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後編

 暫くして村の中に噂が立ち始めた。
 やれ溺れた子供が不可解な潮流で岸に引き上げられただの、やれ突然水の流れが逆行して流された荷物が戻ってきただの、やれ湖に落とした斧を女神が拾って届けてくれただの。
 誇張された事案もあるにせよ、皆が不思議がり、湖には何か得体の知れない者が住まっていると誰しも考える様になった。
 一方、俺にとっては全ての事が誰の仕業であるかは明白であった。
「龍神様のお力じゃ」
 噂が出始めた頃から御老公はその様に言っていた。
 しかし村の若者や中年達の一切はそれを頑として突っ撥ねた。老人の戯言だと言うのだ。
「龍なんぞいやしない。あの湖には昔から妙な事が起こっていた。水面が天に昇ったり、雨が一箇所に降ったりもした事がある。今回の一切の件は全て偶然だ」
 後から聞いた話だが、過去あの龍神が信仰を集める為に試みた事が、そういった不可思議な現象を起こして気を惹くという物だったらしい。結果こうして実にならぬ事態を引き起こしているのが皮肉なものだが。
「それより湖に化け物が出るらしい。最近の異変もそれによるものだ。早々に退治せねばならんのではないか?」
「それこそ龍神様じゃ。失礼の無きよう礼を尽くせ」
「何を言う、今更神や仏など、居る筈がないだろう」
「その通りだ。爺様達もいい加減迷信なんぞ信じるのではない」
 若人達の言い分に若年寄り達も言葉を並べた。
 御老公は、この時初めて苦い顔をした。何時もは真白に草臥れた眉と髭で表情が読み取れなかったが、この時ばかりは口元に黄色い歯が覗いた。


 住まいに戻った後、御老公は俺にこう漏らした。
「平和が長く続き過ぎた。龍神様を信じるのは年寄りしかもうおらん。それ所か、人の身に余る存在に刃を向けようとする者ばかりとは。もうそんな儂等の事など、龍神様はお見捨てになられるじゃろうて……いや、それだけならまだいい。お怒りに触れて、何れ恐ろしい災いとなって儂等に天罰を下す事も在り得るじゃろう」
 俺はその話に黙って俯いていた。
「隆広殿よ。お前さんは、どうじゃ?」
 御老公が俺に向いて問い掛けた。眉毛の隙間からぎらりと眼光が光った。
「私は、目にした物のみを信じるばかりです」
「そうか」と御老公は答えた。俺が龍神を信じない、と受け取ったのだろう。彼は随分と寂しげに背を丸めた。
「そうじゃ。此処に住む龍神様の……昔話はまだしていなかったかのう」
 そう言って切り出したのは、恐らく龍神が湖に住んだ初めの頃から言われていたらしい話だった。
「ある所に大層人を好く龍がおったそうな。けれど、自分は龍である事を気にして人と交わる事に怖気づいていた。そんなある日の事、一人の青年が龍の入り江に立ち、龍と顔を合わせた。忽ちその青年は龍と仲良くなり、やがて寂しがり屋な龍にこう提案した」

    この湖を護ってくれるなら、きっと皆お前を好きになる。

「青年は故郷の湖が好きじゃった。それは、周辺に住む生きとし生ける者全てに恵みを与えておったからじゃ。じゃから、そんな湖を護る龍の事を神仏の様扱う事、そうすれば皆がお前に祈り、お前の事を想い続ける。そうすればきっと寂しくないじゃろう」

    もし儂が死んだ後でも、寂しくないじゃろう。

「龍は、喜んだ。もうこれで寂しくなくなるのじゃと   
 御老公はゆったりと話し終えた。


    龍は、喜んだ。もうこれで寂しくなくなるのだと。

 ……果たして本当にそうだろうか?


「御老公、本当に……龍は喜んだのでしょうか?」
「どういう事じゃ?」
「龍は……信仰の対象とされても、寂しかったんじゃないでしょうか。だって、誰とも語らう事などないのです。誰とも触れ合う事などないのです。それは、孤独となんら変わらないのでは、ないのでしょうか……」
 御老公はほう、と息を吐いた。
「それは神のみぞ知る、と言いたい所じゃが……隆広殿の言う通り、それが身を裂く程寂しい事だとしたならば、神仏というのはなんと、辛い役目を追うお方達なのじゃろう」
「……」
 先々代、水沢隆盛。
 彼が残した寂しがり屋な龍へ残した形見。
 ……俺は、それが間違っていると断言したい。
 それが今の状況を作り出している事を呪う。未だ龍を縛り付けるその制約を呪う。
 けれど、理解はしていた。人と龍の年月は違う。それでもその龍の為にしてやれる事。自分が滅んでも残る物。そう追求した先に帰結した答えを軽んずる所か、俺は感服もしていた。

 だから、こそ。


 だからこそ許せないのだ。


 今、こうして、現に。





 あの龍が一人ぼっちでいる事が   





――――――――――





 あの男の言う事に倣って人助けをしているお陰で感謝の念が集まってくるのが判った。
 一度水に尾の先を漬ければ、湖の縁に立つのは以前溺れていたのを助けた子供。水辺に手を合わせて「ありがとう」と言っておる。妾はそれを可愛らしく思い、笑みを浮かべた。悪戯心に適当な魚を足元に跳ね飛ばして恵んでやると、大喜びで持って帰って行った。
 最近では妾の祠にお供え物をしていく輩も現れた。今はこうして久方ぶりに大福などを頬張るに至る。
「矢張り人間はいいのう。愛い、愛い」
 非力で狡賢いが、表情豊かで時に素直。放っておけば魚の様にほいほいと増える癖に、魚とは違って同種の絆が強い。そんな、おかしな生き物だ。
「愛いのう。愛いのう。食べてしまいたいくらいじゃ」
 当然食べるなどはせぬ。だが、それ程愛おしい存在である事には違いない。
 しかし、目下妾の心中に鬩ぎ合うのはあの男の事だった。
「……水沢、隆広」
 妾は水の風景を見る事が出来る。例えば、あの男の家に張ってある盥の水だって元々はこの湖の水なのだから、造作もない事だ。
 ……そうか。彼奴の孫か。
 道理で、似ていると思った。
 顔付きは全然違う。けれど、どうしてかあの男にだけは気を許してしまいたくなる。
 隆盛は姓の通り水の匂いが強い男だった。それだけではない、何時もは静水の様に平静で、時には鉄砲水の様にあらぶる男だった。山水の様に恵み豊かで、海水の様に心を浮かべるに足る男だった。
 そして   妾にとって、水と同じくらい大切な友だった。
 人の世とはなんと儚い。
 それなのにどうしてこうも美しいのだろうか。
 隆盛よ、御主が妾をこうして神に仕立てたのにはそういう気持ちがあったからなのなら、何故最初から言わなんだのだ。
 それを知っていれば。
 ……それを知っていれば、この年月も辛くもなかったろうに。
 御主の考えに疑問を浮かべ始めたこの一〇〇の幾年を、満たされぬ寂寥感に苦しんで過ごす事もなかったろうに。
 だが、もういい。
 御主はきっとそれを見越して、彼奴を此処に導いたのだろう。
 御主の子孫を。
 妾と同じ、一人ぼっちを。
 御主にはもう家族が居たものな。
 ……判ったよ、隆盛。
 妾も御主なんぞより、あれくらい顔の造りがしっかりした方が好みじゃ。
 御主の考えとる事は判る   


 水面が揺れて、刹那、懐かしい不細工な笑みが映った気がする。
「さて、そろそろ隆広が来る頃合かの……」
 背後に人の気配を感じる。丁度此処に至るまでの隘路に立っている様だ。
 しかし、次の瞬間耳に届いたのは聞きなれない声だった。
「おーい、あんたそんなトコで何してんだ」
 振り向くと、あの隘路には見慣れない人間がいた。見た所隆広と同じ若い人間の男の様だが、あれ程毛むくじゃらな男ではなかった筈だ。
 姿を見られては騒ぎになる。咄嗟にそう思った妾は、相手が未だ妾を見て平然としているという事は岩場で体が隠れているという事にも思い至らず、思わず飛び上がってしまった。
 見る見る男の目が皿の様に広がっていく。そして腰を抜かした様に震えると「ば、化け物だー!」と叫んだ、その拍子に隘路から足を踏み外し、崖に真っ逆様に落ちていく。
 助けなければ。妾はそう思った刹那の時から体を動かしていた。空中を自在に飛び回るこの体で、男の頭蓋が岸壁に砕かれる前に抱き止めた。
 男は腕の中で震えていた。
「ひ、ひぃっ」
「大丈夫か。陸地まで送ってやる」
 そう声を掛け、言葉通り崖の上、祠の前まで男を抱き上げ、直立させた。
「今度からは気をつけるのじゃぞ」
 言い残し、その場を飛び去る。
 ……今更気付いてしまった。思い切り、姿を曝してしまった事に。
 しかし、まぁ、いいか。ああしなければあの男は命を落としていた。嘗てあそこで人が死んだ事は多数ある。その時は何時も丁度湖に魚を取りに行っている最中で、助けられんかったが。
 その辺を散歩して来よう。人間が好きな妾じゃが、騒がしいのは嫌いじゃ。熱(ほとぼり)が冷めるまで、あそこには寄り付かんでおくのがいい。
 隆広が来た時に顔を出せんが、止むを得まい。
 そんな風に考えて、妾は姿を雲間に隠したのだった。





――――――――――





 ある朝、村中が騒ぎになっていた。
「どうかしましたか、御老公」
 一先ず騒ぎを見て来たらしい御老公が敷居を跨いだのを見て尋ねる。
「ああ、どうやら化け物が出たと村の若者が騒いどるらしい」
「化け物?」
「なんでも大蛇の類が出ただの……あ、おい、何処へ行く、隆広」
 行き先は決まっていた。


 祠に出向くと、すでに若者達が祠を乗り越えて隘路の向こうにある岩場に立っているのが見えた。
 頻りに周囲を見回して首を振っている。どうやらあの龍は上手く姿を眩ませたらしい。
「おいお前、この前来た余所者じゃろう。此処へ何しに来た」
 一人の鍬を持った若者が俺に話し掛けてきた。どうやら此処で番の様なものをさせられているらしい。
「何しに……よ、様子を見に来ただけだ」
 本当は龍神にこの事態を告げに来たのだが、正直に話す愚か者などおるまい。若者は俺の身形を足先から頭の先まで何度も見回してきた。
「水沼の爺様ん所で寝泊りしとるとは聞いとるが……そういえば、元々武士じゃったんじゃな?」
「あ、ああ」
「じゃったら丁度いい。化け物退治に手ぇ貸せ」
 咄嗟に身動ぐ。
「い、いや。りゅ……化け物なんぞ相手出来る訳がないだろう。俺が斬れるのは精々腕の劣る人間くらいだ」
 僅かに龍と口に出してしまいそうになりながらも、腰に剣を佩いていない事も身振りで示す。
「ふーむ、まぁそうじゃろうな。よし、やっぱり餅は餅屋。化け物は化け物の専門に任すとすっか」
「……化け物の専門?」
「おう、祁答院って知っとるか? 鬼狩りの祁答院」
「いや……」
 化け物の専門家。つまり、退治屋の事だろうか。
「祁答院っつったら、お前、有名だぞ? 化け物退治やらしたら天下一じゃねぇかってくらい……お、噂をすればだ」
 後ろから草を踏み分ける音が響く。振り返ると、其処にはまるで戦場に立つ様な物々しい鎧を着た武者が立っていた。鎧兜から表情も窺い知れないその男の身長は俺を一回り凌駕しており、腰に落ち着ける刀の大きさも既に人以外の物を斬る事のみを目的としている様だった。
「やれやれ、随分と面倒な所にあるものだな」
 低い声で唸る武者。
「それで、化け物とやらは何処にいる」
「へぇ、それがどうも何処かに逃げちまったらしく……」
 若者がそう述べている途中、武者は行き成り刀を抜き浚い、若者の眼前に切っ先を据えた。随分と肝を冷やしただろう、若者は「ひいっ」と悲鳴を挙げ、木柵に凭れ掛かった。
「どういう事だっ。儂は丁度近くに化け物がおると聞いたから態々足を運んでやったのだぞ。これでは無駄足を踏んだも同然ではないか」
 じゃら、と音がする。武者が持つ手綱の先に真っ白い布を頭に被る小柄な少女が居た。
「……なんだ、何ぞ気になるのか」
 少女を気にしていた俺をギロリと睨む武者。咄嗟に視線を外す。どうやらこの少女は居ないものとして扱えと言う事らしい。
 一先ずこの場を立ち去ろう。龍といえどもあの龍の事だ。何やら並々ならぬ実力を伺わせるあの退治屋相手では無傷では済むまい。兎に角暫くの間身を隠す様伝えなければならないだろう。
    それに、龍を縛る呪縛を解いてやれるのは俺だけだ。祖父が残した想いの鎖を断ち切るまで、あの龍には何人たりとも触れさせない。
 俺は退治屋の気がその場に居た若者に向けられている隙を見付け、そそくさとその場を後にするのだった。



―――――



「……」
 退治屋はその場をそそくさと抜け出した男の姿を見逃さず、じーっと消えた方向を見詰めていた。
「おい、さっきの男は何だ。何処の何奴だ」
「さ、最近村に来た余所者でさぁっ。俺もよくは知らねぇけど、武士だったそうで……」
「最近来た余所者」と口になぞり、退治屋は何事か思い当たったのかほくそ笑んだ。
「くく……近頃化け物と馴れ合う愚かな連中が目立って増えておる。なんと浅ましい行いだろうか。貴様もそう思うだろう」
「へ、へぇ……」
   あ」
 その時、不意に湖から風が吹き、少女の被る布を払ってしまった。その下に隠されていたのは、二本の角と赤い肌。
「ひぃっ、鬼っ!?」
 若者の目が飛び出す。目の前にずっと佇んでいたのはアカオニの子であったのだ。鬼を恐れるのは何処の人間も一緒。この若者も例外ではなかった。
 しかしそんなアカオニの子の頭を鷲掴みにし、退治屋は快活な笑みを浮かべた。
「此奴も、そんな馬鹿な人間がアカオニと作った子供だ。両親は今しがた切り伏せ帝に首を献上してきたばかりだがな」
「お、鬼の親を……っ?」
 鬼の子の瞳がどんよりと曇っているのを見て、若者は乾いた笑みを浮かべた。それは嘲笑とも同情とも取れない、なんともその場繕いな笑みだった。
 退治屋はそんな若者の動向に意を介さず、抜き身の刀を手に祠に立て掛けられている板を見た。
 其処に書かれている文字を見て、再び何か得心した様に笑む。
「どうやら此処にも馬鹿が居るようだ。少しの間この場を離れる故、この鬼を見ていろ」
「へ!? あ、あの」
 手綱を木柵に括り付けた退治屋が男の去っていった方角へ歩みを進め様とした所、若者が声を上擦らせた。すると、振り向いて、退治屋は鬼の少女に指を差した。
「その鬼の子は好きに扱って構わんぞ。何、痛めつけ様が抵抗はせん。但し、殺すでないぞ」
 若者は「そう言われても」と鬼と退治屋を見比べる。普通の人間にとって、鬼は子供でも恐ろしいものだ。
 しかし退治屋はこれ以上割く時間はないと言わんばかり、若者の困惑の表情をそのままに茂みの中へ、男を追い掛け、姿を消すのだった。



―――――



    俺は最初に湖を望んだ水辺に立ち、水面に向かって声を掛けてみた。
「おい、龍神。龍神姫よ。聞こえているか?」
 水を介して風景を見る事の出来る彼女の事だ。こんな事態になって逐次様子を見ていない筈がない。
 考え通り、目の前の水面が微か震え、まるで此処に居ると言わんばかりに「ぽちゃん」と水太鼓を鳴らした。無論其処に魚が居た訳でもなければ石が投げられた訳でもない。龍神からの返事である事は疑わなかった。
「全く、お前は何をやらかしたのだっ。皆が血眼でお前を探しているぞ」
 先ずは説教である。水面が言いたい事ありげに騒ぐが、聞こえない振りをして続けた。
「……退治屋まで来たそうだ。このまま化け物だと勘違いされていては無傷では済まないぞ。兎に角、絶対姿を現すな。今度こそ人目に付いたら取り返しが付かなくなる」
「ほう、その話、詳しく聞かせてもらいたいものだな」
 背筋が凍る思いがした。低く響く、例の不吉な声が横から響いてきたのだ。
 身構える。甲冑姿で顔も碌に判らないこの男からは、何とは無しに手段を選ばない印象を抱いていた。現に今俺に向けられる眼光は嘲笑を含んだ殺気を帯びていると言ってもおかしくない。
「な、何の話だろうか」
「惚けるな。……水面に向かって誰と話していたのだ? ん?」
 退治屋は抜き身の刀の切っ先を俺に向けて問い掛けた。俺が此処で何をやっていたのかはもう全て見られていたと踏んで相違ないだろう。
「……それ、は」
 この男は俺を殺す気だ。
 はっきりそう読み取れたのは、俺が口を開いた時、刃の向きを僅かに変えた時だ。同じ機会に眼光の気色に殺気が強まったのを感じた。
 俺は閉口した。此処で正直に言えば命は助かるぞ、と。退治屋は目でそう述べたのが判った。自然と汗が滲む。
 しかし、俺のやる事は決まっている。少し時間が掛かったが、覚悟はもう決めた。
   言わん」
「……なんだと?」
「言わん、と言ったのだ。俺が誰と話していたのかも、此処に何が潜んでいるのかもだ。判ったら早々に立ち去るがいい」
 自分では精一杯毅然として言い放ったつもりだが、その実足が震えていたに違いない。
 兎も角、退治屋は俺の言葉に舌打ちで返した。
「言えん、ではなく、言わんと返すか……お陰で心置きなく化け物を匿ったとしてお前を殺す言い訳が立つ。……覚悟する事だ」
 退治屋の刀が打ち下ろされる。獲物を携えていない俺は必死に剣筋を見極めながら躱す。しかし、鈍重な鎧に身を纏っている割に剣が速い。躱し切る事は出来ず、腕や腹、足に切り傷を幾つも作る事になった。
「どうした? 助けを呼んでもよいのだぞ」
 退治屋が湖を横目で見ながら大声でがなりたてる。
 そうか、此奴の狙いは俺の危機を餌にして龍を呼ぶ事なのだ。
 咄嗟に叫んだ。
「出てくるな! 何があっても、姿を現すんじゃないぞ!」
 退治屋は俺を殺気を纏った刀で打ち込んでくるが、全て態と急所を外している。この期に及んで龍を誘い出そうというのだ。
    そうはさせない。
 龍神姫は、人を好いて大事に思っているだけなのだ。それなのに水神と崇められ、結果長く寂しい思いに耐えてきた。
 それだけなのに、何故退治などされなければならない。
 他の神仏が納得しても、俺には到底納得出来ない。
「何をそうまでして化け物に肩入れするのか判らんな」
 退治屋がそんな事を言う頃には、俺は立つのがやっとの所となっていた。全身は完膚なきまでに切り刻まれ、血の池が地面に広がっている。それでも立っていられる丈夫な体に産んでくれた両親に感謝したかった。
「化け物に肩入れした時点でお前は人間ではなくなる。化け物だ! 人間として与えられた生を人間として過ごさぬなど、今生の恥! それを判らん馬鹿はつくづく救えん。そうは思わんか」
 俺は首を振った。
「そんな事はどうだっていい。俺は只   

    寂しがり屋な龍の願いを、叶えてやろうと思っただけなんだ。

 そんな時、続々と人々が俺と退治屋の周りに集まり始めた。
 退治屋は、傷だらけで立つ俺に目を丸くする観衆を前にして大声で喚き立てた。
「この男が化け物を匿っている。なんとしても吐かせるのだ。そうでなければ、村を滅ぼされるぞ!」
 観衆はひそひそと話し声を聞かせていたが、やがて俺に向かって石を投げ始めた。俺は余所者だから信用がなかったから当然の事だろう。血塗れの男を張り倒す等という事に躊躇があったのか、それとも退治屋の刃の先に立つ事を恐れたのか、投石という手段に帰結したらしい。
 投石で逸れた石が背後の湖に降り注ぐ。硬く角の立つ石を頭にぶつけられる度意識が遠のく。けれど、なんとしても此処で倒れる訳にはいかない。例え俺が死んでも此処に住む龍の身だけは護りたかった。願わくばこうしている内に何処か遠くへと逃げていってもらいたいと思っていた。
 だが、あの龍は   この光景を見ていたらしい。
 遠雷が轟く。途端に天は翳り、太陽の姿を隠す。まるで昼から夜になった様な激変の後、雨がぽつぽつと降り始め、それはやがて激しい風と共に人々を激しく打ち鳴らし始めた。
 しかし、その激しい風雨という物は俺の眼前で渦巻いているだけであり、俺自身を痛めつける物ではなかった。

   御主等、妾の御前で何をしておる……っ!」

 今まで聞いた事のない程の怒気を込め、龍は言った。
 風雨の渦を身に巻いて、雲の隙間から舞い降りた龍の姿はまさしく天を翔ける伝説に謳われた通りの風体を呈していた。蟲惑的な女性の姿があった場所に巨大な顎を携え、巨大で長大な体を俺達の頭上で翻して見せると、ぎろりと鋭い眼光を光らせた。
 それはもう天に轟ける正真正銘の“龍”の姿であった。
「出たな化け物。もう少し早く出てくれば良かろう物を」
 退治屋が刀を両手に握り構える。それを龍は一睨みすると、すぅ、と息を吸い込んだ。
   控えろっ!! この淡海ノ湖の主、淡海乃龍神姫の御前であるぞ!」
 万民を平伏させる覇気が、湖を、森を、山を駆け巡った。
「……その方等、一体どの様な了見で妾の住む湖に向かって大勢(たいぜい)を以って飛礫(つぶて)を投げおるのじゃ。事と次第によっては、只では済まさぬ事と知れ」
 風雨に曝され呆けてしまっている人々を前に、毅然と言い放つ龍神。その内、人々が“龍”の前で膝を着いて拝み始める様になった。
「あ、あぁ……許して下せぇ、許して下せぇ」
「こったら神様がおられるなんて知りませんで……大変な失礼を」
 すっかり人々に威厳を示した“龍”だったが、続いて退治屋の方を見遣る。
「御主が退治屋か。ふむ、妾に刃を向けるとは恐れ知らずな。どうする? その妖の血で汚れた刃を妾の肉に突き立て御主の命が絶するのと、賞賛を得ず此処で退き一寸の命を拾うのも、御主の勝手じゃぞ?」
 何時か見た時の様に、自信を大いに含ませる物言い。これで退かぬ者など虫かそれくらいの脳しか持ち合わせていないくらいの者に限られるのではないだろうか。
 退治屋は人々を見遣った。誰もが光臨せし“龍”に拝み許しを請うばかりで、誰も自分の方を見ていない。それに託け、そそくさとその場を走り去って行った。
 未だに風雨に曝されている人々は口々に「静まり下せぇ」と“龍”に懇願していた。
 “龍”は、一仕事は終えたと言わんばかりに溜息を吐いてから、人々に向かってこう述べた。
「妾をつまらぬ化生と見紛うたばかりか退治しようとまでし、序で大勢で飛礫を投げ入れ、妾を愚弄した御主等に許される証があろうか。自らの胸に手を当て、何も無いという事を確かめた者から、妾の要求を聞け」
「要求? なんだ、何を」
 一人平然と立っている俺は“龍”に振り返り問い掛けた。彼女は面立ちを崩さずに述べる。
「決まっておろう。人柱を立てよ」
 人柱   神の怒りを納める為に水中や土中に生きた人間を埋葬する事。要するに生贄だ。
 俺は困惑した。人が好きだというお前が生贄を求めるなど、あってはならない事だ。俺は雨風の音で掻き消されない様に叫んだ。
「何を言っているんだ、お前は……。お前は、人が好きだったんじゃないのか。そんなお前が、生贄など……っ、どうしてしまったんだ!」
 此処で、初めて“龍”は俺の存在に気付いたかの様に見下ろす。
「威勢のいい男じゃ。よし、この男を人柱に捧げるというのなら今回の件は水に流してやろう。どうじゃ、皆の衆」
 人々に鞭を揮う様に振っていた雨が止んで行く。皆一様に互いを見合わせ、俺に憐憫の瞳を向けて「此奴なら別にいいだろう」という様な顔を浮かべた。
「どうやら決まりの様じゃ」
 巨大な牙を覗かせてほくそ笑む“龍”。俺は何がなんだか判らなくなってしまい、その場にへたり込んでしまった。
「言っておく。人柱となるその男は丁重に扱うのじゃ。それと、妾の為の社を造って貰う。期限は三月(みつき)。広さはあの島くらいの物を、建材は千年持つ最高質の物を使え! それを一つでも怠れば、御主等に死よりも惨い天罰を下す。よいな!」
 人々が困惑にどよめくが、次々と頭を下げていく。“龍”がそれを満足気に眺めると、次第に遠雷は遠のき隠れていた太陽も顔を出し始めた。
「では、これにて妾は退散するとしよう。今後とも妾はこの湖の水を介して御主等を見守っておる。努々、忘れぬように」
 そう告げて“龍”が天に舞い上がる。その際に俺の名が囁かれた気がするが、もう俺の頭には何が起こっているのか判らず、ただただ呆然とするばかりだった。





――――――――――





 人柱となった俺は手厚く傷の手当をされた後白装束で身を改められ、村の中で一番大きい家に軟禁される形となった。食事として出される物は連日贅を尽くしたご馳走で、運ぶ者は一様に俺から目を伏せる。どうやらこの村からの精一杯の同情であったらしい。
 所でこの家屋は村の中で高い所に存在している。そのお陰で屋根裏の小窓からは湖の様子が垣間見えた。
 遠くから響く木槌の音はどうやら湖にせり出す舞台の建造に際して響く物だったらしい。よくあの龍が佇んでいた岩場は切り崩され、水面には広い範囲で木の板が浮かぶ様に並べられている。村人達は龍の要求に際し大真面目に社の建造に取り組んでいるらしい。
 俺にはどうしても判らなかった。どうしてあの龍があんな事を言ったのか。俺を人柱にするなんて……。
 疑念を浮かべながら日々を過ごし、時には湖を見遣った。三ヶ月という期限の内でどんどんと人手が増えていき、何時の間にか立派に龍を奉る外装が完成していた。その大きさは嘗てあの龍を奉っていた祠とは桁が違った。当初龍が要求した通り、まるで一つの島の様な大きさだった。
 やがて訪ね来る人が増えた。どうやら今まで見張りや給仕を行っていた人間と言葉を交わしていたお陰で、奇しくも村の人間と親交が深まったらしい。俺が人柱である事などに同情する言葉を掛けつつも気さくに話をする様になってきた。
 期限が近付き、湖に浮かぶ社はもう殆んど形になっていた。三ヶ月という厳しい期限が設けられた中で人を増やし寝ずの作業で仕上げたと、工事に関わった男が外で話すのを聞いた。何時もは俺の居る家の傍で湖の話をする者などいなかったのだが、完成を間近にして気を緩ませたらしい。その頃になると俺に会いに来る人は誰も悲壮な顔をしていた。話す内容もたどたどしい。
 もうその頃にまでなると、俺には覚悟が決まっていた。
 例え人柱として土に埋められようと、水底(みなそこ)に沈められようと、最期に、あの龍の真意を問おう。
 それだけを心の影に置き、その日を待った。


 そして   ある朝、今まで訪ねて来なかった御老公が俺を迎えに来た。
「隆広殿。今から、お前さんを龍神様の下へ連れて行く」
 若者に付き添われる御老公の表情は相変わらず読み取れなかったが、三ヶ月前よりも老け込んでしまった様に見える。
 俺は大人しく白装束の襟を正し、立ち上がった。
 かつて木々が生い茂っていたあの場所への道は舗装され、随分歩き易くなっていた。嘗て祠があった場所には何もなくなっていたが、聞く所によると社の中に移されたらしい。真っ直ぐ前を向くと、嘗てあった隘路には木の板が張られ頑丈な道が出来ている。
 その向こうには、朱で塗られた立派な社が此方に門を構えているのだ。
 大勢の若者に囲まれながら、ゆっくりと社に近付いていく。一歩ずつ歩みを進める度荘厳な空気が漂い始め、ある時からは霧が出始めた。若者達の歩みが僅かに鈍る。


    やがて社のすぐ前に辿り着くと、遠雷が響いた。太陽は雲に隠れ、温い霧がまた一層濃くなっていく。
 天を劈いて、かの“龍”が舞い降りる。人の面ではなくとも優雅に立ち振る舞うその表情からは感情が読み取れない。只一心に俺の目を覗き込んで離さないでいる彼女は、姿同然まるで以前とはまるで別人の様な佇まいで尾を揺らしていた。
「約束通り、人柱と社を用意したか。何時出来るのかと焦れておった所じゃが、中々に上出来ではないか」
 口から霧を吐き出しながら“龍”は述べた。
「さぁ……残るは人柱のみじゃ。さぁ、此方に」
 前に立つ若者が俺の顔を凝視しながら、道を開ける。
 今更引き返す等という選択肢はない。俺は怖じる風でも無く龍の腹下に立つ。俺に向ける第一声が何なのか、目を見張った。
 すると彼女は今まで笑った事がないかの様な鉄火面の装いから、微かに口の端を歪めた。
   良かった。傷もすっかり癒えたのじゃな」
 彼女は俺だけに聞こえる様な小さな声で囁いた。
 その場に居る誰もが気付かなかった様だが、傍に居る俺は確かに見聞きしたのだ。
 間違いない。是は人間を好く“龍”の顔だ。寂しがり屋な“龍”の声だ。彼女は、決して乱心したのではない。決して人を憎んだのではない。
 俺はそれが堪らなく嬉しくて。裏切られたと思っていた分嬉しくて。何故嬉しいなどと考えるのかも捨て置いて、つい先程真意を問い詰めると決意した自分が、この龍の為に命を賭けた事を後悔する自分が、悉く消え去っていくのが判る。
 だからこそ今はっきりした。

    俺は友を護れた。やっと、誰かを護る事が出来た。

「……小さき人間達よ。今後妾を愚弄する事があれば此度より更なる罰を受けてもらう事もあろう。然れば愛しき人間達よ、妾の庇護の下未来永劫栄えたいというならば、妾を奉り、月の初めに供物を捧げ続けよ。さすれば捧げた供物以上の加護を約束しよう」
 俺を連れて来た若者達と御老公は忽ち“龍”に平伏した。
「は、ははぁ! ……して、次回の人柱は誰を」
「人柱? あ、ああ……人柱はもう要らん。供物は湖の幸や御主等が作る物で構わん」
「はっ、畏まりました」
「では下がれ」
 “龍”の言に従い、御老公を始め若者達は靄の向こうに姿を消した。
 立派な社の前で一人残された俺は目頭を熱くさせながら、龍に言葉を掛けようと口を開いた。
 刹那“龍”の体から眩い光が発せられる。突然の事で目が眩んだ俺の体を何かが巻き付いて来た。
「無事で良かったっ。くたばってはおらぬかと、心配しておったのじゃぞっ」
 目の前にあったのは何時もの龍神の姿。紫染めの髪を結う、麗しい女性の姿だった。
 後から聞いた話だが、龍は力を解放すれば時にはあの様な“龍”の姿と成れるらしい。といっても人々を威圧する事を嫌う彼女達にとって、その姿を取る場面というのは早々にないらしく珍しいとの事。
 二人きりになった瞬間、彼女の中で緊張の糸が切れたらしい事が判った。俺も深く息を吐いて、何時もの振る舞いに戻った彼女に対峙する。
「矢張り演技か。全く、人柱を寄越せなどと言い始めた時はどうかしたのかと……ぅんっ!?」
    刹那、熱い感触が口元に広がった。
 それが接吻だと気付くのには時を要した。
「ん、ぷ……何を言っておるのかや。人柱は確かに立てるぞ……?」
 唇を離した後、耳元で囁かれた官能の言葉が頭を痺れさせる。
「な、ななな、何を言って……!?」
 一際強く押し付けられた豊満な双子丘から甘い香りが漂って来て、思わず声が上擦る。突然接吻された事で冷静に考えを巡らせる事など到底無理な俺に構わず、龍神姫は更に耳淵を長い舌でなぞりたてながら語る。
「判ったのじゃ。未来永劫寂しい想いをせずに済む方法が。……それはのう」

    愛しい御主と番になって、子を宿す事じゃ。

 龍は微笑んだ。逸れは慈母の様な慈しみを持って猶、淫蕩に耽入る様な娼婦の表情を呈していた。
「待て、愛しいって……」
「妾の為にあれほど身を削った御主こそ、妾と番になるのに相応しい。それに、御主は言ったではないか……妾の願いを叶えると。妾の望みは、御主と夫婦になる事じゃ」
「待て、待て!? ま、まだ心の準備が」
「御主を番にすると決めてもう三月も待ったのじゃ。……三月もじゃ。これ以上我慢しろというのかや?」
 彼女の昂ぶりに呼応するかの様に、社が構える大きな扉が一人手に開いた。
 龍神姫は俺の体を社の中へと引き擦り込み、奥へ奥へと連れ去った。何枚もの扉を抜け、行き着いた先には落ち着いた装飾の薄暗い部屋があり、其処には白い蛇に女の上半身が結わえ付けられた様な化生が二匹控えていた。
「お待ちしておりました、姫様」
 蛇の化生が恭しく頭を下げる。
「この者達は妾の僕じゃ、御主のお陰で力を得る目立ては付いたので、ケチる事もなくなったのでな」
「ケチる……? お前、まさか、幾千年前から此処に住んでいるとか嘘を吐いていた上、まさか力が無くなった云々も……!?」
 そういえばついさっきにしろ三ヶ月前にしろ、存分に力を発揮している様に見えた。今更だが、最初この龍は力を失っていると言って縋り付いて来た事をすっかり失念していた。
「強ち嘘ではないぞ? 海の様に広大なこの湖に妾の力を行き渡らせるにはそれ相応の力が必要じゃったから、必要最低限しか使う事は出来んかったのは事実じゃしのう」
 龍は意地の悪い笑みを浮かべると、そっと彼方へ指を差す。其処には橙色に光る玉が、新しく桐でこさえられた祠の中に納まっていた。
「妾達龍が持つあの玉は自身の力を形にして封じる物でな。強大な力が宿っておる。本来なら有り余る力を封じる為の物じゃが、妾の場合は不足気味じゃったからのう。いざという時の為の貯金と言った所か」
「と、言うかだな……俺のお陰で力を得る目立てが立ったって言うのは……?」
「御主の精が妾達にとっては何にも変えがたい力の源じゃからのう」
 龍はそう言うと、俺の体を地面に寝かせた。背中に柔らかい感触を憶えたので振り返って確認してみると、其処には極上の羽毛で仕立てられた布団が敷かれていたのだった。
「旦那様、お召し物を脱がせて頂きます」
 左右から蛇の化生が躙り寄るが、龍神姫はそれを御した。
「いや、事の始めは二人だけで済ます。御主等は見ているだけでよい」
「畏まりました」
 白装束に手を掛ける龍神姫。焦燥感にせがまれた俺はその手を掴み制止した。
「待ってくれ、俺は……」
 いや、よくよく考えてみれば是は俺が考えていた通りの事じゃないか。
 信仰を具現化した所で龍の寂しさは紛らう事は無い。だったら永劫形として残る物でなければいけない。それは、龍の時間に十分耐えられる物でなくてはならない。
 鑑みれば、こうなる事は必然の理であった。
 龍神姫は「判ったか?」と言わんばかりに小首を傾げて見せ、唇にもう一度接吻を落とした。
「妾の寂しさは御主で満たされていたからこそ、御主でなければならん。御主がもし拒絶するというのなら、妾は今度こそ、寂しさで死んでしまう……」
 俺の体の上に浮かびながら、白装束を剥ぐ龍。
「じゃから、此処で妾と婚姻の儀を結ぼうぞ   これでもう、お互い寂しくなくなる」
 思えば家族を失った俺も一人だった。思えば寂しいと感じていたのは俺もだったかもしれない。
 生まれたままの姿とされた俺の腰上にゆったりと龍神姫の腰が圧し掛かる。俺の両手を自身の手を重ね合わせ、じっと見詰める彼女の瞳に孤独の色など消え失せていた。
「さぁ、二人で子を生(な)そう、隆広。もうずっと一緒じゃぞ   ?」
 彼女の瞳には俺しか映っていなかった。





――――――――――





 うん? 旅の人か?
 ああ、この湖な。広いだろう。それに水も澄んでいて綺麗だ。此処で取れる魚はどれも美味いのだぞ。
 それもその筈。この淡海の湖には龍神が住んでいてなぁ。
 その龍は湖を介して人々に恵みを与える水神として地元の人間には大変尊ばれているのだ。ほら、あそこに社があるだろう? あそこに住んでいるのだ。
 ……迷信? いやいや、龍神は実際に存在している。
 ほら、あそこを見てくれ。

 親子仲良く雲の谷間を泳いでいるだろう?

 信じられないって顔をしているな。だから迷信じゃないと言ったのだ。
 それよりよく見てくれ、あの小さい方を。そう、娘の方だ。

    俺によく似ているだろう。性格は母親に似て寂しがり屋なんだが。

 そんな驚いた顔しなくたっていいだろう?
 それより早く雨宿り先を探した方がいい。これから雨乞いが始まるからな。俺も早く戻らねば親子で泣き付かれてしまうよ   






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【ちなみに】
作中にある人名、または団体は全て架空のものでありフィクションです。


12/06/22 13:16 Vutur

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