狂淫姫〜限界快楽実験〜
「私、思うのよ」
魔界の奥地、魔王城の一角。
一人のリリムが自室の椅子に腰かけ、侍従のサキュバス二人に話しかけていた。
「私もそろそろ、素敵な旦那様を見つける時期かなって」
「それは良いお考えだと思いますね」
彼女はリリムの中でも年若い方だ。
既に幾人もの姉が伴侶を見つけており、彼女より年下の妹の中にも既婚者はいる。
そんな中、魔王城に籠りっきりの彼女はまだ独り身だった。
「お嬢様は、どのようなタイプの男性がお好みですか?」
「そうねえ…やっぱり私は、可愛い小さな男の子がいいかな♪」
「なかなか良い趣味ですねえ…」
「そういえば、ご用件はその事についてですか?」
「ええ、そうよ」
「では、我々がお嬢様のお眼鏡に叶う方を探して来ればよろしいのですか?」
「あっ、そうじゃないの。それは自分で探しに行くわ」
「えっ」
侍従のサキュバス達は、このリリムが外出するところを見たことはない。
「だ、大丈夫なのですか?」
「何よ、失礼ね。うんと小さい頃は、外に出たこともあるわよ? 人間界にもね」
「そ、それは失礼致しました」
もちろん、姉の付き添いであった。
一人で行くのは初めてだが、楽観的な様子である。
「ビビッと来た子が良いわねえ。この子の精液欲しいっていう感じの」
「ちょ…直感で決めるのですか? もっと様々に…」
「いいのよ。リリムの直感よ? 外れることはないわ」
「そ…そうですね。出過ぎた注進でした…」
実際、その直感に従って伴侶を得た姉たちも多い。
リリムの、魔王の娘としての直感に従うのは、あれこれ考えるよりむしろ有用だ。
「では…我々は何を?」
「出かける前にね、準備を手伝ってほしいのよ」
「ご支度ですか? では、お召し物を…」
「ああ違う違う。そういう支度じゃないの」
「はい?」
リリムは椅子から立ち上がった。
そして、思索にふけるように部屋を歩き始める。
「やっぱり魔物たるもの、快楽の追及は大事でしょ?」
「ええ、それは大事ですね」
「で、私は知っての通り処女なの。旦那様を捕まえたら、初体験になるのよね」
「そうなりますね」
「初体験となれば、最高の快楽を得たいって思うのは当然じゃない?」
「もちろんです」
侍従のサキュバス達も、籠り切りのリリムに仕えているので未婚のままだ。
もちろん未経験であるが、二人の場合は激しい自慰をしたせいで膜はもうない。
「旦那様も小さな男の子から選ぶなら、その子にとっても初体験になるでしょ?」
「ええ。お互いに、ですね」
「じゃあ、その旦那様にも最高の快楽を味わって欲しいじゃない?」
「それはそうです」
その返答を聞き、リリムは立ち止まった。
「だから考えたの。お互いに最高の快楽を得られる初体験への流れを!」
「流れ、ですか?」
「限界まで快楽を溜め込んで、最初の一回、全力の絶頂のために!」
「溜め込む…?」
首を傾げる侍従達に、リリムはメモを手渡す。
「だから、ここに書いてあるものを準備してほしいの」
「これは…」
「この魔界の、ありとあらゆる、天然の媚薬や精力剤。あとサバト謹製の薬もね」
「…かなりの量ですよ」
「魔王の娘たる私の名前を出せば大丈夫でしょ」
実際、この量を集められるだけの人脈は普通の魔物にはないだろう。
しかしリリムともなれば事は簡単だ。
「お願いね。明日までに」
「はい…………えぇっ、明日までですか!?」
「ええ。早くしないと旦那様を探しに行けないわ」
「す、全て揃ってからでないと出かけられませんか?」
「だって、その気になれば多分、その日のうちに見つけてくるわよ?」
「そ…そう、です、ね…」
いくらなんでも、二人だと明日までに集めるには多すぎる。
何人の手を借りねばならないだろうか。
「ああ、もちろん他の子たちにも協力してもらっていいから」
「は、はい」
「…そうだ、これを使ってどうするのかも伝えておかないとね。予定では…」
・
・
・
侍従達は侍従仲間や魔王城に居住する魔物兵士にも協力を要請し、駆けずり回った。
おかげでなんとか、夜が明けるまでには材料を調達することができた。
「うん、全部揃ってるわね。ご苦労様」
「はぁ…はぁ…」
予定通りの材料が揃っていることを確認し、リリムは満足そうに頷く。
「それじゃあ行ってくるわ。夜までには帰ると思うけど」
「は、はい。行ってらっしゃいませ…」
侍従たちに見送られ、リリムは何十年ぶりかに魔王城を後にした。
・
・
・
リリムの言った通り、その日のうちに彼女は帰ってきた。
「ただいま」
「お、お帰りなさいませ。本当に、随分お早かったですね」
「人間界までひとっ飛びよ。滅茶苦茶ビビッてきたもん。すぐに」
リリムの後ろには、黒いマントを着せられた茶髪の少年。
流石にリリムが一目惚れするだけあり、可愛らしい、庇護欲をそそる少年だった。
マントも、魔王城の他の魔物に誘惑されないため、リリムが用意した特別製だ。
「じゃあ、予定通りね。私たちは部屋に戻るわ」
「はい。仰せのままに」
部屋に通された少年は、状況が呑み込み切れず、まだ緊張していた。
歩いていると、いきなり空から綺麗なお姉さんに抱き着かれ、連れてこられた。
少年は魔物について詳しくはないが、先程の態度から彼女の権力は伺えた。
連れてこられる際に、幾つか魔法をかけられていたようだが、内容は知らない。
「お腹空いたでしょ? ご飯あるわよ」
「あ…は、はい」
いつの間にか恐怖は消え、抵抗しようとも思わなくなっていた。
少年は、そのままリリムと二人で食事に舌鼓を打つ。
少年は気付いていなかった。
この食事に、どれほどの媚薬成分が含まれているか。
ハニービー特製の蜜。
ホルスタウロスの牛乳。
マンドラゴラの根。
メロウの人魚の血。
バロメッツの果肉。
クラーケンのスミ。
ハンプティ・エッグのスライムゼリー。
そこに、サバト謹製の色々な変な薬。
侍従達は、集めたそれを料理として出した。
万が一にも少年を誘惑しないよう、直接部屋に入ることはせず、受取口越しに。
食事から数分で、少年の様子が変わった。
「あ…? あうぅ…あぁ…♥」
頬は紅潮し、悩ましい吐息で身悶えている。
もちろん、その肉棒はギンギンに勃起しきっている。
耐性のない人間が不用意に食べようものなら、それだけで射精してしまうほどの媚薬。
それを食べても激しく悶える程度で済んでいるのは何故か。
少年を捕まえたとき、リリムは少年と自分自身に魔法をかけた。
「絶頂を強制的に遮断する魔法」。
少年は射精することが出来ず、リリム自身も絶頂することができない。
強制的に、究極的に、快楽を溜め込ませるための魔法であった。
そしてリリムは気付いていた。
少年が、精通寸前、しかしまだ未精通であることを。
リリムは悶えている少年に近寄る。
自身も同じだけの媚薬を摂取しながら、身体の疼きを押さえているのは流石である。
「教えてあげるわね」
「な…何、を…?」
「気持ちいいこと」
リリムはいきなり少年のズボンとパンツを下ろした。
ガチガチの肉棒が、眼前に飛び出す。
「あ…っ!?」
「いただきまーす♥」
そしてそのまま、ぱっくりと咥えてしまった。
未経験とはいえ、リリムが本能的に持つ技巧は十二分に優れたもの。
通常なら、十秒持たず暴発させられてしまうだろう。
「ああぁっ♥ お姉ちゃん、だめぇ♥ それ、なに、や、あぁぁ♥」
「じゅぼぼっ、じゅるっ、じゅぶっ、ぐちゅっ♥」
少年は腰をガクガク震わせ、身体をのけ反らせるも、精液が出てこない。
リリムの魔法は、これほどの快楽でも射精を我慢させられるのだ。
「じゅぶぶ…♥ どう…?」
「お姉ちゃん…ボクっ、おかしいのっ…♥ なにか、でそうなのに、でないのっ♥」
それを聞くと、リリムは満足そうに微笑んだ。
「うん。上手くいったわ」
「わからないけど…だしたいの…ださせてぇ…♥」
「…………ダメ。あと一週間」
「え…っ!?」
リリムの計画。
食事や愛撫で二人の快楽、欲求を全力で昂ぶらせながらも、絶頂させない。
その生活を一週間続け、限界まで達したところで、「究極の本番」を行う。
そのため、自身にも一週間快楽を耐えさせるという試練を課した。
魔法は、リリム自身ですら解くことができない。
一週間後の、その時間になるまで、どう頑張っても解除されない。
部屋の扉も、内側からは開かないようにしてある。
その時が近付くまで、膣にまで結界を張っている。
なお、侍従達は部屋に幾つも置いてある水晶を通してモニタリングしている。
幾つかの魔法を解除する権限もつけて、万が一危険だと判断したときのために。
限界まで溜め込まれた快楽はどのようなものか。
それを実践するための、狂気の計画だった。
・
・
・
一食だけで色魔を生んでしまえるほどの食事を、毎日三食。
お互い、口での愛撫を丹念に。
身の回りも全て、媚薬効果のあるものばかり。
全身は快楽のルーンが何層にも重ねられている。
そもそも、あの上級魔物、リリムの淫気を直に浴び続けているのだ。
七日目の朝を迎える頃には、先走り汁と愛液で部屋はぐちょぐちょになっていた。
絶頂こそできないが、汁だけは出るのだ。
絶え間なく絶頂寸前の快楽を流し込まれ続け、二人とも眠れるはずもなく。
「イキたいっ、イキたいよぉぉぉ♥」
「イカせてっ、魔法解いてぇ♥」
二人とも、発狂寸前で絶叫している。
もちろん実施前、侍従達には「解いてと言っても解除するな」と厳命していた。
心身が壊れてしまわないよう、二人を保護する魔法ももちろんかけられている。
いよいよその時が近付いていた。
一時間前。
「挿れてっ、挿れて挿れて挿れてえええええ♥」
「おまんこほしいいぃぃっ♥」
リリムの膣の結界が解除された。
もはやケダモノ同然になった二人は、即座に交わろうとする。
明らかに、初日よりも遥かに大きくなった肉棒が、リリムの膣内にぶち込まれる。
その瞬間、膣内に仕込んだ魔法が発動。
肉棒から膣が離れなくなる魔法だ。
「「ああああああああああああああ♥♥♥」」
これまで以上の快楽の爆発が、二人を襲う。
お互いがお互いを蹂躙すべく、凄まじい勢いで腰が振られ続ける。
一突きごとに、結合部から先走り汁と愛液の混合液が大量に噴き出す。
常人ならそれだけで干からびてしまいそうだが、問題ない。ここは魔界だ。
これほどの快楽を脳髄に叩き込まれ。
これほどの快楽を貪り続けても。
あと一時間、その時が来るまで、二人とも絶頂できない。
二人は激しく唇を求めあい、舌を絡める。
まるで、相手をそのまま呑み込んでしまおうとでもするかのごとく、激しく。
たとえ口が離れても、もはや意味のある言葉を発することはできないのだ。
あと三十分。
二人の周りには大きな水たまりができている。
この部屋に「水位」が誕生するのも、時間の問題だろう。
あと二十分。
とうとうリリムの胸から母乳が噴き出す。
溜め込まれた快楽だけで、母乳が出るようになるには充分だった。
部屋はもう水浸しだ。
あと十分。
保護魔法のおかげだが、二人とも白目を剥いていないのが奇跡である。
リリムの陰核と、少年の陰嚢が、通常よりも明らかに膨らんでいた。
映像越しに見守る侍従たちも、その時を迎えるのが逆に怖くなってくる。
あと五分。
あと三分。
あと一分。
あと三十秒。
あと十秒。
五秒。
四秒。
三秒。
二秒。
一秒。
そして、その時。
「「 」」
どびゅびゅるるるるるるるるるるるっ!!
ごびゅるるるるっ!! どびゅうううっ!!
ぶびゅるるるるるるるっ!!
どびゅびゅっ!! ぶびゅるうううっ!!
ごぶっ、どびゅるるるううううううううっ!!
「きたああああああああああああ♥♥♥」
「うあああああああああああああ♥♥♥」
映像越しにでも聞き取れる、射精―否、精液の濁流の音。
少年がこれまでの人生で、そしてこの七日間で溜めた、初めての射精。
同時に、愛液の噴水。
スプリンクラーが作動したと見紛うほどの量。
これだけしても、膣と肉棒が離れない魔法のおかげで、二人は繋がったまま。
愛液は出るが、精液は逆流してこない。
(あ…………)
快楽に打ちのめされながらも、リリムは気付いた。
射精が、止まらない。
ぶびゅるるるるるるるるるるるっ!!
どびゅるるるるっ!! ごびゅうううっ!!
ごぶっ、どびゅっ! ぶびゅるるるううううううううっ!!
射精の快楽で射精するほどになった少年の射精は、止まりそうにない。
射精は止まらないのに、精液の逆流はできない。
リリムの腹部が、一気に風船のごとく膨らんできた。
一つでも、魔法を解かなくては。
しかし。
(あ、意識飛―――――)
保護魔法の一部が限界を迎え、二人ともそのまま意識を手放す。
少し勢いは緩んだが、なおも射精は止まらなかった。
「お嬢様…!」
この事態に、侍従達が動いた。
まず、快楽のルーンの魔法を解いていく。
これで精液の勢いは、少しは落ち着く。
そして見守っていたサキュバスの一人が走り、部屋の扉を開けた。
「お嬢さ――――」
しかし。
「あああああああああああ♥♥♥」
一週間溜め込まれた淫気。
だだ漏れになった、リリムの魔力。
強烈すぎる、精液の匂い。
その空気を一瞬吸い込んだだけで、サキュバスは絶頂してしまった。
身体が浮き上がりそうな愛液の噴射とともに、膝から崩れ落ちる。
それを見ていたもう一人は青ざめる。
「あ、これ…本気でヤバいやつだ…」
観測室とリリムの部屋はさほど離れていない。
つまり、相方を一瞬で絶頂させた空気が、廊下に開放されて、もうすぐ―
「あ…」
声を上げるより先に、侍従は愛液を噴き出しながら意識を手放した。
・
・
・
城内は一時パニックになった。
廊下の見回りの衛兵たちが。
別室にいた何人もの魔物達が。
その部屋の周囲一帯にいた者、すべてが一瞬で絶頂させられてしまった。
この事態に、近くにいたリリムの姉が動いた。
元々、材料集めの支援をしたこともあり、事情は把握している。
同じリリム、しかもより年長のリリムなら、この空気だけで絶頂してはしまわない。
それでも疼く身体を抑えながら、絶頂して気を失っている魔物達の間を通っていく。
そして、扉が開け放たれた、色々な液体が流れ出すその部屋を覗いた。
幸い、空気は城内に漏れ出したおかげで薄まっている。
「ちょっと、大丈…」
一目見て、姉は絶句した。
妹の腹が、ありえないほど膨らんでいる。
繋がっている少年より、それどころか彼女の他の身体より、明らかに質量が大きい。
牛一頭を丸呑みでもしたのかと見紛うほどだった。
流石に射精は止まっているようだが。
これほど膨らんだ子宮から、精液が放たれれば大変なことになる。
まず、少年が溺れてしまうだろう。吹き飛ぶかもしれない。
「やれやれ…」
放っておくしかない。
いずれ、精を魔力に変換して吸収していき、膨らんだ腹が元に戻るまで。
「…………」
リリムの姉は、去り際に二人の幸せそうな顔を見た。
彼女の顔は気を失いながらも幸福そうだった。
大量の精液に子宮を限界まで押し広げられた快楽で一杯なのだろう。
少年も究極の精通に蕩けていた。
(もし、私も、こんな風に、なれたら、どれほどの、気持ちよさが、…………)
自身も未婚の姉は、初めてこの妹を羨んだ。
・
・
・
それから、一週間と少し後。
すっかり身体が元に戻ったリリムは、今日も少年と交わっていた。
あれほどの快楽を享受しあった二人は、これ以上ないぐらい愛し合っている。
母親―魔王には怒られるかと思ったが、何のお咎めもない。
結局は、快楽を追及した結果、快楽を撒き散らしただけなのだから妥当だろう。
「ああん♥ 大好きぃ♥」
「ボクも、大好きだよっ♥」
その自室へ、侍従のサキュバスが入ってくる。
後片付けに追われていたため、疲れ切った様子だ。
「あの、お嬢様…」
「なに? 今はダーリンと愛し合ってる最中なのよ?」
「すみません、ですが…」
侍従は頭を抱えた。
「お嬢様の姉上さまの自室から、凄まじい淫気が溢れだし、周囲の魔物が…」
「えっ」
魔物たるもの、快楽の追及は本能である。
魔界の奥地、魔王城の一角。
一人のリリムが自室の椅子に腰かけ、侍従のサキュバス二人に話しかけていた。
「私もそろそろ、素敵な旦那様を見つける時期かなって」
「それは良いお考えだと思いますね」
彼女はリリムの中でも年若い方だ。
既に幾人もの姉が伴侶を見つけており、彼女より年下の妹の中にも既婚者はいる。
そんな中、魔王城に籠りっきりの彼女はまだ独り身だった。
「お嬢様は、どのようなタイプの男性がお好みですか?」
「そうねえ…やっぱり私は、可愛い小さな男の子がいいかな♪」
「なかなか良い趣味ですねえ…」
「そういえば、ご用件はその事についてですか?」
「ええ、そうよ」
「では、我々がお嬢様のお眼鏡に叶う方を探して来ればよろしいのですか?」
「あっ、そうじゃないの。それは自分で探しに行くわ」
「えっ」
侍従のサキュバス達は、このリリムが外出するところを見たことはない。
「だ、大丈夫なのですか?」
「何よ、失礼ね。うんと小さい頃は、外に出たこともあるわよ? 人間界にもね」
「そ、それは失礼致しました」
もちろん、姉の付き添いであった。
一人で行くのは初めてだが、楽観的な様子である。
「ビビッと来た子が良いわねえ。この子の精液欲しいっていう感じの」
「ちょ…直感で決めるのですか? もっと様々に…」
「いいのよ。リリムの直感よ? 外れることはないわ」
「そ…そうですね。出過ぎた注進でした…」
実際、その直感に従って伴侶を得た姉たちも多い。
リリムの、魔王の娘としての直感に従うのは、あれこれ考えるよりむしろ有用だ。
「では…我々は何を?」
「出かける前にね、準備を手伝ってほしいのよ」
「ご支度ですか? では、お召し物を…」
「ああ違う違う。そういう支度じゃないの」
「はい?」
リリムは椅子から立ち上がった。
そして、思索にふけるように部屋を歩き始める。
「やっぱり魔物たるもの、快楽の追及は大事でしょ?」
「ええ、それは大事ですね」
「で、私は知っての通り処女なの。旦那様を捕まえたら、初体験になるのよね」
「そうなりますね」
「初体験となれば、最高の快楽を得たいって思うのは当然じゃない?」
「もちろんです」
侍従のサキュバス達も、籠り切りのリリムに仕えているので未婚のままだ。
もちろん未経験であるが、二人の場合は激しい自慰をしたせいで膜はもうない。
「旦那様も小さな男の子から選ぶなら、その子にとっても初体験になるでしょ?」
「ええ。お互いに、ですね」
「じゃあ、その旦那様にも最高の快楽を味わって欲しいじゃない?」
「それはそうです」
その返答を聞き、リリムは立ち止まった。
「だから考えたの。お互いに最高の快楽を得られる初体験への流れを!」
「流れ、ですか?」
「限界まで快楽を溜め込んで、最初の一回、全力の絶頂のために!」
「溜め込む…?」
首を傾げる侍従達に、リリムはメモを手渡す。
「だから、ここに書いてあるものを準備してほしいの」
「これは…」
「この魔界の、ありとあらゆる、天然の媚薬や精力剤。あとサバト謹製の薬もね」
「…かなりの量ですよ」
「魔王の娘たる私の名前を出せば大丈夫でしょ」
実際、この量を集められるだけの人脈は普通の魔物にはないだろう。
しかしリリムともなれば事は簡単だ。
「お願いね。明日までに」
「はい…………えぇっ、明日までですか!?」
「ええ。早くしないと旦那様を探しに行けないわ」
「す、全て揃ってからでないと出かけられませんか?」
「だって、その気になれば多分、その日のうちに見つけてくるわよ?」
「そ…そう、です、ね…」
いくらなんでも、二人だと明日までに集めるには多すぎる。
何人の手を借りねばならないだろうか。
「ああ、もちろん他の子たちにも協力してもらっていいから」
「は、はい」
「…そうだ、これを使ってどうするのかも伝えておかないとね。予定では…」
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侍従達は侍従仲間や魔王城に居住する魔物兵士にも協力を要請し、駆けずり回った。
おかげでなんとか、夜が明けるまでには材料を調達することができた。
「うん、全部揃ってるわね。ご苦労様」
「はぁ…はぁ…」
予定通りの材料が揃っていることを確認し、リリムは満足そうに頷く。
「それじゃあ行ってくるわ。夜までには帰ると思うけど」
「は、はい。行ってらっしゃいませ…」
侍従たちに見送られ、リリムは何十年ぶりかに魔王城を後にした。
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リリムの言った通り、その日のうちに彼女は帰ってきた。
「ただいま」
「お、お帰りなさいませ。本当に、随分お早かったですね」
「人間界までひとっ飛びよ。滅茶苦茶ビビッてきたもん。すぐに」
リリムの後ろには、黒いマントを着せられた茶髪の少年。
流石にリリムが一目惚れするだけあり、可愛らしい、庇護欲をそそる少年だった。
マントも、魔王城の他の魔物に誘惑されないため、リリムが用意した特別製だ。
「じゃあ、予定通りね。私たちは部屋に戻るわ」
「はい。仰せのままに」
部屋に通された少年は、状況が呑み込み切れず、まだ緊張していた。
歩いていると、いきなり空から綺麗なお姉さんに抱き着かれ、連れてこられた。
少年は魔物について詳しくはないが、先程の態度から彼女の権力は伺えた。
連れてこられる際に、幾つか魔法をかけられていたようだが、内容は知らない。
「お腹空いたでしょ? ご飯あるわよ」
「あ…は、はい」
いつの間にか恐怖は消え、抵抗しようとも思わなくなっていた。
少年は、そのままリリムと二人で食事に舌鼓を打つ。
少年は気付いていなかった。
この食事に、どれほどの媚薬成分が含まれているか。
ハニービー特製の蜜。
ホルスタウロスの牛乳。
マンドラゴラの根。
メロウの人魚の血。
バロメッツの果肉。
クラーケンのスミ。
ハンプティ・エッグのスライムゼリー。
そこに、サバト謹製の色々な変な薬。
侍従達は、集めたそれを料理として出した。
万が一にも少年を誘惑しないよう、直接部屋に入ることはせず、受取口越しに。
食事から数分で、少年の様子が変わった。
「あ…? あうぅ…あぁ…♥」
頬は紅潮し、悩ましい吐息で身悶えている。
もちろん、その肉棒はギンギンに勃起しきっている。
耐性のない人間が不用意に食べようものなら、それだけで射精してしまうほどの媚薬。
それを食べても激しく悶える程度で済んでいるのは何故か。
少年を捕まえたとき、リリムは少年と自分自身に魔法をかけた。
「絶頂を強制的に遮断する魔法」。
少年は射精することが出来ず、リリム自身も絶頂することができない。
強制的に、究極的に、快楽を溜め込ませるための魔法であった。
そしてリリムは気付いていた。
少年が、精通寸前、しかしまだ未精通であることを。
リリムは悶えている少年に近寄る。
自身も同じだけの媚薬を摂取しながら、身体の疼きを押さえているのは流石である。
「教えてあげるわね」
「な…何、を…?」
「気持ちいいこと」
リリムはいきなり少年のズボンとパンツを下ろした。
ガチガチの肉棒が、眼前に飛び出す。
「あ…っ!?」
「いただきまーす♥」
そしてそのまま、ぱっくりと咥えてしまった。
未経験とはいえ、リリムが本能的に持つ技巧は十二分に優れたもの。
通常なら、十秒持たず暴発させられてしまうだろう。
「ああぁっ♥ お姉ちゃん、だめぇ♥ それ、なに、や、あぁぁ♥」
「じゅぼぼっ、じゅるっ、じゅぶっ、ぐちゅっ♥」
少年は腰をガクガク震わせ、身体をのけ反らせるも、精液が出てこない。
リリムの魔法は、これほどの快楽でも射精を我慢させられるのだ。
「じゅぶぶ…♥ どう…?」
「お姉ちゃん…ボクっ、おかしいのっ…♥ なにか、でそうなのに、でないのっ♥」
それを聞くと、リリムは満足そうに微笑んだ。
「うん。上手くいったわ」
「わからないけど…だしたいの…ださせてぇ…♥」
「…………ダメ。あと一週間」
「え…っ!?」
リリムの計画。
食事や愛撫で二人の快楽、欲求を全力で昂ぶらせながらも、絶頂させない。
その生活を一週間続け、限界まで達したところで、「究極の本番」を行う。
そのため、自身にも一週間快楽を耐えさせるという試練を課した。
魔法は、リリム自身ですら解くことができない。
一週間後の、その時間になるまで、どう頑張っても解除されない。
部屋の扉も、内側からは開かないようにしてある。
その時が近付くまで、膣にまで結界を張っている。
なお、侍従達は部屋に幾つも置いてある水晶を通してモニタリングしている。
幾つかの魔法を解除する権限もつけて、万が一危険だと判断したときのために。
限界まで溜め込まれた快楽はどのようなものか。
それを実践するための、狂気の計画だった。
・
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一食だけで色魔を生んでしまえるほどの食事を、毎日三食。
お互い、口での愛撫を丹念に。
身の回りも全て、媚薬効果のあるものばかり。
全身は快楽のルーンが何層にも重ねられている。
そもそも、あの上級魔物、リリムの淫気を直に浴び続けているのだ。
七日目の朝を迎える頃には、先走り汁と愛液で部屋はぐちょぐちょになっていた。
絶頂こそできないが、汁だけは出るのだ。
絶え間なく絶頂寸前の快楽を流し込まれ続け、二人とも眠れるはずもなく。
「イキたいっ、イキたいよぉぉぉ♥」
「イカせてっ、魔法解いてぇ♥」
二人とも、発狂寸前で絶叫している。
もちろん実施前、侍従達には「解いてと言っても解除するな」と厳命していた。
心身が壊れてしまわないよう、二人を保護する魔法ももちろんかけられている。
いよいよその時が近付いていた。
一時間前。
「挿れてっ、挿れて挿れて挿れてえええええ♥」
「おまんこほしいいぃぃっ♥」
リリムの膣の結界が解除された。
もはやケダモノ同然になった二人は、即座に交わろうとする。
明らかに、初日よりも遥かに大きくなった肉棒が、リリムの膣内にぶち込まれる。
その瞬間、膣内に仕込んだ魔法が発動。
肉棒から膣が離れなくなる魔法だ。
「「ああああああああああああああ♥♥♥」」
これまで以上の快楽の爆発が、二人を襲う。
お互いがお互いを蹂躙すべく、凄まじい勢いで腰が振られ続ける。
一突きごとに、結合部から先走り汁と愛液の混合液が大量に噴き出す。
常人ならそれだけで干からびてしまいそうだが、問題ない。ここは魔界だ。
これほどの快楽を脳髄に叩き込まれ。
これほどの快楽を貪り続けても。
あと一時間、その時が来るまで、二人とも絶頂できない。
二人は激しく唇を求めあい、舌を絡める。
まるで、相手をそのまま呑み込んでしまおうとでもするかのごとく、激しく。
たとえ口が離れても、もはや意味のある言葉を発することはできないのだ。
あと三十分。
二人の周りには大きな水たまりができている。
この部屋に「水位」が誕生するのも、時間の問題だろう。
あと二十分。
とうとうリリムの胸から母乳が噴き出す。
溜め込まれた快楽だけで、母乳が出るようになるには充分だった。
部屋はもう水浸しだ。
あと十分。
保護魔法のおかげだが、二人とも白目を剥いていないのが奇跡である。
リリムの陰核と、少年の陰嚢が、通常よりも明らかに膨らんでいた。
映像越しに見守る侍従たちも、その時を迎えるのが逆に怖くなってくる。
あと五分。
あと三分。
あと一分。
あと三十秒。
あと十秒。
五秒。
四秒。
三秒。
二秒。
一秒。
そして、その時。
「「 」」
どびゅびゅるるるるるるるるるるるっ!!
ごびゅるるるるっ!! どびゅうううっ!!
ぶびゅるるるるるるるっ!!
どびゅびゅっ!! ぶびゅるうううっ!!
ごぶっ、どびゅるるるううううううううっ!!
「きたああああああああああああ♥♥♥」
「うあああああああああああああ♥♥♥」
映像越しにでも聞き取れる、射精―否、精液の濁流の音。
少年がこれまでの人生で、そしてこの七日間で溜めた、初めての射精。
同時に、愛液の噴水。
スプリンクラーが作動したと見紛うほどの量。
これだけしても、膣と肉棒が離れない魔法のおかげで、二人は繋がったまま。
愛液は出るが、精液は逆流してこない。
(あ…………)
快楽に打ちのめされながらも、リリムは気付いた。
射精が、止まらない。
ぶびゅるるるるるるるるるるるっ!!
どびゅるるるるっ!! ごびゅうううっ!!
ごぶっ、どびゅっ! ぶびゅるるるううううううううっ!!
射精の快楽で射精するほどになった少年の射精は、止まりそうにない。
射精は止まらないのに、精液の逆流はできない。
リリムの腹部が、一気に風船のごとく膨らんできた。
一つでも、魔法を解かなくては。
しかし。
(あ、意識飛―――――)
保護魔法の一部が限界を迎え、二人ともそのまま意識を手放す。
少し勢いは緩んだが、なおも射精は止まらなかった。
「お嬢様…!」
この事態に、侍従達が動いた。
まず、快楽のルーンの魔法を解いていく。
これで精液の勢いは、少しは落ち着く。
そして見守っていたサキュバスの一人が走り、部屋の扉を開けた。
「お嬢さ――――」
しかし。
「あああああああああああ♥♥♥」
一週間溜め込まれた淫気。
だだ漏れになった、リリムの魔力。
強烈すぎる、精液の匂い。
その空気を一瞬吸い込んだだけで、サキュバスは絶頂してしまった。
身体が浮き上がりそうな愛液の噴射とともに、膝から崩れ落ちる。
それを見ていたもう一人は青ざめる。
「あ、これ…本気でヤバいやつだ…」
観測室とリリムの部屋はさほど離れていない。
つまり、相方を一瞬で絶頂させた空気が、廊下に開放されて、もうすぐ―
「あ…」
声を上げるより先に、侍従は愛液を噴き出しながら意識を手放した。
・
・
・
城内は一時パニックになった。
廊下の見回りの衛兵たちが。
別室にいた何人もの魔物達が。
その部屋の周囲一帯にいた者、すべてが一瞬で絶頂させられてしまった。
この事態に、近くにいたリリムの姉が動いた。
元々、材料集めの支援をしたこともあり、事情は把握している。
同じリリム、しかもより年長のリリムなら、この空気だけで絶頂してはしまわない。
それでも疼く身体を抑えながら、絶頂して気を失っている魔物達の間を通っていく。
そして、扉が開け放たれた、色々な液体が流れ出すその部屋を覗いた。
幸い、空気は城内に漏れ出したおかげで薄まっている。
「ちょっと、大丈…」
一目見て、姉は絶句した。
妹の腹が、ありえないほど膨らんでいる。
繋がっている少年より、それどころか彼女の他の身体より、明らかに質量が大きい。
牛一頭を丸呑みでもしたのかと見紛うほどだった。
流石に射精は止まっているようだが。
これほど膨らんだ子宮から、精液が放たれれば大変なことになる。
まず、少年が溺れてしまうだろう。吹き飛ぶかもしれない。
「やれやれ…」
放っておくしかない。
いずれ、精を魔力に変換して吸収していき、膨らんだ腹が元に戻るまで。
「…………」
リリムの姉は、去り際に二人の幸せそうな顔を見た。
彼女の顔は気を失いながらも幸福そうだった。
大量の精液に子宮を限界まで押し広げられた快楽で一杯なのだろう。
少年も究極の精通に蕩けていた。
(もし、私も、こんな風に、なれたら、どれほどの、気持ちよさが、…………)
自身も未婚の姉は、初めてこの妹を羨んだ。
・
・
・
それから、一週間と少し後。
すっかり身体が元に戻ったリリムは、今日も少年と交わっていた。
あれほどの快楽を享受しあった二人は、これ以上ないぐらい愛し合っている。
母親―魔王には怒られるかと思ったが、何のお咎めもない。
結局は、快楽を追及した結果、快楽を撒き散らしただけなのだから妥当だろう。
「ああん♥ 大好きぃ♥」
「ボクも、大好きだよっ♥」
その自室へ、侍従のサキュバスが入ってくる。
後片付けに追われていたため、疲れ切った様子だ。
「あの、お嬢様…」
「なに? 今はダーリンと愛し合ってる最中なのよ?」
「すみません、ですが…」
侍従は頭を抱えた。
「お嬢様の姉上さまの自室から、凄まじい淫気が溢れだし、周囲の魔物が…」
「えっ」
魔物たるもの、快楽の追及は本能である。
16/09/23 00:25更新 / 第四アルカ騎士団