読切小説
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とある刑部狸の野望
遅い‥。遅すぎる!!
契約が成立して、これから一儲けしようとしている時に肝心の頼んだ商品が店に着く気配が全くない!!
こうしている間にも、刻一刻と過ぎて‥儲ける機会が失われていく…。
時は金なり。失われた時の分、頼んだ隊商には支払えない位の違約金を請求した上で、無賃で一生扱き使ってやりたい。イライラが頭の中身を占めていく一方で、詰めていく算段が計算されていく。


店のドアが勢いよく開かれて、商品が届いた!!期待を胸を膨らませて、注視するも‥入ってきたのは息を絶え絶えにした隊商の長ではなく、連絡係。異常な事態が起きた。理解すると同時に連絡係の口は開いていく。
話によると交易ルートにワームが出て、誰かを婿として見初めさせるか、迂回路を取るか、真剣に話し合っているとの事。
「ワームの資料を渡しなさいな!!」
失われていく時。それに、このままでは埒が開かない。イライラと共に案内係の手から奪うように取り上げて、資料に目を通していくのと同時に一つ算段が頭の中で産声を上げていく。すぐさま店の奥に行き、愛用の道具箱の中にいくつもの商品を詰めて準備をしている間に‥考え通りに事が運ぶと思うだけで、抑えきれない程の笑いが込み上げてくる。

「私を今すぐそこに連れていきなさいな!!それと‥最初に向かうのはワームのいる場所」
犠牲にされると瞬時に考えたのか、案内係はすぐに顔はみるみる蒼くなっていく。
「ワームと直接交渉をしたいだけだから、近くで良いの。それにあなたに全ての責任を取らせるつもりわないから。それに‥隊の長って責任を取るために居るのよね?」
蒼い顔のまま、ひきつった表情で私を見ている。その顔に私は気にも止めないまま店を閉め切って現地に向かっていった‥。





一つの天幕の中。隊商の長が数人集まり、会議に会議を重ねても結論はおろか、碌な意見も出ていない。
それはそうだ。隊商員は家族も同然。簡単に切る捨てる事を選び取るなんて無理な相談だ。それに迂回路は厳しい山岳地帯。滑落の危険性も高い。
そして‥こうしている間にも気になるのはあの商人。普段は明るく好感が持てるが‥いざ商いの事となるとなんとも形容しがたい表情を形作る。正直言って商人とのしてのあの顔は怖ささえ感じる。
だが‥あの商人とて石頭ではない。だからこそ‥足止めをされている理由を知れば、頭ごなしに文句をつけてくる事はないだろう。
重い空気が漂う中。会議とは別方向の事を考えていた最中。閉めきっている筈の天幕から、微かな風を感じたのとほぼ同時に、勢いよく入り口が開かれて、あの商人が連絡用に送った人を隣に、堂々とそれも我が物顔で入ってきた事に、その突然さに私を含め、全ての長の口は開いたまま塞がれる事はなかった。
そして‥「考えがあるから、任せてほしい」この一言で会議を解散させてしまった。実際、誰もが手詰まりだったのも後押ししていたのもあるだろう。


「考えとはなんだ?」
「ここに来る前にワームの所に寄って話したんだけど‥道をあける気がないみたいだから‥今はぐっすりと眠ってる」
どうやって寝かした?とつっこみたいが、恐らくは‥前に店に寄った時に、相手を寝かせ、その内に既成事実を作ろう。とかなんとか殺し文句が書かれた品を使ったのだろう。その魅力的な商品に私も女性に使いたいと一度は使いたいと考えた。だからこそ覚えているだが‥しかし値段が高すぎた……。
……。話が逸れてしまったな‥。

「寝ている内に早く行けって事か?」
「違うよ。元手がかかっているんだから、元以上は取らないと。それに‥ちょっとついてきて」

誰も聞き耳を立てない所まで案内するのだろうと考えていた。だが‥その道すがら、商人の話しているプランに戦慄し、瞬時に拒もう事を考えた。だが‥契約書を見せられ、その違約金の高さに拒否権は見事に握り潰され、否応なく「はい」と答えてしまった事に後悔を覚えるも、歩き続け今はぐっすりと眠っているワームの目の前。
「んじゃ。ホルスタウロスの生乳と媚薬を飲んで」
夢にまで見たホルスタウロスの生乳。男として生まれたのなら、一度はその味を堪能し尽くしたい。だが‥今は素直に喜べそうもない。
仕方なしに生乳と一緒に薬を嚥下していけば、すぐに効き目があらわれて、この邪な商人を今すぐ押し倒したい欲望が湧いてくる。だが‥その後に起こりうる事を想像するだけでその欲望が萎えていく。
そして、同時に私の身体にはロープが巻き付けられていき‥フックのような物に引っ掻けて、それから竿に固定された。その竿のもう一端は寝ているワームの身体にロープと一緒に固定されていく。

商人のプランを一言でいえば‥ロバの目の前に人参を吊るして動かす。これと同じ事を私を使い、ワームを対象に方角を考えた上で行う。商人は準備が整うとすぐにその場を離れ、私とワームだけが残された。

ワームの手が伸ばされても届かない距離に固定されたまま、スヤスヤと寝息を立てている寝顔を眺めて、そして‥すぐ下の隠す気が感じられない、剥き出しに近い大きな胸に視線が集まっていく‥。
手に触れて、感触を余すことなく感じて揉みし拉きたい。
口に含み尖端を舌で転がしたい。
快楽に蕩ける顔が見たい。
止まることを知らない欲望だけが頭の中身を埋め尽くしていき‥膨らみはズボンの生地を押し上げて痛ささえ感じてきている。
早く猛った物を出し尽くさないと私がおかしくなりそうで、起こそうと大声を出せば、目はぱちくりと開き、僕の姿を見るや寝惚けた顔は既にそこにはない。手を伸ばすも届く筈もなく‥
「獲物。獲物。獲物。獲物。獲物……」
低く唸るような声と共に低い体勢で身体を動かしていく。一先ずは動いてもらう事には成功した。だが‥後ろが見えないまま、もの凄い勢いで動いていく事に恐怖を覚えつつも、同時に動きに合わせて、たゆんたゆんと柔らかそうに揺れていく胸。あの胸に欲望の限りをぶつけたい。
気のせいか一瞬。私を見る目が切なそうに感じた。ここままだと、私もワームもどうする事も出来ない。生殺しもいいところだ。だから‥
「上を見れば棒があるから!!」
叫びに近い声を上げても、私から視線を逸らさずに、ワームは動き続け‥動きに耐えきれないのか、ワームに巻かれた方のロープからは綻びが生じていき‥程なくして切れると、私の身体が宙に投げ出されて‥致命傷を負う。覚悟をした刹那。身体はワームにの腕の中に見事に収まり、次いでロープやフック。竿にと全ての邪魔な物が服と一緒に取り払われていき‥身体が熱いせいか寒気を感じる事がなかった。
両手に捕まれたまま、持ち帰られずに、その場で既に準備が整いすぎているものを恍惚な目で見詰め、身体をすり合わせいくように宛がい、彼女の中に一気に包まれたのと同じく何かを突き破ったような感覚。
激しい動きに根を上げるように、1回目はすぐに訪れた。
出した事に頭が冷えて、商人との約束が頭の中を過る。
ワームに負けないようにとそのために、すぐに尽きないように、ホルスタウロスの生乳を用意した事。それにこのまま持ち帰られて、隊商の皆に二度と会えなくなることは何としても防ぎたい。2回目、3回目と回を追う毎にワームの声の質から弱い所を積極的にかつ集中的に責めて………
高かった日はいつしか沈み夜に、今は虫の鳴き声が回りから聞こえる。
回数から一生分出し尽くしたような気がする。激しかった彼女も今は勢いを失い、互いに互いの口を塞ぎ合い、その柔らかい感触。ひいては舌まで余すことなく感じ合い、身体の温もりを伝え合っている。
彼女が激しくも荒々しいのは口で伝えるのが苦手で‥だからこそ、相手を深く確かめて感じていたいからだと思う。と染々と考えている中。
「いやーー‥。探した。探した」
聞き間違える事がないあの商人の声。視線を移せばランタンを片手に立っている。邪魔をしている事に睨みの視線に臆することなく言葉は続く。
「まぁ‥。探したと言っても、木が薙ぎ倒された跡や岩が砕かれた跡を辿れば良いんだけどね。そうそう。商品は無事に届いたからそのお札と‥」
近くにあった適当な岩の上に座って私達を見ている。
「結ばれたからにはあと1つ問題があるんだけど……」
声とは裏腹に、顔は夜の闇でも足りないくらいにドス黒く、灯りが当たっているのに不思議と黒いままだ。
「荷を運ばなかったのは隊の長の責任。通せないようにしたのはワームの責任。結ばれたからには、この責任は誰にあるんだろうね?」
彼女は声を出さずに私を見て、私もこのまま彼女に責任を取らせたくない。
「‥でそっちの要求はなんだ?」
「話が早くて助かるよ。ほらあの力だから、新しいルートの整備にも役に立つって思うし、それに‥隊商として運べる量が増えるのは喜ばしいよね?」
「分かった。分かった。2人揃ってそっちに従う事を約束するよ」


街に戻ってから日を改めて彼女と結ばれた後、夫婦揃って刑部狸に扱き使われる毎日。でも‥毎日ずっと一緒にいられる事だけは感謝している。
12/11/05 06:08更新 / ジョワイユーズ

■作者メッセージ
ワームと聞いて‥最初に頭に思い浮かんだのは釣り餌…。
多分に私だけと思いたいです‥。
思わせて下さい。

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