連載小説
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ヴァンパイア、ラスト・グラウンドフォールと虐待の人。一日目、夜(if)
その日の夜。私は何故か、二荒家に泊まることになった。

それというのも朝、葉が女に蹴られていた時に

「稔(みのり)、何をしているの?」

また、今度は別の玄関から女が出てきた。
着物に身を包み、薄い化粧をしているまさに和服美人。

「……お母様。いえ、特には何も」

そう言って、一発葉の腹を蹴って離れる女。
和服美人の方もちらりと葉の方を見るが、

「そうですか。では中にお入りなさい。お客様を連れて」

そう言って踵を返す。

「でもお母様!こいつは「稔」

和服美人はピシャリと言い放つ。

「もう一度言います。お客様を連れて中にお入りなさい」

「……はい、お母様」

稔、と呼ばれた女が悔しそうにこちらを見る。
先ほどのこともあり私はまた逃げ出しそうになったが、ぐっと堪え、

「だ、大丈夫なのか……?」

そう、質問した。
だが、帰ってきた答えは不快なもので


「はぁ?なにが。まさかあいつの事を言っているんじゃ無いわよね?」

女は意地悪く笑う。

「大丈夫に決まってんでしょ。あんなんで死んでたら命が幾つあっても足りてないわよ」

「な………」

このレベル以上のことをこいつらはやっているのか……?
先程の和服美人の方も自分の息子だろうに一瞥しただけで近寄ろうともしなかった。

……この家は狂っている。
私はそう結論づけた。

思い返せばあの二荒実の家なのだ。まともである筈がない。

「ねぇ、あんた。一つだけ言っておくわ」

くるりとこちらに振り向き真面目な顔をする女。

「ここの敷居を跨ぐならここの家のルールに従ってもらうわ。いいわね?」

そして蹲る葉を、見る。

「ルールは一つだけ。あそこの二荒葉を人として見ないこと。それだけよ」

「な………っ!何故だ!お前たちの家族なんだろう!?」

「家族……?」

そう言うと女は、はっ!と笑う。

「ねぇ、あんたはお祖父様を知っているんでしょう?ならわかりなさいよ」

そう言い家の中に入って行く。

「どういうことだ!二荒実とこいつは一体どんな関係がある!」

「……あんたもいずれわかるわよ。私がお父様とお母様に言っておくわ。三日だけ泊まりなさい」

そうすれば嫌でもわかってくるわよ。

女は背中でそう答えた。
−−−−−−−−−−−
「済まないね。君は父さんに会いにきたのだというのに、どうやらまた何処かに出てしまっているようだ」

そう言うのは二荒実の息子で二荒葉の父親二荒梢(ふたらこずえ)。
女のような名前だが姿は全くの真逆で、がっしりとした体型に無精髭が生えている。

「稔から話は聞いている。三日間うちで良かったら泊まっていきなさい」

「恩に着……ます」

「ははは、そう畏まらなくていいよ。君は父さんのお客なんだから」

朗らかに笑う二荒実の息子。しかし忘れてはならない。こいつも自分の息子を痛めつけている筈なのだ。

いや、もしかしたら女衆だけなのかもしれない。
そんなあるのかもどうかあやふやな期待を含めて質問をする。

「……ところで息子さんは何処ですか?」

「ああ、葉は今別の場所にいるよ。おそらくそこでご飯を食べているんだろう」

曖昧な返事。自分の息子の状況も把握していないのか、こいつは。

……本当に私は理解することができるのだろうか。二荒葉の状況を。


13/05/31 23:54更新 / アルバス
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■作者メッセージ
二荒葉の秘密

それは三日間の滞在で理解ができる。

そう言われたラスト・グラウンドフォール。

何故彼は逆境へと堕ちこんだのか。

そしてラスト・グラウンドフォールの恋の行方は……?





どうもアルバスです。

またしてもあいだが空いてしまいました。

はやくヴァンパイア編を終わらせないといけないのに………

あと一万viewを超えたら少しイベントをしてみようかと思っています。

なにをするかはお楽しみです。

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