初詣~赤い糸の導き~
新年あけましておめでとうございます!年明けといえば
おせちやお雑煮を食べる時期、良い子のみんなにお年玉がやってくる時期、
小さな子はたこ揚げやはね突きをやる時期だったりでクリスマスとは
また違った楽しみがある時期ですな!
…まぁ人によっては
「おせちキラ〜イ!」、「ゲームした〜い!」、「またお金をあげる時期がやってきた…」
つう時期になるかもしんないけど…
そんなことよりみんなは初詣にはもう行ったかな?おみくじはどうだったかな?
俺はねぇ・・・
「あ!私大吉ですよ♪太一君はどうでしたか?」
「…ん」スッ
「あ…末吉…」
何とも微妙な運勢になっちまった。
な〜んかすっきりしねぇよな、こういうのって…
「で、でも凶よりは良いですよ。それにほら、
そういう時はあそこにああやって括り付けて…」
大吉引いてるヤツに励まされるのも、ねぇ…
あんま嬉しくないな…
「な、何ですか、その目は;」
「いや、何でもない…そこで温かそうなゆず茶配ってるからもらいに行こうぜ」
まぁ確かに凶よりはマシだ、それに言ってもおみくじ、うじうじしたってしょうがない。
くじを結んでから配っている稲荷の巫女さんの元へ行き暖かいゆず茶を二つ分もらう。
太一
「ゆず茶二つくださ〜い」
稲荷の巫女
「は〜い、どうぞ〜」
太一
「いただきま〜す、ほい麗の分も」
麗
「ありがとうございます、いただきます」
ズズズ〜
ふぅ、温かさと柚子の甘さが全身に染み渡る…
横を見ると麗はちびちびとだが飲んでいる。
たまに熱そうに口を離す様子が可愛らしく、ついフフッと笑ってしまった。
「な、何ですか?;熱そうにしているのがそんなに可笑しいですか?」
「いや、おかしいとは思ってないぞ?かわいらしいって思ったんだ」
「・・・・・・もう(真っ赤)」ぷしゅ〜〜
耳まで真っ赤にしてうつむいてしまった。つい昨日あんなに大胆な行動してたってのに
そんな初々しい反応見せてくるんだもんなぁ、マジかわいらしいって思っちまうよ。
童顔が相まってより一層つうか・・・
今更だけど、麗の容姿ってあの頃からあんまり変わってないんだな、
背が少し伸びたくらいか?
いやでもまぁ容姿がほとんど変わってないってのは…
「ゆず茶いかがですか〜?暖まりますよ〜、無料ですよ〜♪」
他も大体一緒な様なもんか。
あの稲荷の巫女さんなんか俺が小さい時からあの見た目なんだよなぁ、
あそこでお守り売ってる神主さんもそうだし。
「ねぇおまえ様、こちらのお守りも買っていきませんか?」
「お父ちゃ〜ん、おみくじ買って〜♪」
いや、参拝客の方を見るとそうでもないか?
あのおじいさんはもう少し白髪が目立っていた気がするし、
あの夫婦は去年は見なかった子供を抱きかかえたりしている。
去年見かけた時は奥さんのお腹が目立っていたっけか。
「太一君?」
どうやら周りをじろじろ見過ぎたらしい;
麗が不審がる様子で話しかけてきた。
「どうしたんですか?先程から周りの人をじろじろと…」
「ああいやな、こうして周りを見てみるとあんまり変わってない人もいれば、
結構変わってる人もいるなぁって、麗は…あんまり変わったって感じしないな?」
「なっ、そ、そんな事ありませんよ!?;私だって成長くらいはしています!
確かにむ・・・体型は変わっていないかもしれませんが背丈は伸びています本当ですよ!?
実家に測った跡があるんです、何でしたら今からにでも確かめn」
「わかったわかった;俺が悪かったから一旦落ち着いて;」
俺としてはちょっと思ったこんなこと程度で話したつもりだったんだけど
思いのほか本人が気にしていたとこだったみたいだ;
「「「おおおおぉっ!!」」」
どう落ち着かせたものかと考えながら宥めていたら
多くの歓声と拍手する音が耳に入ってきた。
方向からしてとりわけ大きい神社の方かな?
「お、向こうで何かあるみたいだぞ、ちょっと行ってみようぜ?」
「ちょっ、ちょっと太一君?話をそらそうとしていませんか!?
ちゃんと聞いてください!!私怒っているんですよ?」プンスコ
プンスコといった擬音が似合いそうな怒り方をする
麗の手を引いて俺は声のした方へ行ってみた。
・
・
・
声がした方へ行ってみると本殿前で催し物が行われている様だった。
拍手で祝福している人たちの間をぬって前へ出てみるとそこにいたのは・・・
太一
(お、今やっているのって・・・)
??「おおっ、この結びが出た時って確か?」
稲荷の巫女
「はい♪近い内にお二方は子宝に恵まれるということ
を示してございます、おめでとうございます♥」
??「聞いたか健司っ!?子供ができるってよ♪」
健司「ほ、本当ですか?ど、どうしよう;」
??「何だよその反応;嬉しくないってのかよ?」
健司
「そんなことはないですけどでも近い内にって;僕たちまだ高校生なんですよ?」
太一
「よ〜う健司、あけおめ〜」
健司
「え、あっ太一君、あけましておめでとう」
ヘルハウンドの少女
「ん、だれだコイツ?健司の知り合いか?」
俺の友達である登呂健司とその彼女さんのヘルハウンド
(健司の呼び方からして『ミカ』という名前らしい)だった。
神社のイベントに二人で参加していたらしいが・・・
健司
「ま、前に会ったじゃないですか;ほら僕の学校に初めて迎えにきた時に。
その後の迎えでも何回か顔を見ているはずですよ?;」
美火
「う〜ん言われてみれば会った気はするが、
でもハッキリとはわかんねぇや!タイチ、だっけ?わりぃな;」
ミカさんは俺のことを覚えてないらしい;
女の子に面と向かって『覚えてない』なんて言われたのは初めてかもしれん、
思いの外ショックだなぁ;思い出したフリされるよりはいいんだろうけど・・・
健司
「ご、ごめんね太一君;えぇとそれじゃあ改めて…
この人は僕のお友達の後藤太一君、
後ろにいるのは太一君の恋人でエンジェルの天空麗さんです。
明けましておめでとうございます、天空さん」
麗
「明けましておめでとうございます。
登呂君もこの神社に来ていたのですね、
お隣の方はもしかして・・・」
健司
「ああ、天空さんは初めましてですね。僕の恋人でヘルハウンドの黒狗美火さんです」
言われて気がついたよそうだった、
そういや麗はミカさんと会うのは初めてか。
お互いにどういう反応をするんだろうか…ケンカとか無いよな?;
麗
「は、初めまして天空麗です。
噂には聞いていましたがまさかヘルハウンドの方だったとは;」
美火
「ヘルハウンドでくくるなよ;アタシは美火、黒狗美火だ。美火で良いぜ、
彼氏が友達同士なら会うことも多いかもだし、これからよろしくな、ウララ♪」ニカッ
麗
「あ…はい、こちらこそよろしくお願いします」ニコッ
『凶暴』で有名なヘルハウンド相手だからか若干緊張していたみたいだったが
快活な笑顔を浮かべながら握手を求めてきたミカさんの様子に安心したんだろう、
麗も笑顔で握手に応じた。どうやら仲良くやれそうでよかった。
最初に会った時も思ったけど、健司とは正反対って位に
明るくて人見知りしないんだよな。
本当にどうやって健司と知り合ったんだ?
太一「ところでおまえらが今やってるのって『良縁結び』?」
健司
「うんそうだよ、催されているのを見てたら
美火さんがすごくやりたがってさ;」
自己紹介を終えたところで二人がやっていたことについて話を切りかえる。
ここの神社、ちゃんと呼ぶなら『百縁(ほゆかり)神社』っていうんだが
名前に『縁』が入っているからか縁結びには特に力を入れていて
今二人がやっていた『良縁結び』なんかは海外でも有名なくらいの人気なイベントだ。
美火「で、出されたヒモ引っぱってみたらこれ見ろよ!」
見るからにウキウキな様子でミカさんが見せてきたのは一本の赤いひも。
それは真ん中辺りで、え〜と何結びだったかな?;
アレだなんか祝い事かなんかで送られる紙で見る結び方がされてるっぽいんだけど・・・
麗
「これは『あわじ結び』ですかね?その縁がいつまでも
続く様にという意味合いを込めた結び方だそうですが・・・」
美火
「ああ、ソコも大事らしいけどアタシが言ってんのはココ、ココ♪」
『麗さん解説ナイスです』なんて思っていたら見て欲しかった所が
ちがうらしくミカさんは結ばれた側のひも先を指さした。
言われて見るとひも先にもさらに、それも割と大きめな固結びが
出来上がっているみたいだが、これも含めて『あわじ結び』ってヤツじゃないのか?
麗
「ああやっぱり通常のでは見られない結びですよね?
これは何を意味しているんでしょうか?」
美火
「稲荷のミコさんが言うにはよ、なんとアタシと健司の子供が
できるって意味だそうだぜ?大きけりゃ大きいほど時期が近いんだとよ♪」
麗・健司「「ええっ!?」」
聞いてビックリ;
恋愛の縁にプラスで子宝の縁までわかる仕組みとは
ほんとラブラブカップルにとことんぴったりなイベントだな。
大きければ大きいほど時期が近いと言っているが・・・
健司
「この大きさだとどれ位近いとかわかるんですか?」
稲荷の巫女
「正確な日時までとはいきませんが、そうですねこの大きさですと・・・
今年の夏頃にご懐妊されると思われます♪」
美火
「おお〜♪聞いたか聞いたか?夏ごろだってよ?
アタシと健司の子供が、だぞ〜?嬉しいか?嬉しいだろケンジ♥」
健司
「そりゃ嬉しくないわけないですけど・・・;」
美火
「む〜、何だよさっきからハッキリしねぇな〜;何か不満でもあるってのかよ?」
健司
「不満ではなく不安というか・・・さっきも言いましたけど僕達まだ高校生ですよ?
無事生まれたとしてその後の学校とかお金とか・・・どうするんですか?」
美火
「そんなに不安になることか?
アタシの両親もケンジの両親も助けてくれるだろうし
政治だってそこらへん手助けしてくれるルールとか作ってんだろ?
学校だってアタシの所はデキてる娘(こ)はそこそこいるし
何なら子供連れて来てる娘(こ)までいるぞ?
ケンジの所はそういうのいないのか?」
健司
「そ、それは、見かけることはありましたけど・・・;」
ミカさんの言うことに対し健司はネガティブ気味な考えが
抜ききれない様だが、はっきりと嫌だと言う様子でもない。
大方自分にミカさんのケアや子育てがちゃんとできるのかとか親に迷惑がかかるとか
考えてるんだろうが、ミカさんが言った様にそこら辺の援助等は
政府はもちろん、どんな学校も手厚く行う様にしている。※1
親の方も魔物娘と人の間じゃまだまだ子供の出来にくいこのご時世、
子供が生まれるとなりゃどっちの両親も大喜びで力になるだろう。
楽に考えすぎるのもそりゃ良くないだろうが、
そこまで重く考えようとすることもないとは思うんだが・・・
麗
「あの、太一君・・・」
二人の会話を聞いていたら後ろから麗が声をかけて来た。
何だかそわそわしている様だが、もしかしてトイレかな?
太一
「ああ、俺はここで待っているから気にせず行きなよ。
確か本殿のとなり辺りになかったっけ?」
麗
「な、何を勘違いしているんですか?(赤)
私達も一緒にアレをやってみませんかと思ったんですが?」
こっちの勘違いに顔を赤くしながら縁結び用の箱を指さす麗。
どうやら健司たちの様子を見てやりたくなったらしい。
太一
「良いけど、でもこれ周りにいる人たちが先なんじゃないか?」
麗
「あちらの巫女の方に聞くと殆どがすでに終えている様です。
そうでない方々も見物目的とのことです」
太一
「ああそうだったのか、じゃあやってみるか」
順番を気にしなくていいのならと参加することにした。
どうやらこの箱の中に入っている色とりどりのひもの内の
一本を引っぱり上げれば良いんだろうけど・・・
稲荷の巫女
「紐の色によって該当する縁は異なります。
青色は学問、黄色は商売、緑色は健康、赤色は恋愛を指しております。
お二人が知りたい縁はどれでございますか?」
どれを引っぱれば良いのかと聞こうとした矢先
ちょうど稲荷の巫女さんがていねいに説明してくれた。
どの縁を知れるかは色で決まっているらしい。
ということは俺たちが引くひもは健司たちと同じ・・・
稲荷の巫女
「赤色、恋愛の縁でございますね?」
太一・麗
「「はい」」
巫女さんの確認に二人同時に返事する。
そのまま引っ張ろうとしたひもから箱の中で
もぞもぞと動いている様な感覚が伝わって来た。
麗が動かしているのかと思ったが
向こうも不思議に思っている様だから違うらしい。
太一
「あの、このひもしかして・・・」
稲荷の巫女
「はい、今お二方の体に流れる魔力に紐に込められた魔術が反応し
お互いが握った紐を引き合わせ結びを作ろうとしております。
ですので紐を上げるのはもう少しだけお待ちください」
麗
「ああ、最初から結ばれているわけではないんですね?」
稲荷の巫女
「はい、互いに縁を有する二人が紐を握った時に初めて
箱の中の紐先同士が動き合い結びを作る様になっております」
太一
「あの、一応聞くんですけど『ある程度の関係』
までいってないと結ばれないなんてことは・・・」
稲荷の巫女
「ご安心ください♪この『良縁結び』で結びが
作られないまま出てくるということは絶対に起こり得ません、
たとえまだ恋人同士でない時、それこそこの場で
初めて出会ったもの同士が参加なされてもお互いが
紐を掴んでさえいれば必ず結ばれた状態で現れる様になっております♪」
例えついさっきまで他人同士で会ったとしても
それもお互いの縁が働いたとみなすってことか。
なんとまぁロマンチックなと思っていたら
ひもが少し張った感じがした。これはもしかして・・・?
稲荷の巫女
「どうやらお二方の紐の結びが完成した様ですね。
もう引き上げてよろしい頃かと思われます♪」
・・・この巫女さんさっきから俺が聞きたいことを
聞く前か言い切る前に答えてくれるんだけど
もしかして心読んで来てたりしてる?
稲荷の巫女
「いえいえ♪お客様の表情から聞きたいことを
感じ取ってお答えしているだけでございます♪」
・・・どっちにせよそれで意地悪されている
わけではないしまぁ良いかということにしよう。
麗の方に目を向けると早くどうなっているのか見たいらしくこちらを見ながら
ひもをくいくいと軽く引っ張っている。ではではどうなってるかを見てみよう。
麗&太一
「「せ〜のっ、よいしょっ」」
「「「おおおおぉっ!!」」」
さっきまでの健司たちの様に観客の歓声がわき上がる。
巫女さんの言った通り俺たちのヒモにも結びが作られていた。
美火
「ウララたちのも結びが出たぞ!
でもアタシたちのとは形がちがうな?」
健司
「あれは確か相生結びですね。『共に生き共に老いる』
という意味を表す結びだったはずです」
健司たちのとは形がちがうなと思っていたらその健司から解説してもらえた。
意味合いもどうやらちがうらしいがそれ以上に気になるのは・・・
麗
「た、太一君、これって・・・」
太一
「ああ、やっぱりそうなんだな?」
稲荷の巫女
「はい、おめでとうございます♪」
これまた結ばれた側のヒモ先にできてた固結び、
もしやと思ったら巫女さんからおめでとうの言葉、
やっぱりそういうことらしい・・・
美火
「おおっ!ウララとタイチにも子供ができるみたいだな?♪」
健司
「た、太一君、天空さん・・・」
稲荷の巫女
「あらまぁ、お友達と同じ場所で同じ日に同じ縁に
恵まれるとは素晴らしいことでございますね♪」
太一
「・・・これ、この大きさだと大体どの時期くらいになりますか?」
稲荷の巫女
「そうですね、先程の組の方達と同じく・・・
いえ少し先の秋頃にご懐妊されるかと思われます♪」
健司たちと同じ子供ができることを示す結びが
出て来たことに周りがより大喜びしている中
麗の方に目を向けてみると彼女はなんとも言えない顔をしていた。
笑ってはいない、かといって嫌そうな顔を
しているわけでもなく困っている風な顔をしていた。
太一
「・・・麗も不安か?」
麗
「正直に言うと、少し・・・
ミカさんの言うことも分かるのですが気持ちとしては登呂君と同じです。
無事に産めるのか、それができたとしてもきちんと育てられるか・・・
時期が確かなら私たちはまだ学生です、学業や進路のこともあるのに
そんな中でちゃんと母親としての役割を全うできるのでしょうか?
・・・太一君に困らせたり迷惑をかけたりしないのでしょうか?」
さっきよりもより不安そうな顔でこちらを見上げて来た麗。
『一種の占いの様なもんなんだからそんな真面目に考えなくても』
と思うヤツもいるかもしれんが、この『良縁結び』は示した結果が
必ず当たることでも有名だ。だから今回のコレも
絶対にやってくる未来だと思った方がいい。
・・・ここは下手に気づかうよりも俺も正直な気持ちを話した方がいいだろうな。
太一
「・・・俺も正直に言うなら不安だぜ?
親どころかこうして女の子と付き合う様になったのだってつい最近だし。
一人っ子だったから自分より年の低い子とのふれ合い方とかマジでわからんし。
でもこれだけははっきり言える。俺の子供を産んでくれる人を
迷惑だなんて思わない、俺も一緒に麗を支えさせてくれ!」
麗
「・・・はい、はいっ!宜しくお願いしますっ!」
感動したのか涙を浮かべながらも麗はうなずいてくれた。
あまりに嬉しかったのかそのまま抱きついてきた。
翼まで使ってのがっちりホールド。
やべぇ、昨日以上に麗の体温を感じる・・・
美火「お〜、かぁっくいい〜!」
健司「太一君、すごいや・・・」
客1「ひゅ〜っ、おあついねぇお二人さん!」
客2「お幸せにね〜!」
健司やミカさんはじめ多くの人からの祝いの言葉をもらう。
不安が消えたわけじゃないけどやっぱりこうして応援してもらえると
より自信をもらえていい。
(そうさ、一人で育てるわけじゃあないんだ。
麗だって頑張ろうとしてる、きっと幸せに暮らしていけるさ!)
おせちやお雑煮を食べる時期、良い子のみんなにお年玉がやってくる時期、
小さな子はたこ揚げやはね突きをやる時期だったりでクリスマスとは
また違った楽しみがある時期ですな!
…まぁ人によっては
「おせちキラ〜イ!」、「ゲームした〜い!」、「またお金をあげる時期がやってきた…」
つう時期になるかもしんないけど…
そんなことよりみんなは初詣にはもう行ったかな?おみくじはどうだったかな?
俺はねぇ・・・
「あ!私大吉ですよ♪太一君はどうでしたか?」
「…ん」スッ
「あ…末吉…」
何とも微妙な運勢になっちまった。
な〜んかすっきりしねぇよな、こういうのって…
「で、でも凶よりは良いですよ。それにほら、
そういう時はあそこにああやって括り付けて…」
大吉引いてるヤツに励まされるのも、ねぇ…
あんま嬉しくないな…
「な、何ですか、その目は;」
「いや、何でもない…そこで温かそうなゆず茶配ってるからもらいに行こうぜ」
まぁ確かに凶よりはマシだ、それに言ってもおみくじ、うじうじしたってしょうがない。
くじを結んでから配っている稲荷の巫女さんの元へ行き暖かいゆず茶を二つ分もらう。
太一
「ゆず茶二つくださ〜い」
稲荷の巫女
「は〜い、どうぞ〜」
太一
「いただきま〜す、ほい麗の分も」
麗
「ありがとうございます、いただきます」
ズズズ〜
ふぅ、温かさと柚子の甘さが全身に染み渡る…
横を見ると麗はちびちびとだが飲んでいる。
たまに熱そうに口を離す様子が可愛らしく、ついフフッと笑ってしまった。
「な、何ですか?;熱そうにしているのがそんなに可笑しいですか?」
「いや、おかしいとは思ってないぞ?かわいらしいって思ったんだ」
「・・・・・・もう(真っ赤)」ぷしゅ〜〜
耳まで真っ赤にしてうつむいてしまった。つい昨日あんなに大胆な行動してたってのに
そんな初々しい反応見せてくるんだもんなぁ、マジかわいらしいって思っちまうよ。
童顔が相まってより一層つうか・・・
今更だけど、麗の容姿ってあの頃からあんまり変わってないんだな、
背が少し伸びたくらいか?
いやでもまぁ容姿がほとんど変わってないってのは…
「ゆず茶いかがですか〜?暖まりますよ〜、無料ですよ〜♪」
他も大体一緒な様なもんか。
あの稲荷の巫女さんなんか俺が小さい時からあの見た目なんだよなぁ、
あそこでお守り売ってる神主さんもそうだし。
「ねぇおまえ様、こちらのお守りも買っていきませんか?」
「お父ちゃ〜ん、おみくじ買って〜♪」
いや、参拝客の方を見るとそうでもないか?
あのおじいさんはもう少し白髪が目立っていた気がするし、
あの夫婦は去年は見なかった子供を抱きかかえたりしている。
去年見かけた時は奥さんのお腹が目立っていたっけか。
「太一君?」
どうやら周りをじろじろ見過ぎたらしい;
麗が不審がる様子で話しかけてきた。
「どうしたんですか?先程から周りの人をじろじろと…」
「ああいやな、こうして周りを見てみるとあんまり変わってない人もいれば、
結構変わってる人もいるなぁって、麗は…あんまり変わったって感じしないな?」
「なっ、そ、そんな事ありませんよ!?;私だって成長くらいはしています!
確かにむ・・・体型は変わっていないかもしれませんが背丈は伸びています本当ですよ!?
実家に測った跡があるんです、何でしたら今からにでも確かめn」
「わかったわかった;俺が悪かったから一旦落ち着いて;」
俺としてはちょっと思ったこんなこと程度で話したつもりだったんだけど
思いのほか本人が気にしていたとこだったみたいだ;
「「「おおおおぉっ!!」」」
どう落ち着かせたものかと考えながら宥めていたら
多くの歓声と拍手する音が耳に入ってきた。
方向からしてとりわけ大きい神社の方かな?
「お、向こうで何かあるみたいだぞ、ちょっと行ってみようぜ?」
「ちょっ、ちょっと太一君?話をそらそうとしていませんか!?
ちゃんと聞いてください!!私怒っているんですよ?」プンスコ
プンスコといった擬音が似合いそうな怒り方をする
麗の手を引いて俺は声のした方へ行ってみた。
・
・
・
声がした方へ行ってみると本殿前で催し物が行われている様だった。
拍手で祝福している人たちの間をぬって前へ出てみるとそこにいたのは・・・
太一
(お、今やっているのって・・・)
??「おおっ、この結びが出た時って確か?」
稲荷の巫女
「はい♪近い内にお二方は子宝に恵まれるということ
を示してございます、おめでとうございます♥」
??「聞いたか健司っ!?子供ができるってよ♪」
健司「ほ、本当ですか?ど、どうしよう;」
??「何だよその反応;嬉しくないってのかよ?」
健司
「そんなことはないですけどでも近い内にって;僕たちまだ高校生なんですよ?」
太一
「よ〜う健司、あけおめ〜」
健司
「え、あっ太一君、あけましておめでとう」
ヘルハウンドの少女
「ん、だれだコイツ?健司の知り合いか?」
俺の友達である登呂健司とその彼女さんのヘルハウンド
(健司の呼び方からして『ミカ』という名前らしい)だった。
神社のイベントに二人で参加していたらしいが・・・
健司
「ま、前に会ったじゃないですか;ほら僕の学校に初めて迎えにきた時に。
その後の迎えでも何回か顔を見ているはずですよ?;」
美火
「う〜ん言われてみれば会った気はするが、
でもハッキリとはわかんねぇや!タイチ、だっけ?わりぃな;」
ミカさんは俺のことを覚えてないらしい;
女の子に面と向かって『覚えてない』なんて言われたのは初めてかもしれん、
思いの外ショックだなぁ;思い出したフリされるよりはいいんだろうけど・・・
健司
「ご、ごめんね太一君;えぇとそれじゃあ改めて…
この人は僕のお友達の後藤太一君、
後ろにいるのは太一君の恋人でエンジェルの天空麗さんです。
明けましておめでとうございます、天空さん」
麗
「明けましておめでとうございます。
登呂君もこの神社に来ていたのですね、
お隣の方はもしかして・・・」
健司
「ああ、天空さんは初めましてですね。僕の恋人でヘルハウンドの黒狗美火さんです」
言われて気がついたよそうだった、
そういや麗はミカさんと会うのは初めてか。
お互いにどういう反応をするんだろうか…ケンカとか無いよな?;
麗
「は、初めまして天空麗です。
噂には聞いていましたがまさかヘルハウンドの方だったとは;」
美火
「ヘルハウンドでくくるなよ;アタシは美火、黒狗美火だ。美火で良いぜ、
彼氏が友達同士なら会うことも多いかもだし、これからよろしくな、ウララ♪」ニカッ
麗
「あ…はい、こちらこそよろしくお願いします」ニコッ
『凶暴』で有名なヘルハウンド相手だからか若干緊張していたみたいだったが
快活な笑顔を浮かべながら握手を求めてきたミカさんの様子に安心したんだろう、
麗も笑顔で握手に応じた。どうやら仲良くやれそうでよかった。
最初に会った時も思ったけど、健司とは正反対って位に
明るくて人見知りしないんだよな。
本当にどうやって健司と知り合ったんだ?
太一「ところでおまえらが今やってるのって『良縁結び』?」
健司
「うんそうだよ、催されているのを見てたら
美火さんがすごくやりたがってさ;」
自己紹介を終えたところで二人がやっていたことについて話を切りかえる。
ここの神社、ちゃんと呼ぶなら『百縁(ほゆかり)神社』っていうんだが
名前に『縁』が入っているからか縁結びには特に力を入れていて
今二人がやっていた『良縁結び』なんかは海外でも有名なくらいの人気なイベントだ。
美火「で、出されたヒモ引っぱってみたらこれ見ろよ!」
見るからにウキウキな様子でミカさんが見せてきたのは一本の赤いひも。
それは真ん中辺りで、え〜と何結びだったかな?;
アレだなんか祝い事かなんかで送られる紙で見る結び方がされてるっぽいんだけど・・・
麗
「これは『あわじ結び』ですかね?その縁がいつまでも
続く様にという意味合いを込めた結び方だそうですが・・・」
美火
「ああ、ソコも大事らしいけどアタシが言ってんのはココ、ココ♪」
『麗さん解説ナイスです』なんて思っていたら見て欲しかった所が
ちがうらしくミカさんは結ばれた側のひも先を指さした。
言われて見るとひも先にもさらに、それも割と大きめな固結びが
出来上がっているみたいだが、これも含めて『あわじ結び』ってヤツじゃないのか?
麗
「ああやっぱり通常のでは見られない結びですよね?
これは何を意味しているんでしょうか?」
美火
「稲荷のミコさんが言うにはよ、なんとアタシと健司の子供が
できるって意味だそうだぜ?大きけりゃ大きいほど時期が近いんだとよ♪」
麗・健司「「ええっ!?」」
聞いてビックリ;
恋愛の縁にプラスで子宝の縁までわかる仕組みとは
ほんとラブラブカップルにとことんぴったりなイベントだな。
大きければ大きいほど時期が近いと言っているが・・・
健司
「この大きさだとどれ位近いとかわかるんですか?」
稲荷の巫女
「正確な日時までとはいきませんが、そうですねこの大きさですと・・・
今年の夏頃にご懐妊されると思われます♪」
美火
「おお〜♪聞いたか聞いたか?夏ごろだってよ?
アタシと健司の子供が、だぞ〜?嬉しいか?嬉しいだろケンジ♥」
健司
「そりゃ嬉しくないわけないですけど・・・;」
美火
「む〜、何だよさっきからハッキリしねぇな〜;何か不満でもあるってのかよ?」
健司
「不満ではなく不安というか・・・さっきも言いましたけど僕達まだ高校生ですよ?
無事生まれたとしてその後の学校とかお金とか・・・どうするんですか?」
美火
「そんなに不安になることか?
アタシの両親もケンジの両親も助けてくれるだろうし
政治だってそこらへん手助けしてくれるルールとか作ってんだろ?
学校だってアタシの所はデキてる娘(こ)はそこそこいるし
何なら子供連れて来てる娘(こ)までいるぞ?
ケンジの所はそういうのいないのか?」
健司
「そ、それは、見かけることはありましたけど・・・;」
ミカさんの言うことに対し健司はネガティブ気味な考えが
抜ききれない様だが、はっきりと嫌だと言う様子でもない。
大方自分にミカさんのケアや子育てがちゃんとできるのかとか親に迷惑がかかるとか
考えてるんだろうが、ミカさんが言った様にそこら辺の援助等は
政府はもちろん、どんな学校も手厚く行う様にしている。※1
親の方も魔物娘と人の間じゃまだまだ子供の出来にくいこのご時世、
子供が生まれるとなりゃどっちの両親も大喜びで力になるだろう。
楽に考えすぎるのもそりゃ良くないだろうが、
そこまで重く考えようとすることもないとは思うんだが・・・
麗
「あの、太一君・・・」
二人の会話を聞いていたら後ろから麗が声をかけて来た。
何だかそわそわしている様だが、もしかしてトイレかな?
太一
「ああ、俺はここで待っているから気にせず行きなよ。
確か本殿のとなり辺りになかったっけ?」
麗
「な、何を勘違いしているんですか?(赤)
私達も一緒にアレをやってみませんかと思ったんですが?」
こっちの勘違いに顔を赤くしながら縁結び用の箱を指さす麗。
どうやら健司たちの様子を見てやりたくなったらしい。
太一
「良いけど、でもこれ周りにいる人たちが先なんじゃないか?」
麗
「あちらの巫女の方に聞くと殆どがすでに終えている様です。
そうでない方々も見物目的とのことです」
太一
「ああそうだったのか、じゃあやってみるか」
順番を気にしなくていいのならと参加することにした。
どうやらこの箱の中に入っている色とりどりのひもの内の
一本を引っぱり上げれば良いんだろうけど・・・
稲荷の巫女
「紐の色によって該当する縁は異なります。
青色は学問、黄色は商売、緑色は健康、赤色は恋愛を指しております。
お二人が知りたい縁はどれでございますか?」
どれを引っぱれば良いのかと聞こうとした矢先
ちょうど稲荷の巫女さんがていねいに説明してくれた。
どの縁を知れるかは色で決まっているらしい。
ということは俺たちが引くひもは健司たちと同じ・・・
稲荷の巫女
「赤色、恋愛の縁でございますね?」
太一・麗
「「はい」」
巫女さんの確認に二人同時に返事する。
そのまま引っ張ろうとしたひもから箱の中で
もぞもぞと動いている様な感覚が伝わって来た。
麗が動かしているのかと思ったが
向こうも不思議に思っている様だから違うらしい。
太一
「あの、このひもしかして・・・」
稲荷の巫女
「はい、今お二方の体に流れる魔力に紐に込められた魔術が反応し
お互いが握った紐を引き合わせ結びを作ろうとしております。
ですので紐を上げるのはもう少しだけお待ちください」
麗
「ああ、最初から結ばれているわけではないんですね?」
稲荷の巫女
「はい、互いに縁を有する二人が紐を握った時に初めて
箱の中の紐先同士が動き合い結びを作る様になっております」
太一
「あの、一応聞くんですけど『ある程度の関係』
までいってないと結ばれないなんてことは・・・」
稲荷の巫女
「ご安心ください♪この『良縁結び』で結びが
作られないまま出てくるということは絶対に起こり得ません、
たとえまだ恋人同士でない時、それこそこの場で
初めて出会ったもの同士が参加なされてもお互いが
紐を掴んでさえいれば必ず結ばれた状態で現れる様になっております♪」
例えついさっきまで他人同士で会ったとしても
それもお互いの縁が働いたとみなすってことか。
なんとまぁロマンチックなと思っていたら
ひもが少し張った感じがした。これはもしかして・・・?
稲荷の巫女
「どうやらお二方の紐の結びが完成した様ですね。
もう引き上げてよろしい頃かと思われます♪」
・・・この巫女さんさっきから俺が聞きたいことを
聞く前か言い切る前に答えてくれるんだけど
もしかして心読んで来てたりしてる?
稲荷の巫女
「いえいえ♪お客様の表情から聞きたいことを
感じ取ってお答えしているだけでございます♪」
・・・どっちにせよそれで意地悪されている
わけではないしまぁ良いかということにしよう。
麗の方に目を向けると早くどうなっているのか見たいらしくこちらを見ながら
ひもをくいくいと軽く引っ張っている。ではではどうなってるかを見てみよう。
麗&太一
「「せ〜のっ、よいしょっ」」
「「「おおおおぉっ!!」」」
さっきまでの健司たちの様に観客の歓声がわき上がる。
巫女さんの言った通り俺たちのヒモにも結びが作られていた。
美火
「ウララたちのも結びが出たぞ!
でもアタシたちのとは形がちがうな?」
健司
「あれは確か相生結びですね。『共に生き共に老いる』
という意味を表す結びだったはずです」
健司たちのとは形がちがうなと思っていたらその健司から解説してもらえた。
意味合いもどうやらちがうらしいがそれ以上に気になるのは・・・
麗
「た、太一君、これって・・・」
太一
「ああ、やっぱりそうなんだな?」
稲荷の巫女
「はい、おめでとうございます♪」
これまた結ばれた側のヒモ先にできてた固結び、
もしやと思ったら巫女さんからおめでとうの言葉、
やっぱりそういうことらしい・・・
美火
「おおっ!ウララとタイチにも子供ができるみたいだな?♪」
健司
「た、太一君、天空さん・・・」
稲荷の巫女
「あらまぁ、お友達と同じ場所で同じ日に同じ縁に
恵まれるとは素晴らしいことでございますね♪」
太一
「・・・これ、この大きさだと大体どの時期くらいになりますか?」
稲荷の巫女
「そうですね、先程の組の方達と同じく・・・
いえ少し先の秋頃にご懐妊されるかと思われます♪」
健司たちと同じ子供ができることを示す結びが
出て来たことに周りがより大喜びしている中
麗の方に目を向けてみると彼女はなんとも言えない顔をしていた。
笑ってはいない、かといって嫌そうな顔を
しているわけでもなく困っている風な顔をしていた。
太一
「・・・麗も不安か?」
麗
「正直に言うと、少し・・・
ミカさんの言うことも分かるのですが気持ちとしては登呂君と同じです。
無事に産めるのか、それができたとしてもきちんと育てられるか・・・
時期が確かなら私たちはまだ学生です、学業や進路のこともあるのに
そんな中でちゃんと母親としての役割を全うできるのでしょうか?
・・・太一君に困らせたり迷惑をかけたりしないのでしょうか?」
さっきよりもより不安そうな顔でこちらを見上げて来た麗。
『一種の占いの様なもんなんだからそんな真面目に考えなくても』
と思うヤツもいるかもしれんが、この『良縁結び』は示した結果が
必ず当たることでも有名だ。だから今回のコレも
絶対にやってくる未来だと思った方がいい。
・・・ここは下手に気づかうよりも俺も正直な気持ちを話した方がいいだろうな。
太一
「・・・俺も正直に言うなら不安だぜ?
親どころかこうして女の子と付き合う様になったのだってつい最近だし。
一人っ子だったから自分より年の低い子とのふれ合い方とかマジでわからんし。
でもこれだけははっきり言える。俺の子供を産んでくれる人を
迷惑だなんて思わない、俺も一緒に麗を支えさせてくれ!」
麗
「・・・はい、はいっ!宜しくお願いしますっ!」
感動したのか涙を浮かべながらも麗はうなずいてくれた。
あまりに嬉しかったのかそのまま抱きついてきた。
翼まで使ってのがっちりホールド。
やべぇ、昨日以上に麗の体温を感じる・・・
美火「お〜、かぁっくいい〜!」
健司「太一君、すごいや・・・」
客1「ひゅ〜っ、おあついねぇお二人さん!」
客2「お幸せにね〜!」
健司やミカさんはじめ多くの人からの祝いの言葉をもらう。
不安が消えたわけじゃないけどやっぱりこうして応援してもらえると
より自信をもらえていい。
(そうさ、一人で育てるわけじゃあないんだ。
麗だって頑張ろうとしてる、きっと幸せに暮らしていけるさ!)
24/01/07 23:31更新 / うたたねこっくりk
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