連載小説
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神秘的な吸血鬼、ラスト・グラウンドフォール(if)
それは、唐突に起こった。
まるで、赤ん坊が泣き出すように。まるで、自然災害のように。

「なんじゃ?貴様は」

満月をバックに仁王立ちをする女性。そのあまりの美しさに俺は呆然と立ち尽くしてしまった。

美しい。

その一言に尽きる。月ですら彼女の前では(正確には後ろだが)ただの懐中電灯にすぎない。

そう思わせるほどの、美しさ。

「こ、今晩は」

何も言う事ができず、そんなありきたりな言葉が口をついた。
ってかこのシュチュで今晩は、て。

「そう言う事を言っているのではない。貴様は誰だ、とそう聞いておる」

俺の言葉が気に食わなかったのか、口調が少し強くなる。

「一年、二荒葉です。えっと貴方は?」

問い返す。すると彼女はふっと笑った、ように見えた。

「妾はラスト。ヴァンパイアのラスト・グラウンドフォールじゃ」


それが俺と彼女、「地割れ」の姓を持つラストとの出会いだった。

−−−−−−−

「……いかんな」

授業が終わり、教室にざわめきが生まれ出す頃、教科書をしまいながらそう俺は独りごちた。

先日、月夜の晩に出会ったラスト・グラウンドフォール。最近の俺は彼女の事ばかり考えてしまっている。

その所為でここの所授業にも身が入っていない。一応部活にも入っていないため寮(と言う名の3LDKの一軒家)で予習復習はやっているが、それでも授業を蔑ろにするのは気が引ける。

因みに、何故男子の寮がとてつもなく大きく、他がルームシェア(それでも十分でかい)なのかを学園長に聞いてみた所、

「夜這いって燃えるわよね」

と言う事らしい。学園長ェ……。

「あの人一体何年生なんだろ」

心惹かれていると言っても結局の所俺はあの人の名前しか知らない。
ただ、赤の他人ならまだしも夜に会ったんだから九割形ココの生徒だろう。

この学園は全寮制である上、外と隔離されている。
だがこの学園の敷地がでかくて、殆ど都市と言ってもいいレベルであり、長期休暇の時は外に出ることができる。

学園長曰く、ラミア属やハーピー属などの異形な魔物娘たちは外に行ったらなにされるか分かったものじゃないのでこの様な政策をとったと言うことだ。

まあ、ここにいれば大抵のことはできるので生徒からの不満はあまり聞かない。

「どうしたの二荒君。ぼーっとして」

後ろから声をかけられ振り返る。

「ああ、ミラ」

初めて会った時から何かと世話を焼いてくれているホルスタウロスのミラ・ラルガルントが、不思議そうにこちらを見ていた。

「いや、なんでもないよ。ちょっと考え事を」

と言った所でふっと、ある事が頭をよぎった。

………ミラに聞いてみようか。

いや、ミラも新入生だからよく知ってるわけないとは思うが……一応駄目元で聞いてみるか。

「なあ、ミラ。えっと、ラスト・グラウンドフォールって人知ってるか?」

「うん、知ってるよ」

………マジかよ。



13/04/02 16:26更新 / アルバス
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■作者メッセージ
葉の出会った美しいヴァンパイア、ラスト。
この女性との出会いは一体何を変えてしまうのか−−−−?


どうも、アルバスです。

書き始めたのは初めてのifはヴァンパイア編。ラスト・グラウンドフォールさんです。

少しこの物語の構成を考えていたら間が空いてしまいました。

楽しんでいただければ幸いです。

それでは。

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