サキュバスのいる日常ー1
「ワーオ!こっち見てください!タケルウさん!これなんという動物デスか!?」
「それは、ペンギン。オウサマペンギンっていう種類だよ」
「オウサマ‥‥オォ!貴族の方でいらっしゃいますですね!?」
「いや、違くて‥」
そこそこ大入りの水族館のペンギンコーナー。僕はこの「留学生」の女の子のちょっぴり片言の質問に答えていた。
彼女の名前はシンディ。隣に立っているのが申し訳なるくらいの美人な女の子だ。絹のようにサラサラとした髪を後ろにまとめ、ポニーテールにした彼女は、すれ違う人達の視線を男女問わず奪っていく。
けれど、彼女の美しさに目を奪われた人は少ないだろう。恐らくは彼女の水蜜桃なお尻‥いやいや、そうじゃなくてそのお尻から伸びている尻尾に目を奪われていることだろう。
彼女はサキュバスという、僕たちの世界にはいなかった「別世界」から来た留学生なのだ。
この不思議な生活は、ある学者が「三千世界理論」という理論を学会に発表し、異世界との交流を行ったことに始まる。その学者は最初の方こそ全く信じてもらえず、ばかにされ、大学を追い出されたりしたものの、紆余曲折あって全世界にシンディのような魔物娘の存在を知らしめ、自分は自分でリッチの奥さんを手に入れた。
その学者はさっさとあちらの世界に留学しに行ったそうだけど‥
かくして二つの世界は交流が始まり、お偉いさんたちの交渉の末に、いくつかのルールを定めて留学生を交換することになった。
全く新しい留学システムは世界中で大流行し、今や各国に何万人と留学生がいる。
シンディもそんな留学生の一人だ。去年に両親が(勝手に)今年上京した僕をホストファミリーとして登録したらしく、数ヶ月前から一緒に暮らしている。
彼女の目的は「見たことない動物をいっぱい見る」ことらしい。だからこうして近くにある水族館に連れてきたんだ。その結果は‥
「タケルウさん!この、オウサマペンギンはどこに生息なさってるます?この、説明『いた』には、いんどひつじって書いてあるます!」
「説明板ね。あと、インド羊じゃなくて、インド洋だよ。い・ん・ど・よ・う」
「おぉ!いんどよー!なますーてデスね!」
「うん、それは違う国だよ」
ものすごくテンションを上げて喜んでくれているようだ。よかったよかった。
「タケルウさん!写真撮るます!ワタシどこ立ついいですか?」
「んー‥そこかな。ちょうど大きい子がこっち見てる」
「見てる!?どこどこ!?ワオ!かわいいです!タケルウさんも見るます!」
「はいはい‥っと、綺麗に撮れたよ」
「え゛!ちょとまって欲しかったです!顔写ってないですます!」
「写ってる写ってる。ほら、嬉しそうな横顔」
「真ん前の方を良かったですー」
「次は正面から撮るから、膨れないで」
「わかるました」
ちょっとだけ膨れたシンディは、大きな胸を乗せるように腕を組み、僕を睨みながらペンギンの水槽の前に立った。
「賠償として可愛く撮る。願うます」
「はいはい、撮るよ〜」
「はい!」
「はい、チーズ」
「チーズ?ってなん ピロリン ですか?何です今の音」
あ、キスするような顔で撮れた。う、うーん。
「‥‥もう撮れたですか?」
「え?あ、う、うん!撮ったよ!」
一応、可愛いからいいよねうん。後で怒られた時の言い訳考えようか。褒めたら基本許してくれるし‥
「では、次は〜えっと‥‥ふかうみうお?のコーナーです!」
「深海魚だよ。深〜い海に住むお魚」
「ポセイドンですか?」
「残念だけど、この世界にポセイドンさんはいないよ。本当にただのお魚」
「ふーん。早くマーメイドやクラーケンの泳ぐ海になるいいのにです」
「あ、あははは」
「タケルウさん、早く来るです!」
「ちょっと!走っちゃダメだよ!」
楽しそうにするシンディを追いかけて、僕も深海魚のコーナーへと向かっていった。
ところで、僕の名前はタケルウじゃなくて、カケルです。
「それは、ペンギン。オウサマペンギンっていう種類だよ」
「オウサマ‥‥オォ!貴族の方でいらっしゃいますですね!?」
「いや、違くて‥」
そこそこ大入りの水族館のペンギンコーナー。僕はこの「留学生」の女の子のちょっぴり片言の質問に答えていた。
彼女の名前はシンディ。隣に立っているのが申し訳なるくらいの美人な女の子だ。絹のようにサラサラとした髪を後ろにまとめ、ポニーテールにした彼女は、すれ違う人達の視線を男女問わず奪っていく。
けれど、彼女の美しさに目を奪われた人は少ないだろう。恐らくは彼女の水蜜桃なお尻‥いやいや、そうじゃなくてそのお尻から伸びている尻尾に目を奪われていることだろう。
彼女はサキュバスという、僕たちの世界にはいなかった「別世界」から来た留学生なのだ。
この不思議な生活は、ある学者が「三千世界理論」という理論を学会に発表し、異世界との交流を行ったことに始まる。その学者は最初の方こそ全く信じてもらえず、ばかにされ、大学を追い出されたりしたものの、紆余曲折あって全世界にシンディのような魔物娘の存在を知らしめ、自分は自分でリッチの奥さんを手に入れた。
その学者はさっさとあちらの世界に留学しに行ったそうだけど‥
かくして二つの世界は交流が始まり、お偉いさんたちの交渉の末に、いくつかのルールを定めて留学生を交換することになった。
全く新しい留学システムは世界中で大流行し、今や各国に何万人と留学生がいる。
シンディもそんな留学生の一人だ。去年に両親が(勝手に)今年上京した僕をホストファミリーとして登録したらしく、数ヶ月前から一緒に暮らしている。
彼女の目的は「見たことない動物をいっぱい見る」ことらしい。だからこうして近くにある水族館に連れてきたんだ。その結果は‥
「タケルウさん!この、オウサマペンギンはどこに生息なさってるます?この、説明『いた』には、いんどひつじって書いてあるます!」
「説明板ね。あと、インド羊じゃなくて、インド洋だよ。い・ん・ど・よ・う」
「おぉ!いんどよー!なますーてデスね!」
「うん、それは違う国だよ」
ものすごくテンションを上げて喜んでくれているようだ。よかったよかった。
「タケルウさん!写真撮るます!ワタシどこ立ついいですか?」
「んー‥そこかな。ちょうど大きい子がこっち見てる」
「見てる!?どこどこ!?ワオ!かわいいです!タケルウさんも見るます!」
「はいはい‥っと、綺麗に撮れたよ」
「え゛!ちょとまって欲しかったです!顔写ってないですます!」
「写ってる写ってる。ほら、嬉しそうな横顔」
「真ん前の方を良かったですー」
「次は正面から撮るから、膨れないで」
「わかるました」
ちょっとだけ膨れたシンディは、大きな胸を乗せるように腕を組み、僕を睨みながらペンギンの水槽の前に立った。
「賠償として可愛く撮る。願うます」
「はいはい、撮るよ〜」
「はい!」
「はい、チーズ」
「チーズ?ってなん ピロリン ですか?何です今の音」
あ、キスするような顔で撮れた。う、うーん。
「‥‥もう撮れたですか?」
「え?あ、う、うん!撮ったよ!」
一応、可愛いからいいよねうん。後で怒られた時の言い訳考えようか。褒めたら基本許してくれるし‥
「では、次は〜えっと‥‥ふかうみうお?のコーナーです!」
「深海魚だよ。深〜い海に住むお魚」
「ポセイドンですか?」
「残念だけど、この世界にポセイドンさんはいないよ。本当にただのお魚」
「ふーん。早くマーメイドやクラーケンの泳ぐ海になるいいのにです」
「あ、あははは」
「タケルウさん、早く来るです!」
「ちょっと!走っちゃダメだよ!」
楽しそうにするシンディを追いかけて、僕も深海魚のコーナーへと向かっていった。
ところで、僕の名前はタケルウじゃなくて、カケルです。
15/03/10 21:15更新 / しんぷとむ
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