1章
「・・・お、収まった?」
光が収まり、目を開ける。
「いったい何が起こったんだ・・・ってあれおかしいな辺りが真っ暗だ」
さっき開けたはずなのにいつの間にか窓のカーテンも締まっていた。
「暗いな・・・何も見えない・・・」
その時ガチャッギィィィ・・・っという扉が開く音がした。
「今、凄く光ったような・・・」
聴き覚えのない声がした。
まるで小学生か中学生くらいの女の子の声だった。
「アキ、私が辺りを照らしてあげるね」
「ありがとうミズホちゃん」
(なんだどうなってるんだ)
訳もわかぬまま、いきなり辺りが明るくなり、彩登は見つかってしまう。
「あ・・・」
彩登は驚き困惑した、何故なら猫の耳をした着物少女と両足首が燃えている、女の子がいたからである。
※ ※ ※ ※ ※ ※
「・・・」
数時間後泥棒としてひっ捕らえられた彩登。
「おい、この縄解いてくれないか?」
とりあえず言葉は通じるので話しかけてみる彩登。
「無理」
即答。
「いや、あのさ俺別に物とか盗まないし」
「そういうけど、貴女どうやって蔵の中に入ったの?」
「う・・・それは・・・」
「それに仮に泥棒じゃないからってほどいてとんずらされても困るし」
両足首が燃える少女のいう事が正当すぎて反論できない彩登。
すると猫耳少女が恐る恐る声をかける。
「ね、ねぇミズホちゃんこの人も反省してるし・・・縄くらい解いてあげようよ」
「アキ!?正気??」
「う、うん・・・ダメ?」
猫耳少女はウルウルした目で訴える。
「・・・わかった、貴女感謝しなさいよ?」
ウルウルした目に負けたのか、縄を解かれた。
「あ、ありがとう、ところで君たちは?」
「そういう貴女は誰よ?見たことない魔物だけど?」
「・・・魔物??」
「新種じゃないかなミズホちゃん」
「新種?」
「でも、胸だって薄いし・・・ていうか・・・顔立ちとかもなんか・・・」
「ていうか・・・まず名前教えてくれないか?」
「相手から名前を聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀だと思はないの?」
「・・・香澄彩登」
「彩登さん・・・ですね・・・私は猫又のアキです」
「私は提灯(ちょうちん)おばけのミズホ、よろしく」
「猫又・・・提灯おばけ??」
「でさっきも聞いたけど、貴女何の魔物なの?」
「なぁさっきから魔物、魔物って言ってるけど・・・魔物ってなんだ?それに俺、爺ちゃんの家で物置小屋にいたはずなんだけど」
「貴女こそ何わけのわからない事言ってるの?」
「え?」
「ここは妖怪や魔物さんが暮らす館、カスミの館ですよ?彩登さんも泊りに来たんですよね?」
「え・・・ええええ」
これがこの物語の始まりである。
※ ※ ※ ※ ※ ※
彩登は、アキに頼み今日一日泊らせて欲しい頼み、館の一部屋を借りる事に。
「一体どうなってるんだ・・・」
彩登は事の状況を整理していた。
一つ目。物置小屋の整理をしていて、光る手鏡を持った瞬間さらに光出した。
二つ目。光が収まったと思ったら今度は猫又少女と提灯おばけ少女が住んでいた。
三つ目。館の中は祖父の館とほぼ一緒だった。
「ここはやっぱり異世界か・・・」
すると、部屋の扉からノック音がした。
「は、はい」
「彩登さん、お夜食持ってきました、すみませんが開けてもらえますか?」
「あ、ああちょっと待ってて」
部屋の玄関に行き扉を開けると、料理のお盆を持ったアキが部屋に入り、机に料理を置いていく。
「これ、全部君がつくったの?」
「はいお口に合うかわかりませんけど・・・私料理作るの好きなんです」
見た目はとても美味しそうで匂いもとても食欲を注ぐ。
「た、食べてもいいのか?」
「ええ、そのために持ってきましたから」
「じゃ・・・じゃあい、頂きます」
手を合わせ合唱して箸を持つ。
(見た目も匂いも、あまり変わらないな)
箸を持ち一口食べる。
「・・・う、うまい・・・」
がつがつと料理を食べていく彩登、それを見てアキはとても喜んでいる。
「よかったです、お口に合って」
「うん、本当においしい料理だ」
料理を食べる彩登を見るアキ。
「・・・どうかした、何かついてるか?」
「いえ、何もありません・・・ただ似てるなぁと・・・思いまして」
「似てる俺が誰に?」
「祖母の部屋にあった写真立てに一緒にいる方と」
「祖母?」
「はい、種族は違うんですが優しくて、仁徳(じんとく)があって私を育ててくれた恩人です」
「そうなのか、あのさその祖母の部屋って今はどうなってる?」
「祖母の部屋なら今は私の部屋として利用してます、もちろんその写真もありますよ」
「じゃあその写真見せてくれないか?明日でいいからさ」
「え、ええそれくらいお安御用ですけど」
「ありがとう」
「いえいえ、それよりご飯が冷めてしまいますよ」
「ああ、そうだな」
料理を再び食べる彩登、もちろん綺麗に食べ終わるとお盆に食べ終わった料理を片づけ部屋を出ようとするアキ。
「俺が持って行こうか?」
さすがに何もしない訳にはいけないと思い、声を掛ける彩登しかし。
「いえいえ、お客様に何かをさせるわけにはいきませんこれでも私ここの家長なんですので」
えっへんっと胸を張るアキ、だが彩登も引き下がらなかった。
「いや、俺が持っていくよでないとなんか失礼だし」
「・・・そうですか、ではお言葉に甘えてお盆持ってくれます?」
「ああ、任せてくれ」
お盆を受け取り、一緒に廊下を歩き厨房へ向かう彩登とアキであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
廊下を歩きながらアキと会話をする彩登、すると前方から大きな青い身体の女の子が近づいてくる。
「おお、アキ今日も飯美味しかったぜ・・・っとこいつか?蔵の中にいたっていうやつは?」
身長は彩登より少し高く、頭には角があった。
さしずめ青鬼だなと思う彩登。
「リョウカさん、こちら香澄彩登さんです」
「香澄彩登だ、よろしく」
「ふぅーんあたしはリョウカだよろしくな」
名前だけ名乗って歩いていくリョウカ。
「なんか感じ悪くないかあのリョウカって人」
「そうかもしれもませんがあれでも乙女なんですよリョウカさんわ、ただちょっと不器用な人なんです」
「そっか・・・」
再び歩いていき、食堂と書かれた札の前につく。
「ここが食堂です基本的にここで集まって食べるんです」
「そうか・・・あれ・・・俺普通に部屋で食べたけど・・・よかったのか?」
「ええ、大丈夫ですよ、ここで暮らす人の中には部屋で食べる人もいますから」
そ、そうなのかといって食堂に入り辺りを見渡すと中には誰もいなかった。
「食器は返却に入れてくださいね」
言われた通り返却口と書かれたスペースにお盆を置こうとする。
「ひょっとして全部一人でやるのか?」
しかし返却口にお盆を置くと他の魔物娘達も食べただろう食器も置いてあった。
「はい、これも家長の務めですから」
「務めって・・・今からやると結構時間かかるぞ?」
「そうですね、ですがこれも私の仕事ですので」
屈託のない笑顔で頬笑み厨房の中で一つ一つ食器を洗っていくアキ。
それを見て、彩登も厨房へ入る。
「え、彩登さん?」
「俺も手伝う」
「え、そんな事させるわけには・・・」
「いいからいいから、これは恩返しとかじゃないしただ俺もやりたいだけだから気にしないでくれ」
少し悩みアキは笑顔で言った。
「わかりました、ではお願いしますね」
「ああ」
二人で食器を一つ一つ丁寧に洗っていく。
※ ※ ※ ※ ※ ※
食堂の隅こっで厨房で彩登とアキが皿洗いをしているところを見るカスミの館の住人達がいた。
一人目はメガネをかけていていかにも学者な雰囲気を漂わせている少女。
「あれが噂の?」
二人目は噂が好きそうなボーイウィッシュな少女。
「らしいよ」
三人目は本が好きな無口少女。
「外見は微妙」
四人目はおっとり口調でいかにも天然な少女。
「でもぉ〜優しそうな方ですよぉ〜?」
五人目は高飛車でわがままな少女。
「しっかしよく面倒な事を一緒にやるわね〜」
六人目は何かを取られたかのような目をした少女。
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ・・・」
彩登達には聞こえないように小声で彩登を観察する六人がいた。
「まぁもう少し様子を見ようではないか諸君」
「そうだね私も賛成」
「その意見に賛成」
「は〜い」
「まぁ当然ですわね」
「ぶつぶつぶつ・・・」
「じゃあ解散しようかそろそろあちらも食器を洗い終わりそうだ」
そう言ってチリチリに解散していく六人であった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
かっぽーん(擬音)
皿洗いも終わり、彩登はアキに勧められ入浴中であった。
「いい湯だ・・・なんか心の疲れも取れそうだ・・・」
風呂に入りながら家族の事を考える彩登。
今頃何をしているか、自分の心配をしているかいないかも考えつつとりあえず今は早く自分の世界に帰る方法を探すしかないと思ったその時。
「彩登さん、御湯加減どうですか?」
脱衣所からアキの声が聞こえそれに答える彩登。
「ああ、言い湯加減だよ悪いな、風呂まで入れてもらって」
「それはよかったです、じゃあ私も・・・」
「私もって・・・ちょっと・・・え、まさか」
風呂場のドアを開けて、入って来るアキ・・・その姿は・・・裸ではなくスクール水着だった。
「お風呂ご一緒しますね」
「ってす、スクール水着・・・?」
胸元には大きくひらがなであきっと書かれた姿で。
「ちょ・・・なんで一緒に!?別にアキさんがも入る必要なんてないと思うし・・・」
焦り出す、彩登。
しかしアキはビシッと言う。
「何言ってるんですが彩登さん!彩登さんお皿洗いを手伝ってくれました、これはそのお礼です!!彩登さんは気にせずにお湯に浸かってください」
「いや百歩譲ってその結論はいいとしても、なんでスク水?」
「これですか?そ、それはその・・・いきなり裸を見せるのはちょっと・・・抵抗がありましたから・・・だ、ダメでしたか彩登さん?」
「いやそれでいい!!むしろそうしてくれ!」
焦りながら、落ち付こうとする彩登。
(それにしても、スク水似合いすぎだろ・・・あと、あの尻尾・・・やっぱり猫又って言うのは本当なんだな)
なんて考えながら、湯船から出ようとする彩登。
「あ、アキさん俺もう上がるから、あとはアキさんゆっくりしてくれ」
「え、もう上がっちゃうんですか・・・残念です」
若干の罪悪感を残しつつ、そそくさと風呂場から撤収する彩登・・・しかし。
(もう少しだ・・・ん?なんか踏ん)
ツルン(擬音2)
湯気が濃いせいか足元にあった石鹸に気づかずに盛大にこける。
「のぉぉぉぉ」
盛大にこけ頭を押さえ身体を縮める。
「ど、どうかしましたか?彩登さん」
幸い髪を洗っていたアキは彩登の姿を見る事が出来ないでいた。
「なんかすごい音がしましたけど?大丈夫ですか??」
痛いのを我慢し、いつもどおりに振る舞う。
「大丈夫・・・平気、平気だから気にしないくていいから」
「そ、そうですか?本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫・・・大丈夫だ」
そして風呂場から出ると。
「あ、何だお前入ってたのか」
悪いタイミングで、青鬼のリュウカがいたしかも下着姿で。
幸い目の前は棚があり自分の裸姿は見られていない。
「悪い・・・直ぐに出るから」
気付かれぬように自分の服のある方へ向かう。
「何を急ごうとしてるんだよお前・・・まぁいい」
ブラを取ろうとするリュウカを見て慌てて目をそらす。
「どうしたんだ目なんてそらしてよ?変な奴だなお前」
「な、何だっていいだろう?」
「それもそうか悪かったな」
素っ裸になり風呂場へ行くリュウカ。
「おい、アキ、なんでそんなもん着てんだよ!?」
「ふぇ?なんでって」
「こんなもんは必要ない!ここは裸の付き合いをする場所だろ」
「あぅやっぱり変でしたか?」
「ああだから脱げ!!ここで」
「ええ、ちょっとリュウカさんやめ、やめてきゃー」
アキの断末魔を聞きながら服を着替える彩登であった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
風呂から出て服も着替え終り部屋に戻った彩登。
「ふぅ・・・いい湯だったけど・・・なんかどっと疲れたな・・・こういうときは寝るのに限る」
部屋の襖(ふすま)を開けると。
「・・・」
「・・・」
「あ〜・・・ど〜・・・も〜・・・」
相手が何かを言う前に襖を閉める彩登。
「・・・今日は疲れてるんだきっと、きっとそうだ」
再び襖を開け布団を取り出そうとするが。
「わ〜・・・た〜・・・し〜・・・ご〜・・・す〜・・・と〜・・・の〜・・・リリエ〜・・・で〜・・・す〜・・・い〜・・・ご〜・・・よ〜・・・ろ〜・・・し〜・・・く〜・・・」
あわわと青覚めていく彩登。
「・・・」
そしてそのまま、気絶する彩登。
「あ〜・・・ら〜・・・?・・・大〜・・・丈〜・・・夫〜・・・で〜・・・す〜・・・か〜・・・?」
こうして、異世界一日目が終わりを告げるのであった・・・。
光が収まり、目を開ける。
「いったい何が起こったんだ・・・ってあれおかしいな辺りが真っ暗だ」
さっき開けたはずなのにいつの間にか窓のカーテンも締まっていた。
「暗いな・・・何も見えない・・・」
その時ガチャッギィィィ・・・っという扉が開く音がした。
「今、凄く光ったような・・・」
聴き覚えのない声がした。
まるで小学生か中学生くらいの女の子の声だった。
「アキ、私が辺りを照らしてあげるね」
「ありがとうミズホちゃん」
(なんだどうなってるんだ)
訳もわかぬまま、いきなり辺りが明るくなり、彩登は見つかってしまう。
「あ・・・」
彩登は驚き困惑した、何故なら猫の耳をした着物少女と両足首が燃えている、女の子がいたからである。
※ ※ ※ ※ ※ ※
「・・・」
数時間後泥棒としてひっ捕らえられた彩登。
「おい、この縄解いてくれないか?」
とりあえず言葉は通じるので話しかけてみる彩登。
「無理」
即答。
「いや、あのさ俺別に物とか盗まないし」
「そういうけど、貴女どうやって蔵の中に入ったの?」
「う・・・それは・・・」
「それに仮に泥棒じゃないからってほどいてとんずらされても困るし」
両足首が燃える少女のいう事が正当すぎて反論できない彩登。
すると猫耳少女が恐る恐る声をかける。
「ね、ねぇミズホちゃんこの人も反省してるし・・・縄くらい解いてあげようよ」
「アキ!?正気??」
「う、うん・・・ダメ?」
猫耳少女はウルウルした目で訴える。
「・・・わかった、貴女感謝しなさいよ?」
ウルウルした目に負けたのか、縄を解かれた。
「あ、ありがとう、ところで君たちは?」
「そういう貴女は誰よ?見たことない魔物だけど?」
「・・・魔物??」
「新種じゃないかなミズホちゃん」
「新種?」
「でも、胸だって薄いし・・・ていうか・・・顔立ちとかもなんか・・・」
「ていうか・・・まず名前教えてくれないか?」
「相手から名前を聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀だと思はないの?」
「・・・香澄彩登」
「彩登さん・・・ですね・・・私は猫又のアキです」
「私は提灯(ちょうちん)おばけのミズホ、よろしく」
「猫又・・・提灯おばけ??」
「でさっきも聞いたけど、貴女何の魔物なの?」
「なぁさっきから魔物、魔物って言ってるけど・・・魔物ってなんだ?それに俺、爺ちゃんの家で物置小屋にいたはずなんだけど」
「貴女こそ何わけのわからない事言ってるの?」
「え?」
「ここは妖怪や魔物さんが暮らす館、カスミの館ですよ?彩登さんも泊りに来たんですよね?」
「え・・・ええええ」
これがこの物語の始まりである。
※ ※ ※ ※ ※ ※
彩登は、アキに頼み今日一日泊らせて欲しい頼み、館の一部屋を借りる事に。
「一体どうなってるんだ・・・」
彩登は事の状況を整理していた。
一つ目。物置小屋の整理をしていて、光る手鏡を持った瞬間さらに光出した。
二つ目。光が収まったと思ったら今度は猫又少女と提灯おばけ少女が住んでいた。
三つ目。館の中は祖父の館とほぼ一緒だった。
「ここはやっぱり異世界か・・・」
すると、部屋の扉からノック音がした。
「は、はい」
「彩登さん、お夜食持ってきました、すみませんが開けてもらえますか?」
「あ、ああちょっと待ってて」
部屋の玄関に行き扉を開けると、料理のお盆を持ったアキが部屋に入り、机に料理を置いていく。
「これ、全部君がつくったの?」
「はいお口に合うかわかりませんけど・・・私料理作るの好きなんです」
見た目はとても美味しそうで匂いもとても食欲を注ぐ。
「た、食べてもいいのか?」
「ええ、そのために持ってきましたから」
「じゃ・・・じゃあい、頂きます」
手を合わせ合唱して箸を持つ。
(見た目も匂いも、あまり変わらないな)
箸を持ち一口食べる。
「・・・う、うまい・・・」
がつがつと料理を食べていく彩登、それを見てアキはとても喜んでいる。
「よかったです、お口に合って」
「うん、本当においしい料理だ」
料理を食べる彩登を見るアキ。
「・・・どうかした、何かついてるか?」
「いえ、何もありません・・・ただ似てるなぁと・・・思いまして」
「似てる俺が誰に?」
「祖母の部屋にあった写真立てに一緒にいる方と」
「祖母?」
「はい、種族は違うんですが優しくて、仁徳(じんとく)があって私を育ててくれた恩人です」
「そうなのか、あのさその祖母の部屋って今はどうなってる?」
「祖母の部屋なら今は私の部屋として利用してます、もちろんその写真もありますよ」
「じゃあその写真見せてくれないか?明日でいいからさ」
「え、ええそれくらいお安御用ですけど」
「ありがとう」
「いえいえ、それよりご飯が冷めてしまいますよ」
「ああ、そうだな」
料理を再び食べる彩登、もちろん綺麗に食べ終わるとお盆に食べ終わった料理を片づけ部屋を出ようとするアキ。
「俺が持って行こうか?」
さすがに何もしない訳にはいけないと思い、声を掛ける彩登しかし。
「いえいえ、お客様に何かをさせるわけにはいきませんこれでも私ここの家長なんですので」
えっへんっと胸を張るアキ、だが彩登も引き下がらなかった。
「いや、俺が持っていくよでないとなんか失礼だし」
「・・・そうですか、ではお言葉に甘えてお盆持ってくれます?」
「ああ、任せてくれ」
お盆を受け取り、一緒に廊下を歩き厨房へ向かう彩登とアキであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
廊下を歩きながらアキと会話をする彩登、すると前方から大きな青い身体の女の子が近づいてくる。
「おお、アキ今日も飯美味しかったぜ・・・っとこいつか?蔵の中にいたっていうやつは?」
身長は彩登より少し高く、頭には角があった。
さしずめ青鬼だなと思う彩登。
「リョウカさん、こちら香澄彩登さんです」
「香澄彩登だ、よろしく」
「ふぅーんあたしはリョウカだよろしくな」
名前だけ名乗って歩いていくリョウカ。
「なんか感じ悪くないかあのリョウカって人」
「そうかもしれもませんがあれでも乙女なんですよリョウカさんわ、ただちょっと不器用な人なんです」
「そっか・・・」
再び歩いていき、食堂と書かれた札の前につく。
「ここが食堂です基本的にここで集まって食べるんです」
「そうか・・・あれ・・・俺普通に部屋で食べたけど・・・よかったのか?」
「ええ、大丈夫ですよ、ここで暮らす人の中には部屋で食べる人もいますから」
そ、そうなのかといって食堂に入り辺りを見渡すと中には誰もいなかった。
「食器は返却に入れてくださいね」
言われた通り返却口と書かれたスペースにお盆を置こうとする。
「ひょっとして全部一人でやるのか?」
しかし返却口にお盆を置くと他の魔物娘達も食べただろう食器も置いてあった。
「はい、これも家長の務めですから」
「務めって・・・今からやると結構時間かかるぞ?」
「そうですね、ですがこれも私の仕事ですので」
屈託のない笑顔で頬笑み厨房の中で一つ一つ食器を洗っていくアキ。
それを見て、彩登も厨房へ入る。
「え、彩登さん?」
「俺も手伝う」
「え、そんな事させるわけには・・・」
「いいからいいから、これは恩返しとかじゃないしただ俺もやりたいだけだから気にしないでくれ」
少し悩みアキは笑顔で言った。
「わかりました、ではお願いしますね」
「ああ」
二人で食器を一つ一つ丁寧に洗っていく。
※ ※ ※ ※ ※ ※
食堂の隅こっで厨房で彩登とアキが皿洗いをしているところを見るカスミの館の住人達がいた。
一人目はメガネをかけていていかにも学者な雰囲気を漂わせている少女。
「あれが噂の?」
二人目は噂が好きそうなボーイウィッシュな少女。
「らしいよ」
三人目は本が好きな無口少女。
「外見は微妙」
四人目はおっとり口調でいかにも天然な少女。
「でもぉ〜優しそうな方ですよぉ〜?」
五人目は高飛車でわがままな少女。
「しっかしよく面倒な事を一緒にやるわね〜」
六人目は何かを取られたかのような目をした少女。
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ・・・」
彩登達には聞こえないように小声で彩登を観察する六人がいた。
「まぁもう少し様子を見ようではないか諸君」
「そうだね私も賛成」
「その意見に賛成」
「は〜い」
「まぁ当然ですわね」
「ぶつぶつぶつ・・・」
「じゃあ解散しようかそろそろあちらも食器を洗い終わりそうだ」
そう言ってチリチリに解散していく六人であった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
かっぽーん(擬音)
皿洗いも終わり、彩登はアキに勧められ入浴中であった。
「いい湯だ・・・なんか心の疲れも取れそうだ・・・」
風呂に入りながら家族の事を考える彩登。
今頃何をしているか、自分の心配をしているかいないかも考えつつとりあえず今は早く自分の世界に帰る方法を探すしかないと思ったその時。
「彩登さん、御湯加減どうですか?」
脱衣所からアキの声が聞こえそれに答える彩登。
「ああ、言い湯加減だよ悪いな、風呂まで入れてもらって」
「それはよかったです、じゃあ私も・・・」
「私もって・・・ちょっと・・・え、まさか」
風呂場のドアを開けて、入って来るアキ・・・その姿は・・・裸ではなくスクール水着だった。
「お風呂ご一緒しますね」
「ってす、スクール水着・・・?」
胸元には大きくひらがなであきっと書かれた姿で。
「ちょ・・・なんで一緒に!?別にアキさんがも入る必要なんてないと思うし・・・」
焦り出す、彩登。
しかしアキはビシッと言う。
「何言ってるんですが彩登さん!彩登さんお皿洗いを手伝ってくれました、これはそのお礼です!!彩登さんは気にせずにお湯に浸かってください」
「いや百歩譲ってその結論はいいとしても、なんでスク水?」
「これですか?そ、それはその・・・いきなり裸を見せるのはちょっと・・・抵抗がありましたから・・・だ、ダメでしたか彩登さん?」
「いやそれでいい!!むしろそうしてくれ!」
焦りながら、落ち付こうとする彩登。
(それにしても、スク水似合いすぎだろ・・・あと、あの尻尾・・・やっぱり猫又って言うのは本当なんだな)
なんて考えながら、湯船から出ようとする彩登。
「あ、アキさん俺もう上がるから、あとはアキさんゆっくりしてくれ」
「え、もう上がっちゃうんですか・・・残念です」
若干の罪悪感を残しつつ、そそくさと風呂場から撤収する彩登・・・しかし。
(もう少しだ・・・ん?なんか踏ん)
ツルン(擬音2)
湯気が濃いせいか足元にあった石鹸に気づかずに盛大にこける。
「のぉぉぉぉ」
盛大にこけ頭を押さえ身体を縮める。
「ど、どうかしましたか?彩登さん」
幸い髪を洗っていたアキは彩登の姿を見る事が出来ないでいた。
「なんかすごい音がしましたけど?大丈夫ですか??」
痛いのを我慢し、いつもどおりに振る舞う。
「大丈夫・・・平気、平気だから気にしないくていいから」
「そ、そうですか?本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫・・・大丈夫だ」
そして風呂場から出ると。
「あ、何だお前入ってたのか」
悪いタイミングで、青鬼のリュウカがいたしかも下着姿で。
幸い目の前は棚があり自分の裸姿は見られていない。
「悪い・・・直ぐに出るから」
気付かれぬように自分の服のある方へ向かう。
「何を急ごうとしてるんだよお前・・・まぁいい」
ブラを取ろうとするリュウカを見て慌てて目をそらす。
「どうしたんだ目なんてそらしてよ?変な奴だなお前」
「な、何だっていいだろう?」
「それもそうか悪かったな」
素っ裸になり風呂場へ行くリュウカ。
「おい、アキ、なんでそんなもん着てんだよ!?」
「ふぇ?なんでって」
「こんなもんは必要ない!ここは裸の付き合いをする場所だろ」
「あぅやっぱり変でしたか?」
「ああだから脱げ!!ここで」
「ええ、ちょっとリュウカさんやめ、やめてきゃー」
アキの断末魔を聞きながら服を着替える彩登であった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
風呂から出て服も着替え終り部屋に戻った彩登。
「ふぅ・・・いい湯だったけど・・・なんかどっと疲れたな・・・こういうときは寝るのに限る」
部屋の襖(ふすま)を開けると。
「・・・」
「・・・」
「あ〜・・・ど〜・・・も〜・・・」
相手が何かを言う前に襖を閉める彩登。
「・・・今日は疲れてるんだきっと、きっとそうだ」
再び襖を開け布団を取り出そうとするが。
「わ〜・・・た〜・・・し〜・・・ご〜・・・す〜・・・と〜・・・の〜・・・リリエ〜・・・で〜・・・す〜・・・い〜・・・ご〜・・・よ〜・・・ろ〜・・・し〜・・・く〜・・・」
あわわと青覚めていく彩登。
「・・・」
そしてそのまま、気絶する彩登。
「あ〜・・・ら〜・・・?・・・大〜・・・丈〜・・・夫〜・・・で〜・・・す〜・・・か〜・・・?」
こうして、異世界一日目が終わりを告げるのであった・・・。
12/02/24 03:46更新 / さわ
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