読切小説
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遺跡の素敵な宝箱
トレジャーハンターと呼ばれている男たちがいる。彼らは、様々な遺跡に眠るロマンを求めて日夜遺跡の奥底へと探検をし続ける。

ぼくもそんなトレジャーハンターの一人で、すでに単独での遺跡踏破を何度も達成している。自宅にはすでに多くの眠っていた財宝が飾ってある。旧魔王時代に亡くなったファラオの玉座。二千年前の狂暴だった魔物に滅ぼされてしまった国の王の冠。他にも目が眩むような金銀財宝がこの部屋にはある。

だけど、ぼくの最も欲しい宝物はこれらじゃない。いや、あえて言わせてもらおう。こいつらは目当てのものが見つからなかった結果、仕方なく持ち帰ったものなのだ。ぼくの宝物が収まるべきものはすでにある。だから、今日もそれを求めて遺跡へと向かうんだ。

思えばその宝物を求めるようになったのはいつからだろう。少なくとも数年なんて生半可な日数ではないはずだ。今年で二十五歳を迎えた……そしてそれが欲しいと思ったのはまだ十にも満たないときだったはずだ。つまりぼくは、二十年近くもそれを求めていることになる。

それを初めて見たのはぼくが八歳の時。それはぼくがそれまでもそれからも見てきた、どんなものよりも美しく、綺麗だった。模造品もいっぱいあった。何度か心おれそうになり、妥協しそうになった。だけどぼくは、彼女との約束を守るため決して妥協することなくそれを求め続けたんだ。

もしかしたら彼女はそんな約束覚えてないかもしれない。遺跡を探索しながら暗い道を突き進んでいるとふとそう考えてしまう。実際、自信がないのだ。何せ子供の頃の約束なんて、大人になって覚えている方が少ない。彼女はもしかしたら……

……やめよう。こんなことを考えたって仕方がない。もうすぐ最深部だ。この遺跡にある最後の宝物。それが眠る最深部まで後少しなんだ。邪念を払え。ぼくはトレジャーハンター。ただひたすらに、自らの欲する宝を掴みとることのみを考えろ。

たどり着いた最深部。そこには巨大な水晶柱がそびえ立っていた。……ここだ。やはりここだった。約束の場所、水晶の大樹の部屋。ついに、ついにぼくは見つけたんだ。

いや、落ち着け。まだあれを見つけていない。それまで、決して気を抜くな。
ぼくは短剣を抜き、いっそう警戒を強めてその水晶の大樹の幹に近づいていく。太いその幹は恐らく半径20mはあるだろう。ゆっくりと慎重にその幹に沿って進んでいく。

もしかするとここじゃなかったかもしれない。自分の記憶が少し変わってしまったかもしれない。そもそも彼女は約束を忘れてしまったかもしれない。

何度も何度も不安で胸が一杯になり、立ち止まってしまう。

もうすぐ幹を半周する。ここにないなら……ぼくはいよいよ…………あ、あれ……は…………

ぼくの目の先にあったのはたったひとつの宝箱。赤かっただろうその箱の色は少しくすんでしまっていて、朱色に近くなっている。だけど、その宝箱は間違いなくぼくの探し求めていたそれだった。

ぼくは急いで魔法を無効化する薬を飲み干した。効果は五分。十分すぎる。

はやる気持ちをおさえ、宝箱の鍵穴を調べる。罠はない。でも傷があった。

マッテタヨと一言だけ。

ぼくは自分の眼から涙がこぼれ落ちるのを感じた。そして、ゆっくりと上蓋に手をかけ開いていった。完全に開ききって、少しして

「……ザラキ」

ぼくよりも涙を流して笑っているミミックの女性が姿を表した。

「おそいよ、バカ」
「ごめん。でも、約束果たしたよ」
「うん」
「あのときの約束、覚えてる?」
「うん」

息を大きく吸ってぼくは彼女にいった。

「ぼくと結婚してください」
13/11/16 10:12更新 / しんぷとむ

■作者メッセージ
某ゲームの二次創作の絵を見たら書きたくなった。後悔はしない

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