・六女が白蛇な場合
やあ(´・ω・`)。
今回の話も本当だから、まず聞いて落ち着いて欲しい。
うちの六女と七女は双子だ。
うん、『また』なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね。まあ俺が謝る必要はないんだが。
でも、このキーワードを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない・・・
『ときめき』みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい。
じゃあ、話をしようか。
・〜ある日の朝〜
「アコ、朝だよ〜」
「・・・・・・・・・」スー、スー・・・
「朝だぞ〜ぃ、起きなさ〜い」
「・・・・・・・・んむぅ」スー、スー・・・
「むむ・・・」
呼びかけじゃ目が覚めないか。
それじゃいつも通り体を揺らして起こすとしますか。
「おーい、朝よー」ユサユサ
「・・・・・ぅ・・・んっ・・・♥」スー、スー
「アコ、起きて」ユサユサ
「・・・ふっ・・・♥・・・ふみゅぅ♥」スー、スー
「・・・・・・そろそろ本気で起きて」ユサユサユサユサユサユサ
「・・・んっ♥・・・あっ♥・・・あぁん・・・♥」
・・・何だか反応があれなんだが。
艶っぽいぞ。
俺普通に肩揺らしてるだけなんだけど。
別に変なとこ触ってないんだけど。
もしかすると・・・
「・・・アコが起きないなら仕方ないかー。先に他の妹起こしてっと」
「・・・っ!?」ビクゥッ!?
「はい、動いた。起きてるでしょアコ」
「・・・お早う御座います、兄上様♪」
「おはよう。忙しいんだから寝たふりはしちゃ駄目だよ・・・」
やはり起きてたか。
顔赤くしてぴくぴく反応してたもんな。
忙しいんだからあまり手間を取らせないでくれ・・・
「だって、兄上様と長くすきんしっぷを取りたいんですもの・・・」
「朝は勘弁してくれ。あまり時間は取れないんだから」
「申し訳ありません・・・」シュン・・・
そう言って少し俯くアコ。
少し投げやりにし過ぎたかな。
「構ってやれなくて、ごめんな?でもご飯食べられないのは嫌だろ?」
「兄上様と一緒にいられるのならば、三食惜しんだって構いませんわ!」
「それは流石にやめてね。腹減りで倒れるアコとか見たくないから」
「承知いたしました・・・」
「うん。それじゃお風呂入ってきな。クラリネが先に入ってると思うから」
六女のアコは白蛇。
なので体温を上げ、活動しやすくするために朝はお風呂に入っている。
これはうちの蛇属に共通していることだ。
野生のラミア属って朝はどうしてるんだろうな?
日に当たって体温を上げるのか?それともうちが特別なのか?
謎は深まるばかりである。
「ええ、それでは湯浴みをいただきますわ」スルスル
「ああ・・・・・・って待て待て待て待て」
「どうか致しましたか?」ヌギヌギ
「ここで服を脱がないでくれ。脱衣所があるでしょうが」
「あ、あら!申し訳ありませんわ!つ、ついうっかりー・・・」
危ない危ない・・・
今見えかけてたぞ。ちらっと。
アコは妹の中でもしっかり者の部類に入るのだが、結構うっかりをしてしまうことがある。
今回に限った話ではないのだ。
でも今のは何か棒読みな気がするけども。
気のせいだろう。
「あ、そうだ。兄上様」
「何だ?」
「兄上様も御一緒しませんか?♥」
「却下」
「・・・兄上様はいけずです」
「そりゃ悪かったね。時間だからもう行くよ」
アコ、お前もか。
朝から湯船にゆっくり浸かれるもんなら浸かりたいが。
無論そんな暇はない。
第一、一緒に入るのは問題が・・・
・・・あれ、これデジャヴだよね。
クラリネの時もそうだったよね。
ラミア属はいつまで経っても子供っぽいのかねぇ・・・?
そんなことはないはずだよなぁ。
(今日も兄上様の体温を長く感じることができましたわ♪
ああ・・・何事にも代え難い至福の一時でした・・・♥
でも・・・湯浴みはいつかきっと何としても御同伴させますわ。うふふふふふふ・・・♥)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・〜ある日の勉強会〜
ふう。
食器洗いや洗濯物も一通り終わったし、昼ご飯も下準備も済んだ。
掃除は午後からだから今はいい。
あとは、アコの用事だけか。
コンコンコンッ
「アコ、いるよな。入るぞー」
「兄上様、お待ちしておりましたわ」
アコは椅子に座り、机には学問書や魔術書の類が。
つまりは勉強中である。
アコは将来のために色々なことを学んでおきたいのだそうだ。
単純に学ぶことが好きという面もあるようだが。
俺は微力ながらその手伝いをしているというわけだ。
とは言っても、俺は魔法が使えるわけでもないし、学があるわけでもない。
俺が手伝えることなんてほとんどないんだけどね。
「いつも思うんだけど、別に俺がいなくてもいいんじゃないのか?」
「何をおっしゃいますか!兄上様が居ないといけないのです!」
「でもアコは賢いから俺が教えることなんて何も」
「兄上様は教え方がお上手ではありませんか!知らないことでも一見すれば分かりやすく説明できますし!」
「そうか?そんなことないだろう」
俺は教え方がうまいというつもりは全くない。
書いてあることをなんとなーく理解して、噛み砕いてまとめてるだけだし。
それを理解できるアコの方が凄いと思ってるんだけどなぁ
「では聞きますが、ここの部分を教えていただけますか?」
「ん?初めて見るが・・・ふむふむ」
「どうでしょうか・・・?」
「ここをこうして・・・こうすればいいんじゃないか?」
「え?・・・・・・あ、解けた」
こんな風に。
ね、簡単でしょう?
いやあ、アコの理解力は流石としか言えないよ。
「って、やっぱり兄上様が凄いのです!!」
(30分悩んでも解けませんでしたのに!!)
「そんなわけないだろう?アコに学力で敵うわけない」
「そんな訳が御座いません!兄上様は素晴らしいお方です!すきるがお高いのです!」
うーん、何だろうなぁ。
慕ってくれるのは嬉しいんだけど、そこまで突出した能力があるわけじゃないしなぁ。
普通だと思うよ?うん。・・・多分。
「まあアコは優しいからね。そうやって持ち上げてくれるんだろうけど」
「私は事実を述べているだけですの!」
「そう言ってもらえるのは素直に嬉しいよ。ありがとう」ナデナデ
「はぅ・・・///」
(あぅ・・・兄上様の御手・・・はぁぅう♥)
「さて、続きをやろう。ほら進めて進めて」
「はぃ・・・///♥」
言い争いしている時間も勿体無い。
早く進めないとね。
・・・・・
「兄上様、これを教えていただきたいのですが・・・」
「うん?どれどれ」
ちなみにアコからの質問がない時は、隣で本を読んでいる。
ずっと質問攻めにはならないから安心だ。
で、何が分からないんだろうか?
・・・・・・。
「・・・・・・」
「?どうか致しましたか?」
「アコ、これ何の本?」
「『あなたの心も体もガッチリと!魔法捕縛術 下巻』ですけれども?」
「・・・いるの?これ」
「いりますわ。大いに」
アイエエエ!?ホバク!?ホバクナンデ!?
・・・落ち着け俺。KOOLになれ。れれれ冷静になれ。
うん。凄く落ち着いた。いやどうだろう。
え、割と本気で何故だ。なにゆえだ。
捕縛?あの捕まえるって意味の?
何で捕まえる学が必要なんだ。
まるで意味がわからんぞ!
誰にだ!ホント誰をだ!?
ああ、あれか?好きな人とかできたか?
・・・だとしたらいつ!?俺の知らないところで!?
妹は成長してゆくのですか!?
ロクでもない男なら兄は認めませんことよぉおおおお!!?
「あ、兄上様!?どうかなされましたか!?ぴくりとも動かないのですが!?」オロオロ
「( ゚д゚ )」フリィィィズ・・・
「あ、兄上様・・・?」
「( ゚д゚ )」
「・・・・・・・・・」キョロキョロ
「( ゚д゚ )」
「・・・・・・んー♥(´ε`*)」
「ハッ!?(;゚Д゚)!思考しすぎて停止していた・・・・・・アコどうした?」
「あれ!?いえ!何でもありませんわ・・・?(゚ε゚; )」
「いやいつの間にか顔近いし。疑問形だし。唇とんがらせてるし」
「えーと・・・あ!そうですわ!兄上様を永遠の眠りから覚まさせようと誓いの口付けを・・・」
「色々混ざってるが俺は白雪姫じゃないぞ。あと誤魔化せてないよ?確信ついてるからね?」
「ふぇ!?あ!その!・・・ぅうううっかりですね!えと、あぅ・・・///」アタフタ
あ、危なかった・・・
意識戻ってよかった・・・
そう何度も妹達に唇奪われるわけにはいかないからな。
それにキスはうっかりじゃ済まないし。
冗談にも程があるというものだ。
(ああん!もう少しで兄上様ときすができましたのにぃ!うぅ・・・)
「えーと、そうだ。何でこれを学びたいのかな」
「それはですね、あ・・・・・・・・・」
「あ・・・?」
「あ・・・悪党や不埒な輩がいましたら捕まえられるでしょう?その為ですわ!」
「あー・・・成程ねー・・・」
何だー。
つまり護身術かー。
まあそういった理由なら納得だよ。
正義感の強いアコらしいよ。うむ。
何か最終的に『縛り上げる趣味があるのか』なんてとこまで行き着いてたから。
変な勘違いが生まれそうだったから。
安心したよ。すっごい安心したよ。
泣きそうだよ。安堵で泣きそうだよ。
「でも教えられるか分からないからね?俺だって知らないし」
「はい!宜しくお願い致します!」
「うん。それじゃあねー・・・」
(思わず『兄上様を逃がさない為』と本音を言ってしまうところでしたわ・・・
もし身に付けられたのなら・・・兄上様にあんなことやこんなことが・・・あぁん♥
待っていてくださいまし、兄上様・・・うふふっふふふふっふふふふふふ♥)
・・・・・
「少し休憩しようか」
「いえ、まだまだやれます」
「・・・・・・」
そこは休憩しましょうって言うところだろう。
あれから結構いい時間が経っている。
水くらいは飲みたいものだ。
口頭で説明とかもしてるから、喉がカラカラだ。
というわけで。
「無茶はしちゃ駄目だ。アコも喉とか乾いただろう?紅茶でも淹れてくるよ」
「ぅぅ・・・分かりましたわ」
(少しでも長く、兄上様の香りを堪能したいというのに・・・)
「すぐ戻ってくるよ。待っててな」
「はい・・・」
(ああ、兄上様ぁ・・・!)
・・・・・
「うん、いい香りだ」
我ながらナイスな紅茶の淹れ加減だ。
これなら少しは休まるだろう。
アコは頑張りすぎるからなぁー。
我慢することも多いし・・・
今回は俺の喉が限界だったのもあるけどね。
ガチャ
「アコ。調子はどうだー?」
「れろぉ♥兄上様のお触りになった物・・・♥はぁん・・・♥」ペロォ、ペロ、ジュルルルル・・・♥
「ナニシテルノカナー?」
「ひゃいっ!?ああああああ兄上様!!?ここここれはですね!!
別に疚しい事があるのではなくてですね!?」
嘗めていた。
いやこの場合は舐めていたの方が正しいか。
見ての通り、物を舐めていた。ペンとか。
また思考停止しそうになったわ。
紅茶の香りがなかったら即止だった。
・・・頭を総動員して状況を考えろ!
考えうる行動を!アコの状況を!
・・・ハッ!もしや!?
「あー、お腹空いてたか?昼時だもんなー、もう」
「えっ、あ、う?」
「だから我慢し過ぎは良くないっていつも言ってるだろう?今日はこの辺にしておこう」
「え、はい・・・そう、です、ね・・・?」
「それじゃお昼ご飯作ってくるよー。迅速に」
「は、はい」
急げー!!
ハリーアップ!!
きっと空腹がやばいんだ!!そうに違いない!!
朝あんまし食べてなかったもんなぁ!!
俺としたことがそんな状態になるまで我慢させてたとか!!馬鹿か!!
朝での会話もフラグだったのか!?
また舐め始める前に!!速く!!!
サラマンダーより速くだぁーー!!
ウオリャァァァァ・・・
(が、我慢できずに兄上様の御手のついた物に手を出していたら・・・
まさか、見られるとは・・・一生の不覚ですわっ!!・・・何とかなりましたけれども。
危ないところでした・・・もう少しで、入れるところでしたし・・・///♥)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・〜ある日のハプニング〜
「兄上様、今日は私が手伝いますわ」
「お、そりゃ助かるよ。それじゃそこにある卵を全部割ってかき混ぜてくれ」
「承知いたしました!」
夕食の準備をしているとアコから手伝いの要望があった。
アコも時折こうして料理を手伝ってくれることがあるのだ。
しかもホルンと肩を並べるほどの腕前で、基本何でも作ることができる。
作り過ぎるといった失敗はないので、『やや』安心して任せられる。
・・・何で『やや』かって?
それはだな。
「あ、結構な重さになるから台の上で・・・って」
「きゃあああああああああああああ!?」
バチャーーン! ドンガラガッシャーン!
そう、このようなうっかりがあるから『やや』と言ったのだ。
それでは説明しよう。
大量の卵を器に割ったアコはそれをうっかり手に持ち。
その重さに驚き、器をうっかり放ってしまい。
横にいる俺に中身をぶちまけたのである。
さらにその勢いでアコ自身はうっかり盛大に転び。
置いてあった調理器具や材料が崩れ、まさに大惨事。
一瞬で起こった奇跡とも言える。
「・・・また派手にやったなぁ」
「あ、あああ・・・も、申し訳ありません・・・」
現状で言えば俺は全身卵まみれ。
顔にもベッタリと黄身色でコーティングされている。
これがホントの卵パックってか?やかましいわ。
パン粉でもつければよく油で揚がりそうだ。
そんなのはゴメンだがな。
「気にするな。アコの方こそ大丈夫か?よく綺麗に転んだもんだ」
「私の方は大丈夫です!それより兄上様の方こそ黄身色に染まり上がっているではありませんか!」
しかしまあその蛇の体でよくそこまで転べたもんだ。
普通体が長いから安定するもんじゃないのかと言いたいが、ここは我慢。
転ぶものは転ぶのだ。
「ああぁ・・・私は、なんということを・・・」ワナワナ
「落ち着け。たかが黄色くなっただけだ。水で落とせばなんてことないから」
「命の恵みをこんなにも無駄にしてしまい・・・これではもう・・・!」
「大丈夫だって。仕方ないって。アコだけに責められることじゃないって」
「もうこれは私が責任を持って兄上様をぺろぺろ舐めきって取り除くしかありませんわ!!」
「何でそうなる!?」
この妹はどういう思考回路をしているのだろう。
一度頭の中を覗いてみたいよ。
「私が兄上様を食せば、食物も無駄にならず兄上様もキレイになるではありませんか!」
(さらに私は兄上様のお体を堪能できる!一石三鳥ですわ!!♥)
「いや駄目だろ!解決になってないよ!?」
「大丈夫です!私蛇なので卵は生でも問題ありませんから!」
「問題はそこじゃないよっ!?第一蛇は卵丸呑みだからね!?」
「ああ!それでは私が兄上様を丸呑みに」
「怖ぇよ!!そもそも口そこまで開かないでしょ!?」
「怖くありませんよ。優しくいたしますから・・・♥」
「舐め取るのは決定なのか!?絶対駄目だからな!!!」
どうあがいても絶望しか見えないので、ここはさっさと行動すべきだ。
仕方ないが、風呂に入れば万事解決だろう!
「俺はシャワーで流してくるから!卵はしょうがないから!それじゃ!」
「お待ちください!では私もご一緒いたしますわ!!」
「だから何でそうなるの!?」
本当に思考回路どうなってるんだろう。
「実は私にも材料が少しかかってしまいまして・・・」
「あ、ホントだ・・・髪に少し卵が」
アコの白い髪の一部が黄色く染まっている。
これは早く落とさないとな。
「ですので、私も湯浴みをすればよろしいではありませんか!」
「なら先にアコが入ってきなさい。俺はしばらくこのままでも平気だから」
「なりません!私の責任なのに先に湯で落とそうなど!」
「そう思うなら早く先に入ってきなさい!!」
「嫌です!!」
会話が平行線で、アコは一歩も引こうとしない。
言い合っているのも正直時間の無駄だ。
でもここで俺が折れるわけには。
「せめて、私の手で、落とさせてください・・・お願いします・・・っ!」ウルウル・・・
・・・泣き落としって、ズルいと思いませんか?
・・・・・
身体にタオルを巻くことを条件に、一緒に風呂に入ることに。
どうしてこうなった・・・
「こうして、一緒に湯浴みをするというのも、随分久しゅうございますね」ニコニコ
「そーだねぇ・・・」ゴシゴシ
「もっとこちらを向いてお話いたしませんか?」
「それは無理だって」ワシャワシャ
「どうしてですか!」
「どーしてもダーメ」
結局風呂に入ることを条件にアコが先に髪と体を洗い、次に俺が洗っているのだが。
アコは約束通りタオルを巻いてはいるものの、湯船に浸かっているため、お湯でぴっちり体にタオルがくっついているのだ。
そんな状況でアコの方を向いてしまえば、見えてしまうわけで。
「やはり、まだ怒ってらっしゃいますよね・・・」
「え?別に怒ってないぞ最初から」
「でもこうして私の目を見て話してくれないではありませんか!」
「それは怒ってるからじゃなくてだな」
「その態度が何よりの証拠ですわ!!」
参ったな。
アコは俺がまだ怒ってへそを曲げてると思ってるらしい。
別にあのくらいのことなら俺は怒ったりしないんだがな。
むしろ怒っているのはアコの方じゃないかと思うのは内緒。
「その、な。色々マズイからな」
「私はむしろ見られたいと思っておりますのに・・・♥」
何か小声でブツブツと言っているが大丈夫だろうか。
のぼせたかな?
「それなら、せめてお背中くらい流させてくださいまし・・・」
「背中?」
「私ばかり、兄上様に迷惑をおかけしてしまって・・・私の気が収まりません」
「・・・それくらいなら、別に構わん」
「っ!本当でございますか!」ザバァッ!
「ただし背中だけな。それ以外には触れないと約束できるなら・・・」
「合意と見てよろしいですねっ!」
「えーと、背中だけなら」
「私、全身全霊をもってお流しいたしますわ!!」ギュオッ
「おい、話聞いて」
ガシィ
あ、掴まれた。
湯船から出てきたとは思えない速さで、俺の体に蛇の尾先が巻き付く。
アコの手には既にスポンジが握られていた。
早いよ。いつ準備してたんだよ。
「ではお流しさせていただきますっ!」
「別に掴まなくてもな」
「痒いところはございませんか〜?♪」ゴシゴシ
「・・・無いです」
これ以上言うのは止めよう。
どうせ聞いてくれそうにないし。
気が済めば離してくれるだろう。
ムニュン♪
あれ、スポンジにしては柔らかいな。
こんないい肌触りの物がうちにあっただろうか。
ムニュウ、ムニュムニュ♪
しかも二つ。
ちょっと引っかかる部分も・・・
いやまさか、そんなことは。
「なあアコ?」
「何でしょうか?気持ちよくありませんか?」
「一体何で洗ってる?」
「私の全身ですが?」
はい予想当たってたー!!
当たって欲しくナカッター!!
全身全霊ってそういう意味かよっ!?
その母さんの血を引きまくってるボディはマズイのですよ!!
「アコ!ストップ!!それはいかん!」
「どうしてですか?これもすきんしっぷではありませんか♪」
「スキンシップの域を越えてるんだって!」
「そうでしょうか・・・」
「それに、あまり気持ち良くもないから早く離れて・・・」
ベロンッ
「この味は!・・・・・・嘘をついている『味』がしますよ・・・・・・兄上様」
突然汗を舐められた!?
しかもあっさり嘘を見破られた!!
確かに気持ち良いけども・・・それを今ここで肯定してはならないというのに!
というより、アコそんな特技あったのか?
絶対勘だろう。
・・・そうじゃなくて!
「いきなり舐めるんじゃありません!」
「すきんしっぷですわ♪」
(兄上様の体液・・・たまりませんわ♥)
「何でもそう言えば許されると思ってないっ!?」
「ですが心地良いのは本当でしょう?そうでなければ、少し自信をなくしてしまいますわ・・・」
「アコ・・・
・・・それは、『本当に好きな人にやってあげなさい』」
その答えは、俺が言っていい台詞ではない。
兄である俺が言う台詞では。
いずれ、アコが認めた男性に対して言う台詞であるべきだ。
本当に好きになった男性に対してな。
きっとまだ、兄妹愛と異性愛を勘違いしているだけだ。
近くにいる男性が俺だから、本能が勘違いしているだけなんだ。
「私には、兄上様しかいないと言っておりますのに・・・」
「もっと大人になれば、分かるようになるさ」
「・・・もう、いいです」
ゴオゥ!
「私がどれだけ本気なのか、これで分からせてあげますわ・・・」
アコの掌には青白い炎が燃え盛っている。
これは白蛇特有の魔力の塊。
男の心と身体を内側から燃え上がらせ、身体を求めさせるというもの。
・・・前代未聞のピンチである。
「お、落ち着くんだアコ」
「私は最初から冷静ですわ・・・兄上様は誰にも渡しません」
「俺が一体誰に取られるっていうんだよ」
「・・・兄上様は全く分かっておいででないのですね。
でも大丈夫ですわ。私がたっぷりと分からせてさしあげますから・・・♥」
いかん。おかしい。
いつもより話を聞いてくれない。
アコは妹の中でも理性的な方であるはず。
一体何がここまでそうさせて・・・
よく見ると目が据わっている。顔も赤い。
・・・もしかして、のぼせてる?
どうやら本当にこの浴室の熱気にやられているみたいだ。
それで正常な判断ができていないのか!?
頭がぼーっとして本能的になってるということか!
ここで問題だ!この掴まれた体でどうやってあの炎をかわすか?
3択―ひとつだけ選びなさい
答え@ハンサムのタクトは突如脱出のアイデアがひらめく
答えA家族がきて助けてくれる
答えBかわせない。現実は非情である
・・・。
俺はハンサムだと思ったことは一度もないが。
やはり答えは・・・・・・・・・・・・・@しかねえようだ!
カプッ
「ひゃあんっ♥」
俺が何をしたかというと。
俺の体を掴んで離さないアコの尻尾を甘噛みしたのだ。
ただ、それだけでは終わらない!
「じゅる、ぺろぺろ」
「ひうっ♥あ、兄上様ぁ・・・らにをぉ・・・っ♥」
すまない、アコ。
今の俺にはこうするしか逃れる術がないんだ。
アコは尻尾の先を優しく触られるのが苦手だもんな。
嫌だと分かっているところを触るなんて、俺は最低だ。
だが目には目を、舌には舌をだ。
「ぺろ、じゅるるる・・・」
「ひぎぃっ!あひぃ♥吸ってぇっはぁ♥」
「チロ、チロ」
「ひゅぅん♥兄上ひゃま・・・が、私のぉおをぉ♥あ、イイっ♥」
「じゅぷ、ペロォ・・・カリッ!」
「あっ♥きもひぃっ♥ああっ♥」
「あああああぁぁああああぁああぁぁああああぁああ♥♥♥」プシャァッ!
「はぁ・・・ふぅ・・・♥」
「よっと・・・よいしょ、っと」
俺は動けなくなったアコをバスルームから引っ張り出し、あらかた体を拭き、涼ませておいた。
タオルをさらに何枚か被せて巻いたので、風邪は引かないだろう。
ちゃんと髪も拭いて少し乾かしてある。
そして。
グッ
俺は静かにガッツポーズをしていた。
(兄上様が・・・私の好きな部位責めを・・・♥これは良いものです・・・幸せです・・・///
・・・今回は許してあげますが、次はこうはいきませんわ!///♥)
・・・さて。
夕飯の支度、しないとな。
アコには今度、謝っておこう。
嫌いな部分を触るとか、本っっ当に最低だな、俺。
俺もまだまだ、頑張らないとな・・・
皆の『兄』で、あるために。
兄として、頑張ろう・・・
13/04/14 22:54更新 / 群青さん
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