本心、愛交、祝福
ついに手が放れた…
彼女の体をフワッとした感覚が包んだ…
次の瞬間、急にその感覚がなくなり腕にぬくもりを感じた。はっとして上を見上げたロザリアは言葉を無くした。
左手で蔦を掴み、右手で彼女の腕をしっかりと握った男が一人。
「ウィ、ウィル…!?」
彼は何も言わずにロザリアを引き上げ、抱きかかえた。
「しっかり掴まっていてください」
そう言うと崖面を歩くようにして振り子のように勢いを付けて、一気に崖の上に登った。
崖の上でウィリアムは片膝を付き、ロザリアはそのまま地面の上へ座っていた。
「大丈夫ですか、お嬢様?」
「え、ええ…どうしてここが?」
「屋敷に一度戻りましたが居られないようでしたので、しばらく捜していますと、車いすの車輪の跡を見つけましたので追って参りました」
そう言うとウィリアムは不思議そうな顔をして質問をした。
「ですが、なぜこの様なところに?」
「聞きたいのは私の方よっ!今までどこにいたの?」
ロザリアはウィリアムの服の胸の当たりを握って言った。
「はい?ロケットを探しに出ておりましたが…」
「ロケットを?ならばどうして何も言わず、書き置きの一つも…」
「書き置きならちゃんとお嬢様の机の上に置いておきましたが?」
きょとんとしてウィリアムは答えた。
「何もなかったわっ!」
「…もしかすると何かの拍子に落ちてしまったのかもしれませんね…」
「だとしてもこの二日間探し続けたなんて、いくら何でも長すぎるっ!
せめて夜には帰ってくるべきよ!」
「…それには訳がありまして…ここで居るわけにもまいりませんので、屋敷へ戻りながらお話しいたします」
ウィリアムはロザリアを抱きかかえ、屋敷へ戻りはじめた。
彼はしばらくして話を始めた。
「私がロケットを探しに出たのは二日前の日中です。当初は夜には一旦戻るつもりでおりました。
時間の許す限り私は探し続けましたが、やはり見つかりませんでした…」
「………」
ロザリアはただ黙ってその話に耳を傾けていた。
「夕暮れになった頃、光に気づき崖を見上げると、崖の途中から伸びた枝にロケットが引っ掛かっていたのを発見し、直ちに取りに向かいました。
見つけて油断したのか、運が悪かったのか…足場が崩れ私は結構な高さから崖下へ転げ落ちました。
次に気が付くと、私はベッドに寝かされていました。偶々通りかかった方が病院に運び入れてくれたのだと、医師から聞かされました」
「それで…平気なのか…?」
「ご心配には及びません。今は全く問題有りませんから…
…ただその時は激しく体を打ち付けていたらしく危なかったそうですが、躯がインキュバス化していたのが幸いして、回復が思いの外早く、すぐに退院出来ました」
「…そうか」
「はい。目が覚めたのが今日の昼で、そこから退院を許されるまで結局半日掛かってしまいました…」
二人は屋敷に入り、ウィリアムは代えの車いすを用意し、ロザリアを座らせた。
「どうぞ、お探しのロケットです…おそらく壊れていないと思いますが…」
ウィリアムはロザミアの部屋でロケットを渡した。
「………。たしかに無事なようね…」
「申し訳有りません、元はといえば私の不注意の致しましたところ。私が留守にしてしまった間、お嬢様には不自由を…」
「ええ、全くよ。料理も自分で取ってこなければならないし」
(違う…)
「このスロープも自分で登らなければならないし」
(こんな事を言いたい訳じゃないでしょ…?!)
「不自由だらけだったわね。とても面倒なことばかりだったわ…」
「申し訳有りませんでした」
ウィリアムはロザリアの前に出て、頭を深々と下げた。
(私は…またウィルを困らせてる…)
「違う…」
「はい…?」
「違うわ…本当はこんな事を言いたいのではないの…」
そう言うとロザリアは静かに泣き始めた。ウィリアムは戸惑った様子で声を掛けた。
「お、お嬢様?!どうなさったのです?」
「ウィル…」
「はい…?」
「あなたは私のことが…嫌いよね…?」
「えっ?」
ロザリアが思い切って振り絞った一言。
「誤魔化さなくても良いのよ…だってそうとしか思えない…」
「なぜ…そうお思いなのです…?」
ロザリアの上擦った泣き声に、ウィリアムは静かに言った。
「私は…あなたを困らせてばかりで…こき使ってばかりで…わがままを言ってばかりで…
…あなたは頑張って私のわがままを叶えたり…じっと、私の八つ当たりに耐えたり…なのに…なのに私は…あなたに労いや感謝やお詫びの言葉も掛けないで………」
「…お嬢様…」
ロザリアの目から涙が溢れだして止まらなかった。
「…あの人形…憶えてる…?」
ロザミアが指さしたあのぬいぐるみ。ウィリアムは近寄ってそれを持ち抱えた。
「ええ、私が初めてお嬢様のために買ってきた物です。ずっと持っていてくださって…」
「…あのとき、私がした『一緒に居てくれる』っていう質問に、あなたがなんて答えたかも…?」
「…はい。『お嬢様さえよろしければ』…と」
ウィリアムは振り返って答えた。
「…憶えていてくれたのね………なのに私は、今日の夜までその事を忘れて…ぅぅっ…ウィルが私のために傍にいてくれてるのにぃ………私…私ぃ…」
ロザリアは言葉を話すのがやっとになってきているようだったが、ウィリアムは敢えて止めることはしなかった。ただ近づいて跪き、その涙の流れる顔を見つめるしかできなかった。
「今度だって…ウィルに『顔も見たくない』って…『どっかいっちゃえ』ってぇ……うぅ…うぅぅ…」
「お嬢様…」
「わたし…あなたの部屋に入ろうとした……でもできなかったぁ…」
「…なぜです?」
「もし…もしあなたが私を嫌ってることが分かったら…どうしようってぇ…怖かったぁ…それから何にも荷物がなかったらどうしようってぇ…考えたら………もっと怖かったぁぁ…」
流れてくる涙を、手で拭い拭って、それでも涙は止まらない。
「………ごめんなさいぃっ…あんな事言ってごめんなさいぃ…」
ロザリアはウィリアムに抱き付いて、謝罪の言葉を告げた。
「…今までの事っ、全部謝るからぁ…私のことっ、嫌いでも良いからぁ……お願いっ…もう一人にしないでぇ………」
ウィリアムを抱き締める力が強くなった。彼もロザリアを抱き締めた。
「ウィルぅ…?」
「…どこにも行きません。私は…いや、僕は…どこにも行かない。ロザリアが望む限り、ずっと傍にいるから…」
「うぅっ…ううぅっ…うわぁあぁぁ………あぁあぁぁっ……」
優しく抱き締めるウィリアムを強く抱き締めて、ロザリアは大いに泣いた。いつしか、その涙はうれし涙に変わっていた。
暫くウィリアムに抱きついて泣いていたがようやく落ち着き、ロザリアは静かに座っていた。しかし、その手はしっかりとウィリアムの手を握って離さなかった。
ウィリアムは静かにロザリアの前に跪き、手を差し伸べたまま静止していた。
「ねぇ…」
ロザリアはやっと口を開いた。
「なんでしょうか?」
「…ウィルは…わ、私のことをどう思っているの?」
「………」
ウィリアムは暫く黙り込んで考え、ロザリアが不安そうに俯きウィリアムを見つめた。
「…そうですねぇ、わがままで、怒りっぽくて、いつも大変ですよ…」
「ぅ……」
ロザリアは口を噤(つぐ)んだ。
「…ですけど、本当は優しくて、寂しがり屋で、不安がりで、私はそんなお嬢様を嫌いではありませんよ? むしろ、お世話出来て嬉しいです」
「…本…当に?」
「ええ、ほんとうです。その証拠に…ごらんになりますか? 私の部屋を」
ロザリアは一度だけコクッと頷き、ウィリアムはその返事を見ると車いすを押し一階に下りた。
扉を開け奥に進み、自室の戸を開け中に入った。
部屋の中はロザリアが思って入るのをためらったような、禍々しいようなものではなく普通の部屋であった。自室も掃除されていてきれいに保たれていた。
扉の正面の壁には窓がありその前にベッドが置かれ、左の壁には机とその横に本棚。反対側にはクローゼットと姿見、その横には刀剣が壁に飾られていた。
「どうです?普通でしょう?」
「…そうね、…よかった…けど、あなた自身はどうなの?辛くはないの?」
「…そうですねぇ、確かに感情を抑えるのに苦労もありますが…」
「感情を?どんな?」
「色々…ですかね…。
中でも一番大きな感情を抑えるのには苦労しますよ」
ウィリアムは戸を閉めて、自分のベッドの傍までよりながらそう言って、振り返った。
「どんな感情だと思いますか?」
彼は笑って訊いた。
「…解らないわ…いえ、解ってしまうのが怖いの…もしそれが…」
「恨みや、怒り…だったらですか?」
「……えぇ、そうよ」
「大丈夫です、そんなものじゃありませんから…」
「それじゃ…もう見当も付かないわね…」
ロザリアは少し呆れたように頬笑んで、俯いた。
ウィリアムはそっと彼女に近寄って、腰を曲げて顔を近づけた。
「……血、お飲みになりますか?」
「え?え、ええ…あなたが良いというならいただくわ、二日飲めていなかったし…」
ロザリアは彼が腕を出すのを一瞬待っていたが、ウィリアムは右に首を傾げて首筋を近づけた。
ロザリアは一瞬驚きながらもその首筋に牙を突き立てた。
二人に快感が走る。が、ウィリアムは至って冷静なまま。
「ん…んん…」
ロザリアは耐えきれず、僅かに声を漏らした。と、その時ウィリアムの腕がロザリアを包み、そのままお姫様だっこして持ち上げた。
「なっ、ウィ、ウィリアム!?」
驚いて口を離したロザリアは目を丸くして、ウィリアムはそんな彼女をベッドの上に降ろした。
「血だけ、でよろしいのですか?」
「え?」
「お嬢様…私は、いえ…僕は…お嬢様が好きですっ!」
「えっ?えっ!?」
突然の告白に、ロザリアは手に軽く拳を作り胸の前で会わせるようにして縮こまった。そして「血だけ、でよろしいのですか?」という言葉の意味を瞬時に理解して、目を反らせた。
「だが…に、人間のお前などと…」
と拒絶の言葉を口にしたとき、ウィリアムは落胆の笑みを浮かべた。
「やっぱり人の話を聞いていない…」
「え…?」
「ここに帰る途中に言いましたよ?『インキュバス化していたおかげで助かった』と…」
今度は嬉しそうな笑みが現れる。
「え、じゃあその、ウィルは…」
「魔物ですよ、もう」
ウィリアムのその言葉を聞いてロザリアの表情が変わる。次の瞬間にはウィリアムはロザリアの唇を奪っていた。
「んっ…んんっ…」
唇と唇を離すとロザリアの呼吸は少し荒くなっていた。
「いけませんか?」
ウィリアムは不安げな顔で訊ねた。
ロザリアはフルフルと首を振って、そうでない事を示した。
「ウィリアム…もっと…」
ウィリアムはまたロザリアの唇に唇を重ね、暫くしてまた離した。
「…まだ…」
三度目のキスをしたとき、ロザリアの腕がウィリアムの背中に回って抱き寄せた。
ウィリアムは片方の手でロザリアの頭を引き寄せ、もう片方でロザリアの動かない左足をの腿の後ろを撫で上げた。
「んっ…」
手はそのまま前の方に回り、ショートパンツの上から敏感な部分を撫でる。
「くふぅ…んっ、んふっ、んんっ…」
ホックとジッパーを外し、乱暴にパンツと一緒にずり降ろした。
そして両足から抜き、部屋の床に乱暴に投げ捨てた。いつものウィリアムからは想像できない行動だった。
「ウィ、ウィリアム…」
ウィリアムは唇を離し、体を下げて顔を彼女の股間の前に持ってきた。そして動かせないロザリアの足をウィリアムが広げた。毛の少ない秘部が露わになり、透明な液が少し出てきているのがわかった。
「は、恥ずかしいから、ちょっと待って…」
「嫌ですよ、いつもわがままを好きに言ってるんです。だから今日は僕の言うことを聞いてもらいますっ!」
「ひゃぁんッ―!」
ウィリアムの口が割れ目を覆い込んだ。そして舌が割れ目をなぞり、その割れ目の奥へと進入して行く。
「あぅッ、あんッ、あぁん、あぁ、あぁぁんッ」
ざらざらした舌の感触が誰も触れたことのなかった敏感なところを刺激し、体験したことのない快感が走った。
彼は舌を割れ目上部の小さな小さな突起に伸ばし、両手で股の両側の皮膚を少し引っ張り広げた。
「や、だめぇ…」
そんな言葉を無視して、ウィリアムはその突起の皮を舌で捲っていった。
「やぁぁあッ、あッ、あぁああッ、ウィ、ウィルッ、ダメッ…ダメッ―!」
もう少しでその突起が本体を現そうとした時、ロザリアの手がウィリアムの頭部を押し離した。
「ハァ、はぁ…はぁ…」
「…はぁ、何するんですか?お嬢様」
ウィリアムは丁寧な文句を言った。
「だ、だって…アソコが…ビリビリして…お腹が…キュゥってなってぇ…」
「しょうがないなぁ…」
ウィリアムは手をカーテンに伸ばし、思いっきり開いた。
「眩しッ―」
ロザリアは日光を遮ろうと手を目の前に出した。
ウィリアムはその間にネクタイを解きながら、彼女の体を跨いで上がってくると両手首を掴み解いたネクタイで束ね、一端を腕の間を通して腕が抜けないようにして一度結んだ。そしてグイッと引っ張りバンザイさせるとベッドの柵に結んで拘束した。
「これで、お嬢様は手が出せませんね?」
「ウィルッ、ちょっとッ!」
ウィリアムは元の位置に戻り、開いたままの足の付け根に顔を近づけて、今度は下から腕を回して足を抱え腰を浮かせた。
再びクリトリスの包皮を剥こうと舌を器用に動かした。
「ひゃあッ、ダメッ―、やめッ―、あッ、きゃうッ、きゃぁッ、あぁあッ―」
ロザリアの腕や腹に力が入り、手はシーツを握りしめている。
そして遂にクリトリスは包皮を剥がれ、中身を露わにした。
ウィリアムはそれをパクッとくわえ込むと、吸い上げて少しだけ根本の方を噛み固定して、舌先で転がしたり舌全体で舐めた。
「あぁあぁぁッ―、ああぁあぁッ―、ダメッ、ダメッ―、おかしくッ、おかしくなっちゃうッ、吸っちゃダメッ、噛んじゃダメェッ―!
あぁぁッ、いやッ―、いやぁッくぁッ―――あんッ、はぁ…はぁ…、はぁ…はぁ…はぁ…ひゃうっ…」
大声を挙げながら、ロザリアは体をピンッと張るようにして何回か震えた。そして急に脱力し、荒い息をした。
ウィリアムの口元はしっとりと…いや、グッチョリと濡れていた。彼は腕で拭い、再びロザリアの秘部に口を付けて啜った。
「やぁあぁッ…吸っちゃダメぇッ…」
「こんなにしちゃって、気持ちよかったですか?」
「知らないッ、バカウィルッ!」
ウィリアムはロザリアの腰をゆっくりと降ろした。
ウィリアムは手を伸ばし、ドレスのボタンを外して前を開かせて、手首の方へ袖を縮めながら上げ去ってしまうと、前に付いたブラのホックを外し同じく手首の所へ上げた。
彼もそのワイシャツのジャケットと中に来ていたベスト、ワイシャツ、肌着を脱ぎ、ベルトとズボンのホックを外し、パンツと一緒にその辺へ脱ぎ散らかしてしまった。その後、靴下等も脱がせて自分も脱ぎ、完璧に二人は全裸になった。
未だ息の荒いロザリアは、以外にも鍛えられていたウィリアムの体にドキッとしながらも、その目はそそり立つ下半身へ向いた言った。
「っ……!」
少し驚きおののく代物だった。
だがウィリアムはそれをすぐに入れようとはせず、覆い被さるように寝ると唇を重ねて指で秘部を擦った。そして指を根本で曲げ、ヌルヌルとして抵抗の少なくなった膣の中へと入れた。
「んんッ〜、んッ、んんッ!」
キスをされているのでくぐもった喘ぎ声を上げるしか出来なかったロザリアの膣は、中指一本を十分キツく締め付けた。
何度か速く指の出し入れを繰り返し、頃合いを見計らって二本目に薬指を入れた。そしてまた幾度か速く出し入れを繰り返した。
「んッ、ンッ、んッ、んんッ…」
ウィリアムは突然鉤爪状に指を曲げて、手マンを続けた。
「んん〜ッ、ん〜ッ、んッ、んんッ…んあッ、あッ、ダメッ!」
ロザリアは首を左右に激しく振り、ウィリアムと唇を離して喘ぎ声を解放した。
「あッ、やぁあぁッ! あぁんッ、あッ、はぁッ、ダメッ、だめェェッ、またッ、またイッ―――あぁッ…はぁ…はぁ…あぁッ、あぁンッ、やめてッ、やめてェッ! ストップッ、いっかいまってッ、まってェッ!」
ロザリアの体が一度跳ねて脱力してもウィリアムはやめなかった。
「お嬢様の体は求めてるみたいですよ?ずっとこんなに締め付けて…」
「だけどッ、だけどォッ!」
「じゃあ、あと三回イったら止めますね?」
「そんなぁぁッ! ダメッ、おかしくなっちゃぁッ―――」
その後もベッドは手の動きのおかげで軋み続けた。
ロザリアは結局三回どころではなく、十回イかされてからやっと休ませてもらえたのだった。
「ハッ…ハッ…ハッ…、ハァ、ハァ、ハァ…ハァ…」
息を整え、ぼぉーっとする頭を落ち着かせようとしていた。
「ではお嬢様…」
「ふぇ…?…ッ…!」
気の抜けた返事をした直後、まだ疼く膣の入り口に熱い物が軽く押し当てられた。
「行きますよ?」
「ま、待って…」
「どうしたんです?」
「ど、どうって…その…さ、察しなさいよッ」
ロザリアは顔を背けた。
「…大丈夫ですよ、優しくしますから…」
「っ…ウィ、ウィルぅっ…あっ…うっ…」
ウィリアムはすこしずつその濡れた穴の中に固く立ち上がった棒を入れていった。魔物であろうとどれだけ濡れていようと、初めては痛いものだ。
ロザリアは痛みに耐えるようにシーツを握りしめ、唇を噛んだ。
「やめましょうか?」
「いえっ…いいわ…続けてっ…」
ロザリアは強がってそう言った。うっすら滲んだ涙が日光を反射した。
膣は肉棒を根本までくわえ込み、きつく締め付けて離さなかった。
「はぁ…はぁ…」
痛みに耐えていたロザリアは痛みが引いていくのとともに呼吸を整えた。
「あンッ―」
いきなり動いたウィリアムに反応して、思わず声を上げた。自分の中に別の者が入り込んでいる感覚は不思議で、少し怖いモノだったが、そんなことなどもうどうでも良くなっていた。
(はやく… はやく… もっと動いて―)
ロザリアはもうウィリアムから与えられる快感の虜になっていた。そしてウィリアムもロザリアから得られる快感の虜になっていた。
ロザリアの両側に腕を立ててウィリアムは夢中で腰を動かした。入れただけで相当の快感、動かすともうどうしようもなかった。
「あンッ、あんッ、あんッ、あんッ、あッ、あッ、あッ、あんッ、あぁあッ、あッ―」
リズミカルに発せられる喘ぎ声が、室内に満ちた。
ウィリアムは突然、腰の動きを止めて体を起こし、ロザリアの片足を跨ぎ、もう片足を抱えた。ロザリアは体を右に向けて開脚している。
ウィリアムは再び動きを再開させた。それも先ほどよりも速く、激しく。
「あッ、あッ、あッ、あんッ、あッ、あッ、ウィッ、ウィリアッ―イッちゃッ―あンッ―」
「僕もですッ…出しますよッ?!」
「出してッ、中にッ―なかァッ―――ぁぁッ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「ぅっ……はぁ…はぁ…」
二人の胸と肩は大きく上下し、ロザリアの体はびくびくと震えていた。
「…ねぇ…」
「…はい?」
「もっと…」
「…はい…」
ウィリアムは紐を解き、騎乗位へ移行させた。それから再びウィリアムがロザリアの突き上げる。
カーテンの閉められたウィリアムの部屋のベッドの上で、二人は抱き合って寝ていた。小柄なロザリアがウィリアムにくるまれているようにも見える。
「意外ね…」
ロザリアは囁くような小さい声でそう言った。
「なにがです?」
「ウィリアムが責め手で、それにあんなに激しいなんて…」
「…いつも態度のお強いお嬢様を好きに出来るんです、無理も無いでしょう?」
「…今日はもうこのまま…抱き締められたまま寝たい…」
「私もこのままがいいです。お嬢様、どうかご安心してお休みを…」
「ええ」
「…では―」
「ウィルッ…」
「…はい?」
「どこにも行かないで…」
「…はい、お嬢様。お休みなさい」
「…お休み…ウィリアム………」
ロザリアはすぐに夢の中へ落ちていった。腕の中で寝息を立てるロザリアを、ウィリアムは少し強く抱き締めた。
(お疲れだったのですね…要らぬ心配をおかけしました…お嬢様。お休みなさい…)
ウィリアムも静かに目を閉じた。
ロザリアがウィリアムのベッドの上で目を覚ました時、ウィリアムはそこには居なかった。彼女は体を起こして状況を把握しようとした。
スルスルと体を滑り降りたシーツの下に隠されていた自分の全裸を見て、寝る前の『出来事』が全てフラッシュバックした。
(そうだ…私、ウィリアムと…)
真っ赤になった顔を両手で覆い、暫くして回りを見回した。まだ日のある内のようで、閉められたカーテンの裾から薄暗いながらも日光が差し込んでいた。
部屋の中もまた薄暗く、ランプが淡い明るさで揺らいでいた。
ロザリアは、脱ぎ捨てたはずの…いや、脱がし捨てられたはずの服がないことに気づいた。
どうしようかと思っていると、扉を開けてウィリアムが入ってきた。
「お嬢様、お目覚めですか?」
「え、ええ…どこに行っていたの?」
「お嬢様の新しいドレスを受け取りに」
ロザリアは三日前に新しいドレスが欲しいと言っていたのを思い出した。
「ああ、あれか… ところで…私の服は?」
「アレは洗濯に出しました。ですので新しいドレスを早速着られますか?」
「そうだな。不具合があれば直しておもらわねばな」
「あ、その前に…」
ウィリアムはロザリアに近づき、彼女をシーツにくるむとそのままお姫様だっこして抱えた。
「な、なにを―!」
(…か、顔が近い…何でこんなにドキドキする?!)
「まずは体を洗いませんと」
というとウィリアムはそのまま部屋を出ようとした。
「こ、このままか?!このまま行くのか?!」
「ええ、カーテンも鍵も閉めていますし誰にも見られることはありません」
「そう言うことではなくっ…も、もういい…」
ウィリアムは部屋を出て大広間を通りスロープの横の階段を上ってバスルームへ向かった。
脱衣所へ来るとウィリアムは一旦屈み、垂れているシーツをつま先で踏みそのまま立ち上がった。
「なっ―」
シルクのシーツはシュルシュルッと腕とロザリアの間を滑り抜け床に落ちた。腕に抱きかかえられているのは全裸のロザリア。
「あ、あ、あ、あまり見るなっ!」
事の後だから余計に裸を見られるのが恥ずかしいのか、ロザリアは腕で胸と股間を隠そうとした。
「そうですか?」
そう言ってウィリアムは彼女を車いすの上に座らせた。
(何が『そうですか?』だっ…私がいまどれだけ―)
「な、何をしている!?」
ロザリアが愚痴の混じった事を思っていると、目の前でウィリアムが服を脱ぎ始めた。
「ついでですし、一緒に入らせていただきます」
「ななななな、な、何をっ!?」
ロザリアが慌てている間に服を脱ぎ終わり、撥水性のカーテンを閉めてロザリアの車いすを180度回転させた。
「ほ、ほ、本当に一緒に入るのかっ?!」
「ええ、といいますかもう入っちゃいましたし」
「入っちゃいましたし、じゃないっ! …もういい。ウィルは一々大胆すぎる…さっきだって…」
ロザリアの顔が赤いのはお湯の所為なのかなんなのか。
「好きですよ、お嬢様の事が」
「…っ!」
「好きでなければあんなコトしませんよ。わた…いえ、僕はお嬢様のことを愛しています」
「…は、歯の浮きそうなそんなセリフをよく平気でいえるわね…
でももしかしたら…勘違いかも知れないわよ…?」
「そんなこと無いです。俯いてください」
ロザリアは言われたとおりに俯き、ウィリアムはシャンプーを手に取った。そして彼女の髪の毛を洗い始めた。
「どうしてそういえるの?」
「どんなに酷いことを言われても嫌いにならなかったですから。ずっと傍にいたい、と…そうおもえましたから」
「ずっと…?」
「ええ…ずっと、です。流しますよ」
ウィリアムは蛇口を捻りシャンプーの泡を流した。
「もういいですよ」
「本当にずっと?」
「ええ」
「どんなに酷いこと言っても?」
「はい」
「どんなにわがまま言っても?」
「はい」
「今度言ったみたいなこと言っても…どこにも…行かない?」
「ええ、行きません」
「………あぁ、シャンプーが目に入ったのかしら……涙が…止まらないわ………」
ロザリアは暫く俯いたまま顔を覆って動かなかった。
「さぁ、湯船に浸かりましょう?お体が冷えてしまいます」
「ええ、そうね」
ウィリアムは泡風呂にロザリアを移した。そして後から自分も入った。
「じゃあ体も洗いましょうか」
「えっ?」
裏返った声をロザリアは上げた。次の瞬間にはウィリアムの腕が回っていた。
「ちょっ…ウィルっ…」
柔らかい手使いで腹部をまさぐり、太股の内股を撫でた。
「意外とこう言うところが洗い残しがあるんですよ?」
そう言うとお次は腹に添えていた左手を彼女の左腋に持っていった。
「ひゃっ―ちょっ…!く、くすぐったいってぇ…!」
「あとこことか…」
「なンッ…!」
もう片方の手は胸の谷間に挟まれた。
ウィリアムは両手の指をコニョコニョと動かして洗った。
「きゃンッ、ひゃはは、はンッ、止めて、止めてッ…!」
「お嬢様、意外とくすぐったがりなんですねぇ?」
「うるさいッ! ひゃぁあはッ、ゴメンッ、ゴメンてッ!」
ウィリアムは珍しいロザリアの反応を楽しんでいた。体をよじらせるので、ばしゃばしゃと水飛沫が飛んだ。
「はぁ、はぁ…」
「それから…もちろんココも洗わないと…」
右手は股間へ移動していた。彼の中指が彼女の筋をなぞった。
「あッ― あンッ、ウィルゥッ― ダメっ、さっきやったばっか―あンッ!」
口では拒んでいても、ロザリアの体はその快感を受け入れようとしていた。証拠に彼女の体はぴったりとウィリアムにくっつき、体を掴まえてくれている彼の腕にしっかりとしがみついている。それにウィリアムの指にはしっかりとヌメッとした感触が伝わっていた。
「ゃあッ…あぅッ…うアッ、あァッ…やぁっ…ぁッ……いッ……あッ…!」
「イキそうですか?」
「うんッ…うんッ…イくッ、イくぅっ…!」
ウィリアムは指の動きを少し早め、強くした。
「あッ―!イくッ、イくぅぅッ、あぁッ――ぁッ…! はぁ、はぁ…はぁ…」
ブルブルと体が震え、ウィリアムの腕をしがまえる力が強くなった。そして脱力し、もたれかかった。
「いかがですか?着心地の方は」
「うん、どこも違和感なしだ。デザインも好みに合っている」
「それはよかったです」
ロザリアは新品のドレスを着て鏡を見ていた。白いドレスの裾や襟には青いリボンが通され、胸元にも大きなリボンが付いていた。そのリボンの結び目にはスカルの銀のブローチが付けられている。スカートはフンワリとした長いもので、柔らかな印象だった。
丸い帽子にもリボンが付いており、こちらには蜘蛛の形のブローチが付いていた。
「…どう?似合ってるかしら…?」
「ええ、とてもお美しいですよ…」
「ありがとう…ウィリアム」
ロザリアは嬉しそうに頬笑んでそう言った。
「今日は…もう寝るわ」
「わかりました。ではお部屋へ…」
ウィリアムはロザリアの車いすを押し、彼女の部屋へ連れて行った。
そしていつものようにベッドへ寝かせ、マッサージを施して棺桶へ移した。
「ではお休みなさいませ」
とウィリアムが蓋を閉めようとすると、ロザリアがウィリアムの手を掴まえた。
「…次に起きても、ちゃんと…居てくれるよね…?」
不安に怯えた声でロザリアは言った。
「大丈夫ですよ、ちゃんと居ますから。…起きてから食べたいものは何かありますか?」
「ハムエッグ…」
「わかりました。用意しておきます…」
「ん―」
ウィリアムは棺桶の中に頭を入れ、ロザリアにキスをした。
「お休み…ロザリア」
「お休み、ウィリアム…お休みなさい」
棺の蓋がゆっくりと閉められ、ロザリアは静かに眠りに就いた。
三週間後―
華やかなムードで行われているパーティーの主役は金髪の八歳の少女だった。きれいなドレスで身を飾り、無邪気ながらもどこか気品ある態度で来客を迎えていた。
そこに車いすに乗ったロザリアとそれを押すウィリアムがやってきた。
「ロザリア姉さま、来てくださって嬉しいですッ」
少女は満面の笑顔を見せた。
「エレナ、私も会えて嬉しいわ」
「お久しぶりです、エレナ様」
「ウィリアム、久しぶりね」
「お久しゅうございます、ロザリア様。それからウィリアムも」
同じく金色で長髪の少女が現れた。
「オリヴィア、元気だった?」
彼女はオリヴィア。エレナの四つ上の実姉だ。
「ええ、何事もなく。ロザリア様はお変わり有りませんか?」
「うふふ…実はね…二人ともお耳を貸して…」
「…? はい…」
二人はロザリアの口元に耳を近づけた。
「………、………」
「本当ですか?!」
「そうなんだッ!」
「しぃー、この事を知っているのはまだあなた達二人だけよ。まだ秘密にしておいてね」
「はい、わかりました。おめでとうございます」
「ウィリアム、よかったわねッ」
「はい、ありがとうございます」
「あ、大広間へどうぞ。もう始まっていますから」
エレナのバースデーパーティーはとても賑やかで華やかなものになった。
そのパーティーから二月ほど経った頃だ。
「エレナ、ロザリア様から招待状よ」
「本当?お姉さま」
「ええ、これよ」
「うっふふ、ホントだ」
エレナは封筒の中身を出して黙読し、嬉しそうに笑った。
「お母様もお父様も驚いていらしたわ」
その招待状の内容とは次の通りだ。
『人間界では雪が降り出す頃、みなさまはいかがお過ごしでしょうか
この度私ロザリア=ラン=ミューラシカと私の執事であったウィリアムは夫婦としての契りを交わしました
つきまして当家の屋敷にてささやかな宴を催したいと思います
ご多忙のこととは存じますが 是非とも足を運んでいただきたくここにご案内申し上げます
ウィリアム=アル=ミューラシカ
ロザリア=ラン=ミューラシカ
日時 11月22日 』
そしてこちらはとある山中の屋敷。
「あら…? あなた、あなたぁ」
「どうしたんだい?」
「ロザリアからこんなものが」
「ん?なになに………ほぉ〜、そうかそうか」
そこにいたのはまだ若く見える夫婦らしき男女だった。
「ダン、どうやら私たちの目に狂いはなかったようですね?」
「そうだな、マリア」
「嬉しいような、寂しいような…」
「ふふふ、そうだねぇ。あの子は実はとても寂しがり屋だからね…彼も苦労しただろうに…」
「だからこそ、より深く愛せるのよ。あなたが私を愛してくれたように…」
「ああ。八年ぶりに娘に会えるのがこんなに嬉しいとはね…」
彼女の体をフワッとした感覚が包んだ…
次の瞬間、急にその感覚がなくなり腕にぬくもりを感じた。はっとして上を見上げたロザリアは言葉を無くした。
左手で蔦を掴み、右手で彼女の腕をしっかりと握った男が一人。
「ウィ、ウィル…!?」
彼は何も言わずにロザリアを引き上げ、抱きかかえた。
「しっかり掴まっていてください」
そう言うと崖面を歩くようにして振り子のように勢いを付けて、一気に崖の上に登った。
崖の上でウィリアムは片膝を付き、ロザリアはそのまま地面の上へ座っていた。
「大丈夫ですか、お嬢様?」
「え、ええ…どうしてここが?」
「屋敷に一度戻りましたが居られないようでしたので、しばらく捜していますと、車いすの車輪の跡を見つけましたので追って参りました」
そう言うとウィリアムは不思議そうな顔をして質問をした。
「ですが、なぜこの様なところに?」
「聞きたいのは私の方よっ!今までどこにいたの?」
ロザリアはウィリアムの服の胸の当たりを握って言った。
「はい?ロケットを探しに出ておりましたが…」
「ロケットを?ならばどうして何も言わず、書き置きの一つも…」
「書き置きならちゃんとお嬢様の机の上に置いておきましたが?」
きょとんとしてウィリアムは答えた。
「何もなかったわっ!」
「…もしかすると何かの拍子に落ちてしまったのかもしれませんね…」
「だとしてもこの二日間探し続けたなんて、いくら何でも長すぎるっ!
せめて夜には帰ってくるべきよ!」
「…それには訳がありまして…ここで居るわけにもまいりませんので、屋敷へ戻りながらお話しいたします」
ウィリアムはロザリアを抱きかかえ、屋敷へ戻りはじめた。
彼はしばらくして話を始めた。
「私がロケットを探しに出たのは二日前の日中です。当初は夜には一旦戻るつもりでおりました。
時間の許す限り私は探し続けましたが、やはり見つかりませんでした…」
「………」
ロザリアはただ黙ってその話に耳を傾けていた。
「夕暮れになった頃、光に気づき崖を見上げると、崖の途中から伸びた枝にロケットが引っ掛かっていたのを発見し、直ちに取りに向かいました。
見つけて油断したのか、運が悪かったのか…足場が崩れ私は結構な高さから崖下へ転げ落ちました。
次に気が付くと、私はベッドに寝かされていました。偶々通りかかった方が病院に運び入れてくれたのだと、医師から聞かされました」
「それで…平気なのか…?」
「ご心配には及びません。今は全く問題有りませんから…
…ただその時は激しく体を打ち付けていたらしく危なかったそうですが、躯がインキュバス化していたのが幸いして、回復が思いの外早く、すぐに退院出来ました」
「…そうか」
「はい。目が覚めたのが今日の昼で、そこから退院を許されるまで結局半日掛かってしまいました…」
二人は屋敷に入り、ウィリアムは代えの車いすを用意し、ロザリアを座らせた。
「どうぞ、お探しのロケットです…おそらく壊れていないと思いますが…」
ウィリアムはロザミアの部屋でロケットを渡した。
「………。たしかに無事なようね…」
「申し訳有りません、元はといえば私の不注意の致しましたところ。私が留守にしてしまった間、お嬢様には不自由を…」
「ええ、全くよ。料理も自分で取ってこなければならないし」
(違う…)
「このスロープも自分で登らなければならないし」
(こんな事を言いたい訳じゃないでしょ…?!)
「不自由だらけだったわね。とても面倒なことばかりだったわ…」
「申し訳有りませんでした」
ウィリアムはロザリアの前に出て、頭を深々と下げた。
(私は…またウィルを困らせてる…)
「違う…」
「はい…?」
「違うわ…本当はこんな事を言いたいのではないの…」
そう言うとロザリアは静かに泣き始めた。ウィリアムは戸惑った様子で声を掛けた。
「お、お嬢様?!どうなさったのです?」
「ウィル…」
「はい…?」
「あなたは私のことが…嫌いよね…?」
「えっ?」
ロザリアが思い切って振り絞った一言。
「誤魔化さなくても良いのよ…だってそうとしか思えない…」
「なぜ…そうお思いなのです…?」
ロザリアの上擦った泣き声に、ウィリアムは静かに言った。
「私は…あなたを困らせてばかりで…こき使ってばかりで…わがままを言ってばかりで…
…あなたは頑張って私のわがままを叶えたり…じっと、私の八つ当たりに耐えたり…なのに…なのに私は…あなたに労いや感謝やお詫びの言葉も掛けないで………」
「…お嬢様…」
ロザリアの目から涙が溢れだして止まらなかった。
「…あの人形…憶えてる…?」
ロザミアが指さしたあのぬいぐるみ。ウィリアムは近寄ってそれを持ち抱えた。
「ええ、私が初めてお嬢様のために買ってきた物です。ずっと持っていてくださって…」
「…あのとき、私がした『一緒に居てくれる』っていう質問に、あなたがなんて答えたかも…?」
「…はい。『お嬢様さえよろしければ』…と」
ウィリアムは振り返って答えた。
「…憶えていてくれたのね………なのに私は、今日の夜までその事を忘れて…ぅぅっ…ウィルが私のために傍にいてくれてるのにぃ………私…私ぃ…」
ロザリアは言葉を話すのがやっとになってきているようだったが、ウィリアムは敢えて止めることはしなかった。ただ近づいて跪き、その涙の流れる顔を見つめるしかできなかった。
「今度だって…ウィルに『顔も見たくない』って…『どっかいっちゃえ』ってぇ……うぅ…うぅぅ…」
「お嬢様…」
「わたし…あなたの部屋に入ろうとした……でもできなかったぁ…」
「…なぜです?」
「もし…もしあなたが私を嫌ってることが分かったら…どうしようってぇ…怖かったぁ…それから何にも荷物がなかったらどうしようってぇ…考えたら………もっと怖かったぁぁ…」
流れてくる涙を、手で拭い拭って、それでも涙は止まらない。
「………ごめんなさいぃっ…あんな事言ってごめんなさいぃ…」
ロザリアはウィリアムに抱き付いて、謝罪の言葉を告げた。
「…今までの事っ、全部謝るからぁ…私のことっ、嫌いでも良いからぁ……お願いっ…もう一人にしないでぇ………」
ウィリアムを抱き締める力が強くなった。彼もロザリアを抱き締めた。
「ウィルぅ…?」
「…どこにも行きません。私は…いや、僕は…どこにも行かない。ロザリアが望む限り、ずっと傍にいるから…」
「うぅっ…ううぅっ…うわぁあぁぁ………あぁあぁぁっ……」
優しく抱き締めるウィリアムを強く抱き締めて、ロザリアは大いに泣いた。いつしか、その涙はうれし涙に変わっていた。
暫くウィリアムに抱きついて泣いていたがようやく落ち着き、ロザリアは静かに座っていた。しかし、その手はしっかりとウィリアムの手を握って離さなかった。
ウィリアムは静かにロザリアの前に跪き、手を差し伸べたまま静止していた。
「ねぇ…」
ロザリアはやっと口を開いた。
「なんでしょうか?」
「…ウィルは…わ、私のことをどう思っているの?」
「………」
ウィリアムは暫く黙り込んで考え、ロザリアが不安そうに俯きウィリアムを見つめた。
「…そうですねぇ、わがままで、怒りっぽくて、いつも大変ですよ…」
「ぅ……」
ロザリアは口を噤(つぐ)んだ。
「…ですけど、本当は優しくて、寂しがり屋で、不安がりで、私はそんなお嬢様を嫌いではありませんよ? むしろ、お世話出来て嬉しいです」
「…本…当に?」
「ええ、ほんとうです。その証拠に…ごらんになりますか? 私の部屋を」
ロザリアは一度だけコクッと頷き、ウィリアムはその返事を見ると車いすを押し一階に下りた。
扉を開け奥に進み、自室の戸を開け中に入った。
部屋の中はロザリアが思って入るのをためらったような、禍々しいようなものではなく普通の部屋であった。自室も掃除されていてきれいに保たれていた。
扉の正面の壁には窓がありその前にベッドが置かれ、左の壁には机とその横に本棚。反対側にはクローゼットと姿見、その横には刀剣が壁に飾られていた。
「どうです?普通でしょう?」
「…そうね、…よかった…けど、あなた自身はどうなの?辛くはないの?」
「…そうですねぇ、確かに感情を抑えるのに苦労もありますが…」
「感情を?どんな?」
「色々…ですかね…。
中でも一番大きな感情を抑えるのには苦労しますよ」
ウィリアムは戸を閉めて、自分のベッドの傍までよりながらそう言って、振り返った。
「どんな感情だと思いますか?」
彼は笑って訊いた。
「…解らないわ…いえ、解ってしまうのが怖いの…もしそれが…」
「恨みや、怒り…だったらですか?」
「……えぇ、そうよ」
「大丈夫です、そんなものじゃありませんから…」
「それじゃ…もう見当も付かないわね…」
ロザリアは少し呆れたように頬笑んで、俯いた。
ウィリアムはそっと彼女に近寄って、腰を曲げて顔を近づけた。
「……血、お飲みになりますか?」
「え?え、ええ…あなたが良いというならいただくわ、二日飲めていなかったし…」
ロザリアは彼が腕を出すのを一瞬待っていたが、ウィリアムは右に首を傾げて首筋を近づけた。
ロザリアは一瞬驚きながらもその首筋に牙を突き立てた。
二人に快感が走る。が、ウィリアムは至って冷静なまま。
「ん…んん…」
ロザリアは耐えきれず、僅かに声を漏らした。と、その時ウィリアムの腕がロザリアを包み、そのままお姫様だっこして持ち上げた。
「なっ、ウィ、ウィリアム!?」
驚いて口を離したロザリアは目を丸くして、ウィリアムはそんな彼女をベッドの上に降ろした。
「血だけ、でよろしいのですか?」
「え?」
「お嬢様…私は、いえ…僕は…お嬢様が好きですっ!」
「えっ?えっ!?」
突然の告白に、ロザリアは手に軽く拳を作り胸の前で会わせるようにして縮こまった。そして「血だけ、でよろしいのですか?」という言葉の意味を瞬時に理解して、目を反らせた。
「だが…に、人間のお前などと…」
と拒絶の言葉を口にしたとき、ウィリアムは落胆の笑みを浮かべた。
「やっぱり人の話を聞いていない…」
「え…?」
「ここに帰る途中に言いましたよ?『インキュバス化していたおかげで助かった』と…」
今度は嬉しそうな笑みが現れる。
「え、じゃあその、ウィルは…」
「魔物ですよ、もう」
ウィリアムのその言葉を聞いてロザリアの表情が変わる。次の瞬間にはウィリアムはロザリアの唇を奪っていた。
「んっ…んんっ…」
唇と唇を離すとロザリアの呼吸は少し荒くなっていた。
「いけませんか?」
ウィリアムは不安げな顔で訊ねた。
ロザリアはフルフルと首を振って、そうでない事を示した。
「ウィリアム…もっと…」
ウィリアムはまたロザリアの唇に唇を重ね、暫くしてまた離した。
「…まだ…」
三度目のキスをしたとき、ロザリアの腕がウィリアムの背中に回って抱き寄せた。
ウィリアムは片方の手でロザリアの頭を引き寄せ、もう片方でロザリアの動かない左足をの腿の後ろを撫で上げた。
「んっ…」
手はそのまま前の方に回り、ショートパンツの上から敏感な部分を撫でる。
「くふぅ…んっ、んふっ、んんっ…」
ホックとジッパーを外し、乱暴にパンツと一緒にずり降ろした。
そして両足から抜き、部屋の床に乱暴に投げ捨てた。いつものウィリアムからは想像できない行動だった。
「ウィ、ウィリアム…」
ウィリアムは唇を離し、体を下げて顔を彼女の股間の前に持ってきた。そして動かせないロザリアの足をウィリアムが広げた。毛の少ない秘部が露わになり、透明な液が少し出てきているのがわかった。
「は、恥ずかしいから、ちょっと待って…」
「嫌ですよ、いつもわがままを好きに言ってるんです。だから今日は僕の言うことを聞いてもらいますっ!」
「ひゃぁんッ―!」
ウィリアムの口が割れ目を覆い込んだ。そして舌が割れ目をなぞり、その割れ目の奥へと進入して行く。
「あぅッ、あんッ、あぁん、あぁ、あぁぁんッ」
ざらざらした舌の感触が誰も触れたことのなかった敏感なところを刺激し、体験したことのない快感が走った。
彼は舌を割れ目上部の小さな小さな突起に伸ばし、両手で股の両側の皮膚を少し引っ張り広げた。
「や、だめぇ…」
そんな言葉を無視して、ウィリアムはその突起の皮を舌で捲っていった。
「やぁぁあッ、あッ、あぁああッ、ウィ、ウィルッ、ダメッ…ダメッ―!」
もう少しでその突起が本体を現そうとした時、ロザリアの手がウィリアムの頭部を押し離した。
「ハァ、はぁ…はぁ…」
「…はぁ、何するんですか?お嬢様」
ウィリアムは丁寧な文句を言った。
「だ、だって…アソコが…ビリビリして…お腹が…キュゥってなってぇ…」
「しょうがないなぁ…」
ウィリアムは手をカーテンに伸ばし、思いっきり開いた。
「眩しッ―」
ロザリアは日光を遮ろうと手を目の前に出した。
ウィリアムはその間にネクタイを解きながら、彼女の体を跨いで上がってくると両手首を掴み解いたネクタイで束ね、一端を腕の間を通して腕が抜けないようにして一度結んだ。そしてグイッと引っ張りバンザイさせるとベッドの柵に結んで拘束した。
「これで、お嬢様は手が出せませんね?」
「ウィルッ、ちょっとッ!」
ウィリアムは元の位置に戻り、開いたままの足の付け根に顔を近づけて、今度は下から腕を回して足を抱え腰を浮かせた。
再びクリトリスの包皮を剥こうと舌を器用に動かした。
「ひゃあッ、ダメッ―、やめッ―、あッ、きゃうッ、きゃぁッ、あぁあッ―」
ロザリアの腕や腹に力が入り、手はシーツを握りしめている。
そして遂にクリトリスは包皮を剥がれ、中身を露わにした。
ウィリアムはそれをパクッとくわえ込むと、吸い上げて少しだけ根本の方を噛み固定して、舌先で転がしたり舌全体で舐めた。
「あぁあぁぁッ―、ああぁあぁッ―、ダメッ、ダメッ―、おかしくッ、おかしくなっちゃうッ、吸っちゃダメッ、噛んじゃダメェッ―!
あぁぁッ、いやッ―、いやぁッくぁッ―――あんッ、はぁ…はぁ…、はぁ…はぁ…はぁ…ひゃうっ…」
大声を挙げながら、ロザリアは体をピンッと張るようにして何回か震えた。そして急に脱力し、荒い息をした。
ウィリアムの口元はしっとりと…いや、グッチョリと濡れていた。彼は腕で拭い、再びロザリアの秘部に口を付けて啜った。
「やぁあぁッ…吸っちゃダメぇッ…」
「こんなにしちゃって、気持ちよかったですか?」
「知らないッ、バカウィルッ!」
ウィリアムはロザリアの腰をゆっくりと降ろした。
ウィリアムは手を伸ばし、ドレスのボタンを外して前を開かせて、手首の方へ袖を縮めながら上げ去ってしまうと、前に付いたブラのホックを外し同じく手首の所へ上げた。
彼もそのワイシャツのジャケットと中に来ていたベスト、ワイシャツ、肌着を脱ぎ、ベルトとズボンのホックを外し、パンツと一緒にその辺へ脱ぎ散らかしてしまった。その後、靴下等も脱がせて自分も脱ぎ、完璧に二人は全裸になった。
未だ息の荒いロザリアは、以外にも鍛えられていたウィリアムの体にドキッとしながらも、その目はそそり立つ下半身へ向いた言った。
「っ……!」
少し驚きおののく代物だった。
だがウィリアムはそれをすぐに入れようとはせず、覆い被さるように寝ると唇を重ねて指で秘部を擦った。そして指を根本で曲げ、ヌルヌルとして抵抗の少なくなった膣の中へと入れた。
「んんッ〜、んッ、んんッ!」
キスをされているのでくぐもった喘ぎ声を上げるしか出来なかったロザリアの膣は、中指一本を十分キツく締め付けた。
何度か速く指の出し入れを繰り返し、頃合いを見計らって二本目に薬指を入れた。そしてまた幾度か速く出し入れを繰り返した。
「んッ、ンッ、んッ、んんッ…」
ウィリアムは突然鉤爪状に指を曲げて、手マンを続けた。
「んん〜ッ、ん〜ッ、んッ、んんッ…んあッ、あッ、ダメッ!」
ロザリアは首を左右に激しく振り、ウィリアムと唇を離して喘ぎ声を解放した。
「あッ、やぁあぁッ! あぁんッ、あッ、はぁッ、ダメッ、だめェェッ、またッ、またイッ―――あぁッ…はぁ…はぁ…あぁッ、あぁンッ、やめてッ、やめてェッ! ストップッ、いっかいまってッ、まってェッ!」
ロザリアの体が一度跳ねて脱力してもウィリアムはやめなかった。
「お嬢様の体は求めてるみたいですよ?ずっとこんなに締め付けて…」
「だけどッ、だけどォッ!」
「じゃあ、あと三回イったら止めますね?」
「そんなぁぁッ! ダメッ、おかしくなっちゃぁッ―――」
その後もベッドは手の動きのおかげで軋み続けた。
ロザリアは結局三回どころではなく、十回イかされてからやっと休ませてもらえたのだった。
「ハッ…ハッ…ハッ…、ハァ、ハァ、ハァ…ハァ…」
息を整え、ぼぉーっとする頭を落ち着かせようとしていた。
「ではお嬢様…」
「ふぇ…?…ッ…!」
気の抜けた返事をした直後、まだ疼く膣の入り口に熱い物が軽く押し当てられた。
「行きますよ?」
「ま、待って…」
「どうしたんです?」
「ど、どうって…その…さ、察しなさいよッ」
ロザリアは顔を背けた。
「…大丈夫ですよ、優しくしますから…」
「っ…ウィ、ウィルぅっ…あっ…うっ…」
ウィリアムはすこしずつその濡れた穴の中に固く立ち上がった棒を入れていった。魔物であろうとどれだけ濡れていようと、初めては痛いものだ。
ロザリアは痛みに耐えるようにシーツを握りしめ、唇を噛んだ。
「やめましょうか?」
「いえっ…いいわ…続けてっ…」
ロザリアは強がってそう言った。うっすら滲んだ涙が日光を反射した。
膣は肉棒を根本までくわえ込み、きつく締め付けて離さなかった。
「はぁ…はぁ…」
痛みに耐えていたロザリアは痛みが引いていくのとともに呼吸を整えた。
「あンッ―」
いきなり動いたウィリアムに反応して、思わず声を上げた。自分の中に別の者が入り込んでいる感覚は不思議で、少し怖いモノだったが、そんなことなどもうどうでも良くなっていた。
(はやく… はやく… もっと動いて―)
ロザリアはもうウィリアムから与えられる快感の虜になっていた。そしてウィリアムもロザリアから得られる快感の虜になっていた。
ロザリアの両側に腕を立ててウィリアムは夢中で腰を動かした。入れただけで相当の快感、動かすともうどうしようもなかった。
「あンッ、あんッ、あんッ、あんッ、あッ、あッ、あッ、あんッ、あぁあッ、あッ―」
リズミカルに発せられる喘ぎ声が、室内に満ちた。
ウィリアムは突然、腰の動きを止めて体を起こし、ロザリアの片足を跨ぎ、もう片足を抱えた。ロザリアは体を右に向けて開脚している。
ウィリアムは再び動きを再開させた。それも先ほどよりも速く、激しく。
「あッ、あッ、あッ、あんッ、あッ、あッ、ウィッ、ウィリアッ―イッちゃッ―あンッ―」
「僕もですッ…出しますよッ?!」
「出してッ、中にッ―なかァッ―――ぁぁッ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「ぅっ……はぁ…はぁ…」
二人の胸と肩は大きく上下し、ロザリアの体はびくびくと震えていた。
「…ねぇ…」
「…はい?」
「もっと…」
「…はい…」
ウィリアムは紐を解き、騎乗位へ移行させた。それから再びウィリアムがロザリアの突き上げる。
カーテンの閉められたウィリアムの部屋のベッドの上で、二人は抱き合って寝ていた。小柄なロザリアがウィリアムにくるまれているようにも見える。
「意外ね…」
ロザリアは囁くような小さい声でそう言った。
「なにがです?」
「ウィリアムが責め手で、それにあんなに激しいなんて…」
「…いつも態度のお強いお嬢様を好きに出来るんです、無理も無いでしょう?」
「…今日はもうこのまま…抱き締められたまま寝たい…」
「私もこのままがいいです。お嬢様、どうかご安心してお休みを…」
「ええ」
「…では―」
「ウィルッ…」
「…はい?」
「どこにも行かないで…」
「…はい、お嬢様。お休みなさい」
「…お休み…ウィリアム………」
ロザリアはすぐに夢の中へ落ちていった。腕の中で寝息を立てるロザリアを、ウィリアムは少し強く抱き締めた。
(お疲れだったのですね…要らぬ心配をおかけしました…お嬢様。お休みなさい…)
ウィリアムも静かに目を閉じた。
ロザリアがウィリアムのベッドの上で目を覚ました時、ウィリアムはそこには居なかった。彼女は体を起こして状況を把握しようとした。
スルスルと体を滑り降りたシーツの下に隠されていた自分の全裸を見て、寝る前の『出来事』が全てフラッシュバックした。
(そうだ…私、ウィリアムと…)
真っ赤になった顔を両手で覆い、暫くして回りを見回した。まだ日のある内のようで、閉められたカーテンの裾から薄暗いながらも日光が差し込んでいた。
部屋の中もまた薄暗く、ランプが淡い明るさで揺らいでいた。
ロザリアは、脱ぎ捨てたはずの…いや、脱がし捨てられたはずの服がないことに気づいた。
どうしようかと思っていると、扉を開けてウィリアムが入ってきた。
「お嬢様、お目覚めですか?」
「え、ええ…どこに行っていたの?」
「お嬢様の新しいドレスを受け取りに」
ロザリアは三日前に新しいドレスが欲しいと言っていたのを思い出した。
「ああ、あれか… ところで…私の服は?」
「アレは洗濯に出しました。ですので新しいドレスを早速着られますか?」
「そうだな。不具合があれば直しておもらわねばな」
「あ、その前に…」
ウィリアムはロザリアに近づき、彼女をシーツにくるむとそのままお姫様だっこして抱えた。
「な、なにを―!」
(…か、顔が近い…何でこんなにドキドキする?!)
「まずは体を洗いませんと」
というとウィリアムはそのまま部屋を出ようとした。
「こ、このままか?!このまま行くのか?!」
「ええ、カーテンも鍵も閉めていますし誰にも見られることはありません」
「そう言うことではなくっ…も、もういい…」
ウィリアムは部屋を出て大広間を通りスロープの横の階段を上ってバスルームへ向かった。
脱衣所へ来るとウィリアムは一旦屈み、垂れているシーツをつま先で踏みそのまま立ち上がった。
「なっ―」
シルクのシーツはシュルシュルッと腕とロザリアの間を滑り抜け床に落ちた。腕に抱きかかえられているのは全裸のロザリア。
「あ、あ、あ、あまり見るなっ!」
事の後だから余計に裸を見られるのが恥ずかしいのか、ロザリアは腕で胸と股間を隠そうとした。
「そうですか?」
そう言ってウィリアムは彼女を車いすの上に座らせた。
(何が『そうですか?』だっ…私がいまどれだけ―)
「な、何をしている!?」
ロザリアが愚痴の混じった事を思っていると、目の前でウィリアムが服を脱ぎ始めた。
「ついでですし、一緒に入らせていただきます」
「ななななな、な、何をっ!?」
ロザリアが慌てている間に服を脱ぎ終わり、撥水性のカーテンを閉めてロザリアの車いすを180度回転させた。
「ほ、ほ、本当に一緒に入るのかっ?!」
「ええ、といいますかもう入っちゃいましたし」
「入っちゃいましたし、じゃないっ! …もういい。ウィルは一々大胆すぎる…さっきだって…」
ロザリアの顔が赤いのはお湯の所為なのかなんなのか。
「好きですよ、お嬢様の事が」
「…っ!」
「好きでなければあんなコトしませんよ。わた…いえ、僕はお嬢様のことを愛しています」
「…は、歯の浮きそうなそんなセリフをよく平気でいえるわね…
でももしかしたら…勘違いかも知れないわよ…?」
「そんなこと無いです。俯いてください」
ロザリアは言われたとおりに俯き、ウィリアムはシャンプーを手に取った。そして彼女の髪の毛を洗い始めた。
「どうしてそういえるの?」
「どんなに酷いことを言われても嫌いにならなかったですから。ずっと傍にいたい、と…そうおもえましたから」
「ずっと…?」
「ええ…ずっと、です。流しますよ」
ウィリアムは蛇口を捻りシャンプーの泡を流した。
「もういいですよ」
「本当にずっと?」
「ええ」
「どんなに酷いこと言っても?」
「はい」
「どんなにわがまま言っても?」
「はい」
「今度言ったみたいなこと言っても…どこにも…行かない?」
「ええ、行きません」
「………あぁ、シャンプーが目に入ったのかしら……涙が…止まらないわ………」
ロザリアは暫く俯いたまま顔を覆って動かなかった。
「さぁ、湯船に浸かりましょう?お体が冷えてしまいます」
「ええ、そうね」
ウィリアムは泡風呂にロザリアを移した。そして後から自分も入った。
「じゃあ体も洗いましょうか」
「えっ?」
裏返った声をロザリアは上げた。次の瞬間にはウィリアムの腕が回っていた。
「ちょっ…ウィルっ…」
柔らかい手使いで腹部をまさぐり、太股の内股を撫でた。
「意外とこう言うところが洗い残しがあるんですよ?」
そう言うとお次は腹に添えていた左手を彼女の左腋に持っていった。
「ひゃっ―ちょっ…!く、くすぐったいってぇ…!」
「あとこことか…」
「なンッ…!」
もう片方の手は胸の谷間に挟まれた。
ウィリアムは両手の指をコニョコニョと動かして洗った。
「きゃンッ、ひゃはは、はンッ、止めて、止めてッ…!」
「お嬢様、意外とくすぐったがりなんですねぇ?」
「うるさいッ! ひゃぁあはッ、ゴメンッ、ゴメンてッ!」
ウィリアムは珍しいロザリアの反応を楽しんでいた。体をよじらせるので、ばしゃばしゃと水飛沫が飛んだ。
「はぁ、はぁ…」
「それから…もちろんココも洗わないと…」
右手は股間へ移動していた。彼の中指が彼女の筋をなぞった。
「あッ― あンッ、ウィルゥッ― ダメっ、さっきやったばっか―あンッ!」
口では拒んでいても、ロザリアの体はその快感を受け入れようとしていた。証拠に彼女の体はぴったりとウィリアムにくっつき、体を掴まえてくれている彼の腕にしっかりとしがみついている。それにウィリアムの指にはしっかりとヌメッとした感触が伝わっていた。
「ゃあッ…あぅッ…うアッ、あァッ…やぁっ…ぁッ……いッ……あッ…!」
「イキそうですか?」
「うんッ…うんッ…イくッ、イくぅっ…!」
ウィリアムは指の動きを少し早め、強くした。
「あッ―!イくッ、イくぅぅッ、あぁッ――ぁッ…! はぁ、はぁ…はぁ…」
ブルブルと体が震え、ウィリアムの腕をしがまえる力が強くなった。そして脱力し、もたれかかった。
「いかがですか?着心地の方は」
「うん、どこも違和感なしだ。デザインも好みに合っている」
「それはよかったです」
ロザリアは新品のドレスを着て鏡を見ていた。白いドレスの裾や襟には青いリボンが通され、胸元にも大きなリボンが付いていた。そのリボンの結び目にはスカルの銀のブローチが付けられている。スカートはフンワリとした長いもので、柔らかな印象だった。
丸い帽子にもリボンが付いており、こちらには蜘蛛の形のブローチが付いていた。
「…どう?似合ってるかしら…?」
「ええ、とてもお美しいですよ…」
「ありがとう…ウィリアム」
ロザリアは嬉しそうに頬笑んでそう言った。
「今日は…もう寝るわ」
「わかりました。ではお部屋へ…」
ウィリアムはロザリアの車いすを押し、彼女の部屋へ連れて行った。
そしていつものようにベッドへ寝かせ、マッサージを施して棺桶へ移した。
「ではお休みなさいませ」
とウィリアムが蓋を閉めようとすると、ロザリアがウィリアムの手を掴まえた。
「…次に起きても、ちゃんと…居てくれるよね…?」
不安に怯えた声でロザリアは言った。
「大丈夫ですよ、ちゃんと居ますから。…起きてから食べたいものは何かありますか?」
「ハムエッグ…」
「わかりました。用意しておきます…」
「ん―」
ウィリアムは棺桶の中に頭を入れ、ロザリアにキスをした。
「お休み…ロザリア」
「お休み、ウィリアム…お休みなさい」
棺の蓋がゆっくりと閉められ、ロザリアは静かに眠りに就いた。
三週間後―
華やかなムードで行われているパーティーの主役は金髪の八歳の少女だった。きれいなドレスで身を飾り、無邪気ながらもどこか気品ある態度で来客を迎えていた。
そこに車いすに乗ったロザリアとそれを押すウィリアムがやってきた。
「ロザリア姉さま、来てくださって嬉しいですッ」
少女は満面の笑顔を見せた。
「エレナ、私も会えて嬉しいわ」
「お久しぶりです、エレナ様」
「ウィリアム、久しぶりね」
「お久しゅうございます、ロザリア様。それからウィリアムも」
同じく金色で長髪の少女が現れた。
「オリヴィア、元気だった?」
彼女はオリヴィア。エレナの四つ上の実姉だ。
「ええ、何事もなく。ロザリア様はお変わり有りませんか?」
「うふふ…実はね…二人ともお耳を貸して…」
「…? はい…」
二人はロザリアの口元に耳を近づけた。
「………、………」
「本当ですか?!」
「そうなんだッ!」
「しぃー、この事を知っているのはまだあなた達二人だけよ。まだ秘密にしておいてね」
「はい、わかりました。おめでとうございます」
「ウィリアム、よかったわねッ」
「はい、ありがとうございます」
「あ、大広間へどうぞ。もう始まっていますから」
エレナのバースデーパーティーはとても賑やかで華やかなものになった。
そのパーティーから二月ほど経った頃だ。
「エレナ、ロザリア様から招待状よ」
「本当?お姉さま」
「ええ、これよ」
「うっふふ、ホントだ」
エレナは封筒の中身を出して黙読し、嬉しそうに笑った。
「お母様もお父様も驚いていらしたわ」
その招待状の内容とは次の通りだ。
『人間界では雪が降り出す頃、みなさまはいかがお過ごしでしょうか
この度私ロザリア=ラン=ミューラシカと私の執事であったウィリアムは夫婦としての契りを交わしました
つきまして当家の屋敷にてささやかな宴を催したいと思います
ご多忙のこととは存じますが 是非とも足を運んでいただきたくここにご案内申し上げます
ウィリアム=アル=ミューラシカ
ロザリア=ラン=ミューラシカ
日時 11月22日 』
そしてこちらはとある山中の屋敷。
「あら…? あなた、あなたぁ」
「どうしたんだい?」
「ロザリアからこんなものが」
「ん?なになに………ほぉ〜、そうかそうか」
そこにいたのはまだ若く見える夫婦らしき男女だった。
「ダン、どうやら私たちの目に狂いはなかったようですね?」
「そうだな、マリア」
「嬉しいような、寂しいような…」
「ふふふ、そうだねぇ。あの子は実はとても寂しがり屋だからね…彼も苦労しただろうに…」
「だからこそ、より深く愛せるのよ。あなたが私を愛してくれたように…」
「ああ。八年ぶりに娘に会えるのがこんなに嬉しいとはね…」
11/01/14 02:42更新 / アバロンU世
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