連載小説
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・長女がエキドナな場合
エキドナという種族が初めて産む子は必ずエキドナであるという。
それは俺の家族も同じなようで、うちの長女はエキドナだ。

・〜ある日の朝〜


「クラリネ、朝だぞ」

「ぅう〜ん?」


朝に妹達を起こすのは俺の日課だ。
小さい頃からずっとそうしているせいか、一人を除いて我が妹は寝ぼすけが多い。


「う〜ん・・・あと5°体温上がるまで待って・・・」シュルル・・・

「お風呂沸かしてあるから入ってこい。あとさりげなく俺に巻き付かないでくれ。
力加減からして、起きてるじゃないか」

「むむ・・・しょうがないなぁ・・・分かったよ・・・」ムクッ


二人きりでいる時は、隙あらば巻きついてこようとする。
他の妹達がいる時はそんなことないんだがな。


「ん〜、兄さん。おはよう」

「はいおはよう。それじゃお風呂入ってきなさいな」


ベットからのっそりと出てきたが、服が所々はだけている。
なので、どことは言わないが見えそうになっている。
どことは言わないが。
よくあることだから気にしない。
慣れって恐ろしいと思う今日この頃である。


ギューッ・・・


「何してる・・・」

「ふふっ・・・やっぱり兄さんって暖かい・・・
やっぱりもう少しこのままでも」

「他の妹も起こさないといけないの分かってるでしょ。
ご飯も作ってる途中だから」


後ろから上半身で抱きつかれた。
器用にベットに下半身を乗っけたまま上体を伸ばしてきたようだ。
柔らかいモノが二つ、背中に当たっている。
ここは母さんに似ちゃってまあ・・・
と、そうじゃない。
全く、俺が倒れたらどうするつもりだよ。
いつも長女であるクラリネから起こしているので、他の妹もこれから起こしに行かなければならない。
ご飯も作りかけ。
つまり時間があまりないのだ。
人数が多いと本当に大変である。
朝から大人数の朝ご飯作るのは猫の手も借りたいくらいだよ。


「むぅ〜、兄さんはホント意地悪なんだから・・・」

「聞き分けの悪い子にはきちんと目が覚めるよう、冷水をかけるサービスが」

「お、起きました!起きましたよ兄さん!」


ちょっと脅しをかける。
いつまでも離れる様子が見られないからだ。
実際離れないときは本当に冷水をかけるがな。
まあクラリネにかけることは滅多にないけどね。


「はい、じゃあ起きたらお風呂場に向かってね」

「うう〜、ホント意地悪・・・」


意地悪で結構。
そうしないと本当に時間がないんだよ。


「・・・たまには兄さんも一緒に入るというのは」
「もう19でしょ。それじゃもう行くよ?」


突き放す感じがするけれども仕方ない。
てか一緒に入浴は問題あるでしょうに・・・
もしやまだ寝ぼけてるのかな?
お風呂で寝ないか心配だ。
まあ、他の妹もお風呂場行くから大丈夫だろう。
早く起こしに行かないと・・・






「長女でも甘えたっていいじゃん・・・・・・兄さん・・・」



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・〜ある日の午前での出来事〜


「兄さん、洗濯物干すの手伝おうか?」


クラリネは長女ということもあるのか、よく家事を手伝ってくれる。
こちらとしては大助かりだ。
いい妹をもったものだ。


「ああ、それじゃぁお願いするよ」

「うん、任せて頂戴!」


洗濯物を二つに分け、それぞれ外に干していく。
日差しがとても眩しく、目も眩むくらいの快晴だ。
まさに洗濯日和。
いつもこうでいてくれるとありがたいんだけどね。
雨も嫌いじゃないけどさ。


「・・・ところでさぁ」

「んー?」

「私たちの服をいつも洗濯してくれているわけだけど・・・その、何も思わないの?」

「何って?」

「その・・・えと・・・あーもう意地悪!」

「いきなり何さ」

「ぅ〜・・・だから!私たちの下着とか見ても!何も思わないの?って聞いてるの!///」


何も思わないわけないじゃない。
と、言いたいところであるが・・・
正直、多すぎるのだ。
のんびりと一つ一つ見ながら干していくと、日が暮れてしまう。
さっと手早く干していかないと他の家事が全く進まないのだ。
それに、妹の下着見て興奮するとか、絶対にあっちゃいけない。
と、少なくとも俺は思っている。
世間一般では知らないが、いちいち気にしてたら、まずうちでは生きていけないだろう。
何せ多種多様すぎる。
それでも、慣れって本当に恐ろしいと思う。


「はーい、口ではなく手を動かすー」

「ご、ごまかさないでよっ!」

「それじゃ洗濯物はいつもクラリネがやってくれるということで?」

「それは私でも大変・・・だけど!そうじゃなくて!」

「何で唐突にそんなことを聞くんだ」

「それは・・・その・・・///」

「まあ男の俺が女性の下着とか触るのは嫌だよな。それはごめん」

「えっ!?むしろ兄さんが触ってくれてると思うと興奮するんだけど・・・///

「ん?何驚いてるんだ?最後の方聞き取れなかったけども」

「べ、別に何でもないよ!///いつも苦労かけさせちゃってごめんねってこと!」

「ははっありがとう。でもなるべく他の妹にも手伝ってもらった方がいいかなぁ」

「!! 私が手伝うから!いつでも手伝ってあげるから!気にしなくていいんだよ!?」

「何をそんな必死に・・・でもその気遣いは嬉しいよ。ありがとうな」

「う、うん・・・」






(言えない・・・他の妹達まで手伝ったら、私との接点がもっと減っちゃうからだなんて言えないよぉ!)



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・〜ある日の昼下がり〜


クラリネの様子を見ると、何やら様子がおかしい。
何やら息が荒く、肩で息をしているような感じだ。
顔も赤いし、体も震えているようだし、もしや風邪か!?


「クラリネ、今日はもう部屋で休んだ方がいいぞ」

「ふぇ?どうして・・・?」ポー

「気づいてないのか。そんなにフラフラして。俺は大丈夫だから早く部屋で休め」

「えっ?・・・あっ!そ、そうだね!部屋に、んっ・・・戻るよ・・・!」

「ああ」


・・・・・


クラリネ大丈夫かな。
そういえば薬飲んでないよな。
よし、持って行ってやろう。


コンコンコンッ

「クラリネー?薬持ってきた。入るぞー?」

「えっ!?んっ・・・♥あ、ちょ、ちょっと待ってぇ!!」

「どうした?着替え中とかだったか?」

「そうじゃなくて!あ、あの、別に風邪とかじゃあ・・・♥ないからっ!くぅっ・・・♥
だ、大丈夫らよぉっ!!♥♥」

「そうは言ってるが、まともに喋れてないじゃないか。もういい入るぞ」カチ

「だから!ちょっと待って!言うから待って!」

「頼む、早く言ってくれ」

「い、今・・・・・・・・・脱皮、中なの・・・!」

「・・・あー」


ああ、もうそんな時期だったか。
いけない、すっかり忘れてた。
エキドナはラミア類なので、蛇のように脱皮の時期があるのだ。
脱皮の時期は体に熱がこもってしまい、風邪のようにも見えるため注意が必要である。


「んーそうかー。じゃあ脱皮して落ち着いたら部屋を出るようにな」ガチャリ←鍵をかける

「っ!でも!今問題があって!」

「・・・どんな?」

「う、うまく皮が剥がれないの・・・!どうしよう・・・」

「・・・・・・」


普通なら気にせずそのまま放置するんだが。
今までにないパターンだな。
脱皮中もとい脱皮後は特徴として好色になる。
つまりはエロくなるのだ。
そんな時に男の俺が近づいたら襲われてしまうので、この部屋には入れない。
今までにも同じように脱皮の時期があったが、うまく切り抜けてきた。
でも・・・脱皮不全か。
何かストレスになるようなことでもあったのか?
もしや俺の知らないところで原因が・・・


「兄さん・・・!て、手伝ってくれない・・・?脱ぐの・・・」

「・・・それはできない。今他の妹を呼んでくる」

「っ! 嫌っ!」

「なに・・・?」

「こ、こんなみっともない姿、他の子たちには見せられないよ!兄さんじゃなきゃ嫌!」

「・・・無茶を言わないでくれ」

「・・・お願いよ・・・兄さん・・・・・・助けてよぉ・・・グス」

「・・・・・・・・・」


参ったな。
これが嘘ではないことはクラリネの性格上分かっている。
流石に俺も鬼じゃない。
兄だけども。
兄鬼ではない。
助けてあげたい。
何とか助けてあげたい。
でも俺の貞操が危ない。
どうする・・・どうする・・・
むむむむむ・・・


「・・・理性は、保っていられると約束できるか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頑張る」


何とも頼りのない間だな。
もしもの時は、全力で抵抗するしかない、かなぁ。



・・・・・



「・・・ものの見事に皮が残ってるな」

「ぅぅ・・・恥ずかしい、から・・・・・・あんまり、見ないでぇ・・・」

「っ!ごめん!じゃあすぐに終わらすからな!」


持ってきた大きい濡れタオルで、皮をしっとりと湿らせていく。
こうすることで皮が取れやすくなるのだ。


「それじゃいくぞ・・・」

「うん・・・来て・・・♥」ゴクリッ

ペリペリッ

「んっ・・・♥」

「痛いか?」

「だ、大丈夫らよ・・・♥んんっ♥ひぅ・・・♥♥」

「そ、そうか・・・」

ペリペリペリ・・・ペリペリ・・・

「ひあっ・・・・♥・・・はうぅ・・・っ♥」

カリ・・・カリカリッ

「ふあぁ・・・♥あふぅぅ・・・♥」

カリッ!

「あひぃ!!♥♥♥」ビクンッ

「ごめんなっ!我慢してくれ!もうちょっとだから!」

「ふぅーっ!♥ふぅーっ!♥♥」


急がないと・・・
だが焦るな。確実に、ゆっくりとだ。
皮が残らないように。
丁寧に。
気をつけて・・・


ペリペリ・・・ペリペリ・・・

カリッ・・・ペリペリ・・・

「んぁ♥あぁん♥ひぐっ♥ひっ・・・・♥ぁぁあ♥」ビクンビクン

ペリペリペリ・・・ペリ・・・ペリ・・・

「みゃぅ・・・♥いひぃ♥っあ・・・!♥あっ・・・!!♥♥」ビクン・・・ビクン・・・

「最後だ・・・一気にいくぞ!」

ペリペリペリペリッ!

「〜〜っ!あふああああぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁっ・・・♥♥♥♥」ビクビクビクッ!




「ふぅ・・・終わった」

「はーっ♥ハーッ♥・・・・・・ア♥」

「だいじょ・・・」ハッ・・・


大丈夫か?と声をかけようかと思ったが、今はまずいかもしれない。
ここは静かに離れてッ・・・!

ガシッ


「どコへ・・・イくんだァ・・・?♥」

「く、クラリネと一緒に一休みする準備だぁ・・・・・・!」

「一人用ノ、脱出ドアでカァ・・・?♥」


一人用の脱出ドアって何だ。
クラリネの部屋の扉だろうが。
突っ込みそうになったが、きっとまともには答えないだろうから言葉を飲み込む。
というかヤバイ。
目が据わってる。
言葉遣いも母さん寄りだ。
これはマズイ。
理性が飛びかけてる。


「クラリネ、落ち着けぇ」

ナデナデ

「はぅ・・・♥頭撫でタくラいじゃァ誤魔化さレないヨ・・・?♥」


よし、少し怪しいが落ち着いた。
・・・ことにしておこう。


「クラリネ、今正常に判断できる状態じゃない。故に俺はここを離れる」

「兄サぁん・・・♥♥もウ、我慢でキないィ・・・♥♥」

「我慢、してくれぇっ・・・!!」

「私ヲ・・・見捨てルの・・・?」ウルウル

「ぐうぅっ・・・!!!」


やれてくれぇ!
そんな涙目で俺を、兄を見るなぁ!
だが、ここで流されれば俺は・・・!
俺はぁ・・・!!


「・・・いつモ、そうヤって我慢して・・・分かってルよ・・・?私たちのためだって」

「・・・え?」

「私を、私たちをキズモノにしないために我慢して・・・
いつか私たちが、この家を出て、生活していけるように・・・
お世話、してくれて・・・
私たちを一番に・・・大事に思っていてくれて・・・
感謝してるのよ・・・?みぃ〜んな・・・
兄さんに・・・」

「クラリネ・・・」

「・・・だカら、お礼がシたいの・・・♥
兄サンだったラ・・・イイから・・・・・・♥♥」


俺が妹達を一番に思って、その為に頑張ってる。
確かにそれはその通りだ。
でも違う。
俺はそんな風にお礼を返される為にやってるわけじゃない!
幸せになって欲しいから。
いつか幸せな姿を俺に見せて欲しいから。
そして、今が楽しいから頑張ってるんだ!


「・・・クラリネは俺を襲うことがお礼になると思ってるのか」

「ッそうじゃない!私は・・・私は兄さんと!」

「でもね。そのお礼を返してくれようとする気持ちはすごく嬉しい」

「兄さん・・・!?それじゃあっ・・・♥」


「家事の手伝いしてくれるだけでも充分なんだよ・・・
本当に、いつもありがとうね」ニカッ











「っ!!!///」プシュー


バタンッ


「うおお!?どうした!?大丈夫か!」




にへー




幸せそうな顔して・・・・
気絶してる。
何でかは分からないけど。
これならまあ、大丈夫だな。








(あの兄さんの笑顔ッ・・・!私に感謝しながらの笑顔ッ・・・!破壊力が!ありすぎるッ!)







お礼を言った瞬間にクラリネは倒れ、脱皮直後の発情期間はずっと寝込んでいた。
こうして俺の貞操は、今回も守られたのであった。



13/03/01 21:33更新 / 群青さん
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■作者メッセージ
はい。お読みいただきありがとうございます。
まずは長女の『クラリネ・オーケスティア』。
エキドナです。
ちなみに名前の由来は楽器の『クラリネット』からきています。
あと後々出てくる妹たちも楽器の名前が由来となります。
色々な楽器のように騒がしい妹たち、ということで苗字もオーケストラの捩りからです。
私のイメージとしては楽団のような家族ということです。
一応この家族の父母にも名前はあります。考えてありますとも。

ちなみに兄のタクトという名前も指揮棒から取っています。
安直ですねw

次は次女の話になります!

次回もお楽しみに。

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