連載小説
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・五女がオーガな場合

ドラゴン、双子ときて、もう驚くことはなくなったけど。
今までで一番大変なのがこの子のような気がする。
何が大変かというと、色々と振り回されているからだ。
今でもね。
活発な子は嫌じゃないけど、それでも落ち着いて欲しいと思う今日この頃である。

・〜ある日の朝〜


「バレス。朝だぞ。起きろ」

「ぐがー・・・すぴー・・・」zzz

「・・・・・・」


あーあー。
毛布蹴っ飛ばしちゃってもー。
色々はだけて見えてるしな。
バレスはオーガ。つまりは鬼だ。
角が2本に肌は緑色。顔や腕に模様も入っている。
だが見えてるのはそれだけじゃなくて。
服のボタン外れてるし、ズボンも下にずれて下着見えてるし・・・
恥部が辛うじて隠れてるだけだ。
・・・いつも通り寝相悪いな。
いつか風邪引くんじゃないかこれ。


「起きろー」ユサユサ

「うぅん、むにゃむにゃ・・・」

「起きなさーい。朝だぞー」

「んあー」zzz・・・ヒュッ

ドゴォ

「へぼあっ!?」ガフッ


うごごごご・・・
あ、朝から腹パンとは・・・やってくれるじゃないか。
そんな寝ぼすけさんには、アレをやらんとなァ・・・


「取り出しますは・・・こちらの冷水」

「ぐおー・・・」zzz

「こちらを、たらーりっ、と」

ピチョーーーーーーーー

「うわっ!?ぶぱっ!何だっ!?」ガバッ

「おはよう。爽やかな朝だね。感想はどうだ?」

「キンキンに冷えてやがるっ・・・・・・・・!」

「そうか、それは良かった」

「じゃねぇよ!良かねぇよ!兄貴っ!いつも奇抜な起こし方しやがって!何でだよ!」

「自分の胸に手を当てて考えてみなさい」

モニュモニュ

「・・・柔らけーな。これで何が分かんだよ」

「物理的にじゃないよ!?」

「あー?・・・兄貴が触ってくれたら考えられっかもなー♥」

「馬鹿言ってないで。早く着替えて顔洗ってきなさい」

「何だよ、連れねーなァ。兄妹なんだからいいじゃねーか」

「兄妹関係ないだろそれは。そんなに追加攻撃喰らいたいのか・・・」

「んー・・・こことかだったらいいぜー♥」

チラッ


胡座をかきつつ、俺と話していたバレスは。
着ているとは言い難い上着をずらし、ピンクの芽を見せてくる。
こうやってからかってくるのはいつものことだ。
正直恥ずかしい。
だが、一番忙しい朝にそれをやるのは・・・俺にはタブーだ。


「・・・・・・」

「どうしたァ?見とれちゃったかー?♥」

「・・・・・・言いたいことは、それだけか」ゴゴゴゴゴ

「・・・あ、いや、えーと冗談だよ冗談・・・ハハハ」ソロリソロリ・・・
(・・・やべー。っべーわコレ。怒ってるわ。目が本気だわ。これは逃げねぇと)

ガシィ

「どこへ行く気だぁ?」

「あ、兄貴と一緒に・・・か、顔を洗いに行こうと・・・(;゚Д゚)」

「そんな格好でかぁ?」

「いや、ホントごめんって兄貴・・・ほら、他の妹起こしてきなって・・・」

「・・・仕方ない。今回は見逃してやる。それじゃ二度寝するなよ」

「わ、分かってるって・・・」


全くもって仕方のない妹だ。
まあ魔物の本能から迫ってくるんだろうが・・・
上の妹達のように、もう少し落ち着いてくれないかな。






(あー良かった・・・怒った兄貴はホント怖いからな・・・((゚Д゚;))ガクブル
でも、俺のを見て顔が赤くなってたよな?・・・嬉しいぜー///♥
いつか本気になってくんねーかなァ・・・)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・〜ある日の勝負〜


「兄貴、勝負しようぜ」

「またかよ」


バレスはいつも勝負を仕掛けてくる。
闘争や勝負に燃えるオーガの本能だろうか。
普通のオーガは性交が戦いだなんて話だがな。
こういう例外はうちだけだろう。


「それで、何の勝負をするつもりだ?」

「腕相撲」

「却下」

「早すぎねぇか!?もう少し悩んでくれてもいいじゃねーか!」


力自慢のオーガに対して腕相撲とか。
無謀にも程があるだろうに。
ちなみにバレスは力だけなら次女のフルーと同じくらい。
ドラゴンと同レベルとか俺の腕が砕けかねん。


「力勝負でバレスに勝てるわけないだろ。勝負ならフェアじゃないと」

「つってもよー。いっつも兄貴の有利な勝負ばっかじゃんかよー」


何かにつけて勝負を挑んでくるバレスに対し。
俺は自分のできることを勝負の方式にしてきた。
料理の下準備勝負とか洗濯物の取り込む速さ勝負とか。
いつもやってることを勝負にしてるから、有利といえば有利か。

そうそう。
オーガといえば力自慢だけが取り柄と思われがちだが。
うちのバレスは家事能力がなかなかに高い。
妹達の中でも『姉御肌で頼りになる』存在なのだ。
だが俺に対してだけは・・・色々と困るのだが。


「たまにはこっちの有利な勝負にしてくれよー」

「俺は別に勝負したいわけじゃないんだけどな」

「う・・・わーったよ!で、何の勝負なら引き受けてくれんだ?」ニヒヒ


文句を言いつつも、顔は笑っている。
まあ何だかんだ言っても、俺がバレスとの勝負を断ったことは一度もない。
内容についてとやかく口出しはしているが、勝負自体をなかったことにしたことはないのだ。
それは俺のちょっとした自慢でもある。
だが結果はいつも僅差で俺が勝っているが。
・・・結局は勝ってるんじゃないかって?
そりゃそうだろう。
俺だって負けたくない。
それに負けたら何をさせられるか分かったもんじゃない。
お互いに良い勝負をして、納得してるんだからそれでいいじゃないか。


「そうだな・・・そうだ、こういうのはどうだろう」



・・・・・



「俺に体力勝負を挑むなんて、やっぱいい度胸してんなァ兄貴は!」ニッシッシ

「それ程でもない」


勝負の内容は『草刈勝負』。
一人で時間内にどれだけ庭の雑草たちを刈れるかの勝負というシンプルなもの。
庭の草が伸びてきた頃だったから、丁度良かった。
うちの庭は結構広いからな。
一人でやるのは大変なんだよ。


「何か手伝いをやらされてる気がしねぇでもねーが、この際どーでもいいぜ!!」

「心遣い感謝する」

「でも後悔しても知らねーぜ?待ったなしだからな?」

「構わんよ」


実際手伝いといえばその通りだ。
かなり助かる。
バレス一人で百人力と言っても過言ではない。
どんな結果になったとしても後悔はしないだろう。


「そんじゃあ、そろそろおっぱじめよぅじゃねーか!昼の12時までだったな!」

「そうだ。今は9時だから、3時間になるな」

「へへーん、3時間なんてすぐだぜ!・・・そうだもう一個条件つけよーぜ・・・」ニヤ

「何だ?」

「負けた方は勝った方の言うことを何でも一つ聞くってなァ!それじゃ開始だ!!」ダダッ

「なっ・・・!?ちょ、おい!」


まーた勝手に始めやがった。
人の話も聞かず、条件自分でつけて。
こりゃ何があっても負けられないな。



・・・・・



「はっはっはっはっ!オラオラオラオラァ!!」
ザカカカカカッカカカカカッカカカカカッカカカカカッ

「おー速い速い」
ザカッザカッ、ザクッ

「あん?兄貴のんびりしてていいのかァ?その調子だと俺が全部刈り取ってやるぜ!」

「何おう、まだ始まったばっかりだろう」


バレスは両手で鎌を持ち、鬼のような速さで草を一直線に刈り取っていく。
・・・鬼だったな。
勝負とか関係なしに全部やってくれると助かるんだけどなぁ。
というのが本音である。
でも妹にこういうの頼むのは何か気が引けるしな。


(本当はこんな草を刈らねーで、兄貴の方を狩りてーんだがなァ・・・♥)ジュルリ

「どったの。俺の顔に何か付いてるか?」

「へっ!別に何でもねーよ!///」


何か俺の顔見つつザクザクやってるけども。
危なっかしいなー。
怪我とかしなきゃいいけど。


はっはァ!俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!


摩擦熱でな。


雑草掴めと轟き叫ぶぅ!!


両手鎌持ってて掴めないけどな。


ばぁくねつ!オーガ!フィンガァァァーッ!


バレスが楽しそうで何よりです。
台詞については母さんの仕業だろうから、もう何も言わない。



・・・・・



「へっへっへェー・・・こんだけ刈り取りゃァ、兄貴にも勝てんだろ」


バレスの目の前には高く積まれた草の山が。
身長が大きめのバレスの倍くらいはある高さである。
やり方は豪快だったけど、土の方は荒れてない。
頑張ったなぁ。


「おー、お疲れお疲れ。頑張ったなぁ」

「へへっ///そうだろォ?なんたって俺の力だからなァ!」


何とも嬉しそうに笑うものだ。
こっちまで嬉しくなってくる程である。


「やっぱバレスは笑ってる顔が一番いいね」

「なっ!?///何言ってやがんだよぅ!いきなり!///」

「あーごめんごめん。素直にそう思ったからな」

すっっげー嬉しいから別にいいんだがよォ・・・///
そ、それより、そのままじゃ兄貴負けちまうぜ?そんな量じゃなァ」ニヤニヤ


俺が刈り取った量は、まだバレスの半分以下。
どうにも追いつきそうにないと思ってしまうだろう。
このままじゃ当然俺の負けだ。
バレスは勝ち誇ったように笑っている。
始めてから2時間でこの結果だ。
当然笑いたくもなるだろうな。


「何、まだあわてるような時間じゃない」

「つってもよ、あと1時間だろ?無理じゃねぇかなー」ニシシシ

「まだ1時間あるだろ?それじゃそろそろ再開するかな」

「俺に体力勝負挑んだのが間違いだったかもな!俺はちっと休んでくるかな」

「水分補給はしとけよ。結構汗かいたんだから。はい水」

「おぉ、持ってんのか・・・しかし今から何お願いすっか楽しみだなァー♥」ニヘー


そう言いながらバレスは家に戻っていった。
さて、ここからが本番だ。
諦めたら試合終了だからな。



・・・・・



「えへへー♥(≧∇≦)」

「あら、どうしたの?そんなに嬉しそうな顔して」

「おう、クラリ姉。いやぁ〜ようやく兄貴に勝てそうだからよ〜」ニヘヘー

「・・・もしかして勝負?何の?」

「今日は草刈勝負だ。俺の身長の倍は刈り取ってやったからこうやって休んでんのさ」

「・・・あらー」

「・・・?何でそんな反応なんだ?」

「いえ、何でもないよ」

「おっ、そろそろ時間だな。それじゃ行くかっ!」

「・・・私も見に行ってみよ」



・・・・・



「お、戻ってきたな。ゆっくり休めたか?」

「オーガの体力なめんなよ。別にあれくらい大したことねーぜ!」


それならもう少し最後まで頑張って欲しかったな。
と思うのは内緒。
まあ飽きやすいバレスにしては頑張ったほうかな。


「それじゃ結果発表といこうぜ!まあもう決まってるけどな!♥」ニシシ

「そうだな。あ、クラリネも来たのか」

「バレスが自信満々だったから、少し気になってね」

「俺が刈り取ったのはこれだな!これだけありゃ俺の勝ちに決まっ・・・て・・・・・・え?」



デデーン












バレスが視線の先には。
バレスの山よりも一回り大きい草の山。

それが3個である。




「・・・・・・(  Д )  ゜  ゜  エー・・・」

「それじゃこの勝負俺の勝ちってことで」

「・・・やっぱりそうだよね」

「嘘だろ・・・・・・いやこれ・・・・・・えぇー・・・・・・」


バレスは絶句している。
口を大きく開け、唖然とした状態だ。
あんだけ勝ち誇ってたらそれもそうだよなぁ。
少しだけ罪悪感があるが、これも勝負。
致し方なしだ。


「兄貴・・・」

「何だ」

「ズルして、ないよな?」

「俺がバレスとの勝負でズルしたことあったか?」

「・・・・・・・・・ない。いや、けどさァ・・・」


うーむ。
どうやら今回はショックが大きいようだ。
時間内まで頑張ったほうがいいよー、とか言っとけば良かったかな。
それとも本気出したのが大人気なかったのかな。


「バレス、元気だしなよ」

「クラリ姉ェ・・・だってこれ・・・俺でも無理だもん・・・この量は俺でも無理だもん」

「逆に考えるんだ。負けちゃってもいいさと」

「・・・今回こそ勝てると思ったのによ・・・(´;ω;`)」

「よしよし。兄さんを嘗めちゃ駄目ってあれほど分かってたのにねー・・・」


クラリネに慰められるバレス。
これが美しき姉妹愛というやつだな。
バレスの目は涙を浮かべている。
鬼の目にも涙という言葉があったっけな。
泣き顔なんて今に始まった話ではないが。


(でも兄さん最初からバレスのやった残りを片付ける予定だったんだろうなー・・・
どうせなら妹たち皆に頼めばいいのに・・・)

「俺の顔に何か付いてるか?」

「いいえ、何も」

「?」


何だか今日はよく顔を見つめられる日だな。
でも草刈りが今日中に終わって良かった。
後に回すと大変だからなー。






(あ、そういえば条件のこと忘れてた・・・うぅ、兄貴・・・キツいのはヤだぜ・・・)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・〜ある日の罰ゲーム〜


「バレス、ちょっといいか」

「あん?どうしたんだよ兄貴」

「この前の罰ゲームの件なんだが・・・」
タタタタタ・・・


・・・逃げられた。
話してる途中で逃げなくてもいいじゃないか。
別に変なこと頼むつもりはなかったぞ。
ちなみに罰ゲームというのは以前の『草刈勝負』のものだ。
『何でも一つ言う事を聞く』という内容。
バレスが勝手に言ったことだから気にしなくてもいいんだけどね。
バレスは意外と気にするタイプだから、早いとこ消化した方がいい。


「まあ、バレスじゃなくてもいいか・・・バレスが一番適任なんだがなぁ・・・」

          コソコソ [壁|(・д・`。 )))…


うーん、視線を感じるなぁ。
・・・いつものことといえば、いつものことなんだけどね。


「・・・バレスにやってもらうのが、一番いいんだけどなぁ〜」

          ススス  (・д・´。 )))!


「い、一体何の用なんだ?兄貴・・・!///」ウキウキソワソワ

「ああ、どうしても頼みたいことがあったから。罰ゲームがてらしてもらおうと思って」

「し、しょーがねぇなァ!!兄貴は!・・・全く!///」

「すまないな」


何というか、こういう風に頼めば扱いやすいのがバレスの特徴だ。
妹に頼み事なんて以ての外だが、この時ばかりは仕方がない。
それに、いつまでも怖がってもらってちゃ困るからな。


やっぱり兄貴にゃ俺がいねぇといけねーんだよな、うん・・・///♥

「何か言ったか?」

「べ、別に何でもねーよぅ!!///」

「・・・そうか?じゃあちょっと俺の部屋に来てくれ」

「!? あ、あああああああ兄貴の部屋!!??」

「? そうだが、何か問題あるか?」

「イエ!全然問題ねェです!バッチコイ!」

「お、おお」

(ふおおっ!兄貴の部屋とか久しぶりすぎるぅ!これ罰なのか!?罰ゲームなのかァ!?)



・・・・・



「で、俺に頼みたいことってなんだよ?」
(うほおおおおおおおおおおっ!!兄貴の部屋だーーーーーーーー!♥♥夢かコレ!?♥)

「ああ、それなんだがな」








「肩もみを頼む」

「・・・・・・ふぁっ?」

「最近肩がひどくてなぁ。困ってたんだ」

「肩もみ?俺が?兄貴の肩をもみもみ?」ワキワキლ(゚д゚ლ)

「そうだが・・・その手の動きは止めろ」


そう、俺がバレスにお願いしたいのは肩もみだ。
うん。肩だけだ。
・・・誰だ今いかがわしい想像をしたのは。
まあ足や腰もお願いしたいが・・・万が一ということがある。
いざとなったら逃げられる方がいい。
信頼してないわけではないが、イマイチ信用していない。
『信頼しても信用せず』というのは妹全員に言えることだがな。
頼りにすることはあっても、その用をちゃんとできるかどうかは別ということだ。


「い、いいのか?俺で」

「むしろ、バレスにしかできんな。力の加減ができて、揉みやすい手をしてるから」


以前フルーにも頼んだことがあった。
でもフルーの手ではやりにくそうでなぁ。
息を少し荒げていたっけ。
ちょっと水っぽい音も聞こえたけど、あれは俺が疲れていたからだろう。


「・・・・・・・・・」

「あー、やっぱ嫌か?そりゃそうだよな・・・悪かった、この話は無しに」

ガシィ

「是非やらせろくださいませェ・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

「あ、ああ、頼むよ」


い、威圧感が半端ない。
まあ家事を押し付けられるよりはましだと思ってるんだろう・・・


「よーし、それじゃいっちょやってやるかー♪」フフーン♪

「おう、よろしく頼むよ」


何とも機嫌が良くなって安心した。
力任せにやられるんじゃないかとビクビクしてたところだ。


「いっくぜー・・・・・・えぇ!?何だこりゃ!?」グッ・・・

「どうかしたか?」

「硬すぎんぜオイ!?こんな肩で毎日過ごしてたのかよ!?」グッグッ

「こんなって言われてもなぁ」


最近肩こりがひどいとさっき言ったと思うが。
だいたいこの状態がデフォルトといっても過言じゃない。
肩を伸ばせばベキィ、首を回せばゴキィと音が鳴るくらいだが・・・
何も問題ないよな?


「ち、力加減はどうだ・・・?」ガッ、ガッ

「おう、もう少し強めでも平気だぞ」

「そ、そうか・・・」
(これでも結構力入れてる方なんだが・・・まるで鋼鉄握ってるみてーだ・・・)

「ホントはあまり頼みたくなかったんだけどな」

「えっ!?な、何でだよ!やっぱ気持ちよくねぇのか!?」

「違う違う。自分で何とかしたかったって話だよ。迷惑かけらんないし」


自分で何とかしようと、サバトが開発した魔導マッサージ機を使ってみたこともあった。
振動で局部を刺激するものだ。
でも肩に当てると変な音がしてな。ガガガガガって。
一週間ももたずに壊れてしまったのだ。
原因は分からないが、正直泣きたくなった。


「別にこれくらい、迷惑でも何でもねーよ・・・」

「バレス・・・?」

「兄貴、いっつも頑張ってんじゃねーか、俺らのためによ・・・」

「頑張るのは当たり前だろ。俺は兄だぞ」

「俺ら、頼りねーかもしんねぇけどよ・・・そんでも、少しぐらい頼ってくれや」

「・・・ありがとうな」


バレスも成長したもんだな。
昔は鬼のように迷惑かけてたってのにさ。
・・・鬼だったな。
今では心配するなんて。
あれ、何か涙出てきそうだ。


「しっかし、硬ぇな。ちょっくら叩くぞ」

「おう」

ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ・・・

「・・・・・・どうだ?」
(・・・これもう肩叩いてる音じゃねぇよ。岩か何か砕いてる音だよ・・・)

「なかなかいい感じだ」

「へへっ・・・そーだろ?」
(あー、でも・・・頼られてるってのは嬉しいねェ・・・♥)

「その調子でよろしく」

「あいよ」



・・・・・



(甘かった・・・俺が甘かった・・・)

「んー、いいねー」

(兄貴の部屋に長時間いて、目の前に兄貴がいるのに・・・)

「あ゛ー、そこいいわ」

(肩しか触れねぇ・・・!!拷問かこりゃァ・・・!!!・・・そうだよ、罰ゲームだったよコレ)

ピタ

(あー、もう限界だ・・・♥)

「どうしたバレス?」


突然バレスの動きが止まった。
流石にもう疲れたかな。
俺の方もだいぶほぐれたし、そろそろやめてもらってもいいか。


「もういい時間だし、そろそろ止めてm」
「肩・・・以外はいいのか?」

「別に問題はないg」
「肩でこれだ。他なんてもっとやばいだろ」


・・・言葉がつなげられん。
遮られてる。
どうにか肩以外もやろうって寸法か?


「・・・今は大丈夫だから。肩だけ頼む」

「・・・そうかそうか」モミモミ・・・スンスン

「うん、いいぞ。その調子」

「・・・そうかそうか」モミモミ、クンカクンカスーハースーハー

「・・・うん?おいちょっと待て」


息が近いような。
てかくすぐったい。
近すぎる。


「・・・そうかそうか」モミモミクンカジュルジュルペロペロ

「おい待て、おかしい。音がおかしい」


息当たってるし。
何か首筋湿って冷たいし。
液体と柔らかいのが当たってるし。


「・・・そうかそうか♥」レロォジュル、ムニ、ギュゥ・・・

「え、お、ちょ、待て」


あ、やばい。
ホールドされた。
首締まりそう・・・


「い、いいかげんにしないか・・・!」グググ・・・

「・・・そうかそうか♥」ギュゥ、ペロペロ
(兄貴ぃ・・・♥兄貴ぃ・・・♥美味しいよぅ兄貴の味ぃ♥)


話聞いてないなバレス・・・!
本格的にやばい!!
一刻も早く逃走を図るべきだった!
俺はどこで判断を誤った!?


「兄貴ぃ・・・♥なぁ、スケベしようや・・・♥」レロォ・・・


うがぁ!?ゾクッてした!!
その台詞と首の生暖かさに寒気がした!!
色々と駄目だろその台詞は!!
・・・いやそうじゃねぇだろ俺!落ち着け!


「落ち着けよバレス・・・!少し頭冷やそうか・・・!?」

「俺はいつでもフルスロットルだぜェ・・・♥」

「へあっ!?落ち着けバレスー!」

「はっはっはっは、兄貴が戦う意志を見せなければ、俺はこの兄を搾り尽くすだけだァ!♥♥」

「人でなし!鬼!」

「間違ってねぇなァ・・・♥」


駄目だー!!?
これ駄目な時の顔だー!!
とろんとしてるもん顔が!?とろけきってる!!
受け答えは完璧でも全然落ち着いてねぇー!!


「口ん中も、揉みほぐしてやるよ・・・ん♥」

「むぐぅ!?」

「んむ・・・れる、ちゅぷ♥あむ、んぅ♪じゅるぅぅぅ♥んふぅ・・・♪」

「・・・っ!・・・・・・っ!!・・・ぷはっ!?おい!やりすぎだ!!」

「・・・もう、止まれねぇよ・・・兄貴♥」スルスル・・・


バレスはそう言って俺と自分の服に手をかけ、ってぇ!?
まずいまずいまずい!!
キスの味は甘かったけど・・・って違ぇ!?
状況がまずいんだよ!!
うおぉおお!神様仏様お母様ー!
誰でもいいから助けてくれぇ!!










「兄殿ー、入るでありま・・・・・・す・・・・・・・・・」
「兄様、お願いしたいこと・・・・・・が・・・あ・・・」




今の状況を分かりやすく説明するならば。
前門の鬼、後門の狼。
つまりはそういうこと。


「ホルン!コルネッタ!バレスを止めてくれぇー!!」

「おー、お前らも混ざるか・・・?♥」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・


「あ・・・」

「「バァ〜〜〜レェ〜〜〜スゥ〜〜〜・・・・・・?」」

「いやあのこれは抜け駆けとかそういうんじゃなくて雰囲気的にこうなったってかそもその兄貴が俺を部屋に入れたのが悪いっていうかそのぶっちゃけ抑えられるわけがないってお話で何が言いたいかっていうと・・・俺は悪くねぇ!!」


問・答・無用っ!!!


ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!






こうして、第数十回バレス強襲事件は幕を閉じた。
うん、襲われること自体は初めてじゃないし・・・
唇くらいなら平気で奪われてますよ・・・・妹達に・・・・・・ぐすん。
その為、うちの家訓には『いかなる場合であっても家族は襲ってはならない』というのがある。
そんな家訓があるのはうちぐらいだよ・・・

その後バレスは二人から延々とお説教を食らっていた。
ちなみに二人は、以前コルネッタにやった耳かきをホルンに自慢して、二人共お願いしようと部屋に来たらしい。
本当にありがとう。
ご褒美にやってあげようかな。






「自分から襲ってしまっては駄目だと、何度も言っているでしょう!!」
「誘惑するのは有りでありますが、それはルール違反であります。反省しなさい」
「ごめんなさい・・・ホントにごめんなさい・・・ホルン姉、コル姉」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

(き、気持ちは分かりますからこれ以上は責められません・・・私、今度お願いしてみようかな・・・///♥)
(今度、私もちゅうしようかなであります・・・///♥)
(久しぶりのキス・・・うますぎたなー・・・えへへー///♥)




やっぱりやめとこうかな。
何でかは分からないけど。
何か許しちゃいけない気がするのは何故だろう。



・・・・・



『いかなる場合があっても、家族を襲ってはならない』という家訓に、
実は『ただし兄から襲う場合を除く』という付け足しがあることを。
兄タクトは、知る由もない。


13/03/20 20:46更新 / 群青さん
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■作者メッセージ

はい。今回もお読みいただき、ありがとうございます。
五女の『バレス・オーケスティア』
オーガです。
年齢は16歳。
・・・今考えると高校生1年生の年齢と同じなんですね。
うん。兄タクトが妬ま・・・羨ましがられる理由が分かる気がします。

最初は家庭的なウシオニにしようかな?とも考えてたんですが、同じ鬼でもオーガの方はそういう話をあまり見ないなぁと思ったのでオーガにしました。
でも今回の内容は全然家庭的じゃありませんけどね!!(開き直り)
書いてて楽しかったですw
家庭的な部分は今後に期待してください(´・ω・`)

名前の由来は打楽器の『ティンバレス』から。
力強さのイメージから、打楽器からの選出です。
まあドラム系は力だけでは演奏できませんが。

次回は六女の予定・・・なのですが。
もしかしたら番外編のようなものを入れようかな?とも考えております。
どちらになるかは少し分かりませんが。
それでも次回を楽しみにしていただけると幸いです。

次回もお楽しみに。

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