連載小説
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第五話 決戦!賞金稼ぎバジル!
「よし!みんな、行くぞ!」
「ウォォォォォ!!」

僕らの海賊船ブラック・モンスターと敵の船が並び合い、海上での戦いが始まった。
船にいる仲間たちは次々と敵の船に乗り込んで戦いに挑んで行った。そして僕は、島に残って賞金稼ぎのバジルと一騎打ちしているキッドの代理として仲間たちの指揮を執っていた。

……本音を言うと、キッドについては心配だった。キッドを信じてない訳じゃないけど、相手は100人斬りを達成した実力者だ。勝てるかどうか以前に、キッドがそれ程の相手に対して無事でいられるかどうか……。
いや、心配していても仕方ない。僕は出来る事を精一杯やろう。

「ひっひっひ!こんな奴ら秒殺してやんよ!」
「一人残らずいてこませぇ!」

敵の海賊も黙ってない。奴らは次々と僕らの船に飛び移って攻撃を仕掛けてきた。
敵の数からして……やはり僕も戦うしかないようだな。

「ひゃはははは!まずはこいつからだぁ!」

ふと、僕の正面からガラの悪い男が剣を構えて僕に襲いかかって来た。

「……牛みたいに突っ込むだけじゃ勝てないよ?」
「うるせぇ!黙って死ね!」

男は剣を縦に振って僕に斬りかかって来た。しかし、僕は咄嗟に背中に掛けてある盾を取り出して攻撃を防いだ。

「戦闘において防御は要でしょ?」
「テ、テメェ!舐めやgうぎゃあ!?」

盾で攻撃を防いでる間に、僕は腰から剣を抜き取り男の腿を突き刺した。

「次からは鎧でも着るのをおススメするね。こうやって普通の蹴りでも防げるんだからさ!」
「ごはぁっ!?」

痛みで止まってる男の腹部目がけて力いっぱい蹴りを喰らわした。蹴られた男は後方に倒れ込み、痛みでもがき苦しんだ。

「にゃろめがぁ!調子ぶっこいてんじゃねぇぞ!」

今度は側面から別の男が小型のナイフを持って襲いかかって来た。

「刺されろ!」
「……聞いてなかったのかな?突っ込むだけじゃ勝てないって」

男はナイフを前方に突き出して僕を刺そうとした。しかし僕は咄嗟に身を翻してナイフをかわし、その隙に男の脳天目がけて盾を叩きつけた。

「がっ!」
「これはオマケだよ!」
「ぶべ!?」

気絶しそうになる男の顔面を盾で殴り飛ばした。殴られた男はその場で倒れ、そのまま気絶してしまった。

さて、これくらいの下っ端なら難なく倒せるんだけど……問題はそれより強い敵だね。僕だけじゃ心許ないから仲間たちに協力してもらって……

「ぎゃああああ!!」
「お助け〜!!」

突然、敵の船から断末魔の様な叫び声が聞こえた。
これは……僕の仲間の声とは違う。と、言う事は…………。




「コリックに掠り傷でも負わせてみろ!その心臓を抉り取ってやる!」
「な、なんでヴァンパイアが海賊船にいるんだよぉ!?」
「問答無用!覚悟しろ!」
「ぎゃあああ!怖いよ〜!!」




……結論が出た。

全く持って心配無し!

なんかもう、敵の船でリシャスが暴れまわってるし、敵の海賊たちもあまりの怖さに戦意を失ってるし。
それに…………

「リシャスさん、流石ですね!よし!私も頑張ります!」

楓を始めとした他の戦闘員たちも既に敵船に乗り込んで頑張ってるみたいだし……この調子なら勝てそうだ。

「Safe!まだ出遅れてないようだな!」

ふと、僕の背後からオリヴィアが駆け寄って来た。
そう言えば、オリヴィアはサフィアさんとメアリーを部屋まで護衛していたんだった。

「オリヴィア、ご苦労さん。二人とも無事に部屋まで送れたかい?」
「……は?二人?何の話だよ?」

僕の問いかけに対し、オリヴィアは首を傾げた。
……ちょっと、冗談止してよ!本気で嫌な予感がするんだけど……!

「サフィアさんとメアリーだよ。二人を部屋まで送ったんじゃなかったの?」
「え?ああ、サフィアなら確かに私が部屋まで送った。でもメアリーの姿が何処にも見当たらなくて、もしかして既に貸した部屋に行ったのかと……」

オリヴィアの答えを聞いた途端、僕の頭に悪い予感が浮かんだ。

そう言えば、僕も船を出した時からメアリーの姿を見ていなかった。
てことは……まさか!




******************



「ち、畜生……!」
「へへ〜ん!奇襲作戦、大失敗♪残念でした♪」

船を下りて様子を見に行って正解だったよ。何やら森林の方向から怪しい気配を感じたと思ったら、先回りしてキッド君に奇襲を仕掛けようとしている海賊たちがいたからビックリしちゃった。
ま、その奇襲も私に見られた事で失敗になっちゃったけどね。

「チッ!速く敵の船長をぶっ殺して秘宝を奪おうと思ってたのによぉ!」
「……もしかして、あのバジルって人に命令されてたの?」
「……いや、俺たちが勝手にやろうとした。あいつ、雇われてる分際で面倒くさいんだよ!『卑怯な真似はするな』なんて言いやがって、何様のつもりだってんだ!」
「……やっぱりね」

敵の海賊の話によると、奇襲は自分たちが勝手に決行しただけで、バジルって人は関係ないらしい。

確かにあの人は卑怯な真似をさせるような人には見えない。
明確な根拠は無いけど……私には、あのバジルって人は優しい人だと思ってる。
だって、そんな感じの瞳を持っていたから……。

「それよりテメェ……あいつらの仲間か!?」
「え?う〜ん……厳密には仲間って訳じゃないよ。ちょっとお世話になってるだけだよ」
「あぁん!?だったらしゃしゃり出るんじゃねぇよ!関係無い奴は引っ込んでろ!」
「やだ!キッド君たちは私の友達だよ!君たちにどんな事情があろうとも、私の友達は傷付けさせない!」

確かに私はキッド君たちの旅の仲間って訳じゃないけど……大切な友達を傷付けるような真似は絶対に許さない!

「生意気言うな!丸腰の女が武器を持った男に逆らうんじゃねぇよ!」

身体が大きい丸坊主の男が剣の切っ先をこちらに向けて脅してきた。



そう……そっちがその気なら…………やってやるわ!



シュッ!



「ぐほっ!?」

剣で脅してる男の顎にパンチを一発お見舞い、更に空いた手で男の喉元に手刀を繰り出した。打撃をもろに喰らった男は激しく嗚咽しながらうつぶせに倒れ込んだ。

「この野郎!調子ぶっこいてんじゃねぇぞ!」

今度は別の男が斧を片手に襲って来た。
でも……大した相手じゃなさそうだね。

「野郎じゃない!私はメアリー!女海賊だよ!」

私は斧の攻撃をかわし、その隙に男の腹部目がけて膝蹴りを繰り出した。そして追撃に男の後頭部に肘打ちを喰らわすと、斧の男はそのまま前方に倒れ込んだ。

「な、なんだ!?なんで武器を持たない女一人に苦戦するんだよ!?」

さっきまで戦いを傍観していた敵の男が驚愕したように言った。
この人たちは分かってないみたいだね。武器が無くても戦えるって事が。

「私、こう見えても格闘家なんだ。戦い方は我流だけどね。だから武器なんか無くても戦えるんだよ♪」

ちょっと余裕を見せつける為に両腕を構えてファイティングポーズを取った。
本当なら魔術の類も出来るんだけど……やっぱり身体を動かすアクティブな戦い方が好きなんだよね♪

「くっ!このアマが……!」
「お仕置きする必要があるようだな!」
「八つ裂きにしてやる!」

一人では勝てないと判断したのか、今度は三人掛かりで襲いかかって来た。
上等!三人まとめて倒しちゃうよ!

「くたばれ、おらぁ!」
「やだも〜ん♪」

私は咄嗟に背中の翼を駆使して、上空へ飛んで敵の攻撃を避けた。そして一人の敵の頭上目がけて……!

「必殺!頭蓋割り!!」
「ガッ!!」

前方に一回転して勢いを増加させた踵落としをお見舞いした。脳天をやられた男はそのまま後方に倒れて気絶した。

「下りてきやがれ!」

……ちょ、危ない!
敵の頭上で滞空してる私に向かって、敵の内一人が銃を発砲してきた。しかし、私は咄嗟に身を翻して鉄砲の弾を避けた。

「うぉっと!?もう、危ないなぁ……お返ししちゃえ!」
「おわぁ!?」

男の手を蹴り上げて銃を真上へ弾き飛ばし、瞬時に地上に戻って銃を持ってた男の腹部を殴りつけた。
そして…………!

「とぉりゃああああ!!」
「グッ!や、止めろ!止めグハァ!!」

男が痛みで怯んだ隙に男の横っ腹目がけてキックのラッシュを繰り出した。
一発、二発、三発……回数を重ねる毎に威力を増し……!

「とぅ!」
「ぎゃああ!!」

最後の一発には顔面目がけて回し蹴りを繰り出した。

……久しぶりに戦ってみたけど、なんだか調子が良いね!
今朝早く船の甲板で技の練習をしておいて良かった。やっぱり日々の鍛錬は怠るものじゃないってことだよね。

「よ〜し!派手に決めちゃうよ!」
「え!?な、何しやがる!?放せ!」

三人目の敵を倒す為に、私は敵の胸倉を掴んでそのまま上空へ飛び上がった。
そして敵の胸倉を掴んでる手を振り上げて……!

「喰らっちゃえ!胴体落とし!」

力いっぱい地面に向かって投げ落した。投げられた敵はそのまま地面に勢いよく叩きつけられ、そのままぐったりと倒れ込んだ。

「やったぁ!決まったぁ!」

ちょっと豪快な技が決まりスカッとしながらも徐に地面に着地した。
残ってる敵を見る限り……まだ結構残ってるみたいだね。でもまぁ、この調子なら問題無さそうだし、スパスパっと片付けちゃいますか!




*************



カキィィィン!!



「うぉんらああああ!!」
「はぁああああああ!!」

互いに何度も武器をぶつけ合い、金属の乾いた音が島中に響き渡った。
一歩も譲らない真剣勝負が始まってから十分以上は経つが、未だに双方ともに怪我一つ負う事無く戦いが続いている。

「キッドか……!久々に楽しめそうだな!船長を務めてるだけはある!」
「そりゃ、簡単にくたばったらつまんねぇだろ?」
「当然だ!」

バジルは鋭い眼光で俺を見据えながら二本のランスで怒涛の連続突きを繰り出した。それに対し、俺は長剣を駆使して上手くランスを受け流して攻撃を避けた。

「今度は俺の番だ!」

全ての攻撃を避け終わったところで、俺はバジルの首を狙うように長剣を横一文字に振って牽制した。すると、バジルはその場でしゃがみ込んで長剣を避けたが……ここまでは読み通り!

「隙あり!」
「無駄だ!」

長剣を避けられたその瞬間、俺は隙を突いてバジルに向かってショットガンを放った。しかし、バジルは咄嗟に後方へバク転してショットガンの弾を避けた。

「……やれやれ……そろそろ一発くらい喰らってくれよ」
「痛い目に遭うのは貴様が先だ!」

突然、バジルは左手のランスを高々と上げてみせた。

……なんだ?一体何をする気だ?

「出でよ……魔力鳥、ファイヤー・クロウ!」
「!?」

あれは……炎?いや、鳥か?

バジルの周囲に点々と炎の塊が出てきたかと思うと、その炎はまるで……カラスのような形を模していた。
しかも一羽だけじゃない。数えてみると……十羽もいる!
おいおい、マジかよ!あんな魔術使えるのかよ!

「骨まで炭にしてやる!行けぇ!」

バジルが左手のランスを俺に向けた途端、炎のカラスが十羽同時に俺に向かって飛んできた。

ヤベェ!あれは喰らっちゃダメだ!

「喰らってたまるかぁ!ふっは!あらよっとぉ!」

大人しくやられるかよ!
俺は次々と襲ってくる炎のカラスをひたすら避け続けた。身を翻し、しゃがみ、跳びはね、時には長剣を振って炎のカラスを打ち消した。

そして最後の十羽目を避けたところで何とか凌げた…………と思った俺が浅はかだった。

「……ふぅ……どうだ!全部防いだ……って、なんだありゃ!?」
「一瞬の油断は命取りだ!羽ばたけ!魔力鳥、サンダー・ホーク!」

安心した瞬間、今度は電流を帯びた鷹が姿を現し、俺に向かって勢い良く羽ばたいてきた。

今度は一羽だけだが、さっきのカラスより数倍も大きい。炎は触れても対処できるが、雷だけは迂闊に触っちゃダメだ!上手く避けるしかない!

迫ってくる鷹を目前にしながらも、俺はできるだけ心を落ち着かせて呼吸を整えた。

……落ち着いてやれば絶対に対処できる。
だから冷静になって……冷静に……冷静に……!

「今だ!」

俺はタイミングを見計らって跳躍した。足が雷の鷹と擦れそうになったが、何とか避ける事に成功できた。

上手く着地し、今度こそ凌げた……と思ったら……


「いや〜、危なかった。今度こそ…………って、は!?」


おい……ふざけんなよ……!


「さぁ……この数を相手にどう立ち向かう!?」

最悪の状況に陥ってしまった。なんと、今まで避けた炎のカラスが十羽以上と、雷の鷹が一羽、再びバジルの周りに現れた。

「畜生!まだそんな魔力が残ってたのかよ!見かけによらずしぶとい奴だ!」
「賊の首に執着が無かったら、賞金稼ぎとしてやっていけないだろ?」

マスクで口元を覆ってるせいで分かり辛かったが、バジルは不敵な笑みを浮かべたように見えた。


生意気な事言いやがって……!よし!こうなったら、俺も腹を括るぞ!


「焼け焦げろ!ファイヤー・クロウ……サンダー・ホーク……突撃!」

バジルの叫びと同時に、炎のカラスと雷の鷹が一斉に羽ばたいて襲いかかって来た。
さっきみたいに避け続けても埒が明かない。だったら……こっちから突撃するまでだ!

「うぉおおおおおおお!!」

覚悟を決めた俺は自らバジルを標的に定めて勢いよく駆けだした。

「ば、馬鹿な!?自ら向かって来ただと!?だが、俺の鳥の大群に敵う訳が……」

俺の行動が予想外だったのか、バジルは一瞬だけ驚いたが、すぐに獲物を睨む鋭い目つきへと変わった。


そこで待ってろ……すぐに一発喰らわせてやるからな!


俺は地を駆ける足を休ませる事無く、次々と飛んでくる炎のカラスを巧みに避け続けた。
立ち止まって避けるより難しいが、一発でもまともに喰らったらそこで終わり。俺は一瞬たりとも気を抜かずに炎のカラスを全て避ける事が出来た。

そして最後の難関、遅れて飛んで来た雷の鷹が迫って来た。
こいつさえ避けてしまえば、バジルの下まで行ける。よし!一気に攻め込むぜ!



俺は心の中で三つ数え始めた。

3……2……1…………今だ!


「とう!」

瞬時に身体を小さく屈み、前転で雷の鷹の下をくぐり抜けた。その瞬間に耳元でバチバチと電流の音が響いたが、なんとか触れずに避けれたようだ。

そして前転が終わり小さくしゃがんだ状態に入ったと同時に…………!

「喰らえぇ!」
「ぐわぁ!?」

長剣でバジルの左腕を突き刺した!更に追撃として立ち上がり際にバジルの腹を力いっぱい蹴り飛ばしてやった。

「よっしゃあ!決まったぜ!」
「ぐほぁ!?な、なんの……!」

我ながら見事に決まったが、やはりバジルも実力者。蹴りを喰らっても倒れず、痛みを堪えながらも足に力を入れて踏ん張った。

「クソッ!!」
「よっと!」

バジルは体勢を立て直すと、右手のランスを突き出して牽制してきた。それに対し俺は後方に跳び、一旦バジルとの距離を取って様子を見た。

「ぐ……おのれ……!」

刺された左腕から血が流れ、痛みで顔を歪めながらもバジルは戦闘態勢を崩さなかった。

「どうだ?今日はもう終わりに……って、言ったところで聞く訳ないか」
「当たり前だ!まだ勝負は終わってない!」

そう叫びながら、バジルはランスを構え直して戦闘の体勢に入った。

……それにしても、その不屈の闘争心……中々感心できる物だ。
このバジルって男……どうにも悪人には見えないな。




ドォン!!




「ぎゃあああ!た、助けてくれ〜!」


……な、なんだ?

突然凄まじい音が響いたかと思うと、森林の方から見知らぬ男が飛び出て来た。
誰だ、あいつは?あんな奴、この島にいたっけ?

「な!?あ、あいつは確か俺と同行してきた海賊!」

見知らぬ男の姿を見た途端、バジルが少しばかり動揺した。
今のバジルの発言からして……どうやらあの男は敵の海賊の一員らしいな。

「どう?降参するんだったら許してあげるよ?」

聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、森林からその声の主が姿を現した。
そいつは…………メアリーだった。

「……あ、キッド君!そっちは大丈夫?」
「……メアリー!?なんでアンタがここに!?」

想定外の人物の登場に驚きを隠せなかった。
なんでメアリーがこの島にいるんだ?てっきりサフィアたちと一緒に船に残っていたのかと思ってたんだが……。

「実はさっきね、森林の方で人の気配を感じて、ちょっとだけ様子を見に行ったんだ。そしたら敵の海賊が数人程キッド君への奇襲を企んでたみたいだから、私がお仕置きしてやったの」
「なに!?本当か!?てことは…………バジル!」
「ま、待て!誤解だ!俺は何も知らない!本当だ!」

奇襲と言う言葉を聞いた途端、俺は真っ先にバジルの仕業かと思ったが、本人は真っ向から否定した。


……まぁよく考えてみれば、さっき敵の男が出てきた時、バジル自身も想定外だったらしく、かなり動揺していた。
あの反応からして、最初から自分の仲間を島に残させるような指示は出してなかったんだろうな。


「そうだよ!その人は何もしてない!『勝手にやろうとした』って自分から言ってたよ!本当だって!」

敵を追い詰めてたメアリー本人も逃げてきた男を指差して言った。

メアリーもこう言ってるんだし、奇襲に関してはバジルの命令じゃなかった訳か。
それにしても、たった一人で複数の男を倒すとは……やはりメアリーもリリムなだけあって相当強いのかもしれないな。

「……さて、この人どうしようかな?」
「た、た、頼む……許してくれ……!命だけは……命だけは……!」

感心していると、メアリーは視線を敵の男へと移した。赤い瞳に捉えられた敵の男は、その場で土下座をして痛々しい程に命乞いを繰り返した。

「わ、分かった!分かったよ!もう何もしないから落ち着いて!」
「ほ、本当ですか……?」
「うん、本当だよ!」

怯える男が哀れに思ったのか、メアリーは慌てて命乞いを止めようとした。
やれやれ、お人よしだな……敵に対して感情移入し過ぎなんだよ。
まぁ、良い意味で考えれば長所って事になるけどな。

「……あ、あの……ところで……さっきから後ろにいるのはなんですか?」
「え?」

ふと、男が怯えた表情を見せながらメアリーの背後を指差した。それにつられてメアリーも自分の背後を振り返り……。



…………ハッ!まさか!



「メアリー!危ない!」
「え……きゃあ!?」


俺が叫んだ時には遅かった。
敵の男はメアリーが余所見した瞬間、その場に落ちてた木の棒でメアリーの頭を殴り付け、更に男は肩でメアリーを突き飛ばした。
突き飛ばされたメアリーはその場で尻もちをついてしまった。

「痛い……」

何てことだ……メアリーの頭から血が流れてる。木の棒で殴られたせいだ。
あの野郎!油断させる為の罠だったのか!卑怯な真似しやがって!

「バーカ!油断するから悪いんだよ!俺たちの奇襲作戦を台無しにしやがって!お前なんか殺してやるよ!」

そう怒鳴ると、男は腰から剣を抜き取ってメアリーに襲いかかった。
ヤバい!速く助けないと!

「………………」
「……ハッ!?」

急いでメアリーを助けようとした瞬間、傍にいるバジルの存在に気付いた。

しまった!まだこいつと戦ってる最中だった!
でも、バジルと戦ってたらメアリーが危ない!どうすれば……!

「死ねオラァ!」

男の努号と同時に鋭い刃がメアリーの頭上に振り下ろされた。


……クソッ!こうなったら、ショットガンで男を撃つしか方法は無い!



「頼む!間に合ってくれ!」



左手のショットガンで男を狙い撃とうとした…………が!
その瞬間、俺の傍で風を切る音が…………!





キィィィン!!






「…………」
「……え?」
「あ、あいつ……!」


ショットガンの引き金が引かれる事は無かった。
何故なら……引く前に事が終わったのだから。


「君……どうして……?」
「…………」


メアリーは敵に斬られずに済んだが、自分を庇ってくれた人物に戸惑いを隠せなかったようだ。
だが、それは俺も同じ。まさか……あいつがこんな行動に出るとは……。




「バジル……アンタ、何時の間に……」



バジル……さっきまで俺と戦ってた賞金稼ぎはランスを交差して、仲間である筈の男の刃を受け止めていた。

「テ、テメェ!何しやがるんだ!邪魔するんじゃ……」
「黙れ!」

バジルは腹の底から大声を上げると、男の顎を蹴り上げた。蹴られた男は痛みで顔を歪めながら後方へ退いた。

「この野郎!テメェはどっちの味方なんだよ!つーか、テメェは船長に金で雇われてる身分だろうが!図に乗ってんじゃねぇぞ!」
「うるさい!たった一人のか弱い女に、卑怯で乱暴な仕打ちを平然と行うクズが!恥を知れ!」

……おいおい、なんだこの状況は?こいつら、仲間じゃなかったのか?

「なんだとコラ!ぶっ殺されたいのかオラァ!」
「……もう良い、眠ってろ」

そう言うと、バジルの左手からさっきと同じ雷の鷹が現れた。その鷹を目の当たりにした瞬間、男の顔が一気に引き攣った。

「お、おい……待てよ……まさか、そいつを俺にぶつける気じゃ……」
「……ああ、ぶつけてやる」
「え!?ちょ、や、止めろ!馬鹿な真似は止せ!俺の船長はテメェの雇い主だぞ!」
「そんなの知るか!羽ばたけ!サンダー・ホーク!」
「う、うわあああ!来るな!来るなぁ!」

バジルの叫びと同時に、雷の鷹が敵の男に向かって飛んで来た。
敵の男はその場から逃げようと背を向けたが……雷の鷹の方が速かった。

「ぎゃああああああ!!」

悲痛な叫びが響き渡り、真っ黒に焦げた身体が無残にも倒れた。

「うわぁ……あんなに高威力だったのか……」

もしも戦ってる時にあの雷をまともに喰らったと思うと……背筋に寒気が走る。さっきは上手くかわせて良かった。

「…………」
「あ、えっと、その……」

攻撃が終わった途端、バジルは背中のランスを背中に掛けると、徐に背後を振り返り、座り込んでるメアリーをジッと見据えた。

……て、下らない事思ってる場合じゃなかった!あいつ、メアリーに何かする気じゃ……!

「……動くな」
「え?」

バジルはその場にしゃがんでメアリーとの視線の高さを合わせると、懐から白いハンカチを取り出した。

「…………」
「あ、あの……」
「痛むか?」
「え?う……ううん、大丈夫……」

バジルは取り出したハンカチで黙々とメアリーの頭の血を拭った。それも優しく……痛まないように……。

……あれ?気のせいか?なんか、メアリーの顔が少しばかり赤くなってるような……?

「……この程度の傷なら治せるな」

そう呟くと、バジルの左手から白い光が収束され、その光はやがて小さい鳥の形に変形した。
あれは……ハトに見えるな。また魔力の鳥か?でも、今までのとは違うような……。

「傷を治せ……魔力鳥、ヒーリング・ピジョン」

バジルがそう言うと、白いハトは羽ばたきだし、メアリーの頭の傷を嘴で突き始めた。

「お、おい!一体何を……」
「騒ぐな。傷を治してるだけだ」

俺は白いハトがメアリーを攻撃してると思ったが、バジルは冷静に手のひらを翳して俺を止めた。
治してる?どういう意味だ?俺からしてみれば、むしろ攻撃してるように見えるんだが。

「……あれ?痛くない……」
「え?」

一方、何度も傷を突かれてるメアリーは全然痛がってなかった。
やがて、白いハトが傷を突くのを止めるとその場で姿を消した。

「……治ったか?」
「……え!?傷が癒えてる!凄い!」

メアリーは傷が完全に治った事に驚きを隠せなかった。
今ので治ったのか?突かれただけで……?

「今のは一体……?」
「ヒーリング・ピジョン。俺の魔術によって魔力で形成された鳥だ。その嘴は治癒の魔法が秘められていて、突かれた者は痛みを感じる事無く傷を治せる。と言っても、流石に深すぎる傷には対応できないがな」

呆気に取られてる俺とメアリーに説明するかのように、バジルが立ち上がり際に話し始めた。
へぇ……こいつが作る鳥は攻撃系統のものばかりじゃないんだな。

「……助けてくれてありがとう。でも、なんで……?」

メアリーはその場から立ち上がった。
確かにバジルがメアリーを助けるとは思わなかった。その上怪我の治療までするなんて……どういう事だ?

「勘違いするな。俺は卑怯な真似が大嫌いで、さっきの男の悪行を目の当たりにして腹が立っただけだ」
「じゃあ、怪我の手当ては……」
「……無意味な暴力を受けて傷付けられた女を見たら、放置出来ない性分だからな」

バジルは腕組みをしつつ無愛想に答えた。
へぇ……中々やるな……このバジルって男、ある意味良い男だよ。

「……君……優しいね……ありがとう!」
「…………フン!」

ほんのりと頬を赤く染めつつ、明るい笑みを浮かべながらお礼を言うメアリーに対しバジルはそっぽを向いた。


生憎だが、照れ隠しなのがバレバレだな。ちょっと顔が赤くなってる…………。
って、微笑ましく見てる場合じゃねぇ!まだこいつとの戦いが終わってなかった!



「……で、決闘はどうする?続きをやるなら、俺は受けて立つが……」

俺の言葉に対し、バジルは俺に視線を移した。一方、メアリーはどうすれば良いのか分からない為か、困った表情で俺とバジルを交互に見た。


互いに何も言わず、長い沈黙が続いたが……先に言葉を発したのはバジルだった。


「……勝負は終わった。俺はもう引き上げるとしよう」
「は?」

バジルは海の方向へと歩き出した。その行動には呆気に取られたが、俺は慌ててバジルを呼び止めた。

「おい!ちょっと待てよ!終わったってなんだよ!勝負はお預けとでも言いたいのか!?」

バジルは俺の言葉を聞くと、歩くのを止めてその場で振り返った。

「いや、この勝負……俺の負けだ」
「は?どういう意味だ?」

首を傾げる俺に構わず、バジルは話し続けた。

「自分で決闘を申し込んでおきながら……俺はあの卑怯な海賊に手を出した。一騎討ちの最中に他の戦士に手を出すなんて……愚かしいにも程がある。あのクズに手を出した時点で……俺は負けたも同然だ」
「いや……あれはしょうがないだろ。それに俺だって、決闘の最中にショットガンであの男を撃とうとしたんだ」
「貴様がそのつもりだったとしても……事実上、手を出したのは俺だ。貴様は何もしてない。黙って勝利を認めろ!」



勝利を認めろか……初めて言われた。
俺は胸を張って言えるよ。こいつは本当に……スゲェ男だ!



「……分かった。今回は俺の勝ちって事で良いな?」
「ああ、無論だ」
「だが、次に会う時が来たら二回戦と洒落込もうじゃないか!」
「なんだと……!?」

目を丸くするバジルに対し、俺は話し始めた。

「俺としては、正直言って今回の勝ち方は気に入らない。だから今度はちゃんとした決着をつけたいんだ」
「…………」
「それに、俺はアンタみたいな男は嫌いじゃないな。冗談抜きで仲間に引き入れたいと思ってる。まぁ、アンタは断るだろうけどな」

今言ったのは俺の本音だ。俺は本気でバジルが気に入った。命の奪い合いは無しとして、また機会があればバジルと戦いたい!
それに、こいつが仲間になってくれたら、どんなに楽しい事か……!

「……二回目の決闘なら何時でも受けて立とう。だが、部下になるのは御免だな。賊の奴隷に成り下がるくらいなら死んだ方がマシだ」
「そうか……まぁでも、仲間と奴隷は全然違うぞ。俺は自分の仲間が奴隷だなんて思った事は一度も無いさ。あいつらは俺を支えてくれる……最高の宝だから」
「!?」

俺の言葉を聞いた途端、バジルは一瞬だけ驚いた表情を見せた。
……なんだ?俺、変な事言ったか?

「そうか……貴様は違うのだな……全く、どっかの馬鹿は貴様のような男を見習うべきだな」
「どっかの馬鹿?」
「いや、こっちの話だ……俺は行くとしよう」
「あ!待って!」

バジルは再び海の方向へ歩き出そうとしたが、メアリーに呼び止められて歩みを止めた。

「……なんだ?」
「君……怪我してるよ!大丈夫!?」

バジルの左腕の傷を目にした瞬間、メアリーは慌ててバジルの下へ駆け寄った。
……あ、そう言えばあれって俺が長剣で突き刺した時の…………。
そう思うと何故か気まずくなり、とりあえず長剣とショットガンをそれぞれの鞘に収めた。

「……後で包帯でも巻いておく」
「ダメだよ!傷は早く処置しないと!」

メアリーはバジルの左腕の傷に手を翳すと眩い光が放たれた。
あれは……治癒魔法か。やっぱりリリムであるが故に魔法には長けてるんだな。

「ジッとしててね。痛くないから」
「……分かってる」

……なんか、凄く微笑ましい光景に見えるのは気のせいか?てか、もしかして俺って邪魔だったりする?

「……はい。血は止めたし、傷も癒しておいたよ」
「……かたじけない」

傷が癒されると、バジルは一言だけ礼を言ってその場を去ろうとした。
……そう言えば……こいつ、どうやって島を出るんだ?まさか、ここから泳ぐなんて真似はしないだろうな?

「出でよ!魔力鳥、ウィング・ファルコン!」

すると突然、バジルの目の前に緑色の巨大な鳥が姿を現した。そいつはまるで隼のような姿をしており、身体の周りを包むかのように穏やかな風が発生していた。
あぁ、これが移動手段か。何かと便利だな。

「ハッ!」

バジルが勢いよく跳躍して隼の背中に乗ると、隼は大きく羽ばたき、上空へ飛び上がった。
すると、メアリーは上空にいるバジルに向かって大声で叫んだ。

「バジル君!また会おうね!」
「…………」


バジルは何も言い返さず、巨大な隼と共に海の彼方へ飛んで行った………………。



さて、これにて一件落着だな。今日は船に戻ってゆっくり休んで…………ん?
何か忘れてるような…………あ!そうだ!俺の仲間たちがまだ、バジルに率いられた海賊と戦ってるんだった!


「うぉぉぉぉい!!あいつら、連れて帰れーーー!!」


海の彼方に向かって大声で叫んだ……………。



**************



あの戦いから翌日の午前十時。キッド君率いる海賊団のみんなは出航の準備を進めていた。今度は新魔物領である『マルアーノ』へ行く予定だ。
ちなみに私も暫くの間、船に乗せてもらう事になった。何から何まで世話になってばかりで、本当にありがたい。

昨日の戦いにて、キッド君とバジル君の決闘が終わった後、ヘルム君たちの海での戦いも無事に勝利を収めたらしい。
なんでも、島を出て行くバジル君の姿を見た瞬間、海の海賊たちは慌てて戦闘を止めて引き返したとか。多分、バジル君が負けたと悟り、自分たちにも勝ち目がないと判断したのだろう。

「…………バジル君か……」

船の甲板で海を眺めながら、私は昨日初めて出会ったバジル君の顔を思い浮かべた。


あの人は……本当に優しい人だった。態度や口調は素っ気なかったけど……敵の罠に嵌められた私を助けてくれた上に、傷の手当てまでしてくれた。


あの時……ハンカチで頭の血を拭ってくれた時、彼の顔が近付いて……ちょっと緊張しちゃった。バジル君の優しさに触れて……心が温かくなって……それからずっと、彼の事が気になってる自分がいる。


……また会えるかな?もし会えたら……今度は色々とお話したいな。
あ、でも私は海賊で、バジル君は賞金稼ぎだから……やっぱり戦わなきゃいけないのかな?


それでも……また会いたいな……。


「Hey!メアリー!突然だが、ビッグニュースだ!」
「あ、オリヴィアちゃん。どうしたの?」

ぼんやりと考え込む私の後ろからオリヴィアさんが興奮気味に声を掛けてきた。

「ほら、黒ひげの秘宝なんだけどさ……!」
「……ああ、あれか!」

そうだ!すっかり忘れてた!まだ黒ひげの秘宝を見てなかった!

「確か……アンって言う名前のエキドナが持ってて、アンさんの夫探しを手伝う代わりに秘宝を貰うって話だったよね?」
「そうそう!それでさ、そのアンって奴が今ここに来てるんだよ」
「え!?」

自分から来たの!?ここに!?

私は甲板の柵から身を乗り出して海岸を見てみると、そこにはキッド君と……アンさんと思われるエキドナが話していた。
そしてキッド君の手には、何やら金製の宝箱らしき物が……!

「あ!あれって……もしかして……!」
「そうなんだ!驚く事に、秘宝を譲ってくれるみたいなんだ!」
「えぇ!?本当に!?てことは……あれが黒ひげの秘宝!?」

まさか、こんなあっさりと譲ってくれるなんて……。
でも、あの宝箱の中に黒ひげの秘宝が入ってるんだ!
どうしよう!興奮してきちゃった!

「オリヴィアちゃん!あの宝箱の中身を見せてもらいに行こう!」
「OK!」

私とオリヴィアちゃんは船から飛び下り、キッド君たちの下へ駆け寄った。

「おーい!キッドく〜ん!私たちにも見せて〜!」
「……お、やっぱり来たか」

キッド君は私が来るのを察していたのか、宝箱を両手で抱えながらほくそ笑んだ。

「あら、あなたがメアリーね?この人から色々と聞いてるわ。あなたも秘宝が見たいんですってね」
「うん!どうも初めまして!」
「ええ、初めまして。私はアンよ。よろしくね」

キッド君と対面してるアンさんは優しく微笑みながら挨拶した。
結構優しそうだね……母性溢れる感じがするよ。でも、なんで秘宝を譲ってくれたのかな?

「あの、いきなりこんな事訊いて失礼だけど……なんで秘宝を譲ってくれたの?」
「それがね、私にはもうその秘宝は必要無くなったのよ」
「と……言うと?」
「ほら、昨日この島に海賊が数人くらい上陸してきたでしょ?その中に爽やかで知性的で、まさに私の好みの人がいてね、その人を旦那にする事にしたの!」

ああ、あの奇襲を仕掛けようとしてた海賊たちか。そう言えば、今思い返してみればそんな人もいたような気がするな……。

「念願の旦那様も手に入れたし……報酬を求めてたとはいえ、私の為に協力を申し出てくれたから、そのお礼も兼ねて秘宝を譲る事にしたの」

この嬉しそうな様子を見るからに……よっぽど旦那が欲しかったんだね。


でも良いなぁ……本当に幸せそう。私も……何時か男の人と結ばれる時が来るのかな……?
結ばれるとしたら…………やっぱり昨日会った……。
って何思ってるんだろう、私…………ちょっと変だ。あの人と会ってから…………。


「それじゃ、私はそろそろ帰ろうかな」
「なんだ?もう帰るのか?」

森林の方へ進もうとするアンさんをキッド君が呼びかけた。

「ええ、これから旦那様を調教する予定なの」
「そうか……って、調教!?何するつもりだよ!?」
「あの人、ちょっと素直じゃない性格なのよ。だからこれから私が、超ド変態の超ドM男に調教しちゃおうと思っててね♪」
「……アンタ、サディストかよ……」
「うん、性的にね♪」

アンさんはあっけらかんと答えた。

……その人、これからアンさんに色々と凄い事されちゃうんだろうな…………乙です。

「……まぁ、程々に頑張れ。それと、お幸せに」
「ええ、ありがとう!あなた達も船出には気を付けてね。それじゃ、さようなら!」

アンさんは鼻歌交じりに森林の奥へと進んで行った。きっと、これから旦那さんを調教するのだろう……性的に。

「さ〜て!早速秘宝を見ようと思うが……メアリー、アンタも見るか?正真正銘、黒ひげの秘宝だぞ?」

キッド君は両手で抱えてた宝箱をその場に置いた。

「うん!見たい……って、本当に黒ひげの秘宝なの!?」
「ああ、アンの話によるとな……黒ひげの部下がこの島のダンジョンに宝箱を置いて行ったそうだ。そして、その宝箱こそ……今ここにあるのがそうだ」

キッド君は不敵な笑みを浮かべながら地面に置いてある宝箱を指差した。
今の話が本当なら……この宝箱の中に、黒ひげの秘宝がある!

「そうなんだ……キッド君!私も黒ひげの秘宝が見たい!早く開けようよ!」
「よっしゃあ!伝説の海賊の秘宝とやらとのご対面に洒落込もうか!」
「おう!珍しい武器だと良いなぁ!」

私とキッド君、そしてオリヴィアちゃんは早速黒ひげの秘宝を見る事にした。


キッド君が徐に宝箱を開けると……そこには…………!



「…………ん?」
「これって……?」
「Oh…………」

そこには……確かにお宝があった。

「なぁ、これ……どう思う?」
「どうって……綺麗だね」
「……ま、確かに綺麗……だと思うけど……」

それは……キラキラに輝く黄金で……。

「まぁ、金にはなると思うが……」


黄金だけど……変わった形をしていた。


「……金の骸骨か?」
「そうだね…………」


一言で言うと…………黄金のドクロだった。
12/08/23 17:00更新 / シャークドン
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■作者メッセージ
というわけで、今回はキッドとバジルの一騎打ちでした。
……え?海での戦い?ごめんなさい……今回は二人の戦いとメアリーの暴れっぷりがメインでして、海の戦いはオマケ程度でしか書きませんでした。本当にごめんなさい……。

そして最後に出てきた黄金のドクロ……手に入れただけでは終わりません。あれが今後の物語にどう影響するのかは……暫しお待ちください。

さて、次回は船を進めて親魔物領『マルアーノ』でのお話です。これまでとは違ってゆったり気味な話になるかと思います。

では、読んでくださってありがとうございました!

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