読切小説
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メイドっぽいヴァンパイアはお嫌いですか?
「え〜っと……次は液状のFe(鉄)を入れて……」

外がすっかり暗くなってる最中、私は海賊船の医療室にて新薬の開発に勤しんでいた。
まぁ、開発と言っても、フラスコの中に様々な液体を入れて混ぜるだけの単純な作業だけど。

「あとは、このバリウムを……よし!完成!」

スポイトで吸い取ったバリウムを一滴だけフラスコの中に入れると、青みがかかった液体が完成した。
さて、後は予め読んでおいた実験台が来てくれるのを待つだけね……。

「シャローナ、いるか?」

お!噂をすればなんとやら。
医療室の扉をノックする音と同時に、聞き慣れた声が上がった。

「はいはーい!ちょっと待ってねー!」

私はそそくさと医療室の扉に向かい、内側の鍵を開けて扉を開けた。

そこには、予想通りの人物が立っていた。ヴァンパイアのリシャスちゃんだ。

「わざわざ此処に呼び出すとは……何の用だ?」

リシャスちゃんは細くて綺麗な腕を組み、どこか怪訝な表情を浮かべていた。

まぁ、理由も無く呼び出されたら疑いたくもなるわ。でも、それも直ぐに杞憂に終わるけどね♪

「ささ、立ち話もなんですから、とりあえずいらっしゃい♪」
「ああ、邪魔するぞ」

医療室へ入るよう促すと、リシャスちゃんは素直に部屋に入って来た。

「あ、リシャスちゃんはそっちに座って」

リシャスちゃんは私が指定した椅子に腰かけ、私も研究用のデスクに腰かけリシャスちゃんと向かい合った。

「ごめんね、急に呼びだしちゃって。迷惑だった?」
「いや、取り分け問題無い。で、話とは何だ?」

リシャスちゃんに話を促され、私はコホンと咳払いをして話を切り出した。

「うん、あのね……リシャスちゃんて、ホント毎回頑張ってるな〜って……」
「何の話だ?」

眉を顰めながら問いかけるリシャスちゃんに対し、私は話を続けた。

「ほら、いつもいつもコリック君の為に船長さんと話し合ってるでしょ?愛する旦那様の為に必死になって説得して……ホント偉いわ」
「そ、そうか……?」
「そうよ!ここまで甲斐甲斐しくしてくれるお嫁さんがいて、コリック君は幸せ者よ♪それに、一生懸命夫を支える妻って素敵じゃない♪」
「……ま、まぁ……私はコリックの妻として当然の事をしたまでだ……」

リシャスちゃんは視線を逸らしながらも緩んだ表情を見せた。
よしよし、上手い具合に乗って来てるわね♪

少しだけ補足すると、リシャスちゃんは夫であるコリック君を愛するあまり、過剰な行動に出てしまう事がしばしばある。
その例えの一つが船長さんへのクレームであり、何かと付けてコリック君の昇格を要求してくる事がある。船長さん曰く『そろそろ耳に胼胝が出来そうだ』との事。

「でも、船長さんったら、全く話を聞いてくれないでしょ?」
「……そう、そうなんだ!」

微笑ましい笑みがいきなり怒りの表情へ一変し、私は思わず怯んでしまったが、リシャスちゃんは構いもせずに凄味を効かせながら話した。

「昨日、コリックの戦利品を金貨30枚分昇給するよう交渉してたところだったんだが、キッドの奴『高過ぎて払えるか!』とか言って承諾する気がないんだ!」
「へ、へぇ〜……そう……」

あぁ、そう言えば昨日の夜は騒がしかったわね……。あの騒々しさの原因はリシャスちゃんか……ホント、毎回よくやるわ。

「全く、何で30枚も払えないんだ?そこまで貧乏と言う訳でもあるまいし!」

……いやいやリシャスちゃん、金貨3枚ならギリギリセーフでも、30枚は高いわ……ってか、私だって欲しいわよ、そんな大金…………。

「で、でね!そんなリシャスちゃんの為に、凄い物を作ったの!」

このまま愚痴を聞かされたら堪ったもんじゃない。私は話をはぐらかす為に机に置かれてるフラスコを取って見せた。

「ん?何だ、それは?」

首を傾げながら問いかけるリシャスちゃんに、私は誇らしげに言った。

「これは私が新しく発明した新薬……その名も、オハナ・シデキール!」
「…………」
「……な、なに?どうしたの?」
「……馬鹿丸出しな名前だな」

グサァッ!!

「うぅ……リシャスちゃん、少しは歯に衣着せたらどうなの?」
「馬鹿言え、そんな馬鹿馬鹿しい名前を聞いたら、誰もが同じ事を言うだろ」
「ちょっとぉ!何回馬鹿って言ったら気が済むのよぉ!」
「たったの4回しか言ってないだろうが……で、それはどんな薬なんだ?」

説明を促され、私はコホンと咳払いをして薬の効果を説明した。

「何事においても相手を説得させるのに必要なもの……それはズバリ、話術!この薬は、脳に栄養を送って活性化させて、相手に何をどう、どんな風に言えば良いのか瞬時に判断させる……」
「要するに話術を向上させる事ができるのか」
「ビンゴ!」

私は得意げに指をパチンと鳴らしてみせた……けど、リシャスちゃんは心なしか……いや、間違いなく疑いの眼差しを向けている。

「……全く持って胡散臭いな」

あちゃ〜、完全に怪しまれてる……。

「べ、別に胡散臭くはないわよぉ……」
「十分胡散臭い。話術とは数多くの経験を得て熟練させるものだ。薬などでどうにかなるものではない」

うわぁ……まさに正論だわ……このままだと飲ませられずに話が終わっちゃう……。
……ええい!ここで引き下がって堪るもんですか!寝る間も惜しんで作ったのよ!何が何でも飲ませてやるんだから!

「うんうん、その通り。でも、この薬を飲んで話術が上達する確率は0%じゃないわ。少なくとも1%はある」
「そんな低確率だったら尚更信用できないだろ」
「はい!その考え、甘ーい!!」

私に突然ビシッと指を突き付けられ、リシャスちゃんは一瞬だけ驚いた。

「リシャスちゃん、考えてみて。0%と1%の差って、小さいようでデカいのよ!0%は確実に何も無い。でも1%はホンの僅かでも可能性がある。あるのと無いのとでは大違い!分かる?」
「……ま、まぁ……それは確かに……」

戸惑いながらもリシャスちゃんは頷いて同意した。

「ね?分かるでしょ?それに、こんな事言うじゃない……『1%を笑う物は1%に無く』……てね」
「いや、そんな言葉、初めて聞いたぞ。今適当に作っただろ?」
「でも1%は大事って事は間違ってないでしょ?」
「それは……」

ここで初めてリシャスちゃんが迷い始めた。
いいわよ……この調子で……!

「リシャスちゃん……あなたが薬を飲みたくないのなら、私は無理強いなんてしないわ。でも、コリック君の為ならば勇気を振り絞る!それってアリだと思わない!?」
「…………」

リシャスちゃんの瞳には明らかに迷いが生じている…………が、それはすぐに意を決した瞳へと変わった。

「やってやる……私は……コリックの為に……愛する夫の為にやってやるぞ!」
「よっし!その意気よ!さぁ、グイッといっちゃいなさい!」
「うむ!」

私はリシャスちゃんに薬が入ったフラスコを手渡した。そしてリシャスちゃんはフラスコの薬を勢いよく飲み始めた。

よっしゃあ!飲んだ!作戦成功!

私は小さくガッツポーズをした。

「……ふぅ……」

一滴残らず薬を飲み干したリシャスちゃんは小さく溜め息をついた。

さてさて、肝心の効果はどうかしら?

「……どう?今どんな気分?」

覗き込むようにリシャスちゃんの顔を窺いながら訊いてみた。

「…………」
「…………」

しかし、リシャスちゃんは蹲るばかりで一言も発さず、一時ばかりの沈黙が医療室全体を漂った。

「……ああ!」
「え!な、なに!?どうしたの!?」

突然リシャスちゃんが顔を上げたので、私は思わず仰け反ってしまった。

「……私……」
「……ん?」
「私……」
「……リシャスちゃん?」

これは……薬の効果が早速出てきたか!?

…………と、思ったのも束の間、予期もせぬ展開が待ち受けていた…………。




***************



「ただいま〜……あれ?リシャスさん?」

やっと仕事が終わって自室に戻って来たけど、何時も僕を出迎えてくれるリシャスさんが何処にもいなかった。
何時もなら読書でもしながら待ってて、僕が戻ってきたら『おかえり、今日もご苦労だったな』なんて出迎えてくれるのに。もしかして、まだ寝てるのかな?

「リシャスさん、寝てるの?」

僕は部屋の隅に置かれてる棺桶型のベッドに歩み寄ってゆっくりと日光防止の蓋を開けてみた。でもそこにリシャスさんの姿はなかった。
部屋にいないって事は……どこか別の部屋に寄ってるのかな?でも、何処へ?

リシャスさんが何処へ行ったのか色々と思考していると…………。

「ご主人様!遅くなりました!」
「え?」

ドアが開く音と同時に聞き慣れた声が部屋に響いた。声の方向を振り向いて見ると、そこにはリシャスさんが息を切らしながら立っていた。

……て、あれ?気のせいかな?今ご主人様って言ったような…………。

「ご主人様、今日もお勤め御苦労さまです」

……いや、気のせいじゃなかった。今確かにリシャスさんはペコリと頭を下げながらご主人様って言った。

「……あ、あの……」
「はい、どうなされましたか?」
「ご主人様って……僕の事?」
「ウフフ……他に誰がいらっしゃるのですか?ご主人様♥」

リシャスさんは愛くるしい笑みを浮かべて返した。
うわぁ……リシャスさん可愛い……って、違う違う!何時ものリシャスさんじゃない……リシャスさんである事は間違いないんだろうけど……雰囲気が違うし、何よりも口調が変わってる。

「ど、どうしたの、リシャスさん?なんか変だよ?」
「え?私、どこか変でしょうか?…………あ!」

リシャスさんは自分の身体を見回し、何かに気付いたのか小さく声を上げた。

「や、やだ!私とした事が!ご主人様の前でこんな身の程知らずな格好して……!」
「い、いや、格好の問題?それ以外に色々と突っ込むべき問題が……」
「ご主人様、大変厚かましい事言って恐縮ですが、着替えるお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

リシャスさんは申し訳無さそうにお願いしてきた。
うぅ……どうしよう……こんなリシャスさんも可愛い……なんて思ってる場合じゃない!って、リシャスさん……着替えるって何に?

「着替えるのはいいけど……リシャスさん、一つ聞いてもいいかな?」

何に着替えるのか気になるけど、今はリシャスさんが何故こんな状態になったのか原因を探るのが優先だ。
そう思った僕は気持を落ち着かせて話を切り替えた。

「リシャスさんはさ、今まで何処にいたの?」
「あ、はい!先ほどまで医療室にお伺いしてました」
「え……」

医療室……その言葉を聞いて何か嫌な予感が頭を遮った。
医療室と言えば、色々な薬が置いてある部屋。そして普段から医療室にいる人と言えば……この船の船医であるシャローナさん。そしてそして、シャローナさんの趣味と言えば……薬の研究。
シャローナさん……まさかリシャスさんに変な薬を…………?

「御免下さーい!誰かいるー!?」

ちょうどいいタイミングで、ドアがノックされる音と同時に聞き覚えのある声が上がった。
この声は……シャローナさんだ!ちょうどいい。色々と話を聞かせて貰おう。

「はい、只今……」
「ああ!リシャスさん、僕が開けるから此処で待ってて!」

リシャスさんがドアを開けようとして、慌てて僕が先陣切ってドアを開けた。そこには、僕が思ってた通りシャローナさんが立っていた。

「あら、コリック君もいたのね。ちょうど良かったわ、実は話しておきたい事があって……」

シャローナさんは何か安心したかのような素振りを見せながら言った。
この様子からして……やっぱりリシャスさんがこんな状態になってる事と何か関係があるのかな?

「はい、実は僕も聞きたい事があるんです」

僕は部屋の外に出てドアを閉めてから話を切り出した。すると、シャローナさんは苦笑いを浮かべながら後頭部を撫でた。

「その……聞きたい事って……もしかして……」
「はい、リシャスさんは一体どうしてあんな状態に?」
「あぁ、やっぱり……まだ効果が切れてないみたいね」
「え?効果って…………まさか!?」
「うん、そのまさか」

僕が言いたい事を察したのか、シャローナさんは小さく頷いた。
やっぱり何か変な薬を飲ませたんだ……この人は性懲りも無く……。

「……もう!何で毎回薬を作っては他の人で実験するんですか!?そういうのは予め最大限の計算をしてから行うものでしょ!?」
「ご、ごめんなさい……どうなるかは医薬の本に書いてあったから、『別に大丈夫かな〜』なんて思っちゃったりして…………」

背の高さは明らかにシャローナさんの方が上手。しかし、僕自身でも驚く位の剣幕で責め立てられたせいか、シャローナさんは少し怯えながら尻込みした。

「あ、あの、コリック君!と、とりあえず私の話を聞いてくれる…………かな?」

シャローナさんに宥められ、僕は我に返ってようやく冷静さを取り戻した。そして、冷静になった僕を見るなりシャローナさんは話を切り出した。

「……えっとね、お察しの通り、リシャスちゃんがああなった原因は、私が作った薬なの。それで、私としては、その……話術が上達する薬を飲ませたつもりだったんだけど……」
「……つもりだった?どういう事ですか?」

僕の質問に対し、シャローナさんはばつが悪そうに答えた。

「ええ、どうやら調合する薬の種類を間違えちゃったみたいなの……その結果、目的の薬とは全く別物になっちゃったみたいで……」
「で、リシャスさんはあんな風になっちゃったと?」
「うん、簡潔に言うとね」

……何をどう間違えたら性格が変わる薬になっちゃうの?いや、それ以前に話術が上達する薬ってなんなの!?

「……それで、リシャスさんはちゃんと元に戻れるんですか?」

色々と気になる事はあるけど、僕は一番気がかりな事を真っ先に訊いた。

とにかく、今はリシャスさんが元に戻れるのかどうかが一番心配だ。最悪の場合、一生あのまま戻らないなんて事も……嫌だ!それは絶対に嫌だ!あんな可愛げのあるリシャスさんも悪くないけど……やっぱり僕は何時ものクールなリシャスさんでいて欲しいんだ!

「あ、それなら心配ないわよ。時間が経てば薬の効果が自然と消えるわ」

僕の心境を察したのか、シャローナさんは微笑みながら答えた。
そうか……良かったぁ……一生あのままだと言われたらどうしようかと思ったよ…………。

「まぁでも……薬の効果が完全に消えるまでは下手に行動しない方が良いわね。暫く傍に居てあげた方が良いかもね」
「そうですね……分かりました」

シャローナさんの言うとおり、今はリシャスさんの傍を離れない方が良いかもしれない。万が一リシャスさんの身に何か起こった時には僕がなんとかしないとね。

「迷惑掛けてごめんなさい。それじゃ、私は医療室に戻るわ。何かあったら直ぐに呼んでね」
「はい、お休みなさい」

しなやかな動作で医療室へ足を運ぶシャローナさんに、僕は軽くお辞儀をして見送った。
さて、速く戻らないと。
僕は踵を返して早速自分の部屋のドアを開けた。

そこで僕は…………思わぬ光景を目にした。

「お帰りなさいませ、ご主人様♥」

ずっと部屋に居たから当たり前だけど、そこにはリシャスさんが立っていた。
ただ、いつもの高貴な衣服ではなく…………メイド服を着て。

「………………」

僕は、今目の前にいる妻の姿に見惚れるしかなかった。メイド服と言ってもかなり露出の多いデザインになっている。大胆に開かれた胸元、フリルの付いた短めのスカート、それでいて赤と黒のバランスが整った色合いはヴァンパイアの印象を表現している様に感じた。
メイド服なんて、プライドの高いリシャスさんからは絶対に着ない物だけど、こうして見ると凄く似合ってるなぁ……。

「あの……ご主人様?」

リシャスさんの呼びかけによって僕はようやく我に返った。
……そう言えば、メイド服なんて何時から手に入れたんだろう?リシャスさんの事だから、よっぽどの理由でも無い限り自分から欲しいなんて思わないハズ……。

「リシャスさん、その服どこで手に入れたの?」
「はい、以前シャローナさんから頂いた物です」

シャローナさんから?これまた予想外だな……まぁ、シャローナさんの事だから、リシャスさんが着ないと分かっててもちょっとした冗談で押し付けたんだろう。

「あの……もしかして、このような服はお気に召されないでしょうか?」

リシャスさんが不安そうな表情で言ってきた。
……はっ!いけない!妻であるリシャスさんを悲しませてはダメだ!

「ううん!違うんだよ!その、リシャスさんがあまりにも綺麗だから、つい見惚れちゃって……」
「……ほえ?き、き、綺麗!?き、綺麗だなんて……」

僕が必死で弁解するとリシャスさんの顔がみるみる赤く染まり、ペタンとそのばで可愛く座り込み両手で顔を覆いながら身体を大きく揺さぶった。

「はぅん……嬉しい……嬉しい!嬉し過ぎて気絶しちゃいそう♥ああん♥もう幸せ……」

……ちょっと、これは反則でしょ!この照れっぷり可愛過ぎでしょ!普段のクールな性格とのギャップのせいで、更に可愛いさが増量してる……!

「……ご主人様……お勤めからのお帰りで恐れ入りますが、我が儘を聞いていただけないでしょうか?」

リシャスさんが顔を覆ってた手を離し、上目づかいで僕を見つめながら言った。

「その……抱きしめて頂いても宜しいでしょうか?」
「……え?」

リシャスさんから発せられた言葉を聞いて、僕は一瞬だけ耳を疑った。
急にどうしたんだろう?褒められて興奮してきたのかな?

「う、うん……」

ちょっと戸惑いながらも、僕は座り込んでいるリシャスさんに歩み寄り優しく抱きしめた。

「はぅん……ご主人様、暖かい……」

抱きしめられたリシャスさんも、僕の背中に腕を回して抱き返した。リシャスさんが座っているとはいえ、僕の身長が低いせいかお互いの頭の位置が同じ高さに…………。

「うぅっ!?」

突然首筋に衝撃が走り、次第に脳髄を蕩けさせる程の快感が襲ってきた。
この感覚は……何度も経験してるから直ぐに分かる。リシャスさん、吸血してるんだ……。

「……ん……ふぅ……」

リシャスさんの牙が首筋から放れると同時に、吸血される側の快感が徐々に薄れていった。

「んっ……あぁ……ご主人様の血……とても美味です……」

僕の血を吸い終えたリシャスさんは、恍惚の笑みを浮かべながら口から漏れてる血を指で掬い取って舐めた。そのあまりにも艶かしい姿を見て心臓の鼓動が激しくなってきてるのが自分でも感じられた。
どうしよう……ちょっと興奮してきた……。

「ご主人様……ん……ちゅっ」
「んん!?」

しかし、そんな僕などお構いなしにリシャスさんは唇を奪い、更に追撃とばかりに口内に舌を進入させて僕の舌と絡ませた。

「ん、ちゅ……んん……」

生温かい舌が僕の口内を舐めまわす度に、リシャスさんの甘美な唾液が口いっぱいに広がっていく。この夢中になってしまう程の快楽が僕の気持ちをより昂らせてしまい、思わずリシャスさんの乳房を衣服の上から揉んでしまった。

「んぅ……ん、んん!ちゅっ……ん、ふぅ…………」
「んむぅ……ん、ふ、ちゅ……」

不意打ちに驚きながらも、リシャスさんは唇を重ねたままお返しとばかりに僕の股間をズボンの上から優しく撫でまわした。服越しとは言え、リシャスさんの手つきが股間を熱くさせ、瞬く間に僕のペニスは硬直状態となった。

「ん、ちゅ……ご主人様……嬉しいです♥私とキスして……こんなに感じてくれるなんて……」

唇を離したリシャスさんは、僕のペニスを撫でたまま、嬉しそうな笑みを浮かべつつ僕の目をジッと見つめた。その熱い眼差しを受けて、とうとう僕も歯止めが利かなくなってしまった。

「リシャスさん……続きはベッドで……」
「仰せのままに♪では、失礼します」
「え……う、うわぁ!?」

リシャスさんが立ち上がったかと思うと、突然僕を抱きかかえた。その……お姫様抱っこで。

「リ、リシャスさん!何も抱きかかえる必要ないよ!」
「そんな……どうか遠慮せずに、たくさん甘えてください♥」

抱えられたまま抗議する僕に構いもせず、リシャスさんはベッドまで歩み寄り徐に腰かけた。

薬のせいで性格が変わってるとは言え、強引なところは変わってないみたい。でも……これじゃまるで夫婦と言うより姉と弟だよ……。女の人に抱っこされるなんて、男としてのプライドが……。

「ウフフ……それでは、失礼します……」
「え?あ、あの、ちょっと?」

ここでリシャスさんは予想外の行動に出た。リシャスさんは僕を自分の太ももに座らせ、手慣れた動作で僕のズボンを下着ごと脱がせた。

「まぁ……相も変らぬ立派な逸物……」

露わになった僕の肉棒を目の当たりにし、リシャスさんはうっとりと小さな溜め息を漏らした。

「そ、そんなに見つめないで……」

あまりにも熱い視線に耐えられなくなり、僕は顔を逸らすしかなかった。

「あら、そんなに恥ずかしがらないでください」
「で、でも……そんなに立派じゃないでしょ?小さいし、皮も少し被ってるし……」
「いいえ、誰に何を言われようとも、私はご主人様の全てをを愛しています!勿論、このおちんちんも……」

完全に勃起した僕の肉棒に見惚れながらも、リシャスさんはしなやかな手つきで僕のペニスをしごき始めた。

「う、うわぁ……!リ、リシャスさん……!」
「ウフフ♪ご主人様、私の手コキは如何でしょうか?」
「う、うん……リシャスさんの手、気持ちいいよ……!」

リシャスさんの温かい手がペニスを包み、竿が擦れる度に快感を刺激させる。あまりの快感に耐え切れず、僕はリシャスさんの胸を掴み、無我夢中で揉み始めた。

「うぐっ!リ、リシャスさん……!」
「はぁ、はぁ……ご主人様……私のおっぱい……吸ってください……」

縋る様に耳元で囁きながらリシャスさんは自ら胸元のボタンを外し、大きくて美しい胸を露出させた。僕も出来る限り想いに応えるようにリシャスさんの胸を直に揉みながら右側の乳首にしゃぶり付いた。

「んあ!ご、ご主人様ぁ……気持ちいいですぅ……んぁ……」

リシャスさんは気持ち良さそうに息切れし、快楽に比例するかのように僕のペニスを扱く手の激しさを増した。

「んぁあ!あ、ああ……ご主人様ぁ……嬉しい!大好きなご主人様のおちんちんを扱かせてくれて……おっぱいまで……愛でてくれて……幸せですぅ!」
「んちゅっ……ん……幸せだなんて、それなら僕の方こそ……ん、うわぁ!」

絶頂が近くなったのか、一瞬だけ射精を急かすかのようにペニスがビクッと動くのを感じ取った。
やばい……もうそろそろ……!

「リ、リシャスさん……僕、もう…………!」
「はぁ、はぁ……ご主人様、出したくなったら好きな時に出してください……私の手で、一滴残らず受け止めさせてください……」
「で、でも……!」
「主の精液管理も……メイドの勤めです……遠慮なさらずにイってください……!」

本気でイかせる気になったのか、リシャスさんがラストスパートを掛けてきた。ペニスを扱く速さを最大限にまで上げ、これから噴出するであろう精液を今か今かと待ち構えた。
もう限界……ダメだ……出る!

「リシャスさん、出る……出るよ!」
「ご主人様……きゃあ!?」

我慢の限界に達した時、亀頭から真っ白な精液が飛び出た。予想外にも射精の勢いが激しく、リシャスさんの手だけでは済まず、顔や胸、遂にはメイド服にまで精液を浴びせてしまった。

「……はぁ……ご主人様の精液……とても濃厚で美味です……♥」

顔に浴びせられた精液を指で掬い、手に掛かった精液を舐めまわして美味しそうに味わった。その艶めかしい光景を目にした瞬間、出したばかりであるにも関わらず、僕のペニスがビクンと脈打ち勃起状態を維持した。

「……まぁ♥ご主人様のおちんちん……まだまだ元気ですね。流石です♥」
「ちょっ!リシャスさん、今はダメ……うぅっ!」

リシャスさんは射精して間もない敏感なペニスを再び扱き始めた。精液を舐めた際に付着した唾液がローションの代わりとなり、手が滑らかにペニスを扱く度にヌチュヌチュと卑猥な音が部屋に響き渡る。

「はぁ……ご主人様の感じてるご尊顔……なんて愛おしい……♥」
「ま、待って!リシャスさん!ぼ、僕……僕……!」

……今はもう、理性とか制御なんて物など消え失せてしまった。
もっと気持ちよくなりたい。もっと射精したい。今すぐリシャスさんと一つになりたい……!
僕はペニスを扱かれる快感に耐えながら、未だにペニスを扱く手を休めないリシャスさんに訴えかけた。

「そ、その……僕……我慢できない……!」
「……はい?」

僕のペニスを扱く手を一旦止めて、目を丸くしながらも耳を傾けてるリシャスさんに、僕は羞恥心を必死に抑えて訴えた。

「だ、だから……い、入れたい……セ、セックス……したい……!」
「……ご主人様……嬉しい♥」

僕の必死の呼びかけを聞いた途端、リシャスさんはとびっきりの笑顔を浮かべながら僕をギュッと抱きしめた。

「嬉しいです♥そんなに私を求めてくれて……私もご主人様と愛し合いたいです♥」

リシャスさんは僕を仰向けになるようにベッドに優しく寝かせると、僕の腰の上に跨ってヒラヒラの短いスカートを捲り上げた。

「見てください、ご主人様……私のおマンコは準備万端ですよ♥」
「……え!?」

驚いた事に、リシャスさんは下着を履いてなかった。捲り上げられたスカートから現れたのは、愛液でびしょ濡れになってるリシャスさんの陰部だった。
少しでも動けば、リシャスさんの愛液が僕のペニスに滴り落ちそうだ。あまりにも卑猥な絶景を前に、挿入前であるにも関わらずペニスの先から我慢汁が出そうになった。

「リシャスさん……下着、履いてなかったんだね……」
「はい♥すぐにでもご主人様のおちんちんを入れて貰う為に、予め脱いじゃいました♥」
「そ、そう……」

リシャスさんのストレート過ぎる回答に、僕はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。すると、リシャスさんは微笑みながら片手を僕のペニスに添えて陰部に宛がった。

「ご主人様……入れてもよろしいでしょうか?」
「う、うん……」

僕の許可を貰うなり、リシャスさんはゆっくりと腰を下ろして僕の肉棒を膣の中へと包み込んだ。亀頭が膣壁を押し広げ、やがて肉棒全体が完全に膣内に収まってしまった。

「あぁっ!あ……ご主人様ぁ……気持ち……いいですぅ……♥」

僕の上に跨ってるリシャスさんは幸せそうな笑みを浮かべながら身体を震わせた。その幸せそうな表情を見ると、僕みたいな男のペニスで感じてくれてると思ってしまい、結構嬉しかった。

「はぅん……ご主人様は……このまま楽にしていてください……どうか……私にご奉仕させてください……」

そう言うと、リシャスさんは僕の上で腰を動かし始めた。可愛らしいメイドのスカートの中でペニスと膣のイヤらしい上下運動が繰り返され、ペニスが膣の肉壁を擦る度に卑猥な水音が部屋中に響き渡る。
リシャスさんが腰を振る度に、その豊富な胸が目の前で誘惑するかのように揺れる。なんとも言えない絶景を前に、行為中の興奮が昂ってしまう。

「んぁあ!ご、ご主人様……私のおマンコ……ん、あぁ!如何ですか……?はぅう、うぅん!」
「う、うん……凄く気持ちいいよ……!」
「はぅあ……嬉しいですぅ……ご主人様……ご主人様ぁ♥は、きゃうん!?」

嬉しそうな笑みを一目見た途端、リシャスさんへの愛おしさが込み上げてしまい、僕の方から肉棒を突き上げた。

「ひゃぁっ!ご主人様……ご主人様が動かれたら、あぁん!ご、ご奉仕の意味が……あぁ、あん、ふぅん!」
「ごめん……僕、こうしたいんだ……リシャスさんにも……感じて欲しいんだ……!」
「そんなぁ……ご主人様に……あ、んぁあん♥逆にご奉仕されるなんて……私、メイド失格ですぅ!ひあ、ふにゃぁん♥」
「良いんだよ……リシャスさんはそれ以前に……僕のお嫁さんなんだから……僕の……最愛の妻だから!」

僕の言葉を聞いた途端、リシャスさんは一瞬だけ驚いた表情を浮かべたが、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。

「……嬉しい……嬉しいです……ご主人様ぁ〜♥♥」
「え……ちょ、ちょっと……ん、んん!」

突然、リシャスさんは上半身を僕の方へ倒し強く唇を重ねてきた。間髪いれずに生温かい舌が口内に侵入し、激しく、情熱的に舐めまわしてた。

「ん……ちゅ、ちゅう……んふぅ……好き……私も大好き、大好きですぅ♥ちゅ、ちゅぱっ……んちゅ……私の……私だけのご主人様ぁ♥大好きぃ♥」
「はむ、うん……んん……!」

リシャスさんの想いに応えるように、僕も必死に舌を動かす。激しいキスの最中でも、ペニスと膣の上下運動は休む事無く、むしろより一層激しさを増していく。卑猥な水音のボリュームが一気に上がり、絶頂へと駆り立てる。

「ちゅう……はぁ、私……幸せです!こんな……エッチでいけないメイドを愛してくれて……私は……リシャスは世界一の果報者ですぅ♥ひゃ、はあん♥」
「そ、そんな大げさな……うぅ!」
「ご主人様、ご主人様ぁ!ん、ちゅ、んふぅ……ちゅぅ」

濃厚なキス、押しつけて来る胸、激しく動く蜜壷、この淫らな三重の攻めに抵抗出来る術は無かった。もうそろそろ……出そうだ……!

「ん……リシャスさん……!もう……僕……!」
「んふぅ……はい……熱い精液……出してください……きゃ、あ、あぁん!私の……私の子宮に、たっぷり注いでくださぁい!あ、んあ!ああん!」

射精を促すかのように、止めとばかりに膣内の締め付けが強くなりペニスを圧迫させる。その瞬間、限界に達したペニスから精液が勢いよく噴出した。

「イ、イクぅ!イッちゃいますぅ!あ、ふあぁ、あぁぁぁああんっ!!」

子宮に精液が注がれると同時に、リシャスさんも身体を大きく仰け反って絶頂に達した。身体を小刻みに震わせ、口を半開きにしながらも快感に酔いしれている。

「……はぁ……熱い……ご主人様の精液……こんなにいっぱい……」

リシャスさんはウットリと笑みを浮かべながら僕に覆い被って来た。その背中に手を回すと、リシャスさんは僕の耳元で囁いた。

「……ご主人様……大好き♥」
「!……う、うん……僕も……」

突然の愛の告白に心臓がドキッと心拍した。その後、僕たちはお互いを感じるかのように夢中で抱き合った…………。

「………………」

が、リシャスさんの様子がおかしい事に気付いた。身体をフルフルと震わせているが……これは絶頂の余韻に浸ってる訳ではない。なんか、こう……とてつもないオーラが……。

「あの……リシャスさん?」
「………………」
「リシャスさん?聞こえてますか?リシャスさん?」
「……何で……」
「え?」
「何で……私は……!」

……あ……これって……もしかして……










「こんな事をしてるんだぁぁぁぁあああああ!!!」







突然、ベッドの上で立ち上がり天井に向かって怒鳴り声を上げた。

……あぁ、やっぱり薬の効果が切れたんだ。タイミングが良いんだか悪いんだか…………。

「うぁぁぁ!!何がご主人様だぁっ!何がメイドだぁっ!私は何時から下僕になったんだぁっ!そもそも何故こんな服を着てるんだぁっ!何故だ!何故だ!何故だぁぁぁぁぁ!!」

怒りと混乱が程良くミックスされた感情をむき出しにしながら頭を乱暴に掻きまわしてる。さっきまでのお淑やかな性格は何処へ飛んで行ったのやら。

……と言うか、性格が変わった時の記憶ってちゃんと残るんだね。てっきり薬の効果が切れると、変わった時の記憶も消されるものかと思ってたのに……。

「…………う……うぅ……ぐすん……」
「……え?」

予想もしてない展開に素っ頓狂な声を上げてしまった。徐に俯いたかと思うと、ベッドの上で脱力したかのようにペタンと座り半べそを掻き始めた。

「私……もう恥ずかしい……貴族である私が……こんな格好で……恥ずかし過ぎて辛い……」

……あぁ、完全に引きずってる。
でも無理も無い。リシャスさんはただでさえプライドが高いんだ。誰に頼まれようと、メイドみたいな真似事なんて……ましてや、メイド服なんて絶対に着ない。
しかし、あろうことか薬のせいでやりたくない事をやってしまった。リシャスさんにとって、これ以上の屈辱は無いだろう。

「えっと……あの……その……」

とりあえずズボンを履き直し、この重苦しい空気をどうにかしたいと思ったが、こんな時にどうすれば良いのか判断できなかった。
すると…………

「……コリック……」
「は、はい!?」

俯いたままリシャスさんが声を絞り込む様に発した。どこかドスの効いた声に思わずビクッと身体が跳ねてしまう。

「……忘れろ」
「……え?」
「この事は忘れろ」
「え、えっと……」
「わぁすぅれぇろぉ!」
「うわぁっ!?」

突然、リシャスさんが飛びかかり、僕の上に馬乗り状態になった。
可愛らしいメイド服を台無しにするかのように、リシャスさんは鬼の形相で問い詰めてくる。

しかし、そんな表情とは裏腹に、服が肌蹴てる為か露出されてる胸がプルンと震えて……って、見惚れてる場合じゃない!

「いいか!?今この場で起きた事は今すぐ忘れろ!仮にも、仮にもだ!もし他の奴らにバラしたら……!」
「わ、わ、分かりました!誰にも言いません!すぐに忘れます!って言うか、もう忘れました!僕もう何にも憶えてません!はい!」

あまりの迫力に圧倒されてしまい、早口に答えてしまった。

元に戻ったのは良かったけど……もう少し、ほんの少しだけ……さっきみたいに穏やかになってくれたらなぁ……。
まぁ、何だかんだ言って、リシャスさんは何時ものリシャスさんが一番だけどね。

「うむ、分かればよろしい」

リシャスさんは満足気に頷き、ベッドから下りるとせっせと何時も着こなしている貴族らしい高貴な服に着替え始めた。

「あ、やっぱり着替えちゃう?」
「……何か不満か?」
「い、いえいえ!不満なんて滅相も無い!」

慌てて否定したけど、内心ちょっと残念な気がした。僕としては、もう少しだけリシャスさんのメイド姿を拝みたかったけど……本人が嫌なら仕方無いか。

「……まぁ、なんだ、その……」

リシャスさんは着替えながらボソボソと呟いた。

「……コリックが望むなら……その……」
「?」
「…………また着てやってもいいが……」
「え?」
「い、いや!何でもない!何でもないぞ!」

リシャスさんは慌てて誤魔化したけど、僕にはハッキリと聞こえてた。
またリシャスさんのメイド姿が見られるんだ……ちょっと嬉しいな。まぁ、当分着てくれないだろうけど……。

頭の中でリシャスさんのメイド姿を思い浮かべて微笑んでるうちに、リシャスさんの着替えが終わった。
って、あれ?腰に掛けられてるのって、確かリシャスさんが何時も戦闘で愛用してるレイピア……。

「……さてと、これから忙しくなるぞ……!」

……見間違いじゃなかった。リシャスさんは腰のレイピアを抜き取り、不気味に光る刀身を見据えた。
その瞬間、嫌な予感が脳裏を遮った。

「コリック、すぐに戻ってくるから、ここで少し待ってろ」
「え!?あ、あの、何処へ行くの?」

レイピアを鞘に戻し、早足で部屋を出ようとするリシャスさんを慌てて呼び止めた。
多分シャローナさんに文句を言いに行くんだろうけど、それよりもっととんでもない行動を起こす。根拠は無いけど、そう思えて仕方なかった。

「決まってる。全ての元凶である馬鹿医者に制裁を喰らわせてやるんだ」
「そ、そう……」
「ついでにキッドのところに行って戦利品の昇給を要求してくる」
「そ、そう……って、えぇ!?待ってよ!それはダメ!」

キッド船長の名前を聞いた途端、反射的にもリシャスさんに駆け寄り、服の袖を掴んで止めさせた。
またキッド船長に無茶な要求をする気だ!これ以上迷惑を掛けてしまったら、キッド船長に会わせる顔が無い!

「どうした?何故止めようとする?」
「普通におかしいでしょ!?シャローナさんは分かるけど、何でキッド船長まで巻き込むのさ!」
「ついでだ、ついで。八つ当たりにはちょうど良い相手だ」
「八つ当たりってなんなのさ!キッド船長に迷惑掛けたらダメだよ!」

部屋を出ようとするリシャスさんを、僕は袖を引っ張って止めようとする。対するリシャスさんも抵抗してくる。

「ええい!コリック!とにかく放せ!」
「嫌だ!放して欲しかったら行かないで!」
「放せ!」
「嫌だ!」
「放せ!」
「嫌だ!」
「放せ!」
「嫌だ!」




















「放してください!ご主人様ぁ!!」












「…………え?」
「…………あ…………」

さっきまでの騒々しい空気が、リシャスさんの叫びによって一気に静まり返った。

「……え、あ、な、何故だ?わ、私……」

自分が発した言葉によって我に返り、顔を真っ赤に染めながら慌てふためいた。

……もしかして、まだ薬の効果が完全に切れてないんじゃ……

「……コリック……」
「……え?」

僕の方へ振り向き、獲物を見定めた獣のような目つきで見据えられた。
その時、僕は悟った。矛先がこちらに切り替わったのだと…………。

「してやる……セックスしてやる……今のを忘れてもらうまで……とにかくヤリまくる……」
「リ、リシャスさん!まずは落ち着いt」
「朝まで犯してやるぅぅぅぅ!!」
「いやぁぁぁぁ!!」

…………この後、リシャスさんを落ち着かせる為に休むことなく交わる羽目になってしまった。リシャスさんの精神が完全に落ち着くのに朝まで掛かってしまった。
そのせいで、僕は睡眠を取る事無く仕事をする羽目になってしまった…………。
12/06/02 17:29更新 / シャークドン

■作者メッセージ
久々にエロを書きました。でもエロ描写って難しいです……。
さて、今回はメイド物と言う事でしたが……メイドっぽさが少なくて御免なさいorz

では、読んでくださってありがとうございました!

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