後編
隣国との婚姻を翌日に控えた前夜祭の日に、その主役である王女をさらわれる。この前代未聞の事態に、国じゅうだけでなく近隣の国々までもが蜂の巣をつついたような大騒ぎになりました。なぜ淫魔があの場に現れたのかについて多くの人達がそれぞれに勝手な憶測を口にしていましたが、真相を知っているのはお姫様の部屋にあった書き置きを発見した侍女と、その報告を受けたお姫様のご両親、すなわち王様と王妃様だけです。王様はこの事を他の者に言いふらさないようにと侍女にきつく言い聞かせましたが、そのような命令が無くても侍女はお姫様の苦しみを思って何も言えませんでした。
王国はすぐさま集められるだけの大軍を送りました。真夜中な上にかなりの速さだったとはいえ、リリム様はお姫様を抱えて飛ぶときにできるだけ人目に付きそうな場所を選んで通っていったため、兵士達がお姫様の連れていかれた方向を突き止めるのも難しい事ではありませんでした。しかし、そこで彼らを待っていたのは異様な光景でした。木々の間を太い蔦や茨が複雑に絡み合い、大きな壁を形作っていたのです。力自慢の兵士たちが剣や斧を手にこの蔓を切り落とそうとしましたが、切り落としたそばから互いにくっついて元の壁に戻ってしまうため何度切ってもきりがありません。魔法でまとめて吹き飛ばしたり火を放って焼き払ったりといった事も試みられましたが、そこには蔓の壁だけでなく強力な結界が張ってあるらしく魔法も火も蔓に届く前にかき消えてしまいました。
そうこうしているうちに、お姫様と結婚するはずだった王子様までもがこの蔦の壁の前に駆け付け、自ら剣を取って挑みましたが、結果は同じでした。しかし、王子様は諦めません。兵士達に諦めの雰囲気が広がり、お父上である隣国の王様からも一旦帰還するようにとの命令を伝える使者が送られ、丈夫で鋭い剣を何本もだめにしてしまってもなお、王子様は来る日も来る日も壁に挑み続けます。やがて冬が訪れ、森に深い雪が降り積もりましたが、それでも王子様は壁の前から離れようとしませんでした。
そして長い冬も終わりも見せ始め、雪が溶けだした頃、王子様の頭上で鋭い鳴き声が聞こえてきたかと思うと、1人のブラックハーピーが森の木々をすり抜けて王子様の元へと飛んできました。周囲の兵士達が慌てて弓矢や魔法で攻撃しようとしますが、急な事で狙いの定まらない攻撃をブラックハーピーは軽々とかわし、王子様の目の前に何かを落としてどこかへと飛び去って行きます。見ると、それは鞘に納まった1本の剣でした。それを見た王子様は直感します。
「これを使え……という事なのか?」
そう呟いた王子様は剣を拾い上げ、鞘から抜き出しました。
「殿下。魔物の落とした物に触れるなど危険です。罠かもしれません」
お付きの者はそう言いましたが、王子様は聞く耳を持たずに蔓の壁へと向かいます。試しに一撃を加えてみると、蔦や茨はくっつくことなく切れたまま垂れ下がりました。それを確認した王子様は次々と蔓を切り払い、辛うじてできた隙間を通って壁の向こうへと姿を消していきます。兵士達が慌てて後に続こうとすると、切れた蔦や茨が再びくっついて通れなくなってしまいました。
蔦の壁を抜けきった王子様は、そこでようやく後ろに従者や兵士が誰も付いてきていない事に気づきました。強力な魔物が待ち構えているかもしれない場所へお姫様を救いに行くという時に独りきりにされた王子様は不安を覚えましたが、それでも引き返そうとはしませんでした。
「私は王子だから、あの人の婚約者だから姫を救いに行くのではない。1人の男として、あの人を助けたいから助けに行くのだ」
目の前にあるのが小さな小屋1軒だけだと気づいた王子様は少し拍子抜けしましたが、罠が仕掛けられてはいないかと恐る恐る小屋の周りを調べていきます。しかし、見つけたのは勝手口の近くで眠る何匹かのネズミだけでした。
それから王子様は意を決して小屋の中に飛び込みましたが、魔物どころか動くものの気配は全く感じられません。
「姫! 助けに参りました!」
大声で叫びながら小屋の中を探し回っていた王子様は、とうとう寝室にたどり着きます。そこではお姫様がベッドの上でお召し物を一切身に着けておらず、布団も被っていない状態で横になっていました。外では雪が深く降り積もるほどの寒さだというのに、魔法の力によるものなのか部屋の中は充分な暖かさに保たれています。
王子様はお姫様のあられもない姿を見てごくりと唾を飲み込みました。そしてしばらくの間呆然と見とれていた王子様は、はっと我に返ると顔を真っ赤にしながらお姫様の手を取ります。
「姫様。お迎えに参りました。お城に帰りましょう」
そして、王子様はお姫様の手の甲にそっと口づけをします。リリム様が小屋にかけていた魔法が解け、ネズミ達が起き上がり、ベッド脇で燃えかけの状態で止まっていたろうそくの火も再びゆらゆらと揺れ始めました。しかし、お姫様だけは目を覚ましません。
「姫様。起きてください」
王子様がもう1度声をかけますが、お姫様はやはり何の反応も返しませんでした。どうすればいいか王子様が考えあぐねていたその時、急にお姫様の頬が赤くなり、「んっ」と悩まし気な声を漏らして足をもぞもぞとこすり合わせました。ろうそくの火が再び動き出したことで香の力が働きだしたのです。そんな事など知る由もない王子様は、お姫様の色っぽい仕草にどきりとしました。
「姫様……」
王子様の心臓が高鳴り、頭の中がろうそくから放たれる暖かく甘ったるい空気と同じようにぼうっとし始めます。彼は気づけば身に付けている物を全て脱ぎすて、ベッドの上でお姫様に馬乗りになっていました。実はリリム様が用意した香は人間の男性に最も強く作用する代物で、その男性の理性を著しく麻痺させる力があるのです。愛するお姫様と結婚したい気持ちをそのお姫様自身の為に抑え付け続けていた王子様には、この香の力は特にてきめんでした。
「ずっとお慕いしておりました。お姫様」
そう呟くと、王子様はお姫様に覆いかぶさり、唇を奪いました。眠っているお姫様の口を強引に押し開け、そこにある舌に自分のそれを絡めていきます。さらには右手でお姫様の乳房を荒々しく揉みしだき、左手ではお姫様のお股にある茂みをかき分け、その奥にあるどろりとした泉に触れていきます。
「んっ、んんっ」
香の作用によるものか、お姫様は眠った状態で、しかも口を塞がれたまま王子様の愛撫に気持ちよさそうな声を漏らしていきます。それに興奮した王子様は左手をリリム様でさえ侵入しなかった場所へぐっと押し込んでいきました。暖かくぬめった感触が王子様の指を包み込み、彼は夢中でお姫様のおマンコの中を擦っていきます。さらには右手で乳房を揉みしだく力も強め、お姫様の舌を力強く吸いました。
「んっ、んっ、んんんんんんっ!」
お姫様の身体がぶるりと震えたかと思うと、彼女のおマンコからさっきまでより白っぽく濃厚でどろりとした液体が流れ出て王子様の指にまとわりつきます。それに気づいた王子様はお姫様から口を外し、体を起こしました。荒い息を吐きながら、自分の左手の指先を呆然と眺めます。
「姫。姫。姫……」
王子様は他の言葉を一切忘れてしまったかのように呟きながら、両手でお姫様の脚を掴み、大きく広げます。ぬるぬるのおマンコが露わになると、彼はそこに自分のおちんちんを宛がい、わずかな迷いやお姫様への気遣いも見せずに一気に押し込みました。
「んくっ、あ――ッ!」
お姫様のおマンコから痛々しく血があふれ、彼女は目を閉じたまま眉を寄せて苦悶の表情を見せます。しかし、それでも王子様は止まらず、むしろより荒々しく腰を動かし続けました。痛みに驚いたお姫様の身体が王子様のおちんちんを押し出そうとするかのようにぎゅっと締め付けますが、今の彼にはそれさえもが心地よく感じられます。
「姫! 姫! 姫! ……うっ」
王子様はひと際強く自分のおちんちんを押し込むと、そこで動きを止め、小さくぶるりと震えました。
王子様はしばらくの間射精の快楽に頭が真っ白になった状態のまま呆然としていましたが、そこでようやく自分が何をしているのかを理解し、顔を真っ青にしました。言葉を発するどころか口を閉じる事もできないまま唇をわなわなと振るわせ、ゆっくりと腰を引いていきます。お姫様のおマンコから赤と白の液体が漏れ出し、シーツには赤黒い染みができていました。そして、震える王子様の目の前で、ずっと閉じていたお姫様の瞼がゆっくりと押し上げられました。
「王子……様?」
お姫様はぼんやりとした表情のまま、ゆっくりと上半身を起き上がらせようとします。
「あれ? どうして貴方まで裸になって――いたっ!」
顔をしかめたお姫様は、自分のお股のあたりを見下ろしました。それを見れば彼女の身に何が起きたのかは一目瞭然です。
「姫……いや、これは、その」
王子様は慌てて弁解するそぶりを見せましたが、言葉が出てこなくなると突然ベッドから降り、床に転がっている自分の装備から1本の小刀を掴むと鞘から抜き取りました。そして、それを自分の喉に突きつけました。
「王子様!?」
お姫様は目の前の光景に唖然としました。身体の内側が引き裂かれたような激しい痛みを感じたかと思うと、目の前で王子様が自害しようとしていたからです。
「お、お待ちになってください。私には何がなんだかさっぱり解りません」
「姫。私は貴女に、取り返しのつかない事をしてしまったのです」
王子様の目から涙が溢れます。
「私は貴女を悲しませるような真似だけはしたくないと思っていました。貴女が私との結婚をお望みにならないのなら、私はそのチャンスさえも喜んで捨てようと」
それを聞いたお姫様は、慌てて口を開きました。
「違うんです王子様。私は、その……」
「でも結局、私は自分の汚い欲望に負けてしまった。結婚を無理強いするよりもっと酷い事をしてしまいました。どのような償いをしても、お詫びのしようがありません」
小刀の先が震えながらも王子様の喉元に近づいていきます。お姫様はそれを止めなければと思い、慌てて身を乗り出そうとしますが、ずっと眠っていたためか身体が思うように動きません。
「そうじゃないんです。私は……」
とうとうお姫様はバランスを崩し、ベッドから落ちてしまいました。
「姫。ご無理をなさってはいけません」
自分を気遣うような言葉を聞き、逆に彼女は強く念じました。何をしているの私の身体。早く動いて王子様を止めなさい、と。
その時、お姫様の身体から何かが飛び出し、手足よりも速く動きました。王子様の手から小刀を叩き落とします。それは、先がハート型になった尻尾でした。
「何、これ」
王子様の目の前で、お姫様は驚愕に目を大きく開きながら自分の腰から生えてきたものを見上げます。その時、急に彼女の表情が歪み、床の上にうずくまりました。
「姫!?」
「あぐっ、何なの、これ。からだが、あつい」
お姫様がうずくまった姿勢のまま床の上に転がるのを見た王子様は、彼女の背中にある数えきれない鞭の跡にぎょっとしました。しかしその時、彼にとってもっと驚くべき事が起こります。その傷跡が眩い光を放ったかと思うと、砂浜の波が引いていくようにすうっと消えて行ったのです。そして、彼女がひと際大きな叫び声を上げました。
「あああああっ!」
「姫? 大丈夫ですか?」
王子様もどうすればいいのか解らずに慌てて声をかけます。しかし、お姫様の顔を見るとそこに浮かんでいるのは苦痛の表情ではありませんでした。
「何これ。とても、気持ち、いひぃっ!」
お姫様は叫びながら、今度は海老ぞりの体勢になりました。顔は涙とよだれにまみれ、お股からもぷしっと小さな音をさせて白っぽい透明な液体を精液や血液と一緒に吹きだしています。それから、めりめりと何かがきしむ音がしたかと思うと、彼女の腰からこうもりのような翼が、頭からヤギのような角が飛び出してきました。
実はリリム様の魔法は、お姫様が飲み込んだリリム様の魔力をも「眠った」状態にしていました。しかしその濃厚なサキュバスの魔力は、お姫様が眠っている間に確実に彼女の身体に眠る精と混ざり合い、王子様の精を受けたことに反応して一気に「目を覚まし」、レッサーサキュバスの過程をすっとばしてお姫様をいきなりサキュバスに変えてしまったのでした。
「姫……?」
まだ荒い息を吐いているお姫様の顔を、王子様は心配そうな表情でのぞき込もうとします。お姫様はそんな彼を見上げると、情欲に染まった顔で頬に笑みを浮かべます。そして、お姫様は王子様の両肩を掴んで飛び上がり、彼を床に押さえつけてしまいました。
「王子様ぁ……」
お姫様は嬉しそうな声で呟くと、強引に王子様の唇を奪いました。舌を王子様の口の中にまで侵入させていきます。彼は慌ててお姫様の両肩を掴むと、彼女を引き離しました。
「目を覚ましてください、お姫様。私は貴女が結婚したくないとずっと仰ってきた相手なのですよ?」
自分で言いながら悲しい気持ちに胸が張り裂けそうになりましたが、王子様は勇気を振り絞って言います。すると、お姫様の顔も悲しげな表情になりました。
「本当に、そう単純に考える事ができれば楽でしたのに」
そして、お姫様は語り始めます。彼女は確かに自分の結婚が政治の為に行われるのに反発し、誰かと結婚するなら自分やその相手の為だけにしたいと思っていました。
「しかし、そういう相手を想像したとき思い浮かぶのも、やはり貴方だったんです」
7歳の時の顔合わせの場でお姫様が泣き出した時、その場に居合わせた者は皆この世間知らずな娘にいかにして現実を理解させるかという事しか考えていませんでした。しかし、そんな中で1人だけ、お姫様に自分達の話を一方的に聞かせようとするのではなく、彼女の言葉に耳を傾ける者がいました。王子様です。
「あれから、私は貴方との結婚を無理強いさせられたくないと思い続けながらも、心の別の所ではこの人と結婚するんだったら別にいいんじゃないかという気持ちが芽生えていました。貴方への想いが深くなるにつれて、その気持ちはどんどんエスカレートしていきました。むしろこの結婚話を自分のために利用してしまえ。あの時の王子様の厚意も全部踏みにじってしまえと」
自分が将来王子様に奉仕し、そのお世継ぎを身ごもるべき立場にあるのだと言い聞かせられた時、お姫様は自分が道具であるかのような物言いに憤慨しながらも、一方で王子様に奉仕する自分を想像し、お腹の奥が熱くなるのを感じていました。彼に良いように身体をまさぐられるのを想像しながら、ベッドの上で自分の身体を貪った事も1度や2度ではありません。それを咎められて鞭で打たれたことは、お姫様の心を余計に引き裂いていきました。王子様の子供を作れと言いながら、そのための行為を望むことを許されなかったという事が。
「これは罰なのだと思いました。貴方の厚意に甘え、そのためにその厚意を踏みにじるような事を考えてしまった浅ましい私への罰なのだと」
そう言うと、お姫様は自分の部屋に置いてきた遺書の文面を思い出しました。「あの国への贈り物が欲しいのなら、私の骨を王子様の部屋にでも飾るように言ってください」それには結婚話に反発しながらも、同時に王子様の隣にいたいとも思ってしまうお姫様の相反する気持ちが両方込められていたのです。
「でも、それも『お姉様』にサキュバスにしていただいたおかげて吹っ切れました」
お姫様は身体を引き、ついさっき自分の身体を無理やり貫いた王子様のおちんちんを見下ろしました。その目には犯された怒りも恐怖も感じられません。
「浅ましくてもいい。やっぱり私は貴方と結婚したい。何度でも貴方と交わり、何人でも貴方の子供を産みたい」
彼女は大きく口を開け、王子様のおちんちんをおいしそうに舐め始めました。腰では翼と尻尾が嬉しそうにゆらゆらと揺れています。
「はむっ、ちゅっ、れろっ、やっぱりおいしい。王子様の欲望と、私の引き裂かれた純潔の味。これがさっきまで私のココに入っていたんだ……」
お姫様は感慨深げに呟くと、自分のおマンコにそっと手を伸ばしました。ついさっきまで中に異物を受け入れたことのないその場所に、いきなり2本の指を突っ込みます。ぐちゅりという湿った音とともに、王子様の精液がお姫様の指を伝って流れ落ちてきました。
「んっ、んぶっ」
嬉しそうな喘ぎ声と共に、王子様を攻める頭の動きがさらに激しくなっていきます。
「姫っ、そんなに、激しく、したら」
王子様はお姫様を止めようと、彼女の頭を掴みました。しかし、運の悪いことに、彼の手はお姫様の頭に生えた角に触れてしまいます。サキュバスにとっては男性に触れられると一気に理性が吹き飛んでしまう部分に。お姫様の目がより情欲に蕩け、その動きは却って一層激しく艶めかしいものに変わっていきました。
「あっ、ひめ、出るっ」
おちんちんから精液が激しく吹きだし、お姫様はそれを1滴も逃すまいとするように強く吸い上げました。
「んくっ、んくっ」
王子様の視点からはお姫様の表情は全く見えませんが、精液を飲み下していく音さえも淫らに感じられます。彼女はおちんちんの中に残った分まで丁寧にお掃除すると、今度はそれをそっと握り、跨るようにして上に陣取りました。
「王子様。冷たく鋭い剣でご自身を貫くくらいなら、私をこの暖かく太い剣で貫いてください」
それから、お姫様は返事も確認しないまま一気に腰を下ろしました。
「んあっ、やっぱり、おっきい……!」
気持ちよさそうに身体をぶるりと振るわせると、彼女は王子様を見下ろし、意地悪な笑みを浮かべて言いました。
「先に貴方の方から私を犯しておきながら、ご自分が犯されるのは嫌だとか仰いませんよね?」
「ああ、あああ……」
王子様はお姫様が吐露した欲望とサキュバスの身体の魔性の快楽に圧倒され、身動きが取れなくなっていました。
「先ほども申し上げたように、私は貴方と結ばれるためならどんなに浅ましい手でも使うと決めました。だからさっき貴方からされた事を許すなんて言いません。『責任を取らせる』という口実に使います」
それからお姫様は王子様の上半身を抱き寄せ、対面座位の体勢で囁きました。
「貴方は女の子に手を出しておきながら逃げるようなお人では無いですよね? 私がサキュバスになってしまっても、ちゃんと結婚してくださいますよね?」
王子様はそれに言葉で答える代わりに、お姫様のお尻を掴んで上下に動かし始めました。それに応えるように、彼女も自らの腰を動かしていきます。
「そう、です。私の、ナカに、ああっ、いくらでも、吐き出してください。私をにんしんっ、させて、ください」
「姫! 姫!」
その時、お姫様の腰で嬉しそうに揺れる翼と尻尾が、ふと王子様の目に留まりました。もしかすると角だけでなくこっちも――。そう直感した彼は腰の部分に繋がっている尻尾の付け根を掴みます。すると、お姫様の身体がびくりと震え、おマンコの内側がおちんちんをいっそう強く締め付けました。
「ひうっ」
「すみません。痛かったですか」
「いえ。そうじゃくて、なんというか、お腹の中に気持ちいいのがビリビリってきました。もう1度してもらっていいですか」
その反応に興奮した王子様は、手の皮がすりむけそうに見えてくるほどに、全力でお姫様の尻尾を擦りました。
「あっ、いいっ! これ、ゾクゾクする。おマンコの中がキュウって、子宮がゾワゾワって、切なく、なっちゃう」
「姫。そんなにきつく締めたら、私も、また」
おマンコの内側の複雑なひだとうねりに、王子様は再び甘い痺れがこみ上げて来るのを感じます。
「あはっ、王子様の、もっとおっきくなって、ビクビクしてる。出して、はやく、ちょうだ――ああっ!」
3度目の射精にも関わらず、それは勢いが収まる事も忘れてしまったように勢いよく飛び出していきました。お姫様のおマンコも抱きしめるように王子様のおちんちんをきゅう、と締め付け、精液を絞り出すように動きます。
「あっ、すごい。私のナカが、ゴクゴクしてる。子宮が、貴方の精液で、喜んでる」
2人は繋がった体勢のまま、しっかりと抱き合って交わりの余韻に浸っていました。そしてしばらく経ってその熱がようやく冷めてくると、お姫様は名残惜しそうに王子様の身体から上半身を離し、淫靡な笑みを浮かべて囁きます。
「ベッドに行きましょうか」
ベッドの上に移ってからも、2人は朝になるまで殆ど眠らずに過ごしました。王子様のお腹の虫が鳴く音が聞こえたので小屋の台所を漁ってみると、ドランスパン(編注:これはドラゴニアの家庭料理で、竜のブレスによって焼き上げられた表面の硬いパンです)とホルスタウロスのチーズが棚にしまってあったので2人はそれを朝ごはんに食べました。それから2人が揃って小屋の外に出ていくと、それまで周りをぐるりと取り囲んでいた茨の壁がひとりでにするするとほどけ、その外で兵士達や従者達がこちらを伺っているのが見えました。2人が小屋の中でひと晩過ごしている間にも外では何日も経っていたようで、辺りはすっかり春になっていました。
王子様がお姫様を連れてお城に戻ると、お姫様のお父上である王様は娘に言いました。
「私達はおまえが教団国家の妃にふさわしい女性に育つようにと心血を注いできた。それがおまえだけでなく、私達が守るべきこの国の国民達を守るのに最良の選択だと考えていたからだ」
お姫様は自分が王女の座を追放されるのではと思い、肩を震わせます。すると、王子様がその腕をそっと握りました。しかし、王様は表情を柔らかくしてこう続けました。
「だが、お前が残していたという書き置きを見て私は目を覚ました。教団の言いなりになる前に、為政者である以前に親として、まずは私達が娘を守るという務めを全力で果たすべきだったのだと。本当にすまなかった」
そう言って、王様は娘に頭を下げました。王子様は王様に言いました。
「陛下。姫の身に起きたことを知れば、私の父上は婚約を取り下げようとするでしょう。しかし、それでもどうか、私に姫との結婚を許していただけないでしょうか。私は王子の座から追放されてしまうでしょうし、最悪の場合祖国を相手に剣を取るような事にもなるでしょう。それでも1人の男として姫の隣に立ち、この命を懸けて姫をお守りしたいのです」
お姫様がこの王子様の申し出を喜んでお受けするつもりであることを確認すると、王様も2人の結婚を喜び、お城の礼拝堂で結婚式が執り行われました。
王様はお姫様がサキュバスに変わってしまった事を公表し、同時に王国を親魔物領とする事を表明しました。お姫様のご両親である王様と王妃様は、これで自国が周辺諸国から攻撃を受けるだろうと考え、その時には自分達の首を差し出してでも娘夫婦を守ろうと覚悟しました。しかし、その後彼らも予期していなかった事が起こります。近隣のいくつかの国が同様に親魔物領へと転換し、そうでない国も1カ国としてお姫様の国に攻撃を仕掛けるようなことはしなかったのです。これはもちろん理由の1つにはお姫様がサキュバスになってもなお国内外の多くの人達から慕われていたというのがありますが、別の理由として、お姫様を眠らせた例のリリム様が密かに周囲の国々を回り、人間のふりをして密かに暮らしている魔物娘やその夫達に働きかけた成果でもありました。そうした人達の中には国の政治に大きくかかわる貴族などの高い身分の者達も存在していたのです。これはリリム様にとって、1歩間違えばより大きな戦火や対立をもたらしかねない危険な賭けでもありました。
自身や周囲の国が新しい時代を迎えるのを見届けた王様は、自ら王位を退き、お姫様を新たな女王とすることを宣言しました。
一方、王子様の祖国である隣国では、お父上である王様が窮地に立たされていました。王位継承者がサキュバスと結婚したことについて、説明を求める使者が教団やより大きな教国からひっきりなしに押しかけてきたからです。返答に困った王様は、とうとう王子様の所に兵を送って息子夫婦を捕らえて処刑する事を計画しましたが、直前で計画が漏れ、王侯貴族から農民や下級兵士に至るまで多くの国民からの猛反対にあいました。そして王様はとうとう退位を迫られ、互いの国の同盟を結ぶために政略結婚した王妃様、すなわち王子様のお母上からも離縁を言い渡されてしまいました。
そして、サキュバスのお姫様と結婚した王子様が新たな王様として指名されることとなりました。
こうして2つの国は新しい親魔物国家として1つになり、新しい国の王様と女王様になった王子様とお姫様は忙しい日々を過ごしていました。そんな中、新しい女王様はサキュバスとインキュバスのかわいらしい双子を出産しました。それは、彼女がサキュバスに変わるちょっと前、王子様が眠っているお姫様を襲ってしまったときに身ごもった子供でした。娘の方はその国の言葉で「夜明けの光」を意味するオーロラと、息子の方は「日の光」を意味するジュールと名付けられ、両親と同じように国内外の多くの人達から愛される美しいお姫様と王子様へと成長していったそうです。そのオーロラ姫が友人達と楽しく糸紡ぎをする事を禁じられたり、ジュール王子共々本人の望まない結婚を強いられたりしなかったことは、もちろん言うまでもないでしょう。
幸せな結婚と聞くとロマンチックな大恋愛の末にあるものを夢見る人も多いでしょうが、結婚は旅の始まりであって終わりではないという事を忘れてはいけません。
結婚に至るまでの過程ももちろん大事ですが、その後互いに良好な関係や距離感を築き守っていく覚悟も同じくらいかそれ以上に大事なものなのです。
例えどれだけ結婚相手の条件が良かったとしても、当人達にその覚悟が持てないような結婚であるとすれば、それは決して幸先のいい旅立ちとは言えません。
・編者あとがき
現在の魔王様に代替わりし、全ての魔物が淫魔へと変化してから間もない時代、以前から人間の欲望に精通し、人間の男性を「飼う」者も少なくなかったサキュバスや彼女達に飼われていた人間達の存在が、人間と魔物娘の共存する領域である親魔物領の構築に大きな貢献を果たしたと言われており、この話はそういった歴史的背景が元になっていると考えられています。
また、この話の冒頭で魔法使いに化けたリリム様が王様に不妊治療の薬を処方する場面がありますが、反魔物領では(魔物娘にとっては色々な意味で考えられない事ですが)事情があって堕胎を希望する妊婦に対して子供を流産させる毒薬を処方した魔法使いがダークメイジであると決めつけられて捕らえられた、という事が実際に起きていたという記録が存在しています。
王国はすぐさま集められるだけの大軍を送りました。真夜中な上にかなりの速さだったとはいえ、リリム様はお姫様を抱えて飛ぶときにできるだけ人目に付きそうな場所を選んで通っていったため、兵士達がお姫様の連れていかれた方向を突き止めるのも難しい事ではありませんでした。しかし、そこで彼らを待っていたのは異様な光景でした。木々の間を太い蔦や茨が複雑に絡み合い、大きな壁を形作っていたのです。力自慢の兵士たちが剣や斧を手にこの蔓を切り落とそうとしましたが、切り落としたそばから互いにくっついて元の壁に戻ってしまうため何度切ってもきりがありません。魔法でまとめて吹き飛ばしたり火を放って焼き払ったりといった事も試みられましたが、そこには蔓の壁だけでなく強力な結界が張ってあるらしく魔法も火も蔓に届く前にかき消えてしまいました。
そうこうしているうちに、お姫様と結婚するはずだった王子様までもがこの蔦の壁の前に駆け付け、自ら剣を取って挑みましたが、結果は同じでした。しかし、王子様は諦めません。兵士達に諦めの雰囲気が広がり、お父上である隣国の王様からも一旦帰還するようにとの命令を伝える使者が送られ、丈夫で鋭い剣を何本もだめにしてしまってもなお、王子様は来る日も来る日も壁に挑み続けます。やがて冬が訪れ、森に深い雪が降り積もりましたが、それでも王子様は壁の前から離れようとしませんでした。
そして長い冬も終わりも見せ始め、雪が溶けだした頃、王子様の頭上で鋭い鳴き声が聞こえてきたかと思うと、1人のブラックハーピーが森の木々をすり抜けて王子様の元へと飛んできました。周囲の兵士達が慌てて弓矢や魔法で攻撃しようとしますが、急な事で狙いの定まらない攻撃をブラックハーピーは軽々とかわし、王子様の目の前に何かを落としてどこかへと飛び去って行きます。見ると、それは鞘に納まった1本の剣でした。それを見た王子様は直感します。
「これを使え……という事なのか?」
そう呟いた王子様は剣を拾い上げ、鞘から抜き出しました。
「殿下。魔物の落とした物に触れるなど危険です。罠かもしれません」
お付きの者はそう言いましたが、王子様は聞く耳を持たずに蔓の壁へと向かいます。試しに一撃を加えてみると、蔦や茨はくっつくことなく切れたまま垂れ下がりました。それを確認した王子様は次々と蔓を切り払い、辛うじてできた隙間を通って壁の向こうへと姿を消していきます。兵士達が慌てて後に続こうとすると、切れた蔦や茨が再びくっついて通れなくなってしまいました。
蔦の壁を抜けきった王子様は、そこでようやく後ろに従者や兵士が誰も付いてきていない事に気づきました。強力な魔物が待ち構えているかもしれない場所へお姫様を救いに行くという時に独りきりにされた王子様は不安を覚えましたが、それでも引き返そうとはしませんでした。
「私は王子だから、あの人の婚約者だから姫を救いに行くのではない。1人の男として、あの人を助けたいから助けに行くのだ」
目の前にあるのが小さな小屋1軒だけだと気づいた王子様は少し拍子抜けしましたが、罠が仕掛けられてはいないかと恐る恐る小屋の周りを調べていきます。しかし、見つけたのは勝手口の近くで眠る何匹かのネズミだけでした。
それから王子様は意を決して小屋の中に飛び込みましたが、魔物どころか動くものの気配は全く感じられません。
「姫! 助けに参りました!」
大声で叫びながら小屋の中を探し回っていた王子様は、とうとう寝室にたどり着きます。そこではお姫様がベッドの上でお召し物を一切身に着けておらず、布団も被っていない状態で横になっていました。外では雪が深く降り積もるほどの寒さだというのに、魔法の力によるものなのか部屋の中は充分な暖かさに保たれています。
王子様はお姫様のあられもない姿を見てごくりと唾を飲み込みました。そしてしばらくの間呆然と見とれていた王子様は、はっと我に返ると顔を真っ赤にしながらお姫様の手を取ります。
「姫様。お迎えに参りました。お城に帰りましょう」
そして、王子様はお姫様の手の甲にそっと口づけをします。リリム様が小屋にかけていた魔法が解け、ネズミ達が起き上がり、ベッド脇で燃えかけの状態で止まっていたろうそくの火も再びゆらゆらと揺れ始めました。しかし、お姫様だけは目を覚ましません。
「姫様。起きてください」
王子様がもう1度声をかけますが、お姫様はやはり何の反応も返しませんでした。どうすればいいか王子様が考えあぐねていたその時、急にお姫様の頬が赤くなり、「んっ」と悩まし気な声を漏らして足をもぞもぞとこすり合わせました。ろうそくの火が再び動き出したことで香の力が働きだしたのです。そんな事など知る由もない王子様は、お姫様の色っぽい仕草にどきりとしました。
「姫様……」
王子様の心臓が高鳴り、頭の中がろうそくから放たれる暖かく甘ったるい空気と同じようにぼうっとし始めます。彼は気づけば身に付けている物を全て脱ぎすて、ベッドの上でお姫様に馬乗りになっていました。実はリリム様が用意した香は人間の男性に最も強く作用する代物で、その男性の理性を著しく麻痺させる力があるのです。愛するお姫様と結婚したい気持ちをそのお姫様自身の為に抑え付け続けていた王子様には、この香の力は特にてきめんでした。
「ずっとお慕いしておりました。お姫様」
そう呟くと、王子様はお姫様に覆いかぶさり、唇を奪いました。眠っているお姫様の口を強引に押し開け、そこにある舌に自分のそれを絡めていきます。さらには右手でお姫様の乳房を荒々しく揉みしだき、左手ではお姫様のお股にある茂みをかき分け、その奥にあるどろりとした泉に触れていきます。
「んっ、んんっ」
香の作用によるものか、お姫様は眠った状態で、しかも口を塞がれたまま王子様の愛撫に気持ちよさそうな声を漏らしていきます。それに興奮した王子様は左手をリリム様でさえ侵入しなかった場所へぐっと押し込んでいきました。暖かくぬめった感触が王子様の指を包み込み、彼は夢中でお姫様のおマンコの中を擦っていきます。さらには右手で乳房を揉みしだく力も強め、お姫様の舌を力強く吸いました。
「んっ、んっ、んんんんんんっ!」
お姫様の身体がぶるりと震えたかと思うと、彼女のおマンコからさっきまでより白っぽく濃厚でどろりとした液体が流れ出て王子様の指にまとわりつきます。それに気づいた王子様はお姫様から口を外し、体を起こしました。荒い息を吐きながら、自分の左手の指先を呆然と眺めます。
「姫。姫。姫……」
王子様は他の言葉を一切忘れてしまったかのように呟きながら、両手でお姫様の脚を掴み、大きく広げます。ぬるぬるのおマンコが露わになると、彼はそこに自分のおちんちんを宛がい、わずかな迷いやお姫様への気遣いも見せずに一気に押し込みました。
「んくっ、あ――ッ!」
お姫様のおマンコから痛々しく血があふれ、彼女は目を閉じたまま眉を寄せて苦悶の表情を見せます。しかし、それでも王子様は止まらず、むしろより荒々しく腰を動かし続けました。痛みに驚いたお姫様の身体が王子様のおちんちんを押し出そうとするかのようにぎゅっと締め付けますが、今の彼にはそれさえもが心地よく感じられます。
「姫! 姫! 姫! ……うっ」
王子様はひと際強く自分のおちんちんを押し込むと、そこで動きを止め、小さくぶるりと震えました。
王子様はしばらくの間射精の快楽に頭が真っ白になった状態のまま呆然としていましたが、そこでようやく自分が何をしているのかを理解し、顔を真っ青にしました。言葉を発するどころか口を閉じる事もできないまま唇をわなわなと振るわせ、ゆっくりと腰を引いていきます。お姫様のおマンコから赤と白の液体が漏れ出し、シーツには赤黒い染みができていました。そして、震える王子様の目の前で、ずっと閉じていたお姫様の瞼がゆっくりと押し上げられました。
「王子……様?」
お姫様はぼんやりとした表情のまま、ゆっくりと上半身を起き上がらせようとします。
「あれ? どうして貴方まで裸になって――いたっ!」
顔をしかめたお姫様は、自分のお股のあたりを見下ろしました。それを見れば彼女の身に何が起きたのかは一目瞭然です。
「姫……いや、これは、その」
王子様は慌てて弁解するそぶりを見せましたが、言葉が出てこなくなると突然ベッドから降り、床に転がっている自分の装備から1本の小刀を掴むと鞘から抜き取りました。そして、それを自分の喉に突きつけました。
「王子様!?」
お姫様は目の前の光景に唖然としました。身体の内側が引き裂かれたような激しい痛みを感じたかと思うと、目の前で王子様が自害しようとしていたからです。
「お、お待ちになってください。私には何がなんだかさっぱり解りません」
「姫。私は貴女に、取り返しのつかない事をしてしまったのです」
王子様の目から涙が溢れます。
「私は貴女を悲しませるような真似だけはしたくないと思っていました。貴女が私との結婚をお望みにならないのなら、私はそのチャンスさえも喜んで捨てようと」
それを聞いたお姫様は、慌てて口を開きました。
「違うんです王子様。私は、その……」
「でも結局、私は自分の汚い欲望に負けてしまった。結婚を無理強いするよりもっと酷い事をしてしまいました。どのような償いをしても、お詫びのしようがありません」
小刀の先が震えながらも王子様の喉元に近づいていきます。お姫様はそれを止めなければと思い、慌てて身を乗り出そうとしますが、ずっと眠っていたためか身体が思うように動きません。
「そうじゃないんです。私は……」
とうとうお姫様はバランスを崩し、ベッドから落ちてしまいました。
「姫。ご無理をなさってはいけません」
自分を気遣うような言葉を聞き、逆に彼女は強く念じました。何をしているの私の身体。早く動いて王子様を止めなさい、と。
その時、お姫様の身体から何かが飛び出し、手足よりも速く動きました。王子様の手から小刀を叩き落とします。それは、先がハート型になった尻尾でした。
「何、これ」
王子様の目の前で、お姫様は驚愕に目を大きく開きながら自分の腰から生えてきたものを見上げます。その時、急に彼女の表情が歪み、床の上にうずくまりました。
「姫!?」
「あぐっ、何なの、これ。からだが、あつい」
お姫様がうずくまった姿勢のまま床の上に転がるのを見た王子様は、彼女の背中にある数えきれない鞭の跡にぎょっとしました。しかしその時、彼にとってもっと驚くべき事が起こります。その傷跡が眩い光を放ったかと思うと、砂浜の波が引いていくようにすうっと消えて行ったのです。そして、彼女がひと際大きな叫び声を上げました。
「あああああっ!」
「姫? 大丈夫ですか?」
王子様もどうすればいいのか解らずに慌てて声をかけます。しかし、お姫様の顔を見るとそこに浮かんでいるのは苦痛の表情ではありませんでした。
「何これ。とても、気持ち、いひぃっ!」
お姫様は叫びながら、今度は海老ぞりの体勢になりました。顔は涙とよだれにまみれ、お股からもぷしっと小さな音をさせて白っぽい透明な液体を精液や血液と一緒に吹きだしています。それから、めりめりと何かがきしむ音がしたかと思うと、彼女の腰からこうもりのような翼が、頭からヤギのような角が飛び出してきました。
実はリリム様の魔法は、お姫様が飲み込んだリリム様の魔力をも「眠った」状態にしていました。しかしその濃厚なサキュバスの魔力は、お姫様が眠っている間に確実に彼女の身体に眠る精と混ざり合い、王子様の精を受けたことに反応して一気に「目を覚まし」、レッサーサキュバスの過程をすっとばしてお姫様をいきなりサキュバスに変えてしまったのでした。
「姫……?」
まだ荒い息を吐いているお姫様の顔を、王子様は心配そうな表情でのぞき込もうとします。お姫様はそんな彼を見上げると、情欲に染まった顔で頬に笑みを浮かべます。そして、お姫様は王子様の両肩を掴んで飛び上がり、彼を床に押さえつけてしまいました。
「王子様ぁ……」
お姫様は嬉しそうな声で呟くと、強引に王子様の唇を奪いました。舌を王子様の口の中にまで侵入させていきます。彼は慌ててお姫様の両肩を掴むと、彼女を引き離しました。
「目を覚ましてください、お姫様。私は貴女が結婚したくないとずっと仰ってきた相手なのですよ?」
自分で言いながら悲しい気持ちに胸が張り裂けそうになりましたが、王子様は勇気を振り絞って言います。すると、お姫様の顔も悲しげな表情になりました。
「本当に、そう単純に考える事ができれば楽でしたのに」
そして、お姫様は語り始めます。彼女は確かに自分の結婚が政治の為に行われるのに反発し、誰かと結婚するなら自分やその相手の為だけにしたいと思っていました。
「しかし、そういう相手を想像したとき思い浮かぶのも、やはり貴方だったんです」
7歳の時の顔合わせの場でお姫様が泣き出した時、その場に居合わせた者は皆この世間知らずな娘にいかにして現実を理解させるかという事しか考えていませんでした。しかし、そんな中で1人だけ、お姫様に自分達の話を一方的に聞かせようとするのではなく、彼女の言葉に耳を傾ける者がいました。王子様です。
「あれから、私は貴方との結婚を無理強いさせられたくないと思い続けながらも、心の別の所ではこの人と結婚するんだったら別にいいんじゃないかという気持ちが芽生えていました。貴方への想いが深くなるにつれて、その気持ちはどんどんエスカレートしていきました。むしろこの結婚話を自分のために利用してしまえ。あの時の王子様の厚意も全部踏みにじってしまえと」
自分が将来王子様に奉仕し、そのお世継ぎを身ごもるべき立場にあるのだと言い聞かせられた時、お姫様は自分が道具であるかのような物言いに憤慨しながらも、一方で王子様に奉仕する自分を想像し、お腹の奥が熱くなるのを感じていました。彼に良いように身体をまさぐられるのを想像しながら、ベッドの上で自分の身体を貪った事も1度や2度ではありません。それを咎められて鞭で打たれたことは、お姫様の心を余計に引き裂いていきました。王子様の子供を作れと言いながら、そのための行為を望むことを許されなかったという事が。
「これは罰なのだと思いました。貴方の厚意に甘え、そのためにその厚意を踏みにじるような事を考えてしまった浅ましい私への罰なのだと」
そう言うと、お姫様は自分の部屋に置いてきた遺書の文面を思い出しました。「あの国への贈り物が欲しいのなら、私の骨を王子様の部屋にでも飾るように言ってください」それには結婚話に反発しながらも、同時に王子様の隣にいたいとも思ってしまうお姫様の相反する気持ちが両方込められていたのです。
「でも、それも『お姉様』にサキュバスにしていただいたおかげて吹っ切れました」
お姫様は身体を引き、ついさっき自分の身体を無理やり貫いた王子様のおちんちんを見下ろしました。その目には犯された怒りも恐怖も感じられません。
「浅ましくてもいい。やっぱり私は貴方と結婚したい。何度でも貴方と交わり、何人でも貴方の子供を産みたい」
彼女は大きく口を開け、王子様のおちんちんをおいしそうに舐め始めました。腰では翼と尻尾が嬉しそうにゆらゆらと揺れています。
「はむっ、ちゅっ、れろっ、やっぱりおいしい。王子様の欲望と、私の引き裂かれた純潔の味。これがさっきまで私のココに入っていたんだ……」
お姫様は感慨深げに呟くと、自分のおマンコにそっと手を伸ばしました。ついさっきまで中に異物を受け入れたことのないその場所に、いきなり2本の指を突っ込みます。ぐちゅりという湿った音とともに、王子様の精液がお姫様の指を伝って流れ落ちてきました。
「んっ、んぶっ」
嬉しそうな喘ぎ声と共に、王子様を攻める頭の動きがさらに激しくなっていきます。
「姫っ、そんなに、激しく、したら」
王子様はお姫様を止めようと、彼女の頭を掴みました。しかし、運の悪いことに、彼の手はお姫様の頭に生えた角に触れてしまいます。サキュバスにとっては男性に触れられると一気に理性が吹き飛んでしまう部分に。お姫様の目がより情欲に蕩け、その動きは却って一層激しく艶めかしいものに変わっていきました。
「あっ、ひめ、出るっ」
おちんちんから精液が激しく吹きだし、お姫様はそれを1滴も逃すまいとするように強く吸い上げました。
「んくっ、んくっ」
王子様の視点からはお姫様の表情は全く見えませんが、精液を飲み下していく音さえも淫らに感じられます。彼女はおちんちんの中に残った分まで丁寧にお掃除すると、今度はそれをそっと握り、跨るようにして上に陣取りました。
「王子様。冷たく鋭い剣でご自身を貫くくらいなら、私をこの暖かく太い剣で貫いてください」
それから、お姫様は返事も確認しないまま一気に腰を下ろしました。
「んあっ、やっぱり、おっきい……!」
気持ちよさそうに身体をぶるりと振るわせると、彼女は王子様を見下ろし、意地悪な笑みを浮かべて言いました。
「先に貴方の方から私を犯しておきながら、ご自分が犯されるのは嫌だとか仰いませんよね?」
「ああ、あああ……」
王子様はお姫様が吐露した欲望とサキュバスの身体の魔性の快楽に圧倒され、身動きが取れなくなっていました。
「先ほども申し上げたように、私は貴方と結ばれるためならどんなに浅ましい手でも使うと決めました。だからさっき貴方からされた事を許すなんて言いません。『責任を取らせる』という口実に使います」
それからお姫様は王子様の上半身を抱き寄せ、対面座位の体勢で囁きました。
「貴方は女の子に手を出しておきながら逃げるようなお人では無いですよね? 私がサキュバスになってしまっても、ちゃんと結婚してくださいますよね?」
王子様はそれに言葉で答える代わりに、お姫様のお尻を掴んで上下に動かし始めました。それに応えるように、彼女も自らの腰を動かしていきます。
「そう、です。私の、ナカに、ああっ、いくらでも、吐き出してください。私をにんしんっ、させて、ください」
「姫! 姫!」
その時、お姫様の腰で嬉しそうに揺れる翼と尻尾が、ふと王子様の目に留まりました。もしかすると角だけでなくこっちも――。そう直感した彼は腰の部分に繋がっている尻尾の付け根を掴みます。すると、お姫様の身体がびくりと震え、おマンコの内側がおちんちんをいっそう強く締め付けました。
「ひうっ」
「すみません。痛かったですか」
「いえ。そうじゃくて、なんというか、お腹の中に気持ちいいのがビリビリってきました。もう1度してもらっていいですか」
その反応に興奮した王子様は、手の皮がすりむけそうに見えてくるほどに、全力でお姫様の尻尾を擦りました。
「あっ、いいっ! これ、ゾクゾクする。おマンコの中がキュウって、子宮がゾワゾワって、切なく、なっちゃう」
「姫。そんなにきつく締めたら、私も、また」
おマンコの内側の複雑なひだとうねりに、王子様は再び甘い痺れがこみ上げて来るのを感じます。
「あはっ、王子様の、もっとおっきくなって、ビクビクしてる。出して、はやく、ちょうだ――ああっ!」
3度目の射精にも関わらず、それは勢いが収まる事も忘れてしまったように勢いよく飛び出していきました。お姫様のおマンコも抱きしめるように王子様のおちんちんをきゅう、と締め付け、精液を絞り出すように動きます。
「あっ、すごい。私のナカが、ゴクゴクしてる。子宮が、貴方の精液で、喜んでる」
2人は繋がった体勢のまま、しっかりと抱き合って交わりの余韻に浸っていました。そしてしばらく経ってその熱がようやく冷めてくると、お姫様は名残惜しそうに王子様の身体から上半身を離し、淫靡な笑みを浮かべて囁きます。
「ベッドに行きましょうか」
ベッドの上に移ってからも、2人は朝になるまで殆ど眠らずに過ごしました。王子様のお腹の虫が鳴く音が聞こえたので小屋の台所を漁ってみると、ドランスパン(編注:これはドラゴニアの家庭料理で、竜のブレスによって焼き上げられた表面の硬いパンです)とホルスタウロスのチーズが棚にしまってあったので2人はそれを朝ごはんに食べました。それから2人が揃って小屋の外に出ていくと、それまで周りをぐるりと取り囲んでいた茨の壁がひとりでにするするとほどけ、その外で兵士達や従者達がこちらを伺っているのが見えました。2人が小屋の中でひと晩過ごしている間にも外では何日も経っていたようで、辺りはすっかり春になっていました。
王子様がお姫様を連れてお城に戻ると、お姫様のお父上である王様は娘に言いました。
「私達はおまえが教団国家の妃にふさわしい女性に育つようにと心血を注いできた。それがおまえだけでなく、私達が守るべきこの国の国民達を守るのに最良の選択だと考えていたからだ」
お姫様は自分が王女の座を追放されるのではと思い、肩を震わせます。すると、王子様がその腕をそっと握りました。しかし、王様は表情を柔らかくしてこう続けました。
「だが、お前が残していたという書き置きを見て私は目を覚ました。教団の言いなりになる前に、為政者である以前に親として、まずは私達が娘を守るという務めを全力で果たすべきだったのだと。本当にすまなかった」
そう言って、王様は娘に頭を下げました。王子様は王様に言いました。
「陛下。姫の身に起きたことを知れば、私の父上は婚約を取り下げようとするでしょう。しかし、それでもどうか、私に姫との結婚を許していただけないでしょうか。私は王子の座から追放されてしまうでしょうし、最悪の場合祖国を相手に剣を取るような事にもなるでしょう。それでも1人の男として姫の隣に立ち、この命を懸けて姫をお守りしたいのです」
お姫様がこの王子様の申し出を喜んでお受けするつもりであることを確認すると、王様も2人の結婚を喜び、お城の礼拝堂で結婚式が執り行われました。
王様はお姫様がサキュバスに変わってしまった事を公表し、同時に王国を親魔物領とする事を表明しました。お姫様のご両親である王様と王妃様は、これで自国が周辺諸国から攻撃を受けるだろうと考え、その時には自分達の首を差し出してでも娘夫婦を守ろうと覚悟しました。しかし、その後彼らも予期していなかった事が起こります。近隣のいくつかの国が同様に親魔物領へと転換し、そうでない国も1カ国としてお姫様の国に攻撃を仕掛けるようなことはしなかったのです。これはもちろん理由の1つにはお姫様がサキュバスになってもなお国内外の多くの人達から慕われていたというのがありますが、別の理由として、お姫様を眠らせた例のリリム様が密かに周囲の国々を回り、人間のふりをして密かに暮らしている魔物娘やその夫達に働きかけた成果でもありました。そうした人達の中には国の政治に大きくかかわる貴族などの高い身分の者達も存在していたのです。これはリリム様にとって、1歩間違えばより大きな戦火や対立をもたらしかねない危険な賭けでもありました。
自身や周囲の国が新しい時代を迎えるのを見届けた王様は、自ら王位を退き、お姫様を新たな女王とすることを宣言しました。
一方、王子様の祖国である隣国では、お父上である王様が窮地に立たされていました。王位継承者がサキュバスと結婚したことについて、説明を求める使者が教団やより大きな教国からひっきりなしに押しかけてきたからです。返答に困った王様は、とうとう王子様の所に兵を送って息子夫婦を捕らえて処刑する事を計画しましたが、直前で計画が漏れ、王侯貴族から農民や下級兵士に至るまで多くの国民からの猛反対にあいました。そして王様はとうとう退位を迫られ、互いの国の同盟を結ぶために政略結婚した王妃様、すなわち王子様のお母上からも離縁を言い渡されてしまいました。
そして、サキュバスのお姫様と結婚した王子様が新たな王様として指名されることとなりました。
こうして2つの国は新しい親魔物国家として1つになり、新しい国の王様と女王様になった王子様とお姫様は忙しい日々を過ごしていました。そんな中、新しい女王様はサキュバスとインキュバスのかわいらしい双子を出産しました。それは、彼女がサキュバスに変わるちょっと前、王子様が眠っているお姫様を襲ってしまったときに身ごもった子供でした。娘の方はその国の言葉で「夜明けの光」を意味するオーロラと、息子の方は「日の光」を意味するジュールと名付けられ、両親と同じように国内外の多くの人達から愛される美しいお姫様と王子様へと成長していったそうです。そのオーロラ姫が友人達と楽しく糸紡ぎをする事を禁じられたり、ジュール王子共々本人の望まない結婚を強いられたりしなかったことは、もちろん言うまでもないでしょう。
幸せな結婚と聞くとロマンチックな大恋愛の末にあるものを夢見る人も多いでしょうが、結婚は旅の始まりであって終わりではないという事を忘れてはいけません。
結婚に至るまでの過程ももちろん大事ですが、その後互いに良好な関係や距離感を築き守っていく覚悟も同じくらいかそれ以上に大事なものなのです。
例えどれだけ結婚相手の条件が良かったとしても、当人達にその覚悟が持てないような結婚であるとすれば、それは決して幸先のいい旅立ちとは言えません。
・編者あとがき
現在の魔王様に代替わりし、全ての魔物が淫魔へと変化してから間もない時代、以前から人間の欲望に精通し、人間の男性を「飼う」者も少なくなかったサキュバスや彼女達に飼われていた人間達の存在が、人間と魔物娘の共存する領域である親魔物領の構築に大きな貢献を果たしたと言われており、この話はそういった歴史的背景が元になっていると考えられています。
また、この話の冒頭で魔法使いに化けたリリム様が王様に不妊治療の薬を処方する場面がありますが、反魔物領では(魔物娘にとっては色々な意味で考えられない事ですが)事情があって堕胎を希望する妊婦に対して子供を流産させる毒薬を処方した魔法使いがダークメイジであると決めつけられて捕らえられた、という事が実際に起きていたという記録が存在しています。
17/11/27 22:04更新 / bean
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