読切小説
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もしも戦国武将で有名な織田信長がリリムだったら
「ん〜……ふぅ……」

ここは、日の本と言う島国の一部の領、尾張。その中心にそびえ立つ城の内部にて、畳が敷かれた自室で古文書を読んでいた私は、持っていた本を机に置いて軽く伸びをした。本の内容に夢中になってしまい、気付いた時には二時間も経っていた。
古文書を読んだ私、明智光秀は、昔の偉人たちに感服した。昔の時代に生きた人間や魔物が築いてきたものは、今の時代へと受け継がれ生かされていく。歴史に名を残した人間や魔物の偉業は忘れ去られる事無く、こうして多くの者たちに知られる。
そして、この時代において活躍した者の名も後世へと語り継がれるだろう。人間の男である私など問題外ではあるものの、あの方なら必ず歴史に名を残すだろう。
そう、『あの方』こそ、歴史に名を残す……

「うわぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁ!!」

突然、遠くから断末魔の様な悲鳴が聞こえた。
何だ!?今の叫び声、城下町の方向から聞こえたような……!?

「光秀様!光秀様!」

部屋の外から私を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえた。

「そちらに入ってもよろしいですか!?」

この声は……蘭丸か?何やら慌てふためいてるようだが……まさか、今の叫び声と関係のある事か?

「ええ、どうぞ」

疑問に思いながらも、私は部屋の外にいる蘭丸に返事をした。

「失礼します」

静かな声と共に部屋の襖が開けられ、私の予想通り、森蘭丸が部屋に入って来た。

森蘭丸はアルプと呼ばれる魔物であり、『あの方』に仕える小姓でもある。手際が良く、誰にでも優しい性格から、評判の良い小姓として有名な魔物だ。

「どうしましたか?何やらただ事ではないようですね……?」

私が話を促すと、蘭丸は興奮気味に報告した。

「城下町にて盗賊が暴れています!城の兵士たちが応戦していますが苦戦している模様!どうか、助太刀の程を!」

……成程、あの悲鳴は民の人たちか。呑気に読書なんてしてる場合じゃないな。しかし参ったな……こんな時に城の主である『あの方』は外出中だと言うのに……ここは何とかするしかないか。

「城にいる方々には報告したのですか?」

私は素早い動作で立ち上がり、部屋の脇に立てかけられている愛用の刀を腰に掛けながら蘭丸に訊いた。

「はっ!先ほど羽柴秀吉様、柴田勝家様にも報告しました!お二方は既に応戦へ向かっているかと!」

秀吉殿と勝家殿も向かわれたのか……ラージマウスの羽柴秀吉、アカオニの柴田勝家、魔物である二人に限って盗賊ごときに負けるとは思えないが、任せてばかりでは心許ない。
もしかしたら、戦ってる最中に喧嘩してるかもしれないし……

「了解しました。私もすぐに駆けつけます。」

それだけ言い残し、私は急いで城下町へ赴く為に部屋を出て走り出した…………。



〜〜〜数分後〜〜〜



「おりゃあ!どんなもんだい!」
「威勢が良い割には大した事ないねぇ!」

私が城下町に駆け付けた時には、既に秀吉殿と勝家殿が大勢の盗賊を相手に奮闘していた。秀吉殿は持ち前の俊敏の良さを生かして盗賊たちを蹴り飛ばし、勝家殿は愛用の金棒を振り回して盗賊たちを叩き潰していた。

「やっちまえ!秀吉様!ぶっとばせー!」
「勝家様!今のあなた、かっこ良すぎる!」

その二人の雄姿を見守りながら、周囲にいる民たちが声援を送っていた。
相も変らぬ見事な腕前……加勢など必要無かっただろうか?

「畜生!こうなったら、このネズミだけでも……!」

……いや、そうでもないか。

「させません!」

私は全速力で走り寄り、秀吉殿の背後から刀で斬りかかろうとした盗賊の男を、刀を引き抜くと同時に斬り倒した。

「ぐぉあ!?」

悲痛な悲鳴を上げながら盗賊の男はその場で崩れ落ちた。
少々力を入れたが、峰打ちだから死にはしないだろう。

「お!光秀の旦那!助太刀、感謝しやす!」

私の存在に気付いた秀吉殿は無邪気な笑みを浮かべながら礼を言った。

「たかが盗賊共が相手とは言え、ご油断召されるな、秀吉殿」
「えへへ……すんません」

秀吉殿は愛想良くペロッと舌を出しながら謝った。
この愛嬌の良さから『あの方』をはじめとする多くの人に慕われている。
ただ……勝家殿は違うようだが……。

「光秀!ハッキリ言って、こいつら雑魚だ!そんなネズ公は放っておいて、速く全員懲らしめちまおうぜ!」

盗賊たちを金棒で殴り飛ばしながら勝家が大声を上げた。
流石は勝家殿、武において彼女ほど頼もしい方はいない。
ただ……秀吉殿を嫌っているようだが……。

「テメェ!明智光秀だな!その首、斬りおとしてやる!」

盗賊の男が刀を構えながら私に襲って来た。
甘く見られたものだ……しかし!

「遅い!」

男の刀が振り下ろされる直前に、私は男の首元に峰打ちを当てた。男は痛みで顔を歪めながらその場に倒れ込んだ。

「私の首に価値などありませんが、貴方がたに差し上げる義理などありません!」

私の怒声と同時に、盗賊が三人がかりで襲ってきた。
何人来ようと同じ事……今だ!

「隙あり!」

私は三人の盗賊が同時に生じた隙を見逃さなかった。並列になって走ってくる盗賊たちの隙間を素早く潜り抜けた。

「おわっ!何時の間に!?」
「くそっ!すばしっこい野郎だな!」
「確かに素早いが、背中を見せやがったな!馬鹿な奴め!」

突然の事に戸惑いながらも、三人の盗賊は再び私に襲いかかって来た。

「それはどうでしょうか……おバカさん」

私は静かな声で呟き……

キンッ!

「ごはぁっ!」

刀を鞘に収める音と同時に、三人の盗賊は前のめりになって倒れ込んだ。
鼻に掛ける気は無いが、私は居合切りが得意で戦においても活用している。尤も、『あの方』は殺生を嫌っているが故に、刃で人を斬るのはごく稀だが……

「あっははは!楽勝、楽勝!」
「街をメチャクチャにした責任は取って貰うからな!」

秀吉殿は勝ち誇った笑みを浮かべながらはしゃぎ、勝家殿は地面に倒れた盗賊たちに向かって怒鳴り散らしていた。
どうやら盗賊たちはあらかた片づけたようだ。

「こん畜生!オメェら、よくもやってくれたな!」

ふと、やけに野太い声が響き渡った。声が聞こえた方向へと視線を移すと、体躯が大きく、ガラの悪い髭面の大男が金属製の槌を構えながら私たちを睨みつけていた。

「お……お頭……」
「助けてくだせぇ……」

地面に横たわっていた盗賊たちが大男に縋った。
成程、この大男が盗賊たちの頭か。

「大人しく武器を捨てて降参する事をお勧めします。あなたでは私たちには勝てません」

私は落ち着き払った態度で盗賊の頭に忠告した。
無駄な戦いはできるだけ避けて、一刻も早く民の方々を安心させてあげたい。ここで降伏させれば、街の被害を最小限に抑える事が出来る。

「ほざけ!無様にやられたまま大人しくできるかよ!総大将たるこの俺様がテメェらをぶちのめしてやる!」

盗賊の頭は敵意をむき出しにしながら槌を構えた。
参ったな……全く持って聞く耳持たないようだな……。

「上等!何度でもかかってきんしゃい!」
「ったく!しょうがないねぇ!」

秀吉殿と勝家殿が戦う構えに入った。
……こうなってしまったら致し方ない。手っ取り早くねじ伏せるしか……

「そこまでよ」
「っ!?」

ふと、私の背後から聞き覚えのある声が響いた。
この声は……そうか……。

「あ……あわ……あわわ……」

気付くと、盗賊の頭は顔を真っ青に変えながら怯えていた。足はガタガタに震え、強気だった瞳は今にも泣き出しそうな子供の目に変わっていた。

「お、おい……まさか!」
「ああ、間違いない!」

私たちを見守っていた民の方々は驚愕、羨望、様々な視線を私の背後に向けていた。
……やはりそうか……帰ってこられたか……『あの方』が……。
私は、ゆっくりと『あの方』のいる方向へ振り向いた。そこには…………

「みんな、ただいま」

声の持ち主である『あの方』……織田信長様がいた。
色白の肌に白く艶のある長い髪、そして赤い瞳、すぐ横を通り過ぎれば誰もが振り返るであえろう美貌と、どんな強者であろうと怖気づく威圧感を漂わせている。この方が、尾張を治める一国の主、織田信長様だ。

「……テ、テ、テメェ!第六天魔王!と、飛んで火にいる夏の虫とはこの事だな!」

ふと、盗賊の頭が怯えながらも信長様に食い下がった。
そうだ、まだこの男を大人しくしていなかった。速くなんとかしないと……!

「テメェを倒せば俺も大物になれる!覚悟し……」
「お黙り」
「どわあ!?」

……さほど問題ではなかった。
信長さまは一言だけ発すると、右手を軽く振り上げて盗賊の頭の影から触手を出現させて男を捕縛した。

「私の国で暴れまわった罪……その身を持って償いなさい」

信長さまは手の平を盗賊の頭に向けた。すると信長さまの手に黒い光が収束し、やがて弾の形に変形した。

「はぁっ!」
「ぐぁっ!……は…………」

信長様が手のひらに力を入れると同時に、黒い光の弾は一直線に飛び、盗賊の顔面に直撃した。盗賊は気を失って触手に捕縛されたまま力無くうなだれた。

「兵士のみんな、盗賊たちを縄で縛って牢獄へと入れてあげて」

信長様の発言と共に、盗賊の頭を捕縛していた触手が徐々に縮み、やがて気を失った盗賊の頭は地面に横たわった。周辺で様子を見ていた城の兵士たちは急いで盗賊たちをひっ捕らえ、縄で縛りあげた。
流石は信長様……そのお手並み、感服極まりありません。

「さてと、荒くれ者たちは片づけたし……」

ふと、信長様は私の方へ向き直り、愛らしい笑みを浮かべながら駆け足で……え?
あの、信長様?まさか……まさか……!?

「お、お待ちを!信長さ……うわぁ!」
「み〜くぅん♥会いたかったよー!」

予想は的中した。信長様は私に抱きついてきた。

「遠くまで出かけてる間、み〜くんに会えなくて寂しかったんだからぁ♥」
「そうでしたか……って、あの、信長様、周りの人たちが見てますよ!?信長様、信長様ってば!?」

私の呼びかけに反応せず、信長様は甘える子猫の様に可愛らしい笑みを浮かべながら私の肩に顔を擦り寄せた。

「えへへ……み〜くん、暖か〜い♥」
「……左様ですか」

……ダメだ、完全に自分の世界に入ってる。こんな私たちのやり取りを見て、秀吉殿は声を押し殺して笑ってるし、勝家殿は呆れた様に首を振ってるし……。
信長様を宥める事を諦めた私は、片手で信長様の頭を優しく撫でた。すると、信長さまは私を抱きしめる力を強めてきた。

「み〜くん、もっとギュッて抱いて〜♥」
「の、信長様、そんなに力を入れては……」

……当たってる……信長様の……アレが。

「いいじゃない♪私たちは夫婦でしょ?愛し合って当然よ」
「いえ、ですから、あの、その……」

押しつけてくる……大きくて柔らかい……アレが。

「み〜くん、だ〜い好き♥」
「……えっと……はい……私も……」

ああ……もうどうにでもなればいい……。

信長さまが言った通り、実は私と信長さまは夫婦である。信長様からの求婚がきっかけで私たちは結婚し、夫婦として共に尾張を治める事になった。それ以降、私は信長様の夢を叶える為に……天下統一を成し遂げる為に精進する日々を送っている。

今、日の本各地の大名たちの中には武力で自国を拡大する事を目論んでいる者がいる。自国を治める者の中には魔物である大名も数多く存在するが、魔物自身を快く思わない人間の大名による武力的な侵攻が後を絶たない為、魔物の大名たちも自国や民を守る為にやむを得ず武力で対抗するしかない状況下に置かれている。

しかし、その中でも戦によって人間や魔物が傷つく事を何よりも嫌う大名は少なからず存在する。その内の一人が信長様であり、人間と魔物が深く愛し合い、戦の無い天下を理想としている。

人間の大名は刀や弓矢など武器を用いて戦を起こし、他国を侵攻する事によって領土を拡大するが、信長様の場合、武器は殆ど使用せず、魔物の魔力によって人間たちを制圧する。夫がいない数多くの魔物の部下を引き連れ、敵の兵士や総大将を襲わせる。敵が男であれば部下の夫にさせ、女であれば魔物に変える事によりそのまま部下にする。こうすれば、誰も傷つかずに戦を終わらせる事ができる上に、沢山の人間と魔物の夫婦が誕生する。戦によって多くの人間と魔物を結ばせる。それが信長様のやり方である。

「あの〜……すんませ〜ん、光秀の旦那」

ふと、秀吉殿が申し訳無さそうな表情を浮かべながら話しかけてきた。

「メチャクチャになっちゃった街の後片付け……手伝って欲しいんスけど……」
「ぶー!もう少しだけ良いじゃない!ネズミの意地悪!」
「す、すんません、信長様……」

信長様の講義に対し、秀吉殿は苦笑いを浮かべながら謝った。
やれやれ、これではまるで子供だ。さっきまでの威厳漂う雰囲気は何処へ行ったのやら。

「信長様、すぐに終わらせますが故、先に城へとお戻りください」

私はなんとか信長様を宥める事にした。
流石に他の方々に押しつけてばかりでは面目が立たない。

「……はぁ、しょうがないわね……」

素直に聞き入れてくれたようだ。信長さまは不満気な表情を浮かべながらも私を抱きしめる腕を解放した。

「……み〜くん、速く帰って来てね?」
「はい」

潤んだ瞳で私を見つめる信長様に笑顔で返した。

「絶対だよ」
「絶対です」
「絶対だからね!」
「はい」

城へと戻る信長様の背中を、見えなくなるまで見送る…………ハズが、突然、信長さまが何か思い出した様な仕草をしてから私の下へ戻って来た。

「……どうされましたか、信長様?」
「ちょっと、忘れ物しちゃって……」

すると、信長様は両手を私の首に回し……

「ん〜〜♥」
「んん!?」

信長様に……唇を奪われた。

「ん……ちゅっ……フフ!待ってるからね〜♪」

満面の笑みを浮かべながら城へ戻る信長様を呆然としながらも見送った。
……まぁ、その……こんな事はほぼ毎日やっているのだが……今のはあまりにも唐突過ぎて……ん?

「いやいやいやぁ〜、光秀の旦那〜♪若いっていいですなぁ〜♪」
「全く、信長様には敵わんな」

いやらしい笑みを浮かべる秀吉殿と、微笑ましく頷く勝家殿。
ああ、今の場面見られてたか……なんて恥ずかしい……。

「おお?光秀の旦那、顔が真っ赤っかですぜぇ?さては、あれは口づけと見せかけて酒の口移し……」
「秀吉殿!」

秀吉殿のからかいに大人げなくムキになってしまった。

「……怖ぇ…………」

秀吉殿は小さな身体をガタガタと振るわせ、その様子を見た勝家殿は腹を抱えて大声で笑い出した。

「アッハハハ!いいぞ、光秀!調子に乗ってるネズ公に怒鳴ってやれ!」

……勝家殿……ちょっと笑い過ぎ…………。

「うっさい!このムキムキ女!そんな無駄な筋肉が付いてるから結婚できないんだよ!」
「あぁん!?」

秀吉殿が顔を真っ赤にしながら勝家殿に怒鳴り散らした。
あ……この雰囲気……ちょっとマズイ……。

「やんのか、ゴルァ!!」
「来いよ、オラァ!!」

悪い予感が的中してしまった。戦い終わったにも関わらず喧嘩が始まった。
勘弁して下さいよ…………。



〜〜〜数時間後〜〜〜


秀吉殿、勝家殿と協力し街を元に戻した後、私は急いで城内へ戻り自室へと向かった。
作業が終わった頃には既に夕方になってしまった。速く信長様の下へ戻らなければ……。

そう思うと自然に歩く速さが上がり、一分も経たないうちに自室の襖の前まで来ていた。そして自室の襖を開けると……

「あ!やっと帰って来た!お帰り、み〜くん♪」

信長さまが待っていた。実を言うと、この部屋は信長様との共同部屋でもあり、起床、就寝は勿論、仕事の時もこの部屋で共に過ごしている。

「あの……信長様、その格好は……」
「ウフフ♥どう?似合う?」

信長様は布団の上に座り……どこか露出の多い浴衣を着ていた。胸元が肌蹴ており、スラリとした長い足が露出している。更に太ももの間から……その……アソコがチラつかせている……何と言うか……見えそうで……見えない。
これは……誘惑してる。間違いなく……誘ってる。

「……えっと、遅くなってしまって申し訳ありませんでした」

このまま部屋の外で立ってる訳にもいかない。そう判断した私はスッと部屋に入り襖を閉め、念の為に内側からの錠も閉めた。

「いいの、いいの♪ね、それよりさぁ、速く来て♪速くぅ♪」

子供の様にはしゃぎながら信長様が手招きしてきた。
やれやれ、仕事から帰って来たばかりだと言うのに……。
半ば呆れながらも、私は信長様の前に腰を下ろした。すると……

「よ〜いしょっと♪」
「え?」

信長様の予期せぬ行動に素っ頓狂な声を上げてしまった。信長様は自分の頭を私の腿に乗せ、そのまま寝ころぶ姿勢に入った。
これは……いわゆる膝枕か?枕になってるのは私の方だが……。

「う〜ん♪み〜くんの膝枕、ぬくぬく〜♥」

信長様は優しく私の足を撫でてきた。
う〜む……そう来たか。てっきり……その……やるのかと思ったら……。

「……み〜くん、もしかして犯されると思ってた?」
「え!?な、何を仰るのです!?」

信長様の鋭い発言に戸惑いを隠せなかった。
常々思うのだが……まさか、信長様は本当に人の心を読む事ができるのでは?

「あら〜?慌てるって事は、図星だったみたいね」
「い、いえ、ですから……!」
「もぉ〜、み〜くんのエッチ!スケベ!エロ武将!」
「おやめ下さい!」

反論する私に対し、信長様はあどけない笑顔を浮かべながら私の足を撫でた。
はぁ…………私は一生、信長様に敵う事ができないのか……。

「そう言えば信長様、今回の遠征はいかがでしたか?」

このままでは埒が明かないと判断した私は話題を切り替える事にした。

そう言えば、信長様は多くの魔物の大名たちと同盟を結ぶ為に外出していたのだった。人間と仲良くなりたいと考えているのは信長様だけではなく、全ての魔物に共通する事。そこで、信長様は魔物の大名の中でも特に名を轟かせている三人の大名たちに、自ら進んで人間に近付くよう説得する事にした。

まず一人目は、越後を治める龍の魔物、上杉謙信。二人目は、『甲斐の虎』と呼ばれてるオーガ、武田信玄。そして三人目は、奥州を治めるドラゴン、通称『独眼竜』、伊達政宗。
先ほどまで信長様は、この三人の下を訪ねて、傷つけあう戦を起こさないよう呼びかける為に外出したのだ。

「……何と言うか……ダメだった」

信長様は心なしか寂しそうな表情を浮かべながら答えた。

「最初に越後にいる龍の上杉謙信を訪ねたんだけど、『お気持ちは分からなくもないですが、国を守る為には動かない方が良いのです』なんて言われて……」

断られてしまったか……上杉謙信も、今は他国の人間と分かりあえるのを踏みとどまっていると言う事か。

「甲斐の武田信玄には……『この世は所詮、弱肉強食……愛だの何だの言ってたら頭から喰われちまうぞ』って言われて……」

武田信玄にも断られたか……と、なると……残ったのは奥州の伊達政宗だけだが……。

「独眼竜には……『人間だろうと魔物だろうと、その場凌ぎの友好は御免被る!』って……」

やはりダメだったか……同じ魔物同士であるが故に、理解してくれると思っていたが、考えが甘かったようだ。

「……まぁ、仕方ないよ。自分の国が何よりも大事だから……」
「信長様……」

落ち込んでいる信長様に言葉を投げかけたが、何を言えば良いのか分からず、口ごもってしまった。

信長様の言いたい事は十分理解できる。恐らく、魔物の大名たちもこの状況下を何とかしたいと思っているものの、下手に動けば自分の国が危機に晒されてしまうと考えているのだろう。そうなれば、自分だけではなく、自分の国に住んでいる者たちまで巻き込んでしまう。それぞれの国には、一生懸命生きようとしている多くの人間や魔物の民が住んでいる。魔物の大名にとって、自分の行動によって罪の無い民が傷つくのは何よりも辛い事なのだろう。

「……み〜くん」

信長様は頭を上げて私に向き直り、潤んだ瞳で見つめてきた。今にも泣き出しそうな……悲しい目で。

「私……今でも夢を諦めないでいる…………天下を取って……魔物と人間が愛し合う国を造りたいと思っている……でも……」

信長様の言葉は、どこか歯切れが悪かった。

「私……ダメだよね…………私の為だけに……み〜くんを巻き込んで……」

……私が……巻き込まれてる?何を言っているんだ?

「夫婦でも……み〜くんには、み〜くんの人生があるのに……」
「……信長様」
「み〜くんだけじゃない……ネズミも……勝家も……蘭丸も……城の兵士たちも……民のみんなも……」
「信長様!」
「私……身勝手だよね?愛する夫まで辛い目に遭わせて…………民の人たちまで……苦労をかけさせて……」
「お聞きください!信長様!!」

気付けば大声を上げていた……自分でも驚くくらいの大きな声が。信長様はビクッと身体を震わせ、驚きながらも私を見つめた。
今の信長様は心に迷いを生じている。ならば、その迷いを何としてでも消し去る。それは夫である私の務め……!

「信長様がそのような弱音を吐く事は誰も望んでおりませぬ!私たちは、信長様に天下を取らせる為に精進しております!」
「で、でも……それが嫌だと言うのなら……」
「何時、どこの誰が嫌だと仰いましたか?少なくとも、私自身は嫌だと思った事は一度もありません!」

私は信長様の手を優しく握り、信長様の潤んだ瞳を見つめながら言った。

「人間と魔物が愛し合う国……本当に素晴らしいです。私も、そのような国に、信長様と共に暮らしたいと思っています。確かに、今まで数え切れない苦労を乗り越えてきましたが、私は辛いと思った事は一度もありません。何故なら……」

私は信長様を抱きしめ、耳元で囁いた。

「信長様が……愛する妻が傍にいてくれたから……」
「……み〜くん……」

信長様は身体を小刻みに震わせていた。
抱きしめているから、信長様の顔を見る事はできない。しかし、信長様は泣いている。それだけは身体から伝わってきた。

「私だけではありません。秀吉殿も、勝家殿も、蘭丸も、城の兵士たちも、民の方々も。みんな、信長様の理想の国で……人間と魔物が愛し合う国で暮らしたいと思っています。だから……毎日頑張れるのです」

私は一旦信長様から身体を離し、涙が溜まっている瞳を見つめながら言った。

「それでも不安が拭えないのであれば……私、明智光秀は誓います。例え何があろうとも、夫として、愛する妻である信長様の傍にいます。これからも、ずっと信長様を支えると誓います」

今言った言葉に……迷いは無い。これは私の本心なのだから……。

「…………ありがとう、み〜くん」

信長様は一呼吸置くと、目に堪った涙を拭い満面の笑みを見せた。その笑顔を見た瞬間、私の心が温かくなるのを感じた。
愛する妻の笑顔は、何度見ても良いものだ。

「…………み〜くん」
「……?」
「み〜くん」
「は、はい?」
「みぃ〜くぅ〜ん♥」
「うわぁ!」

突然、信長様が物凄い勢いで飛び付き、勢い余って後方へ倒れ込んでしまった。

「好き!好きだよ、み〜くん!大好き!ずっと、ずっとずっと、だぁ〜い好きぃ!」
「あの、ちょ……」
「んー!」
「んん!?」

信長様が唇を重ねてきた。城下町の時よりも強く、積極的に…………。

「んっ、我慢できない!ふぅ……んちゅっ、んん……」

口内に信長様の舌が差しだされ、私も出来る限り舌を絡ませて応える。
信長様……もはや歯止めが利かなくなったようだ……。しかし、全て受け入れよう。私も望んでいる事だから……。

「ちゅ……ん……み〜くんの、もう大きくなってる……」

徐に唇を離した信長様は衣服の上から私の肉棒を優しく撫でまわし、素早い動作で勃起した私の肉棒を露出させた。

「み〜くん……あむ、ん……」

信長様はいきなり私の肉棒を頬張り始めた。口内の生温かさが肉棒から伝わってくる。

「の、信長様……そんないきなり……」
「ん……もう我慢できないの♥あむ……ん……じゅっ」

無邪気な笑みを見せた後、信長様は再び私の肉棒を咥え、舌で竿の部分を舐めながら上下に首を振った。

「じゅる、ん、んん……んふぅ…………」

この光景は見慣れたが、こうして信長様に気持ちよくされるのは最高の気分だ。

「じゅ、じゅるる……ん、んふぅ………み〜くん、まだ出ない?」
「はい、もう少しだけ耐えられます」
「よかった♪み〜くんの精液は……こっちで受け止めたいから♥」

信長様は徐に立ち上がり、自身の秘部を見せてきた。

「ほら……み〜くんとチューしたり、おちんちん舐めたりしたら、こんなに濡れちゃった……」

信長様は愛液で濡れた秘部を片手で広げて見せつけてきた。あまりにも魅力的な光景に興奮してしまい、思わず固唾を飲んでしまった。
信長様……なんてお美しい……普段の信長様もお美しいが、それとはまた別の美しさが……。

「み〜くん……このまま……入れてもいい?」
「……仰せのままに」

信長様に魅入られながらも、私は信長様の要求に答えた。私の返答を聞いた信長様は嬉しそうに自身の秘部を私の肉棒にあてがった。

「いくよ……あ……ああっ!」

信長様は重力に身を任せるように腰を下ろし、私の肉棒を秘部の中へと導いていく。やがて、肉棒が完全に入り騎乗位の姿勢になった。秘部の壁が肉棒を包み、温かい感触が射精を刺激させる。
信長様に包まれるこの感覚……何時もながら……気持ちいい……。

「ああ……入った……み〜くんの熱くて太いおちんちん……全部入っちゃった…………」

肉棒が亀頭から根元まで全て入り切り、信長様は恍惚の表情を浮かべた。この時、下から信長様の大きい乳房に見惚れてしまった。今にも浴衣からこぼれ落ちそうな状態にある乳房を見るうちに興奮が高まってくる。

「……信長様……」
「……み〜くんから動きたい?」
「……はい……」
「ウフフ……いいよ、私を突き上げて」

もう限界だった。信長様の許可を頂き、私は欲望に従うままに腰を突き上げた。膣内で肉棒が暴れるように何度も突き上げられ、その度に亀頭が子宮に触れる。

「ああっ!あ、あぁん!み〜くん、激しい!ああ、あん!み〜くん!」

私の腰の上で信長様が快楽に身を委ねるかのように身体を捩じらせた。更に信長様の大きい乳房が上下に揺れる。

「み〜くぅん!揉んで!おっぱいも気持ち良くしてぇっ!あぁん、あ、あぁ!」

信長様は自ら浴衣の胸の部分を捲り、私の手を掴んで露出した乳房を揉ませた。手の平から信長様の柔らかい乳房の感触が伝わってくる。

「あぁん!すごい!感じる!おっぱい、感じちゃう!」

私に胸を揉まれて昂ってきたのか、信長様は私の腕を掴みながら尚も身体を捩じらせる。
信長様が……私の愛する妻が、こんなにも感じている……!
興奮を抑えきれずに、自然と腰に力を入れてしまう私に、信長様は愛らしい笑顔を見せながら言った。

「み〜くん!好きっ!大好きだよ!」
「信長様……私も……私も愛してます!」

快楽に酔いしれながらも、信長様の想いに応える様に腰を突き上げる速さを上げる。
もう少しだけ……こうしていたかったが、そろそろ限界が……!

「信長様……もうそろそろ……!」
「私も……イク……イッちゃう!」

信長様の方も絶頂に達しそうなのか、声が大きくなっている。私は信長様を満足させる為に、射精をギリギリまで堪えて激しく腰を突き上げ続ける。

「み〜くんっ!中に……中に出していいからね!あっ、ああん!」
「信長様……!」

ああ……もう……出る!

「イ、イク!イッちゃう!あ、ああ!ああああああ!!」
「うっぐ……あぁ……!」

互いに絶頂に達した瞬間、私の肉棒から精液が信長様の子宮に注がれた。

「あ……あぁ……すごい……み〜くんのが……こんなに……」

勢いを失わずに精液が子宮に注がれ、やがて射精が終わると信長様は腰を浮かせて私の肉棒を抜き、余韻に浸りながら私にもたれかかった。

「み〜くん……気持ちよかったよ」
「はい……ご満足頂けて何よりです」

私は信長様の綺麗な髪を優しく撫で、空いた手を信長様の腰に回した。それから数分の静寂が漂い、やがて信長様の方から口を開いた。

「……ありがとう、み〜くん」

……ありがとう?一体何を言って……?

「あの、ありがとう……とは?」
「私の事、励ましてくれてありがとう……」

……ああ、そうか……さっき、信長様が天下について思い悩んでいた時の事を言ってるのか。
心の中で気付いた私をよそに、信長様は身体を起こし、私をジッと見つめながら言った。

「み〜くんが、あんな事言ってくれなかったら……私、ずっと立ち直れないでいたかもしれない。天下を取るの……諦めてたかもしれない」
「そんな事……」
「ううん、私、思い知らされたの。私……み〜くんが居てくれないとダメなんだって……だから……」

信長様は私を抱きしめ、縋る様な声で言った。

「ずっと……一緒にいてね……離れるなんて嫌……み〜くんと……ずっと一緒にいたいの……」

それに対する私の返答に……迷いなんて無い。私は信長様を抱き返し、耳元で囁くように言った。

「この光秀……いかなる時でも信長様の下を離れません。これからも……天下の為に頑張りましょう」
「……うん!」

愛おしい笑顔を見た瞬間、私の決意は一層固く、揺るぎないものとなった。

この方と共に歩もう。これからも、ずっと………………。



〜〜〜翌日〜〜〜


「……あの……信長様……」
「ん〜?なぁに?」
「もうそろそろ……軍議が始まりますから……」
「やだっ!」
「みんな来ますから……」
「もう少しだけ!」

ここは軍議や宴会などで使用される城内の大広間。その上座にて信長様は……いや、正確には、上座に座っている私の膝に信長様は座っている。更に信長様は両腕を私の首に回し抱きつく姿勢で私に甘えている。
こんな事は自室でなら問題ないのだが、今から大事な軍議があるのに……。

「せめて……軍議の時だけは……」
「いいじゃない、見せつけてやりましょうよ♪」

……ああ、ダメだ……信長様、一切聞く耳持たぬ……と言う事か…………。こんなところ、誰かに見られたら…………。

「おぉ!?真昼間からお盛んですなぁ♪」
「光秀……お前さんも大変だな」
「アハハ……お邪魔して申し訳ありません……」
「あ………………」

ほんの一時の間、その場の空気が凍りついた。いつの間にか、秀吉殿、勝家殿、蘭丸が私たちの様子を見物していた。
よりによってこの三人に見られるとは…………不覚。

「あら、ネズミ、勝家、お蘭。来るの速いわね。もう少し遅くても良かったのに」

私に甘えたまま信長様は視線を三人の方へ向けた。

「なんの!信長様を天下人にする為には、遅刻なんてしてられないッスよ!」
「アタイたちは、信長様の天下の為に精進するのみ!」
「例え何が起ころうとも、信長様に付いて参ります」

三人はそれぞれ、自分の意思を信長様に伝えた。
この三人も、信長様に天下を取らせたいと言う気持ちは私に負けていないようだ。

「……私は果報者ね……こんなに素敵な部下が支えてくれるんだから……!」

嬉しそうな表情を浮かべながら、信長様は私の膝から立ち上がった。

「この第六天魔王、織田信長!魔物と人間が愛し合う国を創ってみせる!天下に武ではなく愛を布く!これぞ天下布武ならぬ、天下布愛よ!」

信長様は決意を固めたように、握り拳を天へ突き上げ高らかに宣言した。
おお!それでこそ信長様だ!この光秀、いかなる時でも……!

「ね〜♥みぃ〜くぅ〜ん♥チュッ♥」

突然、信長様は私に抱きつき、またしても唇を奪ってきた。

……はぁ、やはり信長様は信長様だ。何時まで経っても甘えてばかり……。だが、どのような壁にぶつかろうとも、信長様と共に生きよう!

私は、改めて決意を固めた………………
12/01/30 14:22更新 / シャークドン

■作者メッセージ
数ヵ月ぶりの投稿となりました。ここ暫く低迷中でしたので……。

このSSを書いたきっかけですが、私は戦国時代のテレビゲームが大好きで、時間がある時に楽しんでいるのです。そしてある日、某戦国時代のゲームで遊んでいる時に『戦国武将を魔物娘に変えたら面白そうだな……!』と思い、早速書かせて頂きました。

ここで、今回登場した戦国武将たちをまとめてみました。

織田信長……リリム。知ってる方もいらっしゃるかと思いますが、信長は自分自身を第六天魔王と称していました。魔王と関係の深い魔物娘と言えば……リリム!(単純でごめんなさい)

羽柴秀吉……ラージマウス。後の豊臣秀吉。秀吉は『猿』と呼ばれてた事で有名ですが、『禿げ鼠』とも呼ばれていたそうです。あ、でもラージマウスさんは禿げてませんね。モフモフですね。

柴田勝家……アカオニ。『鬼』と呼ばれてた勇将。そのまんまです。

森蘭丸……アルプ。言わずと知れた信長の小姓。少年の魔物と言うことで……
意外とはまり役かも(え?)

上杉謙信……龍。越後の龍、または軍神と呼ばれており、まさに神々しい龍がピッタリかと。

武田信玄……オーガ。両者とも好戦的で勇ましいイメージがありまして(甲斐の虎と呼ばれてましたが、虎の魔物娘が出ていませんので……)

伊達政宗……ドラゴン。独眼竜と言えば、真っ先にこの武将が頭に浮かぶ方もいるはず。(実は本編でもちゃんと眼帯付けてます)

明智光秀……人間の男。以上(おい)

……てな訳で、いかがでしょうか?私の勝手なイメージで決めてしまいましたが、もしかしたら皆様方が想像していたのとかけ離れてしまったかもしれません。

長々と長文失礼しました。それでは、最後まで読んで下さってありがとうございました。誤字・脱字、指摘したい部分がありましたら遠慮なくご報告ください。

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