鬼灯色の屋根の館
星や月が照らす夜、森に挟まれた道を歩く一人の男が居た。
肌は白く、長めの黒髪を後ろでポニーテールにしていた。目は橙の混ざったような瞳で細くはなく、しかしパッチリしてもいない眼だ。
女装でもしてしまえば、誠のそれに見間違うであろう中性的な顔立ちであった。
ここはジパング地方の文化が多からずも入ってくる辺りだ。この森を抜け、町を過ぎ、あと数キロもゆけばジパング地方から多くの船が出入港する港があった。
男はそんなジパング地方からの文化を多少取り入れた格好をしている。上半身に纏っているのは着物であるが、履いているのは袴ではなくズボンであった。だがズボンと言ってもそれは裾が少し広がっており、所々に刺繍が施されていた。
足下には高めの歯の下駄がカランコロンと音を立てていた。腰の後ろには日本刀が揺れていて、白地に華の文様が刺繍された羽織りが風になびいていた。
男は空を見上げて少し息を付いた。
「思ったより遅くなったな…」
彼はそう言ったもののその足を早める様子はなかった。下駄の音は同じリズムを刻み、森を木霊していた。
突然辺りが影に包まれ始めた。彼は空を眺め、雨雲が月を隠し始めていることに気付いた。まもなく雲は月を覆い隠し、やがて水滴が木の葉を濡らし土の色を変え、彼の顔を濡らし始める。
「降ってきたな…」
彼はようやくその足を速めた。下駄の音は湿りぬかるんだ道に吸収され、代わりにビチャビチャという音が雨音に混じって響き出す。
彼は羽織を頭から被り雨よけとし、家路を急いだ。まだ町までは一時間もかかる距離だ、走ったところで十分程度の違いしかないだろう。
やがて彼は同日の明朝も渡ってきた川に差し掛かるが、様相は一転していた。水かさの増した川は濁流となって橋を押し流し、まるでそこには橋など始めから無かったように只々岸辺の土を削り取っていった。
男は事に苦笑いを浮かべ溜息を零し、辺りをキョロキョロと見回した。この辺には民家が点在し出すところからは遠かったが、彼はどこか雨宿りできそうなところを探しているのだろう。
「ん…？」
彼は図らずにも、土が緩んで倒れ込んだ大木が対岸と根元付近の木に引っかかり橋となっているのを見つけた。
彼はその木に駆け寄り、ヒョイと飛び乗るとカラッと下駄が鳴った。続けてカッカッカッカッと走って大木を渡りきると、スタッと大木から跳び降りた。
雨は一層強さを増してきた。
（どこかで雨宿りしなければ
とは言ってもこの辺りに民家は…ん？）
彼の目はこの木々の間に『ぽぅ…』と光る灯を見つけた。彼はそれを家の光だと確信したのか、それとも何か確かめるためか、その灯りに向かって走り出した。
近づいていくほどにその灯りは増えていき、やがて目の前に大きなスペースが広がっていた。
そのスペースのほぼ中央に、黒い木の塀に囲まれた大きな家があった。近づいてみるとその家の様子がよく分かった。
壁は白く二階建てで、黒い塀の入り口らしき所には少しだけ開いた鉄柵の門があった。
彼はそこから中の様子を窺った。中には黒い入り口の扉があり、その右側には庭へ出るための園側という物があった。
（見た目は洋風だが、所々和風だな…）
園側の床の上の奥には障子があり、部屋の中にはどうやら灯が灯っているようだった。
そしてこの家の大きな特徴はその屋根の色だった。灯りの中でその色が鬼灯のように赤いと言うことが分かった。
男はその鉄柵をくぐり、扉の前の雨よけで雨宿りすることにしたのだがその時、障子を開けて中から黒髪の女性が顔を覗かせた。
「どなたですか？」
女性の声は透き通るように美しく、優しそうな印象を与えた。
彼女の肌もまた透き通るように白く、そして大きな瞳に鋭くも優しさを感じさせる眼は、まるで宝石のように緑に輝いていた。鼻筋が通り、とても美しい女性だった。
身につけているのは赤地の華美な着物で、左肩には大きな白い華が刺繍されていて他の所にも同じ華が描かれていた。
「申し訳ありません。私は近くの町の者なのですが、出掛けの帰りにこの雨に遭いまして。
するとこの家の灯りが目に入りましたので、軒先ででも雨宿りさせていただこうと思った次第で…」
「まぁ、それは大変でしょう。お着物も濡れているようですし…
どうかお上がりください、鍵は開いていますので」
「いや、そんな…」
「構いませんよ、どうぞ」
彼女は笑顔でそういった。彼女の唇の下から、可愛らしい八重歯が顔を覗かせた。
男は軽く会釈して扉を開けた。
中は暗く、玄関から２、３メートルは壁に挟まれて廊下が続き、その先は左右に分かれていた。
その廊下の右側からあの女性が水の入った桶と布を持ってやってきた。
「どうぞ、足をお拭きになってください」
「すみません」
彼は下駄を脱いで廊下に腰掛けると、彼女から布を受け取り、一枚を水に浸して搾り足を洗い、もう一枚で水を拭（ぬぐ）った。
「こちらへ」
そうして廊下に上がり、彼女の後について右へ進むとすぐ右側には先程彼女が居た部屋が、その向こうにも右側に部屋が一つあるようだった。その廊下の左側には台所があり、廊下は突き当たりで左に続いていた。
彼女は彼女の居た部屋の隣の襖（ふすま）を開けて中に入り、彼も続いて入った。彼女は壁のランプに灯を灯した。
その部屋は右側に襖があり、隣の部屋と通じている。左側にも襖があり、もう一つ部屋があるようだった。正面にある障子の向こうからは雨の音が聞こえている。
「着替えを用意したいのですがここには殿方用の物はございません…かといって濡れたままでは風邪をひかれますし…」
「ああ、私の事はお構いなく…」
「いえ…でも…
申し訳ありませんが私の着物でご勘弁頂けますか？出来るだけ殿方にも会いそうな者を選（よ）りますので」
彼女は申し訳なさそうな顔で訊ねた。
「…はい、ありがとうございます」
彼がすこし微笑んでそう言うと、彼女も微笑み返した。
「では、着物を取って参りますので。よければ風呂も沸いておりますのでお入りになられてください」
「いいんですか？」
「ええ、私が入ろうと思っていたのですがどうぞ。羽織はここに干されてください」
彼は羽織を脱いで、それを彼女が受け取った。
「この模様は…『千日紅（せんにちこう）』ですか？」
羽織を受け取った彼女がその文様を見て訊ねた。
「ええ。家の家紋…のようなものです」
それを聞きながら彼女は羽織を木のハンガーに掛けた。
「そうですか」
「あなたの着物の絵は…朝顔のようですが違いますね…」
「あぁ、はい。これは『夜顔（よるがお）』なんです。私の着物の多くはこの花の模様なんです。好きなもので…」
そう言いながら彼女は振り返った。
「あの…なんとお呼びすれば？」
「ああ、まだ名前を言っていませんでしたね…
私の名前は龍瞳（リュウドウ）。町でギルドの仕事を請け負って生活しています。
あなたは？」
「魅月尾（ミヅキオ）といいます。」
「ミヅキオ。どのような字を？」
「魅了の『魅』に『月』と尻尾の『尾』で魅月尾です。リュウドウ様のお名前は？」
「龍の瞳で、龍瞳。
あと余り畏まらないでください。私が厄介になっている身ですので…」
「そうですか？
それならリュウドウ様も畏まらないでくださいまし」
「…分かりました」
二人は互いにフフフと笑いあった。どうやらミヅキオは人の名前には『様』を付けて呼ぶらしい。元々言葉遣いが丁寧なのだろうか。
「ではお風呂場へ案内します」
リュウドウは部屋を出たミヅキオについて同じく部屋を出ると、廊下を引き返してそのまま玄関を通りすぎてまっすぐ進んだ。すると左側に襖があり、襖の正面、右側に廊下が曲がっていた。
その襖の前に来た時ミヅキオが止まった。
「この廊下の右側がお風呂です。では私は着替えを準備しますので」
「ああ、ありがとう」
リュウドウは言われた扉を開けて中に入った。そこは脱衣所でその奥に風呂場があった。
彼は服を脱いでいき、浴場の戸を開けて中に入った。
脱衣所も風呂場も洋風で、タイルが貼られていた。
彼は湯船から桶でお湯を汲むと体に掛けた。長い髪がうなじから背中に張り付いた。
彼は湯船に使った。
「～ふぅ…」
（あったまるな…
しかしミヅキオさんはなんて優しいんだろう…見ず知らずの僕にここまで良くしてくれるなんて）
そんなことを考えながら入っていると、ふと眺めた浴場の床に短い毛が落ちていた。
先程は軽く体を流しただけなので床の全てが濡れているわけではなく、その毛もすこし湿気ている程度だった。
その毛は長さが約２、３センチでキラキラと金色に光っている。
（何の毛だろう？）
ここに住んでいるのは彼女一人だけだ。動物を飼っている様子もない。だが彼は深く考えることなく浴槽から出た。
脱衣所には元々身につけていた下着と綺麗な着物だけが置いてあった。リュウドウは下着を履き、まず白い着物を着て帯を巻くとその上から黒地で夜顔と三日月の描かれた着物を羽織った。
リュウドウは髪の毛を乾かしてから、着物の横に置かれていた髪結いの紐でポニーテールに髪をまとめた。
脱衣所から出て部屋に戻るとリュウドウの着ていた物が干されている。ズボンの裾の泥もきれいに洗われていた。
その時彼女が入ってきた。
「どうでしたか？」
「ああ、良い湯加減だったよ」
「よければ今日は泊まっていってください。雨はまだ止まないようですし」
「…そうさせてもらうよ。ありがとう」
「いえ…」
ミヅキオは布団を持ってきて部屋に敷いて、「お休みなさい」と部屋を出ていった。
リュウドウは布団に入って横になると、ゆっくりと眠気が襲ってきた。そしてとうとう眠りに落ちた。
深夜、リュウドウの部屋の襖が音もなく開いた。
雨はまだ降り続いている。部屋は暗く、微かに外から光が入ってきているだけだった。
その部屋の中に何かが入り込んだ。そしてそれは迷うことなく布団にくるまって眠っているリュウドウに向かっていた。
「………」
リュウドウが眠っているのを確認すると、ゆっくりと布団を捲り始めた。
その時シャッと言う音がして、覆い被さろうとしていたその動きが止まる。
「何をしているんだ？」
「っ…」
眠っていたはずのリュウドウが眼を醒まし、それの体に刀を押し当てていた。
「やっぱりな…ミヅキオ…」
そう、その影の正体はミヅキオだったが先刻とは様子はかなり違っていた。黒かった髪は金色に輝き、頭部からはピンと尖った金色の体毛に覆われた耳が生え、お尻の上辺りからは一本のこれも金色の体毛に覆われたふっくらとした尻尾が生えていた。
確かに顔はミヅキオだったが、その姿は紛うこと無き魔物だった。
「どうして…寝ていたはずじゃ…」
「薬の量が少なすぎたのではないか？
僕もさっき目が覚めてね、どうやら何か変だと思って調べてみたんだ。すると部屋にあったお香に眠り薬が混ぜてあるみたいだった。
だけど財布もなにも取られていない。それに部屋のあちこちに金色の毛が落ちている。
何かあるんじゃないかと思って刀を隠し持って待ってたのさ。そして君が現れた…」
リュウドウは日本刀を持ったままゆっくりと立ち上がった。
「………」
「僕を襲おうとしたんだね？」
「…ええ」
「なんで、とは聞かない。君は『妖狐』みたいだからね。比較的大人しいのは、まだ尾が一本だからだかな？」
ミヅキオは頷いたまま顔を上げず、布団の上に座っていた。
「ごめん…なさい。服は乾いてると思うから、逃げたければどうぞ…
斬りたければ…どうぞ…」
ミヅキオはそう言って動かなかった。リュウドウは少し抜いた刀を完全に納めた。
「いいよ、別に。雨宿りもさせて貰ったし、風呂も入らせて貰ったしね
それにどうやら君は元々性格がおしとやかみたいだ、今まで襲ったことは？」
ミヅキオは暫く黙っていたが、やがて「…まだ」と答えた。
「そう…」
リュウドウは屈みながら刀を置き、ミヅキオの肩にやさしく手を添えた。
「じゃあ僕が『貰う』よ…」
「んんっ…？！」
ミヅキオは突然の出来事に毛を逆立てた。リュウドウの唇が自分の唇に重なり、暫くして煌めく糸を引いて離れた。
「ハァ…ハァ…」
ミヅキオは驚いて息を荒げていた。
「…な…何を……」
とミヅキオは目を反らせた。
「どうせこうするつもりだったんだろう？」
「んっ…！」
そう言ってまた唇を重ねたが、今度は舌をミヅキオの口に入れてきた。リュウドウは優しく、だが執拗に舌を絡め口内をまさぐって、いつの間にか小さなクチュクチュという音が鳴っていた。
「あんっ…」
そして口を離すとリュウドウはミヅキオを押し倒した。着ている着物を優しくゆっくり脱がせ、彼女もそれを手助けするように体を浮かせた。
模様のある着物を取り払って、重ねてきていた二枚目の白い着物の胸元をはだけさせた。
「んっ……」
ふくよかな胸が露わになった。横になっていても形をそれほど崩さず、弾力がある。当然乳首は固くなっていた。
「綺麗だな…」
「そう…ですか…？
けど妖狐の中では小さい方で……」
「大きさなど関係はないよ…」
「あんっ…！」
リュウドウがミヅキオの胸を優しく揉んだ。彼女は思わず声を上げて体を強ばらせた。
小さいなどとは言ってもそれは妖狐の平均よりもと言うことであって、大きさは申し分ない。揉みほぐしても形は決して崩れることなく、リュウドウの手に程良い弾力を伝えている。
「んっ…んっ…んあっ…んんっ…」
ミヅキオの声が部屋中に響き、手足がもぞもぞと動いている。
「…ああんっ！」
リュウドウの舌がミヅキオの乳首を絡めた。舌の感触と唾液の潤滑性が新たな快感を生み出し、彼女の声は少し大きくなった。
リュウドウはそれから、右手で胸を揉み彼女の右の胸を口で愛撫した。時には優しく舐めまわし、時には吸い付き、そのいずれもがミヅキオに快感をもたらしていた。
彼女の淫らな喘ぎ声は止むことなく、息づかいはますます荒くなっていた。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
リュウドウの愛撫が一旦やんだ。ミヅキオの顔は赤く紅潮し、胸が大きく上下してる。
手を肩の側でギュッと握りしめていた彼女はその手を開き、リュウドウの着物に掛けた。そして襟を広げて腕を着物の中で背中に回した。
ミヅキオがリュウドウの鎖骨から首に掛けてを舐めた。彼は「フ…」と息を漏らして、自分も彼女の首筋に舌を這わせた。
「はぁっ…」
彼女からも吐息が漏れ、リュウドウは左手を彼女の太股辺りへ持って行った。そして彼女の太股を撫で上げて、その指を彼女の秘部の筋へ沿わせた。
「はあぁ…ヒャァんっ…！」
指にネットリとした液体が付着した。
リュウドウはそのまま指をワレメのもっと奥に沈め、指の腹でゆっくりと撫でるように優しく擦った。
「んんっ…あんっ…あぁっ…あんっ…」
愛液で濡れ濡れの秘部を撫でると、彼女は押し殺しているような声で喘いだ。リュウドウはやがて小さな突起物を指でこねくり回し始めると、ミヅキオは声をより多くだし、回した腕の力は強くなっていった。
「はっ…んっ…あっ…はぁっ…はっ…んっ…んんっ…ダメッ…ダメェッ…」
リュウドウはその指の動きを止め手を離してミヅキオを抱き起こした。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
相変わらず息は荒く、白い着物はお尻の辺りが濡れてシミが出来ていた。リュウドウはミヅキオの着物を完全に脱がせ、自分も着物を脱いだ。
そそり立つ陰茎を見てミヅキオはリュウドウの腕を掴む手をギュッと強くした。リュウドウは横になり、ミヅキオを腰の上に跨らせた。
「入れるよ…」
「…うん…」
「…いや、やっぱり自分の調子で入れていって」
「…うん…」
ミヅキオはゆっくり腰を下ろしてゆき、やがてそれを手で掴んだ。
（…熱いし…固い…）
先がミヅキオの秘部に触れた。彼女はビクンッと震え、そしてまたゆっくりと腰を落とし始めた。
（ん…やっぱりキツい…だが案外順調に入っていくものだな…）
「はぁっ…んっ…」
亀頭の部分が入った時、ミヅキオは息を吸って一気に腰を沈めた。
「はぅうっ…！」
「うっ…」
血が出てきて、ミヅキオは痛みで涙を浮かべている。
「…平気か、ミヅキオ…」
「ハァ…ハァ…リュウドウ…様……平気…です…」
彼女は微笑んでそう言った。
「ハァ…私の…処女…」
「…ちゃんと貰ったよ…キツいけど、凄く気持ちいい…」
「本当ですか…？…うれしぃ…」
ミヅキオはそう言うとゆっくりと腰を上下させ始めた。
「…いっ…うっ…んっ…んっ…んぁっ…あんっ」
何度か振った時点で痛みが快感に変わりだした。そしてすぐにそのスピードは速くなっていった。
「んっ…あっ…はぁっ…やぁっ…あっ…あっ…イクっ…リュウドウ様…イッちゃう…！
んんっ―！」
彼女の穴の中が何度か締め付けが強くなり、体もビクッビクッと震えた。
リュウドウは息の荒い彼女を押し倒すと、自ら腰を降り始めた。
「次は僕だな…」
「あんっ…んっ…あんっ…あんっ…」
突かれる度に声を上げるミヅキオの首筋に唇を付けて、舌で愛撫しながらリュウドウは腰を動かした。
彼女もリュウドウを抱きしめ、耳元で色に満ちた声を上げ続けた。
五分も腰を振っていると、快感の波が二人を襲った。
「ミヅキオ…そろそろ…」
「あんっ…私もっ…またっ…あっあっあっ……んんっ―！」
「うっ…！」
リュウドウは精をミヅキオの中に解放し、ミヅキオはまたキツく締め付け、強く抱きしめ、体を震わせた。
「ハァ…ハァ…リュウドウ様…」
「ミヅキオ…」
二人は長いキスを交わして、眠りに落ちた。
翌日、雨はすっかり止んで気持ちのいい日差しが地上を照らしていた。
「…お帰りになるんですね…」
ミヅキオが少し悲しそうに、寂しそうに言った。
「ああ、だがまた来るよ。約束する」
「本当ですか？…うれしい…あなたを騙したのに…」
「いいよ。結果はこうだったしな」
「わたしも町にはたまに行くこともありますから…その時に会えたらいいな…」
「そうだな。それじゃ…」
「…それでは…」
リュウドウはすっかり乾いた服を着て鉄柵をくぐった。そして森の中の小道を進み、町への道を歩き出した。
肌は白く、長めの黒髪を後ろでポニーテールにしていた。目は橙の混ざったような瞳で細くはなく、しかしパッチリしてもいない眼だ。
女装でもしてしまえば、誠のそれに見間違うであろう中性的な顔立ちであった。
ここはジパング地方の文化が多からずも入ってくる辺りだ。この森を抜け、町を過ぎ、あと数キロもゆけばジパング地方から多くの船が出入港する港があった。
男はそんなジパング地方からの文化を多少取り入れた格好をしている。上半身に纏っているのは着物であるが、履いているのは袴ではなくズボンであった。だがズボンと言ってもそれは裾が少し広がっており、所々に刺繍が施されていた。
足下には高めの歯の下駄がカランコロンと音を立てていた。腰の後ろには日本刀が揺れていて、白地に華の文様が刺繍された羽織りが風になびいていた。
男は空を見上げて少し息を付いた。
「思ったより遅くなったな…」
彼はそう言ったもののその足を早める様子はなかった。下駄の音は同じリズムを刻み、森を木霊していた。
突然辺りが影に包まれ始めた。彼は空を眺め、雨雲が月を隠し始めていることに気付いた。まもなく雲は月を覆い隠し、やがて水滴が木の葉を濡らし土の色を変え、彼の顔を濡らし始める。
「降ってきたな…」
彼はようやくその足を速めた。下駄の音は湿りぬかるんだ道に吸収され、代わりにビチャビチャという音が雨音に混じって響き出す。
彼は羽織を頭から被り雨よけとし、家路を急いだ。まだ町までは一時間もかかる距離だ、走ったところで十分程度の違いしかないだろう。
やがて彼は同日の明朝も渡ってきた川に差し掛かるが、様相は一転していた。水かさの増した川は濁流となって橋を押し流し、まるでそこには橋など始めから無かったように只々岸辺の土を削り取っていった。
男は事に苦笑いを浮かべ溜息を零し、辺りをキョロキョロと見回した。この辺には民家が点在し出すところからは遠かったが、彼はどこか雨宿りできそうなところを探しているのだろう。
「ん…？」
彼は図らずにも、土が緩んで倒れ込んだ大木が対岸と根元付近の木に引っかかり橋となっているのを見つけた。
彼はその木に駆け寄り、ヒョイと飛び乗るとカラッと下駄が鳴った。続けてカッカッカッカッと走って大木を渡りきると、スタッと大木から跳び降りた。
雨は一層強さを増してきた。
（どこかで雨宿りしなければ
とは言ってもこの辺りに民家は…ん？）
彼の目はこの木々の間に『ぽぅ…』と光る灯を見つけた。彼はそれを家の光だと確信したのか、それとも何か確かめるためか、その灯りに向かって走り出した。
近づいていくほどにその灯りは増えていき、やがて目の前に大きなスペースが広がっていた。
そのスペースのほぼ中央に、黒い木の塀に囲まれた大きな家があった。近づいてみるとその家の様子がよく分かった。
壁は白く二階建てで、黒い塀の入り口らしき所には少しだけ開いた鉄柵の門があった。
彼はそこから中の様子を窺った。中には黒い入り口の扉があり、その右側には庭へ出るための園側という物があった。
（見た目は洋風だが、所々和風だな…）
園側の床の上の奥には障子があり、部屋の中にはどうやら灯が灯っているようだった。
そしてこの家の大きな特徴はその屋根の色だった。灯りの中でその色が鬼灯のように赤いと言うことが分かった。
男はその鉄柵をくぐり、扉の前の雨よけで雨宿りすることにしたのだがその時、障子を開けて中から黒髪の女性が顔を覗かせた。
「どなたですか？」
女性の声は透き通るように美しく、優しそうな印象を与えた。
彼女の肌もまた透き通るように白く、そして大きな瞳に鋭くも優しさを感じさせる眼は、まるで宝石のように緑に輝いていた。鼻筋が通り、とても美しい女性だった。
身につけているのは赤地の華美な着物で、左肩には大きな白い華が刺繍されていて他の所にも同じ華が描かれていた。
「申し訳ありません。私は近くの町の者なのですが、出掛けの帰りにこの雨に遭いまして。
するとこの家の灯りが目に入りましたので、軒先ででも雨宿りさせていただこうと思った次第で…」
「まぁ、それは大変でしょう。お着物も濡れているようですし…
どうかお上がりください、鍵は開いていますので」
「いや、そんな…」
「構いませんよ、どうぞ」
彼女は笑顔でそういった。彼女の唇の下から、可愛らしい八重歯が顔を覗かせた。
男は軽く会釈して扉を開けた。
中は暗く、玄関から２、３メートルは壁に挟まれて廊下が続き、その先は左右に分かれていた。
その廊下の右側からあの女性が水の入った桶と布を持ってやってきた。
「どうぞ、足をお拭きになってください」
「すみません」
彼は下駄を脱いで廊下に腰掛けると、彼女から布を受け取り、一枚を水に浸して搾り足を洗い、もう一枚で水を拭（ぬぐ）った。
「こちらへ」
そうして廊下に上がり、彼女の後について右へ進むとすぐ右側には先程彼女が居た部屋が、その向こうにも右側に部屋が一つあるようだった。その廊下の左側には台所があり、廊下は突き当たりで左に続いていた。
彼女は彼女の居た部屋の隣の襖（ふすま）を開けて中に入り、彼も続いて入った。彼女は壁のランプに灯を灯した。
その部屋は右側に襖があり、隣の部屋と通じている。左側にも襖があり、もう一つ部屋があるようだった。正面にある障子の向こうからは雨の音が聞こえている。
「着替えを用意したいのですがここには殿方用の物はございません…かといって濡れたままでは風邪をひかれますし…」
「ああ、私の事はお構いなく…」
「いえ…でも…
申し訳ありませんが私の着物でご勘弁頂けますか？出来るだけ殿方にも会いそうな者を選（よ）りますので」
彼女は申し訳なさそうな顔で訊ねた。
「…はい、ありがとうございます」
彼がすこし微笑んでそう言うと、彼女も微笑み返した。
「では、着物を取って参りますので。よければ風呂も沸いておりますのでお入りになられてください」
「いいんですか？」
「ええ、私が入ろうと思っていたのですがどうぞ。羽織はここに干されてください」
彼は羽織を脱いで、それを彼女が受け取った。
「この模様は…『千日紅（せんにちこう）』ですか？」
羽織を受け取った彼女がその文様を見て訊ねた。
「ええ。家の家紋…のようなものです」
それを聞きながら彼女は羽織を木のハンガーに掛けた。
「そうですか」
「あなたの着物の絵は…朝顔のようですが違いますね…」
「あぁ、はい。これは『夜顔（よるがお）』なんです。私の着物の多くはこの花の模様なんです。好きなもので…」
そう言いながら彼女は振り返った。
「あの…なんとお呼びすれば？」
「ああ、まだ名前を言っていませんでしたね…
私の名前は龍瞳（リュウドウ）。町でギルドの仕事を請け負って生活しています。
あなたは？」
「魅月尾（ミヅキオ）といいます。」
「ミヅキオ。どのような字を？」
「魅了の『魅』に『月』と尻尾の『尾』で魅月尾です。リュウドウ様のお名前は？」
「龍の瞳で、龍瞳。
あと余り畏まらないでください。私が厄介になっている身ですので…」
「そうですか？
それならリュウドウ様も畏まらないでくださいまし」
「…分かりました」
二人は互いにフフフと笑いあった。どうやらミヅキオは人の名前には『様』を付けて呼ぶらしい。元々言葉遣いが丁寧なのだろうか。
「ではお風呂場へ案内します」
リュウドウは部屋を出たミヅキオについて同じく部屋を出ると、廊下を引き返してそのまま玄関を通りすぎてまっすぐ進んだ。すると左側に襖があり、襖の正面、右側に廊下が曲がっていた。
その襖の前に来た時ミヅキオが止まった。
「この廊下の右側がお風呂です。では私は着替えを準備しますので」
「ああ、ありがとう」
リュウドウは言われた扉を開けて中に入った。そこは脱衣所でその奥に風呂場があった。
彼は服を脱いでいき、浴場の戸を開けて中に入った。
脱衣所も風呂場も洋風で、タイルが貼られていた。
彼は湯船から桶でお湯を汲むと体に掛けた。長い髪がうなじから背中に張り付いた。
彼は湯船に使った。
「～ふぅ…」
（あったまるな…
しかしミヅキオさんはなんて優しいんだろう…見ず知らずの僕にここまで良くしてくれるなんて）
そんなことを考えながら入っていると、ふと眺めた浴場の床に短い毛が落ちていた。
先程は軽く体を流しただけなので床の全てが濡れているわけではなく、その毛もすこし湿気ている程度だった。
その毛は長さが約２、３センチでキラキラと金色に光っている。
（何の毛だろう？）
ここに住んでいるのは彼女一人だけだ。動物を飼っている様子もない。だが彼は深く考えることなく浴槽から出た。
脱衣所には元々身につけていた下着と綺麗な着物だけが置いてあった。リュウドウは下着を履き、まず白い着物を着て帯を巻くとその上から黒地で夜顔と三日月の描かれた着物を羽織った。
リュウドウは髪の毛を乾かしてから、着物の横に置かれていた髪結いの紐でポニーテールに髪をまとめた。
脱衣所から出て部屋に戻るとリュウドウの着ていた物が干されている。ズボンの裾の泥もきれいに洗われていた。
その時彼女が入ってきた。
「どうでしたか？」
「ああ、良い湯加減だったよ」
「よければ今日は泊まっていってください。雨はまだ止まないようですし」
「…そうさせてもらうよ。ありがとう」
「いえ…」
ミヅキオは布団を持ってきて部屋に敷いて、「お休みなさい」と部屋を出ていった。
リュウドウは布団に入って横になると、ゆっくりと眠気が襲ってきた。そしてとうとう眠りに落ちた。
深夜、リュウドウの部屋の襖が音もなく開いた。
雨はまだ降り続いている。部屋は暗く、微かに外から光が入ってきているだけだった。
その部屋の中に何かが入り込んだ。そしてそれは迷うことなく布団にくるまって眠っているリュウドウに向かっていた。
「………」
リュウドウが眠っているのを確認すると、ゆっくりと布団を捲り始めた。
その時シャッと言う音がして、覆い被さろうとしていたその動きが止まる。
「何をしているんだ？」
「っ…」
眠っていたはずのリュウドウが眼を醒まし、それの体に刀を押し当てていた。
「やっぱりな…ミヅキオ…」
そう、その影の正体はミヅキオだったが先刻とは様子はかなり違っていた。黒かった髪は金色に輝き、頭部からはピンと尖った金色の体毛に覆われた耳が生え、お尻の上辺りからは一本のこれも金色の体毛に覆われたふっくらとした尻尾が生えていた。
確かに顔はミヅキオだったが、その姿は紛うこと無き魔物だった。
「どうして…寝ていたはずじゃ…」
「薬の量が少なすぎたのではないか？
僕もさっき目が覚めてね、どうやら何か変だと思って調べてみたんだ。すると部屋にあったお香に眠り薬が混ぜてあるみたいだった。
だけど財布もなにも取られていない。それに部屋のあちこちに金色の毛が落ちている。
何かあるんじゃないかと思って刀を隠し持って待ってたのさ。そして君が現れた…」
リュウドウは日本刀を持ったままゆっくりと立ち上がった。
「………」
「僕を襲おうとしたんだね？」
「…ええ」
「なんで、とは聞かない。君は『妖狐』みたいだからね。比較的大人しいのは、まだ尾が一本だからだかな？」
ミヅキオは頷いたまま顔を上げず、布団の上に座っていた。
「ごめん…なさい。服は乾いてると思うから、逃げたければどうぞ…
斬りたければ…どうぞ…」
ミヅキオはそう言って動かなかった。リュウドウは少し抜いた刀を完全に納めた。
「いいよ、別に。雨宿りもさせて貰ったし、風呂も入らせて貰ったしね
それにどうやら君は元々性格がおしとやかみたいだ、今まで襲ったことは？」
ミヅキオは暫く黙っていたが、やがて「…まだ」と答えた。
「そう…」
リュウドウは屈みながら刀を置き、ミヅキオの肩にやさしく手を添えた。
「じゃあ僕が『貰う』よ…」
「んんっ…？！」
ミヅキオは突然の出来事に毛を逆立てた。リュウドウの唇が自分の唇に重なり、暫くして煌めく糸を引いて離れた。
「ハァ…ハァ…」
ミヅキオは驚いて息を荒げていた。
「…な…何を……」
とミヅキオは目を反らせた。
「どうせこうするつもりだったんだろう？」
「んっ…！」
そう言ってまた唇を重ねたが、今度は舌をミヅキオの口に入れてきた。リュウドウは優しく、だが執拗に舌を絡め口内をまさぐって、いつの間にか小さなクチュクチュという音が鳴っていた。
「あんっ…」
そして口を離すとリュウドウはミヅキオを押し倒した。着ている着物を優しくゆっくり脱がせ、彼女もそれを手助けするように体を浮かせた。
模様のある着物を取り払って、重ねてきていた二枚目の白い着物の胸元をはだけさせた。
「んっ……」
ふくよかな胸が露わになった。横になっていても形をそれほど崩さず、弾力がある。当然乳首は固くなっていた。
「綺麗だな…」
「そう…ですか…？
けど妖狐の中では小さい方で……」
「大きさなど関係はないよ…」
「あんっ…！」
リュウドウがミヅキオの胸を優しく揉んだ。彼女は思わず声を上げて体を強ばらせた。
小さいなどとは言ってもそれは妖狐の平均よりもと言うことであって、大きさは申し分ない。揉みほぐしても形は決して崩れることなく、リュウドウの手に程良い弾力を伝えている。
「んっ…んっ…んあっ…んんっ…」
ミヅキオの声が部屋中に響き、手足がもぞもぞと動いている。
「…ああんっ！」
リュウドウの舌がミヅキオの乳首を絡めた。舌の感触と唾液の潤滑性が新たな快感を生み出し、彼女の声は少し大きくなった。
リュウドウはそれから、右手で胸を揉み彼女の右の胸を口で愛撫した。時には優しく舐めまわし、時には吸い付き、そのいずれもがミヅキオに快感をもたらしていた。
彼女の淫らな喘ぎ声は止むことなく、息づかいはますます荒くなっていた。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
リュウドウの愛撫が一旦やんだ。ミヅキオの顔は赤く紅潮し、胸が大きく上下してる。
手を肩の側でギュッと握りしめていた彼女はその手を開き、リュウドウの着物に掛けた。そして襟を広げて腕を着物の中で背中に回した。
ミヅキオがリュウドウの鎖骨から首に掛けてを舐めた。彼は「フ…」と息を漏らして、自分も彼女の首筋に舌を這わせた。
「はぁっ…」
彼女からも吐息が漏れ、リュウドウは左手を彼女の太股辺りへ持って行った。そして彼女の太股を撫で上げて、その指を彼女の秘部の筋へ沿わせた。
「はあぁ…ヒャァんっ…！」
指にネットリとした液体が付着した。
リュウドウはそのまま指をワレメのもっと奥に沈め、指の腹でゆっくりと撫でるように優しく擦った。
「んんっ…あんっ…あぁっ…あんっ…」
愛液で濡れ濡れの秘部を撫でると、彼女は押し殺しているような声で喘いだ。リュウドウはやがて小さな突起物を指でこねくり回し始めると、ミヅキオは声をより多くだし、回した腕の力は強くなっていった。
「はっ…んっ…あっ…はぁっ…はっ…んっ…んんっ…ダメッ…ダメェッ…」
リュウドウはその指の動きを止め手を離してミヅキオを抱き起こした。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
相変わらず息は荒く、白い着物はお尻の辺りが濡れてシミが出来ていた。リュウドウはミヅキオの着物を完全に脱がせ、自分も着物を脱いだ。
そそり立つ陰茎を見てミヅキオはリュウドウの腕を掴む手をギュッと強くした。リュウドウは横になり、ミヅキオを腰の上に跨らせた。
「入れるよ…」
「…うん…」
「…いや、やっぱり自分の調子で入れていって」
「…うん…」
ミヅキオはゆっくり腰を下ろしてゆき、やがてそれを手で掴んだ。
（…熱いし…固い…）
先がミヅキオの秘部に触れた。彼女はビクンッと震え、そしてまたゆっくりと腰を落とし始めた。
（ん…やっぱりキツい…だが案外順調に入っていくものだな…）
「はぁっ…んっ…」
亀頭の部分が入った時、ミヅキオは息を吸って一気に腰を沈めた。
「はぅうっ…！」
「うっ…」
血が出てきて、ミヅキオは痛みで涙を浮かべている。
「…平気か、ミヅキオ…」
「ハァ…ハァ…リュウドウ…様……平気…です…」
彼女は微笑んでそう言った。
「ハァ…私の…処女…」
「…ちゃんと貰ったよ…キツいけど、凄く気持ちいい…」
「本当ですか…？…うれしぃ…」
ミヅキオはそう言うとゆっくりと腰を上下させ始めた。
「…いっ…うっ…んっ…んっ…んぁっ…あんっ」
何度か振った時点で痛みが快感に変わりだした。そしてすぐにそのスピードは速くなっていった。
「んっ…あっ…はぁっ…やぁっ…あっ…あっ…イクっ…リュウドウ様…イッちゃう…！
んんっ―！」
彼女の穴の中が何度か締め付けが強くなり、体もビクッビクッと震えた。
リュウドウは息の荒い彼女を押し倒すと、自ら腰を降り始めた。
「次は僕だな…」
「あんっ…んっ…あんっ…あんっ…」
突かれる度に声を上げるミヅキオの首筋に唇を付けて、舌で愛撫しながらリュウドウは腰を動かした。
彼女もリュウドウを抱きしめ、耳元で色に満ちた声を上げ続けた。
五分も腰を振っていると、快感の波が二人を襲った。
「ミヅキオ…そろそろ…」
「あんっ…私もっ…またっ…あっあっあっ……んんっ―！」
「うっ…！」
リュウドウは精をミヅキオの中に解放し、ミヅキオはまたキツく締め付け、強く抱きしめ、体を震わせた。
「ハァ…ハァ…リュウドウ様…」
「ミヅキオ…」
二人は長いキスを交わして、眠りに落ちた。
翌日、雨はすっかり止んで気持ちのいい日差しが地上を照らしていた。
「…お帰りになるんですね…」
ミヅキオが少し悲しそうに、寂しそうに言った。
「ああ、だがまた来るよ。約束する」
「本当ですか？…うれしい…あなたを騙したのに…」
「いいよ。結果はこうだったしな」
「わたしも町にはたまに行くこともありますから…その時に会えたらいいな…」
「そうだな。それじゃ…」
「…それでは…」
リュウドウはすっかり乾いた服を着て鉄柵をくぐった。そして森の中の小道を進み、町への道を歩き出した。
11/01/25 01:07更新 / アバロンⅡ世
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