戦ったんだけど一方的に押されて負けちゃってな。乗ってた船を壊されて死に物狂いで泳ぎまくって、ここまでたどり着いたんだ」
「戦ったって……もしかして、ベインってどこかの軍隊の兵士だったりする?」
「いや、実は俺も海賊だったんだ。元々小さな町で働いてたんだけど、リストラされて自暴自棄になって海賊になったんだ。まぁ、たったの一週間だけどな」
「そっか……ベインも大変だったんだね」
でもまさか、こんな不幸だらけの人生を送ってる俺に嫁さんができるなんて思ってもみなかった。仕事をクビになって海賊に転身して、そしたらいきなり伝説の海賊にぼっこぼこにやられて、過酷でしんどいサバイバル生活が始まって、とにかく毎日辛い出来事ばかりだったけど、こうしてホーミィと結ばれたことだし結果オーライと言うべきか。
「ねぇベイン」
ホーミィは身体を俺の方に向けてきた。
「あたしね、ここから十分くらい泳いだところにある海底の洞窟に住んでるんだ」
「洞窟?」
「うん!ベインさえ良かったら、あたしの家で一緒に暮らそうよ!」
ホーミィと暮らす、か……そりゃあ俺としても是非そうしたい。この無人島での生活も終わらせたいし、何よりも俺だってホーミィと一緒にいたいと思っているから、まさに願ったりかなったりだ。
でも……
「暮らすって……海底にあるんだろ?俺、普通の人間だし、海の中で呼吸なんて出来ないから無理だよ……」
「大丈夫!そんなのすぐ解決できる当てがあるんだ!」
俺が考えていた問題をよそに、ホーミィは不敵な笑みを浮かべてみせた。
「あたしの友達にシー・ビショップの子がいてね、人間の男を海中で生きられる身体にすることができるんだ!その子に頼めば、ベインも海の中で暮らすことができるよ!」
「ホントか?それ凄いな……!」
「でしょ!?そうすればあたしの洞窟で一緒に暮らせる!ね?良い考えでしょ?」
かなり深い問題かと思ったら、意外にも簡単に解決できそうだ。
となると……俺が出す答えはただ一つ。
「そうだな……よし!ホーミィ、俺からも頼む!是非ともホーミィと一緒に居させてくれ!」
「っ!!……嬉しい……嬉しいよ、ベイン!!」
「わわっ!」
ホーミィは一瞬だけ驚いてみせたが、すぐに嬉しそうに微笑み、両目に涙を溜めながら俺に抱き付いてきた。
「ホントに嬉しいよ……!これからもベインと一緒に居られるんだね……!」
俺に身体を預けながら静かに涙の雫を落とすホーミィ。今更だけど、結構涙もろい性格のようだ。でもそんな所もまた愛おしく思えるから、本当に俺はホーミィに惚れてしまったんだな……。
「ホーミィ……俺、大した男じゃないけど、ホーミィを幸せにするために頑張るからな」
「もう……幸せにしてくれるのは嬉しいけど、大した男じゃないなんて言わないの!」
ホーミィは俺の目をまっすぐ見つめながら、眩しい笑顔を向けてきた。
「ベインはね、私にとってかけがえのない大切な人だよ!」
「ホーミィ……」
その熱い眼差しに吸い寄せられるように、俺たちは同時に顔を近づけて熱い口付けを交わす。
泣き虫で甘えん坊な鮫の人魚。そんなホーミィとの甘くて幸せな生活が始まろうとしていた……。
快晴の空、穏やかな風、青く透き通る海。
目の前に広がる光景はまさしく絶景と言えるだろう。バカンスなら文句の言いようがないシチュエーションだ。
だが、今の俺の気分は良いとは言えない。寧ろ目の前の景色とは対照的に、暗くてドンヨリとした心境だ。
と言うのも……俺は観光客じゃない。それに此処は休暇を楽しむ為のオアシスでもない。
「遭難してから今日で五日目か……意外と生き長らえれるもんだな」
早い話、俺は遭難者だ。そして此処は無人島。住人はおろか、野生動物すら見当たらない島だ。
「ちっきしょー……なんでこんな目に遭わなきゃならねぇんだよぉ……」
砂浜に立ちすくみ、波の静かなせせらぎを聞きながら、俺は過去に起きた人生最大の不幸を思い返した。
事の始まりは五日前……こう見えて俺は海賊だった。ちょっとばかり人遣いの荒い船長の下でせっせと働く生活を送っていたが、それなりに充実していた。
だが、あろうことか俺の海賊人生はたった一週間で終わる羽目になってしまった。
あの……超大物海賊の手によって。
『我は黒ひげ!歯向かう者は吹き飛ばしてくれるわ!!』
……よりによって初めての海戦の相手が伝説の海賊だなんて、全くついてなかった。
俺ら下っ端は黒ひげに敵う道理なんて無いと思い、船長に逃げるよう説得したが、船長は首を縦に振らなかった。それどころか、自ら黒ひげの首を取ろうと先陣切って刃を構えたのだが……。
『覚悟しろ黒ひげ!一瞬で決着を着けてやる!』
『……爆破』
パチンッ!
ドカァァァァァン!!
『あへぇぇぇぇぇぇぇ!!』
以上、船長と黒ひげの戦いの様子。言葉通り一瞬で片付いちゃったよ、黒ひげの勝ちで。船長を空の彼方へとぶっ飛ばしてお星様にしちゃった。
しかし、指を鳴らしただけで爆破を起こすなんて、あれにはビックリさせられた。あの能力を目の当たりにして誰もがヤバいと悟り、早く逃げようと思ったのだけれど……。
『仕掛けておいて逃げるでないわぁ!!』
ドカァァァァァン!!
ドカァァァァァン!!
ドカァァァァァン!!
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『お助けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
『船長のバカヤロぉぉぉぉ!!』
喧嘩を売られておきながら逃げられるのが気に食わなかったのか、黒ひげの攻撃は本当に容赦無かった。爆破は俺らの海賊船まで巻き込むほどの威力で、たちまち焼き尽くされてしまった。
燃える海賊船の中、逃亡を決断した俺は海へ飛び込んで必死に泳いだ。どこへ向かっているのか分からなかったけど、それでも泳いで、泳いで泳いで泳ぎまくった。
「あ〜やっべぇ……喉も渇いてきた……」
その末にたどり着いたのが、この無人島。島に着いた瞬間には力尽きて気絶しちゃったけど、目を覚ました時には体力が回復していた。それから俺は島を散策しながら今日まで生き延びてきたが……何分食料と言えるものが極端に少ないこの島で生き続けるのは無理だと思えてきた。
そのうち、商船とか客船とかがこの近くを通る。最悪、海賊船でもいい。そんな淡い希望を抱きながら海を眺めているが、今日にいたるまで船なんて一隻も通らなかった。一人で過ごすうちに助からないんじゃないかと思うようになってきた。気力と体力は徐々に減る一方だけど、助かる希望はもっともっと減少するのみだ。
「……はぁ……」
あ〜あ……こんなことになるのなら、海賊にならなきゃ良かった。職を失ってから自暴自棄になって、勢い余って海賊になった時からこうなる運命だったのかもしれない。今思えば、もう少し冷静になって真面目に仕事を探した方がマシだったようだ。
……俺……本当にどうすりゃいいんだよ……。
「……ん?」
絶望感に浸っている最中だったが……ふと、海の様子がなんだか変だってことに気付いた。いや、正確には……海の一部がおかしくなってるって言った方がいいか。
「なんだあれ?」
僅かながら、海の中に黒いシルエットが潜んでいるのが見えた。
その影はどんどん大きくなっていく。まるで……こっちに近づいて来てるみたいだ。いや、間違いなくこっちに向かってる。
「あれは……魚?」
影の形がぼんやりした楕円形から徐々にハッキリと具体的に映ってきた。
「いや……人魚!?」
最初こそ魚かと思ったが、上半身の辺りは人間の身体に見えた。
と言うことは……もしかして人魚か!?
やった!ようやく希望の光が見えてきたぞ!
「おーい!こっちだー!助けてくれー!!」
俺は精一杯の大声を上げて人魚に呼びかけた。
人魚は魔物の中でも比較的大人しい性格だ。俺の話も耳を傾けてくれるはず。事情を説明して助けを呼んでもらおう。
「おーい!こっちに来てくれー!!」
俺の叫びに応えるように、人魚は泳ぐ速度を上げてこっちに向かってきてる。
ちゃんと聞こえてるようだ。よかった……これで助かる……!
安堵のため息を吐くと、人魚の身体が海面から出てきた。これでやっと人魚の正体が……。
「……え……」
……安心したのも束の間。人魚の身体を見た瞬間、背中から悪感を感じた。
天国から地獄へ堕ちるとは……このことだろうか……。
「ちょ……ちょっと待てよ……あれって……」
人魚の上半身は思ってたものと違っていた。
目つきは獲物を狙う猛獣みたいに鋭くて、口の隙間から鋭い牙が生えている。俺が想像していた穏やかな人魚のイメージとは正反対に、なんだか凶暴な雰囲気を晒している。
「まさか……まさか……!?」
更に驚くべきなのは、その下半身だ。確かに人魚と同じように魚の形をしているが、あれは明らかに普通の魚じゃない。
あの黒くて逞しいボディは、どう見てもあれだ。
そう……まさにサメ。海のギャングとも呼ばれてるあの獰猛な魚類そのものだ。
「嘘だろ……こんなのありかよ!」
俺は……あの魔物に見覚えがあった。
そうだ……間違いない。
なんで……なんで……!
「よりによってマーシャークかよ!!」
そう……こっちに近づいて来てるのは『人喰い鮫』として有名な凶暴な魔物、マーシャークだった!
「シャーハー!やっぱり男だった!あたしを呼んだのはアンタかい?あんなに積極的に呼んでくれるなんて嬉しいねぇ!」
俺に近付いてきたマーシャークは、口元の歯を不気味に光らせるように不敵な笑みを浮かべた。
間違いない……このマーシャーク、助けに来たんじゃなくて俺を食べに来たんだ!
やっと地獄のサバイバル生活におさらば出来ると思ったのに……そんなのありかよ!
「呼んでない!誰もお前なんか呼んでないよ!」
この鮫の人魚に食べられると思うと、恐怖で身体が震え上がる。
なんとかしてこの場から離れろと自分自身に言い聞かせて、ゆっくりと後ずさりする。
「あぁ?おいおい、あんなに大声上げといてそれは無いだろ。こっちに来いとか言ったのはアンタだろうが」
「それは……俺を助けて欲しくて呼んだだけだ!お前に食われるつもりは無いよ!早くどっか行けよ!」
「なんだよ!呼んでおいてあんまりじゃないか!」
「俺は鮫になんか用は無い!帰ってくれ!人食い鮫め!」
気迫に負けてはいけない。そう思った俺は相手を威嚇するように敵意をむき出しにしながら声を張り上げた。
相手は人魚だ。海中だと勝ち目は無いが、陸の奥まで走ってしまえばこっちのものだ。何とか隙を見つけて逃げ出さないと……!
「……お前までそんなことを言うのかよ……!」
「え?」
突然、声を絞るかのようにマーシャークが呟いた。その表情には、なんだか怒りと悲しみが入り混じったように見える。
なんだ?一体、どうしたんだ……?
「もうなんなんだよぉ!」
ザパァン!!
「うわぁ!?」
突然の出来事だった。マーシャークが海面から飛び出して、俺に飛びかかってきた。あまりにも凄まじい勢いになすすべもなく、俺はマーシャークに馬乗りにされてしまった。
しまった……俺としたことが。
「うわ、ちょ、やめてくれ!俺なんか美味くないぞ!」
マーシャークが俺を睨みながら徐に口を開いた。
マズイ!非常にマズイ!このままじゃ食われる!あんな牙に噛みつかれたらひとたまりもない!
畜生!俺の命運も……ここまでか……!?
覚悟を決めたその瞬間……
「なんだよ!なんだってんだよ!そんなにあたしが怖いか!?そんなにあたしと一緒に居るのが嫌か!?なんでそんなにあたしを嫌うんだよ!なぁ、どうして!?」
「……え?え?」
……予想外だった。てっきり噛みついてくるのかと思ったら、荒い声でこんなことを言ってきたのだ。
しかも……なんだか泣きそうな表情を浮かべている。
「今まで……人間たちから人喰いなんて呼ばれて怖がられて、遠ざけられてきたから寂しくて……」
「あ、あの……とりあえず離して……」
「そしたら久しぶりに男の気配を感じてちょっと様子を見に来てみたら、お前の方からあたしを呼んでくれてさ……」
「だから、俺は……」
「なのに……なのに……」
最初が怒気を含めてた声が、今にも消えそうなくらいに弱弱しくなってくる。
「……うぅ……グスッ……」
……え?泣いてる?
「こんなの……あんまりだよぉ……せっかく人間と仲良くなれると思ったのに……うぅ……なんで……なんであたしは怖がられてばかりなんだよぉ……ひっぐ……」
……正直、戸惑うしかなかった。
俺に跨ってるマーシャークは、両目の鋭い目から大粒の涙をポロポロと零している。弱弱しく泣き言を吐いてるその姿は、か弱い少女と何の変りもなかった。
マーシャークはもっと凶暴で怖い魔物かと思っていたんだが……俺が思い浮かんでいたイメージが間違ってたのか?
「……ごめん……嫌だったよな……」
マーシャークは、どこか悲しそうな表情を浮かべながら俺から離れた。
「あたし……もう行くね。これ以上嫌われたくないし……それじゃあ、元気でね……」
それだけ言うと、マーシャークは海の方へゆっくりと進んで行った。
……結果的には助かったんだろうけど……なんだか凄い罪悪感が拭えない。寧ろ俺の方が酷い事をしてしまったとしか思えない……。
……ん?
「ちょ、ちょっと待て!」
「え?」
俺に呼びかけられてマーシャークは歩みを止めて俺へ振り返った。去っていこうとしたマーシャークの背びれに、何やら小さな傷のようなものが見える。あの具合からして見ると、ごく最近に出来たばかりにものだとすぐに判断出来た。
「なぁ、その背びれの傷……」
「あぁこれ?ついさっき、海の漁師たちに猟銃で撃たれてな……まぁ掠っただけだし大丈夫だ」
やはり思った通り人為的な傷だったようだ。銃で撃たれたのなら、その大きさに納得できる。
それにしても……銃で撃ってくるなんて酷い事をするものだ。
……って、俺もさっきまで怖がって突き放したし、偉そうなことを言える立場でもないか。
「悪いがこのままジッとしててくれ。俺が手当してやるから」
流石にこのまま放っておくわけにはいかない。俺は傷の手当てをしようとマーシャークに近付いたが……
「い、いいよこんなの!放っておけば治るから!」
マーシャークは背びれを触らせまいとばかりに、俺に向き直った。更に牙をむき出しにして威嚇してくる。
「待てよ!手当しないと悪化するぞ!治りも遅くなるし、早く処置しないとダメだ!」
「大丈夫だ!あたしの事は構わないでくれよ!大体、ホントはあたしと一緒に居るのが嫌なくせに、無理させる方が余計辛いんだよ!」
「無理なんかしてない!こんな怪我を負ってる君を見捨てるなんて、俺にはできないよ!!」
「っ!!」
尚も手当を拒むマーシャークに思わず声を上げてしまった。そのせいかマーシャークは一瞬だけ怯んだ様子を見せたが、それでも威嚇する姿勢は変わらない。
「……ごめん、大声出して。でも大丈夫だから……な?」
ムキになってしまったことを反省しつつ、俺はマーシャークの背後に回り、背びれに触れるよう片膝を地面に付けた。
「こんなこともあろうかと、持っててよかった」
俺は衣服のポケットから手のひらサイズの小さな箱を取り出した。これはポケットサイズの携帯救急箱で、中には傷の手当てをするための道具が入っている。まぁほんの気持ち程度でしかならないけど、今の傷を手当するだけならちょうどいいだろう。
「すぐ終わるから、ちょっと我慢しててくれよ」
救急箱から傷に効く塗り薬を取り出して、適量を患部に塗り始めた。
なんだかザラザラした感触の背びれだ……って、そうか。これが鮫肌と言うやつか。
「……なんで?」
「ん?」
「なんで……そんなに優しくしてくれるんだ?さっきまであたしのこと、嫌ってたのに……」
俺の方を振り向いてるマーシャークは、威嚇こそ止めたものの、戸惑いの視線を送ってきた。
「え?別に嫌いなんて言った憶えはないけど?」
「じゃあなんであんなに拒絶したのさ」
「いや、さっきは食い殺されると思って……」
「……なんか誤解してない?あたしさぁ、アンタを殺すつもりはなかったんだよ。と言うか、食うつもりもない」
「え?」
ちょっと驚きながらも、箱から包帯を取り出して背びれに巻き付け始めた。
「だいたい、私たちマーシャークが人間を食い殺す訳ないんだよ。そりゃあちょっと荒っぽいところはあるかもしれないけど、少なくとも人の命を奪う真似は絶対にやらないんだ」
「そうなの?じゃあ、俺の勘違い?」
「そうだな……まぁ、人喰いって呼ばれるのも仕方ないっちゃ仕方ないんだけどな」
なんだ、よかった……。
食われる心配がなくなってちょっと安心。
「……よし、完了!」
「もう終わったのか?」
「言っただろ?すぐ終わるって」
そんなこんだしてる内に、マーシャークの背びれの手当てが終わった。
と言っても応急処置程度のものだが……まぁ何もしないよりマシだろう。
「へぇ……意外と器用なんだな」
「まぁな。細かい作業には自信あるんだ」
自分で言うのも何だが、昔から手先の器用さには自信がある。海賊をやってた時だって、大雑把な連中には出来ない仕事を難なくこなしてきたくらいだ。
……まぁ、その反面体力や腕っぷしはダメダメだけど……。
……って、そうだ。まずはさっきの仕打ちを謝らないとな。
「……なぁ、酷いこと言ってごめんな。まさか、あんなに泣くほど辛かったなんて……」
お詫びを聞いたマーシャークは、最初こそ目を丸くしたが、やがて俺に向き直って優しく微笑みかけてきた。
「……ううん、もう気にしてないから平気だよ。それに……なんだか、嬉しかった」
「え?」
嬉しかった……唐突な言葉に疑問を抱いていると、マーシャークは俺の手を掴み、両手で包むように優しく握ってきた。
「あたしさ……本当は人間とも仲良くなりたいって思ってたけど、こんな見た目だから度々怖がられてさ。近付いたら悲鳴上げられたり、海で溺れてる人を助けようとしたら逃げられたり……」
……まぁ、そりゃそうだよな。
なんて口が裂けても言えなかった。
「でもね……アンタは違った。この場から去ろうとしたあたしを逆に呼び止めて、怪我の手当をしてくれて……こんなに優しくしてくれたの、アンタが初めてだよ。ホントに嬉しい……!」
そう話すマーシャークの両目から、またしても大粒の涙が流れてきた。
ただ……今流れてる涙はさっきのものとは違って、何だか温かみを感じる涙だ。
……なんだろう……この子、よく見ると結構可愛い。それに優しそうな笑顔だし、どう見ても人に害をなすとは思えない。誤解だったとは言え、ついさっき怖がって思わず暴言を吐いてしまったことを改めて後悔した。
「ねぇアンタ、名前はなんて言うんだい?」
「え?ああ、ベイン。俺はベインだ」
「ベインか……あ、あたしはホーミィ。マーシャークのホーミィだ」
マーシャーク……いや、ホーミィは両手で包んでる俺の手を自分の方に引き寄せて、青白い頬に触れさせた。
「ベイン……ありがとう!!」
「っ!!」
……とびっきり明るい笑顔を向けられた瞬間、俺の胸の奥が大きく弾んだ。
やっぱりこの子、すごく可愛いな。ホーミィになら食われてもいいかも……なんてな。
「えへへ……ベインの手、大きくてあったかい♥」
ホーミィは更に俺の手に頬をこすり付けてきた。その姿ときたら、例えるなら主人に甘える子猫みたいでなんとも愛らしい。とても鮫の魔物とは思えない。
見た目と行動のギャップに和んでいると……。
「……へへ♥」
「ちょ、ホーミィ!?」
突然、ホーミィが俺に抱き着いてきた。あまりの勢いに尻餅を付いてしまったが、それでもホーミィは俺から離れようとしない。
「ん〜♥ベインってホントにあったかいなぁ♥」
「ホ、ホーミィ……」
俺の肩口に額を付けて、身体をグイグイと密着させてきた。ザラザラした鮫肌が俺の身体を擦ってくるが……痛みは感じないし、不快に思わない。
……いや、それよりも……ホーミィの……ホーミィの胸が……!
……てか、ホーミィって結構胸大きいんだな。それに柔らかい……!
「ベイン♥ベイン♥」
「ちょ、おい、どうしちゃったんだよ……」
嬉しそうな顔で甘えるのを止めようとしないホーミィ。
なんだか様子がおかしい……いや……おかしいのは俺かもしれない。
なんと言うか、密着する度に身体が熱くなってる気がする。摩擦とか物理的な熱じゃなくて、こう……身体の内側から熱いものが出てくる感じだ。
ホーミィの大きい胸が当たってるせいかと考えたが、それ以外にも何かあるとしか思えない。
「ホ、ホーミィ、待ってくれ……俺、なんか身体が……!」
やっぱりおかしい……擦られてる部分が変な感覚になってきてる。
これは……疼いてる、と言うべきだろうか?身体から何かが放出されてるような気分だ。いつもと違うのは間違いないが、不思議にも不快な感じにはならない。
寧ろ……身体がこの疼きをもっと欲してるような気がした。特に下半身が。
「……あ♥」
ホーミィに俺の固くなった股間の存在に気付かれてしまった。
「ベインのここ、元気になってきてるよ……♥」
「ちょっ!?なにやって……!」
するとホーミィはズボンの上から俺の股間に触り、手のひらで優しくいたわるように撫で回してきた。
ヤバい……ここ最近は無人島での過酷なサバイバル生活に明け暮れて、全然抜いてないから服越しなのに敏感になってる……!
「ベイン、このままじゃ辛いでしょ?私が気持ち良くしてあげるからね♥」
「わぁ!?」
突然ホーミィは俺を押し倒し、さっきのように馬乗り状態となった。
「こういうこと初めてだけど、ベインのために頑張るからね」
「え……って!ちょちょちょちょちょ!待て!待てってば!」
「やだ♪」
そう言いながらホーミィは俺のズボンに手を伸ばしてきた。それを見た俺は慌てて止めようとしたが、聞く耳持たずに素早くベルトを外し始めた。
「や、やめてくれ!俺は外で露出する趣味なんか無い!」
「そんなこと言われても無理。我慢できない」
「そ、それにしばらくすれば自然と収まるから!」
「それは大変!尚更早く気持ち良くしてあげなくちゃ♥」
「なんでそうなるの……って、意外とパワーある……!」
長いサバイバル生活のせいで体力が失っている所為か、ホーミィの力が思ったより強すぎるのか、思うように抵抗できない。あれよあれよと言う間にズボンごと下着を脱がされてしまった。
「おぉ〜すっごいビンビンだね……!」
「み、見ないでくれ!恥ずかしい!」
「え?でも、あたしとくっついてこんな状態になったんでしょ?あたしとしては嬉しいなぁ♥」
ガチガチに勃起した俺の逸物を目にして、目を輝かせるホーミィ。こんな野外でちんちんを丸出ししてるだけでも顔から火が出るほどなのに、そんなにマジマジと見つめられると余計恥ずかしい……。
……と言うか、我がムスコながらこの状態はなんだかおかしく思えた。さっきホーミィに抱き着かれて、大きなおっぱいを押し付けられたのもあるけど、それだけでこんなに反り立つものだろうか?
そう言えば、あの鮫肌を擦られてから身体が熱くなってるような……?
「ええっと、こうすれば良いんだよね……?」
「うっ!?」
ホーミィは俺のペニスを掴み、上下に優しくしごき始めた。
あ、ヤバい……これ気持ちいい……!
「待てホーミィ、本当にダメだって……!」
「えぇ?気持ちよくない?」
「そうじゃなくて、今の俺、汚いからやめた方がいいよ!」
「別に汚いなんて思ってないよ?」
「いやだから、ここ最近風呂にも入ってないから身体中汗まみれなんだよ!」
「それはそれで興奮するじゃない」
「興奮って……!」
そう……無人島での生活には風呂なんて贅沢なものは無い。今の俺は間違いなく不潔だろう。こんな状態でホーミィと密着するような真似は忍びない。
だが、それでもホーミィは俺のペニスを扱く手を止めようとしない。どんどん俺の肉棒が脈を打ってますます固くなってくる。
「……ベイン……」
突然、ホーミィがどこか寂しそうな表情を俺に向けてきた。さっきみたいに今にも泣きそうな目で俺を見ている。
「ベインはあたしとエッチなことするの、そんなに嫌?」
「え?い、嫌とかじゃなくてさ。今日会ったばかりなのに、こういうことをやらせるのは悪いと言うか……」
「悪いなんて思わないでよ。あたし、ベインのために何でもしてあげたいの。それに……」
ホーミィは徐に顔を俺に近付けて、優しく微笑みながら囁くようにこう言ってきた。
「あたし……ベインのこと、好きになったの!大好きなの!」
「……え?えぇ!?」
まさかの愛の告白!?
いきなりの展開に頭の中がグルグルと回ってきた。今まで悲しいくらいに女と縁が無かった俺には喜ばしい出来事だろう。だが、慣れないシチュエーションなだけにどうすれば良いのか分からず若干混乱している。
「ベインはどう?あたしのこと好き?」
「え!?そ、それは、その……」
「……もしかして、本当はあたしみたいな女は嫌いか?」
「それはない!断じてそんなことないぞ!」
またホーミィが泣きそうになるのを見て慌てて否定した。
嫌いじゃないのは間違いない。ホーミィは……見た目は可愛いし、胸は大きいし、性格も俺的には愛らしく思える。
寧ろ……こんな良い子に好かれるのは本当に嬉しいくらいだ。
「ホント!?じゃあ……あたしのこと……好き?」
「それは……ああ……好きだよ」
どう考えても……俺にはこう答えるしかなかった。
「……うぅ……ひぐっ……!」
「え!?ちょ、なんで泣くの!?」
すると、どういう訳かいきなりホーミィはすすり泣きだした。ホーミィの涙が俺の頬に滴り落ちたが、そんなことを気にしてる余裕も無かった。
「ベインから好きって言われて……初めて心から愛した人に好きなんて言われて、もうホントに嬉しくて……!」
……俺に好きなんて言われて泣いたのか?
涙流すくらい感極まったのか?
そんなに……俺のことを愛してくれてるのか?
どんだけ健気なんだよ、ホーミィって子は!
その情熱的な想いに、俺の心は射貫かれてしまった。
「えへへ……ベイン……♪」
ホーミィは指で涙を拭うと、また温かい笑みを俺の顔に近付けた。そして……!
「ん……ちゅっ♥」
「ん!?」
ホーミィの唇が俺の唇と重なった。
「ちゅ、ちゅぅ……んん、んちゅう……♥」
「んん……!」
ホーミィの方から何度も啄むようにキスしてくる。俺ももう抗う気力が無い。寧ろこうしていたい想いから、大人しくされるがままの状態となった。
「ちゅう……へへ、キスって初めてだけど気持ちいいね♥」
「え、そうだったの?」
「うん、初めては好きになった人とやるって決めてたんだ。でも良かった……その願いがやっと叶ったんだから♪ん〜ちゅっ♥」
またしてもホーミィの方から熱いキスをしてきた。今度は身体をもっと強く押し付けるように上からのしかかってくる。ホーミィの柔らかい胸の感触が俺の胸板から伝わってきた。
「んん、んちゅ……好き……しゅきぃ♥ちゅちゅ……じゅるる……ちゅう……♥」
口の隙間からねじ込むようにホーミィの舌が侵入してきた。意外にも温かくてヌルヌルの舌が俺の唇や舌を舐める度に、とろけるような快感に包み込まれる。
ホーミィもキスしながら快感に悶えるように俺の上で身体を動かしている。その度にザラザラの鮫肌が擦り、ますます俺の身体に熱と疼きを与えていた。
「んはぁ……感じる、感じるよぉ♥こうやって身体を重ねると、ベインの熱い精が私に注がれるのぉ♥」
「せ、精?なんだそれ?」
「えっと、人間が持ってるエネルギー……って言えば良いのかな?あたしたちマーシャークは、人間の男にこうやって鮫肌を擦ると精を放出させるの。それと同時に擦った人間の身体を熱くしたり疼く感覚を与えたりするんだ」
「ああ、それでか……!」
ここにきてようやく合点がいった。俺の身体の異変はホーミィの鮫肌が原因だったのか。
「ねぇベイン……キスも良いけど……」
ホーミィはほんのりと頬を赤く染めつつ、鮫の下半身を俺の反り立ったペニスに擦り付けてきた。
「やっぱり……こっちで気持ちよくなりたいなぁ♥」
「うわっ!ホーミィ!そこに擦り付けたらもう……!」
マーシャークしか持ってない特殊な鮫肌を男の性器に擦り付けるのは……色々とヤバい。
痛くはないのだが、擦られる度に逸物が熱くなる。しかも気持ちの良い疼きが肉棒に与えられ、まだそこまで激しく愛撫されてないのに、今にも大量の精液を噴出しそうだ。
「えへへ……すごい♥ビクビクって脈打ってるのが分かるよ♥」
「ホーミィ、そんなにされたら……もう出そうだ……!」
「それは嬉しいけど、まだ出しちゃダメ」
「え?そ、そんな……!」
すると、ホーミィは俺のペニスから魚の下半身を一旦離した。熱い快感が途中で止まり、ちょっと切ない気持ちになる。俺はもう、そこまでホーミィの身体を欲してしまったようだ。
「だって……ベインの精液はこっちに注いで欲しいんだもの♥」
ホーミィは上半身を起こし、人の上半身と鮫の下半身の境目に位置する部分に手を添えた。
そこには……愛液でグショグショに濡れてる女性の性器が見えた。
「それってもしかして……」
「うん……あたしのおマンコ♥ベインとキスしたり、肌を擦って精を貰ってたら、こんなに濡れちゃったの♥」
そう言いながら、ホーミィは自分の濡れた性器と俺の肉棒の先端を触れ合わせた。
「もう我慢できない……あたしの処女をベインにあげるね♥」
「えぇ!?処女って……あ、うぅっ!」
驚くのも束の間、ホーミィはゆっくりと腰を下ろして俺の勃起ペニスをマンコの中へ挿入し始めた。まだ先っぽしか入ってないにも関わらず、生暖かくてトロトロの快感が先端から伝わってくる。
「いっ!くぅ……ん!」
「待て!無理するなよ!」
「だ、大丈夫だよ。ベインはこのまま、じっとしてて……う、くぅん!」
痛く感じてるのは歪んでる表情からも一目瞭然。それなのに、ホーミィは途中で止まろうとはしないで俺のペニスをどんどん奥へ侵入させている。
「んん!はぁ……はぁ、入ったぁ……」
「ホ、ホーミィ……大丈夫か?」
やがて奥まで入り切った瞬間、僅かながらもホーミィの性器から血が流れてきた。いくら男の俺でも、今のホーミィがどれだけ痛い思いをしているのかなんてすぐに理解できた。
「はぁ、はぁ……やっと……この日が来たんだね♪あたし、大好きな男の人に初めてを奪ってもらうのが夢だったんだ……」
嬉しそうに話すホーミィの両目から薄っすらと涙があふれ出ていた。でもやっぱり相当痛いだろう。慣れてないのに無理をさせてはダメだ。
「ホーミィ、辛いんだったら無理しなくていいぞ。なんだったら、すぐに抜いてもいいから」
「え!?抜くって……やだ!そんなのやだぁ!」
「おわぁ!?」
抜いてもいいと言われた瞬間、ホーミィは繋がったまま俺に抱き付いてきた。
「ベインと一つになれたのに抜くなんて……ベインと離れるなんてやだよぉ!」
「で、でもまだ痛むんだろ?無理させたくないし……!」
「離れる方がよっぽど辛いの!このまま一緒にいたいのぉ!」
「ホーミィ……うっ!」
突然、ホーミィが俺の首筋に噛みついてきた。いや……噛んだというより甘嚙みと言うべきだろうか。牙が皮膚を傷つけない位に加減されてて、唇を主体に首筋をなぞるような動きだ。ちょっぴりくすぐったい。
「はむっはむ……ベイン、あたしを離さないで!ベイン!」
「お、落ち着けよホーミィ。大丈夫だから……」
「ん……あぁ……これ、いい♪なんだか安心する♪」
何度も甘噛みを繰り返すホーミィ。俺はそんなホーミィを優しく抱きしめて、宥めるように頭を撫でる。すると急に大人しくなり、トロンとした目で俺を見つめてきた。
なんかすごい劇的な変わりようだが……これもマーシャークの性質なのだろうか?
「じゃあ痛みも引いてきたし、そろそろ動くね……ん、んん!」
「うぁっ……!」
ホーミィが俺と繋がったまま腰を動かし始めた。初めてな所為かホーミィの中はすごくキツい。愛液でぐしょ濡れになってるとは言えぎゅうぎゅうに俺のペニスを締め付けてくる。ホーミィが腰を動かす度にマンコから滴る愛液の音が卑猥に聞こえて更に興奮してきた。
「きゃ、あはぁん!しゅごぉい♥きゃ、あぁん♥こんなの、初めてぇ!ん、んぁ、はぁ♥」
「ホ、ホーミィ、いきなり激しい……くっうぅ!」
「だって、だってぇ♥ベインのおちんちん、すっごく気持ちいいのぉ♥はぁん!こんなに気持ち良くなったら……ひゃっ!もう止まんないのぉ♥」
「で、でも、さっき血を流したばかりだし、あまり無理しなくてもいいぞ……!」
「あぁ……ベインは本当に優しいね♥こんなに素敵な人と結ばれて、幸せぇ……♥」
「ホーミィ……!」
処女を失ったばかりなのに、激しく腰を振る姿には遠慮も躊躇いも感じない。俺を貪欲に求めてる淫らな様は見ているだけでも愛おしい。俺の逸物で感じてくれてると思うと、男としての喜びが心から湧き上がってきた。
「はぁ、はぁ、ホーミィ……俺からも腰を突き上げても大丈夫か?」
「う、うん!いいよぉ♥寧ろお願い♥ベインも一緒に気持ちよくなろう♥」
「ホーミィ!」
「あ、きゃあっ!すごいぃ♥下から突き上げられるぅ♥」
このまま何もしないでいるのがもどかしくなり、我慢できなくなった俺はホーミィを抱きしめながら、その動きに合わせるように腰を突き上げ始めた。蜜壺の中の肉ヒダがペニスに絡みつき、上下に動くたびにヌルヌルの快感が駆け巡る。
「ベイン、キスしよう♥エッチしながらキスしよう♥ん、ちゅ……じゅるる、ちゅう♥」
「あ……ん、んん!」
ホーミィは俺に顔を近づけて、熱くてとろけるようなキスをしてきた。唇が触れ合った瞬間、いきなりホーミィの舌が俺の口内に侵入してきて、俺も応えるように自分の舌をホーミィと絡み合うように動かした。
「ん、ちゅ、ちゅちゅぅ!好き、好きぃ♥じゅ、じゅるぅ……ベイン♥大好き♥大好きだよぉ♥ベイン♥ちゅう、ちゅ♥」
身体が密着するようにキツく抱きしめられて、甘いキスをされて、時折愛を囁かれて、そして熱くて締め付けの強い蜜壺と俺の肉棒がピストン運動を繰り返してる。
容赦なく押し寄せる三つの快感の波には逆らう術なんて無かった。いや、あったとしても逆らう気なんて微塵も無い。俺の心と身体はもう完全にホーミィの虜になってしまった。
「ん……はぁ、はぁ、ホーミィ……俺、もう……!」
「え……もしかして、出る!?ベインのおちんちんから、熱い精液が出ちゃう!?」
「あ、あぁ……出そうだ……!」
もうそろそろ限界が近付いてきた。股間の内から溜まりに溜まった精液が、今にも爆発しそうな勢いでペニスの先端から出たがっているようだ。
「うん、いいよぉ♥ベインの精液、このままあたしの中に出してぇ!」
「な、中って……そんなことしていいのか!?」
「勿論♥あたしの子宮に注いで♥ベインの美味しい精液、たっぷり味わわせてぇ♥」
「ホ、ホーミィ!」
ホーミィの腰の動きがラストスパートに入った。これまでより強く激しく腰を打ち付けて、容赦なく射精を促してくる。一滴残らず受け止める気でいるのか、俺を抱きしめてる腕の力を強めてより身体を密着してきた。
「あはぁ!も、もうらめぇ♪あたしも、ひゃん!イッちゃいそう♪ベインのおちんちんでイカされちゃうよぉ♪ベイン、ベイン♪」
「うわ、ちょ、ヤバい……!」
身悶えながらも必死に腰を打ち付けてくるホーミィの姿を見ると、どうやら限界が来てるようだ。そんなに激しくされてしまったら……もう我慢できない!
「も、もうダメだ……出る!!」
ついに限界が来た。ホーミィのマンコの中で、俺の逸物の先端から火山の噴火のように精液が勢いよく飛び出てきた。長い間自己処理してなかったためか、自分でも驚くほどの量が噴出されていく。
「ひあぁぁ!もうイく!イッちゃうよぉ!!あ、はぁああ!んはぁぁっ!はぁぁぁぁぁん!!」
大量の精液が注がれた瞬間、ホーミィも官能的な叫びを上げて絶頂に達した。上半身を仰け反らせながら恍惚の笑みを浮かべている。
「あぁっ!す、すごいよぉ♥こんなに注がれちゃってるよぉ♥」
ビクビクと身体を痙攣しながらも、俺の精液を感じ取ってくれている。全身の力が一気に抜けたかのように、ホーミィは俺の方へ倒れこんできた。
「はぁ、はぁ……これが……恋人同士のセックスかぁ……なんて素敵なの♥」
肩で息をしながらも、潤んだ瞳で俺を見つめてくるホーミィ。愛くるしい眼差しを向けられて、胸の奥がドキンと弾んだ。
「ベイン……あたし……」
ホーミィに見惚れていると、彼女は徐に俺に顔を近づけて……
「もうベインが傍にいないと……生きていけないよ♥」
そっと、優しく唇を重ねてきた。
〜〜〜数分後〜〜〜
「えへへ♪ベインだ〜いすき♥」
「あはは……」
ホーミィはお姫様抱っこに似た姿勢で俺の膝に腰かけ、離れないように俺の首に腕を回して甘えている。時々首を甘噛みしてきたり、隙あらば唇を奪ってきたりして……あの熱い情事をひと段落させてからずっとこんな調子だ。
「そう言えばベインはなんでこんな島に居たの?ここって無人島だよね?」
「え?あ〜それがな、海の上で海賊と戦ったんだけど一方的に押されて負けちゃってな。乗ってた船を壊されて死に物狂いで泳ぎまくって、ここまでたどり着いたんだ」
「戦ったって……もしかして、ベインってどこかの軍隊の兵士だったりする?」
「いや、実は俺も海賊だったんだ。元々小さな町で働いてたんだけど、リストラされて自暴自棄になって海賊になったんだ。まぁ、たったの一週間だけどな」
「そっか……ベインも大変だったんだね」
でもまさか、こんな不幸だらけの人生を送ってる俺に嫁さんができるなんて思ってもみなかった。仕事をクビになって海賊に転身して、そしたらいきなり伝説の海賊にぼっこぼこにやられて、過酷でしんどいサバイバル生活が始まって、とにかく毎日辛い出来事ばかりだったけど、こうしてホーミィと結ばれたことだし結果オーライと言うべきか。
「ねぇベイン」
ホーミィは身体を俺の方に向けてきた。
「あたしね、ここから十分くらい泳いだところにある海底の洞窟に住んでるんだ」
「洞窟?」
「うん!ベインさえ良かったら、あたしの家で一緒に暮らそうよ!」
ホーミィと暮らす、か……そりゃあ俺としても是非そうしたい。この無人島での生活も終わらせたいし、何よりも俺だってホーミィと一緒にいたいと思っているから、まさに願ったりかなったりだ。
でも……
「暮らすって……海底にあるんだろ?俺、普通の人間だし、海の中で呼吸なんて出来ないから無理だよ……」
「大丈夫!そんなのすぐ解決できる当てがあるんだ!」
俺が考えていた問題をよそに、ホーミィは不敵な笑みを浮かべてみせた。
「あたしの友達にシー・ビショップの子がいてね、人間の男を海中で生きられる身体にすることができるんだ!その子に頼めば、ベインも海の中で暮らすことができるよ!」
「ホントか?それ凄いな……!」
「でしょ!?そうすればあたしの洞窟で一緒に暮らせる!ね?良い考えでしょ?」
かなり深い問題かと思ったら、意外にも簡単に解決できそうだ。
となると……俺が出す答えはただ一つ。
「そうだな……よし!ホーミィ、俺からも頼む!是非ともホーミィと一緒に居させてくれ!」
「っ!!……嬉しい……嬉しいよ、ベイン!!」
「わわっ!」
ホーミィは一瞬だけ驚いてみせたが、すぐに嬉しそうに微笑み、両目に涙を溜めながら俺に抱き付いてきた。
「ホントに嬉しいよ……!これからもベインと一緒に居られるんだね……!」
俺に身体を預けながら静かに涙の雫を落とすホーミィ。今更だけど、結構涙もろい性格のようだ。でもそんな所もまた愛おしく思えるから、本当に俺はホーミィに惚れてしまったんだな……。
「ホーミィ……俺、大した男じゃないけど、ホーミィを幸せにするために頑張るからな」
「もう……幸せにしてくれるのは嬉しいけど、大した男じゃないなんて言わないの!」
ホーミィは俺の目をまっすぐ見つめながら、眩しい笑顔を向けてきた。
「ベインはね、私にとってかけがえのない大切な人だよ!」
「ホーミィ……」
その熱い眼差しに吸い寄せられるように、俺たちは同時に顔を近づけて熱い口付けを交わす。
泣き虫で甘えん坊な鮫の人魚。そんなホーミィとの甘くて幸せな生活が始まろうとしていた……。
17/02/06 21:44更新 / シャークドン