雷こわい
「なぁ、シルクはバルドを助ける為に外へ出たんだろ?」
「ん?確かにそうだが、何を今更……」
「それってさ、トルマレアから外へ出たのか?」
「いや、正確に言えば、トルマレアを出た後にバルドが攫われたからな」
カラカラカラ……
「へぇ……何処かへ出かける予定だったのか?」
「まぁ間違ってないな。近くの同盟国の国王と面会する予定だったんだ。バルドには私の護衛として付いて来てもらったのだが、航海途中でベリアル一味に遭遇して……後は話した通りだ」
「そうだったのか……」
カラカラカラ……
「ねぇねぇ、次お兄ちゃんの番だよ〜」
「ん?あ、もう回ってきたのか」
アジトの島から出航して早二日目。トルマレア王国へ向かうブラック・モンスター内のダイニングにて、俺、サフィア、ピュラ、そしてシルクの四人はテーブルに集まっていた。
「今ピュラが$10000、私が$6000貰ったところです」
「二人ともペース良いな……」
外では黒色の雲が空を覆っていて、強めの雨が休む間も無く降り注いでいる。見張り番以外の船の仲間たちは既に船内に集まっていた。
こういった雨の日は海の波が荒れる。それを証明するかのように、僅かながらブラック・モンスターの船体が何時もより揺れているのを感じ取れた。
そして今、俺たち四人はちょっとしたボードゲームで遊んでいる。
その名も『ライフゲーム・パイレーツ』……謂わば人生ゲームの海賊バージョン。
雨の所為で外で遊べないピュラが暇を持て余し、それを見かねたサフィアの提案で始めたのがこのゲームだ。
カラカラカラ……
「7か。えっと……『船の一部が破損したので修理代$5000払う』……おいおい、やめてくれよこんなところで……」
「次は私だ」
カラカラカラ……
「4だな。なになに……『海底洞窟でお宝ゲット!$15000貰う』か」
「うわ、マジかよ!逆転された……」
「ふふふ、面白くなってきた」
こんな感じでルーレットを回し、出た目の数字だけ道に沿って進む。これは普通の双六と同じだが、勝利条件はちょっと違う。ゴールに着いた時にどれだけ多くの金(当然だがゲームでしか使えない玩具)を所持しているかで勝敗が決まる。要するに、沢山金を稼いだプレイヤーの勝ちってことだ。
因みにこのゲーム、ゴール以外の全てのマスには蓋が閉められていて内容が分からなくなっている。ルーレットを回してマスに止まり、そこで初めてマスの蓋を開けて内容を見る事が出来る。大海原の旅は予測不能。実際に経験するまで分からないと……そういった製作者の計らいなのだろうか。
現在のところ、俺の所持金は$30000。サフィアは$56000。ピュラは$80000。そしてシルクが$45000。
順位で並び替えると、一位からピュラ、サフィア、シルク、俺といったところか。
「次、私ね〜!」
そして次はピュラの番だ。楽しそうに小さい手でルーレットを回した。
出た目は……9!結構進んだな……ゴールが近くなってきた。
まぁ、このゲームで重要なのは金だし……。
「……お姉ちゃん、これなんて読むの?」
「ん?どれどれ……『犯罪組織のボスの愛人を誑かして$50000貰う』……」
………は?
「…………」
「……犯罪組織……愛人……」
「……ってドロドロ過ぎるだろ!」
……実はこのゲーム、今日初めてやるから詳しく知らなかったが……なんでこんなのが書かれてるんだよ!
誰だよこんなの書いた奴!海賊のイメージが誤解されるだろうが!
「……なぁ、海賊ってこういうこともやるのか?」
「やんねぇよ普通の海賊は!つーか、普通の人生送っててもこんな展開滅多に無いぞ!」
「……ねぇお姉ちゃん、『たぶらかす』ってなぁに?」
「え!?あ、えっと……あ、後で教えますから、今はゲームを楽しみましょう!ね?」
「うん!」
危うくシルクにまで謝った認識を持たれるところだった。
全く……これ人生ゲームっつーより、波乱万丈ゲームじゃないのか?
にしても、これでピュラは$130000か……追い抜くのは厳しいな。
「では私も……」
今度はサフィアの番だ。あまり力を入れず、軽い感じでルーレットを回した。
出た目は……3。あまり大きい数字じゃないが……。
「『二人の愛の結晶が誕生!ご祝儀として各プレイヤーから$5000貰う』……うふふ♪」
「お姉ちゃん、すごーい!これで六人目だよ!」
なんと、他のプレイヤーからお金を徴収するマスに止まった。
ピュラが言った通り、これでサフィアの子供は六人目になる。もはや大家族だな……。
「うふふ♪六人も子供が……♪」
「……なんか、嬉しそうだなサフィア……」
幸せそうな笑顔を浮かべながら、みんなから$5000を受け取るサフィア。
合計$15000も貰えるのがそんなに嬉しいのか?
「ちょっと頭の中で想像してまして」
「想像?」
「将来のことですよ。このゲームみたいに、キッドの子供を沢山作って、温かい家庭を築く光景を思い浮かべたら幸せな気持ちになるのです♪」
「……子供……」
……ちょっと頭の中で想像してみた。
俺とサフィアの子供かぁ。やっぱりサフィアの血が通ってるんだから絶対可愛い子になるんだろうなぁ……。
青い髪とエメラルド色の魚の下半身を受け継いで、ピュラみたいに無邪気で……。
『パパ!だ〜いすき!』
「…………」
うおおおおおおおおおおおおお!!
やばっ!グッと来た!心から来た!
天使だ!この可愛さは天使だ!いやそれ以上だろこれ!
「……いいな……それいいな……」
子供かぁ……やばいな。今の話聞いたら急に欲しくなった。
膝にちょこんと乗せて、可愛い絵本を読み聞かせたりして……
「何ニヤニヤしてるんだ。気持ち悪い」
「ふふふ……って気持ち悪いってコラ!」
シルクの刺々しい発言によって現実に戻った。
思わずムキになっちまったが、俺も俺だな。性に似合わず妄想に耽るなんて。
「それよりほら、次はお前だろ?早いとこ進め」
「分かってるっての……」
シルクに急かされて、俺は駒を進める為に渋々とルーレットを回した。
出た目は……10!
「お、最大数か!これ結構進んだ……」
……って……え……?
「……『海神ポセイドンの気まぐれによって暴風雨が発生。所有している財産を半分失う』……」
……なにこれ?え?半分?
持ってる金を半分捨てろってか?
これ遠まわしに負けろって言ってるよな?
「えぇ……半分って結構大きいよね……」
「ポセイドン様……ゲームにおいても圧倒的な存在感……」
「ゲームの製作者は、よくこんな凶悪なマスを考えたな……」
一斉に憐れみの視線が俺に向けられる。
……てかさぁ……俺、さっきから取られてばっかりじゃねぇか。
なんで俺ってこういうゲームになると、とことん不利になるんだよ……。
「……だぁもう!持ってけドロボーだ!こん畜生め!」
「……誰が持っていくのですか?」
「……聞かないでくれ……」
半ば自棄気味に手持ちの所持金を半分放棄した。これで所持金は$15000。
……これ、本物の金じゃなくて本当によかったよ。そうでなかったら財政破綻どころじゃ済まないぞ……。
「ふ、お陰で大きく差が広がった。これで少しは余裕が持てる」
「……そう言ってられるのも今のうちだぞ。すぐに逆転してやるからな」
余裕の発言を出したのはシルク。軽く流すようにルーレットを回し、7の目を出した。
「どれ……『古代の神殿にて幻の大秘宝をゲット!$80000貰う』……」
「……って、なにぃ!?」
「出ましたよ!最高金額です!」
「すご〜い!」
「ははっ!やった!大秘宝だ!」
……なんでこいつ、こんなに運が良いんだよ。
おかしいだろ色々と……。
「ふふふ、なんだか子供の頃の夢が叶ったみたいで楽しいな」
「え?子供の頃の夢?」
楽しそうな笑みを浮かべるシルク。ボソッと言った子供の頃の夢とやらがどうも気になった。
「ああ、実はこう見えて、子供の頃は冒険者として世界を旅するのが夢だったんだ」
「へぇ……冒険者か……」
「これでも、幼少の頃から世界の国々の本を沢山読んでいたんだ。トルマレアと言う小さな国しか知らなかった私にとって、外の世界は大変興味深いものだった。自分が住んでる国と、世界に存在する国々はどう違うのか、この目で見たいと思ったんだ」
つまり、子供の頃は世界を旅したいと思っていたのか。王族の身分でありながら中々行動的な夢だな。まぁ俺は中々良い夢だと思うが。
「あと、少し補足するとな、世界を旅する夢を抱いた切っ掛けは本だけではない。この時代の魔物もそうなんだ」
「魔物が?」
シルクが言うに、夢を抱いた切っ掛けは本と魔物とのこと。
本はともかく、ここで魔物が出てくるのは意外だった。仮にもシルクは反魔物国家の王女のはずだが……。
「私が10歳の頃の話だ。当時、父上に連れられて同盟国を訪れていた私は、父上に内緒で魔物が潜んでいる森に言ってみたんだ。そこで出会ったスライムにラミア、アラクネにアルラウネにグリズリー……みんな優しい魔物たちばかりだった。世間では魔物は人間を食い殺すなんて噂されていたが、彼女たちは私を殺すどころか、『一緒に遊ぼう』と優しく接してくれた。その後は日が暮れるまで魔物たちと楽しく遊んだよ。今となっては良い思い出だ」
「なるほど……では、シルクさんは子供だった時から色々な魔物と関わってきたのですね」
「関わると言っても一度会っただけだったが……まぁそうなるな。あの日に分かったんだ。魔物の『本当の姿』をな……」
シルクは過去の思い出を懐かしむように、ゆっくりと瞳を閉じて何度も頷いた。
なんにせよ、これでようやく合点がいった。魔物を敵対する国の人間の割には、ピュラやサフィアとも親しく接しているのが不思議に思ったが、小さい頃に本当の魔物を知ったから敵対しなかったのか。
「道理で魔物に友好的だと思ったら……そういう事か」
「ああ。私はずっと前から魔物は凶悪な生物だと散々聞かされてきた。しかし、実際に会った魔物たちは皆優しかった。そこでふと思ったんだ。外の世界には、言い伝えや本とは違う真実が幾つもあるのではないかと。もしも世界に私の知らない真実が幾つもあるのなら是非とも見たい。今のこの世界を、この目で見たいと……」
「ほう……意外と好奇心旺盛なんだな」
世界を見たいか……なんとも具体的で、大きな夢だ。
だがまぁ、そういう計り知れない好奇心は冒険者に必要な要素だ。シルクにはある意味、王女よりも冒険者の方が性に合ってるのかもしれないな。
「そう言えば以前、俺たちと初めて出会った時はトレジャーハンターとか名乗ってたが、そう言ったのもそれが原因か」
「いやまぁ……今でこそ違うが、あの時はまだ警戒していたからな。咄嗟に嘘を並べただけだ。トレジャーハンターに憧れてるのは事実だが」
とまぁ、こんな感じで雑談を交えていたら……。
「お兄ちゃん、次お兄ちゃんだよ」
「え?あ、俺か……って……」
早くも俺の出番が来たようだ。
サフィアとピュラがどれくらい先に進んだのか見てみたら……。
「……あれ?まさか二人ともゴールした?」
「ええ、残るはキッドとシルクさんですよ」
「見て見て〜!こんなにもらっちゃった♪」
なんと、もう既に二人ともゴールに着いていた。サフィアはやんわりと微笑を浮かべ、ピュラは無邪気に玩具の札束を広げて俺に見せている。
ピュラは$130000、サフィアは$71000か。稼いだ金からして、これでピュラが一位なのは確定した。サフィアはゴールしたから、これ以上手持ちの金が増える事は無い。
となると、残った俺とシルクのプレイングで順位が決まる。ここからが決め所だな……。
「よ〜し、ここで一発逆転してやる」
「……その発言、失敗フラグだな」
「うっせぇ!」
さて……出番が来たのはいいが、ただ単純にゴールすればいいってもんじゃない。今の所持金はシルクと比べたら結構大佐があるから、ここで稼がなければならない。
そもそもこのゲーム、マスの内容はともかく金の増減が激しいんだ。何があっても不思議じゃない。ここは一つ、一気に$100000以上貰えるマスに止まるしかない!
「よし……そらよ!」
右手に念を送ってルーレットを回す。カラカラと音を音を鳴らしながらルーレットが示した数字は……。
「……7だ」
出た目の数だけ駒を進める。
「……あ……」
そして、その止まったマスは…………。
「…………」
…………ゴールだ。ピッタリと。
「あ、お兄ちゃんも上がった!」
「…………」
……いや、普通の双六なら喜ばしいんだろうけど……。
「最後は私か。さて……お、私も終わった」
「これで終了ですね。さて、結果は……」
……これ、金を稼ぐゲームだからさぁ、先にゴールしてもあまり意味無いんだよな。
だから……。
「一位、ピュラ。二位、シルクさん。三位は私で、四位は……」
……あぁ、そうだよ。俺だよ、最下位は。
なんか今日は感動するくらい運が無いな……。
「わ〜い!私一番!」
「うふふ、よかったですねピュラ」
「所持金$15000って……少ねぇなぁおい……」
「まぁいいじゃないか。最後には運良くピッタリとゴールに着いたのだし」
「あまりフォローになってねぇよ」
一位になって喜ぶピュラに、それを微笑ましく見つめるサフィア。そしてフォローになってないフォローを送るシルク。
ゲームが終わってそれぞれ反応を示す中、俺は己の悲運さに半ば悲しくなっていた。
所詮はゲームだし、特に何か変わるって訳でもないのは分かってるが、それでもやっぱり負けたのは悔しく思う。まぁ、一々気にする必要も無いけどな……。
ゴロゴロゴロ……
「ん?」
「!?」
と、ゲームが終わるタイミングで外から轟音が聞こえた。この音に反応してピュラがビクッと小さな身体を跳ね上がらせた。
「これは……雷か?」
「だろうな。外が悪天候だから、まさかと思っていたが……」
「えぇ〜、やだなぁ……恐いよ……」
「よしよし、大丈夫ですよピュラ」
どうやら雷が降り始めたらしい。雷と聞いてピュラが怯えた様子でサフィアにしがみ付いていた。
空にはどす黒い積乱雲が広がってたし、よもやと思っていたが本当に降ってくるとは……こりゃ海が荒れるぞ。
……ん?待てよ……雷?
「……まさか……」
「……キッド?」
悪い予感が脳裏を過ぎり、恐る恐るとカーテンが閉められた窓へと歩み寄る。そしてその窓のカーテンを開いて外の様子を確認した。
ゴロゴロ……
「……なんだ、普通の雷か」
大粒の雨が海面へと降り注がれ、その中に混じるように光り輝く小さな雷が天から舞い降りていた。
外の雷が普通のものだと分かった途端、妙なことに安堵のため息を吐いてしまった。
「……まさか、奴だと思ったのか?」
「ん、ああ……そのまさかだ」
「いくらなんでも、ピンポイントで此処を特定して来るとは思えないが?それにトルマレアで待ってると、あいつ自身が言ってただろ」
「あいつなら特定もやりかねないと思うぜ」
俺が想定した人物を察したのか、シルクは諭すように口を開いた。
確かにシルクの言ってることは尤もだが、あいつなら俺たちが考えもしないことを平然とやってのけそうだ。気まぐれで此処まで来るのもおかしくない。
「あの……先ほどから誰のことを言ってるのですか?」
サフィアは分かっていないのか俺たちに訊いてきた。
誰のことかって?それは勿論……。
「ベリアルだよ。あの冥界の雷使いだ」
「ベリアルって……以前キッドが話した、元カリバルナの公爵……」
「そう、そいつのことだ」
例の宿敵、ベリアルだ。
奴こそ全ての黒幕で、かつて俺の故郷で公爵として暗躍していた男だ。あの日、奴に会った時は流石に度肝を抜かれたが、まさかこんな流れで奴と戦う事になるなんて思わなかった。
奴はいずれ親魔物国家となったカリバルナにも手を出す気でいる。そんな真似をさせる前に、俺がなんとかしてベリアルを食い止めなければ……。
おっと、余計な思案に暮れちまった。今はサフィアたちとの貴重な時間を楽しまなければ……。
ゴロゴロゴロゴロ!!
「ひゃあっ!!」
「おおっ、今のは大きかったな……」
先程とは比べ物にならないほど大きな轟音が響き渡り、ひどく驚いたピュラはサフィアに強くしがみ付いてきた。シルクも今の雷には驚いたようで、ホンの僅かだけ身体が跳ねた。
「こりゃあ長く続きそうだな……夜明けまで止みそうにもないな」
「お兄ちゃん、早くカーテン閉めて!」
「あ、悪い」
窓越しで悪天候をまじまじと眺めていたら、怯え気味のピュラに促されたのでカーテンを閉めた。音は勿論、雷の光も苦手なんだろうな。
しかしまぁ、こりゃ久々の大荒れだな。見張り番は早めに避難させた方がいいかもしれないな。仮に敵船が近付いてるとしても、こんな暴雨の中じゃ戦う気力も無いだろうし。
それにしてもポセイドンめ。こんなに海を荒くさせてどうしたんだよ。何か腹の立つことでもあったのか?
ピシャーン!ゴロゴロゴロゴロ!!
「ひゃあ!!」
「な、なんか急にパワーアップしたな……」
「ですね……」
「すげぇなぁおい……」
良いタイミングで高威力の雷が鳴り響いた。
……まさかポセイドン、俺の思案に雷で答えたのか?
いや、流石にそんな訳無いか。
「ふぇ〜ん!恐いよ〜!」
「よしよし、大丈夫ですよ」
雷が恐くてサフィアに擦り寄ってるピュラ。そんなピュラの頭を優しく撫でるサフィア。
こうして見ると、やっぱり微笑ましい姉妹だ。サフィアも良いお姉さんだな……。
だがポセイドン、ピュラが恐がるから雷も程ほどにしてくれ。
ゴロゴロ……
「……今度のは穏やかだな」
「雷って、こんなに落差が激しいのでしょうか?」
「さぁな」
……おかしいな。
なんか、俺が心の中でポセイドンに言葉を送ったら、それに反応するかのように雷が鳴ってるような気がする。
いや、ただの偶然だってことは勿論承知してるんだが。
「…………」
試しにもう一回。
なぁポセイドン、最近調子どう?
ゴロゴロ……
…………いやまさかそんな……。
「さて、私はそろそろ部屋に戻るとしよう」
「あ、もうお休みになりますか?」
「ああ、もう少しでトルマレアに着くだろうからな。その時に備えてしっかりと睡眠を取らなければ」
……もう一回。
ポセイドン、今日の晩飯なに食った?
ゴゴゴロゴ……
……海老ピラフ?
……って、んな馬鹿な。空耳だろうよ。そもそも偶然なんだし……。
「それよりピュラ、大丈夫か?」
「え、あ……うん。大丈夫だよ」
……まぁ、偶然だからな。そう、これは偶然。
こういうことって時々あるだろうし……。
「よかった。だいぶ落ち着いてきたみたいですね」
「うん、雷の音も収まってきたし、もう平気だよ!」
………………。
「さ、私たちも寝る準備をしましょうか」
「うん!」
…………。
ポセイドンのバーカ。すっとどどっこい。おたんこなす。寝小便たれ。お前の母ちゃんめーがーみー。
……………………。
……鳴らない。
って、そりゃそうだよな。なんせ偶然なんだし。そもそも、インキュバス一人の声なんて聞こえる訳無いよな。
俺も何を一人で馬鹿な事を思ってるんだか。今思ったことサフィアに知られたらこっ酷く怒られるだろうな……。
「キッド、私たちはもう寝ますけど」
「おう、じゃあ俺も寝るか」
さてと、俺も今日はここd
ピシャァァァァァァァン!!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!
ドォン!!ドォン!!ドカァァァァァン!!
「きゃあああああああああ!!」
「ひゃあああああああああ!!」
「いやあああああああああ!!」
「ちょっ!えっ!?ちょっ、まっ!えぇっ!?」
今までに無いマックスパワーの雷が来たぞ!ここに来て時間差かよ!
ピシャァァァァァァァン!!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!
ドォン!!ドォン!!ドカァァァァァン!!
「ポセイドン様が怒ってるー!!」
「なんでなんで!?どうなってるの!?」
「ふえぇぇぇぇん!やだよ〜!でかいよ〜!光ってるよ〜!恐いよ〜!びぇぇぇぇぇぇん!!」
サフィアとピュラは慌てふためき、シルクはテーブルの下に潜って子供のように泣いている。
ってか、この雷、むちゃくちゃ怒ってるよな!?なんで!?
まさか、本当に聞こえてるんじゃ……いや、有り得ない。そうであって欲しい。
ピシャァァァァァァァン!!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!
ドォン!!ドォン!!ドカァァァァァン!!
「この威力で連続かよ!」
「ポセイドン様ー!お怒りをお鎮めくださいー!!」
「もうやだ〜!!」
「○×%■△#*@!!!」
「ちょ、お前ら落ち着け!大丈夫だから!落ち着けってのー!!」
今までに無い雷の乱舞に混乱状態のメンバー。サフィアは乱心だし、ピュラは恐がってるし、シルクなんか意味不明の奇声を放っている。
「う……うぅ……」
「ん?」
「ふぇぇぇぇん!キッド〜!助けて〜!!」
「ちょ、待てサフィア!落ち着けよ!わわわ!暴れるな!」
すると、急にサフィアが泣きべそをかきながら俺に抱きついてきた。
「あ!お姉ちゃんズルイ!私も〜!」
「わわっ!ピュラ!お前まで!わ、ちょ、二人とも冷静になれって!」
つられるようにピュラまで俺にしがみついて来た。
二人揃って俺を抱きしめたまま暴れるものだから、今にも倒れそうでちょっと危ない。
「ぶぇぇぇぇん!びぇぇぇぇん!うわぁぁぁぁん!嫌です恐いですいけずです〜!」
「……お姉ちゃん……」
「ふんゅげ★●$+〜おぼげ^ー;▼!!!!」
「お前ら!頼むから落ち着けー!!」
もう大パニック。
寝る前にこんな大騒動の鎮圧を課せられるなんて……。
……とりあえず謝るしかない。
ポセイドン、ごめんなさい。あれ嘘だから怒らないでくれ……。
〜〜〜数時間後〜〜〜
「ふみゃあ……すぴぃ……」
「ガクガクブルブルガクガクブルブル……」
「……はぁ……」
あの雷騒動から数時間後、外の雷もだいぶ穏やかになった(と言うか、怒りが鎮まった)お陰でみんなようやく落ち着いた……一人を除いて。
「サフィア……もう大丈夫だって……」
「で、でも……恐いものは恐いです……」
「別に雷はお前を頭から食ったりしないから……」
「でもぉ……」
ここは船長室……もとい俺の部屋。早くも就寝時間になったから俺も自分の部屋で寝ることにしたのだが、雷に怯え上がってるサフィアとピュラにせがまれて一緒に寝ることになったのだ。
ベッドの上で仰向けになり、二人同時に腕枕をする俺。右腕にはピュラ、左腕にはサフィアが陣取ってる状態だ。初々しいつぼみと綺麗な花に囲まれるのは良い気分だが……。
「もうちょっと力緩めてくれないか?眠れないんだが……」
「え……キッドは私に抱きしめられるのが嫌なのですか?」
「いや、そうじゃなくて、きつく締めすぎて痛いんだ」
「でも、私はもっとキッドを抱きしめたいです」
「だから、それは構わないけど加減して欲しいんだよ俺は……」
サフィアだけずっとこの調子だ。
ピュラはだいぶ落ち着いたのか、すやすやと気持ち良さそうに寝ている。だが、サフィアは未だに怖がっていて、ずっと俺に引っ付きっ放しで全然寝る気配が無い。さっきは平気な顔してたが、本当は恐かったんだな。
「よしよし、大丈夫だからな」
「うみゅう……」
サフィアの背中を擦って、安らかな眠りに誘った。
それにしても、誰にも苦手なものがあるが、まさかサフィアがこれ程雷が苦手だとは思わなかった。さっきだって大声で泣きながら俺から離れようとしなかったし。
ある意味、雷使いのベリアルとの相性は最悪だったりするな。間違っても会わせないようにしないと。
「……あの〜、キッド……」
「ん?」
サフィアが意味ありげな視線を俺に送ってきた。
「ちょっと……お手洗いに行きたいのですが……」
トイレに行きたいのか。でもわざわざ俺に言う必要も無いだろうに。
「そうか。わざわざ許可を得る必要も無いのに」
「いえ、それが……その……」
サフィアは気まずそうに……そして縋るような眼差しで俺を見つめながら言った。
「一緒に……来てくれますか?」
「……は?」
==========
お化けが恐くてトイレに行けなくなった話はよく聞く。
だが、雷が恐くてトイレに行けないなんて初耳だぞ。
「なぁ……今更言うのもアレだが、俺って同行する必要あるのか?」
「また雷が鳴った時にキッドが傍に居なかったら、誰も頼れないじゃないですか」
「そんな大げさな……」
静けさ漂う通路を歩き続け、船長室から一番近いトイレを目指している。
結局、サフィアに押し切られる形で、トイレまで送り迎えする羽目になってしまった。ピュラは起こさないように腕から離してそっとしておいたが、万が一にも夜中に目を覚ますかもしれない。一人で居させるのも可哀想だから、早めに戻ってやりたいところだ。
「キ、キッド……絶対離さないでくださいね?一人で置いて行ったりしないでくださいね?」
「俺はそんなことしないよ。それに、どっちかって言うとサフィアが一方的に掴んでるんだが……」
外は未だに暴雨が降り続いており、雷が鳴る気配は未だに消えてない。恐らく、これからもまた何度か鳴り響くだろう。
サフィアもそれを知ってか、何時降り注がれるか分からない雷に怯え、ビクビクと震えながらも俺の腕を掴んで一歩一歩進んでいた(下半身は人間の足に変えてる)
「ほら、着いたぞ」
ようやく目的のトイレに着いた。明かりが点いてないから、誰も入ってないだろう。
「…………」
「……ん?どうした?入らないのか?」
「いえ、あの……」
お目当てのトイレに来たのに、何故かサフィアは入ろうとしない。そしてまたしても縋るような眼差しを俺に向けた。
「…………」
「……ど、どうしたんだよ……」
「……あの……その……」
サフィアは俺とトイレの扉を交互に見ている。
「うぅ……」
そしてキュッと俺の服の袖を引っ張って、トイレの扉を指差しながら助けを請うような表情で俺を見つめてきた。
…………あれ?まさか……え……?
「……なぁ、まさかとは思うけど……そのまさか?」
「……(コクン)」
俺が扉を指しながら聞くと、サフィアは無言で頷いた。
……まさか……こう来るとは……。
「……マジで?」
「……(コクコク)」
「いやそんな……」
「お願いです……」
……いやでもさぁ……流石にさぁ……。
「二人で入る訳にはいかないだろ……」
「でもぉ……」
夫婦とは言え、二人で入るのはちょっと……。
「あのな……別に俺、逃げたりしないから。サフィアが出てくるまでちゃんと待ってあげるから」
「そうじゃなくて、入ってる時に雷が鳴ったら誰も頼れる人が……」
いくら雷が恐いからって、そこまでするのは……。
だいたいトイレって二人で入るものでもないだろうに。
それに、すぐ近くでサフィアが用を足すって思うと……なんかこう……小恥ずかしいんだよな……。
「サフィア……もう子供じゃないんだからさぁ……」
「恐いものは恐いのです」
「考えてみろ。俺の前で用を足すんだろ?恥ずかしいだろ?」
「…………」
俺の問いに無言になるサフィア。
よしよし、少しは効いたみたいだな……。
……と思ったら。
「……いいですよ……」
「え?」
「恥ずかしいですけど……キッドなら……」
……おいおい、効果無しかよ。
「いや、サフィア……」
「確かに……見られるのは恥ずかしいですけど……」
サフィアはちょっぴり恥ずかしそうに、上目遣いで俺を見つめながら静かに言った。
「それでも……キッドと一緒に居たいのです。キッドと……離れたくないです……」
「…………」
……台詞だけ聞けば凄く嬉しいことなんだが、状況が状況だからなぁ……。
いや、嬉しいことは嬉しい。これは確かだが。
「お願いです……すぐに終わりますから。小さい方だけですから」
「いや、そういう問題じゃないと思うが……」
「キッドォ……」
ついには服の袖をギュッと握り、涙目で助けを請うような視線を向けられてしまった。
……やめてくれ……そんな目で見つめられたら……もうさ……断れなくなるだろ……。
「……これっきりだからな」
「……はい!」
結局、この嬉しそうな笑顔には敵わない駄目夫な俺だった……。
==========
……なんなんだ、この状況は……。
「ごめんなさいキッド。すぐに済ませますので……」
「あ、ああ……」
いざ二人で入ってみたら思いのほか狭い。トイレなんて一人で入るのが常識だから、二人で入ったら狭く感じるのは当たり前だろう。
だが、ここまで狭く感じるとは思わなかった。事実、ほんの少し手を伸ばせばサフィアに触れるほどの至近距離だし……。
「…………」
まじまじと便座に座っているサフィアを見つめた。
足は何時もの人魚の下半身とは違って、人間のものに変わっている。寝巻きのズボン部分を下にずらし、綺麗な太ももを露出していた。
そう言えば、人間が使用する便座は人魚の姿だと使い辛いとサフィアから聞いた。確かに性器の位置からして魚の下半身だと不都合が……。
「……あ、あの……」
「え?ああ、悪い。そ、そうだよな。ジロジロ見られると恥ずかしいよな」
「そ、そうですね……」
頬を赤く染めてるサフィアを見て我に返った。
そうだった……そりゃ見られたら恥ずかしいよな。
「じゃあこうして……ほら、これなら大丈夫だろ?」
「は、はい」
俺はサフィアに背を向けて、更に両耳を手で塞いで音を遮断した。
これなら見えないし何も聞こえない。サフィアも少しは恥ずかしさが減るだろう。
「…………」
「…………」
間もなくして沈黙が狭い個室を支配する。背を向けてるからサフィアが今どうしてるか分からなかった。いや、サフィアのために分からなくしてるのだが。
「…………」
しかし改めて考えてみれば……なんだこれ。
用を足してる妻に、その傍で背を向けて耳を塞ぐ夫。傍から見ればシュールな事この上ない。
それに夫婦の間柄とはいえ……声をかけ辛い。いや、迂闊にかけちゃいけない気がする。
「…………」
ところで、サフィアが済ませたら……どうやって確認すればいいんだ?
まさか振り向く訳にもいかないだろうし……なんてこった。
「キッド」
あれこれ思案に暮れてると、背後から服の裾が引っ張られるのを感じた。
間違いなくサフィアだ。もう終わったから知らせてくれたのかな?
「……もういいのか?」
「はい、たった今……」
ゴロゴロゴロゴロ!!
「きゃあああ!!」
「うぉっ!?」
黒雲から雷が舞い降りると同時に背中から強い衝撃を受けた。あまりにも突然の出来事に思わず耳から手を離してしまった。
「サ、サフィア……」
「ガクガクブルブル……」
俺の腰に細長い華奢な腕が回されている。ついでに背中から人肌の温かさを感じた。雷に驚いてサフィアが後ろから抱き付いてきたんだ。
「サフィア、大丈夫か?」
「うぅ……はい……」
俺の腰からサフィアの腕が解かれたところで、そっと踵を返してサフィアの様子を見てみた。
そこには腰が抜けて動けないでいるサフィアが居た。ちょこんと便座に腰掛けたまま、半泣きで潤んだ瞳で俺を見つめている。更に股間の辺りには何やら液体が溜まっていた。
……あれって、愛液じゃないよな。たった今用を足してたところなんだし。
だとしたら……。
……これはこれで新手のエロさが……。
「えっと……動けるか?」
「びっくりし過ぎて……手も動かせそうにないです……」
どうやら今の雷で驚いた所為で身体が動かないらしい。まぁ、今の雷も結構大きかったし仕方ないか。
「……なんなら俺が後処理をしてやろうか?」
「え?今なんて?」
「いやだから、俺が濡れた部分を拭いてやろうかと」
その場を和ませる為にほんの冗談を言ってみた。それを聞いたサフィアはキョトンとした表情で俺を見てきた。
「…………」
「…………」
またしても辺りを漂う静寂。
……ホントになんだよ、この状況は。
ってか何言ってるんだよ俺は。馬鹿か。アホか。ヘボか。
全く、我ながら恥ずかしい……。
「……で、では……お言葉に甘えて……」
「……え?」
なんと、返ってきた答えはOKだった。
マジか……てっきり『そ、それくらい自分でやります!』みたいなことを言われると思ったのに。
「……あの、いいのか?」
「はい」
「本当にいいのか?」
「はい。本当は恥ずかしいですけど、キッドがしてくれるのなら……喜んで……」
サフィアは赤く染まった顔を逸らしながら、チラチラと視線を俺に向けて恥ずかしそうに言った。
……参った。まさか承諾されるなんて予想外だ。俺はそんな気は無かったのに。
だが……こんなサフィアの可愛い姿を見られたら今更後に退けない。それに、男は二言の無い生き物だと昔から言われてきた。冗談でも俺が言ったんだから責任取らないとな……。
徐にトイレットペーパーを右手に巻きつけ、適当な長さに達したところで切り取った。
「じゃあ、ちょいと失礼……」
「あ!ま、待ってください!」
「?」
いざ行動に移そうとしたら、突然サフィアに止められた。その時にはサフィアの下半身が光輝き、一瞬のうちにサフィアの足が人間のものから何時もの魚の下半身に戻った。
魔術で元に戻ったか……でも何故今になって?
「なんで元に戻ったんだ?」
「キッドに触られる時は、出来れば本当の私の姿でいたいのです。これが、本当の私ですので……」
そう言いながらサフィアは魚の鱗で隠れている秘部を露にした。状態はさっきと変わらず濡れたままだ。
言ってる意味はよく分からないが、とりあえず本当の自分に触れて欲しいってのだけはなんとなく分かった。それにしても今の発言、まるでこれからセックスでも始めるかのようにも聞こえたが、俺の気のせいか?まぁ一々気にしてもしょうがないか。
「じゃあ今度こそ……」
「ど、どうぞ……」
俺は改めて身を屈み、トイレットペーパーが巻かれてる右手でサフィアの秘部に触れた。
「こんな感じか?」
そっと優しく、痛めないように気を付けて濡れてる秘部を拭う。
「あ……はぁ、あぁん……♥」
「……気が散るからそのエロい喘ぎ声を抑えてくれないか?」
「ご、ごめんなさぁい……でも、キッドに触られるのがとても気持ち良くて……はぁん……」
手を往復させる度にサフィアの口から快感の喘ぎ声が漏れてくる。魅力的だが、そっちの方に気が行って集中できない。
「まさか、後処理の時はいつもこんな声を出してるのか?」
「そんなことは無いです……ひゃっ!今は、キッドに触られてるから、とても興奮して……ふぁ……んぁあぁ……♥」
そんなに卑猥に動かしてるつもりは無いんだが……やっぱり自分でやるのとは違うものなのか?
「あぁ……だめぇ……感じますぅ……」
「サ、サフィア。そんな声出したら外に聞かれるぞ」
「わ、分かってますけど……ひゃん!」
忘れかけてたけど、此処はトイレ。他の部屋と比べたら大きい音が外に聞こえやすい。もしも外から誰かに聞かれて、二人で入ってるなんてバレたら……恥ずかしくて死にそうになる。
ただ、大きい声を出してるのはサフィアなんだが。
「……にしてもさ……」
一つおかしなことに気付いた。
俺はキチンと拭いてあげてるのにさ……。
「なんで拭い切れないんだ?」
「うっ!え、えっとですね……」
さっきから拭いても拭いても全然終わる気配が無い。いや、寧ろ段々濡れてると言うべきか。拭く度に秘部の割れ目から透明な液体が滴れているように見える。
……これって……小便じゃないよな……?
「この液体さ、サフィアが出してるんじゃないの?」
「そ、それは……紙越しとは言え、キッドの手で感じ過ぎちゃって……」
やっぱりこの液体は愛液だったか。流石に右手のトイレットペーパーも水分を取りすぎてふにゃふにゃになってる。指一本で簡単に突き破れそうだ。
……あ、そうだ。ちょっと悪戯してみようか。
「……この辺りかな?」
「え?あの、キッド?どうかしましt」
「そらっ!」
ズボッ!
「ひゃぅうん!?」
人差し指でトイレットぺーパーを突き破り、そのままサフィアの膣内へと突入させて。ちょっとした不意打ちに、サフィアは身体を仰け反らせながら驚きと快感が程よく混ざった声を発した。
「ふぁぁ、キッドォ……それズルイですぅ!」
「ごめんごめん、つい出来心で……」
「はうぅ……キッドったら……ひゃぁっ!」
頬を膨らませて恨めしげな視線を向けるサフィア。その表情がとても可愛く見えて、思わず膣内の指をかき回した。
「ひゃぁん!あぁ、だめぇ……気持ち良い……」
「サフィアの中は温かくて気持ち良いな」
「そ、そんな……はぁん!」
生温かい膣を指の腹でなぞるように愛撫した。刺激されて溢れ出てくる愛液が指を濡らす。弄る度に指に纏わり付いてる愛液がピチャピチャと音を鳴らしてるのが聞こえた。
……って何をやってるんだ俺は。入れるだけで終わりだったはずなのに。
さて、サフィアには悪いけどこのへんで……。
「もぉ……そんなことするのなら私だって……」
「え?」
すると、サフィアは俺のズボンに手を伸ばし、慣れた手つきでベルトを解いてきた。
「え、いや、ちょっ!何やってんだ!?」
「何って……仕返しですよ♥」
「仕返しって……おわっ!」
温かい笑顔を見せながら素早くズボンと下着を脱がし、露になった俺の性器を優しい手つきで扱き始めた。
「ま、待てってサフィア!何もこんな所でやらなくても……!」
「分かってますけど……私、おマンコを散々弄られて我慢できなくなったのです。それに、私ばかり触られるのも不公平でしょう?」
「いや、不公平とかそういう問題じゃ……ってか話聞いてるのか!?」
サフィアの温かい手が肉棒を擦る度に、身体中に快感の電気が走る。サフィアの手コキはずっと前から数え切れないくらいしてもらってるが、やっぱり何度味わっても気持ち良い。あっという間に俺のペニスは勃起状態となってしまった。
「流石ですね♪もうこんなに大きくして……」
「そりゃあ、サフィアの手が気持ち良いから……」
「うふふ、これで先程まであそこを弄られてた私の気持ちが分かりましたか?」
……確かに、少しだけ分かった気がする。
自分で触るのと、人に触られるのとは違いすぎる。サフィアも同じ気持ちだったのだろうか?
……って、ちょっと待て。気持ち良いけど、こんな所でやっていいことじゃ……。
「……キッド……」
何を思ったのか、サフィアは俺のペニスから手を離し、おねだりするような眼差しで俺を見つめてきた。
これは……まさか……。
「私……もう我慢できません。お願いですから、キッドの逞しいおちんちんを、ここに……」
……やっぱりそうなったか。
サフィアは俺の人差し指が入ってる肉壷に手を添えて、俺のペニスを求めてきた。
「求めてくれるのは俺としても嬉しいけど、此処でやるのは流石に不味いんじゃ……」
そう言いながら、俺は膣に入ってる指を抜き、愛液でビショビショに濡れたトイレットペーパーを便器の中に捨てた。
「でも……こんなにムラムラしたままだと眠れないです。それに、私の身体をこんなに弄ったのはキッドですから、責任を取ってもらわないと……」
「いや、そうだけど……せめてベッドまで……」
「ベッドにはピュラが居るから無理です。キッドだって、ここまでやっておいてお預けは辛いでしょう?」
「うっ……」
確かに……ピュラが寝てるベッドでやるのは無理がある。それに正直なところ、俺も射精せずに終わるのは殺生だ。
だとしたらやっぱり……此処でやるしかないか?
「ねぇ、キッド……早くあなたを感じさせてください……」
……とんでもない展開になってしまった。
サフィアが用を足して、それで終わりだったはずなのに、後処理の段階に入ってから話が予想外の方向に向いた。今思えば、俺が後処理をやるなんて言った時点でこんなことになったのかもしれない。
だが……ここまで来たら、もう後には戻れない。
「……一回だけだぞ?」
「……はい!」
同意を得るなりサフィアはパッと嬉しそうな笑みを浮かべた。
穏やかな性格とは言え、サフィアも魔物娘。性に対する貪欲さは底無しという訳か。
「では今度はキッドが此処に座ってください。その方がやり易いと思いますので」
サフィアはゆっくりと立ち上がり、俺を便器に座らせた。そして魚の下半身で器用にも俺の膝に跨ってきた。
ギシッ
……今ちょっと嫌な音が聞こえた。これ、便器から鳴った音だ。どう考えても重量オーバー。
「えっと……ここですね……」
悲鳴を上げる便器など露知らず、サフィアは自分の性器の割れ目を俺の肉棒の先にあてがった。
「それでは、失礼します……ん、はぁっ……」
ずれ落ちないように俺の肩に手を乗せて、ゆっくりと腰を下ろしてきた。俺の勃起したペニスが亀頭から少しずつ肉壷の中へと導かれる。割れ目から溢れ出る愛液のお陰で、全く抵抗を感じずにすんなりと入っていくのが分かった。
「ああっ!はぁん……入ったぁ……♥」
「くっ……サフィアの中、気持ち良いな……」
「はい……私も、キッドのおちんちん……熱くて硬くて、とっても気持ち良いです……♥」
根元まですっぽりと収まるなり、サフィアは幸せそうに微笑みながら俺の頭をギュッと抱きしめてきた。豊満な胸を顔に押し付けられる。衣服の上からでも、サフィアの胸の柔らかさが頬から伝わってきた。
「キッドォ……あぁ、ひあぁっ!んあっふ、んん!」
「うあっ!そんな急に……!」
「だってぇ……はぁっ!ジッとしてられないんですもの……あ、んひゅぅっ!」
サフィアの方から上下運動をしてきた。熱くて締まりの良い膣が動く度に勃起ペニスを刺激させる。中の突起が肉棒に絡みつき、こすり付ける度に快感が走ってきた。
何時味わってもサフィアの名器は気持ち良い。だが、俺もやられっぱなしでは男としての面子が立たない。サフィアの腰を掴んで膣内の逸物を真上に突き上げた。
「ひゃぁんっ!す、凄いぃ……突かれるの良い!あぁん!あぁ、はぅっ!」
「サフィア、もう少し声を抑えないと、誰かに聞かれるって……」
「で、でもぉ……ふぁっ!我慢できないですぅ……あっ!はんっ!んひゃぁ!」
俺が突き上げる度にサフィアは淫らな喘ぎ声を発した。ただでさえ外から聞かれるリスクがあるのに、サフィアは快楽の方を選んだようだ。
もはや聞かれるのが本望とでもばかりに快感を声で表している。外の雷も蚊帳の外。ただひたすら快感を求める雌と化していた。
「あっ!はっ!ふぁあん!キッド……キス、キスしてぇ……♥」
「サフィア……」
「キッドォ……ん♥ちゅ……ちゅう、んん、ちゅっ……♥」
俺の頭に絡み付いてる腕が解かれて、頭を動かせるようになった。顔を包んでいた胸の感触に名残惜しさを感じつつも、リクエスト通りに顔をあげてサフィアと唇を重ねた。
「んん、くちゅう……んちゅっ、じゅるるぅ、んぁ、はぁ……ん、ちゅる、んん……」
ただ重ねるだけで終わる訳が無い。互いに舌を差し出し、より濃厚で卑猥なキスを交える。生温かい舌に纏わり付いてる唾液がピチャピチャと響き、より一層気持ちを昂ぶらせた。
……胸も揉んでみよう。
「ちゅっちゅ……んはぁっ!?」
「あ、スマン。痛かったか?」
「い、いえ、大丈夫です。ただ、びっくりしただけですので……ちゅっ、れろぉ……んん、ちゅぅ……」
サフィアの衣服の隙間から右手を忍び込ませて、大きな胸を鷲づかみにしてみた。サフィアの方は一瞬驚いたようだが、気を取り直して再び深いキスをしてきた。俺も唇を受け止めつつ、腰のピストン運動に励みながら柔らかい胸を揉みしだいた。
「んちゅっ、んん……凄いです……こんなに気持ち良くされて……あっ!はぁっ!私、とても幸せですぅ♪」
「あはは、そうかい。そう言ってくれて、光栄だな……!」
「キッド、キッドォ!はぅんっ!んはぁっ、ひゃっ、はぁぁん!」
もうそろそろイきそうになってきたのか、サフィアの喘ぎ声も段々激しくなってきた。俺も自然と腰の動きが激しくなり、もう少しで射精しそうになる。
「キッド……はひぃ!私、もうイキそうです!」
「俺も、そろそろ……!」
「は、はい!出して、ください!このまま、中にいっぱい出してくださぁい!は、はぁ!あはぁん!」
腰の動きを最大限に激しくして、ラストスパートをかける。二人同時にイく瞬間も間近だった。
「キッドォ!あ、はぁん!んひゃぁっ!イく!もうイッちゃいますぅ!」
「お、俺も……このまま出すぞ!」
「はいぃ!出してぇ!いっぱい注ぎ込んでぇ!あっ!んはぁっ!私も、もう!はぁっ!あっ!ひあああああ!!」
膣の最奥に達したところで、逸物から大量の精液が噴出された。子宮に精液を注がれて絶頂に達したのか、サフィアはビクビクと痙攣している身体を仰け反らせた。
「はっあぁ……止まらないです……」
オーガズムで恍惚に浸るサフィア。身体の力が抜けたようで、ぐったりと俺にもたれかかって来た。激しく動いて掻いた汗が俺の鼻を刺激するが、これっぽっちも不快に思わなかった。
「ふぅ……素敵でしたよ、キッド♥」
満足そうに微笑みながら、サフィアは俺の額にキスをした。
==========
「キッド……ごめんなさい……」
「え?なんだよ急に?」
あの情事から数分後、後処理を終えた俺とサフィアは船長室へと戻ることにした。その道中、突然サフィアが申し訳無さそうに俯きながら謝ってきた。
「いくら雷が恐いからって、ここまで付き合せてしまって……おまけに一緒に入ってもらって……なんだか、迷惑掛けてばかりですよね」
「……そりゃあ、せがまれた時は度肝を抜かれたが……」
確かに一緒に入ってとお願いされた時は驚いた。まさかアレほどまで一緒に居て欲しいと思われるなんて。まぁ、頼りにされてるのは全然嫌じゃないんだが。
「はぁ……冷静に考えて見れば、18歳にもなって雷くらいでトイレに行けないなんて。挙句の果てに一緒に入ってもらうなんて……」
サフィアは俺を連れてきたのを申し訳なく思ってるようだ。ちょっとした自己嫌悪って奴か。そりゃあトイレなんて一人で入るのが常識だが……。
「夫をここまで振り回すなんて、妻としては駄目ですね……」
「おいおい、そんなに落ち込まなくてもいいだろ?」
「落ち込みたくもなりますよ……」
かなり気にしてるのか、トイレを出てから元気が無い。
「……気休めとか関係無しとして、別に気にしなくていいんじゃないの?」
そんなサフィアの肩を抱き寄せた。
「俺さ、別にトイレに付き合うくらいなんとも思ってないから、そんなに気にするなよ」
「で、でも……」
「夫婦ってのは、世話を焼かせ合ってなんぼのものだろ?寧ろ、これくらいで迷惑だなんて思う方がおかしい。俺は、サフィアが一緒に来て欲しい所なら何処でも付いて行ってやれるからな」
励ましとか慰めとかじゃなく、本当にそう思っている。サフィアが困っていたら、俺が手を差し伸べる。それは、何時も胸の奥に秘めてる心構えでもある。それくらいの気持ちすら持ち合わせてないようじゃ、俺の方が夫失格だ。
「キッド……ありがとう!」
サフィアは嬉しそうに、俺の腕に抱きついてきた。
「私……幸せですよ!キッドみたいな、優しい人のお嫁さんになれて本当に幸せ!」
「またそんな、大袈裟だっての」
「いいえ!もう本当に……大好き!」
太陽のように明るい笑顔を浮かべながら、懐っこく擦り寄ってくるサフィア。
心から愛する妻の笑顔は、やっぱり何時見ても輝かしい。
大きな決戦を控えている俺には、尚更貴重な宝でもあった……。
「ん?確かにそうだが、何を今更……」
「それってさ、トルマレアから外へ出たのか?」
「いや、正確に言えば、トルマレアを出た後にバルドが攫われたからな」
カラカラカラ……
「へぇ……何処かへ出かける予定だったのか?」
「まぁ間違ってないな。近くの同盟国の国王と面会する予定だったんだ。バルドには私の護衛として付いて来てもらったのだが、航海途中でベリアル一味に遭遇して……後は話した通りだ」
「そうだったのか……」
カラカラカラ……
「ねぇねぇ、次お兄ちゃんの番だよ〜」
「ん?あ、もう回ってきたのか」
アジトの島から出航して早二日目。トルマレア王国へ向かうブラック・モンスター内のダイニングにて、俺、サフィア、ピュラ、そしてシルクの四人はテーブルに集まっていた。
「今ピュラが$10000、私が$6000貰ったところです」
「二人ともペース良いな……」
外では黒色の雲が空を覆っていて、強めの雨が休む間も無く降り注いでいる。見張り番以外の船の仲間たちは既に船内に集まっていた。
こういった雨の日は海の波が荒れる。それを証明するかのように、僅かながらブラック・モンスターの船体が何時もより揺れているのを感じ取れた。
そして今、俺たち四人はちょっとしたボードゲームで遊んでいる。
その名も『ライフゲーム・パイレーツ』……謂わば人生ゲームの海賊バージョン。
雨の所為で外で遊べないピュラが暇を持て余し、それを見かねたサフィアの提案で始めたのがこのゲームだ。
カラカラカラ……
「7か。えっと……『船の一部が破損したので修理代$5000払う』……おいおい、やめてくれよこんなところで……」
「次は私だ」
カラカラカラ……
「4だな。なになに……『海底洞窟でお宝ゲット!$15000貰う』か」
「うわ、マジかよ!逆転された……」
「ふふふ、面白くなってきた」
こんな感じでルーレットを回し、出た目の数字だけ道に沿って進む。これは普通の双六と同じだが、勝利条件はちょっと違う。ゴールに着いた時にどれだけ多くの金(当然だがゲームでしか使えない玩具)を所持しているかで勝敗が決まる。要するに、沢山金を稼いだプレイヤーの勝ちってことだ。
因みにこのゲーム、ゴール以外の全てのマスには蓋が閉められていて内容が分からなくなっている。ルーレットを回してマスに止まり、そこで初めてマスの蓋を開けて内容を見る事が出来る。大海原の旅は予測不能。実際に経験するまで分からないと……そういった製作者の計らいなのだろうか。
現在のところ、俺の所持金は$30000。サフィアは$56000。ピュラは$80000。そしてシルクが$45000。
順位で並び替えると、一位からピュラ、サフィア、シルク、俺といったところか。
「次、私ね〜!」
そして次はピュラの番だ。楽しそうに小さい手でルーレットを回した。
出た目は……9!結構進んだな……ゴールが近くなってきた。
まぁ、このゲームで重要なのは金だし……。
「……お姉ちゃん、これなんて読むの?」
「ん?どれどれ……『犯罪組織のボスの愛人を誑かして$50000貰う』……」
………は?
「…………」
「……犯罪組織……愛人……」
「……ってドロドロ過ぎるだろ!」
……実はこのゲーム、今日初めてやるから詳しく知らなかったが……なんでこんなのが書かれてるんだよ!
誰だよこんなの書いた奴!海賊のイメージが誤解されるだろうが!
「……なぁ、海賊ってこういうこともやるのか?」
「やんねぇよ普通の海賊は!つーか、普通の人生送っててもこんな展開滅多に無いぞ!」
「……ねぇお姉ちゃん、『たぶらかす』ってなぁに?」
「え!?あ、えっと……あ、後で教えますから、今はゲームを楽しみましょう!ね?」
「うん!」
危うくシルクにまで謝った認識を持たれるところだった。
全く……これ人生ゲームっつーより、波乱万丈ゲームじゃないのか?
にしても、これでピュラは$130000か……追い抜くのは厳しいな。
「では私も……」
今度はサフィアの番だ。あまり力を入れず、軽い感じでルーレットを回した。
出た目は……3。あまり大きい数字じゃないが……。
「『二人の愛の結晶が誕生!ご祝儀として各プレイヤーから$5000貰う』……うふふ♪」
「お姉ちゃん、すごーい!これで六人目だよ!」
なんと、他のプレイヤーからお金を徴収するマスに止まった。
ピュラが言った通り、これでサフィアの子供は六人目になる。もはや大家族だな……。
「うふふ♪六人も子供が……♪」
「……なんか、嬉しそうだなサフィア……」
幸せそうな笑顔を浮かべながら、みんなから$5000を受け取るサフィア。
合計$15000も貰えるのがそんなに嬉しいのか?
「ちょっと頭の中で想像してまして」
「想像?」
「将来のことですよ。このゲームみたいに、キッドの子供を沢山作って、温かい家庭を築く光景を思い浮かべたら幸せな気持ちになるのです♪」
「……子供……」
……ちょっと頭の中で想像してみた。
俺とサフィアの子供かぁ。やっぱりサフィアの血が通ってるんだから絶対可愛い子になるんだろうなぁ……。
青い髪とエメラルド色の魚の下半身を受け継いで、ピュラみたいに無邪気で……。
『パパ!だ〜いすき!』
「…………」
うおおおおおおおおおおおおお!!
やばっ!グッと来た!心から来た!
天使だ!この可愛さは天使だ!いやそれ以上だろこれ!
「……いいな……それいいな……」
子供かぁ……やばいな。今の話聞いたら急に欲しくなった。
膝にちょこんと乗せて、可愛い絵本を読み聞かせたりして……
「何ニヤニヤしてるんだ。気持ち悪い」
「ふふふ……って気持ち悪いってコラ!」
シルクの刺々しい発言によって現実に戻った。
思わずムキになっちまったが、俺も俺だな。性に似合わず妄想に耽るなんて。
「それよりほら、次はお前だろ?早いとこ進め」
「分かってるっての……」
シルクに急かされて、俺は駒を進める為に渋々とルーレットを回した。
出た目は……10!
「お、最大数か!これ結構進んだ……」
……って……え……?
「……『海神ポセイドンの気まぐれによって暴風雨が発生。所有している財産を半分失う』……」
……なにこれ?え?半分?
持ってる金を半分捨てろってか?
これ遠まわしに負けろって言ってるよな?
「えぇ……半分って結構大きいよね……」
「ポセイドン様……ゲームにおいても圧倒的な存在感……」
「ゲームの製作者は、よくこんな凶悪なマスを考えたな……」
一斉に憐れみの視線が俺に向けられる。
……てかさぁ……俺、さっきから取られてばっかりじゃねぇか。
なんで俺ってこういうゲームになると、とことん不利になるんだよ……。
「……だぁもう!持ってけドロボーだ!こん畜生め!」
「……誰が持っていくのですか?」
「……聞かないでくれ……」
半ば自棄気味に手持ちの所持金を半分放棄した。これで所持金は$15000。
……これ、本物の金じゃなくて本当によかったよ。そうでなかったら財政破綻どころじゃ済まないぞ……。
「ふ、お陰で大きく差が広がった。これで少しは余裕が持てる」
「……そう言ってられるのも今のうちだぞ。すぐに逆転してやるからな」
余裕の発言を出したのはシルク。軽く流すようにルーレットを回し、7の目を出した。
「どれ……『古代の神殿にて幻の大秘宝をゲット!$80000貰う』……」
「……って、なにぃ!?」
「出ましたよ!最高金額です!」
「すご〜い!」
「ははっ!やった!大秘宝だ!」
……なんでこいつ、こんなに運が良いんだよ。
おかしいだろ色々と……。
「ふふふ、なんだか子供の頃の夢が叶ったみたいで楽しいな」
「え?子供の頃の夢?」
楽しそうな笑みを浮かべるシルク。ボソッと言った子供の頃の夢とやらがどうも気になった。
「ああ、実はこう見えて、子供の頃は冒険者として世界を旅するのが夢だったんだ」
「へぇ……冒険者か……」
「これでも、幼少の頃から世界の国々の本を沢山読んでいたんだ。トルマレアと言う小さな国しか知らなかった私にとって、外の世界は大変興味深いものだった。自分が住んでる国と、世界に存在する国々はどう違うのか、この目で見たいと思ったんだ」
つまり、子供の頃は世界を旅したいと思っていたのか。王族の身分でありながら中々行動的な夢だな。まぁ俺は中々良い夢だと思うが。
「あと、少し補足するとな、世界を旅する夢を抱いた切っ掛けは本だけではない。この時代の魔物もそうなんだ」
「魔物が?」
シルクが言うに、夢を抱いた切っ掛けは本と魔物とのこと。
本はともかく、ここで魔物が出てくるのは意外だった。仮にもシルクは反魔物国家の王女のはずだが……。
「私が10歳の頃の話だ。当時、父上に連れられて同盟国を訪れていた私は、父上に内緒で魔物が潜んでいる森に言ってみたんだ。そこで出会ったスライムにラミア、アラクネにアルラウネにグリズリー……みんな優しい魔物たちばかりだった。世間では魔物は人間を食い殺すなんて噂されていたが、彼女たちは私を殺すどころか、『一緒に遊ぼう』と優しく接してくれた。その後は日が暮れるまで魔物たちと楽しく遊んだよ。今となっては良い思い出だ」
「なるほど……では、シルクさんは子供だった時から色々な魔物と関わってきたのですね」
「関わると言っても一度会っただけだったが……まぁそうなるな。あの日に分かったんだ。魔物の『本当の姿』をな……」
シルクは過去の思い出を懐かしむように、ゆっくりと瞳を閉じて何度も頷いた。
なんにせよ、これでようやく合点がいった。魔物を敵対する国の人間の割には、ピュラやサフィアとも親しく接しているのが不思議に思ったが、小さい頃に本当の魔物を知ったから敵対しなかったのか。
「道理で魔物に友好的だと思ったら……そういう事か」
「ああ。私はずっと前から魔物は凶悪な生物だと散々聞かされてきた。しかし、実際に会った魔物たちは皆優しかった。そこでふと思ったんだ。外の世界には、言い伝えや本とは違う真実が幾つもあるのではないかと。もしも世界に私の知らない真実が幾つもあるのなら是非とも見たい。今のこの世界を、この目で見たいと……」
「ほう……意外と好奇心旺盛なんだな」
世界を見たいか……なんとも具体的で、大きな夢だ。
だがまぁ、そういう計り知れない好奇心は冒険者に必要な要素だ。シルクにはある意味、王女よりも冒険者の方が性に合ってるのかもしれないな。
「そう言えば以前、俺たちと初めて出会った時はトレジャーハンターとか名乗ってたが、そう言ったのもそれが原因か」
「いやまぁ……今でこそ違うが、あの時はまだ警戒していたからな。咄嗟に嘘を並べただけだ。トレジャーハンターに憧れてるのは事実だが」
とまぁ、こんな感じで雑談を交えていたら……。
「お兄ちゃん、次お兄ちゃんだよ」
「え?あ、俺か……って……」
早くも俺の出番が来たようだ。
サフィアとピュラがどれくらい先に進んだのか見てみたら……。
「……あれ?まさか二人ともゴールした?」
「ええ、残るはキッドとシルクさんですよ」
「見て見て〜!こんなにもらっちゃった♪」
なんと、もう既に二人ともゴールに着いていた。サフィアはやんわりと微笑を浮かべ、ピュラは無邪気に玩具の札束を広げて俺に見せている。
ピュラは$130000、サフィアは$71000か。稼いだ金からして、これでピュラが一位なのは確定した。サフィアはゴールしたから、これ以上手持ちの金が増える事は無い。
となると、残った俺とシルクのプレイングで順位が決まる。ここからが決め所だな……。
「よ〜し、ここで一発逆転してやる」
「……その発言、失敗フラグだな」
「うっせぇ!」
さて……出番が来たのはいいが、ただ単純にゴールすればいいってもんじゃない。今の所持金はシルクと比べたら結構大佐があるから、ここで稼がなければならない。
そもそもこのゲーム、マスの内容はともかく金の増減が激しいんだ。何があっても不思議じゃない。ここは一つ、一気に$100000以上貰えるマスに止まるしかない!
「よし……そらよ!」
右手に念を送ってルーレットを回す。カラカラと音を音を鳴らしながらルーレットが示した数字は……。
「……7だ」
出た目の数だけ駒を進める。
「……あ……」
そして、その止まったマスは…………。
「…………」
…………ゴールだ。ピッタリと。
「あ、お兄ちゃんも上がった!」
「…………」
……いや、普通の双六なら喜ばしいんだろうけど……。
「最後は私か。さて……お、私も終わった」
「これで終了ですね。さて、結果は……」
……これ、金を稼ぐゲームだからさぁ、先にゴールしてもあまり意味無いんだよな。
だから……。
「一位、ピュラ。二位、シルクさん。三位は私で、四位は……」
……あぁ、そうだよ。俺だよ、最下位は。
なんか今日は感動するくらい運が無いな……。
「わ〜い!私一番!」
「うふふ、よかったですねピュラ」
「所持金$15000って……少ねぇなぁおい……」
「まぁいいじゃないか。最後には運良くピッタリとゴールに着いたのだし」
「あまりフォローになってねぇよ」
一位になって喜ぶピュラに、それを微笑ましく見つめるサフィア。そしてフォローになってないフォローを送るシルク。
ゲームが終わってそれぞれ反応を示す中、俺は己の悲運さに半ば悲しくなっていた。
所詮はゲームだし、特に何か変わるって訳でもないのは分かってるが、それでもやっぱり負けたのは悔しく思う。まぁ、一々気にする必要も無いけどな……。
ゴロゴロゴロ……
「ん?」
「!?」
と、ゲームが終わるタイミングで外から轟音が聞こえた。この音に反応してピュラがビクッと小さな身体を跳ね上がらせた。
「これは……雷か?」
「だろうな。外が悪天候だから、まさかと思っていたが……」
「えぇ〜、やだなぁ……恐いよ……」
「よしよし、大丈夫ですよピュラ」
どうやら雷が降り始めたらしい。雷と聞いてピュラが怯えた様子でサフィアにしがみ付いていた。
空にはどす黒い積乱雲が広がってたし、よもやと思っていたが本当に降ってくるとは……こりゃ海が荒れるぞ。
……ん?待てよ……雷?
「……まさか……」
「……キッド?」
悪い予感が脳裏を過ぎり、恐る恐るとカーテンが閉められた窓へと歩み寄る。そしてその窓のカーテンを開いて外の様子を確認した。
ゴロゴロ……
「……なんだ、普通の雷か」
大粒の雨が海面へと降り注がれ、その中に混じるように光り輝く小さな雷が天から舞い降りていた。
外の雷が普通のものだと分かった途端、妙なことに安堵のため息を吐いてしまった。
「……まさか、奴だと思ったのか?」
「ん、ああ……そのまさかだ」
「いくらなんでも、ピンポイントで此処を特定して来るとは思えないが?それにトルマレアで待ってると、あいつ自身が言ってただろ」
「あいつなら特定もやりかねないと思うぜ」
俺が想定した人物を察したのか、シルクは諭すように口を開いた。
確かにシルクの言ってることは尤もだが、あいつなら俺たちが考えもしないことを平然とやってのけそうだ。気まぐれで此処まで来るのもおかしくない。
「あの……先ほどから誰のことを言ってるのですか?」
サフィアは分かっていないのか俺たちに訊いてきた。
誰のことかって?それは勿論……。
「ベリアルだよ。あの冥界の雷使いだ」
「ベリアルって……以前キッドが話した、元カリバルナの公爵……」
「そう、そいつのことだ」
例の宿敵、ベリアルだ。
奴こそ全ての黒幕で、かつて俺の故郷で公爵として暗躍していた男だ。あの日、奴に会った時は流石に度肝を抜かれたが、まさかこんな流れで奴と戦う事になるなんて思わなかった。
奴はいずれ親魔物国家となったカリバルナにも手を出す気でいる。そんな真似をさせる前に、俺がなんとかしてベリアルを食い止めなければ……。
おっと、余計な思案に暮れちまった。今はサフィアたちとの貴重な時間を楽しまなければ……。
ゴロゴロゴロゴロ!!
「ひゃあっ!!」
「おおっ、今のは大きかったな……」
先程とは比べ物にならないほど大きな轟音が響き渡り、ひどく驚いたピュラはサフィアに強くしがみ付いてきた。シルクも今の雷には驚いたようで、ホンの僅かだけ身体が跳ねた。
「こりゃあ長く続きそうだな……夜明けまで止みそうにもないな」
「お兄ちゃん、早くカーテン閉めて!」
「あ、悪い」
窓越しで悪天候をまじまじと眺めていたら、怯え気味のピュラに促されたのでカーテンを閉めた。音は勿論、雷の光も苦手なんだろうな。
しかしまぁ、こりゃ久々の大荒れだな。見張り番は早めに避難させた方がいいかもしれないな。仮に敵船が近付いてるとしても、こんな暴雨の中じゃ戦う気力も無いだろうし。
それにしてもポセイドンめ。こんなに海を荒くさせてどうしたんだよ。何か腹の立つことでもあったのか?
ピシャーン!ゴロゴロゴロゴロ!!
「ひゃあ!!」
「な、なんか急にパワーアップしたな……」
「ですね……」
「すげぇなぁおい……」
良いタイミングで高威力の雷が鳴り響いた。
……まさかポセイドン、俺の思案に雷で答えたのか?
いや、流石にそんな訳無いか。
「ふぇ〜ん!恐いよ〜!」
「よしよし、大丈夫ですよ」
雷が恐くてサフィアに擦り寄ってるピュラ。そんなピュラの頭を優しく撫でるサフィア。
こうして見ると、やっぱり微笑ましい姉妹だ。サフィアも良いお姉さんだな……。
だがポセイドン、ピュラが恐がるから雷も程ほどにしてくれ。
ゴロゴロ……
「……今度のは穏やかだな」
「雷って、こんなに落差が激しいのでしょうか?」
「さぁな」
……おかしいな。
なんか、俺が心の中でポセイドンに言葉を送ったら、それに反応するかのように雷が鳴ってるような気がする。
いや、ただの偶然だってことは勿論承知してるんだが。
「…………」
試しにもう一回。
なぁポセイドン、最近調子どう?
ゴロゴロ……
…………いやまさかそんな……。
「さて、私はそろそろ部屋に戻るとしよう」
「あ、もうお休みになりますか?」
「ああ、もう少しでトルマレアに着くだろうからな。その時に備えてしっかりと睡眠を取らなければ」
……もう一回。
ポセイドン、今日の晩飯なに食った?
ゴゴゴロゴ……
……海老ピラフ?
……って、んな馬鹿な。空耳だろうよ。そもそも偶然なんだし……。
「それよりピュラ、大丈夫か?」
「え、あ……うん。大丈夫だよ」
……まぁ、偶然だからな。そう、これは偶然。
こういうことって時々あるだろうし……。
「よかった。だいぶ落ち着いてきたみたいですね」
「うん、雷の音も収まってきたし、もう平気だよ!」
………………。
「さ、私たちも寝る準備をしましょうか」
「うん!」
…………。
ポセイドンのバーカ。すっとどどっこい。おたんこなす。寝小便たれ。お前の母ちゃんめーがーみー。
……………………。
……鳴らない。
って、そりゃそうだよな。なんせ偶然なんだし。そもそも、インキュバス一人の声なんて聞こえる訳無いよな。
俺も何を一人で馬鹿な事を思ってるんだか。今思ったことサフィアに知られたらこっ酷く怒られるだろうな……。
「キッド、私たちはもう寝ますけど」
「おう、じゃあ俺も寝るか」
さてと、俺も今日はここd
ピシャァァァァァァァン!!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!
ドォン!!ドォン!!ドカァァァァァン!!
「きゃあああああああああ!!」
「ひゃあああああああああ!!」
「いやあああああああああ!!」
「ちょっ!えっ!?ちょっ、まっ!えぇっ!?」
今までに無いマックスパワーの雷が来たぞ!ここに来て時間差かよ!
ピシャァァァァァァァン!!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!
ドォン!!ドォン!!ドカァァァァァン!!
「ポセイドン様が怒ってるー!!」
「なんでなんで!?どうなってるの!?」
「ふえぇぇぇぇん!やだよ〜!でかいよ〜!光ってるよ〜!恐いよ〜!びぇぇぇぇぇぇん!!」
サフィアとピュラは慌てふためき、シルクはテーブルの下に潜って子供のように泣いている。
ってか、この雷、むちゃくちゃ怒ってるよな!?なんで!?
まさか、本当に聞こえてるんじゃ……いや、有り得ない。そうであって欲しい。
ピシャァァァァァァァン!!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!
ドォン!!ドォン!!ドカァァァァァン!!
「この威力で連続かよ!」
「ポセイドン様ー!お怒りをお鎮めくださいー!!」
「もうやだ〜!!」
「○×%■△#*@!!!」
「ちょ、お前ら落ち着け!大丈夫だから!落ち着けってのー!!」
今までに無い雷の乱舞に混乱状態のメンバー。サフィアは乱心だし、ピュラは恐がってるし、シルクなんか意味不明の奇声を放っている。
「う……うぅ……」
「ん?」
「ふぇぇぇぇん!キッド〜!助けて〜!!」
「ちょ、待てサフィア!落ち着けよ!わわわ!暴れるな!」
すると、急にサフィアが泣きべそをかきながら俺に抱きついてきた。
「あ!お姉ちゃんズルイ!私も〜!」
「わわっ!ピュラ!お前まで!わ、ちょ、二人とも冷静になれって!」
つられるようにピュラまで俺にしがみついて来た。
二人揃って俺を抱きしめたまま暴れるものだから、今にも倒れそうでちょっと危ない。
「ぶぇぇぇぇん!びぇぇぇぇん!うわぁぁぁぁん!嫌です恐いですいけずです〜!」
「……お姉ちゃん……」
「ふんゅげ★●$+〜おぼげ^ー;▼!!!!」
「お前ら!頼むから落ち着けー!!」
もう大パニック。
寝る前にこんな大騒動の鎮圧を課せられるなんて……。
……とりあえず謝るしかない。
ポセイドン、ごめんなさい。あれ嘘だから怒らないでくれ……。
〜〜〜数時間後〜〜〜
「ふみゃあ……すぴぃ……」
「ガクガクブルブルガクガクブルブル……」
「……はぁ……」
あの雷騒動から数時間後、外の雷もだいぶ穏やかになった(と言うか、怒りが鎮まった)お陰でみんなようやく落ち着いた……一人を除いて。
「サフィア……もう大丈夫だって……」
「で、でも……恐いものは恐いです……」
「別に雷はお前を頭から食ったりしないから……」
「でもぉ……」
ここは船長室……もとい俺の部屋。早くも就寝時間になったから俺も自分の部屋で寝ることにしたのだが、雷に怯え上がってるサフィアとピュラにせがまれて一緒に寝ることになったのだ。
ベッドの上で仰向けになり、二人同時に腕枕をする俺。右腕にはピュラ、左腕にはサフィアが陣取ってる状態だ。初々しいつぼみと綺麗な花に囲まれるのは良い気分だが……。
「もうちょっと力緩めてくれないか?眠れないんだが……」
「え……キッドは私に抱きしめられるのが嫌なのですか?」
「いや、そうじゃなくて、きつく締めすぎて痛いんだ」
「でも、私はもっとキッドを抱きしめたいです」
「だから、それは構わないけど加減して欲しいんだよ俺は……」
サフィアだけずっとこの調子だ。
ピュラはだいぶ落ち着いたのか、すやすやと気持ち良さそうに寝ている。だが、サフィアは未だに怖がっていて、ずっと俺に引っ付きっ放しで全然寝る気配が無い。さっきは平気な顔してたが、本当は恐かったんだな。
「よしよし、大丈夫だからな」
「うみゅう……」
サフィアの背中を擦って、安らかな眠りに誘った。
それにしても、誰にも苦手なものがあるが、まさかサフィアがこれ程雷が苦手だとは思わなかった。さっきだって大声で泣きながら俺から離れようとしなかったし。
ある意味、雷使いのベリアルとの相性は最悪だったりするな。間違っても会わせないようにしないと。
「……あの〜、キッド……」
「ん?」
サフィアが意味ありげな視線を俺に送ってきた。
「ちょっと……お手洗いに行きたいのですが……」
トイレに行きたいのか。でもわざわざ俺に言う必要も無いだろうに。
「そうか。わざわざ許可を得る必要も無いのに」
「いえ、それが……その……」
サフィアは気まずそうに……そして縋るような眼差しで俺を見つめながら言った。
「一緒に……来てくれますか?」
「……は?」
==========
お化けが恐くてトイレに行けなくなった話はよく聞く。
だが、雷が恐くてトイレに行けないなんて初耳だぞ。
「なぁ……今更言うのもアレだが、俺って同行する必要あるのか?」
「また雷が鳴った時にキッドが傍に居なかったら、誰も頼れないじゃないですか」
「そんな大げさな……」
静けさ漂う通路を歩き続け、船長室から一番近いトイレを目指している。
結局、サフィアに押し切られる形で、トイレまで送り迎えする羽目になってしまった。ピュラは起こさないように腕から離してそっとしておいたが、万が一にも夜中に目を覚ますかもしれない。一人で居させるのも可哀想だから、早めに戻ってやりたいところだ。
「キ、キッド……絶対離さないでくださいね?一人で置いて行ったりしないでくださいね?」
「俺はそんなことしないよ。それに、どっちかって言うとサフィアが一方的に掴んでるんだが……」
外は未だに暴雨が降り続いており、雷が鳴る気配は未だに消えてない。恐らく、これからもまた何度か鳴り響くだろう。
サフィアもそれを知ってか、何時降り注がれるか分からない雷に怯え、ビクビクと震えながらも俺の腕を掴んで一歩一歩進んでいた(下半身は人間の足に変えてる)
「ほら、着いたぞ」
ようやく目的のトイレに着いた。明かりが点いてないから、誰も入ってないだろう。
「…………」
「……ん?どうした?入らないのか?」
「いえ、あの……」
お目当てのトイレに来たのに、何故かサフィアは入ろうとしない。そしてまたしても縋るような眼差しを俺に向けた。
「…………」
「……ど、どうしたんだよ……」
「……あの……その……」
サフィアは俺とトイレの扉を交互に見ている。
「うぅ……」
そしてキュッと俺の服の袖を引っ張って、トイレの扉を指差しながら助けを請うような表情で俺を見つめてきた。
…………あれ?まさか……え……?
「……なぁ、まさかとは思うけど……そのまさか?」
「……(コクン)」
俺が扉を指しながら聞くと、サフィアは無言で頷いた。
……まさか……こう来るとは……。
「……マジで?」
「……(コクコク)」
「いやそんな……」
「お願いです……」
……いやでもさぁ……流石にさぁ……。
「二人で入る訳にはいかないだろ……」
「でもぉ……」
夫婦とは言え、二人で入るのはちょっと……。
「あのな……別に俺、逃げたりしないから。サフィアが出てくるまでちゃんと待ってあげるから」
「そうじゃなくて、入ってる時に雷が鳴ったら誰も頼れる人が……」
いくら雷が恐いからって、そこまでするのは……。
だいたいトイレって二人で入るものでもないだろうに。
それに、すぐ近くでサフィアが用を足すって思うと……なんかこう……小恥ずかしいんだよな……。
「サフィア……もう子供じゃないんだからさぁ……」
「恐いものは恐いのです」
「考えてみろ。俺の前で用を足すんだろ?恥ずかしいだろ?」
「…………」
俺の問いに無言になるサフィア。
よしよし、少しは効いたみたいだな……。
……と思ったら。
「……いいですよ……」
「え?」
「恥ずかしいですけど……キッドなら……」
……おいおい、効果無しかよ。
「いや、サフィア……」
「確かに……見られるのは恥ずかしいですけど……」
サフィアはちょっぴり恥ずかしそうに、上目遣いで俺を見つめながら静かに言った。
「それでも……キッドと一緒に居たいのです。キッドと……離れたくないです……」
「…………」
……台詞だけ聞けば凄く嬉しいことなんだが、状況が状況だからなぁ……。
いや、嬉しいことは嬉しい。これは確かだが。
「お願いです……すぐに終わりますから。小さい方だけですから」
「いや、そういう問題じゃないと思うが……」
「キッドォ……」
ついには服の袖をギュッと握り、涙目で助けを請うような視線を向けられてしまった。
……やめてくれ……そんな目で見つめられたら……もうさ……断れなくなるだろ……。
「……これっきりだからな」
「……はい!」
結局、この嬉しそうな笑顔には敵わない駄目夫な俺だった……。
==========
……なんなんだ、この状況は……。
「ごめんなさいキッド。すぐに済ませますので……」
「あ、ああ……」
いざ二人で入ってみたら思いのほか狭い。トイレなんて一人で入るのが常識だから、二人で入ったら狭く感じるのは当たり前だろう。
だが、ここまで狭く感じるとは思わなかった。事実、ほんの少し手を伸ばせばサフィアに触れるほどの至近距離だし……。
「…………」
まじまじと便座に座っているサフィアを見つめた。
足は何時もの人魚の下半身とは違って、人間のものに変わっている。寝巻きのズボン部分を下にずらし、綺麗な太ももを露出していた。
そう言えば、人間が使用する便座は人魚の姿だと使い辛いとサフィアから聞いた。確かに性器の位置からして魚の下半身だと不都合が……。
「……あ、あの……」
「え?ああ、悪い。そ、そうだよな。ジロジロ見られると恥ずかしいよな」
「そ、そうですね……」
頬を赤く染めてるサフィアを見て我に返った。
そうだった……そりゃ見られたら恥ずかしいよな。
「じゃあこうして……ほら、これなら大丈夫だろ?」
「は、はい」
俺はサフィアに背を向けて、更に両耳を手で塞いで音を遮断した。
これなら見えないし何も聞こえない。サフィアも少しは恥ずかしさが減るだろう。
「…………」
「…………」
間もなくして沈黙が狭い個室を支配する。背を向けてるからサフィアが今どうしてるか分からなかった。いや、サフィアのために分からなくしてるのだが。
「…………」
しかし改めて考えてみれば……なんだこれ。
用を足してる妻に、その傍で背を向けて耳を塞ぐ夫。傍から見ればシュールな事この上ない。
それに夫婦の間柄とはいえ……声をかけ辛い。いや、迂闊にかけちゃいけない気がする。
「…………」
ところで、サフィアが済ませたら……どうやって確認すればいいんだ?
まさか振り向く訳にもいかないだろうし……なんてこった。
「キッド」
あれこれ思案に暮れてると、背後から服の裾が引っ張られるのを感じた。
間違いなくサフィアだ。もう終わったから知らせてくれたのかな?
「……もういいのか?」
「はい、たった今……」
ゴロゴロゴロゴロ!!
「きゃあああ!!」
「うぉっ!?」
黒雲から雷が舞い降りると同時に背中から強い衝撃を受けた。あまりにも突然の出来事に思わず耳から手を離してしまった。
「サ、サフィア……」
「ガクガクブルブル……」
俺の腰に細長い華奢な腕が回されている。ついでに背中から人肌の温かさを感じた。雷に驚いてサフィアが後ろから抱き付いてきたんだ。
「サフィア、大丈夫か?」
「うぅ……はい……」
俺の腰からサフィアの腕が解かれたところで、そっと踵を返してサフィアの様子を見てみた。
そこには腰が抜けて動けないでいるサフィアが居た。ちょこんと便座に腰掛けたまま、半泣きで潤んだ瞳で俺を見つめている。更に股間の辺りには何やら液体が溜まっていた。
……あれって、愛液じゃないよな。たった今用を足してたところなんだし。
だとしたら……。
……これはこれで新手のエロさが……。
「えっと……動けるか?」
「びっくりし過ぎて……手も動かせそうにないです……」
どうやら今の雷で驚いた所為で身体が動かないらしい。まぁ、今の雷も結構大きかったし仕方ないか。
「……なんなら俺が後処理をしてやろうか?」
「え?今なんて?」
「いやだから、俺が濡れた部分を拭いてやろうかと」
その場を和ませる為にほんの冗談を言ってみた。それを聞いたサフィアはキョトンとした表情で俺を見てきた。
「…………」
「…………」
またしても辺りを漂う静寂。
……ホントになんだよ、この状況は。
ってか何言ってるんだよ俺は。馬鹿か。アホか。ヘボか。
全く、我ながら恥ずかしい……。
「……で、では……お言葉に甘えて……」
「……え?」
なんと、返ってきた答えはOKだった。
マジか……てっきり『そ、それくらい自分でやります!』みたいなことを言われると思ったのに。
「……あの、いいのか?」
「はい」
「本当にいいのか?」
「はい。本当は恥ずかしいですけど、キッドがしてくれるのなら……喜んで……」
サフィアは赤く染まった顔を逸らしながら、チラチラと視線を俺に向けて恥ずかしそうに言った。
……参った。まさか承諾されるなんて予想外だ。俺はそんな気は無かったのに。
だが……こんなサフィアの可愛い姿を見られたら今更後に退けない。それに、男は二言の無い生き物だと昔から言われてきた。冗談でも俺が言ったんだから責任取らないとな……。
徐にトイレットペーパーを右手に巻きつけ、適当な長さに達したところで切り取った。
「じゃあ、ちょいと失礼……」
「あ!ま、待ってください!」
「?」
いざ行動に移そうとしたら、突然サフィアに止められた。その時にはサフィアの下半身が光輝き、一瞬のうちにサフィアの足が人間のものから何時もの魚の下半身に戻った。
魔術で元に戻ったか……でも何故今になって?
「なんで元に戻ったんだ?」
「キッドに触られる時は、出来れば本当の私の姿でいたいのです。これが、本当の私ですので……」
そう言いながらサフィアは魚の鱗で隠れている秘部を露にした。状態はさっきと変わらず濡れたままだ。
言ってる意味はよく分からないが、とりあえず本当の自分に触れて欲しいってのだけはなんとなく分かった。それにしても今の発言、まるでこれからセックスでも始めるかのようにも聞こえたが、俺の気のせいか?まぁ一々気にしてもしょうがないか。
「じゃあ今度こそ……」
「ど、どうぞ……」
俺は改めて身を屈み、トイレットペーパーが巻かれてる右手でサフィアの秘部に触れた。
「こんな感じか?」
そっと優しく、痛めないように気を付けて濡れてる秘部を拭う。
「あ……はぁ、あぁん……♥」
「……気が散るからそのエロい喘ぎ声を抑えてくれないか?」
「ご、ごめんなさぁい……でも、キッドに触られるのがとても気持ち良くて……はぁん……」
手を往復させる度にサフィアの口から快感の喘ぎ声が漏れてくる。魅力的だが、そっちの方に気が行って集中できない。
「まさか、後処理の時はいつもこんな声を出してるのか?」
「そんなことは無いです……ひゃっ!今は、キッドに触られてるから、とても興奮して……ふぁ……んぁあぁ……♥」
そんなに卑猥に動かしてるつもりは無いんだが……やっぱり自分でやるのとは違うものなのか?
「あぁ……だめぇ……感じますぅ……」
「サ、サフィア。そんな声出したら外に聞かれるぞ」
「わ、分かってますけど……ひゃん!」
忘れかけてたけど、此処はトイレ。他の部屋と比べたら大きい音が外に聞こえやすい。もしも外から誰かに聞かれて、二人で入ってるなんてバレたら……恥ずかしくて死にそうになる。
ただ、大きい声を出してるのはサフィアなんだが。
「……にしてもさ……」
一つおかしなことに気付いた。
俺はキチンと拭いてあげてるのにさ……。
「なんで拭い切れないんだ?」
「うっ!え、えっとですね……」
さっきから拭いても拭いても全然終わる気配が無い。いや、寧ろ段々濡れてると言うべきか。拭く度に秘部の割れ目から透明な液体が滴れているように見える。
……これって……小便じゃないよな……?
「この液体さ、サフィアが出してるんじゃないの?」
「そ、それは……紙越しとは言え、キッドの手で感じ過ぎちゃって……」
やっぱりこの液体は愛液だったか。流石に右手のトイレットペーパーも水分を取りすぎてふにゃふにゃになってる。指一本で簡単に突き破れそうだ。
……あ、そうだ。ちょっと悪戯してみようか。
「……この辺りかな?」
「え?あの、キッド?どうかしましt」
「そらっ!」
ズボッ!
「ひゃぅうん!?」
人差し指でトイレットぺーパーを突き破り、そのままサフィアの膣内へと突入させて。ちょっとした不意打ちに、サフィアは身体を仰け反らせながら驚きと快感が程よく混ざった声を発した。
「ふぁぁ、キッドォ……それズルイですぅ!」
「ごめんごめん、つい出来心で……」
「はうぅ……キッドったら……ひゃぁっ!」
頬を膨らませて恨めしげな視線を向けるサフィア。その表情がとても可愛く見えて、思わず膣内の指をかき回した。
「ひゃぁん!あぁ、だめぇ……気持ち良い……」
「サフィアの中は温かくて気持ち良いな」
「そ、そんな……はぁん!」
生温かい膣を指の腹でなぞるように愛撫した。刺激されて溢れ出てくる愛液が指を濡らす。弄る度に指に纏わり付いてる愛液がピチャピチャと音を鳴らしてるのが聞こえた。
……って何をやってるんだ俺は。入れるだけで終わりだったはずなのに。
さて、サフィアには悪いけどこのへんで……。
「もぉ……そんなことするのなら私だって……」
「え?」
すると、サフィアは俺のズボンに手を伸ばし、慣れた手つきでベルトを解いてきた。
「え、いや、ちょっ!何やってんだ!?」
「何って……仕返しですよ♥」
「仕返しって……おわっ!」
温かい笑顔を見せながら素早くズボンと下着を脱がし、露になった俺の性器を優しい手つきで扱き始めた。
「ま、待てってサフィア!何もこんな所でやらなくても……!」
「分かってますけど……私、おマンコを散々弄られて我慢できなくなったのです。それに、私ばかり触られるのも不公平でしょう?」
「いや、不公平とかそういう問題じゃ……ってか話聞いてるのか!?」
サフィアの温かい手が肉棒を擦る度に、身体中に快感の電気が走る。サフィアの手コキはずっと前から数え切れないくらいしてもらってるが、やっぱり何度味わっても気持ち良い。あっという間に俺のペニスは勃起状態となってしまった。
「流石ですね♪もうこんなに大きくして……」
「そりゃあ、サフィアの手が気持ち良いから……」
「うふふ、これで先程まであそこを弄られてた私の気持ちが分かりましたか?」
……確かに、少しだけ分かった気がする。
自分で触るのと、人に触られるのとは違いすぎる。サフィアも同じ気持ちだったのだろうか?
……って、ちょっと待て。気持ち良いけど、こんな所でやっていいことじゃ……。
「……キッド……」
何を思ったのか、サフィアは俺のペニスから手を離し、おねだりするような眼差しで俺を見つめてきた。
これは……まさか……。
「私……もう我慢できません。お願いですから、キッドの逞しいおちんちんを、ここに……」
……やっぱりそうなったか。
サフィアは俺の人差し指が入ってる肉壷に手を添えて、俺のペニスを求めてきた。
「求めてくれるのは俺としても嬉しいけど、此処でやるのは流石に不味いんじゃ……」
そう言いながら、俺は膣に入ってる指を抜き、愛液でビショビショに濡れたトイレットペーパーを便器の中に捨てた。
「でも……こんなにムラムラしたままだと眠れないです。それに、私の身体をこんなに弄ったのはキッドですから、責任を取ってもらわないと……」
「いや、そうだけど……せめてベッドまで……」
「ベッドにはピュラが居るから無理です。キッドだって、ここまでやっておいてお預けは辛いでしょう?」
「うっ……」
確かに……ピュラが寝てるベッドでやるのは無理がある。それに正直なところ、俺も射精せずに終わるのは殺生だ。
だとしたらやっぱり……此処でやるしかないか?
「ねぇ、キッド……早くあなたを感じさせてください……」
……とんでもない展開になってしまった。
サフィアが用を足して、それで終わりだったはずなのに、後処理の段階に入ってから話が予想外の方向に向いた。今思えば、俺が後処理をやるなんて言った時点でこんなことになったのかもしれない。
だが……ここまで来たら、もう後には戻れない。
「……一回だけだぞ?」
「……はい!」
同意を得るなりサフィアはパッと嬉しそうな笑みを浮かべた。
穏やかな性格とは言え、サフィアも魔物娘。性に対する貪欲さは底無しという訳か。
「では今度はキッドが此処に座ってください。その方がやり易いと思いますので」
サフィアはゆっくりと立ち上がり、俺を便器に座らせた。そして魚の下半身で器用にも俺の膝に跨ってきた。
ギシッ
……今ちょっと嫌な音が聞こえた。これ、便器から鳴った音だ。どう考えても重量オーバー。
「えっと……ここですね……」
悲鳴を上げる便器など露知らず、サフィアは自分の性器の割れ目を俺の肉棒の先にあてがった。
「それでは、失礼します……ん、はぁっ……」
ずれ落ちないように俺の肩に手を乗せて、ゆっくりと腰を下ろしてきた。俺の勃起したペニスが亀頭から少しずつ肉壷の中へと導かれる。割れ目から溢れ出る愛液のお陰で、全く抵抗を感じずにすんなりと入っていくのが分かった。
「ああっ!はぁん……入ったぁ……♥」
「くっ……サフィアの中、気持ち良いな……」
「はい……私も、キッドのおちんちん……熱くて硬くて、とっても気持ち良いです……♥」
根元まですっぽりと収まるなり、サフィアは幸せそうに微笑みながら俺の頭をギュッと抱きしめてきた。豊満な胸を顔に押し付けられる。衣服の上からでも、サフィアの胸の柔らかさが頬から伝わってきた。
「キッドォ……あぁ、ひあぁっ!んあっふ、んん!」
「うあっ!そんな急に……!」
「だってぇ……はぁっ!ジッとしてられないんですもの……あ、んひゅぅっ!」
サフィアの方から上下運動をしてきた。熱くて締まりの良い膣が動く度に勃起ペニスを刺激させる。中の突起が肉棒に絡みつき、こすり付ける度に快感が走ってきた。
何時味わってもサフィアの名器は気持ち良い。だが、俺もやられっぱなしでは男としての面子が立たない。サフィアの腰を掴んで膣内の逸物を真上に突き上げた。
「ひゃぁんっ!す、凄いぃ……突かれるの良い!あぁん!あぁ、はぅっ!」
「サフィア、もう少し声を抑えないと、誰かに聞かれるって……」
「で、でもぉ……ふぁっ!我慢できないですぅ……あっ!はんっ!んひゃぁ!」
俺が突き上げる度にサフィアは淫らな喘ぎ声を発した。ただでさえ外から聞かれるリスクがあるのに、サフィアは快楽の方を選んだようだ。
もはや聞かれるのが本望とでもばかりに快感を声で表している。外の雷も蚊帳の外。ただひたすら快感を求める雌と化していた。
「あっ!はっ!ふぁあん!キッド……キス、キスしてぇ……♥」
「サフィア……」
「キッドォ……ん♥ちゅ……ちゅう、んん、ちゅっ……♥」
俺の頭に絡み付いてる腕が解かれて、頭を動かせるようになった。顔を包んでいた胸の感触に名残惜しさを感じつつも、リクエスト通りに顔をあげてサフィアと唇を重ねた。
「んん、くちゅう……んちゅっ、じゅるるぅ、んぁ、はぁ……ん、ちゅる、んん……」
ただ重ねるだけで終わる訳が無い。互いに舌を差し出し、より濃厚で卑猥なキスを交える。生温かい舌に纏わり付いてる唾液がピチャピチャと響き、より一層気持ちを昂ぶらせた。
……胸も揉んでみよう。
「ちゅっちゅ……んはぁっ!?」
「あ、スマン。痛かったか?」
「い、いえ、大丈夫です。ただ、びっくりしただけですので……ちゅっ、れろぉ……んん、ちゅぅ……」
サフィアの衣服の隙間から右手を忍び込ませて、大きな胸を鷲づかみにしてみた。サフィアの方は一瞬驚いたようだが、気を取り直して再び深いキスをしてきた。俺も唇を受け止めつつ、腰のピストン運動に励みながら柔らかい胸を揉みしだいた。
「んちゅっ、んん……凄いです……こんなに気持ち良くされて……あっ!はぁっ!私、とても幸せですぅ♪」
「あはは、そうかい。そう言ってくれて、光栄だな……!」
「キッド、キッドォ!はぅんっ!んはぁっ、ひゃっ、はぁぁん!」
もうそろそろイきそうになってきたのか、サフィアの喘ぎ声も段々激しくなってきた。俺も自然と腰の動きが激しくなり、もう少しで射精しそうになる。
「キッド……はひぃ!私、もうイキそうです!」
「俺も、そろそろ……!」
「は、はい!出して、ください!このまま、中にいっぱい出してくださぁい!は、はぁ!あはぁん!」
腰の動きを最大限に激しくして、ラストスパートをかける。二人同時にイく瞬間も間近だった。
「キッドォ!あ、はぁん!んひゃぁっ!イく!もうイッちゃいますぅ!」
「お、俺も……このまま出すぞ!」
「はいぃ!出してぇ!いっぱい注ぎ込んでぇ!あっ!んはぁっ!私も、もう!はぁっ!あっ!ひあああああ!!」
膣の最奥に達したところで、逸物から大量の精液が噴出された。子宮に精液を注がれて絶頂に達したのか、サフィアはビクビクと痙攣している身体を仰け反らせた。
「はっあぁ……止まらないです……」
オーガズムで恍惚に浸るサフィア。身体の力が抜けたようで、ぐったりと俺にもたれかかって来た。激しく動いて掻いた汗が俺の鼻を刺激するが、これっぽっちも不快に思わなかった。
「ふぅ……素敵でしたよ、キッド♥」
満足そうに微笑みながら、サフィアは俺の額にキスをした。
==========
「キッド……ごめんなさい……」
「え?なんだよ急に?」
あの情事から数分後、後処理を終えた俺とサフィアは船長室へと戻ることにした。その道中、突然サフィアが申し訳無さそうに俯きながら謝ってきた。
「いくら雷が恐いからって、ここまで付き合せてしまって……おまけに一緒に入ってもらって……なんだか、迷惑掛けてばかりですよね」
「……そりゃあ、せがまれた時は度肝を抜かれたが……」
確かに一緒に入ってとお願いされた時は驚いた。まさかアレほどまで一緒に居て欲しいと思われるなんて。まぁ、頼りにされてるのは全然嫌じゃないんだが。
「はぁ……冷静に考えて見れば、18歳にもなって雷くらいでトイレに行けないなんて。挙句の果てに一緒に入ってもらうなんて……」
サフィアは俺を連れてきたのを申し訳なく思ってるようだ。ちょっとした自己嫌悪って奴か。そりゃあトイレなんて一人で入るのが常識だが……。
「夫をここまで振り回すなんて、妻としては駄目ですね……」
「おいおい、そんなに落ち込まなくてもいいだろ?」
「落ち込みたくもなりますよ……」
かなり気にしてるのか、トイレを出てから元気が無い。
「……気休めとか関係無しとして、別に気にしなくていいんじゃないの?」
そんなサフィアの肩を抱き寄せた。
「俺さ、別にトイレに付き合うくらいなんとも思ってないから、そんなに気にするなよ」
「で、でも……」
「夫婦ってのは、世話を焼かせ合ってなんぼのものだろ?寧ろ、これくらいで迷惑だなんて思う方がおかしい。俺は、サフィアが一緒に来て欲しい所なら何処でも付いて行ってやれるからな」
励ましとか慰めとかじゃなく、本当にそう思っている。サフィアが困っていたら、俺が手を差し伸べる。それは、何時も胸の奥に秘めてる心構えでもある。それくらいの気持ちすら持ち合わせてないようじゃ、俺の方が夫失格だ。
「キッド……ありがとう!」
サフィアは嬉しそうに、俺の腕に抱きついてきた。
「私……幸せですよ!キッドみたいな、優しい人のお嫁さんになれて本当に幸せ!」
「またそんな、大袈裟だっての」
「いいえ!もう本当に……大好き!」
太陽のように明るい笑顔を浮かべながら、懐っこく擦り寄ってくるサフィア。
心から愛する妻の笑顔は、やっぱり何時見ても輝かしい。
大きな決戦を控えている俺には、尚更貴重な宝でもあった……。
13/09/16 08:44更新 / シャークドン
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