連載小説
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オールマ糸『私が来た』@

事の始まりは中国 軽慶市

発光する赤子が生まれたというニュースだった!

以降各地で『超常』は発見され

原因も判明しないまま時は流れる

いつしか『超常』は『日常』に…

『架空(ゆめ)』は『現実』に!!








なるわけもなく。

今日も今日とて世界は平和です。

…そんなことを考えるくらいには、疲れていた。



『…大丈夫か?まだ体調よくないんじゃないか?無理はするなよ?』

『はぁ…まぁ、大丈夫っす』

一限目が終わっての休み時間。

どうやら早退→遅刻のコンボを決めたことで担任の先生に結構な心配をかけていたようだ。

寝坊という理由が書かれた遅刻届を提出したにもかかわらず、職員室で自分を迎えてくれたのは心温かい質問攻めだった。

…まさか『耳攻めにあって放心状態だったんですよ』なんて言えるわけもないので黙っておくが。



『いやー先生もな、若い頃は無茶をしたんだ。でもな、無茶をすれば後から必ず…』


話は先生の過去回想編に突入していた。

これはアレだろうか。

ひょっとして先生はもう死んでしまう流れなのでは…。

だとしてもあんまり長い回想編はダレる要因にしかならないんだけど…。

…そんな冗談はさておき、なぜか今日は先生のテンションが異常に高い。

『あぁ、そうだ。そういえばお前はまだ知らんかったな。今日またうちのクラスに転校生が来たんだ』

『…は?』

『いやー、こいつがまたいい奴でな。先生の話を随分と興味深そうに聞くんだよ。…おかげで随分と話し込んでな!全く、うちの娘とは正反対だよ…』

いや、先生の家庭内不和は置いといて…転校生?

2日連続で?

同じクラスに?

さらりと告げられたとんでもない最新情報に驚愕していると、赤い糸からストリーの『声』が伝わってきた。

『…縁くん、聞こえる?こっちの世界に私以外の魔物がいるみたいなの。今、学校にその分身がいるわ』

かなり慌てたようなストリーの声。
ストリーの本体とは一緒に登校してきたので、彼女も今そのことに気がついたのだろう。

『あまり下手なことをされたら困るから、私は早退して本体を探すわ。あなたも一応気をつけなさい!』

一方的にまくしたてると、それきり『声』は届かなくなる。


『…赤井?おい、赤井!』

『…!』

代わりに、先生が自分を呼んでいた。

『ほい、遅刻届。…やっぱり体調悪いんじゃないか?あんまりよくないようなら…』

『大丈夫です。もう次の授業があるんで…失礼します』

適当に切り上げて、職員室を出る。

一通り荷物をまとめたところで、思案する。

…さて、どうしたものか。

もう少しで、2限が始まる。

今までの話を総合すると…今日、ストリーとは別の魔物が分身を使って転校してきた、ということでいいのだろうか。

しかも、ストリーはそのことを事前には知らされていなかったようだ。


……。

ここからどうするか。

自分が取れる選択肢は2つだろうか。


1.このまま帰る

触らぬ神に祟りなし。
身の安全は保障されるだろうが、早退→遅刻→早退までコンボが続くと本格的に今後の学校生活に支障をきたしてくるだろう。


2.素知らぬ顔でこのまま過ごす

1よりも危険度は増すだろう。しかし、ストリーの話では相手は分身らしいし、そもそも相手が自分に興味を持つとも限らない。当然ながら、学校生活への影響も少ない。


……。


……2番だな。

転校してきたというのなら、どうせ逃げ続けるのも無理なことだ。

だったらいつ顔を合わせようとも大差はないし、向こうが転校初日ならたいして自分を印象づけることなく済むはずだ。

なんにしろ、厄介なことになった。

ただでさえ、今日の夜には…。

『はぁ…』

自分はため息をついて、心なしかいつもより重たい体と鞄を引きずって、教室へと歩き始めた。





16/05/23 02:30更新 / 島眠
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■作者メッセージ
もう一悶着ほど起こすつもりです。

…ひょっとして冒頭部分は前作含めてアウトになるのでしょうか?もしだめならご指摘ください。修正します。

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