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黒揚羽の夢 |
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風薫る初夏。僕は思い出す。
焼け焦げた空に、何時しか闇の帳が降りて。 僕は真っ暗な森の中で突っ立っていて。 とても、怖い思いをしたんだと思う。 けれどそれだけは思い出せない。 だけれど、なんとなく、この肌が憶えている。 ふわふわと気持ちのよい、太陽の香り漂う黄金の毛並み。 チリン、 僕は、何者か判らない、若しかしたら人間ですらない何かに抱き締められた感触を思い出していた。 咳(しわぶ)く。 僕の命は、きっともう長くない。 だけど、死の間際にまで、その事が気に掛ってやまない。 僕はあの時、誰に出会ったのだろう |
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