連載小説
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前編
 昔々、ある小さな王国に王様と王妃様がおりましたが、2人はなかなか子宝に恵まれずに悩んでいました。湯治とか祈祷とか様々な方法を試してみたのですが、一向に子供が産まれる気配はありません。
 そんなある時、1人の若い魔法使いの女性が王国を訪ね、小さな丸薬が入った袋を王様に献上して、王妃様ともども床に入る前にその薬を1つずつ口にするようにと進言しました。王様の命令で家臣が試しに丸薬をお城の庭にある池に2つ投げてみると、すぐに雌の魚がたくさんの卵を産み、そこに雄の魚がおびただしい量の白いものをかけていきました。
 その日の夜から、丸薬を飲んだ王様と王妃様は若い頃に戻ったかのようにベッドの上で情熱的な愛を語り合うようになり、やがて王妃様はかわいらしい女の子を産みました。
 王様も王妃様も待望の娘の誕生を大層喜び、盛大な祝宴を開きました。王国のしきたりに従い、この祝宴には国中で最も優秀と認められた魔法使い達が招待され、豪華なご馳走がふるまわれます。やがて宴もたけなわになると、魔法使い達は新しく生まれた娘に、この子が美しく多くの人達から愛されるお姫様になるようにというおまじないをかけました。
 この時の祝宴にはあの丸薬を王様に献上した若い魔法使いも招待されており、王様はこの魔法使いを娘の教育係に任命しようと考えていたのですが、気が付くと若い魔法使いはお城からかき消すように姿を消していました。

 娘は魔法使いたちがかけたおまじないの通り、美しいお姫様に成長していき、国内外の多くの人達から慕われるようになりました。しかし、この呪(まじない)いはやがてお姫様にとって呪(のろ)いに変わっていきました。
 お姫様の美しさと人望に目を付けた近隣諸国の王族達が、それぞれにお姫様を自国の王子の結婚相手にしようと企み始めたからです。他の国を差し置いてお姫様を自分たちの国の王子と結婚させることができれば、それだけ自国が強い力を持つことの証明になる。どの国の王族も考えることは同じでした。お姫様の事を人間ではなく自分達の力を示すトロフィーと考えたのです。
 程なくして、主神教団と強い繋がりを持つ隣国の王子様がお姫様と結婚することに決まり、顔合わせの席が設けられることになりました。お姫様は顔も見たことのない相手との結婚が勝手に決められた事に納得できずにいつまでも大声で泣きじゃくり、その場に居合わせた者は皆どのようにして場を収めるのかと困り果てます。すると、結婚相手である王子様がお姫様の前に進み出て、そこまで嫌がるのならこの結婚話を反故にして差し上げましょうと請け合いました。王子様のお父上である隣国の王様は勝手な事を言う息子に憤慨しましたが、王子様はお父上にこう言って説得しました。
「彼女はまだ7歳。まだまだ世間の物事を理解できているとは言えないでしょう。確かこの国では正式に結婚できるようになる年齢は15歳だったはず。8年もあれば、彼女も国の為に自分の立場を弁えなければならない事を学ぶはずです」
 それを聞いた隣国の王様は納得し、お姫様が15歳の誕生日を迎えるその日まで結婚話を保留にすると言いました。しかし、王子様は心の中では逆の事を考えていました。8年もあれば父上や王国の有力者達の考えを変えさせることができるかもしれないと。王子様はお姫様の姿を一目見た時から彼女に惚れ込んでいましたが、むしろだからこそ、愛する女性を悲しませるようなことだけはしたくなかったのです。

 その日の夜、お姫様はベッドの中で泣き腫らして目を真っ赤にしていました。
「保留にしてくださると言われたけど、結局は同じ事だわ。私は15歳の誕生日になったら、あの国に贈る貢ぎ物にされてしまうのよ」
 すると、真っ暗な部屋の中に突然もう1つの影が現れました。
「姫様、私が力を貸して差し上げましょうか」
 それは、あの日お姫様の父親である王様に丸薬を渡した若い魔法使いでした。
「もし姫殿下が15歳の誕生日になってもそのお気持ちが変わらないのでしたら、このお城の端にある塔のてっぺんまでお越しください。私が殿下に生まれ変わりのチャンスを差し上げましょう」
 お城の端にある塔というのは、ここ何年も使われずに物置のようになっている場所です。それだけ言うと、魔法使いは再び陰の中に溶けていくように姿を消しました。

 同じ頃、お姫様の父親である王様は、他の魔法使い達を呼んで娘の結婚について占わせていました。もし隣国との結婚話がこじれて戦争にでも発展すれば、国力で大きく劣るこの国はなすすべもなく滅ぼされてしまう恐れがあったからです。
 しかし、占いの結果が出ると魔法使い達は困ったような様子で互いの顔を見合わせていました。
「どうした。さっさと申せ。悪い結果だったとしても、むしろその運命に備えておかなければならないからおまえ達に占わせているのではないか」
 王様の言葉に、魔法使いの1人が渋々口を開きました。
「姫様は……その、結婚なさる前に紡錘(つむ)が刺さって長い眠りにつく。そして2度と生きた人間として起き上がることはないと占いに出ています」
「紡錘というのは、糸車のアレか。確かに細長い形はしているが、人の体に刺さるほど鋭くはないはずだが」
「私も同じ事を考えたので、占いの結果を何度も見直してみました。しかし、確かにそう出ているのです」
 王様は戸惑いましたが、これを実現させてしまってはまずいと思いました。そこで、国中の糸車をただちに燃やすようにという勅令を出し、新たに糸車を持ち込んだり作ったりしてはならないという法律も作りました。




 それから8年の間、王子様はお姫様の為に結婚話を解消しようとできるだけ手を尽くしましたが、自分の方がいかに現実を知らない子供だったかを実感するだけでした。確かに彼のいる国は周辺諸国と比べれば大きな影響力を持っていますが、それでもレスカティエのような本物の大国から見ればどんぐりの背比べ程度。そんな国の王族では貴族達が諸手を挙げて結婚話を後押ししているのを力ずくで止めるほどの絶対的な権威まではありません。ましてや王子1人で国全体の方針に逆らうなど。
 結局、王子様はお姫様との約束を果たすことができないまま、お姫様の15歳の誕生日まであと1日になってしまいました。お姫様の国の王城で盛大な前夜祭が執り行われることになり、国中の人達がそれを祝福していました。この国で暗い顔をしているのは結婚する当人2人だけです。
 あと少しで夜中の12時になるという頃、お姫様は隙を見て会場を抜け出し、長年誰も足を踏み入れていない塔の鍵を開けました。長いらせん階段を駆け上がり、扉を開け、塔の頂上にある小部屋に足を踏み入れます。例の魔法使いが8年前と全く変わらない姿でそこに立っていましたが、お姫様は驚きませんでした。
「正直、私がここに来たのも徒労に終わっていればと祈っておりました」
 魔法使いは悲しそうに言います。
「貴女が誰かは存じておりませんが、既に覚悟はできています。寝室に書き置きも残しておきました」
 お姫様はこの日の為に、こっそり遺書を書いては文面を見直して書き直すという事を何度も繰り返していました。おかげでその気になれば内容を1文字残さず諳んじる事だってできます。「あの国への贈り物が欲しいのなら、私の骨を王子様の部屋にでも飾るように言ってください」と。
 彼女は小部屋の窓から、真夜中になった今でも煌々と明かりの灯る階下を見下ろしながら話を続けます。
「ご存知ですか? 最近ではなぜかお父様が禁じてしまいましたが、この国の農村では若い女性達が糸車という物を使って糸を紡いでいたそうです。それもただ紡ぐのではありません。同じくらいの年頃の人達で1つの部屋に集まって作業を共にしたとか。その合間で楽しくおしゃべりをしたり時にはお菓子や軽食を持ち寄ったり、男の人達が遊びに来たりなんかもして、そこでの交流をきっかけに恋に落ちて結婚する人もいたそうです。私は生まれ変わるなら次は特別な地位なんていらない。同年代の人達と一緒に糸を紡ぐ場所だけが欲しいのです」
 王様の努力も空しく、糸車の紡錘はお姫様に刺さっていました。身体ではなく、心に深々と刺さっていたのです。
「最後にもう1度確認します。ここで引き返して、明日の朝王子様と一緒の馬車で隣の国に嫁いでいくという気はないのですね?」
「ありません」
 お姫様がはっきりとした声で答えると、突然魔法使いの姿が眩い光に包まれました。服装が極めて露出度の高い物に変わり、瞳は血のように赤く、耳は細長くなり、頭には固い角、背中には蝙蝠のような翼、お尻には先がハート型になった尻尾が生えています。
「なるほど。本で読んだことあるわ。貴女サキュバスね。人間の心や夢に入り込み、生きる力を吸い取り、時には不倫をそそのかすという」
「そこまで言われるのは光栄ですね。最後のは他人には禁欲を唱えながら一方で堪え性の無い主神教団のエロジジイ共の言い訳も入ってますけど」
「それで、私をどうするの?」
「まずは新しい人生の始まりにふさわしい舞台を用意して差し上げるわ」
 淫魔の正体を現した魔法使いはお姫様をそっと抱きかかえると、ガラスのはまっていない窓へと歩み寄ります。
「それと、言っておくけど私は普通のサキュバスじゃないわ。それどころか貴女と同じように王女なの。私は魔王の娘、リリムよ」
 リリム様はお姫様を抱えたまま、夜空へと身を乗り出しました。月の光を受け、真っ白な髪や翼や尻尾がきらきらと輝きます。彼女は城を警備する兵士達の頭上へと飛び上がると、声を遠くまで届かせる魔法を使いました。
「美しいお姫様の結婚を祝して、私からもささやかな余興をプレゼントするわ」
 腕の中にいるお姫様からは下の兵士たちの様子は暗くてよく見えませんが、リリム様からはきちんと見えているようです。
「おっと。弓矢で攻撃するのはお勧めできないわね。あなた達の大事なお姫様をうっかり落としてしまっては大変ですもの。……そう。みんないい子達ね。余興というのはちょっとしたゲームよ。ルールは簡単。私を捕まえてごらんなさい」
 それだけ言うと、リリム様は悠々と城壁の上を通り、魔物の侵入を防ぐために王城を取り囲む形で張られていた結界もあっさりと突き破って飛び去って行きました。彼女の魅了の力に中てられたのか、兵士も前夜祭に詰め掛けてきた民衆も皆呆然と空を見上げています。その間にもリリム様はみるみるうちに速度を上げ、馬よりも速く飛ぶと、人里離れた深い森の奥にある小さな小屋の上に降り立ちました。




 その小屋は打ち捨てられて何年も経っていた炭焼き小屋を修復したものでした。お姫様は質素ながらも清潔に保たれたベッドに座り、お召し物を1枚ずつ脱いでいきます。
「私に礼儀作法を教えてくださった先生は、私が結婚した後の床入りについても教えてくださいましたけど、その時こう言われました。王女である私の身体は淫蕩な欲望に溺れるためにあるのではない。己を捨てて王子様に奉仕し、いずれはあの国の将来の王になる男の子を産むためにある。それが教国の妃になるという事なのだと。独りで淫欲に耽っていた事を侍女に見つかり、報告を受けた母に鞭で打たれたこともありました」
 言いながら、お姫様は上半身を覆っていた最後の肌着を脱ぎ捨てます。すると、白磁のような背中が数えきれないほどのミミズ腫れによって切り裂かれていました。同じようにお召し物を全て脱ぎ捨てたリリム様は、背中の傷跡に触れないようにしながらもお姫様をそっと抱きしめ、涙を流しながら言いました。
「酷いわ。エッチな事を愉しむ権利は誰にでもある。例えその人がどんな身分だったとしても、その権利を他の誰かが勝手に奪っていい理由にはならない」
 すると、お姫様は14、5歳の少女とは思えない陰のある笑みを唇に浮かべて言いました。
「でも、あの人達から言われた通りにはさせません。私はここで貴女に命を吸いつくされて死ぬのですから。王子様に贈られるはずだった私の処女をこんな所で淫魔、それも女の人相手に捨てようとしていると知ったら先生やお母様はどのような顔をなさるのでしょうね」
――あなたは男と寝るように、女と寝てはならない。
 教国に嫁ぐ身として主神教の教義について講義を受けた時に聞いた言葉がお姫様の脳裏をよぎります。
「もういい。それ以上言わないで」
 それからもしばらくの間、リリム様はお姫様を抱きしめたまま嗚咽を漏らしていました。お姫様の目からも涙が溢れてきます。
「変なの。私を殺そうとしている貴女が、私が今まで遭った方の中で2番目に私をまともな人間として扱ってくださっているなんて」
 2人は裸で抱き合ったまま大声で泣きだします。お姫様はまるで自分が7歳に戻って母親に甘えているような気持ちになりました。

 そうして2人はしばらくの間すすり泣きを続けていましたが、それが治まってくると、リリム様は化粧台に尻尾を伸ばして引き出しの1つを開け、中から黒いろうそくを取り出しました。そしてそのろうそくをベッド脇の小さな机にある燭台に立て、魔法で火を付けます。それからリリム様が魔法で部屋の中に風を吹かせると、そのろうそく1本以外で部屋の中を照らしていた明かりが全て消えました。
「何をなさるのですか」
「雰囲気作りよ。このろうそくにはそのための香が混ぜてあるの」
 ろうそくからピンク色の光が部屋全体に広がり、同時に甘ったるいような香りが漂ってきます。するとお姫様は身体が心地よく火照ってくるのを感じました。リリム様の手が太ももやうなじ、首筋をゆっくりとなぞっていくと、それだけでお姫様の全身に凄まじい快感が走ります。
「あ……ッ、なに、これ……」
「もう我慢しなくてもいいのよ。ここではどれだけ気持ちよくなっても誰も貴女を否定したりしないわ」
 そう言うと、リリム様の指先が背中にも走りました。それまで服がこすれるだけでも顔をしかめそうになるほどにお姫様を苦しめ続けていた背中の痛みが消え、心地よい熱さが上書きしていきます。
「どうして。撫でられてっ、いるっ、だけなのに、んあああっ!」
「あらあら。随分感じやすいのね。でもまだまだ序の口よ」
 リリム様はお姫様の胸に口づけ、乳首を甘噛みしていきます。同時にリリム様の右手がお姫様のお股にある茂みに伸ばされていきました。
「すごいわ。貴女のここ、とろとろひくひくしている。まるで誰かが入ってくるのを待っているみたい」
「んぅっ、言わっ、ないで」
 お姫様は恥ずかしそうに顔を背け、ぎゅっと眼を閉じます。
「ここは一体誰を待っているのかしら。ねえ、教えて?」
 おマンコの入り口を指で優しくなぞりながら問いかけるリリム様に、お姫様は何も言わずに首を大きく横に振りました。
「あら残念。私の魅了の力を使っても口を割らないなんて相当ね。それじゃあそろそろ終わりにしましょうか。目を開けて」
 お姫様が言われた通りおずおずと瞼を上げると、リリム様の尻尾が目の前でゆらゆらと揺れていました。
「貴女があまりにも気持ちよさそうな反応をしてくれるから私も感じてきちゃったわ」
 真っ白な尻尾の先がお姫様の口元に突き出されます。よく見るとその表面は黒っぽい粘液のような物でうっすらとぬめっていました。人間の生命力を吸い殺すための魔法の毒だろうか。お姫様はそう考えます。
「舐めて」
 お姫様は全く躊躇することなく尻尾の先のハート型になった部分を口にしました。これで終わる。惨めな15年の人生から解放される。頭の中に浮かぶのはその事だけです。お姫様は尻尾の表面に滲んでくるねばねばしたものを飲み下していきます。それは果物を砂糖で煮詰めたジャムのように濃く甘く感じられました。
「ああっ、いいわ。初めてなのにすごく上手。もうイッちゃう。んううううっ!」
 リリム様がお姫様を抱きしめる力が強くなり、その腕がビクビクと震えました。リリム様の尻尾の先から先ほどまでよりも多くのドロドロとしたものが噴き出し、お姫様の口の中を満たしていきます。それを咽そうになりながらも飲んでいくと、次第にお姫様の意識がぼんやりとしていきます。やがて彼女は完全に意識を失い、ベッドの上に力なく横たわりました。

「貴女は知らなかったみたいだけど、私達は人間の精を貰うことはあってもそれで命を奪うことはしないわ。現代の魔物娘はね」
 眠ったお姫様をベッドに横たわらせながら、リリム様はお姫様に語りかけます。
「それにそういうのを抜きにしても、私は貴女だけは殺せないと思う。貴女は私にとって、こういう事をするずっと前から大事な『妹』だったんですもの」
 16年前、長い間子宝に恵まれずに悩んでいた国王と王妃、すなわちお姫様の両親の事を知ったリリム様は2人をどうにかして助けたいと思いました。彼らがそのせいで国内外の少なくない人達から心無い批判を受けていたというのも理由にありましたが、それ以上にこの夫婦が互いの事を本当に心から想い合っていたからです。
 しかし、自分が淫魔の王女として表立ってこの国に介入することはためらわれました。この国は反魔物領としての方針を表明している小さな国がいくつも集まった地域の真っ只中にあり、そんな場所で魔王様の娘が王位継承者の誕生に関わったと知れたら、最悪大きな戦乱が起きる危険もあったからです。それでも彼らを助けたいと思ったリリム様は人化の術を使って人間の魔法使いに化け、人間を超えた力に頼らずに魔法の丸薬を作ってお姫様の誕生を助けました。そして、王様が自分をお姫様の教育係にしようとしている事を知り、距離を取って遠くから密かに見守ることにしたのです。
「でも、今思えばあの時の判断は間違いだったわ。私が教育係になっていたら、貴女をこんな目には遭わせなかった」
 安らかに眠るお姫様の頬に、リリム様の涙が落ちます。「美しい姫は結婚する前につむが刺さって長い眠りにつく。そして2度と生きた人間として起き上がることはない」王様が呼び寄せた魔法使い達が占ったのと同じ予言を、リリム様はもっと前に見ていました。その時の予言ではお姫様は眠りにつくのではなく、あの古くて高い塔の上から身を投げる事になっていました。リリム様はせめてお姫様が命を落とすのではなくしばらく眠りにつくだけで済むようにと手を尽くしてきました。あらゆる魔物の魔力をその身に宿すリリム様ならお姫様が死んでしまってもアンデッドとして蘇らせるのは簡単な事ですが、それでは解決になりません。なぜならお姫様に死の呪いを与えるのはお姫様自身だからです。
「こんな事しかできないようなふがいない『お姉様』でごめんなさい。それと15歳の誕生日おめでとう」
 リリム様はお姫様の額にそっとキスすると、魔法で自分自身以外の小屋全体を眠らせました。台所で食べ物を探して走り回っていたネズミ達はもちろん、ろうそくに灯っている小さな火や、そこから放たれる強い魔力の籠った暖かい空気さえも。小屋の周囲を取り囲む木々に太い茨や蔦がまとわりつき、互いに絡み合って小屋を外から守るような形で分厚い壁が形作られていきます。それを見届けると、リリム様は夜空へと飛び立ちました。お姫様を王城から連れ出した時のようにリリム様の身体の白い部分が月の光を受けて再び輝き、それも木々にまとわり続ける植物によって小屋からは見えなくなりました。
18/10/25 00:24更新 / bean
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■作者メッセージ
 今まで僕が書いた童話パロの中だと原型とどめてない感じはトップクラスかもしれない。

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