悪魔のいざない
僕には、どうしてもやらなければいけない事がある。しかし、それを成し遂げるには、僕はあまりにも無力で。
――力を貸してくれるなら、助けてくれるなら、悪魔だっていい。
そんな事を考えながら、僕は眠りに落ちていた。
浅い眠りから覚めた僕は、枕元に妖しげな書物を見つけた。
その本には悪魔の召喚法が記され、その魔術までもが内包されているのだという。その本によれば、悪魔に対価を支払う事で、その人ならざる力を以って願いを叶えてくれるという。
あまりにも都合良く、まさに悪魔の罠めいたその魔導書。しかし僕には、それに縋るしか選択肢はなかった。
あぁ、お願いだ……本物であってくれ。悪魔でもいいから、僕を助けてくれ。そう願いながら、僕は魔導書のページをめくっていた。
「――我が名はフラクト、悪魔の庇護を求める者なり」
そして、時は過ぎて、今は黄昏時。
魔導書に記された手続きの通り、自分の体液……唾液を指につけ、魔導書の示された場所に触れる。濡れた指先が乾いていき、魔導書が紅い光を帯び始める。
召喚の合言葉を唱えれば、それを鍵として、魔導書から光が広がっていって。
「っ……」
「ふふ……私を呼んだのは貴様だな?」
光の中から現れたのは、妖艶な女悪魔。男の理想を形にしたような、豊満な肢体。かろうじて局部の隠れる装いに露出した青い肌は、人外の艶めかしさ。
濡れたようにしっとりと灯りを反射する翼、角、尻尾。悪魔たる異形の部位もまた、美しく。
禍々しく邪悪でありながらも、欲望を掻き立てられるその姿に、退廃と堕落の香りに、思わず息をのむ。
「は……はい……」
小柄な自分に対し、悪魔は長身で。自然と、悪魔に見下ろされてしまう。悪魔が浮かべているのは、邪悪な笑み。
ぞくぞくとしたモノを背筋に感じながらも、血の気が引くような心地。漆黒の眼に、紅の瞳に見据えられて、動けない。
実際に悪魔と相対して、その力の強大さを、邪悪さを肌で感じ取る。悪魔の力の前では、自分という存在はあまりに矮小。逆らってはいけない存在なのだと、理解する。
覚悟を決めて召喚したつもりはずだったが、目の前の存在にすっかりと畏怖してしまっていた。
「……くくっ、そう怯えずとも良いのだぞ。取って食おうというわけではないのだからな」
「ぁ……」
紅い爪で、つぅ、と喉を撫でられる。喉元に尖ったものが突きつけられているのは、なんとも不安で、思わず身がすくむ。
しかし、その見た目の鋭さとは裏腹に、痛みは無く。むしろ、手つきは柔らかで、その感触は、うっとりとする程に気持ち良く。
畏れながらも、身を委ねてしまいたいとさえ思ってしまう。
「ほう……これは、もてなしのつもりか。良い心がけではないか?」
「ど……どうぞ、お召し上がりください。人間の食事がお口に合うかはわかりませんが……これが私の誠意です」
そして悪魔は、僕の背後に視線をやる。背後のテーブルに用意しておいたのは、腕によりをかけて作ったご馳走。
誰かに助力を請うのであれば、相応の態度を取るのが筋というものだ。
その相手がたとえ、悪魔であったとしても。むしろ、相手が悪魔であるからこそ、礼節を欠くわけにはいかないと考えていた。
機嫌を損ねればどんな仕打ちが待っているか、想像もつかないのだから。
「くく……では、頂くとしよう。貴様も座るがいい」
「……は、はい」
悪魔は悠然と食卓につく。そして僕は、悪魔に促されるがまま、対面に座る。
悪魔を召喚したのも、食事を用意したのも僕。しかし、この場の主導権を握っているのは、間違いなく悪魔だった。
「ふむ……男の手料理など、初めて食したが……なるほど、悪くない。もてなそうという気概は気に入ったぞ?」
「……ありがとう、ございます」
不思議な空気の流れる食卓。一通り、一口ずつ料理を味わった後、悪魔は口を開く。
端正な顔に、妖しげな微笑み。どうやら、もてなしを気に入って貰えたらしい。
胸に込み上げる安堵。そして……喜び。悪魔の言葉は、ぞっとする程、耳に心地良く。悪魔に褒められ、喜んでしまっている自分が居た。
「さて……なんの理由もなしに、私を呼んだわけでもあるまい?どれ、話してみろ」
そして悪魔は、ねっとりと絡みつくような声色で、問いを投げかけてくる。
悪魔の手を借りてでも、成し遂げたい事。悪魔を召喚した、その理由。
「そのっ……貴女を呼び出した理由なのですが……友人の駆け落ちを……成功させて欲しいのです。決行は、明日の未明」
僕のような人間と仲良くし続けてくれた、優しい二人。その二人が、誰にも邪魔されることなく、幸せになれるように。その仲が、政略結婚などで、身分の差などで引き裂かれぬように。
明日に決行される、親友の駆け落ちを成功させる。それが悪魔に縋る理由だった。
「ほう……?他人の恋路のために、他人の幸せのために私を呼び、対価を払うというのか、貴様は……」
邪悪さとたおやかさが同居した含み笑い。悪魔は、にたぁ、と口角を吊り上げる。すっと細めた目に覗く、紅い瞳は爛々と輝いて。
その眼差しに、品定めをされているかのよう。
僕を試すかのような問い掛けには、喜悦の色が滲み出ている。興が乗ったと言わんばかり。
「……はい」
悪魔の問い掛けは耳に甘く、抗いがたい魔性を孕んでいて。心から声を吸い出されるかのように、言葉に感情が滲む。
悪魔を呼び出す事、対価を払う事は、当然怖い。不安に苛まれているのも確か。そして、心の内に抱える痛み、孤独感までもが浮き上がってくる。
それでも僕は、悪魔の問いにはっきりと頷く。声を震わせながらも、確かに答える。
僕は自分のためでなく、親友の幸せのために、悪魔を呼んだのだと。
「くふふ、ふふふっ、己の幸せを顧みぬとは、愚かな男だ……
お前のように愚かな男は、この私が直々に支配してやらねばなるまい……」
「っ……」
そして、どうやら僕の何かが、悪魔の琴線に触れてしまったらしく。
不穏な言葉に、これ見よがしな舌舐めずり。悪魔の獲物に定められてしまったのか、気に入られてしまったのか。それとも両方なのか。
悪意に満ちているようにも、慈愛に満ちているようにも見える、悪魔の微笑み。
悪魔に支配されるのはおぞましい事であるはずなのに、それが甘美な事であるようにさえ思えてしまう。
「あぁ……そう身構えるな。言ったはずだぞ?取って食おうというわけではないのだからな……」
「は、はい……」
取って食わない、という悪魔の言葉は高圧的で、にわかに信じ難く……しかし、その甘い響きに、その言葉を信じたくなってしまう。
悪魔の支配が甘美なものであったなら、直接的に言ってしまえば、性的なモノであったなら……と想像してしまっていて。
「くふふ……そうか、そうか」
「ぁ……」
悪魔の黒眼に、心を覗かれているかのよう。意味深長に笑い、悪魔は頷く。先ほど抱いてしまった欲望を見透かされているようで、言葉も返せず。
息の詰まるような思いなのに、不思議と不快さ、苦しさは感じない。逆に、悪魔の紅い瞳の深い輝きに、心を奪われてしまいそうな程。
胸の鼓動が、どくどくと速まっていくのを感じる。視線を逸らせない、逸らしたくない。
今は、そんな事を考えている場合ではないのに。親友のために、この悪魔と交渉しなければならないのに。
「ああ……私の力をもってすれば、駆け落ちを成功させる事など造作もない。時間は十分にある……だから、そう焦る事はない」
「……本当に、助けて、くれるんですね……?」
そんな焦りも、悪魔にはしっかりと見透かされてしまっていて。余裕に満ちたその声が、僕をたしなめる。そんな様子に、頼もしさを覚えてしまう。不安と安心の同居した、不思議な気分。
「くく……勿論、対価は頂くが、な。つまりは、貴様次第という事だ」
「な……何を支払えば……良いのでしょうか……」
しかし、続けざまの悪魔の言葉に、心の天秤は不安へと傾く。
相手は悪魔、もしかすれば命さえも、魂さえをも要求してくるかも知れない。
「言ったはずだぞ?焦るな、と……対価については後だ。
まずは……そうだな、貴様の身の上でも聞いてやろうではないか。貴様がその二人に入れ込む理由、とやらをな」
「す、すみませんっ……理由……ですか……?」
「そうだ。話してみろ」
食事の最中の交渉は、食事を妨げる事でもあると気づく。悪魔の機嫌を損ねてしまったかと、戦々恐々。
むしろ悪魔は、上機嫌な様子。不満気なのは言葉だけ。声色は愉しげで、その妖しい微笑みを絶やさない。
それどころか、怯える僕を優しく見つめてくれているようにさえ思える。僕の緊張をほぐすために、この話題を振ってくれたようにさえ。けれど、それはきっと、悪魔の狡猾な罠に違いない。高圧な態度に覗く優しさは、まさに飴と鞭、人を操るための道具なのだから。
「ええ、と……では、お言葉に甘えて。
二人に入れ込む理由、なのですが……二人ともが、唯一無二の親友と呼ぶべき相手でありまして」
しかし、当然、悪魔の言葉に逆らう事など出来なくて。促されるがままに、僕の抱える事情を吐き出していく。
「ほう。親友、か」
「……はい、私にとっては……生涯の友と言うべき相手です」
親友。そう、少なくとも、僕にとっては、あの二人は親友だ。あの二人がどう思ってくれているのか、少し自信がないが……駆け落ちの計画を打ち明け、助言を求めてくれる程度には信頼されているのは確かだ。僕は、それに応えたい。
「……子供の頃、私は今より内気でして……そんな私に出来た初めての友人が、二人でした。
彼女は貴族の令嬢、彼は使用人の息子。私は出入りの薬師の息子といった関係でして。
初めて出会った時には既に、二人はとても仲が良かったのですが……そこに、自分のような人間を受け入れてくれました」
初めての友達。二人が僕を友達として迎え入れてくれた事は、とても嬉しかった。しかし、思い返せば……二人の邪魔をするような、割って入るような罪悪感を、当時から抱いていた。
彼女達は僕に色々と楽しい事を教えてくれたし、遊びに連れ回して、孤独を和らげてくれたけど、僕は面白い話の一つも出来なかったのだから。
「……恩返し、でしょうか。私は彼らから多くのモノを受け取りましたが……受け取るだけ、でしたので。
二人がいなければ、今頃、私は孤独だったでしょう。母は私を産んで死に、父も早くに逝ってしまいましたから」
僕を交えない方が二人は楽しく、仲良くいられるのではないだろうか。そう思いながらも、僕は二人から離れられなかった。寂しかったからだ。
僕と二人の関係性。今の今まで、二人の優しさに甘え続けていた。
だからこそ今、それに報いたいのだ。
「それに……あの人が政略結婚の道具にされるなど、耐えられないのです。家の凋落を防ぎ、領民を護るためだとしても。それに、彼女の両親でさえも、それを望んでいないのです」
多感な少年時代に、異性に優しくされたならば、淡い恋心の一つぐらいは抱く物で。それが、向日葵のように素敵な笑顔を見せてくれる少女ならば、尚更。ああ、彼女はお転婆だった。
もっとも、その笑顔の向く先が僕ではない事に気付いていたから、気持ちを圧し殺して、隠し通して、身を引いて。それが、僕の初恋だった。
恋心などとうに棄てたにせよ、それでもあの人は僕の初恋の人でもあるのだ。それが政略結婚の道具にされようとしているのは、我慢ならない。
「そして、何より……二人には幸せであって欲しいのです。ただ、ひたすらに。
……これを理由と言っても良いのかは分かりませんが」
そして、最たる理由は、僕の抱えるこの想いだった。僕の心が、二人の幸せを望んでいる。僕は何故、二人の幸せを望んでいるのか。結局、心の内から湧き上がるその感情に、理由付けは出来なかった。
「……こんなところでしょうか。すみません、まとまりに欠けて」
「そうか、それが貴様の理由か……ああ、それだけ聞けたなら十分だ」
心に抱え込んでいた理由を吐き出して、少しだけすっきりとしたような気がする。相手が悪魔であったとしても、話を聴いてもらう事で楽になるのだと、不思議な気持ちだった。
「では……問うとしよう。貴様はそれで幸せか?満たされるのか?」
「……」
そして、悪魔は意地悪く笑い、ねっとりと問いかけてくる。
僕は二人の幸せを願った。二人が幸せにならなければ、僕はきっと、幸せにはなれないだろう。しかし、二人が幸せがそのまま、僕の幸せになるわけでもなかった。
結局の所……彼女は彼を選んだし、彼は彼女を選んだ。だから、駆け落ちをする。家を、育った街を捨てて。それは美しい事だけど、それを見送る僕の心境としては、やはり寂しくて仕方がない。無二の親友に会えなくなるのだから。
沈黙は、悪魔の問いかけに対する、僕なりの精一杯の抵抗だった。
「くくく……幸せになりたくはないのか?己の幸せを願う事も出来るのだぞ?」
悪魔の言葉はやはり、恐ろしい程に耳に甘く。"幸せ"という漠然とした一言でさえ、心を揺さぶる。目の前の女悪魔に優しく抱いて貰えたならば……きっと、幸せだろう。あの胸に、太ももに、唇に……どれもが気持ち良さそうだ。不自然な程に、悪魔に気持ち良くして貰う事ばかりが頭に浮かぶ。僕を堕落へと導くかのような、悪魔の魔性だった。
「それでも……お願いします。二人の幸せのために、力を貸してください……必要とあれば……この魂も……捧げます……」
湧き上がる欲望を押さえ込み、魔性に抗い、悪魔の言葉に割り込む。これ以上、甘い言葉を囁かれてしまえば、決心が揺らいでしまうかもしれないからだ。
魂を捧げる。その言葉の重みに、声が震えていた。
「くふふ……そうか、そうか……やはり貴様は愚かだ……」
「っ……」
悪魔の誘いを拒めども、その笑みは邪悪さを増していく。堕とし甲斐がある、と言わんばかりの、嬉しそうな顔。淫靡な捕食者とも言うべき表情。今すぐにでも、食べられてしまいそう。貪り尽くされてしまいそう。それはまさしく悪魔であり、淫魔のようでもあった。
僕を愚かと言うその声さえも、甘く艶めいていて、耳に心地良く、決して不快では無かった。
「愚かな貴様に相応しい対価は……この私への、一夜の服従だ」
「一夜の……服従……」
そして、悪魔が告げた対価は……一夜の服従。悪魔の纏う退廃の色香に、その言葉の意味合いを本能的に理解する。夜の相手をしろと、悪魔に抱かれろと、そう要求してきているのだ。
しかし、悪魔の言葉の意味を理解してなお、困惑を隠せない。わざわざ僕のような男を抱こうなど、物好きにも程がある。
「そうだ。一夜の間……私の所有物となれ。この私が、貴様を抱いてやろう……くふふ」
「それで力を貸していただけるのであれば……願ってもありません。……慈悲深くさえ思います」
そして、服従の期間はたった一夜だけ。僕を支配する事を目的とするのであれば、永遠の服従を突きつければ良いというのに。この悪魔は僕の足元を見ようとしなかった。
僕の持つ全てを捧げる覚悟で悪魔を呼び出したというのにも関わらず、たった一晩抱かれるだけで、力を貸してくれるというのだ。
勿論、相手は悪魔。裏があるかも知れない。しかし、それでも……悪魔の言葉に僕は安堵し、慈悲を感じていた。少なくとも、僕が全てを投げ打つ必要は無くなったのだから。
むしろ……悪魔に抱かれる事を期待してしまっている。人の身では有り得ない美貌と魔性に、心を揺り動かされてしまっていた。
「貴様は友の幸福を私に願い……それと引き換えに一夜の間、私の所有物となる。これで良いのだろう?」
「……は、はい。二人を幸せにしてくれた、なら……一晩、貴女のモノとなると……や、約束、します」
「くふふ……であれば、取引は成立だな」
確認と合意。悪魔の言葉に頷き、震えた声で、約束を交わす。もはや、言い逃れは出来ない。
形はどうあれ……僕は悪魔の思惑に乗ってしまった。引き返せない一線を越えてしまったに違いない。しかし、後悔はなかった。
「ありがとう……ございます……」
無事に交渉を終えた安堵と、対価に対する不安。二つの感情が押し寄せてくる。
一晩の服従。悪魔の所有物になるという事は、何をされても文句は言えないという事だ。悪魔は僕を抱いてくれると言ったが……それが想像しているものと違ったなら。興が冷めて、悪魔の気が変わってしまったなら。幾ら快楽を想起させてくれる言葉があっても、他人に生殺与奪を握られるというのは、やはり不安で仕方ない。
「くふふ……案ずる事は無い。全て、私に任せておけ……今はしばし、食事を愉しむとしよう」
「は、はい……」
不安につけ込むかのように、優しい響き。甘い抱擁を想起させるそれは、まさに庇護者の声。
明日の夜には、何をされても文句は言えない。たとえ、どんなに酷い事をされようとも、それを受け入れるしか無い。それが願いの対価なのだと頭で理解していても……悪魔の言葉はするりと心に入り込んできて。悪魔の言葉に、不安は塗り潰されていく。
このまま全て、悪魔に任せておけば良いのだと……そんな、甘く都合の良い考えさえもが、脳裏に浮かぶのだった。
「うむ、悪くない食事だった……さて、そろそろ駆け落ちの計画について話して貰おうか」
「あ……それなら、計画書が、ここに」
食事を終えた悪魔は、鷹揚にソファでくつろいでいた。組まれた脚、露出したむちむちの太ももが、あまりにも眩しく挑発的。
魅惑の肢体をじっくりと眺めたくなる衝動に抗いながら、駆け落ちの計画書を手にし、悪魔に手渡そうとする。
「ほう……準備が良いな」
「……」
悪魔はソファに腰掛けながら、漆黒の翼を大きく広げて。そして、その隣の場所を、とん、とん……と叩く。
僕はその仕草を前に、思考を硬直させていた。
「どうした?ほら、座れ」
「……は、はい……」
悪魔にそう言われてようやく、隣に座るように促されているのだと気づいて。悪魔の機嫌を損ねるわけにもいかず、恐る恐る、ソファの隅へと腰を降ろす。
背後にあるのは、大きく広がった悪魔の翼。当然、もたれかかる事などはできない。
「さて、計画書を見せてもらうぞ……」
「ど、どうぞ…………」
悪魔は事もあろうに、ぐい、と間を詰めて、身体を寄せてきて。僕をソファの隅に追い詰め、逃げ場を無くして、意地悪く笑う。
押し付けられる悪魔の身体は、とても柔らかく、温かく。女性経験の皆無な僕にとっては、それだけで大変な刺激。
並んで座り、身を寄せられただけで……もはや、緊張のあまり、身動きも取れず、頭が真っ白になる。
「ふむ……なるほど……貴様が作ったのか?」
「っ……はい、大半は私が。同じ物を彼らにも渡してあります。あ……二人の人相についても追記しておきました」
計画書に目を通しながら、悪魔はその翼で、僕を抱き寄せてくる。気がつけばその尻尾も、僕の腰に回されていて。これで、席を立つ事も叶わない。
拘束としてはごく緩いものでも、悪魔の持つ力と、僕の立場を考えた時……それは絶対的。逃げられないように枷を嵌められた、そんな気分。
「そうか……そうだな、十分な下調べに基づいているし、不測の事態に対する行動指針もある。分の悪い賭けである事には変わらないだろうが……この計画書だけでも、十分以上に義理は果たしているだろう。
ああ、それでも私を呼んだのだから…………あぁ、なんと愚かな……」
「ぁ……」
しかし、その枷は、あまりにも甘美な代物だった。翼に抱かれた僕は、悪魔がその身に纏う、退廃の色香に包まれてしまっていて。熟した果実のような、悪魔の香りを吸い込めば、くらりとした陶酔、恍惚。緊張も、重圧も、甘く塗り潰されていく。
低く艶めいたその声で、耳元で囁かれて。悦に入った、邪悪な含み笑い。それは嘲笑などとは掛け離れていて、あまりにも耳に心地良く。背筋にぞくぞくとした快感が走り抜けていく。思考がとろけて、心を惹かれて、堕ちていってしまいそう。
このまま、悪魔に囚われていたい。そんな考えさえもが、頭をよぎる。
「ともかく……これだけの情報があれば十分だ。後は全て、この私に任せておけ……分かったな?」
「は、はい……お願い、します……」
自信に満ちた悪魔の囁き。後の事は全て、悪魔がやってくれる。甘美なその声が、それを信じさせてくれる。
重い肩の荷が、すっと降りていく。身体から力が抜けていくのを感じる。
「分かったのなら……今日はもう休め。ロクに眠れていないのだろう?疲れているのならば、休め」
「え……?でも……」
悪魔の言う通り、友の幸せのために力を尽くした結果として、僕は身も心も疲弊しきっていた。
休息を勧めてくれる、悪魔らしからぬ気遣い。それが、僕に疲れと眠気を自覚させる。
しかしそれでも……まだ、眠れない。出来る事を全て尽くした、ならば次は、二人のために祈りだけでも捧げるつもりだった。
「……休めと言っている。この私が、貴様の友人を幸福に導いてやるのだから……案ずることは無い。
貴様はもう十分に頑張った……だから、休んでいいのだぞ」
「は、はい……」
悪魔は諭すような言葉をかけながら、今までの苦労を労うように背を撫でてくれる。邪悪なはずの悪魔は、溢れんばかりの慈愛と母性を垣間見せてくれて。僕の疲れた心は、その甘美な誘いに抗えなかった。決心は容易く揺らぎ、悪魔の優しい言葉に心を委ねてしまっていた。
「くふふ……聞き分けの良い男は好きだぞ?
しっかりと眠りについて、英気を養え……明日の夜に備えて、な。それが貴様の友人のためにもなる……分かったな」
「うん、分かり、ました……」
僕はくったりと脱力して、悪魔の翼に背を預け、その肩にもたれかかってしまう。そして悪魔は、悦に入った様子でそれを受け止めてくれる。相手は恐れるべき悪魔なのだと分かっていても、このまま無防備に眠りへとついてしまいたくて、仕方がなかった。
それが二人のためになるとまで言われてしまえば、それに抗う事は出来ず。
「このまま眠りたいのだろう……?いいぞ、眠ってしまえ……後は全て、私に任せておけばいい……万事、良いようにしてやる……」
「はい……」
悪魔の優しい囁きが、心に染みこんでいく。その言葉に命じられるがまま、僕は目を閉じる。悪魔の翼による抱擁が今は、ゆりかごのように心地良く。少し前まで不安と焦燥に駆られていた事が嘘のように、僕に安寧をもたらしてくれる。
そして僕は身も心も悪魔に委ね、悪魔に従い、悪魔に導かれて、暗く温かい眠りへと堕ちていく。目を覚ました時にはきっと、僕の願いは聞き届けられ、駆け落ちは成功し、二人は幸せに向かっているのだと……そう信じながら。
「……」
他者のために私を呼び出し、庇護を求めてきた愚かな男。フラクトと名乗った男をベッドへと降ろし、布団を掛けてやる。
安らかな寝息、可愛らしい寝顔。私の言葉を信じ込み、安心した様子で眠りについている。
随分と疲れていたらしく、このまま昼までは目覚めないだろう。
「貴様の願いは、この私が叶えてやろう……必ず、幸福に堕としてやるとも……」
この男が願ったのは、駆け落ちの成功ではなく、"友の幸福"。そう、幸福を願うのなら……貴族の家ごと魔に堕としてやるべきだ。
勿論、この男が予想していた結末ではないが……魔に堕ちてこそ、真に幸せとなれるもの。この男の願いを、最も良い形で叶えてやるのだ。
貴族の家ごと魔に堕としてしまえば、駆け落ちする必要も無い。愛の逃避行と言えば聞こえは良いが、故郷、家族、友人を捨てるのは、少なからず心苦しいだろう。そのような事が無いように、家ごと堕としてしまうのだ。そして、ゆくゆくは、この街全てを堕とす。それが最善だ。
「くふふ……愚かな男め……この私が、すぐに支配してやる……」
悪魔に縋らざるを得ない無力さ。契約の詰めは甘く、容易くそそのかされる。迂闊に悪魔を信じ、身を委ねてしまう。
そして何より愚かなのは、その自己犠牲。他者のために身を削り、自ら幸せから遠ざかっていくその行為は、愚かという他ない。
この男は、自分自身で幸せになれない。我々と比べてあまりにも弱く、あまりにも愚かだ。だからこそ……支配欲を掻き立てられる。可愛らしくて、愛おしくて、己のモノにしたくて仕方がない。
夢のような快楽を与え、自己犠牲など考えられないほどに堕落させて、服従の幸福に染め上げて、身も心も支配してやるのだ。
「おやすみ、フラクト……もう少しだけ、そこで待っているのだぞ……」
痩せた頬を一撫でしてやり、寝室を後にする。離れるのは名残惜しいが、約束は約束だ。そろそろ、準備をせねばならない。
「さて」
召喚の魔導書を、手元に呼び戻す。救いを求め、悪魔との契約を望む想いに呼応して転移し、人を魔にいざなうこの魔導書は、母上から賜った物。
母上もまた、これで父上と出逢ったらしい。これが私とあの男を引き合わせたのだと思うと、運命的な出会いだと、柄にもない事を思ってしまう。
「―――来たれ」
そして、召喚・転移術式を内包したこの魔導書があれば、私の腹心を呼び出す事も容易かった。
「お呼びですか、ディサディアお姉様」
「よく来てくれたな、ソフィ……お前に折り入って頼みがあるのだ。
今夜、貴族の屋敷を堕とすのだが……堕とした後の事を、お前に任せたい。魔物となった事が人間に露見しないように、という事なのだが」
私を"お姉様"と呼び慕う悪魔。私がこの手で同じ悪魔に堕とした者。かつて聖女と呼ばれていた彼女は、その物腰柔らかな部分を残しながら、苛烈な欲望を持つ悪魔となった。
そんな彼女を呼び出したのには、理由がある。言ってしまえば、我儘を聞いて貰うためだ。出来るだけ早く事を済ませて、フラクトの元に戻るため。
「お姉様の頼みとあらば、喜んで。しかし、お姉様が頼み事をなさるなんて……もしや、ついに意中の殿方が……?」
私が彼女に"頼み事"をしたのは、これが初めてだ。上の者が自分の都合を優先していては、示しがつかないという事もあるし……何より、私は部下達を大切に思っていたから、彼女達が伴侶を手に入れ幸せになれるよう、なるべく好き勝手が出来るように、力を尽くしてきた。尤もそれは、フラクトのような、自己の幸せを犠牲にして疲弊するような行為ではなく、むしろ、愉しみの一つであったのだが。
「ああ。弱く、愚かで……とても可愛らしい男だ。今は二階でぐっすりと眠っている。出来れば、あの男が目覚めるまでに事を終えてしまいたい。
……あの男が私に願った物が何か分かるか?友の幸福だ。そのために、魂を捧げても良いと言ったのだぞ……?折角、己の幸せを望める機会だというのに……それを棒に振るのだから……!
あぁ……もはや、私が自ら支配してやる他ないと……私が居てやらねばダメだと思ってな、くふふ……ふふふ……」
「まぁ、なんと羨ましいのでしょうか……私も早く、そんな風に夢中に、支配したくて堪らなくなるような、素敵な殿方に出会いたいものです……」
「くふふ……そうか、羨ましいか……だが、やらぬぞ。あの男は私のモノだ……」
今の私は、あの男の事を最優先に動いているのだという自覚があった。部下達や目の前の妹分は、勿論大切に思っているが……今は、あの男が最優先だ。あの男を、早く自分のモノにしたい。支配欲が、溶岩のように渦巻いている。
「うふふ……あのお姉様が、まるで恋する乙女ですね」
「……私とした事が、柄にもなかったか」
「いえいえ、幸せそうで何よりです」
恋する乙女のようだと言われて、はっとする。私とした事が、思わず本題をそっちのけで惚気てしまっていた。まだ、あの男を完全に手中に収めているわけではないのに、すっかり浮かれてしまっていた。尤も、あの男が私の物になるのは、もはや既に決まった事であるが。
「……その働きにも関わらず、男をモノにする機会に長らく恵まれなかった事は、私もよく知っている。故に今回は……お前だけを先に連れて行く。つまり、選り取り見取り……という奴だな。迷惑料代わりだと思ってくれ」
「本当ですか……!?ありがとうございます……!あぁ、これできっと私にも、素敵な出会いが……いつもは統率を取っている間に、小悪魔の皆に先を越されてしまっていましたから……」
「隠蔽についても、可能ならば他の者に任せ、愉しみに専念させてやりたかったのだが……今夜となると、お前に頼むしか無くてな。あの男が幸福を願った以上……屋敷ごと、家族ごと堕とす事を諦めるのも不本意なのだ。だから"迷惑料"なのだよ」
今夜未明に決行される駆け落ちに先んじて、貴族の屋敷を堕とす。それ自体は容易い事であるが、魔物となった事を社会に隠し通し、溶け込ませる事は、それなりに手間だ。普段は私が面倒を見ている部分ではあるが、今回だけは、私が掛かりきりというわけにはいかない。明日の夜にあの男を抱いてやる事は、揺るぎない決定事項だ。
件の二人だけを堕とす分には、そう手間も掛からないのだが……幸福を願われたからには、家族も一緒に堕としてやりたい。そのためなら、妹分の手を借りる事も辞さない自分が居た。
「あらあら……すっかり、"あの男"に甘々ですね」
「ああ……母上も、父上に対してはこんな気持ちだったのだろうな……
明日の夜に抱いてやる事になっているのだが、今から身体が疼いて仕方が無い……対価は一夜の服従とは言ったが、目覚めるなり押し倒してしまおうか……とさえ思っているよ」
妹分の指摘を否定する気は微塵も起きない。あの男に甘くなってしまっているのは、どうしようもない事実だからだ。まるで、父上に対する母上のように。まだ、身体を重ねてもいないというのに。簡単な口約束しか交わしていないというのに。庇護欲が身を焦がす。身も心も堕とし、契りを交わす瞬間が待ち遠しく、もどかしささえも心地良い。
「ふふふ……私とは比べ物にならない程、行き遅れてらしたのでしょう?長年つのらせた欲望、思う存分に解き放ってきてくださいな、お姉様」
「ふふ、行き遅れと言われるのは不服なのだがな……そうさせて貰うぞ、ソフィ」
愛しあう両親への憧れを抱きながら育ち、私は生きてきた。
行き遅れと言われるのは不服だが……快楽と幸福に満ちた世界に身を置き、数多の女を魔物へと堕とし、男を襲わせてきたにも関わらず、私自身は生娘のままだ。女としての真の悦びを知らなかった。自ら堕としてやった者達は……私の知らぬ悦びを、幸福を手にしていった。それが羨ましかったのは、否定しようのない事実だ。
羨望を糧に、長きに渡り、欲望をつのりにつのらせていた事も、自覚していた。
ああ、だが……注ぐべき相手を見つけた欲望が、これほどまでに狂おしく、愛おしいとは。
あの男に出逢った事で……私は真に、魔に堕ちる。そう思わずにはいられなかった。
「くふふ……ようやく目覚めたな。良い夢は見られたか……?」
「おはよう、ございます……二人は……?」
すっきりとした目覚め。目を開ければ、悪魔が僕を覗き込んでいた。随分と長く眠っていたような気がする。
そして、目覚めてすぐに頭に浮かぶのは、悪魔への願いの、その結末。二人は、無事に駆け落ちする事が出来たのだろうか。それが気掛かりで仕方が無い。
「貴様の願い通り、幸せにしているぞ……?気になるというのならば、今からでも会わせてやろう……くふふ」
「っ……本当、ですか……?」
「ああ、本当だ。貴様には、見届ける権利がある」
「……お願い、します」
幸せを断言するその言葉と、自信に満ちた笑みに安堵する。きっと、滞りなく成功したのだろう。
さらに悪魔は、僕を二人に会わせてくれるという。二人が駆け落ちしてしまえば、もう会えない物だと思っていたのに。既に別れを済ませてある以上、それが無粋であるとも考えたが……二人の無事を、幸せを、確かめたかった。
「此処、は……」
悪魔に連れられ、魔法陣を潜ったその先は……見覚えのある場所だった。そう、親友の、あの人の住まっていた屋敷の中だ。
「これ、は……どう、いう……?駆け落ち……したんじゃ……」
そして……まだ日が昇っているというのに、目の前の扉からは、男女の声が漏れ聞こえている。人の物とは思えない程に艶かしい、女の感じ入った声。うわ言のような、夢見心地のような、男の声。
二つとも、僕の親友の声。僕がよく知っているはずの声なのに、僕の知っている名前を呼びあっているのに、今の今まで聞いた事が無い程に、幸福に満ちていて。
それ以上はもう、何が起きているのか、僕の頭がついてこなかった。
「くふふ……どうした?貴様の願いを叶えてやったのだぞ?もっと喜べ……あんなに幸せそうな声が聞こえてくるではないか……」
「なんですか、これ……っ」
愉悦に満ちた、悪魔の笑い声。絡め取るように、後ろから抱きすくめられる。後頭部に押し当てられる、魅惑の柔らかさ。でも、今はそれどころではなかった。
二人の声は、確かに喜悦に満ちている。確かに、二人は幸せそうにしている。それは、僕が望んだ事だ。しかし、それ以外の何もかもが予想外だった。あまりにも幸せそうで、異常であるとさえ思ってしまった。
「何か、だと……?女を魔物に変えてやったのだ。その男の事を愛し求めて止まない淫魔であり……この私と同じ、悪魔に。
ほら……二人とも、人の身では想像もつかない快楽と幸福を貪っているぞ……?」
「魔物……そんな……冗談……」
そして、悪魔に囁かれた言葉は……信じ難かった。信じたくなかった。親友が、魔物になってしまっただなんて。もう一人の親友が、それに襲われているだなんて。
しかし……聞こえてくる嬌声が、その変化を物語っていた。淫魔になってしまったとしか思えない程に、淫らな声だった。
魔物が人を喰らう事は無い、と知っていても、それは受け入れ難かった。人をさらい、欲望のままに慰み者にする存在。魔物となれば最後、人には戻れない。
「ほら……冗談だと思うのなら、その目で確かめてみろ。貴様にはその権利がある」
「っ…………それは……ふたりの、邪魔に……」
悪魔にそそのかされ、ドアノブに手をかける。しかし、そこで手が止まる。ドアノブを回せない。
確かめるのが怖いわけでは無い。確かめなければいけないと思っている。
ただ……こんな状況だというのに、二人の邪魔をしてはいけないと、そう、思ってしまった。
扉から漏れる二人の声は、二人だけの世界を形作っていた。それが幸福に満ちているのは、否定しようの無い事実だった。
「くふふ、そうか、そうか……あぁ、貴様という男は、ここまで遠慮がちなのか……ますます気に入ったぞ……?」
悪魔の言葉通り、この期に及んで僕は……いつものように、二人に遠慮してしまっていた。
「ならば……邪魔をしないように、確かめさせてやろう。あぁ……この魔術で透明に見えるのはこちらからのみだ、気付かれはしない」
悪魔が何か呪文を呟くと、扉の色彩が、霧が晴れるかのように、ゆっくりと薄れていく。
「っ……」
透明となった扉の向こうでは、僕のよく知る二人が、身体を重ねていた。
騎乗位で腰を跳ねさせる女性の、青い肌、漆黒の翼と尻尾。彼女は、邪悪な悪魔の姿に変わり果てていた。より淫靡に、より美しく。人外の美貌と魔性を備えた、僕をそそのかした悪魔と同じ姿に。
「くふふ……素晴らしい光景だとは思わぬか?」
「ぁ……」
支配的な女性上位の交わり。魔物が男を貪り尽くす、背徳の体位。しかし……それから受ける印象は、僕が想像していた魔物との交わりと掛け離れていた。決して、慰み者にされているようには見えなかったのだ。
二人は指を絡めて両手を繋ぎ、深く、深く見つめ合っている。時折、情熱的に唇を重ねている。お互いがお互いを受け入れて、求めあって、満ち足りた表情をしている。二人の表情に、苦悶や悩み、後悔といった感情は全く見受けられなかった。思いを遂げた幸せに染まっていた。
一見すれば、淫魔の捕食のようにも見えるこの交わりは、まさしく愛の営みで。淫らさとともに、美しささえ感じてしまう光景だった。
僕は、二人の交わりに魅入ってしまっていた。
「これが、魔物による支配。快楽による支配。そう、悦びに満ちた支配だ……」
悪魔と化した彼女は、欲望にぎらついた瞳で恋人を見下ろしていた。
繰り返し紡がれる、"私のモノ"という言葉。その声に滲むのは、貪欲な支配欲。
主導権を完全に握り、望むがままに、欲しいがままに恋人を貪り尽くし、邪悪な笑みを浮かべている。そこに貴族の抑圧はなかった。
これは愛の営みでもあったが、確かに"魔物による支配"でもあって。
しかし、その邪悪さに相反して……精を啜り取られている僕の親友もまた、曇りない恍惚の表情を浮かべていた。貪られる事を望んでいるかのように、それを嬉々として受け入れていた。悪魔となった恋人の支配を、悦んで受け入れていた。まさに、悪魔の虜となっていた。
「っ……でも……こんなことっ……」
悦びに満ちた支配。魔への堕落。親友の片割れは淫らな悪魔へと変貌してしまい、もう片方もまた、その虜に。こうなってはもう、人の営みには戻れない。
僕は取り返しのつかない事をしてしまった。僕の願いが、二人を変えてしまった。その重みを受け入れられなかった。
「何を気に病む必要がある……貴様の願いが、二人を幸せにしたのだぞ……?
貴様が願い、私が叶えた。貴様が願ったからこそ、二人は真に結ばれたのだ。
後の事が心配か?案ずるな……それも既に手を回してある。二人はこの先も、永遠の幸福を貪り続けるのだ……」
「ぁ……僕が……二人を……」
僕が自責の念に駆られるよりも先に、悪魔は囁いてくる。
僕の願いが、二人を幸せにした。それもまた事実だと、悪魔は言ってくれる。
「くふふ……二人同時に果てる姿の、なんと幸せそうな事か……これも、貴様のおかげだ」
「僕の……おかげ……」
目の前で繰り広げられる、愛と堕落の果て。絶頂に次ぐ絶頂。それが幸福に満ちている、もはや疑いようがなかった。理性の外で受け入れざるを得なかった。これが幸福なのだと、感じずにはいられなかった。
そして、その幸福と僕を結びつけ、肯定してくれる悪魔の言葉は、あまりにも甘美で。
「そうだ。堕ちたあの子達も、貴様と私に感謝していたぞ……貴様が気に病む事など、何一つない。目の前の幸せがその証拠だ。分かったな……?」
「はぃ……」
二人が、感謝してくれている。それは、僕の望んだ言葉だった。悪魔はその囁きで、憂いを拭い取ってくれる。疑問を、抵抗を、優しく溶かしてくれる。
そのおかげで僕は……目の前の光景を受け入れる事が出来た。
「ふふ……良い子だ……そう、あの二人の願いは叶った。そして、貴様の願いも果たされたのだ……」
「ありがとう、ございます……願いを、叶えてくれて……」
魔に堕ちる事で、二人は幸せになれた。僕の願いは、叶ったのだ。それも、想像すらしていなかった程に幸せな形で、この悪魔が叶えてくれた。
僕の願いを叶えてくれた悪魔には、心からの感謝を捧げずにはいられない。
「くふふ……礼も良いが、対価を忘れたとは言わせぬぞ……?」
「はい……ど、どうぞ……すきな、ように……」
そして……願いを叶えてくれた悪魔には、対価を払わなければならない。いや、対価を払いたかった。言葉だけのお礼ではなく、しっかりと、悪魔に報いたかった。一夜の服従……それが、正当な報酬だ。
それでも、身を捧げる事に対する不安と羞恥はどうしようもなく、声が震える。
だが、それと同時に僕は……期待に胸を膨らませていた。悪魔に身を捧げる事の、禁忌の味が如何に甘美なものか……目の前の光景に、それを想像しない事など出来なかった。
「あぁ、どうしてやろうか……こんなに滾らせて、いやらしい奴め……」
「ぁ……っ……」
悪魔は僕を後ろから抱きすくめたまま、ねっとりと絡みつくような手つきで、身体をまさぐってくる。
そして、悪魔の視線は、欲望に抗えない僕の股間へと注がれていた。隠しきれない程に硬くなったモノを、服越しにそっと撫でられてしまう。たったそれだけで、腰が震えてしまう。気持ち良い。
「くふふ……あんな風に、犯されて、貪られて……気持ちよくして欲しいのだろう……?」
「……そ、そんな……ぁっ……」
魔に堕ちた二人の交わる光景を前に、湧き上がる欲望と期待、そして羨望。それを見透かした悪魔は、意地悪く問いかけてくる。
恥ずかしくて、とても肯定する事など出来ない問い掛け。しかし、否定も出来ない。
「沈黙は許さぬぞ……?欲望に正直に答えろ……」
「ぁ、うぅ……」
しかし悪魔は、重ねて僕に"命令"する。僕は、それに抗ってはいけない。服従が僕の支払う対価。正直に答える事を求められたなら、逆らえない。
なんとか、正直に肯定しようと思うが……それは、あまりにも恥ずかしい事で。女性の前で、浅ましい欲望を口にするなど、そう簡単にできなかった。
「恥ずかしがらずともよいのだぞ……?くふふ……」
「っ……ぁ……」
僕が羞恥に震えて躊躇っている隙に、悪魔は僕の正面へと、するりと回り込んできて。顎に手を添えられ、くい、と上を向かされてしまう。
恥ずかしがっている僕の顔を覗き込み、悪魔は邪悪な笑みを浮かべる。僕に意地悪をして愉しむ、その表情もまた美しく魅力的で、どうしようもなく見惚れてしまう。
「私の目を見て……素直に答えろ……」
「っ……きもち、よく……して……ほしい……です……」
欲望に爛れた悪魔の眼差しが、さらなる期待を湧き上がらせる。見つめられるとぞくぞくして、恥ずかしくて、気持ち良い。気持ち良いけど、恥ずかしい。
羞恥で頭の中を真っ白にしながらも、僕はついに、悪魔の命令に応えてしまう。悪魔に欲情しているのだと、認めてしまう。
欲望を打ち明け、快楽をねだるその行為は、格別の羞恥と高揚感、そして解放感を伴っていて。癖になってしまいそうな悦楽を孕んでいた。
「くふふ……良い子だ……」
「ぁ…………」
そんな僕の欲望を聞き出した悪魔は、愉悦に満ちた表情を浮かべてくれる。そこに失望や軽蔑、嫌悪はなく、浅ましく穢らわしいはずの僕の欲望を、肯定して、褒めてくれてまでいる。それが堪らなく嬉しく、喜ばしく……邪悪なはずのその表情が、まるで聖母の微笑みのようにさえ思えてしまって。悪魔に心を奪われてしまいそうだった。
「私の城で、たぁっぷりと可愛がってやろう……さあ、私に抱きつけ。一緒に転移するぞ」
「え、あ……抱きつ……こう、ですか……?」
眼を合わせたまま、悪魔はさらなる命令を僕に下す。その命令もまた、嬉しくも恥ずかしい。小柄な僕に対し、悪魔は長身。その豊満な胸は、僕の頭と同じ高さにあるのだ。
命令だからと自分に言い聞かせ、おずおずと悪魔の肢体に抱きつけば、眼前には魅惑の谷間。
女性の身体に触れるのは……特に、胸に顔をうずめるのは、あまりにも恐れ多く。出来るだけ控えめに抱きつくが……それでも、甘い香りが漂ってきて、くらりとしてしまう。
「くふふ、初心な奴め。もっとくっつけ……離れないようにしっかりと……腰も、頭も」
「ぁっ……はぃ……」
勿論、悪魔がそのようなやり方で満足するわけはなく。無慈悲に、意地悪に、密着する事を要求してくる。
悪魔に命じられるがまま、ぎゅっと抱きつき、胸の谷間に頬を押し付ける。そこにあったのは、この世のものとは思えない至福の感触。何処までも沈み込むような柔らかさと、瑞々しくぷるんとした弾力。絹も比較にならないほど滑らかなのに、すべすべと吸い付いて離れない。相反する感触を併せ持ち、たわわに実った悪魔の胸は、まさに禁断の果実。一度その感触を味わってしまえば、もはや虜。頬擦りをして、その感触を堪能せずにはいられない。恍惚となってしまう。
「どうだ、私の身体は……心地良いだろう?」
「はぁ……きもちいいです……」
悪魔の身体の素晴らしさは、その胸だけに留まらなかった。むっちりと肉付きの良い肢体は、深い包容力をもって、僕を柔らかく受け止めてくれる。きゅっとくびれた腰周りは、僕の腕を歓迎してくれているかのようで、まさに極上の抱きつき心地。
不意に手が触れた大きなお尻は、もう一つの魅惑の果実。触れた手を、離せない。ぎゅっと鷲掴みしてしまえば、むにむにと、みっちりと柔肉の詰まった、濃密な揉み心地。
言われたとおりに、目一杯身体を密着させれば当然、滾りきった僕のモノを、悪魔のお腹に押し当ててしまっていて。その羞恥心に思考を灼かれながらも、僕は、抱きつく事をやめられなかった。
「可愛い奴め……さ、此処が私の部屋だ。もう、離れてもよいぞ」
「はぃ……」
視界が光で白く染まり、そして光が消えていく。横目でぼんやりと視界に収めた光景は、確かに見慣れぬ寝室。どうやら、本当に転移してしまったらしい。
そして悪魔は……僕に与えた命令を解く。もう、抱きつかなくていいのだと。
「くふふ……どうした、離れないのか……?」
「ぁ……ぅぅ……」
命令は解かれた。僕が悪魔に抱きついている理由はもはや無い。そう分かっていても、僕は悪魔に抱きついたまま、離れられなかった。
離れたくなかったのだ。悪魔の気持ち良い身体を、もっと、もっと、味わっていたい。羞恥心を上回る欲望。それが、僕が悪魔に抱きついている理由。
僕は、僕の意思で、悪魔に抱きついてしまっている。抱きつきたくて、抱きついてしまっている。その事実を突きつけるかのように、悪魔は意地悪く笑う。邪な自分を自覚させられ、羞恥心が膨れ上がる。それでも、悪魔から離れられない。そんな自分が恥ずかしい。でも抱きついていたい。気持ち良さを手放したくない。感情がせめぎ合って、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまいそうだった。
「そうか、そんなに私の身体が気に入ったか……欲望に素直なのは良いことだぞ……?」
「っ……むぅ…………」
そして、またもや悪魔は、僕の欲望を肯定してくれる。甘い囁き、熱烈な抱擁。
その胸にぎゅっと抱きこむようにして、魅惑の谷間に、僕の顔をうずめさせてくれる。その上で、しっとりとした手つきで、頭を優しく撫でてくれる。悪魔の翼に包まれてしまえば、安心感さえ湧き上がってくる。
悪魔に甘やかされるのは、心がどろどろに蕩けてしまいそうな程に気持ち良く……それでいて、とても興奮した。
「くふふ……この甘えん坊め……」
「んむ……んぅ……」
むにゅむにゅと、顔に押し付けられる禁断の果実。至福の柔らかさに包まれて、挟まれて、もみくちゃにされて。悪魔のおっぱいの感触を、これでもかと味わわされてしまう。それはもう、愛撫と言ってもよい程に気持ち良かった。
そんな中、谷間に詰まった、甘い女体の香りをめいっぱい堪能する。濃密な堕落の香りに、頭の中が染め上げられていく。
生まれて初めての、夢のような甘い体験。これもまた、悪魔の思惑通りだと分かっていても、その甘美さには、もはや抗う気さえ起きなかった。
「ほら、じっくりと甘えさせてやるぞ……?ベッドの上で、な……」
不意に、ふわりと僕達の身体が浮き上がる。そして、軟着陸。抱き合ったまま、ふかふかのベッドに身体を横たえる。
「さあ、私の胸に溺れて、堕ちてしまえ……」
「はぃ……」
悪魔の豊満な肢体は、極上の肉布団となって、僕の身体を受け止めてくれて。そのはち切れんばかりの豊乳もまた、僕の枕になってくれる。まるで恋人のように、脚を絡めて、擦り合わせてくれる。愛でるように、頭と背を撫で回してくれる。
堕落へと誘おうとする言葉は、甘える事を受け入れる赦しの言葉。
そんな悪魔の囁きに従い、心地良さに身を任せれば、もはや夢見心地。僕は夢中になって、悪魔の胸に甘え、甘美な抱擁に身も心も委ねていくのだった。
「はぁ……ぁ…………」
悪魔の胸に抱かれ、たっぷりと甘やかされて、頭の中はもはや、とろとろに蕩けきってしまっていて。刷り込むように何度も囁かれる堕落の囁きに、思考はすっかり陥落済み。
悪魔の抱擁に、その胸に心を囚われてしまったのだと自覚しながら、その事実に言い知れない悦びさえ覚えていた。
そして……気がつけば僕は、悪魔の胸に甘えながらも、腰を擦り付け始めてしまっていた。
「ん……ふふ……甘えるだけでは満足出来なくなってきたようだな?」
「はぃ……」
甘美な抱擁の最中でも、快楽への欲望は、確かに掻き立てられていて。それがついに、甘やかされる心地良さを上回り始めていた。
もっと気持ち良くなりたい。気持ち良くして貰いたい。快楽が欲しい。
気が付いた時には既に、辛抱堪らず。このまま、服越しに腰を擦り付けているだけで、呆気なく果ててしまいそう。
しかし僕は目の前の悪魔に、これ以上無い期待を寄せていた。きっと、想像もつかない程に、僕の事を気持ちよくしてくれるのだと。
僕は、甘えた声で悪魔に応え、張り詰めた肉棒を押し付けて快楽をねだってしまっていた。
「くふふ……ならば、さらなる快楽を教えてやろう……」
「ぁっ……むぅっ……」
悪魔に抱かれたまま、体勢は上下逆転。今度は、悪魔が上で、僕はその下敷き。悪魔の身体は、その重みさえも心地良く。受け止められるのと、覆い被さられるのでは、その柔らかさもまた違って感じられる。
特に、息も出来ない程に押し付けられる母性の象徴は、また格別。先程まで身も心も預けきっていたおっぱいが、今度は一転、その柔らかさで僕を甘く責め立てて来るのだから、もう堪らない。
「窮屈なのは嫌だろう……?今、外に出してやるぞ……」
「ぷはっ……ぁ……」
僕が息苦しさを感じる前に、悪魔は身体をどけてくれる。そして、僕のズボンと下着を、あっという間に脱がしてしまう。
「あぁ……こんなに滾らせて……くふふ、ふふふ……実に美味そうだ……どう味わい尽くしてくれようか……」
「ぁぅ、ぁぁ……」
自分のモノとは思えない程に、硬く張り詰めてしまった僕の肉棒。それがついに、露わにされてしまう。
悪魔はそれを見下ろして、にたぁ、と口角を吊り上げる。そして、じっくりと舐め回すように視線を注ぎながら、舌舐めずり。
硬くはなったものの、恐らく人並みより小さめで、皮まで被ってしまっている肉棒を、じろじろと視姦されてしまって。
悪魔の抱擁にとろけた頭でも、やはり羞恥心は拭いきれず、情けない声をあげてしまう。
「此の期に及んで恥ずかしいか?まったく、可愛い奴め……くふふ、上も脱がせてやろう。じっとしているのだぞ」
「は、はぃ……ぁっ……」
悪魔の手によって、服が脱がされていく。強引に剥ぎ取るのではなく、服の内側に潜り込んだ指が素肌を撫で、僕を丸裸に剥いていく。
「っ……あまり、みないでください……」
男らしさとは掛け離れた僕の身体。背は低く、痩せ細っていて、弱々しい。僕は、僕の身体があまり好きではない。
それをまじまじと見られるのは、単なる羞恥に留まらず、劣等感を刺激されるものであるはずだった。
「何を言っているのだ……あぁ、なんと華奢で、なんといやらしい身体か……まったく、堪らぬな……」
「ひゃっ……ぁっ……」
しかし、僕を見下ろす悪魔の表情は、うっとりと囁かれる言葉は、喜悦に満ちていて。
そして、その爪先で、つぅ……と身体中をなぞられる。喉元、肋骨の間、へそ、足の付け根……どこをなぞられても、ぞくぞくとした快楽が身体を走り抜ける。
「少し撫でてやっただけでこれか……まるで生娘だな……?」
「っ……ぁ……」
ねっとりと肌を這い回り、執拗に撫で回すような、悪魔の愛撫。悪魔の手の、吸い付くような肌触りが、僕の身体を責め立てる。それが、うっとりとしてしまうほど気持ち良い。
そして、悪魔は吐息がかかる程の距離まで、その顔を近づけてきて。
「くふふ……さあ、女を知らぬその身体、心ゆくまで貪ってやるぞ……」
「はぃ……どうぞ……」
眼前で見せつけられるのは、底無しの欲望を湛えた、とびきりの邪悪な笑顔。それが、僕の劣等感を悦びに塗り替えてくれる。
悪魔が僕に向ける激しい欲望。それは、悪魔が僕を求めてくれている……どんな形であれ、僕に価値を認めてくれている事に他ならなかった。
畏怖を覚える程の美しさと、肯定の悦び。悪魔の笑顔に見惚れて、恭順と期待の声を漏らさずにはいられなかった。
「あぁ、まずは……その唇の純潔を奪ってやろう……徹底的に、な」
「ぁ……き、キス……」
青く艶めき、潤いに満ちた悪魔の唇。その隙間から紡がれる、甘い宣告。
僕の初めての口づけは、悪魔に奪われてしまう。願わくば未来の妻に捧げたかった純潔を、悪魔に捧げる事になってしまう。それは、本来なら忌避すべき事だ。
けれども、それ以上に……目の前の光景に、悪魔の言葉に、期待を抱いてしまう。
ぷるぷるの唇の間から這い出る、唾液にぬらついた青い舌。これ見よがしな舌舐めずり。唾液を塗られたその唇は、より一層つやめいて。
あの柔らかそうな唇の、舌の感触を、徹底的に味わわされてしまう。そんな甘美な想像で、頭がいっぱいになってしまっていた。
「ほぅら、捕まえたぞ……?」
「ぁ……」
悪魔の手が、僕の頬に添えられる。キスから逃れる事のできないよう、しっかりと捕らえられてしまう。
「私の味を、しっかりと覚えろ…………ん…………」
そして、悪魔の唇が、ゆっくりと近づいてきて。そっと、唇が重ねられる。
貪るという言葉とは程遠い、優しい口付け。触れ合った唇は、愛おしさが込み上げてきそうな程、ふんわりぷるぷると柔らかい。
初めてのキスは、まるで恋人同士のようで。悪魔との交わりが禁忌である事を忘れさせてくれる。僕は目をつむり、さらなる口づけを心待ちにしていた。
「んふ……ん……む…………」
少し間をおいて、軽く押し付けられ始める、愛しい唇の感触。成熟しながらも瑞々しく、僕の唇を包み込んでくれるような、至福の柔らかさ。軽く触れ合っているだけでも気持ち良く、心が満たされる。
まるで、悪魔の唇の感触が、僕の唇に染み込んでいくかのよう。じっくりと、穏やかな心地良さに浸されていく。そんな、長い長い口づけ。
このままずっと唇を重ねていたいとさえ思ってしまう。
「ぁむ……んむ……」
そっと唇を押し当てるだけのキスから、ねっとりと絡みつくようなキスへと、緩やかに移り変わっていく。
決して唇同士を離すことなく、ついばむように、食むように。何度も、何度も、緩急をつけて、少しずつ違ったやり方で、丹念に繰り返し、余すことなく。悪魔の唇を、執拗に味わわされていく。そして、僕の唇もまた、悪魔に味わわれてしまう。
徐々に高まっていく性感、敏感になる唇。垣間見える邪悪さとは裏腹に、ただひたすらに心地良く、とろけるように甘美な快楽。心を、奪われていく。
「んむっ……ぁむ……んっ……ちゅぅぅ……」
悪魔のキスは、どんどん激しくなっていく。熱烈に吸い付かれて、唇を押し付けられて。まるで、悪魔の唇に、僕の唇を食べられてしまっているかのよう。
貪るという言葉が相応しい、捕食めいた唇の重ね合わせ。気がつけば僕は、それを心から受け入れ、キスの甘美さに夢中になってしまっていた。
「んふ、ちゅっ……れる、んむぅ……」
愛撫に愛撫を重ねられ、もはや融け落ちてしまいそうな僕の唇。そこに襲いかかってくるのは、艶めかしくぬめった悪魔の舌。唇とはまた違う、みっちりと肉の詰まった、しっかりとした形を持った柔らかさ。すっかり出来上がった僕の唇を、キスの最中、器用に撫で回して、舐め上げて、なぞって、つつきまわして。
悪魔の舌がもたらしてくれる、唇よりも遥かに濃密な快楽に、僕は容易く心を奪われてしまう。
「んむっ……んっ、れろ……」
そしてついに、悪魔の舌が、僕の口内へと侵入してくる。甘い唾液に塗れたそれは、まるで包み込むかのように、僕の舌へと絡みついてくる。舌同士が擦れ合うのは、想像よりも遥かに心地良く、気持ち良い。悪魔の舌を拒む事など、考えさえもつかなかった。
「んむ……んんっ……ふぅっ……ちゅぅぅ……」
隙間ない吸い付きの最中、悪魔の舌は、緩慢ながらも複雑な動きで、僕の舌を責め立てる。念入りに舌を絡めて、擦り合わせてきて、その動作一つ一つが、まるで快楽を刷り込むかのよう。舌の芯まで、夢のような甘美さに犯されていく。
舌伝いには、とろりとした悪魔の唾液が、とめどなく流れ込んでくる。決して飽きる事なく、味わえば味わう程に病み付きになってしまうそれは、堕落の甘み。それもまた、念入りに味わわされてしまう。
「んぅ、ん、んく……」
悪魔にされるがままになりながらも、与えられた甘露を飲み込む。
悪魔の体液をこの身に受け入れる行為は、確かな背徳感を孕んでいるけれども、今はその背徳感さえも心地良い。
悪魔の雫に、喉の奥が熱く火照って。融け落ちてしまいそうな熱が、身体中に沁み渡っていく。ぬるま湯のような心地良さと、熱い快楽が同居している。
その熱の甘美さに魅入られた僕は、悪魔の唾液をも受け入れ、悦んで飲み干し続けていた。
「んむ……んっ……んふふ……」
悪魔の舌が弄ぶのは、僕の唇や舌だけにとどまらない。探るように、艶かしく舌先が這い回っていく。舌の付け根、頬の内側、歯茎の裏側。執拗に、入念に、僕の口内をくまなく味わい尽くすかのよう。
悪魔の舌がもたらす魔性の快楽に、僕の口内は隅々まで征服されてしまう。そこまでされてなお、悪魔のもたらす快楽は、深い心地良さの塊だった。
そして、征服者はキスの最中、愉しそうな音色を漏らしていた。それが、嬉しい。
「ん……む……」
僕の口内を征服し尽くしてようやく満足したのか、悪魔の舌はゆっくりと這い戻っていく。夢のような心地良さをもたらしてくれた悪魔の舌が、帰っていってしまう。それが、名残惜しくて仕方が無い。
僕はたまらず、己の舌を差し出してしまっていた。
「んちゅるっ、じゅるっ……ふぅっ……」
こうなる事を予期していたかのように、悪魔は、僕の舌先をその唇で捕まえてきて。そして、その唇の吸い付きによって、舌を突き出す格好を強制されてしまう。
そして、そのまま悪魔の唇が、ゆっくりと前後しはじめて……
悪魔の唇に、舌をすっぽり包まれたまま、吸い付かれて、囚われて。ちゅるちゅると、何度も何度も、その柔らかな唇で、舌をしごきあげられてしまう。
「ふぁ、ぁ、ぁ…………」
激しくも倒錯的な舌責めとは裏腹に、その心地良さは、あまりにも深く。往復の最中、時折自由となった唇の隙間からは、自分のものとは思えないほどに蕩けきった、感じた声が漏れだしていた。
心が弛緩して、どんどんと深みへと嵌っていく。堕ちていくという言葉が相応しかった。
「じゅる、じゅるるっ、ちゅぅぅっ……んくっ、んふふ……ずちゅっ……」
再び重ねられた唇、熱烈な吸い付き。舌を、唾液を、根こそぎ吸い上げられてしまう。吸い上げた僕の唾液を、悪魔は美味しそうに喉を鳴らし、飲み下して。一度だけでは足りないと、執拗に、じゅるじゅると唾液を啜り取られてしまう。
捕食めいた激しいキスがもたらしてくれるのは、魂を啜り取られてしまうかのような、うっとりとした心地。深く甘美な恍惚に、心が呑み込まれていく。
「んっ、ちゅぅぅ、じゅるっ、ふぅっ、ずちゅ、れろぉ、あむっ、んふふ、ふふふっ……」
たっぷりと唾液を啜りとっても、悪魔はまだまだ満足しない様子で。これからが始まりだと言わんばかりに、舌を絡め直してきて。先ほどよりもさらに執拗に、執念深く、欲深く、徹底的に。悪魔は、思うがままに僕を貪って、溺れそうな程に甘い唾液を流し込んできて、止まらない。
好き放題されているというのに、その行為はどうしようもなく心地良い。底無しの甘美さが唇を蝕み、舌を融かし、頭の中を染め上げて、心を犯して、満たしてくれる。至福のあまり、永遠に貪り続けて欲しいとさえ思ってしまう。そうしてくれたら、もっと、もっと、心地良く、気持ち良くなれてしまいそう。
終わりの見えない、初めてのキス。どこまでも深く堕ちていくような快楽は、まさに堕落へのいざないだった。
「あぁ……実に美味だったぞ……?」
「はぁぁ…………」
あまりにも徹底的な初めてのキスを終えて、悪魔は恍惚の声をあげる。どれだけの間、好き勝手に貪り尽くされたのか、もう分からない。一瞬たりとも途切れない、一続きのキスだったという事はわかる。
頭の中も、口の中も、身体の中も、底無しの甘美さで、どろどろに蕩かされて、堕とされてしまった。
抗えなかった、拒めなかった。そんな考えを抱く事さえも出来なかった。
悪魔は、最初から最後まで、忌避感も恐れも、悪い感情を一片たりとも抱かせる事なく、ただただ甘美に、僕を貪り尽くしてくれた。
キスだけで足腰が立たない。長い時間を掛けて、徹底的に刷り込まれた快楽。その余韻は、染み付いて離れない。消える気配を見せない余韻にどっぷりと浸り、心を囚われて。僕は完全に、無防備にされていた。
「どうだ?初めての味は……」
「はぁ……ぁ……」
「くふふ……すっかり出来上がったな……たっぷりと啜ってやった甲斐がある」
快楽の余韻が身体を支配して、くったりと力が抜けたまま。意識は甘くもやが掛かって、夢見心地。そんな状態でも、悪魔の言葉は、するりと頭に入ってくる。
僕の初めてのキスは、決して忘れられない、あまりにも気持ちいいものだった。何もかもを塗り変えて、一番の思い出になってしまう程。
そんな僕の様子を見下ろす悪魔は、とても上機嫌。
「さて、次は……もーっと気持ち良い事をしてやろう……」
「ぁっ……」
あの夢のようなキスよりも、もっと気持ち良い事。悪魔の囁きに導かれて、とろけた思考がさらなる期待に染めあげられていく。
「はぁん……こんなにも物欲しそうに、食べて欲しそうにして……あぁ、なんと美味しそうな匂いか……」
「ぁ、ひぁ……」
悪魔の視線が注がれるのは、もはやはち切れんばかりにそそり立った僕の肉棒。あまりの心地良さに今まで気づかなかったが、キスの快楽だけで暴発寸前にまで追い込まれてしまっていた。
僕の肉棒は、未だに皮を半分被ったまま。けれども、キスの興奮のあまり、ほんの少しでも悪魔に触れられてしまえば、そのまま果ててしまうに違いない。
そんな僕のモノに、悪魔は顔を近づけ、うっとりと吐息を漏らす。その吐息でさえ感じてしまって、思わず情けない声が漏れる。
「んふふ……私のために、たぁっぷりと精を溜め込んでいるのも分かるぞ……?この私の糧となるために……くふふ……」
「ひぅ……ぁぁ……」
悪魔の手が伸びた先は、肉棒ではなく、狂おしい程の熱が渦巻く玉袋。その滑らかな掌で、愛おしげに包み込んで、優しく揉みしだいてくれる。
その快楽は射精には繋がらないものの、これから僕は悪魔にイかされてしまうのだと、精液を搾り取られてしまうのだという事を、とろけた頭に教えこんで、興奮と期待を大いに煽り立ててくれる。
「さぁ……いま味わってやろう…………ん……ちゅぅ……」
「ぁ、ぁぁっ……」
皮に包まれたままの肉棒の、亀頭が露出したその先端。
悪魔は、僕の心を奪ったその唇で、敏感な先っぽを咥えて、吸いついてきて。それは、肉棒への甘いキス。優しい快感に導かれて、溜まりに溜まっていた僕の高まりが、解き放たれた。
「ちゅぅ、ちゅ……ちゅぅぅ、ぢゅぅぅ……」
「はぁぁ…………」
悪魔の唇がもたらしてくれる快感は、無理矢理に精液を吸い出すようなものではなく、射精を導き促してくれるような、格別に甘い吸引感。
どぷん、どぷん、と、熱く滾った精液が肉棒を通り抜けて、悪魔の唇に一滴残らず吸い上げられていく。肉棒は壊れたように大きく脈動しているというのに、どこかゆったりとした、とろけるような大量射精。
夢見心地な未知の快楽に、僕は恍惚の息を漏らして、なるがまま。
「んくっ、ちゅぅっ、ぢゅるっ、んっ……」
「ぁ……はぅ……」
確かな粘りと密度を持った特濃の精液を、悪魔はまるで飲み物であるかのように、こくりこくりと飲み下し、喉を鳴らす。
溢れ出す精液を全て、悪魔に直飲みされてしまう。その光景に僕は、言い知れない興奮と悦びを感じて、それがまた、快楽を後押しする。
絶頂が、脈動が、精液が、気持ち良さが、止まらない。いつもならばすぐに終わってしまうはずの快楽が、途絶えない。玉袋の中が空っぽになってしまいそう。
玉袋に添えられた手もまた、脈動に合わせ、やんわりと射精を後押ししてくれて。極上の放出感に、いつまでも浸っていたい。そんな僕の欲望を、叶えてくれようとしているかのようだった。
「ちゅぅぅぅぅっ……んっ……」
「ぁぅ……」
長い長い射精の最後を彩ってくれるのは、尿道口への執拗な吸い付き。悪魔の唇は、正真正銘一滴残らず、僕の放った精液を吸い取ってくれて。最後の最後まで、あまりにも幸せな射精感。
「っ……んくっ、んっ、んん……ちゅぱ……はぁぁ……ぁん……んふふ……すばらしい……」
僕の精を飲み干してようやく、悪魔は僕の肉棒を解放し、うっとりと息を吐く。
「はぁ……月並みな言葉だがな……これほどの美味は、生まれて初めてだ……あぁ、まだ、こんなに喉に絡みついて……なんと心地良いのだ……」
恍惚を滲ませた悪魔の言葉。僕の精を美味だと言うその言葉は、真に迫っていた。それは、僕の用意したご馳走を食べた時とは、比べ物にならない。
これが悪魔にとっての"食事"なのだと、言外に示していた。
「これが、貴様の味……舌も、喉も、身体の内まで融けてしまいそうだ……くふふ、実に良かったぞ……ますます気に入った……」
「ぁ……」
上目遣いに僕を見据える悪魔は、まさに御満悦というべき表情。すっと細めたその目の奥の眼光は、さらなる欲望を湛えていて。
視線を交わせば、背筋がぞわぞわと震えて、先にもまして力が抜けていく。僕は"食べられる側"なのだと、身体が理解する。
「あぁ、だからこそ……これで終わりなど、枯れ果てるなど、絶対に許さぬぞぉ……?」
「ひぁ、ぁ…………?」
そして、あまりにも甘美な射精の、その余韻に浸っていた所に、突如襲いかかる快楽。空になった玉袋を労うように、まるでマッサージするかのように、悪魔の手が蠢いて。
それだけではなく……悪魔の手を通して、どろりと熱い何かが、玉袋の中に染み込んでくる。
侵食されるような、未だかつてない快楽に、戸惑いの声が漏れる。
「ほぅら……どうだ?貴様の精の源に、私の魔力を注ぎ込んでやっているのだ……
気持ち良いだろう……?融けてしまいそうだろう……?」
「はぃ……きもちいいです…………」
男の尤も弱い部分であるからこそ、優しく弄ばれるのが、堪らなく気持ち良い。悪魔の魔力を直に注ぎ込まれている。そんな事をされてしまえば、僕の身体はどうなってしまうのか……その答えは明白だった。熱くなって、気持ち良くなってしまうのだ。
「んふふ……早速、精が満ちてきたな……私のために、こんなに一生懸命になって……なんといじらしい……
さぁ、もう一度果てさせてやるぞ……んっ……」
「ぁっ……」
精魂尽き果てる程の射精を経たにも関わらず、僕のモノは萎えるどころか、より硬く張り詰めていて。玉袋で、急速に精液が作られていくのも感じる。これもまた、悪魔の仕業に違いなく。
そして悪魔は、そんな僕のモノの先っぽに、舌を伸ばす。
「れるっ……んっ……ふふ……」
「ぁ、はぁぁ……」
包皮の間に、尖らせた舌先が滑り込む。そのまま、包皮の中をも味わい尽くすように、じっくりねっとりと舌でかき回してきて。
悪魔はその舌で、じわじわと巧みに包皮を剥いていく。
普段皮に包まれてる上に、射精直後の肉棒は、敏感なことこの上なく。皮を剥かれるだけで、またもや腰砕けになってしまう程の心地良さ。
「くふふ……随分嬉しそうだな……?」
悪魔は、ただ食事のために精液を搾り取ろうとするのではなく、僕との行為そのものを、余す事なく愉しもうとしてくれている。そんな風に思えてならず、それが、嬉しくて仕方なかった。そして、その気持ちもまた、悪魔に見透かされてしまっていた。きっとこれも、悪魔の思惑通り。
「はむっ……じゅるっ……んふふ……」
「ぁっ、はぁぁ……そんな……」
皮を剥き終えた僕のモノを、ぱっくりと咥え込み、美味しそうにしゃぶりついてくる。
キスだけで僕の心を奪い尽くした、悪魔の口。それが、敏感なことこの上ない、剥き出しの亀頭に襲いかかってくる。その心地良さは、もはや想像を絶するものだった。
「ちゅぅぅ……ふぅ……じゅるるっ」
「ぁ、ぁ、また……ぁぁっ」
極上の柔らかさをもった肉厚の唇が、カリ首に吸い付いて離れない。ふんわりぷるぷると、弱点を包まれて、締め付けられて、吸い付かれて。それだけでも至福だというのに、咥え込まれた亀頭を、魔性の舌が這い回ってくる。亀頭を余す事なく味わい尽くすように、自由自在に舌が絡みついてくる。
その口淫はゆったりとしながらも、奉仕ではなく、捕食と言うべき代物で。それなのに、その快楽は、捕食と呼ぶにはあまりにも甘美。まるで、口の中で優しく甘やかされているかのよう。
心までも弛緩してしまうような心地良さの中、欲望のほとばしりは、みるみるうちに膨れ上がって行って。
僕はあっという間に、二回目の絶頂へと導かれてしまう。
「んっ……じゅるっ……んふふ……」
「ぁぁぁ……」
肉棒がとろけ落ちてしまいそうな放出感。漏らした精は全て、悪魔の舌に絡め取られて。立て続けの射精にも関わらず、その勢いは衰えないどころか、より激しく。人の身体ではありえない大量射精。極上の快楽が、戸惑いさえも洗い流す。
そして悪魔は、精を啜りながらも、僕の顔を上目遣いで見上げてくる。だらしなく緩んだ僕の表情を、じっとりと見つめてきて、肉棒に吸い付いたまま、くぐもった笑い声をあげる。あられもない姿を晒すその羞恥が、背徳が、僕をさらなる深みに誘う。
「ちゅぷ……ぁーん……」
「そんな……こんなに……いっぱい……」
そして悪魔は、いやらしく舌を突き出しながら、その口を開く。僕の吐き出した精をすぐには飲み込まず、口の中に溜めて……それを、これ見よがしに見せつけてくる。
悪魔の口内は、人間の精力では有り得ない、おびただしい量の白濁で満たされていた。
悪魔の手によって、僕の身体は変わりつつある。魔に引きずり込まれつつある。人の道を踏み外しつつある。
それを本能的に理解してなお……目の前の淫らな光景から、目が離せない。
「んっ……んく……」
「ぁぅ……」
高圧的な眼差しが、とろんと緩む。頬に手を当て、陶酔の表情を浮かべて、悪魔は僕の精を飲み干していく。こくり、こくりと、ゆっくりと、大事に味わうように。そして、僕に見せつけるように。心底美味しそうに。
喜悦を湛えたその表情は、魔性の美。あまりにも妖艶で、僕の心を惹きつけてやまない。
「はぁぁ……ますます美味になって……それに、こんなにたぁっぷりと……実に素晴らしい……育て甲斐があるではないか……」
精を飲み干して、うっとりとため息をつく悪魔。射精を終えた僕の肉棒を、まるで宝物に触れるように、優しく愛おしげに撫でてくれる。
「ほぅら……次は、この私の手で搾り取ってやろう……」
「貴女の……手で……」
悪魔の手が、僕のモノを柔らかく握り込んでくる。すべすべとした掌が肉棒を包み込み、しなやかな指先が絡み付いてきて、それだけで心地良い。
己の手とは比べようもない感触に、期待が膨らむ。
「くふふ……期待が顔に出ているぞ?まったく、愛い奴め……」
僕を一瞥し、悪魔は耳元でねっとりと囁く。そして、その手で包んだ僕のモノを、緩やかに、しかし丁寧にしごき上げてくる。
「よいぞ、快楽に心を委ねて、堕ちてしまえ……
案ずることはない……この私が、貴様を愛で尽くしてやるのだから……」
「はぁ……ぁ……愛でて……くれるだなんて……」
「あぁ……たぁっぷりと愛でて、貪って……どこまでも堕としてくれよう……勿論、我慢などさせぬぞ……
どうだ、私の手は、指先は……?自分でするのとは比べものにならぬだろう……?」
「は、はぃ……やさしくて……きもちよくて……ぁ、ぁ……」
その手淫は、搾り取るというにはあまりにも優しいもので。肉棒を可愛がられている、そんな風に形容出来る、甘くゆったりとした快楽。その快楽と、母性さえ感じさせる悪魔の囁きが、堕落すること、戻れなくなることへの不安を拭い去ってくれる。
そして、その優しさとは裏腹に、悪魔の指先は、僕の弱点を的確に責め立てていた。
「くふふ……そんなにだらしのないカオをして……可愛い奴め……
そぅら……また果ててしまえ……」
「ぁ、ぁぁぁ……」
悪魔はにやにやと邪悪な笑みを浮かべ、僕の顔を覗き込んできて。一度視線が重なれば、悪魔の瞳に魅入られ、顔を背ける事は許されない。
すべすべの掌で亀頭を包まれ、すりすりと撫で回されて、あえなく再度の絶頂。肉棒を愛玩される法悦にどぷどぷと漏らした精は、悪魔の掌に受け止められていく。
そして悪魔は、情けなく果てる僕を視姦しながらも、優しく見守ってくれていた。
「んふふ……達してしまったなぁ……?快楽に緩みきった、はしたないカオだ……あぁ、実にそそられる……」
「ぁ、はぁ……」
くったりと余韻に浸る中、視姦され、羞恥にぞくぞくと震えた心、がぐずりと溶けていく。見苦しい痴態でさえも、悪魔は受容し、褒めてくれる。それが嬉しいのだ。
悪魔の甘く優しい辱めに、僕は恭順の念を抱かずにいられなかった。
「れろぉ……ん……はあぁ……なんたる美味か……
貴様の精は一滴残らず私のモノだ……有難く思うのだな……」
「ぁ……あなたの……もの……」
そして悪魔は、その掌で受け止めた精液を、これ見よがしに僕の目の前で舐め取り、味わい始める。その身をくねらせ、熱っぽい吐息を漏らし、極上のご馳走だと言わんばかりの蕩けた表情。絶世の美女が白濁にまみれた掌に舌を這わせる光景はあまりにも淫らで、刺激を受けずにいてなお、僕のモノは硬さを失わずにいた。
「そうだ、一滴たりとも無駄にはせぬぞ……しっかりと貴様を味わってやる……」
精に汚れた肉棒を見下ろす悪魔は、昂りを隠さずに舌舐めずりをする。
「そして……貴様にも、この私を味わわせてやろうではないか……」
「っ……ぁ……」
そして……悪魔は、僕の顔を跨いで、膝立ちの姿勢を取る。僕の視界を埋め尽くすのは、悪魔の魅惑の下半身だった。
むっちりと肉づき、はち切れんばかりの太股。それが、目の前にそびえ立っている。
大きく丸みを帯び、柔らかさをみっちりと詰め込んだ、安産型の桃尻もまた、目の前に。汗ばんで瑞々しく、青く艶めいた肌のその彩りは、まさに男を堕落に誘う果実だった。
そして、唯一最小限に隠された秘所には、淫らな筋がくっきりと浮き出てしまうほどに、革の下着が食い込んでいた。
「ほぅら……ココが貴様を搾り尽くす場所だ……しっかりと目に焼き付けろ……」
「ぁ……き……きれい……です……」
悪魔が、下着を留めていた帯を外せば、秘密の花園が僕の目の前に。
ふっくらと肉厚な淫唇が、ぴっちりと閉じて一本の筋を形作っている。成熟した女性の佇まいでありながらも、まるで生娘のように貞淑。その割れ目からは、とろとろと透明な蜜が溢れ出していた。青い肌に滴る粘液は灯りに照らされて、淫靡にぬらつく。
あまりにも淫らで美しく、本能を掌握される光景に、僕はただただ、見惚れてしまう。
「くふふ……そうか、そうか……思う存分、むしゃぶりつくが良いぞぉ……?」
「っ、んむ……っ……ふぅっ……」
そして、悪魔はおもむろにその腰を下ろし、蜜の滴る秘所を、僕の口へと押し付けてくる。僕は、嬉々としてそれを受け止めて、舌を這わせる。
蒸れに蒸れた女陰の纏う、甘酸っぱく濃厚な色香を、肺いっぱいに吸い込めば……その甘美さにくらくらする、などというものでは済まなかった。思考が、意識が、悪魔の色香に征服されていく。理性をどろどろに融かされて、もはや、考えることさえおぼつかない。
「んっ……ふふ……無我夢中だな……可愛い奴め……
良いぞ、このまま私に溺れてしまえ……私の味を忘れられなくなってしまえ……」
逃げる事など考えられない。極上の柔肉に挟んで、包んでもらって、太ももの感触にお尻の重み、立ち込める熱気に、淫らな香り。至福の蜜が染み出してきて、いくら味わえども飽きることはない。
魔性の女体がもたらしてくれる、たまらない心地良さ。顔に跨られてしまっているのに、そこに苦しさはなく……むしろ、堕落してしまいそうなほどに、居心地の良い空間だった。このままいつまでも、こうして尻に敷いていてもらいたい。そんな想いに支配される。
「あぁっ……こんなに滾らせて……健気なものだな、んふふ……
さて……まずはさっきの精からだ……れろぉ……んっ……ちゅっ……」
深みへ堕ちていく心とは裏腹に、興奮の丈は、滾る熱量は、これ以上ないモノとなっていて。もはや、触れられずとも勝手に果ててしまいそうな程に、僕のモノは張り詰めて仕方がない。
そして再び、悪魔の舌が、そんな僕のモノを這い回り、肉棒にまとわりついたままの精液を丹念に舐めとっていく。一滴残らず、という悪魔の言葉に嘘はなかった。
「んふふ……私の下は心地良いだろう……?征服される悦び……たっぷりと刻みつけてやろう……」
僕の悦びを見透かして、悪魔はさらに激しく、僕を責め立てる。そのお尻で僕を遠慮無しに押し潰し、太股で僕の頭をぎゅうぎゅうと締め付けて、腰を前後に動かし、秘裂をぐいぐいと擦り付ける。
もはや僕の顔は悪魔の女体で揉みくちゃで、それでも、魔性の柔らかさを備えた悪魔の身体は、ただひたすらに心地良さで僕を蹂躙し、征服する。
「んっ……じゅるっ、んっ、ふぅっ……ん……」
そして悪魔は、遠慮無しに僕の肉棒にしゃぶりついてくる。望むがままに舌を這わせ、肉棒を咥え込んで、根元まで呑み込んで。
たっぷりと唾液でぬらつき、隙間無く肉棒に吸い付いてくる悪魔の口内は、とろけてしまいそうな程に熱く、心地いい。まるで別の生き物のように蠢く舌は、根元から先端までの全てを使って、僕の肉棒を絡め取り、丹念に舐め回してくれる。その執拗さはまさに、肉棒を隅々まで味わい尽くされてしまうかのよう。
「んっ、じゅぷっ、んふ……んぐっ……んぅっ……」
悪魔の喉奥は肉棒を容易く受け入れるどころか、奥へ奥へと引きずり込もうと、より深く咥え込もうと、狂おしいまでの蠕動で、敏感な先端を受け入れ、責め尽くしてくれる。
所有権を主張するかのような、あまりにも支配的で、激しい口淫。しかし、悪魔の底無しの欲望を一身に受け、どれだけ激しく跨られても、しゃぶり尽くされても、悪魔の与えてくれる快楽は、ただただ甘美で、心地良く、僕の心を捕らえてやまない。
「んぐ、んっ、んくっ、んっ……んふっ……」
そして、僕は瞬く間に、射精へと導かれてしまう。僕の肉棒を咥え込んだ悪魔の口に、ぐつぐつと煮え滾った欲望を、根元から吸い出されて、搾り取られて、飲み干されていく。悪魔の口淫に促されるがまま、タガが外れたように恭順の証を吐き出す。あまりにも甘美な射精快楽に、意識さえも陶酔に堕ちていく。
そこに追いうちを掛けるように、口元に押し当てられた秘裂からは、一際濃い淫蜜がどろりと湧き出てきて……舌にまとわりつくその味わいの濃密さ、芳しさに、味覚、嗅覚を犯され、もはや、僕の身と心は、どろどろにされてしまっていた。
「んっ……じゅるっ、ぷは……はぁぁ……ますます濃くなって……喉に絡みつくこの甘美さ……堪らぬな……」
一滴残らず精を飲み干し、悪魔は僕の肉棒を解放する。甘美さに染め上げられた意識の中、名残惜しさをはっきりと感じる自分がいた。
その反面、恍惚に満ちた悪魔の呟きがもたらしてくれるのは、悪魔に糧を捧げ、人理から外れていく事に対する背徳感。それは、危うさを孕んだ充足感でもあった。
「んふふ……さて、次は……貴様の大好きなこの胸で弄んでやろう……
ほぅら……挿入っていくぞぉ……?」
唾液に塗れた肉棒を包み込んでいくのは、僕を魅了し尽くした母性の象徴。左右からぎゅうぎゅうに襲いかかってくる、ふわふわでむにむにの、至福の乳圧。魔の谷間へと、肉棒がゆっくりと飲み込まれていく。そして、腰の上に、たぷん、と悪魔の豊乳が押し付けられて……僕のモノは先っぽだけを露出して、カリ首の隙間さえ残さずに、堕落の柔肉で包み込まれてしまった。
悪魔の乳肉は、底無しの優しさで僕を受け入れてくれて。あまりの心地良さに、僕の心身は徹底的に無防備へと導かれてしまう。
「んふ……挟んでやっただけで、先走りをだらだらと……
おねだりが上手だなぁ……?この甘えん坊め……」
悪魔が上位者として紡ぐ、妖しくも優しい言葉。悪魔の魔性の乳の前では、僕はどうしようもなく甘えん坊にされてしまって……そんな僕の心を見透かし、悪魔はまさに優しく甘やかすように、ゆっくりとその胸を上下させ、僕のモノを扱きあげてくる。
もっとも敏感な場所で味わう、もっとも優しい感触。カリ首に絡みつき、吸い付いてくる魔乳の心地良さは、もはや法悦を極めていた。
「あぁっ、びくびくと震えて……なんといじらしい……
案ずるな……貴様の精は一滴残らず味わってやるのだから……貴様は……この私に気持ち良くしてもらう事だけ考えていろ……
んっ……じゅるっ……んふ、んくっ……んっ……」
緩やかな抽送の中、あっという間に膨れ上がっていく迸り。溢れんばかりの母性を備えた悪魔の胸は、精を搾り取るための場所でもあって。たっぷりと甘やかされながらも、僕はあっという間に果ててしまう。どこか穏やかに、しかし、膨大な量で肉棒の中を通り抜けていく精液。
その出口、肉棒の先端に優しく覆い被さってくれるのは、悪魔の唇。
悪魔の胸でゆったりと甘く扱かれながら、先っぽを吸い上げられて、精を啜り取られて、最後の一滴まで甘美な射精感に浸る。甘やかされる快楽の前に、もはや気持ち良くしてもらう事しか考えられなかった。
「ちゅぷ……はぁぁ……こんなにもどぷどぷと、精を漏らして……良い子だな、貴様は……」
一滴残らず精を吸い出した悪魔は、そのまま追い打ちをかけるように、どこか労うように、その魅惑の果実で、僕のモノを弄び続ける。
上下にしごくのではなく、互い違いにむにゅむにゅと擦り合わせられる乳房。肉棒を甘く撫で回すかのような動きは、まさに僕を愛玩してくれているようで、さらなる深みへと僕の心を導いてくれる。ただ心地良く、悦びに浸るのではなく……そこには、確かな嬉しさがあった。
「んふふ……嬉しそうにびくびくと……良いぞ、また果ててしまえ……この私に、たぁっぷりと精を捧げるのだ……
ちゅぅぅ……れろっ、んふ……んくっ……」
さらに悪魔は、その胸だけでなく、僕の頭を挟み込んだ太ももまでもを擦り合わせてくる。頭も、肉棒も、悪魔のもたらす至福の柔らかさで揉みくちゃに愛でられてしまいながら、再度の射精。
肉棒の先端はぱっくりと咥えられ……今度は鈴口をちろちろと、撫でるように優しく、しかし執拗に舐めまわされて、精液を舐め取られて。射精中の肉棒の、最も敏感な尿道口を愛で尽くされるその快楽は、筆舌に尽くし難く。
どうしようもなく溢れ出た精を、悪魔は一滴たりとも残さずに舐め取ってくれる。
「んっ……くふふ……また量が増えたな……?まったく、尽くしてくれるではないか……
さぁて、仕上げだ……この私の胸の心地、二度と忘れられぬようにしてくれよう……」
仕上げと謳った悪魔は、おっぱいを腕で抱え込み、肉棒をぎゅうぎゅうに挟み込んで、労うように柔らかく包み込んでくれる。
魔性と母性がたぷんと詰め込まれた悪魔の果実。それによる、優しくも熱烈な、至福の抱擁。
「ほぅら……心地良いだろう……?」
抽送も愛撫もなく、悪魔はただただ、その胸で僕のモノを抱き締めてくれる。その抱擁がもたらしてくれるのは、身も心もとろけるような、あまりにも穏やかな快楽。魅惑の果実の柔らかさが、肌触りが、まるで肉棒に染み込んでいくかのように心地良い。
「さ、じっくりと味わわせてやろう……くふふ」
しかし、母性に満ち溢れながらも、その胸は確かに魔性を兼ね備えていて。抱擁の乳圧、たったそれだけで、僕のモノを絶頂へと緩やかに導いていく。
悪魔の胸は、確かに母性と安らぎの塊でありつつも、快楽をもたらし、精を搾り取るためのモノだったのだ。そして、魔性と母性、その両面ともが……底の無い堕落へと、僕を導いていく。
「そうだ……身も心も全て、この私に委ねてしまえ……
そうすれば、もっと心地良くなる……私の胸に、堕ちてしまえ……」
ゆったりとした責めであるからこそ、それはただただ、心地良く。最も鋭敏な場所で味わう悪魔のおっぱいの、心蕩かす優しさと甘美さ。すぐに果ててしまわないからこそ、至福の果実の感触そのものへと、意識が吸い込まれていく。
慈愛さえ感じる中、ずっと、ずっと、こうしていたい。永遠を望んでしまう。僕はただただ、悪魔の胸の虜。快楽を受け入れる事で、恭順を示す。
「んふふ、良い子だ……ほぅら、ご褒美だぞぉ……?
貴様の大好きなおっぱいで……ぎゅぅ、ぎゅぅ……」
何度も何度も断続的に繰り返される、甘く熱烈な締め付け。僕のモノは、悪魔の胸にむぎゅむぎゅと抱かれてしまう。
緩急をつけて味わわされるのは、母性に溢れた至福の乳圧。
その抱擁はきっと、精を搾り取るためだけの行為ではなくて……相手の邪悪さも忘れて僕は、愛される悦びを感じてしまう。その悦びはあまりにも甘美で忘れがたく、心に染み込んでいく。
「くふふ……今の貴様は、さぞかしとろけきった顔をしているのであろうなぁ……?
さ……このまま、抱擁の中で果てさせてやろう……もう一つ、ご褒美だ……ん……ちゅ……」
そして、胸に抱かれた僕のモノ、その先端へと、悪魔は口付けてくる。
その吸い付きは、容赦無く精を吸い尽くすようなものではなく、まるで恋人同士の行為であるかのよう。胸の抱擁に合わせ、まるで僕を甘やかすように優しく唇を押し当て、愛でるように甘く吸い付いてくれる。それが、心にまで口付けをされているかのように、あまりにも心地良い。
「はぁ、びくびく震えて……先走りも美味だぞ……」
ゆっくり、じっくり、時間を掛けて、絶頂へと導かれていく。甘やかされて満ちていく心。悪魔の行為には、深い母性と愛情を見出さずにはいられなくて。その幸福に溺れて、悪魔に心奪われていく。安らぎさえ感じながら、さらなる堕落へと沈みこんでいく。
「んふふ……とどめだ……ちゅぅぅっ……んくっ、んっ……んぅっ……んふっ、ちゅるっ、んんっ……」
そして、ついに僕は、僕は深い絶頂を迎える。一際強く抱かれて、吸われて、締め付けられて。溜め込まれた欲望にトドメを刺すその愛撫もまた、底無しに甘く。
たっぷりと甘やかされたその時間に比例するように、おびただしいほどの射精感。その脈動を優しく後押しするように、リズミカルに、悪魔はその胸で僕のモノを抱き締めてくれる。唇もまた、ねっとりと愛おしげな吸い付き。
長い長い射精の最初から、最後の一滴まで……悪魔にされるがまま、どこまでも甘く、精を搾り取られてしまう。
「んくっ……くふぅぅ……はぁん……んふふ……堪らぬなぁ……身体の内側が、ぐつぐつと煮えたぎるようだ……
量も、濃さも、また増して……随分と気に入ったようだなぁ……?もはや、この私の胸の心地を忘れる事など出来まい……」
悪魔の与えてくれる底無しの甘美さ。甘やかされ、愛でられる悦びもまた、僕の心にしっかりと刻み込まれてしまっていた。悪魔の言葉通り、あの至福を忘れる事など出来そうにない。果てさせられたばかりだというのに、悪魔の胸が、その抱擁が恋しくて仕方ないのだから。
「くふふ……折角だ、念入りに、忘れられなくしてやろう……
ほぅら……ぎゅーぅっ……
もっと、もっと、甘えん坊になってしまえ……心ゆくまで、この私に溺れるのだぞ……」
その恋しさを見透かすように、悪魔は再び、その胸で僕のモノを挟み込んだまま、包み込んだまま、抱き締める動きでゆったりと責め立ててくれる。
そんな中、悪魔は、その胸の抱擁に合わせて、柔らかな太ももで、僕の顔を締め付けてくれる。それもまた、愛情を感じさせるもう一つの抱擁に他ならず。
口元に押し付けられる秘裂からは、溢れんばかりの淫蜜。舌の芯まで、堕落の味が染み込んで。呼吸のたびには、脳髄までを恍惚で犯すような、あまりにも濃密な雌の香り。
熱のこもった悪魔の囁きは、耳を通り抜けて、心に直接入り込んでくるかのよう。
五感全てが、悪魔によって甘く、心地良くどろどろに融かされていく。全てが、悪魔に染め上げられていく。
そして僕は、悪魔がもたらすその支配へと、甘やかされるがままに溺れていくのだった。
「んふふ、くふふ……あぁっ……そろそろ、頃合いだな……」
「ぁ……はぁ……」
長く徹底的な抱擁の末に、悪魔はついに、僕を解放する。
甘い心地、甘い香りに浸され続けた僕はもはや、心身ともにどろどろに蕩かされて、深い恍惚の内。悪魔への恭順と好感は募り募って、嫌悪感などはすべて洗い流されてしまっていた。
「あぁっ……すっかり出来上がって……どろどろの、ぐちゃぐちゃではないか……
んふ……実にはしたなく、いやらしく、可愛いカオだ……実にそそられる……
やはり貴様は……この私のモノとなるに相応しい……」
悪魔が、僕を見下ろす。
幾度となくその口に精を捧げたにも関わらず、悪魔の瞳が宿す情欲は、さらに深く研ぎ澄まされていて。その美貌に浮かぶのは、昂りを露わにした、とびきりの邪悪な笑み。先刻までの甘い時間はあくまでも前戯であり……下ごしらえだと言わんばかり。
しかし、その邪悪さを前にしても、欠片ほどの恐れを感じることはなく。むしろ、蕩けきった僕の心にとっては、その邪悪で支配的な振る舞いでさえも、魅力的で、心地良くて仕方がない。
「くふふ……その物欲しそうなカオ……この私に純潔を捧げたいのだろう……?犯して欲しいのだろう……?」
「ぁ……はぃ……っ」
甘く蕩ける陶酔の中、滾りに滾った、僕の欲望。
悪魔と、交わりたい。もっともっと、気持ち良くなりたい。あまりにも邪で、剥き出しの感情。
悪魔の問いに応える事は……はしたなく、あさましく快楽を求める自分自身を認める事でもあった。
「んふふ……よいのか……?ひとたび交われば最期……心地良さのあまり、二度と元に戻れなくなってしまうやも知れぬぞ……?この私なしでは、生きられないようにな……
それでも、この私に食べられてしまいたいというのか……?くふふ……」
そして悪魔は、にたぁ、と口角を吊り上げ、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
屈服を確かめる言葉は、あまりにも甘美に、この先の快楽を想起させる。破滅的な響きでさえも、悪魔の口から紡がれるならば、心を惹きつけられてしまう。
「ぁぅ……はぃ……たべ……て……」
悪魔の囁きに誘われるがまま、導かれるがまま……僕は、快楽をねだってしまう。
身体が、本能が、心が、目の前の悪魔を求めて。目の前にあるのは、ただただ、堕落へと進む道のみ。その道を選んだのは、他ならない僕自身。その事実に、もはや言い逃れの余地はなかった。
そして何よりも、頭の中を埋め尽くすのは……悪魔と、悪魔のもたらしてくれる快楽への期待。
悪魔に純潔を捧げ、決して消えない堕落の烙印を押されるその瞬間が、心待ちでならなかった。
「んふふ、ふふ……可愛い奴めぇっ……!
ならば、貴様の純潔……この私が奪い取ってやろうではないか……
尤も……たとえ拒まれようと、そのつもりだったがな……くふふふふ……」
もはや、僕の身も心も悪魔の手中。それを、他ならぬ僕が認めてしまった。
その屈服を見届け、悪魔の美貌はより一層、邪悪に歪んでいく。欲望の言葉が、どうしようもなく心地良い。
目の前の女性は、あまりにも嬉しそうで、愉しそうで。その邪悪な笑みは、まさに悦びに溢れていた。邪悪ながらも、幸せの絶頂とも言えるそのカオは、これ以上なく魅力的。その眼差しが僕を見据えれば……僕は心を奪い尽くされる他なく、悪魔への愛おしささえ感じてしまう。
「さぁ……その眼にしっかりと焼きつけ……身体に刻み込むのだぞ……?
貴様の純潔が、この私の物となる瞬間を……んふふ、ふふ……くふふふふ……」
「ぁぁっ……うぁ……はぃ……」
ぴっちりと閉じた秘裂をその指で割り開き、悪魔は僕のモノへと狙いを定める。露わになった膣口は狭く閉ざされていて、生娘を思わせる。邪悪な素振りとは裏腹に、悪魔の身体は純潔そのもの。
僕だけが、悪魔に食べてもらえる。その事実に、悦びを隠せない。
その狭い入り口からは、愛蜜が溢れ出て。それが肉棒に降りかかり、まぶされれば、その絡みつくような熱に感じ入ってしまい、思わず声が漏れる。
愛液伝いに感じる、悪魔のナカの熱量は……肉棒が融かされてしまいそうな程の狂おしさ。ますます、挿入への期待は高まっていく。
「くふふ……貴様の初めて……貰ってやるぞ……っ」
蜜の滴る入り口が僕のモノにあてがわれる。くちゅり、と淫らな水音が響く。期待のあまり、肉棒はたぎり滾って暴発寸前。
そんな僕を見下ろす悪魔の眼差しは、欲望に煮えたぎりながらも、どこか優しく、慈愛を感じる事が出来て。
不安はやはり欠片も浮かばず、安心した心地で、ただただ期待のみが胸を埋め尽くす。
そしてついに、僕の高まりにトドメを刺すように、ゆっくりと見せつけるように、悪魔は腰を下ろし始める。
「っ……んふっ……はぁ……実に美味だ……
ほぅら……今まさに、貴様の童貞が食べられているのだぞ……?んふふふ……嬉しいか……?」
「ぁ、ぁ、ぁ…………」
潤みきった悪魔の膣へと、僕のモノが呑み込まれていく。欲望に負け、悪魔に純潔を捧げ自ら糧となってしまう、人の道を踏み外すその背徳に、眩暈のような高揚感。
悪魔のナカは、ぐつぐつと煮え滾るように程に熱く。しかし、それはただの熱ではなく、温もりの凝集とも言うべき、甘美な熱で。
咥え込まれた部分に襲いかかるのは、肉棒がとろけてしまうかのような、圧倒的な心地良さ。
肉棒の先端がほんの少し挿入った、たったそれだけで、瞬く間に腰砕け。亀頭を咥え込まれた時には既に、心地良さのあまり、身動きさえままならない。
悪魔がじっくりと腰を沈めていくごとに、甘美さが僕を征服していく。肉襞がねっとりと絡みついて、僕の初めてを奪い去っていく。
悪魔に食べられ、穢され、堕とされていく。その淫らな光景に魅入られて、目を離すことは出来ない。悦びが背筋を駆け巡るのを感じながら、その光景を目に焼き付けられるがままだった。
「はぁっ……んっ……」
「ぁ、ぁぁぁっ……」
そしてついに悪魔は、その腰を僕の上に降ろしきって……僕のモノは、根元までしっかりと捕食されてしまう。
同時に、深々と咥え込まれた肉棒の先端で感じるのは、悪魔の最奥。そこはまるで、招き入れるかのように、優しく僕のモノを受け止め、包み込んでくれて。それでいて貪欲に、絡みついて、吸い付いて。その甘美な感触に許しを得たように、挿入の最中につのりつのった快楽が、途端に堰を切って溢れ出す。
「くふぅぅっ……
はぁんっ……これが交わりの味っ……これほどまでに甘美だとはっ……あぁっ、病み付きになってしまうではないかっ……
はぁっ、よいぞっ、たぁっぷりとナカに出せっ……一滴残らず味わってやるぞ……」
「ぁぅ、ぁぁぁぁ……」
純潔を奪われ、精を啜られているというのに、悪魔に食べられてしまっているというのに、その行為とは裏腹に、充足さえ感じてしまう。
悪魔の極上の名器がもたらしてくれるのは、一切の抵抗を許さない甘美さ。全身が弛緩してしまい、されるがまま。まるで、頭のてっぺんから爪先まで、快楽に支配されてしまったかのよう。抗えない。抗うことさえ考えられない。
そして……僕に跨り、弓なりに背をそらしながら恍惚の表情を浮かべる悪魔のその姿は、今までになく淫靡で美しく。まさに淫魔そのものというべきその光景に、見惚れ尽くす。僕は、命じられるがままに精を捧げる他なかった。
「くふっ、んっ……くふふふっ……あぁっ……子宮に、どぷどぷと……
はぁんっ……なんたる美味か……身体中が蕩けてしまいそうだ……んふふふ……」
悪魔の最奥に精を捧げた事をきっかけに、魔性の肉壷は、さらに激しく蠢き始める。それだけでなく、悪魔は僕のモノを深々と咥え込んだまま、ぐいぐいと腰を捻り、押し付けてきて。
その歓待の末に待っているのは、魂ごと啜られてしまうかのような、あまりにも心地良く膨大な射精快楽。タガが外れてしまったかのように溢れ出る精液は、一滴残らず悪魔の胎内に啜り取られていく。
「くふぅぅっ……んっ……そうだ、ぜぇんぶ吐き出してしまえっ……
貴様の初めて……この私の子宮で、余すことなく糧にしてやろう……くふ、んふふ……」
貪られるがままに精を捧げれば、時折、悪魔はびくんと身体を跳ねさせて、艶に濡れた声を洩らす。僕を貪って、糧にして、悦んでくれている。それは、僕の価値を認めてくれる行為に他ならず。
悪魔のために精を捧げ、糧となる行為そのものに、僕は献身の悦びを感じてしまっていて……僕の心は、より深みへと引きずり込まれていく。
「んふ、くふふ……分かるか……?これが、この私に支配されるということだ……この私のモノになるということだ……素晴らしいだろう……幸せだろう……?」
「ぁ、はぁぁぁ……」
「くふふ、そうか、そうか、返事もできぬほど心地よいか……本当に愛い奴だなぁ、貴様は……
それでよいのだぞ……身も心も快楽に委ね、純潔を捧げるのに精一杯で、一生懸命で……くふふふふふ……
貴様はそうして、私の下で心地良くなっていればよいのだ……どこまでも快楽に溺れて……支配される悦びに浸って……どこまでも堕ちてしまえ……
はぁぁ……そのとろけきったカオ……まったく、実に可愛らしいぞ……んふふ、くふふぅっ……もっとだ……もっと堕ちてしまえ……」
純潔を捧げる射精の、その勢いはとどまることを知らず、終わる気配を見せず。どっぷりと浸る心地良さのあまり、どろどろに融けた思考。もはや言葉を紡ぐこともできない僕の頭の中に、悪魔の囁きはどこまでも甘美に染み込んで、思考を犯す。
悪魔に支配される。悪魔のモノになる。今味わっている甘美さが、心地良さこそが悪魔の支配なのだと、その意味が甘く書き換えられていく。
悪魔の紡ぐ欲望の言葉は、快楽にあえぐ僕の醜態さえも肯定してくれる。その深い肯定が、心を満たしてくれる。悪魔に身も心も委ね、捧げる事が僕の存在意義なのだと、そんな想いさえ込み上げる。
僕が心待ちにした悪魔との交わりは、人の身では味わえないほど、ただひたすらに甘美で心地良く。価値観さえも塗り替えられて、底の見えない堕落の淵へと引きずり込まれていく。それが、どうしようもなく幸せでならなかった。
「はぁぁ……んっ……んふふふ……たぁっぷりと出したなぁ……?実に……実に美味だったぞ……食べ頃まで待った甲斐があるというものだ……
あぁ、胎内を満たすこの熱、甘美さ、心地良さ……他の何にも代え難い……」
「はぁ、ぁ…………」
永遠のような、一瞬のような、この世の物とは思えない時間。それが過ぎ去って……甘美な初体験に、終わりが訪れていた。
とめどなく溢れ続けた精も、最後の一滴まで搾り尽くされて、味わい尽くされて。精を捧げきった僕を労うように、悪魔のナカは一際優しく肉棒を包み込んでくれている。射精を終えてなお、僕の意識は甘美な余韻の中に囚われてしまっていた。
「あぁ、そして……くふふ、んふふ……これで貴様の初めては、私のモノだ……この私が、貴様の初めての女というわけだ……
くふふ……純潔を捧げた感想はどうだぁ……?貴様の望んだ通り、食べてやったのだぞ……?穢してやったのだぞ……?」
僕を見下ろす悪魔は、淫蕩な笑みを浮かべて、自身のお腹をうっとりとさする。その下にあるのは、たっぷりと精を捧げた悪魔の子宮。
僕の純潔は、初めては悪魔のモノとなってしまった。その事実を、しっかりと実感する。
目の前の悪魔が、僕の初めての人。特別な人。それは、とても素敵なことだった。取り返しがつかなくなってしまった事、その被支配感もまた、甘美でならなかった。
「ぁ……すごく……きもちよくて……ぁぁ、しあわせで……はじめてで……うれしくて……」
「くふふふふ……そうか、そうか……うれしかったか、くふふふふ……」
悪魔との初めての交わり。それは、今まで味わったどんな快楽よりも、ただただ心地良く、幸せなもので。快楽に融けた頭で、その素晴らしさを目一杯伝えようとするが、ただただ、言葉が漏れるのみ。今もなお、心地良さと幸福の最中なのだから。
そんな僕を前に、初めての人は、優しげに僕を見つめてくれて。そして、嬉しそうに僕の言葉に耳を傾けてくれる。
「きもちいいのがとまらなくて……とけちゃいそうで……
きもちよくて……しあわせで……ぁ、ぁ、きもちいいです……ゆめみたいで……」
「くふふ、ふふふっ……そうだろう……?心地良いだろう……?幸せだろう……?忘れられないだろう……?」
「わすれられない……です……すごく、しあわせで……」
「んふふ、そうだろう……」
思い返せば思い返すほどに、初めての交わりは、ただただ心地良かったと、幸せだった言うほかなく。
慈愛さえ感じる悪魔の眼差し。高圧的な態度の中に、確かな母性。
甘えるように心の内をさらけ出せば……悪魔は、初めての人はそれを受け容れてくれて。その事実に、僕の心はさらにとろけていく。
「分かるか……?これが、支配される悦びだ……
こうして、この私に身も心も委ねる事こそが、全てを捧げる事こそが、貴様の幸せなのだぞ……」
「はぃ……うれしくて……しあわせで……」
甘ったるく囁かれる声に、今味わっているこの快楽、幸福。それこそが、悪魔の言葉が真実である確かな証明。否定の余地のない事実。
思考を手放し、悪魔の言葉に頷けば、とても軽やかな心地。
支配される悦び。全てを捧げる幸福。それが悪魔の教えてくれる真実。
「んふ、ふふふ……すっかり物分かりがよくなったな……くふふ、良い子だ……
さて、貴様にはさらなる幸福を与えてやろうではないか……
あぁ、まずは……貴様のモノをじっくり、ねっとり、味わい尽くしてくれよう……」
「は、ぁぁ……」
そして、穏やかだった悪魔の膣内が、またもや、うねり、くねりはじめる。それは緩やかな蠕動であったが、悪魔の宣言通りに僕のモノを味わい尽くすような、執拗な蠢きでもあって。たちまち、快楽に息が漏れる。
「くふふふ、ありがたく思え……余すことなく、隅々まで丁寧に味わってやるぞぉ……?
あぁ……この甘美さ……やはり、他の何にも代え難い美味だ……」
「ぁ、ぁぁ……ありがとう、ござぃます……」
隙間無く絡みつき、ひしめく無数の肉襞。それが、まるで小さな舌のように、僕のモノをねっとりと舐め上げてくる。
自由自在に蠢く悪魔の魔膣は、ゆったりと僕のモノを咀嚼するかのよう。
捕食と呼ぶには穏やかな交わり。まるできっと、極上のデザートを口にするその時よりもずっと丁寧に、愛情さえ感じるほど大事そうにに、僕のモノがしゃぶり尽くされ、味わい尽くされていく。
僕という存在を食べてもらう上で、これ程までにありがたく、嬉しい事はなく。ただ身体的な快楽だけでは無く、悪魔に身を捧げる悦びに、幸福に、心が染め上げられていく。
「あぁ……貴様も、この私のカラダを、しっかりと覚え込むのだぞ……」
「は、はぃぃ……」
悪魔に味わわれるという事は、悪魔を味わわされる事でもあって。
なまじ快楽そのものが緩やかであるからこそ、悪魔の魔膣の感触は、あまりにも鮮明。
狭くうねりくねる道に、絡みつく肉襞の感触は、あまりにも艶かしく。蜜に潤んだその場所は、あまりにも滑らかに僕のモノを咥え込んで離さない。
そこで生まれるあらゆる動きが、刺激が、ただただ甘美な心地良さへとつながって。
それはさながら、人を堕とすためだけに存在しているかのような、魔性の名器。底の見えない堕落の淵へと、果てなき深みへと、僕を誘って、逃さない。
その心地良さを味わえば味わうほどに、心が堕ちて、囚われていく。
「ほぅら、これが私のナカだ……貴様をしゃぶり尽くし、搾り尽くして、幸せにしてやる場所だ……
この吸い付き……うねり、くねり……肉襞のわななき……堪らないだろう……?
あぁっ……そして、此処が……子宮の入り口だぞぉ……?貴様が精を捧げる場所だ……くふふふふ……」
「ぁ、はぅ……ぁ、すごぃ……」
「くふふ、そうか……こうして貴様を堕としてやれるのは、他ならぬこの私だけなのだぞ……?」
「あなた……だけ……」
「あぁ……そうだ……この私だけだ……んふふふ……」
悪魔の囁きが、僕の意識を至福の感触へと導いてくれる。そのおかげで、蕩けきった意識の中でも、はっきりと悪魔のカラダを味わう事が出来て。法悦を極める心地良さとともに、悪魔のナカの感触が、僕のモノへと刻み込まれていく。誰が支配者なのか、誰の所有物であるかが教え込まれていく。
そして、この心地良さをもたらしてくれるのは、目の前の悪魔だけ。ますます、悪魔が特別な存在になっていく。
「はぁ……んっ……私のナカで、先走りをだらだらと…… おねだりの味もまた格別だなぁ……?くふふふ、ふふ……
おまけに、びくびくと震えて、跳ねて……物欲しそうに……」
「ぁ、はぁぁ……」
「んふふふ……余裕がなくなってきたなぁ……?あぁ……よいぞ、そのカオだ……どれだけ見ても飽きぬというものだ、くふふふふ……実に愛らしい……」
執拗に、執念深く、肉棒に刷り込まれていく魔性の快楽。焦らすわけでは無く、ただただ時間をかけて丁寧に、そしてじわじわと僕を追い詰める、悪魔の性技。ゆっけりと、しかし確実に近づく絶頂。だんだんと快楽に蝕まれ、喋る事さえままならなくなっていく。
「んふふ……じっくりと辿り着く絶頂はまた格別だぞぉ……?たぁっぷりと時間をかけて、快楽を溜めこませてやって……果てたその時は筆舌に尽くしがたいというものだ……
楽しみにしておくのだな、くふふふ……」
「ぁ、ぁっ……はぃぃ……」
「そうだ……そうして、快楽を心待ちにするがよい……楽しみにしたその分だけ、もーっと気持ち良くなれるのだからな……」
心地良さの中、ぐつぐつと煮えたぎり、際限無く蓄積していく熱量。悪魔の言葉通り、それは今までに味わったものとは比べ物にならない、膨大で狂おしい代物で。
この先に待ち受けているさらなる快楽を意識させられ、夢想させられ、僕の心はただただ期待に染まる。
早く果ててしまいたい。そんな気持ちも、期待の前に塗り潰される。
切なさや焦れったさを感じる事はなく、ただひたすらに、悪魔のもたらしてくれる快楽が楽しみでならなかった。
「んふふ……よだれをこぼして……実にはしたなく、いやらしいなぁ……?貴様は……」
快楽のあまり半開きになったままの口。期待に溢れ、こぼれていく唾液。それを、悪魔の指先がすくいとってくれる。
はしたなく、いやらしい。それは、悪魔なりの褒め言葉。そして、甲斐甲斐しげな響き。
どれだけあられもない姿を晒しても、悪魔は嬉々としてそれを受け入れてくれる。人を堕落に導く邪悪な包容力を前に、僕は抗えない。
「ん……ちゅ……くふふ、貴様の全ては私のモノなのだからな……唾液の一滴も例外ではない……」
指先ですくいとった唾液をこれ見よがしに、そして大切そうに舐め取って、悪魔は笑う。
「もちろん、貴様の精も……一滴残らず私のモノだ、くふふ…」
「ぁ、はぁ、ぁ、ぁ……」
「あぁっ……ナカで、また膨らんで……くふ、ふふふふ、んふふ……こうして繋がっているのだ、貴様の事はよぉく分かるぞ……もうすぐ限界なのだろう……?精を捧げたくて堪らないのだろう……?絶頂に導いてほしいのだろう……?
あぁっ……そんなに可愛いカオをして……どこまで、私の欲望を掻き立てるつもりなのだ……」
欲望にぎらついた瞳が、僕の心を見透かす。感じ入る快楽も、悪魔に筒抜け。僕の限界も、敏感さも、弱点も全て、重ねたカラダに探り当てられて、隅々まで知り尽くされてしまっている。
たとえ僕のモノが絶頂寸前だとしても、悪魔はそれを暴発させずに可愛がってくれる。それは、あまりにも巧みな性技。悪魔がその気になれば、僕を呆気なく絶頂させる事はもちろん、生殺しで嬲り続ける事さえも容易くて。その事実を前に、僕は完全に悪魔の支配下に置かれてしまったのだと、身にも心にも教え込まれてしまっていた。
「くふふ……もうすぐだ……もうすぐこの私が、共に果ててやるぞぉ……?んふ、ふふふ……ありがたく思うのだな……
ただ同時に果てるだけではない……じっくりねっとりと蓄えたこの快楽を、共に交わし合うのだ……くふふふ……
互いの絶頂が絶頂を押し上げあって……あぁ……想像しただけで、堕ちてしまいそうではないか……?どこまでも、どこまでも……果てのない堕落が貴様を待っているぞぉ……?」
そして、悪魔の支配の先にあるのは、無慈悲な蹂躙でもなく、嗜虐的な遊戯でもなく。一緒に絶頂を迎えるという、あまりにも甘く心に響く行為。
悪魔はその支配を以って、ただただ、僕を快楽の淵へと導こうとしてくれる。
弄ぶための支配ではなく、悦ばせるための支配。そして、その悦楽もまた、僕を支配するために。
悪魔のもたらしてくれる、終わりの見えない支配の連鎖は、その途方もない甘美さで、僕をどこまでも支配する。
快楽が僕を支配する。その支配が、僕に快楽をもたらし、幸せへと導いてくれる。支配と幸福が絡み合って混ざりあって。悪魔による支配と幸福が、分かつことのできないものとなっていく。
「くふ、んふふっ……貴様は私のモノだ……あぁ……私だけのモノっ……」
「ぁっ……んむ……んぅ……」
僕を捕らえる悪魔の腕。繋がったまま、優しく抱き起こされて、抱き締められて。
悪魔はその胸で、僕を抱いてくれて。そして、その大きな翼で、僕を包み込んでくれる。
その抱擁は、愛しむようでありながらも、絡め捕らえるかのよう。揺籠でもあって、檻でもあって。
胸の谷間に顔をうずめれば、甘酸っぱく淫らな女の匂いと、母性を感じる穏やかな香り。魅惑の乳肉に口元をむにゅりと塞がれてしまえば、僕が吸い込むのは、谷間の空気だけ。胸の香りが頭の芯まで染み込んで、興奮が、幸福が、後押しされていく。
「はぁ……んっ……くふふ……ほぅら、トドメだっ……んふ……貴様のだぁいすきなおっぱいを味わいながら、果ててしまえっ……」
「んむっ、ん、ふぅっ……っ……―――っ」
「あぁっ、果てるのだなぁっ……?私も一緒だぞっ……ぁ、っ、あはぁっ❤︎」
そして悪魔は、僕の頭を抱いたまま、その胸を押し付け、擦り付け、挟み込んできて、僕の顔をむにゅむにゅと弄ぶ。
丹念に味わわされる、至福の柔肉。母性による征服。夢のように甘い愛撫をきっかけに、僕の昂りは限界へと上り詰めて。僕のモノを咥え込んだ悪魔のナカも、ひくひくと蠢いて……二人同時、溜まり溜まった快楽が、堰を切って流れ出した。
「ふぅぅぅ…………」
丹念に時間をかけ、じっくりと導かれた絶頂は、あまりにも深く。まるで精を漏らしてしまうかのように、心地良さに緩みきってしまいながらの、膨大な射精感。
悪魔の胸に囚われ、声も出せないまま、ただただ、心地良さに息が抜けていく。
「くふぅぅっ❤︎そうだぁ、たぁっぷり出せっ……❤︎」
肉襞が、肉棒を優しく、執拗に撫で回す。きゅぅきゅうと熱烈な締め付けは、まるで僕の所有権を主張しているかのよう。しかしそれは、愛おしげな抱擁でもあって、どこまでも心地よく、僕のモノを包み込んでくれて、安心感さえもたらしてくれる。
僕の絶頂、脈動と重なりあった、うねり、くねり。そして、尿道口を捉えて離さない、子宮口の吸い付き。まるで、キスされているかのよう。
僕と同時、深い絶頂を迎えた悪魔のナカは……その全てが、僕の精を啜りとり、心地良さの果てに導くためだけに蠢いていた。
「はぁっ……❤︎とくと味わおうではないかっ……堕ちていく悦びをっ……❤︎」
そして、導かれるがまま、悪魔の子宮に精を漏らせば……悪魔のナカの、その締め付けは、吸い付きは、蠢きは、一際甘い快楽をもたらしてくれて。さらなる深みへと導かれるがままに、より多くの精を捧げれば、悪魔の身体はまた、さらなる快楽、心地良さをもって応えてくれて……
二人同時に絶頂へと登りつめた、その先に待っていたのは、終わりの見えない快楽の連鎖だった。
「んふ、くふふふ……❤︎幸せだろう……病み付きだろう……?何も案ずることはないぞ……❤︎」
ただひたすらに、甘美で、心地良い瞬間。それはまさに、堕落させるための底無しの快楽。永遠に続く事を望んでしまう程の、至福の時。
僕だけが気持ち良いのではなく、悪魔もまた、共に悦んでくれているその事実が、どうしようもなく愛おしい。悪魔の快楽が僕の快楽になり、僕の快楽が悪魔の快楽に。互いの悦びを感じあい、心までもが通じあって、繋がりあって、満たされていくような心地。
どこまでも心を蕩かされ、悪魔に惹き寄せられて。堕ちていく。魔に染まっていく。戻れなくなることさえ、悦びに他ならない。
「はぁん……❤︎離さぬぞ……逃さぬぞっ……❤︎」
快楽に艶めいた悪魔の呼び声。悪魔は僕を優しく包み込みながらも、決して離そうと、逃がそうとしない。もはや僕は快楽に身も心も支配され、逃げる事など出来ないというのに。悪魔の虜だというのに。
絶頂の最中、悪魔が露わにする飽くなき支配欲。それに抱かれ……僕は安堵していた。悪魔は、僕を不条理なまでに求めてくれて、決して独りにしようとはせず、一緒に堕ちてくれる。だからこそ、心の底まで安心し、快楽に浸る事が出来て。悪魔の枷こそが、僕を不安から解き放ってくれるのだった。
「あはぁっ……❤︎なんと濃厚な……そんなに私を孕ませたいか、くふふふふぅ……っ❤︎
よいぞぉ、貴様の欲望も、ぜぇんぶ私のモノだっ……ぜぇんぶ捧げるのだぞぉ……❤︎」
もはや、悪魔と交わる事はおろか、子を成す事にさえ、一切の忌避も恐れもなかった。それらは全て、神聖な行為である子作りを、悪魔と行う背徳の悦びに。ぞくぞくとした転落感が、どうしようもなく心地良い。
悪魔の言葉に本能を刺激され、欲望の丈はますます膨れ上がっていく。悪魔に、僕の子を孕んで貰いたい。そんな身勝手な欲望でさえも悪魔の思い通り。それは、悪魔が僕を受け入れてくれているということに他ならない。そのあまりにも深い受容に、包容に、溺れていく。
「くふぅぅっ……❤︎ああっ、なんと美味なのだ、なんと心地よいのだ、貴様はぁっ……❤︎
まったく、愛い奴めっ……どこまでも、どこまでも、共に堕ちてやろうではないか……❤︎貴様はもう、私のモノなのだからなぁ……❤︎」
共に堕ちる。その言葉が、あまりにも甘美に響く。堕ちる事にさえ、安堵を感じずにはいられない。戻れなくなっていく事にさえ、安心してしまう。
僕はもはや、身も心の悪魔のモノ。底なしの心地良さは、幸福感は、まさに悪魔のもたらす刻印だった。
「くふふ、ふふっ……❤︎貴様の悦びは手に取るように分かるぞ……❤︎
私のモノになるのが嬉しいのだろう……?この私に堕ちたいのだろう……?くふふ……答えずとも分かっているぞ……❤︎
貴様は、この私に抱かれて、悦んでいればよいのだっ……❤︎この私を、愉しませていればよいのだっ……❤︎
何も案ずることはないのだぞ……❤︎この先もずぅっと、ずっと、な……❤︎」
止まらない射精。終わらない快楽。どろどろに蕩けた頭に、悪魔は執拗に、僕の望む言葉を囁いてくれる。悪魔は、僕の悦ぶ言葉を知っている。知っていて、惜しげもなく繰り返してくれる。たった一言でさえも甘い猛毒なのに、流れるように言葉は紡がれて。
骨の髄まで、心の芯まで、魂までもが、悪魔のもたらす幸福に征服されていく。全ては悪魔の意のまま。
悪魔の意のままに、僕はこれ以上ない幸せを感じていた。
この幸せな瞬間が、二人一緒の絶頂が、いつまでも、いつまでも、続いて欲しい。
永遠を求めながら、僕は悪魔に導かれ……終わりの見えない深みへと堕ちていく。
「はぁぁぁ……くふ、ふふ、ふふふぅ……❤︎これほどまでに、たぁっぷりと……❤︎素晴らしいものだなぁ……?共に堕ちるという事は……❤︎まさに至福のひと時であったぞ……❤︎」
「ぁ……はぁ……ぁぅ……」
永遠と思えた甘美な時間にも、ついに終わりが来て。長い長いひと続きの射精の余韻に、僕は浸っていた。
身も心も全てどろどろに蕩け堕ちてしまう、禁断の快楽と幸福。僕と同じ時間を、悦びを共有してなお、悪魔は喜悦と慈愛に満ちた表情で、僕を覗き込んでくれる。
その支配者たる余裕が、甘い囁きが、僕にさらなる安堵をもたらしてくれる。
「んふふ……くったりとして、とろんとして……あぁ、なんと……か弱いのだ……❤︎疲れ果てた姿も実にいやらしく、可愛らしいぞ……❤︎」
「ぁぁ………っ」
悪魔の言葉通り、あまりにも深く甘美な絶頂の末に、僕は疲れ果ててしまっていた。
無尽蔵の精力を与えられても、体力には限りがあって。もはやろくに身動きも取れず、悪魔に抱かれるがまま。喋ることさえ叶わず、交わるには限界。
僕は悪魔に、男としてあまりにも恥ずかしい姿を晒していた。
しかし悪魔は……この痴態ですらも満足気に褒め称えてくれた。
そんな悪魔の囁きを受けた僕は……この身を支配する疲労感にさえ悦びを感じてしまっていた。情けなさでさえ、心地良い充足に置き換えられてしまっていた。
悪魔がもたらしてくれるものは、ただ一つの例外もなく、幸福に結びついていた。
「さぁ……貴様のだぁいすきなおっぱいだぞぉ……❤︎」
「……ん……ぁむ……ちゅ……」
揺籠のようにゆったりとした抱擁。口元に差し出された母性の象徴。僕は、誘われるがままに、禁断の果実を口に含んでいた。
ぷっくりと淫らに膨れ勃った乳首は、僕の唇を虜にする。本能に訴えかける、魅惑の感触。吸い付いて、舐って、甘噛みして、甘えずにはいられなかった。甘えさせられてしまっていた。
「ぁん……くふ、ふふふ……甘えん坊め……まるで赤子だな……❤︎よしよし……いい子だ……❤︎私のために、一生懸命どぷどぷと、よぉく頑張ったな……❤︎
今はゆっくりと休むがよい……そう、今はな……❤︎」
赤子のようだと言いながらも、悪魔は嬉々として、僕の頭を優しく撫でてくれる。ご満悦といった様子で、僕を労ってくれる。
理不尽なまでに注がれる愛情は、まさに溺愛。しかし、愛に溺れているのは、僕に他ならない。
意識さえも、悪魔の愛の中に蕩けていく。欲深な母性に抱かれ、身も心も幸福に染め上げられて……僕は深い眠りに落ちていくのだった。
「ん……ぅ……」
まどろみの中。人肌のぬくもり、柔らかさ。ぼんやりとした心地良さが、だんだんと鮮明になっていく。
もぞりと身体を動かせば、僕の身体を優しく包み、受け止めてくれる存在に気づく。
「くふふ……起きたか?」
僕が枕にしているのは、悪魔の胸だった。僕が身体を預けているのは、悪魔の肢体。その豊満さは、まさに極上のベッド。
悪魔は妖しく笑いながらも、まるで聖母のように、僕を抱いてくれていた。
「ぁぅ……んぅ……」
「んふふ……まだまだ、おねむか……」
からっぽの頭のまま、悪魔の抱擁に甘える。僕をいざなう、一対の果実。すりすりと頰を擦り付ければ、吸い付くような肌触り。谷間にぎゅっと顔を押し付ければ、むにゅりと顔を包み込んでくれる。そのまま深呼吸すれば、甘い香りに包まれて、目覚めたばかりなのに、夢見心地。
甘えれば甘えた分だけ、悪魔は僕を撫でてくれる。ぎゅっと抱きしめてくれる。意識がはっきりとしたぶんだけ、悪魔の与えてくれる幸福が、頭の中に染み込んでいく。
とろけるような心地良さの中で僕は、目覚めを迎えていた。
「あぁ……仕方のない奴め……よしよし、心ゆくまで惰眠を貪るがよいぞ……」
しかし、目が覚めてなお、悪魔の肉布団は、僕を捕らえて離さない。ただのベッドでさえも、人の心を引き止めるのだ。それが悪魔の抱擁であれば、僕の心は為す術もなく囚われてしまう。
そして、それに抗う理由は見当たらない。他ならぬ悪魔が、それを良しとしてくれているのだから。
甘えるだけで、時間が過ぎていく。怠惰を犯す背徳はまさに蜜の味で。至福の時間は、穏やかに過ぎていった。
「……ぁ……あの……」
飽きる事のない怠惰。二度寝、三度寝まで繰り返し、思うがままに睡眠欲を満たして。
もはや眠気などなくなってしまっても、悪魔の抱擁から逃れる気はしない。僕は逃れたくなかった。離れたくなかった。
悪魔との取引は、あの夢のように幸福な一夜をもって完了してしまった。その事実に気づいてしまっていた。
僕がここにいる理由は無い。悪魔に抱いてもらえる理由は、もうないのだ。一度離れてしまえば、それで終わりかもしれない。
一夜の服従。たった一夜を終えてしまった僕は、どうすればいいのだろうか。せめて、あと一夜だけでも……
いつしか僕は、縋るように悪魔へと身を擦り寄せ、ねだるように声をあげていた。
「くふふ、どうしたというのだ……?そんなに可愛い声をあげて……望みがあるなら言ってみるがよい」
「あ……あの……その……」
一夜の服従。それは、少し前の僕にとっては温情に他ならなかった。しかし、今となっては別だ。たった一夜で終わってしまうならばいっそ、僕の全てを要求して欲しかった。
人智を越えた快楽。心を犯す心地良さ。僕は、悪魔に抱かれる悦びを知ってしまった。
他の何にも代え難い、悪魔のもたらす幸福。僕の全てを対価に捧げても、釣り合いは取れない。本来、人間の味わえる幸福ではないのだ。
それでも僕は、どうにかして、悪魔との繋がりを保っていたかった。
「もし、よろしければ……もっと、お礼が……したいのです……一夜だけ、ではなく……」
「くふふ……礼をしたい、だと……?嘘ではないようだが……」
あさましく悪魔の寵愛を求めることは、僕には出来なかった。羞恥が邪魔をした。縋り付くような真似をしては迷惑だろうし、悪魔の気に障ってしまうかも知れない。
そんな、遠慮がちな事を考えてしまうのは、きっと僕に染み付いた性でもあるのだろう。
「それだけが望みではあるまい……?この私に抱かれたいのだろう……?犯されたいのだろう……?そう、昨夜のように……」
「ぁ……ぅ……はぃ……あと一度だけで、構いませんから……」
しかし……悪魔を前にしては、僕の遠慮などは全くの無意味だった。
心に染み込む、悪魔の囁き。その甘い声は、僕の欲望を掻き立てる。抑え込むことなど、出来ないほどに。
「くふ、ふふふ…………一夜だけでよいのか?本当にそれで満足なのかぁ……?
ほぅら、欲望を曝け出せ……」
「っ…………た、たくさん……して欲しい、です」
悪魔に唆され、欲望は際限なく膨れ上がっていく。己の物とは思えない程の、人の身には余る深い欲望。しかし、それは確かに、僕の内側から溢れるモノで。
「沢山……?それではいつか、終わってしまうなぁ……?」
「ぁ……ぅ……ず、ずっと……ずっと一緒が……いい、です……
ずっと、永遠に、一緒で……気持ちよくして、幸せにして欲しいです……っ」
悪魔の言葉が、僕の心の枷を、タガを、外していく。僕の心を、丸裸にしていく。
いつか終わってしまう、それではダメだった。
終わりのない快楽、幸福。そんな物がこの世にあるかどうか、悪魔が実際にそれを叶えてくれるかどうかなんて事は、もはや考えの外。
「くふ、ふふふふふっ……そうだろう……?終わりなど要らぬ……
貴様の望む物……それは"永遠の快楽"だ……」
「永遠の……快楽……」
永遠の快楽。それはまさに、僕の望む物だった。悪魔の言葉は、破滅的な妖しさを孕みながらも、諭すように優しくて。僕の中に渦巻く欲望を、自覚させられてしまっていた。
心の中を、夢のように甘美な響きが埋め尽くしていく。悦楽と至福に満ちた日々を夢想してしまう。
「そうだ……この私による、決して終わる事のない、永遠の快楽……それが欲しいのだろう……?」
「は、はぃ……ほしいですっ……」
欲しい。永遠の快楽が欲しい。もはや僕は、その事で頭がいっぱいだった。欲望をさらけ出し、悪魔にぎゅっと縋り付いて、甘えた声をあげずにはいられなかった。
「くふ、ふふふ……ならば……契約を交わそうではないか……?魔術によって縛られた、決して破る事のできない契約を……」
「ぁ、あぁっ……はぃっ、契約します……しますからっ……」
「んふふ……そう焦らずとも、私は逃げたりせぬ……まったく、愛い奴め……」
「ぁ……うん……」
「くふふ……はやる気持ちは分かるが……大事な契約だ。話はしっかりと聞くのだぞ……?」
悪魔の囁く契約。その対価が何であるかは重要ではなかった。
悪魔が僕に、永遠の快楽を与えてくれる。夢想した光景が現実になるのであれば、それこそ、僕の全てと引き換えであろうとも、惜しくはない。
それほどまでに、悪魔の囁く永遠の快楽は魅力的だった。僕の思い描く事のできる、理想そのもの。いいや、きっと、理想さえも越えてしまうのだろう。
そんなものが手に入ると言われたら……戸惑いながらも、後も先もなく飛びつく他なく。
そんな僕の焦りを、悪魔は優しく受け止め、安心させてくれる。
「貴様の支払う対価は、永遠の服従……その身も、魂までも……貴様の全てを私に捧げると誓うのだ……
さすれば、貴様に永遠の快楽を約束してやろう……」
僕の全てを求める囁き。とびきり甘く、あまりにも魅力的な提案。
「捧げますっ……全て、捧げますっ……だからっ……」
永遠の服従。全てを捧げる誓い。
ただ、僕にとって重要なのは……悪魔の示す対価が、僕に支払える物であるか否か、だった。
"永遠の快楽"に手が届くと分かった瞬間、僕の心は歓喜に染まっていた。嬉々として、悪魔に全てを差し出そうとしていた。
「くふふ、ふふふっ……そうか、私に全てを捧げるか……私のモノになるか……
だが……これはただの"対価"ではない……
貴様はもう、悦びを知っている……そうだろう?」
「ぁ……」
悪魔に囁かれ、導かれ、僕はようやく対価の意味を理解する。
心身に刻み込まれた、昨夜の快楽、幸福。僕は知っている。悪魔に服従し、身を捧げるその悦びを。全てを捧げる価値のある、至福の心地よさを。
「貴様は、その精の一滴から毛の一本まで、私の所有物になるのだ……
くふふ……肌身離さず傍に置いてやろうではないか……勿論、離れる事など許さぬ……」
恍惚に浸る僕に追い打ちをかけるように、悪魔はねっとりと囁き続けてくれる。
この"対価"が、悪魔の支配がもたらしてくれる幸福を、否が応にも夢想させてくれる。
途絶える事のない温もり。孤独からの解放。あまりにも愛しい不自由。
「そして、この私が、欲望のままに貴様を貪り尽くしてやろう……どこまでも堕として、愛で尽くしてやろう……」
未曾有の快楽。貪られる悦び。注がれる欲望こそが、僕の価値を認めてくれている証。
悪魔の所有物となってしまえば最後……拒む事は許されない。貪欲な寵愛を受け入れるしかない。幸福へと堕とされてしまう他ない。それは、選択肢の剥奪であるにも関わらず……甘美さと安堵を覚えてしまうものだった。
「くふ、ふふふっ……この私のモノになりたいのだろう……?この私に支配されたいのだろう……?」
「ぁぁ……っ」
甘い抱擁から一転、悪魔は僕に覆い被さってきて。とびきり邪悪な笑みの下に、組み敷かれてしまう。
悪魔が上で、僕が下。ぞくぞくと、背筋が震える。媚びた声が漏れる。身体中が、甘く疼く。
疑いようはなく、言い逃れることも出来ない。己の欲望を突きつけられてしまった。
悪魔のモノになりたい。悪魔に支配して欲しい。貪り尽くして、愛で尽くして欲しい。堕落の淵へと引きずりこんで欲しい。
「この私が貴様に与えてやろう……支配されるという特権を……❤︎」
支配されるという特権。そう、僕は、悪魔に"支配してもらえる"のだ。支配される悦びを享受することができるのだ。それは、まさに特権と言うべき代物で。
どこまでも高圧的で、独善的で、邪悪なはずのその言葉がもたらしてくれるのは……あまりにも倒錯的で、甘美な響き。僕は、すっかりと悪魔の囁きに酔いしれてしまっていた。
「さぁ……この私に永遠の服従を誓え……永遠の支配を望め……他の誰のためでもなく、貴様自身の幸福のために……❤︎
さすれば、この私が永遠の快楽を約束してやろう……❤︎」
「はぃ……あなたのモノになりますっ……あなたのモノにしてくださぃ……っ」
もはや、契約を躊躇う理由は無かった。対価さえもが、己の望みなのだから。この契約において僕はただ、望みを、願いを叶えてもらえる。
僕は、悪魔に全てを捧げ、委ね、支配してもらう事を心の底から望んでいた。僕はその対価までもを望み、契約をねだっていた。
自ら望む……最も確たる合意の上で、僕は悪魔と契約を交わそうとしていた。
「くふふ……契約成立、だな……❤︎」
僕を組み敷いていた悪魔の手は、いつしか頰に添えられていて。ねっとりと絡みつくように僕を捕まえ、その指先で、くい、と顔を上向かせてくれる。
そして、ゆっくりと迫ってくるのは、青を下地に朱の差した、幻想的で艶やかな、魅惑の唇。
それはどこか、新郎新婦の誓いのキスを思わせて。僕は、悦びに心を震わせながら、目を閉じ、静かに口づけをねだらずにはいられなかった。
「ん……ちゅ……んむっ……❤︎」
唇が、悪魔に奪われる。濃密に重ね合わされて、隙間なく塞がれてしまう。執念深くも情熱的なキス。そして、触れ合う唇から流れ込む熱が、これがただの口づけではない事を教えてくれる。
キスと共に、悪魔によって紡がれる魔術。交わした契約の言霊、その意味が、唇へと封じ込められ、甘い疼きが織り込まれていく。悪魔の魔力が注がれ、満ちていく。
僕は期待に心を躍らせ、契約の魔法を受け入れていた。唇同士が融け合ってしまうかのような心地良さに、身を委ねていた。
「んふ……❤︎」
ついに、合わさった唇が離れていく。名残惜しさとともに唇に残されたのは、狂おしいほどに甘美な熱。
そして悪魔は妖しく微笑みながら、契約の魔法を封じたその唇を、僕の喉元へと寄せてきて……
「ん……❤︎」
「ぁ──っ」
それはまるで、烙印のようなキスだった。
唇が触れた瞬間、魔法が弾け、爛れるような快楽が首に絡みつく。じくじくと、肌に焼きついていく。
鎖を象った禍々しい紋様。その形が刻み込まれて行くのを、はっきりと感じ取ることができて。
それは、身体に直に刻まれた、外す事のできない首輪。悪魔の所有物である証。支配と寵愛を約束してくれる、愛しい鎖。
「くふふ……さぁ、次は貴様の番だぞぉ……?」
「ぁ……ぅ……はぃ……」
口づけを終えた悪魔は、僕を抱き起こしてくれて。くすぐるように、僕の唇へ吐息を吹きかけてくる。そこには未だ、狂おしい程の甘い熱が渦巻いている。
次は、僕の番。悪魔が支配の証を刻み込んでくれたように、情欲に熱されたこの唇で、僕は服従を誓うのだ。きっと、そうして、契約の儀式は完了する。
「ほぅら……こちらだ……❤︎」
「ぁ……」
そして悪魔は、ベッドの上でしゃがみ、これ見よがしに、その美しい脚を開いていく。
曝け出される肉感的な内ももに、貪欲な秘所。情欲を煽る、あまりにも淫らな姿勢。
漆黒の翼は、僕を迎え入れてくれるかのように、大きく広げられていく。興奮に融かされていく思考。僕は誘われるがまま、悪魔の元へと跪いていた。
「んふふ……ココだ……❤︎ココに、この下に……子宮があるのだぞ……❤︎」
肌の上を滑る悪魔の指先が、僕の視線を誘導する。その指がたどり着く先は、艶かしい下腹部。
指先でとんとん、と指し示す、その奥にあるのは、子宮なのだと悪魔は言う。
「ココが……貴様が精を捧げ、子を孕ませる場所だ……❤︎」
「ぁ……ぁぁっ……」
悪魔の子宮。そこは、僕の精を啜り尽くす、貪欲と快楽の象徴。この先に待っているめくるめく従属の日々を、甘美な交わりを、否応なく夢想させてくれる。それは、ただ糧として貪られるのではなく、子を成すための愛の営みでもあるのだと、狂おしい程に期待させてくれる。
「さぁ、その唇で……今一度、この私に服従を誓うのだ……❤︎」
「はぃ……っ……」
そして悪魔は、僕にキスを促す。
それは、身も心も魂さえも、悪魔に捧げる事を誓うキス。全てを塗り替えるであろう、愛おしい瞬間。
ただ服従を誓うだけでなく、悦びと期待に満ちたこの胸の内を、熱烈な恭順の想いを示すべく。僕は、悪魔の指し示したその場所へ、ゆっくりと唇を寄せて……
「はぁん……❤︎」
「……ぁ……」
服従の口づけを捧げた瞬間、紫の淡い光が花開く。淫らな紋様が、悪魔の肌に描かれていく。契約紋が象るのは、悪魔の翼と子宮。隠されるべき秘部を強調するその画は、まさに退廃と背徳の極みでありつつ、僕の精を貪り尽くすその場所を、桁外れの欲望を、いやらしく魅せつけるものだった。そしてそれは勿論、僕が悪魔に服従を誓った証でもあって。
描かれていく契約の淫紋を前にして僕は、堕ちていく悦びを感じていた。これが完成した時、契約は確かなモノとなる。その時が、訪れようとしていた。
「くふぅっ……❤︎あぁっ……これで、契約は結ばれた……❤︎」
「───っ」
契約紋が描かれ終えた、その瞬間。僕は悪魔と深い結びつきを感じていた。僕という存在が、悪魔の手中に収められていく。決して逃れる事のできないように、逃れる気さえ起こせないように、甘く優しく抱擁され、居心地よく囚われてしまうかのよう。
僕は今まさに、悪魔に魂を売ったのだ。もう、戻れない。抗うことはできない。比類のない被支配感。全てを投げ出して、堕ちていく。背筋を駆け抜けるぞくぞくとした感覚が止まらない。目眩さえするほどに甘美な堕落感に、溺れていく。自由を剥奪され、囚われの身に堕ちたにも関わらず……心は逆に、枷を外され、解き放たれたような心地でもあった。人の世の理やしがらみに縛られる事もなく、僕はただ、悪魔の命に従えばいい。そして、永遠の快楽が、幸福が約束されているのだ。もはや、不安などは全て、融け堕ちていた。
「くふ、くふふふふ……❤︎さぁて……お前は誰のモノだ……?答えろ、フラクト……❤︎」
「ぁ……あぁっ……」
妖艶に囁かれる、最初の命令。それは、僕が悪魔のモノになった事を、改めて自覚させるためのもの。
そして悪魔は……僕を、"貴様"ではなく"お前"と呼んでくれる。初めて、僕を名前で呼んでくれる。それが、"所有物"という立場でありながら、支配されるという関係でありながら、まるで恋人のような特別さを感じさせてくれて。それが、その場に崩れ落ちてしまいそうなほど、悦ばしい。
「はぃっ……ディサディアさまのモノですっ……」
僕は……いつの間にか、悪魔の名前を知っていた。契約が、その名を僕の心に刻み込んでいた。
ディサディア。それが、僕を支配してくれる愛しい名前。
目一杯の悦びを込め、恥ずかしげもなく媚びきった声で、その名前を呼ばずにはいられなかった。僕を選んでくれた事に心からの感謝を捧げ、命じられるまでもなく、ディサディア様、と。
「くふふ、そうだ……お前はもう私のモノだ……❤︎
私がお前を欲せば、お前はそれに応える他ない……感じるだろう?この私の欲望を……❤︎」
「ぁ、ぁっ……こんなに……」
そして、僕は、契約の向こうに、ディサディア様の情欲をひしひしと感じ取ることが出来た。まるで、心を触れ合わせるかのように、鮮烈に、欲望の丈が伝わってくる。そこにあるのは、深く求められる至上の悦び。
それだけでなく、僕の身体は、心は、契約に従うかのように、彼女の情欲に呼応していた。人の身には余る程の熱情が、呼び起こされていく。昂りのあまり、それだけで暴発してしまいそう。堪らず、快楽をねだる甘えた声をあげてしまう。
「くふふ……愛い奴め……もはや何も、案ずることはない……たぁっぷりと可愛がってやるぞ……❤︎そう……心ゆくまで、たぁっぷりとな……❤︎」
ディサディア様は、跪いたままの僕を、甲斐甲斐しくベッドに横たえさせてくれる。まるで赤子にそうするかのように、頭を撫でてくれる。今までにも増して、壊れ物を扱うかのように、過保護なまでに柔らかな手つき。それが、堪らなく心地よい。
優しく紡がれるその言葉は、さらなる堕落へのいざない。背筋がざわめくほどに、愛おしげな響き。
爛れきった慈愛と庇護欲を露わにした彼女の眼差しは、背徳的なまでの母性と、苛烈な愛欲を同時に湛えていた。
その瞳の奥にあるのは、溺愛という言葉ではとても言い表す事のできない……想像を絶する程の、邪悪なまでに深い愛情。それこそが……彼女の本性だった。
「ぁ……ぁ……っ」
契約を交わしてしまえばこちらのものと、その本性を露わにする。それは、まさに悪魔の所業だというのに。そこにあるのは、想像も期待も越える程の、契約外の愛情だった。
決して嘘はついていない。契約を違えてもいない。しかし、騙し討ちのように注がれる愛情は、不意打ちだからこその甘美さで、溢れかえりそうなほどに心を満たしてくれる。幸せの絶頂へと、僕をいざなってくれる。
──あぁ……こんなに愛してくれるなんて、幸せにしてくれるなんて、話が違いますっ……
「くふ、ふふふ……❤︎」
心の底から悦び悶える僕を、ディサディア様は恍惚の表情で見守ってくれる。ら
彼女は、僕を騙してなお、幸福に導いてくれる。たとえ彼女に騙されたとしても、その先に待っているのは破滅ではなく、想像さえ出来ない幸福なのだ。
そんな、邪悪な愛情を知った今、彼女への信頼は、より強固なものとなっていた。騙される事への不安さえも……さらなる幸福の期待へと塗り替えられてしまったのだから。
「さぁ……私にその身も、心も、全てを委ねるのだ……❤︎」
「ぁぅ……はぃ……ディサディアさまぁ……❤︎」
そしてついに、ディサディア様は、僕に覆い被さってきて。僕の抵抗を封じながらも、まるで恋人のように、両手が握り締められていく。
尻尾は器用に僕のモノを捉え……ゆっくりと、その先端を在るべき場所へと導いていく。
深淵を思わせる黒と紅の眼に覗き込まれたなら、その美しさに魅入られ、目を逸らす事は出来ない。眼差しに込められた、狂おしい程の欲望と愛おしさ。触れる身体から、吐息から伝わるのは、一夜ではとても静まらない程の火照り。どれだけの間、貪り尽くされてしまうのか、想像さえつかない。
途方も無い欲望をひしひしと感じながらも、そこに不安はなかった。この先に約束されているのは、永遠の幸福なのだから。
僕は、心酔するがままに愛しい名を呼び……その愛に全てを捧げ、全てを委ね、どこまでも堕ちていくのだった。
「くふふ……今日はこれを着てやるとしよう……」
「あぁ……ありがとうございますっ……」
一糸纏わぬディサディア様がその手に握っているのは、純白のエプロン。レース生地が透けて見えるそれは、彼女に頼んで買ってもらった、僕のお気に入りの一つ。今となっては、彼女がそれを着て、朝食を作ってくれる事が恒例となっていた。僕の望んだ装いは、契約外の甘い寵愛の証。
その日その日で違うエプロンを身につけてくれるのだけれど、どれを選ぶかは、ディサディア様の気分次第。数多あるコレクションはどれも僕好みのデザインで、それを着た彼女の姿もまた、甲乙付けがたい魅力を持っている。だからこそ僕にはとても即断など出来ず……しかし、ディサディア様はすっぱりと決断を下してくれる。おかげで僕は、選択という悩みとは無縁でいられるのだ。
「ほぅら……しっかりと目に焼き付けるのだぞ……」
「はぃ、ディサディア様……」
「くふふ、どうだ……?」
「あぁっ、今日も素敵です……」
ゆっくりと見せつけながら、ディサディア様はエプロンを身につけていく。後ろ手にエプロンの紐を結ぶその仕草は手馴れていて、とても家庭的で、母性的。
白いレース越しに透けて見える身体の、青い肌色がくっきりと映えて、艶めかしい。そのデザインは彼女の豊満な肢体を引き立て、僕の情欲を煽り立てる。
邪悪な風貌の悪魔に、愛情たっぷりのエプロン姿。いつ見ても夢のような光景であり、そのシチュエーションのギャップは、破滅的な魅力を醸し出していた。しかし、エプロン姿そのものが似合っていないかといえば、むしろ、愛情と欲望の塊とも言える彼女に、これ以上なく似合っていた。
そして、如何にも新妻風といった装いを誇らしげな表情で纏い、魅せつけてくれるディサディア様が、あまりにも愛おしく、幸せでならない。
幾度となく見せてもらった裸エプロン姿だが、どれだけ眺めても見飽きる事はなく、僕はただ、うっとりと見惚れるのみだった。
「くふふ……」
上機嫌に揺れる尻尾、惜しげもなく曝け出された、安産型の瑞々しい桃尻。台所に向かうその後ろ姿を隠すのは、エプロンの紐、ただそれだけ。ディサディア様は朝食を作りながらも、いやらしくお尻を突き出してきて。
弾力に満ちながらも柔肉がたっぷりと詰まったそのお尻が、僕の視線を釘付けにする。ふとももとの境目がくっきりと分かれ、美しく引き締まっていながらも、彼女が誘うように腰をくねらせば……ぷるん、と尻肉が揺れてしまうのだ。均整の美が保たれる限界まで大きく実った、その堕落の果実は、まさに僕の理想そのもの。ディサディア様の身体はいまや、どこまでも僕好みで、僕にとっての絶対の美を体現していた。
「ふふ……愛い奴め……」
「ぁ……」
ディサディア様がこちらを振り向けば、たわわに実った果実が、その側面をエプロンから覗かせてくれる。白いフリルに彩られた横乳もまた、裸エプロンの醍醐味で。ぷっくりと膨らんだ乳輪がちらりと見え隠れして、僕の興奮をさらに煽り立てる。僕を見つめる彼女の眼差しは声色は、支配者でありながら保護者のそれだった。その眼差しが、僕を堕落へと導いてくれる。
彼女の肢体に見惚れ、心奪われる中、その優しい声に促されるがままに、僕はディサディア様へと欲情していた。その丈は、彼女へと筒抜けだった。
「んふふ……見惚れるだけでは物足りぬだろう……?さぁ……その欲望を、精を、私に捧げるのだ……❤︎」
ディサディア様は僕を誘い、欲望を掻き立てて……そして、甘く、艶やかな声で献精を命じてくれる。
ディサディア様の命令……それは、僕の欲望に対するこれ以上ない"赦し"でもあった。僕の欲望を受け容れるだけでなく、命ずるだけの価値を認めてくれる、深い愛情の発露なのだ。だからこそ、命令を受けた僕は、悦びだけでなく安堵を感じていた。 ディサディア様は、その命令を以って僕を肯定し、甘やかしてくれるのだ。
「あぁ……はぃ、ディサディアさまぁぁ……」
僕が自らディサディア様を求めても、彼女は嬉々として僕を受け入れてくれるだろう。それでも僕は、ディサディア様の命令を待ち望み、甘え尽くすようになってしまった。従属しているその実感が、僕に悦びと情欲と安堵をもたらしてくれる。
彼女に一言命じられるだけで、僕のモノはたちまち膨れ、すっかりとそそり勃ってしまって。ディサディア様に後ろから抱きつき、甘く命じられるがままに、蜜の滴る秘所へと肉棒を突き挿れずにはいられなかった。
「んっ……くふ、ふふっ……❤︎やはり、こうでなくてはな……❤︎」
「ぁ、ぁ、ぁぅ……ありがとう、ございますぅ……」
ディサディア様のナカは、最奥へと引きずりこもうと、貪欲に僕のモノを迎え入れてくれる。先端を包み込まれるだけで、あまりの快楽に腰砕けになってしまう。だというのに、肉棒を奥へと突き挿れずにはいられない。ディサディア様に精を捧げようと、身体が勝手に動いてしまう。
「はぁん……ほぅら、捕まえたぞぉ……❤︎」
「ぁ、ふぁ、ぁぅぅ……」
堕落を誘う悪魔の名器が、僕のモノを最奥まで呑み込んでくれる。
幾度となく僕の精を搾り取ってきたディサディア様の魔膣は、僕の弱点を隅々まで知り尽くしていて。最奥まで招かれてしまえば、何もかもが僕のモノとぴったりで、底無しの心地よさと抱擁感をもたらしてくれる。
そしてディサディア様は、その尻尾を僕の腰に絡め、離れられないように縛り付けてくれて。僕を、一番気持ち良い場所から逃してくれない。
「んふ……どれ、じっくりと可愛がってやろう……❤︎」
「はぁ、ぁぁぁ……」
甘い締め付けに、ゆったりとした、うねり、くねり。無数の肉襞が、肉棒を優しく撫で回してきて。ディサディア様の膣内は、徹底的なまでに僕を甘やかしてくれる。穏やかながらも底抜けに甘美な快楽に、どっぷりと浸されてしまう。ただ快楽に耽るだけでなく、この愛おしい朝のひと時を余すことなく愉しめるように、あえて、じっくりと僕のモノを可愛がってくれるのだ。
「ぁ、ぁ……きもちぃぃ……」
裸エプロンの、無防備な側面。露出した横乳に誘われるがまま、手を滑り込ませて、貪欲に実った母性の象徴を下から持ち上げる。掌にのしかかる、ずっしりと圧倒的な存在感。彼女の深い愛情と欲望が詰まっているかのよう。自ずと指先が沈み込んでいく、至福の柔らかさ。きゅっと力を込めれば、甘く優しい弾力を以って、僕の指を包み込んでくれるのだ。
魔性と母性に溢れたその感触は、僕を容易く虜にしてくれる。心を、どろどろに蕩けさせてくれる。胸に甘える指先が、半ば勝手に動いて止まらない。
「んっ……❤︎甘えん坊め……よいぞ、心ゆくまで溺れてしまえ……❤︎」
「はぃ、ディサディアさまぁ……」
ディサディア様の背に身を預けながら、さらさらの長髪に顔をうずめる。ふわりと香る、甘い匂い。愛おしさ、恋しさを呼び起こして僕を絡め取る、堕落の芳香。命じられるがまま、胸を高鳴らせ、愛しい人へと溺れていく。
「ふふ……今日はフレンチトーストだぞ……❤︎もちろん、ザラメをたぁっぷりかけて、カリカリに焼き上げてやるからな……❤︎」
「ぁぁ……そんなぁ……まちきれません……っ」
ディサディア様が作ってくれているのは、僕の大好物。魔界の食材をふんだんに使った、とろけるように甘い特製のフレンチトースト。
ディサディア様が僕に好物を振舞ってくれるのは、今日に限ったことではない。契約外ながらも、毎日毎日、愛情をたっぷりと込めて、僕の好物を、美味しい料理を作ってくれるのだ。
そしてそれは、ディサディア様による支配を、更に確固たる物にしていた。性欲だけでなく食欲までも、ディサディア様の掌の上。漂ってくる美味しそうな匂いに、否が応にもお腹は空いて、期待に胸を膨らませ、ねだるような声をあげずにはいられない。
「あぁ、愛い奴め……腕の振るい甲斐があるというものだ……❤︎」
「んぅ……はぁ、ぁぅぅ……」
すっかり甘えん坊に堕ちてしまった僕を、ディサディア様は嬉々として受け止め、たっぷりと可愛がってくれる。また、僕を甘やかしながらも、料理を疎かにすることはなく、逆に僕が甘えれば甘えるほど、料理にも身が入るといった様子。
甘える僕は決して邪魔にはならないと、むしろ、甘えるべきなのだと示してくれる。そこにあるのは、上位者としての余裕に裏打ちされた、絶対的なまでの包容力と母性。だからこそ僕は、いついかなる時でも、ディサディア様に心置きなく甘え、溺れることが出来るのだ。
「くふふ……そろそろ限界だろう、果ててしまえ……❤︎」
「ぁ、ぁぅ……ぁ、ぁ……」
甘やかされるがまま、愛でられるがまま、僕は容易く限界を迎えてしまって。ディサディア様が導いてくれるのは、とろけるような絶頂。精を漏らす、と形容するに相応しい、底抜けの恍惚感、緩みきった至福の快楽。促されるがまま、導かれるがままに捧げた精は、一滴たりとも余すことなく、ディサディア様の子宮へと吸い上げられていく。
「くふ、んふふっ……はぁんっ……❤︎やはり、朝一番に味わうのは、お前の精でなくてはな……❤︎
あぁっ、実に美味だ……❤︎子宮がとろけてしまいそうだ……❤︎」
ディサディア様の唇から紡がれるのは、破滅的なまでの幸福を秘めた、魔性の音色。決して乱れず、余裕を崩さず、そのカリスマを保ちながらも……計り知れない悦びを感じてくれているのだ。
愛しい人の悦びは、僕の悦び。ディサディア様は、甘やかされる悦びと同時に、尽くす悦びさえも僕に与えてくれる。
「くふふ、ふふふ……❤︎今日もたぁっぷりと愛し尽くしてやろう……❤︎」
「ぁ、ぁぁ……でぃさでぃあさまぁぁ……」
愛しい人が朝食を作ってくれる……それだけでも、何物にも代え難い幸福だというのに。ディサディア様の装いは、男の夢と言うべき裸エプロン。その後ろ姿に誘われるがまま、交歓の悦びに酔いしれ、甘やかされながらも尽くして……それはもはや、妄想、幻想の域というべき生活だというのに。そんな僕の欲望を、ディサディア様は余すことなく叶えてくれるのだ。
愛の支配がもたらしてくれるのは、あまりに濃密な、幸せ過ぎるひととき。慎ましさとは程遠い、まさに耽溺と堕落の極み。こうして、僕とディサディア様の一日は始まるのだった。
「ふふ……今日も自信作だぞ……❤︎」
「ぁ…………」
目の前に置かれるのは、焼きたての特製フレンチトースト。たっぷりとザラメをまぶし、カラメル状になるまで表面をこんがりと焼いた逸品。融け残った粗い結晶は、白でなく琥珀色。アルラウネの蜜から精製された花蜜糖だ。本能に訴えかけてくるような、花蜜糖の濃密な甘い香り。そこに、カラメル特有の芳ばしさが加わって……その魅惑の芳香は、僕の心を期待でいっぱいにしてくれる。
「うむ……上出来だな……」
一人分の食器に、二人前の料理。それが、我が家の食卓。
ディサディア様は魔界銀製のナイフを手に取り、優美な手つきで、熱々のフレンチトーストを一口大に切り分けてくれる。しっかりと卵液の染み込んだ、ふわふわの断面が露わになる。
「ディサディアさまぁ……」
一目見るだけで確信できる、フレンチトーストの美味しさ。それを目の当たりにした僕は、ディサディア様の名を呼び、『あーん』をねだらずにはいられない。一刻も早く食べさせてもらいたい、その一心だった。
「くふふ……今、冷ましてやるからな……ふぅーっ……ふぅーっ……❤︎」
しなやかな指先が、フレンチトーストの一切れをつまみ上げる。ぷるぷるの唇が、艶めかしい息を吹きかける。猫舌の僕のため、これ見よがしに、丹念に熱を冷ましてくれる。
「んふふ……あーん……❤︎」
「ぁーん……」
甘く優しく艶めいて、底無しの愛情を孕んだ、悪魔の誘い。促されるがままに口を開けば、甲斐甲斐しげに手料理を運び込んでくれる。
ディサディア様の作った料理を、ディサディア様に食べさせてもらう。それは、食事という行為までもが、ディサディア様の手中にあるという事で。甘美なざわめきが、ぞくぞくと背筋を這い回る。甘やかされた分だけ、支配される悦楽を感じてしまう。
「ぁむ……ん…………おいひぃ……しあわせぇ……」
カリカリに焼いた表面の、サクサクとした感触。そこに散りばめられた花蜜糖の粒を噛み砕けば、より一層のアクセントが心地いい。
パン生地にたっぷりと吸い込まれた卵液もまた、ハンプティエッグゼリーと特濃ホルスタウロスミルクから作った特別製。アルラウネの花蜜糖と合わさったその味わいは、舌がとろけてしまいそうな程に甘く、濃厚で。しかし、名残惜しさを覚えてしまうまでにふわふわでとろとろな、その柔らかい食感が、しつこさを、飽きを感じさせない。
愛情たっぷりのフレンチトーストは、まさに絶品。人間の感覚で語るならば、家庭料理としては、朝食としては、あまりにも美味に、贅沢に過ぎるものだった。そして、魔界の食材を用いたこの朝食は交わりの準備でもあって、その在り方は、まさに退廃的とさえ形容できる。
けれども僕にとっては、愛情を感じ、居場所を確かめ、安らぎを抱くことの出来る、愛おしく幸福な味だった。ディサディア様の与えてくれるこの味こそが、まさに家庭の味なのだ。
「んふふ……そうか、そうか……❤︎
ぁむ……うむ、今日も確かに美味だな……ほぅら、あーん……❤︎」
「ぁーん……ぁむ……」
「くふふ……❤︎」
舌鼓を打つ僕を、ディサディア様は慈愛に満ちた眼差しで見守ってくれる。そして、僕が次を欲したその時を見逃さず、次の一切れを差し出してくれる。それにぱくりと食いついた時の、彼女の嬉しそうな、満足気な表情が、堪らなく僕を魅了してくれる。だからこそ僕は、ディサディア様に甘えずにはいられない。今まで幾度と無く繰り返されてきた甘美なやり取りに、自立心は根こそぎ奪われ尽くされてしまっていた。
「どれ……そろそろ飲み物が欲しいだろう……んむ…………んっ……❤︎」
「んっ……ん、んくっ……」
大きなコップを満たしているのは、堕落の果実と、とろけの野菜のミックスジュース。ディサディア様はそれを口に含み、僕の唇をそっと奪う。その柔らかさを堪能しつつ、舌伝いに流し込まれるジュースを飲み下す。ほのかな甘さが、すっきりと僕の喉を潤してくれる。
「んっ……ちゅ……れるぅ、んっ…………❤︎」
「んっ……ふぅっ……んんっ、ん、んくっ……」
幾度も繰り返される、甘い口移し。その度に、唇が触れ合い、舌が絡み合う。貪るのではなく優しく甘やかしてくれるような、ゆったりとしたキス。
ジュースに混じるディサディア様の味も、また甘美。互いを味わいながら、一口ずつ、ゆっくりと喉を潤していく。そこにあるのは、愛しい人に染め上げられていく、陶酔めいた悦楽。
「んっ……んふふ…………あーん……❤︎くふふ……お腹いっぱい食べて、たぁっぷりと精をつけるのだぞ……❤︎」
「ふぁ……ぁぅ……ぁーん……」
喉を潤し終えれば、離れた唇に名残惜しさを感じる間も無く、次の一切れが運ばれてきて。口づけに蕩かされた舌で味わえば、もはや夢見心地だった。
すっかり出来上がってしまった僕に、ディサディア様は舌なめずりを魅せつけてくれる。ディサディア様にとっての本当の朝食は、他ならぬ僕自身。
料理中のつまみ食いでは飽き足らず、今日も朝からディサディア様に食べられてしまうのだと、改めて意識させてくれる。手料理に込められた愛情は、保護者としてのモノでありながら、捕食者めいてもいて。魔界の食材の効能はまさに、僕を美味しく食べるための下ごしらえ。
交わりへの期待を胸に味わうのは、ディサディア様の愛と欲。その甘美さに溺れながら、朝のひと時は過ぎていく。
「んふふ……どれ、身体を洗ってやろうではないか……」
朝食の後に連れ込まれたのは、紅い魔力にぼんやりと照らされたお風呂場。魔法の品によって、交わりのために様々な趣向が凝らされたそこは、もはや第二の寝室であり……ディサディア様にとっては、第二の食卓とも言うべき場所だった。
床は軟質の素材で、身を横たえても痛くならないどころか、むしろ上質な寝心地を約束してくれる。目の前の壁一面は、曇ることのない鏡張り。浴槽には常に丁度いい湯加減のお湯が張られ、清潔な状態に保たれている。
石鹸やシャンプーも、魔界の素材に由来したものが何十種類も取り揃えてあり、連れ込み宿も顔負けの充実ぶりだ。
「ほぅら、そこに座れ……❤︎」
「はぃ……」
そう言ってディサディア様が選び取った石鹸は、堕落の果実の油脂から作られ、ハニービーの蜂蜜が練りこまれた逸品。彼女はそれを丹念に泡立て、その泡で肢体を覆っていく。
朝食として魔界の食材を摂るだけでは飽き足らず、身体の外側からもその効能を受けようという、貪欲で贅沢な選択。もちろん、彼女だけでなく、僕自身も……身体の内外から媚薬漬けにされてしまうのだ。期待に胸が高鳴り、身体が疼きだす。
「くふふ…………❤︎」
甘い芳香と白い泡を身に纏ったディサディア様。背後から、抱きすくめられてしまう。絡みつくように回される腕、翼。甘い抱擁は、獲物を逃さぬ構えに他ならない。
そして、背中に押し当てられるのは、決して抗うことのできない魅惑の感触だった。
「まずは背中から……んっ………❤︎」
「ぁぅ……ひぁ……ぁ……」
スポンジ代わりに擦り付けられる、ディサディア様の豊乳。隙間無く密着する柔らかさ、吸い付くような肌触り、それが、滑らかに往復していく。むにゅむにゅで、にゅるにゅるで、堪えがたく心地良い。そして、膨れ立ったその先端は、つつっ……と背筋を責め立ててきて。ぞわぞわと甘いざわめきに、思わず声が漏れる。朝食の効果が既に現れ始めていて、身体は火照り、敏感さを増していた。
「んふふ……そうだ、力を抜け……❤︎」
「はぁぁ……ぁぅ……」
胸板からお尻までを洗ってくれる指先は、まさぐるようないやらしい手つき。しかし同時に、まるで赤子の肌に対するような、優しい手つきでもあった。甘美な愛撫が、僕の力を奪い去っていく。鏡越しに見守られながら、僕は情けなく脱力し、ディサディア様に身体を預けずにはいられなかった。
「私の身体、とくと味わうがよい……❤︎それ、次は右腕だぞ……❤︎」
「ぁ、ぁ……おっぱい……きもちいぃ……」
ディサディア様は僕を優しく抱きとめ、柔らかな床に寝かせてくれて。僕の右腕を取り……その胸の谷間へと挟み込んでくれる。そしてそのまま腕ごと抱きかかえるようにして、指先から根本までを、泡まみれのおっぱいで扱き上げてくれる。長いストロークが繰り返されるたび、ディサディア様の底無しの母性が刷り込まれていくかのよう。
「くふふ……次は左腕……❤︎」
「ぁぅ……だめになっちゃぅ……」
「よいぞ……だめになってしまえ……❤︎」
左腕も同様に、むにゅりと谷間に抱き込まれ、根元から指先まで。緩急をつけて、愛で尽くすように。魔性の乳圧に、なけなしの理性は搾り取られていってしまう。堕落を促す声に、抗いようなどなかった。
「んふふ……右脚は、こうしてくれよう……❤︎」
両腕を洗い終えたディサディア様は、翼を広げてふわりと浮かび上がる。そして、僕の右脚を抱え上げると、むちむちの太ももで挟み込んでくれて。翼をはためかせ、脚を絡めたまま、上へ、下へ。その魅惑の太ももで、僕の脚を扱き上げてくれる。
それはさながら、僕の脚を肉棒に見立てた素股のよう。しかし、肉棒よりも大きなモノを挟んでもらっている分、その退廃的な肉付きがもたらす、抱擁にも似た至福の圧力を、余すことなく堪能することができて、腰砕けになってしまうほどに心地良い。
「んっ……ぁん……くふふ……この脚も、私のものだ……❤︎」
石鹸の滑りに混じる、絡みつくようなぬめり。擦りつけられる淫唇から、溢れ出る愛の蜜。それを気にも留めず、ディサディア様は腰を動かす。身体を洗ってもらいながらも、所有物である印をつけられてしまっているのだ。それもまた、愛されている実感をもたらしてくれる。
「……んふふ……もうじき食べ頃だな……❤︎最高の瞬間を約束してやろう……❤︎」
「ぁ、ぁぁっ……」
僕の左脚を泡で弄びながら、ディサディア様は、僕のモノへと目を落とす。ねっとりと絡みつく、熱い視線。契約紋を通じて伝わる欲望が、僕のモノを更に昂らせる。
人を堕落させるためにある、悪魔の肢体。それを丹念に味わわされてしまえば、たとえ直接触れられずとも、暴発寸前だった。
今すぐ食べられてしまいたい。けれどもそれ以上に、もっと、もっと、気持ちよくなる準備をしてもらいたい。そして、ディサディア様に美味しく食べてもらいたい。その果てにある至福の時を、ただただ期待せずにはいられなかった。
「あぁ……そんなに物欲しげなカオをして……❤︎ほんとうに愛い奴め……もうすぐ、もうすぐだからなぁ……❤︎」
「ひぅ、ぁ……ぁはぁ……」
洗い残した場所は、もはや股の間だけ。両脚を蛙のように開かされ、あられもなく肉棒を晒け出す格好にされてしまっていた。
そんな情けない姿を晒してもなお、ディサディア様は慈愛に爛れた眼差しで、僕を見下ろしてくれる。
未だに僕を絶頂へと導いてくれないのは、ただただ、僕を気持ちよくしようと世話を焼いて、入念に準備をしてくれているだけに他ならない。焦らしと呼ぶには、あまりにも甲斐甲斐しく、愛おしく。しかし焦らされた時のように、性感は高められてしまっていた。
「んふ……んふふ……こんなに、たぁっぷり精を溜め込んで……いい子だ……❤︎」
「はぁ、ぁ、ぁ…………」
そして、泡をたっぷりと纏った両手が、僕の股間へと伸びてきて……まずは、玉袋を優しく包み込んでくれる。
何種類もの魔界の食材を一緒に摂った、その造精作用は凄まじく……果てずとも、今にも精がどろりと溢れ出てしまいそうな程。そんな僕の玉袋を揉み解して、可愛がるように洗ってくれるのだ。ぱんぱんに膨れた表面を撫で回されるのは、法悦を極めた心地良さで……全身の力を根こそぎ抜かれて、もはや完全にされるがまま。
「さ……仕上げにしてやろう……❤︎」
「ぁ……ぁぁ……でぃさでぃあ、さまぁ……」
すべすべの掌が、僕のモノを包み込む。慈しむように丁寧に、汚れを拭ってくれる。そして、泡に混じった媚薬を、じっくりねっとりと擦り込んでくれる。
つのりつのった快楽で、もはや僕のモノは触れただけで果ててしまいそう。まさに絶頂寸前。だというのに、僕の全てを知り尽くしたその指先は、僕を果てさせる事なく、快楽の先へ先へと、甘く優しく導いてくれるのだ。本来ならば果ててしまうはずなのに、我慢をしているわけでもないのに、気持ち良さだけがじくじくと蓄積して、際限なく性感を高められてしまう。それは、寸止めと呼ぶにはあまりに甘美な状態。絶頂の瞬間で留められてしまうような、ディサディア様の妙技だった。
「ほぅら……隅々まで洗ってやるぞ……❤︎」
「ぁひ、ぁぁ……」
胸にこみ上げるのは、この先に約束された絶頂への、純粋な期待。ディサディア様は、僕に切ない想いなどさせてくれない。僕をどこまでも気持ちよくして、どこまでも幸せにしてくれる。身にも心にも魂にも刻み込まれた、絶対的な信頼。そこに切なさはなく、むしろ安堵さえ感じさせてくれる。これもまた、溺愛と過保護の一つの形なのだ。
僕は、さながらご馳走が運ばれてくるのを待つ子供のように、絶頂の時を、ディサディア様に食べてもらえる時を心待ちにしていた。
「んふふ……さて、泡を流して……よしよし……綺麗になったな……❤︎」
丹念な洗浄を終えると、優しく抱き起こして、そっとぬるま湯をかけて、身体中の泡を洗い流してくれる。
カリ首から裏筋の隙間まで、ぴかぴかになるまで磨かれてしまった僕のモノを、ディサディア様はうっとりと眺めてくれる。そして彼女もまた、その身に纏った泡を脱ぎ落とし、一糸纏わぬ裸体を晒け出してくれる。
「あぁ……すっかり出来上がって……❤︎実に美味しそうだなぁ、お前は……❤︎」
「ぁぅ……」
そして、僕の身体はもはや、完全に"出来上がって"しまっていた。くったりと弛緩しきった身体は、全くの無防備状態。朝食の効能は身体中に回りきっていて、全身が火照り蕩けてしまいそうな程。特製石鹸の効果もあいまって、身体の内側からも外側からも媚薬漬け。理不尽なまでに高められた精力は、今にも精を漏らしてしまいそうな程。そして今や、僕はディサディア様の手によって、絶頂の境界線上に導かれてしまっていて……もはや、感度は比類なきまでに高められてしまっていた。こうなってしまえば最後、僕に許されているのは、ディサディア様の与えてくれる快楽に溺れることだけ。全てがディサディア様の手の内で……めくるめく服従は、目眩がするほどに甘美。
美味しそう、と褒められてしまえば、それだけで僕は、さらなる恍惚へと誘われてしまう。ディサディア様に美味しく食べてもらうこともまた、僕の望みなのだから。
「くふ、んふふふ……❤︎ほぅら……お前のだぁいすきなおっぱいだぞ……❤︎よしよし、おっぱいで食べてほしいのだな……甘えん坊め……❤︎」
ディサディア様は、両手でその魅惑の果実を弄びながら、僕のモノへと近づけてくる。水の滴る洗いたての青肌はいつにも増して艶やかで、情欲でほんのりと朱に染まっていた。
とろけの野菜によって増幅された、堕落の果実の効能。それは、肌からの精吸収の劇的な促進。身体の内外からその効能を得た、今のディサディア様の肌は、僕の精を一滴たりとも無駄にせず、味わい尽くしてくれるだろう。今のディサディア様の胸は母性の象徴であるだけでなく……僕を貪り尽くしてくれるもう一つの性器であると言っても過言ではなかった。
ディサディア様のおっぱいに食べられてしまいたい。精を捧げて、ディサディア様の糧にしてもらいたい。そんな僕の欲望を、彼女は当然のように見透かしてくれる。期待は、最高潮まで高まっていた。
「さぁ……食べてやろうではないか……❤︎」
「ぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁ────……」
そしてついに……ディサディア様は、そのたわわに実った欲望の果実を、一息に僕の腰へと降ろしてきて。まるで、僕のモノを一口で頬張るかのような、大胆な挿入。人並みより小さな僕のモノは、根元から先端まで丸ごと、瞬く間に至福の柔肉に包まれて、埋もれてしまって。挿入の最中に味わわされてしまったのは、洗いたての豊乳の、生の肌触り。しっとりと吸い付いて離れず、優しく迎え入れてくれる。甘美ながらも執念深い乳圧が、谷間に僕のモノを捕まえて離さない。
それはまさに、ディサディア様のおっぱいにぱっくりと食べられてしまったかのよう。
至福の感触に……僕はついに、果ての果てへと導かれてしまった。溜まりに溜まった快楽が、堰を切ったように溢れ出す。
「くふぅぅっ…………❤︎」
「はぁぁぁ…………」
全身が弛緩しきった中、肉棒だけが、まるで心臓のように脈動して、止まらない。どぷんっ……どぷんっ……と、穏やかなリズムながらも、その射精感はおびただしく、底抜けに甘美。身体が快楽に屈服して、精を捧げる事だけに、気持ちよくなる事だけに専念させられてしまう。
「ほぅら、おっぱいに、たぁっぷり出せ……❤︎一滴残らず精を捧げるのだ……❤︎」
吐精の脈動に合わせ、たぷんっ、たぷんっ、と寄せ上げられる魅惑の果実。むにぃ……と高まる乳圧が甲斐甲斐しく射精を促してくれて、まさに至れり尽くせりの心地良さ。そして、谷間に僕のモノを捕らえたまま、その母性の象徴を、むにゅむにゅと擦り合わせてくれる。
ディサディア様のおっぱいに、ぎゅっとされて、なでなでされて。その胸に詰まった母性をたっぷりと味わわされながら、とびきり甘い声で乳内射精を命じられて。ディサディア様はその契約の効力を、支配を以って、さらなる絶頂の深みへと僕を導いてくれる。
「よしよし……❤︎んふふ……くふふ、んぅっ……❤︎はぁん……まるでゼリーのようだ……実に美味だぞぉ……❤︎あぁっ……おっぱいがとろけてしまいそうだ……❤︎」
「ぁぅぅ…………」
そしてディサディア様はその胸の狭間で、しっかりと僕の精を受け止めてくれて。その上で僕の精を味わい、喜悦に満ちた姿を魅せてくれる。吐精の脈動のたびに、ディサディア様もまた、身体を震わせて。背を反らすように目一杯に広げた翼は、絶え間ない絶頂の証。しかし、快楽の奔流の中にあっても、支配者としての、保護者としての振る舞いは揺るがない。しっかりと僕のモノを愛で尽くしながら、恍惚の嬌声を以って、淫靡に僕の射精を労い、褒めてくれるのだ。
そこにあるのは、ただ胸で果てる快楽だけでなく、膣内射精に匹敵する手応え。ディサディア様と交わっているのだという実感、そして性交の悦びだった。
「んふふ……そうだ……その調子だ……❤︎ほぅら……どぷんっ……どぷんっ……❤︎思う存分、お漏らししてしまえ……❤︎」
絶頂でありながらも、登りつめるのではなく、深みへと堕ちていく快楽。
身も心も緩みきって甘えきった、至福の吐精。母性に包まれるがままに果て続け、精を漏らし続け、ただひたすらに堕ちていく。どれだけ精を放とうとも、その勢いは衰えず、永遠さえ想起させてくれる。永遠を求めてしまう程に、心地良い。
「くふ、んふふっ……❤︎あぁっ……まるで赤子だな……愛い奴め……❤︎ほぅら……もっと、もっと、可愛くなってしまえ……❤︎」
「ぁぁぁ…………」
だらしなく、情けなく快楽に溺れ、一際ダメになってしまった僕を、ディサディア様は優しく肯定してくれる。惜しみなく注がれる、無償で有償の愛情。欲望に裏打ちされた母性が、僕を安らぎに浸してくれる。
「はぁん……っ……あぁっ……おっぱいから溢れてきてしまったなぁ……❤︎こんなに、たぁっぷり……❤︎
んふ、ふふふ……❤︎もっとだ……❤︎もーっと気持ちよくなってしまえ……❤︎この私が見ていてやろう……❤︎」
とめどない吐精。肉棒を呑み込んだ谷間から、白濁が湧き出すように溢れ出ていく。愛しい人の、愛しい場所を穢す背徳。それを受けたディサディア様の眼差しは、より一層の悦びと慈愛に満ちていて。底無しの母性に包まれた背徳感は僕を決して苛まず、ディサディア様の情愛を、より深く感じさせてくれる。
「ほぅら……お前の精は、一滴たりとも無駄にはせぬ……❤︎全身で味わってやろう……❤︎」
ディサディア様は、溢れた白濁を尻尾ですくい取り、これ見よがしに、その肢体へと精を塗り込み、擦り込み、馴染ませていく。その青く瑞々しい肌を、黒く艶やかな翼を自ら汚し、恍惚に蕩けていく。僕の精を、一滴残らず味わい尽くしてくれる。
その身を白濁に染めながらも微笑む姿は、あまりにも淫靡で……そこあるのは、比類ない肯定感。
「くふ、んふふっ……もはや声も出ぬか……❤︎うん、うん……❤︎そうだ……そのカオだ……❤︎
お前はただ、きもちよくなって、しあわせになっていればよいのだぞ……❤︎ほぅら……どぷんっ……どぷんっ……❤︎」
己がモノをおっぱいに抱かれ、包まれ、愛で尽くされて。惜しみなく注がれる甘い母性が骨の髄まで染み込んで、僕を支配してくれる。
愛しい人に求められるがまま、命じられるがまま、赦されるがまま。それは、僕の欲望のままでもあった。
果て続けてしまうほどに昂りながらも、うたた寝してしまいそうな程に安らかな心地。そして、身も心もとろとろに蕩けてしまう、甘い快楽。僕は、赤子よりも無防備で無力な存在へと堕とされてしまっていた。そして、ディサディア様は、そんな僕を愛でて、愛でて、愛で尽くしてくれて……僕はただただ、幸福を享受するのだった。
「くふぅ……んぅっ……❤︎よしよし……たぁっぷり出したなぁ……❤︎あぁっ……おっぱいが孕んでしまいそうだ……❤︎」
「ぁぅ…………」
「くふふ……よぉく頑張ったな……褒めてやろう……❤︎」
長い、長い射精がついに終わりを迎える。最後の一滴までもを逃さぬように、貪欲な抱擁。愛しのおっぱいに甘く優しく搾り出されて、果ての果てまで、母性たっぷりの快楽漬け。最後の一滴を搾り取ってもなお、ディサディア様は愛おしげに僕のモノを抱き込んで、離してくれないまま。赤子を抱くように、優しく、丁寧に、慈しむように。聖母のような乳圧の中で味わう射精の余韻は、一際、恍惚と充足に満ちていた。
「れろぉ……ちゅぷっ……はぁん……やはり、格別だな……❤︎」
そして、ディサディア様は、全身に浴びた精を一滴たりとも無駄にしないように、巧みに尻尾を蠢かせ続けていた。こぼれてしまわないように、大切に精をすくいとって、口元へ。白く覆われた尻尾を、これ見よがしに咥え込み、ざくろのように紅くぬらついた舌先を這わせて、どんなものよりも美味しそうに、こくりと飲み干していく。
また、粘ついた音を立てながら翼同士を擦り合わせれば、その狭間にあった精液は、まるで吸い込まれるように消えていき、そこには艶を増した黒の皮膜が。
青い肌にもまた、僕の精が擦り込まれては馴染んでいく。
やがて、僕の捧げた膨大な量の精液は、ディサディア様の全身を以って美味しく平らげられていって……彼女は幾度となく、甘く満足気な吐息を漏らしてくれるのだった。
「んふ……お前のモノも……ほぅら、おっぱいでキレイにしてやろう……❤︎好きだろう……?」
「ぁ、ぁ……すきぃ……」
「んふふ、好きか……❤︎そうかそうか……❤︎もーっと、もーっと、好きになったかぁ……?」
「はぃぃ……すき……」
「くふ、くふふふ……愛い奴めぇ……❤︎」
仕上げは、堕落の果実の効能を活かしたお掃除パイズリ。精液で汚れた僕のモノをその胸で拭い取るように、甲斐甲斐しげに弄んでくれる。大量射精直後の肉棒を労わるような、ゆったりとした快楽。最後の後始末まで、徹底的に母性で包みこまれて、世話を焼かれて、まさに至福。毎日のようにこうやって愛でてもらっているのに、決して飽きる事はなかった。
「ほぅら……キレイになった……❤︎」
「ぁ……」
仕上げを終え、名残惜しくも僕のモノは解放される。僕のモノを汚していたはずの精液は全部、ディサディア様のおっぱいに吸いこまれてしまっていた。
その光景を目の当たりにして、ディサディアのおっぱいに精を注いでいたのだと、おっぱいに食べられて、おっぱいに直接糧を捧げていたのだと、改めて実感させられてしまう。
「くふふ……❤︎たっぷり堪能したことだ、そろそろ身を清め直すか……
少々名残惜しいが……このままではお前を抱いてやれぬし、な……❤︎」
そしてディサディア様は、 その身に再び白い泡を纏い、白濁を洗い流していく。名残惜しげでありながらも、次なる愉悦へと心を躍らせる、そんな表情。全身で精を味わってなお、ディサディア様は求める事をやめない。
契約紋が僕のモノに伝えてくれるのは、ディサディア様の子宮の、狂おしいまでの疼きの丈。あれだけの精を捧げてなお、ディサディア様にとっては前菜のようなものだった。ひとたび火がついてしまえば……その子宮を精で満たすまで、決して満足しないのだ。
「これでよし、と……」
穢れを綺麗さっぱりと洗い流したその下には、水を弾く玉の肌。糧を得たその青肌は、精を啜ったその果実は、いつもより艶かしく。まるで熟すように朱が差して。捧げた欲望を糧にして、より美しく、より魅力的に、より淫らに。その肢体は瑞々しく、溢れんばかりの生気に満ちていた。
その姿もまた、僕にとっては褒賞に等しく……奉仕の悦びと達成感をもたらしてくれる。
「んふふ……くったりとして……仕方のない奴め……❤︎」
「ぁう……」
ディサディア様は、すっかり快楽に屈服してしまった僕を、すっと抱き上げて、湯船へと連れて行ってくれる。まるで赤子にそうするかのように、優しく、柔らかく……無力な僕を慈しんでくれる。
「どれ……熱くはないな……?」
「はぃ…………ぴったりです……」
は
そして、ディサディア様に手を取られるがまま、ゆっくりと、湯船に指先を浸す。そこには、ゆったりと浸かっていられそうな、心地良い温度のぬるま湯が張られていた。
「ならば良い……んっ……❤︎」
「はぁぁ……」
抱かれるがまま二人一緒に、湯船へと身体を沈めていく。ぬるま湯が、さらなる弛緩を促す。
特注のバスタブはとても広く、ディサディア様が翼を広げてゆったりとくつろぐ事が出来る程。もはや、浴槽というよりは小さなプールで、至れり尽くせり。
「くふぅ……❤︎お前の精をたぁっぷりと啜ったこの肌の……艶、張り、肌触り……とくと確かめてみるがよい……❤︎」
悠然と湯船に浸かりながら、ディサディア様は両腕を広げ、僕を迎え入れてくれる。
そして、その両腕の間では…青い果実が、たわわなおっぱいが、湯船に浮かんでいた。
「ぁ……はぃ……」
大きなおっぱいは、水に浮く。ディサディア様とお風呂に入るたびに僕は、その事実を目の当たりにしてきた。しかしそれでも、その光景は僕を完膚なきまでに魅了してくれる。
重力に決して負ける事のないその膨らみが、湯船の中でその重さから解き放たれている。そこには、重力に逆らういつものおっぱいとはまた違う趣があった。
湯船の中のおっぱいは、いつにも増して前へ張り出した、美しい釣鐘型を魅せてくれて。
おっぱいそのものが自ら湯船に浮かんで、ひとりでに自己主張しているのだから、堪らない。持ち上げられて強調されるのとは似て非なる、魅惑の光景。
「………」
「くふふ……❤︎おっぱいばかり見ろと言った覚えはないのだがなぁ……❤︎
まったく、乳離れが出来ぬ奴め……んふふ、実に愛い……❤︎」
しかも、ぷっくりと膨れ勃ったその先端が位置するのは、水面の境界。水面が波立つたびに、水面に潜っては、浮き上がってはの繰り返し。ちらちらと顔を見せるその突起が、あまりにも悩ましい。その姿を見せつけながらも、見え隠れするように誘われてしまえば、もはや視線は釘付け。水面に顔を近づけ、食い入るように見つめざるを得なかった。
「はぃ……おっぱい離れできません……したくないですぅ……」
「んっ……❤︎ふぅっ……❤︎もちろん、そうでなくてはな……❤︎それでこそ私のモノだ……❤︎」
愛しいおっぱいを何度も、何度も、指先でつつきまわす。つつきまわさずにはいられなかった。
触れるたびに、病みつきになる弾力が指を押し返す。乳肉がぷるんと揺れて、たわんで、元の形に戻っていく。瑞々しいその光景が、目を奪う。甘い嬌声が、僕を誘う。
乳離れが出来ない。情けなくも甘美な響きを肯定せずにはいられない。僕はもう、自分を止める事が出来なかった。夢中で、ディサディア様のおっぱいに手を伸ばしていた。
「はぁ……ディサディアさまの……おっぱい……あぁっ……」
たぷんと実った母性と魔性、その両方に魅入られてしまって。もはや、指が勝手に動いてしまう。そして、おっぱいをつついて揺らすその度に、下半身に狂おしい熱が滾っていく。それは僕自身の昂りであり、契約を通して伝わる、ディサディア様の疼きの丈でもあった。
このままでは、ただ興奮だけでも果てて、湯船の中に精を漏らしてしまいそう。僕の精は、一滴残らずディサディア様のモノなのに。無駄撃ちなどダメなのに。もっと、もっと気持ちよく果てたいのに。そう分かっていても、僕は目の前のおっぱいに夢中になってしまう。
「んふふ……❤︎無駄撃ちは許さぬぞ……❤︎」
「ぁっ……ぁ、ぁぁぁ……」
そんな、情けない僕を導くように、ディサディア様の尻尾が僕の腰へと絡みつく。尻尾に促されるがまま、腰を突き出せば……そこには、僕の求めていた快楽が待っていた。
全身に精を浴び、飢えに飢えていた、ディサディア様の蜜壺が、僕のモノを待ち構えていたのだ。
「くふふ……❤︎」
「ぁ、ぁぅぅ……」
すっかりと出来上がってしまったそのナカは、恐ろしく貪欲だった。
先端が入り口に触れたその瞬間、甘い吸い付き。甘美な歓迎の快楽に、堪らず腰が勝手に進んでいく。
肉壺の中で待ち受けていたのは、肉棒を味わい尽くそうとしながらも奥へ奥へと引き込んでいく、大きなうねり。食べられてしまう、どころではなく、心地良さの中に呑み込まれてしまうかのよう。
「ほぅら……まさに極楽だろう……❤︎思う存分、果ててしまえ……❤︎」
「はぁぁぁ……」
そして僕のモノは、あっという間にディサディア様の最奥へと導かれてしまう。
そこで待ち受けていたのは、ぬるま湯に浸かるような、ゆったりとした心地良さ。それはまさに、極楽とも言うべき至福の悦楽。己の意思では決して抜け出す事の出来ない、果てしない深みに囚われ……僕は、ついに果ててしまう。
「くふぅぅぅっ……❤︎よしよし、いい子だ……❤︎ぜぇんぶ、私に委ねるのだぞ……❤︎」
「ぁ、ぁはぁぁ……」
癒すような快楽に、漏れ出るような大量射精。甘くとろける放出感に、身も心も委ねずにはいられない。
そしてディサディア様は、腰砕けで骨抜きになった僕を、その胸に迎え入れ、優しく抱きしめてくれる。
僕の頭を受け止めてくれるのは、湯船にたぷんと浮かぶ愛しのおっぱい。僕の精をたっぷりと啜ったばかりのその場所は、いつにも増して艶やかに水を弾き、しっとりと吸い付くような肌触りを返してくれる。そこに、精液の残り香などは欠片もない。むしろ、身を洗い流した後にも関わらず、その谷間には、恍惚をもたらす色香が立ち込めていた。 精を捧げれば捧げるほど、美しく、淫らに実っていく魅惑の果実。愛しい人への献身が実を結ぶその様を、直に確かめる事が出来るのだから、堪らなかった。
「んっ……❤︎くふぅ……❤︎どれ……今日もじっくり、ゆったり、暖まるとしようではないか……❤︎身体の芯まで、な……❤︎」
「ぁは……ぁぅぅ……はぃ……でぃさでぃぁさまぁ……」
ぬるま湯に浸かり軽くなった身体。それを絡め取り、支えてくれるのは、至高の女体だった。自重からさえも解放され、身も心も緩みきって。脱力と弛緩の果てで、ただただ心地良さに全てを委ね、愛しい人へと精を捧げる。それもまた、このままずっと、永遠に浸っていたいとさえ思ってしまう程に甘美。そんな、幸せなひと時が過ぎていく。
「ふむ……」
魔界様式の調度品が備えられた執務室。魔法によって宙に並ぶ、数多の書類。その内容は、各地の教団国家に潜入させている部下からの定期報告や、水面下での活動を記した計画など。ディサディア様はソファに悠然と腰掛け、足を組みながら、それらを眺め、時折、指先を宙に走らせ、魔術によって返答や修正を書き込んでいく。その働きぶりは鮮やかで、僕のような凡人では束になっても敵わない速度で書類を片付けていく。
「はぁ……」
そして僕もまた、そんなディサディア様を眺め、その凛々しさに、麗しさに恍惚のため息を漏らしていた。
深い智慧と、邪悪なる慈愛を感じさせるその横顔。人間の支配、実質的には保護を目論む、過激派の筆頭としての姿もまた、僕にとっては愛おしく、魅力的だった。
「まったく、お前も飽きぬ奴だな……❤︎」
「どれだけ見ても、素敵なものは素敵……ですから……」
より多くの人々を幸福に導くべく、魔物を束ね、策謀を巡らせる。そんなディサディア様の素晴らしい行いが、僕に心からの敬愛を、憧憬を、恭順を抱かせてくれる。心酔させてくれる。
そして、ただディサディア様を愛おしく思うだけでなく、敬愛し、心酔しているからこそ……ディサディア様から注がれる愛情によって、破滅的なまでの悦びを感じる事ができる。過激派の筆頭としての振舞いもまた、僕を魅了し、堕落させてくれる。
「くふふ……それは悪くないが……お前の居場所は、私の傍なのだぞ……❤︎」
「はぁい……」
勿論、仕事の最中であったとしても、僕の居るべき場所はディサディア様の御傍だ。命じられるがまま、望まれるがまま、ディサディア様に寄り添い、しな垂れかかる。ほんの些細な命令で、僕の心は悦びで満たされる。ディサディア様に服従する事が、ディサディア様のために何か出来るという事が、嬉しくて仕方がない。そして、心身に刻み込まれた従属の快楽が、情欲を呼び起こす。命令の果てに待っているものを、どうしようもなく期待してしまう。
「ん……よい子だ……」
そのまま、ディサディア様は、当たり前のように、我が物顔で、その片翼で僕の肩を抱き寄せてくれる。僕を"所有物"として扱うその所作は、強引ながらも、壊れ物を扱うかのように繊細。愛しい人に、これ以上なく大切にしてもらえている……そう、実感させられてくれるからこそ、服従心が止まらない。
「んふふ……さぁ、頭を差し出せ……たぁっぷりと可愛がってやろう……」
「はぃ……いっぱい可愛がってください……」
ディサディア様が身にまとっているのは、僕の好みを元にデザインされた、特注の悪魔装束。お腹と下乳を惜しみなくなく露出させた上半身に、極小面積のボンデージと網タイツを組み合わせた下半身。
仰向けにおっぱいを見上げても、腰にぎゅっと抱きついても、むちむちの太ももに頬ずりしても、極上の体験が約束される、僕のお気に入りの衣装。
そして、ディサディア様は足組みを解いて、ぽんぽん、とその膝を叩いてみせる。
抗うことのできない、膝枕の合図。命じられるがまま、ソファに身体を横たえ、頭を差し出す。
「んふ……よしよし……❤︎」
「はぅぅ……」
甘い色香の漂う、むちむちの太もも。それは、間違いなく極上の枕だった。
そして、頭をさわさわと撫でてくれる、ディサディア様の指先。慈しむような手つきの、あまりの心地良さにため息が漏れてしまう。何度もなんども撫でられてしまえば、あっという間に、頭の中はとろとろに。しかし、ただ心地良いだけでなく、まるで、心までもを撫でられているような悦楽も孕んでいた。
緩みきったため息が、自然と漏れてしまう。あっという間に、耽溺してしまう。
執務の邪魔になっていないか、いう考えなど、もはや浮かぶはずもなかった。
ディサディア様に愛でてもらうこと、可愛がってもらうこと。瞬く間に、僕の頭の中は、それでいっぱいになってしまっていた。
「あぁ、こうでなくてはな……やはりお前は、こうしているのがお似合いだ……❤︎」
「はぁぁ……ぁっ……ひざまくら……すき……」
アラクネの糸で織られた網タイツの、網目は粗く、サイズはタイト。むちむちの太ももに網目が食い込んで、ぱつんぱつん。滑らかだった肌に、数多の食い込みが起伏を作り出して……ただでさえ圧倒的な肉感が、もはや破滅的なまでに強調されてしまっていた。
張り詰めた網タイツの光沢質な感触もまた、豊満を極めたふとももの柔らかさ、吸い付くような肌触りへのアクセント。
そして、食い込みによって出来た起伏がもたらすのは、むにゅりとした"引っかかり"。それは、柔肉の心地よさをより一層に味わわせてくれて……頭を預けてしまったが最後、あまりにも愛おしい膝枕に、僕は頬ずりを止められない。
「うむ、うむ……たんと甘えてしまえ……❤︎それが、お前の役目でもあるのだからな……❤︎そうだろう……?」
「はぁい……ディサディア様ぁ……」
「くふふ……よい返事だ……」
ディサディア様に心ゆくまで甘え、可愛がってもらい、その寵愛を一身に受け、溢れんばかりの愛情に溺れる。それこそが、他ならぬディサディア様に命じられ、たっぷりと時間をかけて心身ともに教え込まれた、僕だけの役目。
「はぁぁ……だめです……だめ……すきぃ……つかまっちゃいましたぁ……」
「んふふ……よいぞ、もっともっとダメになってしまえ……逃がさぬぞ……❤︎」
ディサディア様曰く、こうして僕を可愛がっていると、非常に仕事が捗るらしい。尤も、ディサディア様は常に僕を肌身離さず可愛がってくれているので、そうでない状態を知らないのだけれど……ディサディア様の言葉を信じない理由はない。それに、部下の方々から聞いた話によれば、僕を手中に収めて以来、ディサディア様の働きぶりは精彩を欠くどころか、むしろその辣腕ぶりは留まることを知らない程だと言う。
つまり、僕はディサディア様の重荷になるどころか、可愛がっていただく事によって彼女の働きに貢献していて……そういった理屈の下で、僕の行いは徹底的に正当化されてしまっていた。堕ちる事を肯定され、求められ……そこに背徳の悦びこそあれど、自己嫌悪に陥る事は決してなかった。
「はぁぁ……ふぅぅ……んぅ……」
「くふふ……なんだ……❤︎」
魅惑の膝枕に頭を預けながら、身体を丸めてごろごろ、すりすり。
僕が甘え媚びるたびに、ディサディア様がその子宮を疼かせているのが、精への渇望をたぎらせているのが契約紋から伝わり、僕のモノをびくりと跳ねさせる。
自分の行いに愛しい人が欲望を膨らませてくれる、その事実が堪らなく悦ばしい。
「ディサディアさまぁ……」
そして僕は期待を胸に、妖しく揺らめく尻尾へと手を伸ばす。手繰り寄せて、抱きついて、脚を絡めて、股の間の硬く隆起したモノを擦り付けながら、甘えた声をあげる。愛しい人の名を呼べば、自然と媚びきった声色。
「んふふ……まったく、おねだりが上手だな……❤︎よいぞ……そろそろ”おやつ”の頃合いだ……❤︎
ほぅら……ちゃんと脚を開け……❤︎堪え性のないカワイイおちんちんを差し出して、準備をしろ……❤︎後はぜぇんぶ、私に委ねて……私を愉しませるのだ……❤︎」
「はぃ……っ」
あまりにもだらしなく、情けないおねだりを、ディサディア様は嬉々として受け入れてくれる。褒めてくれる。そして、愛おしげにその先を命じてくれる。その命令は、あまりにも甘美。支配者たるディサディア様が、望まぬ事を命じるはずはなく、それはこれ以上ない受容、赦しに他ならない。
そして、執務のお供にお茶やお茶菓子をお出しする代わりに、僕はこの身をディサディア様に捧げるのだ。そこには確かに、愛しい人に奉仕する悦びがあった。
「あぁ……こんなにして……❤︎くふふ……実に美味しそうだ……❤︎」
ディサディア様に命じられるがまま、仰向けになってカエルのように脚を開けば、尻尾の先端がするりと服の下に潜り込んできて。ぐい、とズボンを引き下げられて、僕のモノはディサディア様の視線に晒されてしまう。
「んふ……❤︎ほぅら……おっぱいも堪能するがよい……❤︎」
「んっ……むぅ……」
そして、仰向けになって見上げた先、青い果実の下半球が、眼前に迫って来て……たぷん、と視界を塞がれてしまう。
頭を抱き込むように膝枕をされて、おっぱいと太ももの間に挟み込まれてしまったのだ。
顔面を心地よく圧迫する、母性の愛おしい重み。身を清めたばかりのおっぱいの、純粋な色香は、ミルクのような甘さをほんのりと湛えていて、僕をたちまち恍惚へと導いてくれる。心が緩んだ分だけ、下半身に集まる熱は昂りを増していく。あまりにも幸せなサンドイッチ。
「くふふ……どうしようもなく甘えん坊だな、お前のモノは……びくびく震えて、実に愛らしい……❤︎」
「んぅ……ぅぅぅ……」
肉棒に、そっと尻尾が絡みついてくる。滑らかですべすべな皮膜の肌触りと、ぎゅっと身が詰まったような、ぷにぷにとした弾力。
角、翼に並ぶ悪魔の象徴であるその部位が持つのは、背徳感を掻き立てる、妖しい柔らかさだった。
それは、僕のモノを優しく包み込み、愛しい人が邪悪で強大な悪魔である事を直に感じさせてくれる。その感触が、被支配欲を満たしてくれる。そして、被支配感の行き着く先は……底無しに甘美な悦楽と、安堵に他ならなかった。
「さ、撫で撫でしてやろう……❤︎ふふ……堪らないだろう……?」
「ぁぁぅ………」
悪魔の尻尾の、その先端が、敏感な亀頭に覆い被さってくる。しなやかな指先が、僕の頭に添えられる。そして……その両方を、慈しむように優しく撫で回してくれる。
一撫でごとに、肉棒が、腰が、とろけてしまいそうになる。頭の中がふわふわして、ふにゃふにゃで。
太ももとおっぱいに挟まれ、可愛がられて、甘やかされて、底無しの多幸感。身体だけでなく心までもが、どこまでも心地良い。
「よし、よし……❤︎まずは濃いのをご馳走してもらおうか……❤︎んふふ……じっくりと育ててやるぞ……❤︎」
ゆっくり、じっくり、丹念な愛撫。射精衝動を、欲望を、興奮を、大事に大事に育んでくれるかのよう。
とびきり濃い精を吐き出すように、ディサディア様が望む形に、僕のモノが育てられていく。支配的な母性がもたらしてくれる、甘い倒錯。その先には、約束された極上の快楽が待っているのだ。
「ほぅら、尻尾で抱いてやろう……❤︎んふふ……」
肉棒を包み込む、緩やかな尻尾の締め付け。それはまさに、肉棒を優しく抱きしめられているかのよう。甘い抱擁の快楽が、じくじくと肉棒に染み込んでいく。
「こういうのはどうだ……?ぎゅっ……ぎゅっ……❤︎んふ……そうだ、何も考えずともよい……すべて私に任せるのだ……❤︎」
赤子の背を叩くような間隔で、きゅぅ、きゅぅ、と甘い締め付け。本能に訴えかける、心地よいリズム。身も心も、どうしようもなく弛緩していく。緩んだ分だけ、快楽が浸透していく。
「あぁ……こんなに、感じて……❤︎くふふ……おっぱいの下で、さぞかしだらしのないカオをしているのだろうなぁ……❤︎」
ゆっくりと、しかし着実に、狂おしいまでの熱量が育て上げられて、肉棒の根元にどろどろと溜まっていく。
「今すぐ果てたいか……?もっと撫で撫でして欲しいか……?
んふふふ……知っているぞ……❤︎この私の好きなようにシてほしいのだろう……愛い奴め……❤︎」
絶頂が待ち遠しくも、それに至る過程もまた愛おしい。今すぐ果ててしまいたい、けれども、このまま愛撫に浸り続けて、さらに快楽を蓄えてしまいたい。しかし何よりも、ディサディア様の望む形で果ててしまいたい。ディサディア様の望むがままに、精を捧げてしまいたい。そんな僕の望みを、ディサディア様は見透かしてくれる。
「くふふ……どうしてくれようか……❤︎もう少し溜め込んでもらうのも悪くない、が……❤︎」
意地悪くも慈愛に満ちた声とともに、尻尾の先端が、裏筋をつぅっ……となぞっていく。弱点の裏筋の、その中でも一際弱い部分を、甘く、優しく、しかし、好き勝手に。支配者として、愛おしげに僕のモノを弄んでくれる。ぞわぞわと満たされていく、被支配欲求。
ディサディア様がその気になれば、僕はたちまち絶頂へと導かれてしまう。その事実をありありと突きつけられて……それだけで、快楽が爆ぜてしまいそう。
「んふ……今すぐ果ててしまえ……❤︎この私に、精を捧げるのだ……❤︎」
「んっ……っ……ぅぅぅ……」
そしてディサディア様は、ついに、愛おしげに吐精を命じてくれる。
愛玩し、甘やかすような尻尾の蠢きは、ゆったりと、しかし確実に僕の弱点を責め立てて。溜まりに溜まった快楽を、絶頂へと導いてくれる。
ディサディア様の所有物である僕は、その命令に決して抗えない。ただひたすらに甘美で心地良い、極上の快楽の中、甘い命令が快楽を後押しして。僕はたちまち果ててしまい、命じられるがままに、精を漏らしてしまっていた。
「んふ、ふふふ……❤︎心ゆくまで精を漏らしてしまえ……❤︎」
巻きついた尻尾は、射精の脈動を促し、優しく搾り出すように蠕動して。腰回りがどろどろに融けてしまったかのような、まるでおもらしをするかのような、緩みきった甘い射精感。
吐き出した精を逃さないよう、しっかりと尻尾の先端が覆い被さって、精を受け止めてくれる。一滴残らず味わい、糧とするために。
そこにあるのは、愛しい人に精を捧げる悦び。奉仕の悦びが、射精快楽をより素晴らしい物にしてくれる。
「よし、よし……どぷどぷ出して、良い子だ…………❤︎」
「っ……っ、ぅむ……っ」
「んふ……ほぅら、むにゅむにゅ……❤︎勢いが増したぞ、この甘えん坊め……❤︎
そんなにおっぱいが好きか……❤︎本当に愛い奴め……❤︎」
そして、果てる僕を労うように、僕の顔を深く谷間にうずめさせてきて。まるで顔面をパイズリするかのようにおっぱいを寄せて、擦り合わせてきて、むにゅむにゅと揉みくちゃにされてしまう。溢れんばかりの母性を味わわされ、愛でられ、溺れていく悦びもまた、僕を幸福に染め上げてくれるのだった。
「んふふ……❤︎たっぷり出して……よぉく頑張ったな……❤︎」
「ぁ……はぁぁ……」
長い射精を終え、おっぱいからも解放された僕の視界に映るのは、肉棒に巻きついたまま白濁塗れになった、悪魔の尻尾。
「あぁ……こんなに、へばりついてきて……んふふ……まるでゼリーのようだ……❤︎これは期待ができるな……❤︎」
「ぁ……」
肉棒を解放してなお、その尻尾には、僕の放った精が、べっとりと付着していて。
そして、ディサディア様はその尻尾を、口元へと運んでいく。
「あむ……ちゅるっ……れろぉ……んぅぅ……❤︎実に美味だ……❤︎
んふ……❤︎やはり、これがなくては執務はできぬ……❤︎」
「ぁりがとう……ございますぅ……」
膝枕の上の僕を見下ろしながら、尻尾に舌を這わせ、精を舐め取り、啜り取っていく。見せつけるように、淫靡に、そして、他の何を味わっている時よりも美味しそうに、幸せに。
射精の余韻の中、僕はそんなディサディア様を見上げていた。
愛する人が、欲望の塊を受け入れてくれる。愛する人の、糧になる事が出来ている。愛する人の役に立つ事が出来ている。
捧げた精を、美味しそうに味わってくれる事が、褒め称えてくれる事が、どうしようもなく嬉しくて仕方がない。
「んふふ……まだ残っているな……❤︎一滴残らず味わってやるぞ……❤︎」
「ぁっ、ぁぅ……」
「ん……ちゅぷ……んむ……❤︎」
もちろん、ディサディア様が汚れた肉棒をそのままにするわけがなく。尻尾の先端を使って、精液を丁寧に拭い取ってくれる。
射精直後の肉棒を労わるように、最後に一撫で。そして、集めた精を舐め取って……
「はぁ……❤︎喉が蕩け落ちてしまいそうだ……❤︎んふふ……だが、まだまだ欲しいな……❤︎」
「ぁ、ぁっ……」
「お前も……まだまだ可愛がって欲しいのだろう……❤︎」
「はぃ……もっと、シてください……っ……あたまも、おちんちんも、なでなでしてぇ……」
「んふ……❤︎よいぞ、たぁっぷりと撫でてやろう……❤︎そして、私にもっともっと精を捧げるのだ……❤︎」
再び、尻尾が僕のモノを絡め取り、甘く責め立ててくる。
たった一度の射精で、ディサディア様の欲が満たされるわけもなく……こうなるのは、当然の帰結だった。契約紋から伝わる欲望は膨れ上がっていき……僕のモノも、それに応えていく。
欲望のままに甘え、快楽をねだりながらも、愛しい人の役に立つ事ができる。母性に溺れながらも、奉仕に陶酔し、身を捧げる事ができる。
甘やかされ、愛で尽くされる悦びと、奉仕し、貪り尽くされる悦び。本来ならば相反するその悦びを、ディサディア様の支配は同時に与えてくれるのだった。
「ふふ……これで今日の執務は終いだな……❤︎」
「ぁ……おつかれさま、でしたぁぁ……」
「うむ……お前もご苦労……❤︎今日も実に愛らしく、実に美味だったぞ……❤︎これでこそ執務も捗るというものだ……❤︎」
「ぇへ……おやくにたてて……うれしいです……」
今日もまたディサディア様は、僕を愛で尽くしながらも、過激派としての執務をこなし終えていた。あまりにも手際良く、非の打ち所がない仕事ぶり。そしてディサディア様は、それが僕のおかげでもあると言ってくれる。
一人の女性としてのディサディア様に愛してもらうだけでなく……過激派の筆頭としてのディサディア様の役に立つ事ができている。それが、どうしようもなく嬉しく、喜ばしい。
たとえ、欲望のままに甘え、数え切れないほどの射精を経て精を捧げ、快楽にゆるんで蕩けきった、情けない姿を晒しても……ディサディア様の役に立てるのであれば、むしろ誇らしくさえ思えてしまう。
「んふふ……まったく、いじらしい奴め……❤︎そんなに嬉しいか……?」
「はぃぃ……」
そんな僕の心境を見透かしたように、ディサディア様は妖しく微笑む。
ディサディア様はライフワークとしてだけでなく、僕を愛する一環として、過激派の活動を続けてくれているのだろう。
「ならば、執務も終わった事だ……ベッドの上で労ってもらおうか……❤︎」
「ぁっ……」
膝枕から一転、抱き上げられて、お姫様抱っこの姿勢。ディサディア様の顔は、目の前に。欲望にぎらついた瞳と、優しくも意地悪げな微笑み。愛でられ続けて蕩けきった頭の中が、ぞくぞくとした感覚にかき乱される。
「分かるだろう……?この私の疼きが……❤︎やはり、仕事の後は格別に……お前が欲しくなる❤︎」
「っ……ぁぅ……はぃ……っ」
執務の最中、その喉で精を飲み干すたび、ディサディア様の子宮は満足するどころか疼いて、飢えて、欲望を蓄えて。それはつまり、さっきまで行なっていたのは、執務と言う名の長い前戯に他ならないという事で。そして、執務明けの解放感が、尚更に欲望を掻き立てるらしく。つのりつのった欲望が、疼きが、契約紋を通して伝わってきて……僕のモノを狂おしいまでに昂ぶらせる。
さっきまでたっぷりと尻尾で可愛がって貰っていたにも関わらず、張り詰めて、今すぐ食べて欲しくて仕方がなく、自然と声が上ずってしまう。
「あぁ……分かるぞ……お前も私が欲しいのだろう……❤︎んふふ……少しの辛抱だ……たっぷりと愛してやるぞ……❤︎」
「はぃ……たべて、くださぃっ……」
こうなってしまったディサディア様は、子宮に精を捧げる事でしか満足してくれないのだ。そして僕もまた、ディサディア様の子宮に精を放つ事でしか、この昂りを鎮められない。何につけても最後に待っているのは、約束されているのは、ディサディア様との甘い交わり。それが、ディサディア様との契約。
身も心も、全てを愛しい人に捧げて、委ねて、甘やかされて、貪り尽くされて。今日も僕は、支配されるという特権を享受し、終わりなき幸福に溺れていくのだった。
「さ……夕飯は何が食べたい?」
「うーん……ディサディア様が作ってくれるなら、なんでも」
「ふふ……まったくお前は、いつもそうだな」
「だって……どれも美味しいのに……簡単に決められません。それに……ディサディア様に、決めて欲しいです」
「んふふ……仕方のない奴め……」
紅い月が辺りを照らす、夜の魔界の商店街。
ディサディア様に抱き寄せられ、身を委ねながらの買い出しデート。
優しく腰を抱かれ、絡みつくように尻尾を巻き付けられて、翼で包み込まれて。甘い色香と優しいぬくもりに、もはや僕は骨抜きだった。抱き寄せられる、ただそれだけの事が……一人で立てなくなってしまうほどに、心地良く、幸せで。
すっかりダメになってしまった僕を、ディサディア様は嬉々として受け止めて……絶え間ない堕落に浸してくれる。僕の居場所は、常にディサディア様のお傍だ。
「……おや、魔界鮭ではないか。この時期に珍しい。ふふ……好きだろう?」
「あ、いいですねっ……確か季節外れの鮭はたっぷり脂が乗って……ムニエルもいいけど、やっぱり塩焼きが食べたいです……ジパング風がいいなぁ」
「んふふ……腕によりをかけて作ってやろう。楽しみにしておくのだな……」
「はぃっ……」
ディサディア様が指差したのは、魔界魚の一種、魔界鮭だった。魔界動物の例に漏れず、見た目こそ厳ついものの、一度味を知ってしまえば、やはり美味しそうに目に映るモノで。なんでも良いとは言ったが、実際に食材を目にすると、それが食べたくなってしまうのが人の性だった。ディサディア様の作ってくれる魔界鮭の塩焼きは、表面は香ばしくも身はふっくらと容易くほぐれて、思い出すだけでもよだれが出てしまいそうな絶品なのだから。それが季節外れに食べられるのであれば、逃す手はない。
おっぱいに頭を預けて甘えながら、晩御飯のリクエスト。ディサディア様は、最初からそのつもりだったように笑ってくれて。僕もつい、口元が緩んでしまう。
ディサディア様がたっぷりと甘やかしてくれるおかげで、僕は食べたいモノを食べたいと言えるようになって……すっかりとおねだり癖が身についてしまっていた。
「それで……魔界鮭といえば、前に話してくれた、最近の学説……でしたっけ」
「うむ……“魔界鮭の脂は良質な精液の源となり、妊娠確率の向上が期待される”……まぁ、この手の話は検証が困難であるが故に、往々にして仮説の域を出ないわけだが――」
「くふふ……よく覚えていたな……❤︎そんなに私に子を孕んでほしいのか……❤︎」
「っ……ディ、ディサディアさまぁ……」
そして、献立を考えるにあたって、その味だけでなく、効能についても期待を寄せずはいられない。
魔界鮭は妊娠に良い――僕がこんな話を覚えていた理由は当然、ディサディア様との子宝が欲しいからに他ならなかった。
それはもう隠すことのない事実なのだが、商店街の真っ只中でそれを”孕んでもらいたい”という形で、しかも聞こえよがしに嬉々として暴露されてしまう。
いくらディサディア様に心酔していても、普段からべったりと甘え通しで堕落の淵に沈んでいても、服従する事に誇りさえ感じていても、公の場に出れば、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「んふふ……顔が赤いぞ……❤︎」
「外でそういうのは、恥ずか――」
「孕んでほしいのだろう……?」
ディサディア様は、羞恥に悶える僕の顔を覗き込み、有無を言わさず、ねっとりと問い詰めてきて。惚気の延長にある、愛情たっぷりの意地悪さが、被支配欲求をぞくぞくと刺激してくれる。僕を甘く弄ぶ、悪魔らしい愛情表現が、羞恥さえも愛おしくさせてくれる。
「さ……正直に答えろ❤︎」
「ぼ、僕の子を……は、孕んで……ほしい……です……っ」
「くふ……くふふ……恥ずかしがるコトなどないというのに……❤︎あぁ、しかし、”孕んでほしい”とは……何度聞いてもそそられてしまうなぁ……❤︎」
そして僕は、決して抗えぬ命令によって、欲望を暴き出されてしまう。”孕ませたい”ではなく”孕んでほしい”、服従と従属の悦びに染まりきった、僕の欲望。そんなものを人前で白状させられてしまい、羞恥で頭の中は真っ白。
「ぅぅ……いじわるぅぅぅぅ……」
「んふふ……意地悪されるのも好きなくせに❤︎」
「ぅ、ぅぅ……すき、ですけどぉ……」
「んふふ……そうかそうか、よしよし……❤︎」
「ぁぅ……ディサディアさまぁ……」
「くふふ……甘えん坊め……❤︎」
恥ずかしいのに、幸せで、心地良くて、愛おしくて。弄ばれる悦びは、理不尽なまでに甘美。
堪らず逃げ込む先は、他ならぬディサディア様の胸の中。羞恥と悦びに歪む、はしたない表情を隠すため、降参の意を示すため、その谷間に顔を埋めずにはいられない。
そして、意地悪をするのがディサディア様なら、それを優しく慰めてくれるのもディサディア様。すがりつく僕をあやすように、愛しむような手つきで頭を撫でてくれる。意地悪との落差に、羞恥はすっかりと蕩け堕ち、母性に呑み込まれてしまって……僕は、どうしようもない甘えん坊に仕立て上げられてしまう。
「さ、夕飯の献立が決まったぞ……ジパング風が良いのだろう?まずは魔界鮭の塩焼きと刺身だな……❤︎あとはお前の好きな豚汁も作ってやろう……❤︎」
「ん……いいですね、豚汁……美味しいですし……その……」
ディサディア様は、僕がお願いすれば、どんな料理だって作ってくれる。ジパング料理はもはやお手の物で、きっと今日も、割烹着を着ながら夕飯を作ってくれるに違いない。そんな、邪悪な出で立ちとは裏腹な良妻ぶりがあまりに愛おしく、割烹着姿を想像するだけで惚れ直してしまうぐらいだ。
しかし、献立を告げるディサディア様の声は、悪魔の囁きに他ならなかった。
魔界の食材につきものなのは、交わりに向けた効能。献立を告げられるだけで、否応無しにその効能を……そして、その先に待ち受けている食後の交わりを、ディサディア様に”食べて”いただくことを想起してしまう。
精の質を高め妊娠を促すらしい魔界鮭に、三日三晩も交わり続けることができるほどの栄養価を持つ魔界豚。今夜は寝かさないと、そう宣言されてしまっているに等しく……ぞくりと、背筋が悦びに震えてしまう。ディサディア様は、良妻でありながらも、やはり悪魔であり支配者なのだ。
「んふふ……そうだな……魔界豚にまかいも、まといの野菜、そしてネバリダケも入れて……具沢山の栄養満点にしてやろう……❤︎」
「ぁっ……ネバリダケ……だなんて……」
「デザートは、まといの野菜の芯を使って……とろけの野菜を添えてやろう❤︎」
「とろけの野菜まで……そんなの……もう……待ちきれません……っ」
精に強い粘りを出し、子宮に残りやすくする事から、妊娠しやすくなると期待されているネバリダケ。魔界鮭に加えてネバリダケとくれば、ディサディア様が望んでいるのは、間違いなく子作りだった。
極め付けは、魔界の食材の効能を効能を飛躍的に高めるとろけの野菜。まといの野菜と一緒に食べれば、ディサディア様は、火照りとむず痒さに服を脱ぎ捨て、身体を密着させずにはいられなくなってしまう。そして、ネバリダケの効能も高まり、捧げた精は一週間以上も残り続けることになるだろう。ディサディア様の愛液も粘性を増して、交わりはより、ねばっこく濃密なモノに。
肌を重ね合わせ、身体を密着させながらの、ねばりついて絡みついて離さない、子作りのための、愛情たっぷりの交わり。三日三晩かそれ以上もの間、子宮へと一滴残らず精を捧げることになってしまうに違いない。
そんな想像に欲望は掻き立てられ、愉しみで、待ちきれなくて、仕方なく。堪らずディサディア様に腰を擦り付け、硬くなったモノを押し当てずにはいられなかった。早く食べさせてくださいと、早く食べてくださいと、おねだりせずにはいられなかった。
「くふ、んふふふふ……❤︎そうかそうか……そんなに愉しみか、待ちきれぬか……❤︎ならば、早く買い物を済ませなければ、な……❤︎ほら、ゆくぞ……❤︎」
「は、はぃっ……ディサディアさまぁ……」
ディサディア様は、買い物を急ごうにも上手く歩けない僕を、お姫様抱っこの形で抱き上げてくれる。おねだりの効果はてきめんで、僕を覗き込むその瞳は、情欲に妖しく輝いていて、契約紋から熱い衝動が流れ込んでくる。ディサディア様もまた、子宮を疼かせ、僕を求めてくれている。重なり合う欲望が、愛おしく、悦ばしく、嬉しくて仕方ない。決して破れぬ契約によって約束された、逃れ得ない快楽と幸福が、僕を待ち受けている。
溺愛とも過保護とも言える深い愛情と、底無しの欲望に服従し、決して抗えないまま堕落の淵へと堕ちていくのは、まさに、支配されるという特権。人の身に余る快楽に、甘美さに、心地良さに浸されながら、貪り尽くされ愛で尽くされるその時を夢想し、期待に身も心も染め上げられて。今日も僕は、支配者であり伴侶でもある最愛の人に身も心も全てを委ね、その名を呼ぶのだった。
――力を貸してくれるなら、助けてくれるなら、悪魔だっていい。
そんな事を考えながら、僕は眠りに落ちていた。
浅い眠りから覚めた僕は、枕元に妖しげな書物を見つけた。
その本には悪魔の召喚法が記され、その魔術までもが内包されているのだという。その本によれば、悪魔に対価を支払う事で、その人ならざる力を以って願いを叶えてくれるという。
あまりにも都合良く、まさに悪魔の罠めいたその魔導書。しかし僕には、それに縋るしか選択肢はなかった。
あぁ、お願いだ……本物であってくれ。悪魔でもいいから、僕を助けてくれ。そう願いながら、僕は魔導書のページをめくっていた。
「――我が名はフラクト、悪魔の庇護を求める者なり」
そして、時は過ぎて、今は黄昏時。
魔導書に記された手続きの通り、自分の体液……唾液を指につけ、魔導書の示された場所に触れる。濡れた指先が乾いていき、魔導書が紅い光を帯び始める。
召喚の合言葉を唱えれば、それを鍵として、魔導書から光が広がっていって。
「っ……」
「ふふ……私を呼んだのは貴様だな?」
光の中から現れたのは、妖艶な女悪魔。男の理想を形にしたような、豊満な肢体。かろうじて局部の隠れる装いに露出した青い肌は、人外の艶めかしさ。
濡れたようにしっとりと灯りを反射する翼、角、尻尾。悪魔たる異形の部位もまた、美しく。
禍々しく邪悪でありながらも、欲望を掻き立てられるその姿に、退廃と堕落の香りに、思わず息をのむ。
「は……はい……」
小柄な自分に対し、悪魔は長身で。自然と、悪魔に見下ろされてしまう。悪魔が浮かべているのは、邪悪な笑み。
ぞくぞくとしたモノを背筋に感じながらも、血の気が引くような心地。漆黒の眼に、紅の瞳に見据えられて、動けない。
実際に悪魔と相対して、その力の強大さを、邪悪さを肌で感じ取る。悪魔の力の前では、自分という存在はあまりに矮小。逆らってはいけない存在なのだと、理解する。
覚悟を決めて召喚したつもりはずだったが、目の前の存在にすっかりと畏怖してしまっていた。
「……くくっ、そう怯えずとも良いのだぞ。取って食おうというわけではないのだからな」
「ぁ……」
紅い爪で、つぅ、と喉を撫でられる。喉元に尖ったものが突きつけられているのは、なんとも不安で、思わず身がすくむ。
しかし、その見た目の鋭さとは裏腹に、痛みは無く。むしろ、手つきは柔らかで、その感触は、うっとりとする程に気持ち良く。
畏れながらも、身を委ねてしまいたいとさえ思ってしまう。
「ほう……これは、もてなしのつもりか。良い心がけではないか?」
「ど……どうぞ、お召し上がりください。人間の食事がお口に合うかはわかりませんが……これが私の誠意です」
そして悪魔は、僕の背後に視線をやる。背後のテーブルに用意しておいたのは、腕によりをかけて作ったご馳走。
誰かに助力を請うのであれば、相応の態度を取るのが筋というものだ。
その相手がたとえ、悪魔であったとしても。むしろ、相手が悪魔であるからこそ、礼節を欠くわけにはいかないと考えていた。
機嫌を損ねればどんな仕打ちが待っているか、想像もつかないのだから。
「くく……では、頂くとしよう。貴様も座るがいい」
「……は、はい」
悪魔は悠然と食卓につく。そして僕は、悪魔に促されるがまま、対面に座る。
悪魔を召喚したのも、食事を用意したのも僕。しかし、この場の主導権を握っているのは、間違いなく悪魔だった。
「ふむ……男の手料理など、初めて食したが……なるほど、悪くない。もてなそうという気概は気に入ったぞ?」
「……ありがとう、ございます」
不思議な空気の流れる食卓。一通り、一口ずつ料理を味わった後、悪魔は口を開く。
端正な顔に、妖しげな微笑み。どうやら、もてなしを気に入って貰えたらしい。
胸に込み上げる安堵。そして……喜び。悪魔の言葉は、ぞっとする程、耳に心地良く。悪魔に褒められ、喜んでしまっている自分が居た。
「さて……なんの理由もなしに、私を呼んだわけでもあるまい?どれ、話してみろ」
そして悪魔は、ねっとりと絡みつくような声色で、問いを投げかけてくる。
悪魔の手を借りてでも、成し遂げたい事。悪魔を召喚した、その理由。
「そのっ……貴女を呼び出した理由なのですが……友人の駆け落ちを……成功させて欲しいのです。決行は、明日の未明」
僕のような人間と仲良くし続けてくれた、優しい二人。その二人が、誰にも邪魔されることなく、幸せになれるように。その仲が、政略結婚などで、身分の差などで引き裂かれぬように。
明日に決行される、親友の駆け落ちを成功させる。それが悪魔に縋る理由だった。
「ほう……?他人の恋路のために、他人の幸せのために私を呼び、対価を払うというのか、貴様は……」
邪悪さとたおやかさが同居した含み笑い。悪魔は、にたぁ、と口角を吊り上げる。すっと細めた目に覗く、紅い瞳は爛々と輝いて。
その眼差しに、品定めをされているかのよう。
僕を試すかのような問い掛けには、喜悦の色が滲み出ている。興が乗ったと言わんばかり。
「……はい」
悪魔の問い掛けは耳に甘く、抗いがたい魔性を孕んでいて。心から声を吸い出されるかのように、言葉に感情が滲む。
悪魔を呼び出す事、対価を払う事は、当然怖い。不安に苛まれているのも確か。そして、心の内に抱える痛み、孤独感までもが浮き上がってくる。
それでも僕は、悪魔の問いにはっきりと頷く。声を震わせながらも、確かに答える。
僕は自分のためでなく、親友の幸せのために、悪魔を呼んだのだと。
「くふふ、ふふふっ、己の幸せを顧みぬとは、愚かな男だ……
お前のように愚かな男は、この私が直々に支配してやらねばなるまい……」
「っ……」
そして、どうやら僕の何かが、悪魔の琴線に触れてしまったらしく。
不穏な言葉に、これ見よがしな舌舐めずり。悪魔の獲物に定められてしまったのか、気に入られてしまったのか。それとも両方なのか。
悪意に満ちているようにも、慈愛に満ちているようにも見える、悪魔の微笑み。
悪魔に支配されるのはおぞましい事であるはずなのに、それが甘美な事であるようにさえ思えてしまう。
「あぁ……そう身構えるな。言ったはずだぞ?取って食おうというわけではないのだからな……」
「は、はい……」
取って食わない、という悪魔の言葉は高圧的で、にわかに信じ難く……しかし、その甘い響きに、その言葉を信じたくなってしまう。
悪魔の支配が甘美なものであったなら、直接的に言ってしまえば、性的なモノであったなら……と想像してしまっていて。
「くふふ……そうか、そうか」
「ぁ……」
悪魔の黒眼に、心を覗かれているかのよう。意味深長に笑い、悪魔は頷く。先ほど抱いてしまった欲望を見透かされているようで、言葉も返せず。
息の詰まるような思いなのに、不思議と不快さ、苦しさは感じない。逆に、悪魔の紅い瞳の深い輝きに、心を奪われてしまいそうな程。
胸の鼓動が、どくどくと速まっていくのを感じる。視線を逸らせない、逸らしたくない。
今は、そんな事を考えている場合ではないのに。親友のために、この悪魔と交渉しなければならないのに。
「ああ……私の力をもってすれば、駆け落ちを成功させる事など造作もない。時間は十分にある……だから、そう焦る事はない」
「……本当に、助けて、くれるんですね……?」
そんな焦りも、悪魔にはしっかりと見透かされてしまっていて。余裕に満ちたその声が、僕をたしなめる。そんな様子に、頼もしさを覚えてしまう。不安と安心の同居した、不思議な気分。
「くく……勿論、対価は頂くが、な。つまりは、貴様次第という事だ」
「な……何を支払えば……良いのでしょうか……」
しかし、続けざまの悪魔の言葉に、心の天秤は不安へと傾く。
相手は悪魔、もしかすれば命さえも、魂さえをも要求してくるかも知れない。
「言ったはずだぞ?焦るな、と……対価については後だ。
まずは……そうだな、貴様の身の上でも聞いてやろうではないか。貴様がその二人に入れ込む理由、とやらをな」
「す、すみませんっ……理由……ですか……?」
「そうだ。話してみろ」
食事の最中の交渉は、食事を妨げる事でもあると気づく。悪魔の機嫌を損ねてしまったかと、戦々恐々。
むしろ悪魔は、上機嫌な様子。不満気なのは言葉だけ。声色は愉しげで、その妖しい微笑みを絶やさない。
それどころか、怯える僕を優しく見つめてくれているようにさえ思える。僕の緊張をほぐすために、この話題を振ってくれたようにさえ。けれど、それはきっと、悪魔の狡猾な罠に違いない。高圧な態度に覗く優しさは、まさに飴と鞭、人を操るための道具なのだから。
「ええ、と……では、お言葉に甘えて。
二人に入れ込む理由、なのですが……二人ともが、唯一無二の親友と呼ぶべき相手でありまして」
しかし、当然、悪魔の言葉に逆らう事など出来なくて。促されるがままに、僕の抱える事情を吐き出していく。
「ほう。親友、か」
「……はい、私にとっては……生涯の友と言うべき相手です」
親友。そう、少なくとも、僕にとっては、あの二人は親友だ。あの二人がどう思ってくれているのか、少し自信がないが……駆け落ちの計画を打ち明け、助言を求めてくれる程度には信頼されているのは確かだ。僕は、それに応えたい。
「……子供の頃、私は今より内気でして……そんな私に出来た初めての友人が、二人でした。
彼女は貴族の令嬢、彼は使用人の息子。私は出入りの薬師の息子といった関係でして。
初めて出会った時には既に、二人はとても仲が良かったのですが……そこに、自分のような人間を受け入れてくれました」
初めての友達。二人が僕を友達として迎え入れてくれた事は、とても嬉しかった。しかし、思い返せば……二人の邪魔をするような、割って入るような罪悪感を、当時から抱いていた。
彼女達は僕に色々と楽しい事を教えてくれたし、遊びに連れ回して、孤独を和らげてくれたけど、僕は面白い話の一つも出来なかったのだから。
「……恩返し、でしょうか。私は彼らから多くのモノを受け取りましたが……受け取るだけ、でしたので。
二人がいなければ、今頃、私は孤独だったでしょう。母は私を産んで死に、父も早くに逝ってしまいましたから」
僕を交えない方が二人は楽しく、仲良くいられるのではないだろうか。そう思いながらも、僕は二人から離れられなかった。寂しかったからだ。
僕と二人の関係性。今の今まで、二人の優しさに甘え続けていた。
だからこそ今、それに報いたいのだ。
「それに……あの人が政略結婚の道具にされるなど、耐えられないのです。家の凋落を防ぎ、領民を護るためだとしても。それに、彼女の両親でさえも、それを望んでいないのです」
多感な少年時代に、異性に優しくされたならば、淡い恋心の一つぐらいは抱く物で。それが、向日葵のように素敵な笑顔を見せてくれる少女ならば、尚更。ああ、彼女はお転婆だった。
もっとも、その笑顔の向く先が僕ではない事に気付いていたから、気持ちを圧し殺して、隠し通して、身を引いて。それが、僕の初恋だった。
恋心などとうに棄てたにせよ、それでもあの人は僕の初恋の人でもあるのだ。それが政略結婚の道具にされようとしているのは、我慢ならない。
「そして、何より……二人には幸せであって欲しいのです。ただ、ひたすらに。
……これを理由と言っても良いのかは分かりませんが」
そして、最たる理由は、僕の抱えるこの想いだった。僕の心が、二人の幸せを望んでいる。僕は何故、二人の幸せを望んでいるのか。結局、心の内から湧き上がるその感情に、理由付けは出来なかった。
「……こんなところでしょうか。すみません、まとまりに欠けて」
「そうか、それが貴様の理由か……ああ、それだけ聞けたなら十分だ」
心に抱え込んでいた理由を吐き出して、少しだけすっきりとしたような気がする。相手が悪魔であったとしても、話を聴いてもらう事で楽になるのだと、不思議な気持ちだった。
「では……問うとしよう。貴様はそれで幸せか?満たされるのか?」
「……」
そして、悪魔は意地悪く笑い、ねっとりと問いかけてくる。
僕は二人の幸せを願った。二人が幸せにならなければ、僕はきっと、幸せにはなれないだろう。しかし、二人が幸せがそのまま、僕の幸せになるわけでもなかった。
結局の所……彼女は彼を選んだし、彼は彼女を選んだ。だから、駆け落ちをする。家を、育った街を捨てて。それは美しい事だけど、それを見送る僕の心境としては、やはり寂しくて仕方がない。無二の親友に会えなくなるのだから。
沈黙は、悪魔の問いかけに対する、僕なりの精一杯の抵抗だった。
「くくく……幸せになりたくはないのか?己の幸せを願う事も出来るのだぞ?」
悪魔の言葉はやはり、恐ろしい程に耳に甘く。"幸せ"という漠然とした一言でさえ、心を揺さぶる。目の前の女悪魔に優しく抱いて貰えたならば……きっと、幸せだろう。あの胸に、太ももに、唇に……どれもが気持ち良さそうだ。不自然な程に、悪魔に気持ち良くして貰う事ばかりが頭に浮かぶ。僕を堕落へと導くかのような、悪魔の魔性だった。
「それでも……お願いします。二人の幸せのために、力を貸してください……必要とあれば……この魂も……捧げます……」
湧き上がる欲望を押さえ込み、魔性に抗い、悪魔の言葉に割り込む。これ以上、甘い言葉を囁かれてしまえば、決心が揺らいでしまうかもしれないからだ。
魂を捧げる。その言葉の重みに、声が震えていた。
「くふふ……そうか、そうか……やはり貴様は愚かだ……」
「っ……」
悪魔の誘いを拒めども、その笑みは邪悪さを増していく。堕とし甲斐がある、と言わんばかりの、嬉しそうな顔。淫靡な捕食者とも言うべき表情。今すぐにでも、食べられてしまいそう。貪り尽くされてしまいそう。それはまさしく悪魔であり、淫魔のようでもあった。
僕を愚かと言うその声さえも、甘く艶めいていて、耳に心地良く、決して不快では無かった。
「愚かな貴様に相応しい対価は……この私への、一夜の服従だ」
「一夜の……服従……」
そして、悪魔が告げた対価は……一夜の服従。悪魔の纏う退廃の色香に、その言葉の意味合いを本能的に理解する。夜の相手をしろと、悪魔に抱かれろと、そう要求してきているのだ。
しかし、悪魔の言葉の意味を理解してなお、困惑を隠せない。わざわざ僕のような男を抱こうなど、物好きにも程がある。
「そうだ。一夜の間……私の所有物となれ。この私が、貴様を抱いてやろう……くふふ」
「それで力を貸していただけるのであれば……願ってもありません。……慈悲深くさえ思います」
そして、服従の期間はたった一夜だけ。僕を支配する事を目的とするのであれば、永遠の服従を突きつければ良いというのに。この悪魔は僕の足元を見ようとしなかった。
僕の持つ全てを捧げる覚悟で悪魔を呼び出したというのにも関わらず、たった一晩抱かれるだけで、力を貸してくれるというのだ。
勿論、相手は悪魔。裏があるかも知れない。しかし、それでも……悪魔の言葉に僕は安堵し、慈悲を感じていた。少なくとも、僕が全てを投げ打つ必要は無くなったのだから。
むしろ……悪魔に抱かれる事を期待してしまっている。人の身では有り得ない美貌と魔性に、心を揺り動かされてしまっていた。
「貴様は友の幸福を私に願い……それと引き換えに一夜の間、私の所有物となる。これで良いのだろう?」
「……は、はい。二人を幸せにしてくれた、なら……一晩、貴女のモノとなると……や、約束、します」
「くふふ……であれば、取引は成立だな」
確認と合意。悪魔の言葉に頷き、震えた声で、約束を交わす。もはや、言い逃れは出来ない。
形はどうあれ……僕は悪魔の思惑に乗ってしまった。引き返せない一線を越えてしまったに違いない。しかし、後悔はなかった。
「ありがとう……ございます……」
無事に交渉を終えた安堵と、対価に対する不安。二つの感情が押し寄せてくる。
一晩の服従。悪魔の所有物になるという事は、何をされても文句は言えないという事だ。悪魔は僕を抱いてくれると言ったが……それが想像しているものと違ったなら。興が冷めて、悪魔の気が変わってしまったなら。幾ら快楽を想起させてくれる言葉があっても、他人に生殺与奪を握られるというのは、やはり不安で仕方ない。
「くふふ……案ずる事は無い。全て、私に任せておけ……今はしばし、食事を愉しむとしよう」
「は、はい……」
不安につけ込むかのように、優しい響き。甘い抱擁を想起させるそれは、まさに庇護者の声。
明日の夜には、何をされても文句は言えない。たとえ、どんなに酷い事をされようとも、それを受け入れるしか無い。それが願いの対価なのだと頭で理解していても……悪魔の言葉はするりと心に入り込んできて。悪魔の言葉に、不安は塗り潰されていく。
このまま全て、悪魔に任せておけば良いのだと……そんな、甘く都合の良い考えさえもが、脳裏に浮かぶのだった。
「うむ、悪くない食事だった……さて、そろそろ駆け落ちの計画について話して貰おうか」
「あ……それなら、計画書が、ここに」
食事を終えた悪魔は、鷹揚にソファでくつろいでいた。組まれた脚、露出したむちむちの太ももが、あまりにも眩しく挑発的。
魅惑の肢体をじっくりと眺めたくなる衝動に抗いながら、駆け落ちの計画書を手にし、悪魔に手渡そうとする。
「ほう……準備が良いな」
「……」
悪魔はソファに腰掛けながら、漆黒の翼を大きく広げて。そして、その隣の場所を、とん、とん……と叩く。
僕はその仕草を前に、思考を硬直させていた。
「どうした?ほら、座れ」
「……は、はい……」
悪魔にそう言われてようやく、隣に座るように促されているのだと気づいて。悪魔の機嫌を損ねるわけにもいかず、恐る恐る、ソファの隅へと腰を降ろす。
背後にあるのは、大きく広がった悪魔の翼。当然、もたれかかる事などはできない。
「さて、計画書を見せてもらうぞ……」
「ど、どうぞ…………」
悪魔は事もあろうに、ぐい、と間を詰めて、身体を寄せてきて。僕をソファの隅に追い詰め、逃げ場を無くして、意地悪く笑う。
押し付けられる悪魔の身体は、とても柔らかく、温かく。女性経験の皆無な僕にとっては、それだけで大変な刺激。
並んで座り、身を寄せられただけで……もはや、緊張のあまり、身動きも取れず、頭が真っ白になる。
「ふむ……なるほど……貴様が作ったのか?」
「っ……はい、大半は私が。同じ物を彼らにも渡してあります。あ……二人の人相についても追記しておきました」
計画書に目を通しながら、悪魔はその翼で、僕を抱き寄せてくる。気がつけばその尻尾も、僕の腰に回されていて。これで、席を立つ事も叶わない。
拘束としてはごく緩いものでも、悪魔の持つ力と、僕の立場を考えた時……それは絶対的。逃げられないように枷を嵌められた、そんな気分。
「そうか……そうだな、十分な下調べに基づいているし、不測の事態に対する行動指針もある。分の悪い賭けである事には変わらないだろうが……この計画書だけでも、十分以上に義理は果たしているだろう。
ああ、それでも私を呼んだのだから…………あぁ、なんと愚かな……」
「ぁ……」
しかし、その枷は、あまりにも甘美な代物だった。翼に抱かれた僕は、悪魔がその身に纏う、退廃の色香に包まれてしまっていて。熟した果実のような、悪魔の香りを吸い込めば、くらりとした陶酔、恍惚。緊張も、重圧も、甘く塗り潰されていく。
低く艶めいたその声で、耳元で囁かれて。悦に入った、邪悪な含み笑い。それは嘲笑などとは掛け離れていて、あまりにも耳に心地良く。背筋にぞくぞくとした快感が走り抜けていく。思考がとろけて、心を惹かれて、堕ちていってしまいそう。
このまま、悪魔に囚われていたい。そんな考えさえもが、頭をよぎる。
「ともかく……これだけの情報があれば十分だ。後は全て、この私に任せておけ……分かったな?」
「は、はい……お願い、します……」
自信に満ちた悪魔の囁き。後の事は全て、悪魔がやってくれる。甘美なその声が、それを信じさせてくれる。
重い肩の荷が、すっと降りていく。身体から力が抜けていくのを感じる。
「分かったのなら……今日はもう休め。ロクに眠れていないのだろう?疲れているのならば、休め」
「え……?でも……」
悪魔の言う通り、友の幸せのために力を尽くした結果として、僕は身も心も疲弊しきっていた。
休息を勧めてくれる、悪魔らしからぬ気遣い。それが、僕に疲れと眠気を自覚させる。
しかしそれでも……まだ、眠れない。出来る事を全て尽くした、ならば次は、二人のために祈りだけでも捧げるつもりだった。
「……休めと言っている。この私が、貴様の友人を幸福に導いてやるのだから……案ずることは無い。
貴様はもう十分に頑張った……だから、休んでいいのだぞ」
「は、はい……」
悪魔は諭すような言葉をかけながら、今までの苦労を労うように背を撫でてくれる。邪悪なはずの悪魔は、溢れんばかりの慈愛と母性を垣間見せてくれて。僕の疲れた心は、その甘美な誘いに抗えなかった。決心は容易く揺らぎ、悪魔の優しい言葉に心を委ねてしまっていた。
「くふふ……聞き分けの良い男は好きだぞ?
しっかりと眠りについて、英気を養え……明日の夜に備えて、な。それが貴様の友人のためにもなる……分かったな」
「うん、分かり、ました……」
僕はくったりと脱力して、悪魔の翼に背を預け、その肩にもたれかかってしまう。そして悪魔は、悦に入った様子でそれを受け止めてくれる。相手は恐れるべき悪魔なのだと分かっていても、このまま無防備に眠りへとついてしまいたくて、仕方がなかった。
それが二人のためになるとまで言われてしまえば、それに抗う事は出来ず。
「このまま眠りたいのだろう……?いいぞ、眠ってしまえ……後は全て、私に任せておけばいい……万事、良いようにしてやる……」
「はい……」
悪魔の優しい囁きが、心に染みこんでいく。その言葉に命じられるがまま、僕は目を閉じる。悪魔の翼による抱擁が今は、ゆりかごのように心地良く。少し前まで不安と焦燥に駆られていた事が嘘のように、僕に安寧をもたらしてくれる。
そして僕は身も心も悪魔に委ね、悪魔に従い、悪魔に導かれて、暗く温かい眠りへと堕ちていく。目を覚ました時にはきっと、僕の願いは聞き届けられ、駆け落ちは成功し、二人は幸せに向かっているのだと……そう信じながら。
「……」
他者のために私を呼び出し、庇護を求めてきた愚かな男。フラクトと名乗った男をベッドへと降ろし、布団を掛けてやる。
安らかな寝息、可愛らしい寝顔。私の言葉を信じ込み、安心した様子で眠りについている。
随分と疲れていたらしく、このまま昼までは目覚めないだろう。
「貴様の願いは、この私が叶えてやろう……必ず、幸福に堕としてやるとも……」
この男が願ったのは、駆け落ちの成功ではなく、"友の幸福"。そう、幸福を願うのなら……貴族の家ごと魔に堕としてやるべきだ。
勿論、この男が予想していた結末ではないが……魔に堕ちてこそ、真に幸せとなれるもの。この男の願いを、最も良い形で叶えてやるのだ。
貴族の家ごと魔に堕としてしまえば、駆け落ちする必要も無い。愛の逃避行と言えば聞こえは良いが、故郷、家族、友人を捨てるのは、少なからず心苦しいだろう。そのような事が無いように、家ごと堕としてしまうのだ。そして、ゆくゆくは、この街全てを堕とす。それが最善だ。
「くふふ……愚かな男め……この私が、すぐに支配してやる……」
悪魔に縋らざるを得ない無力さ。契約の詰めは甘く、容易くそそのかされる。迂闊に悪魔を信じ、身を委ねてしまう。
そして何より愚かなのは、その自己犠牲。他者のために身を削り、自ら幸せから遠ざかっていくその行為は、愚かという他ない。
この男は、自分自身で幸せになれない。我々と比べてあまりにも弱く、あまりにも愚かだ。だからこそ……支配欲を掻き立てられる。可愛らしくて、愛おしくて、己のモノにしたくて仕方がない。
夢のような快楽を与え、自己犠牲など考えられないほどに堕落させて、服従の幸福に染め上げて、身も心も支配してやるのだ。
「おやすみ、フラクト……もう少しだけ、そこで待っているのだぞ……」
痩せた頬を一撫でしてやり、寝室を後にする。離れるのは名残惜しいが、約束は約束だ。そろそろ、準備をせねばならない。
「さて」
召喚の魔導書を、手元に呼び戻す。救いを求め、悪魔との契約を望む想いに呼応して転移し、人を魔にいざなうこの魔導書は、母上から賜った物。
母上もまた、これで父上と出逢ったらしい。これが私とあの男を引き合わせたのだと思うと、運命的な出会いだと、柄にもない事を思ってしまう。
「―――来たれ」
そして、召喚・転移術式を内包したこの魔導書があれば、私の腹心を呼び出す事も容易かった。
「お呼びですか、ディサディアお姉様」
「よく来てくれたな、ソフィ……お前に折り入って頼みがあるのだ。
今夜、貴族の屋敷を堕とすのだが……堕とした後の事を、お前に任せたい。魔物となった事が人間に露見しないように、という事なのだが」
私を"お姉様"と呼び慕う悪魔。私がこの手で同じ悪魔に堕とした者。かつて聖女と呼ばれていた彼女は、その物腰柔らかな部分を残しながら、苛烈な欲望を持つ悪魔となった。
そんな彼女を呼び出したのには、理由がある。言ってしまえば、我儘を聞いて貰うためだ。出来るだけ早く事を済ませて、フラクトの元に戻るため。
「お姉様の頼みとあらば、喜んで。しかし、お姉様が頼み事をなさるなんて……もしや、ついに意中の殿方が……?」
私が彼女に"頼み事"をしたのは、これが初めてだ。上の者が自分の都合を優先していては、示しがつかないという事もあるし……何より、私は部下達を大切に思っていたから、彼女達が伴侶を手に入れ幸せになれるよう、なるべく好き勝手が出来るように、力を尽くしてきた。尤もそれは、フラクトのような、自己の幸せを犠牲にして疲弊するような行為ではなく、むしろ、愉しみの一つであったのだが。
「ああ。弱く、愚かで……とても可愛らしい男だ。今は二階でぐっすりと眠っている。出来れば、あの男が目覚めるまでに事を終えてしまいたい。
……あの男が私に願った物が何か分かるか?友の幸福だ。そのために、魂を捧げても良いと言ったのだぞ……?折角、己の幸せを望める機会だというのに……それを棒に振るのだから……!
あぁ……もはや、私が自ら支配してやる他ないと……私が居てやらねばダメだと思ってな、くふふ……ふふふ……」
「まぁ、なんと羨ましいのでしょうか……私も早く、そんな風に夢中に、支配したくて堪らなくなるような、素敵な殿方に出会いたいものです……」
「くふふ……そうか、羨ましいか……だが、やらぬぞ。あの男は私のモノだ……」
今の私は、あの男の事を最優先に動いているのだという自覚があった。部下達や目の前の妹分は、勿論大切に思っているが……今は、あの男が最優先だ。あの男を、早く自分のモノにしたい。支配欲が、溶岩のように渦巻いている。
「うふふ……あのお姉様が、まるで恋する乙女ですね」
「……私とした事が、柄にもなかったか」
「いえいえ、幸せそうで何よりです」
恋する乙女のようだと言われて、はっとする。私とした事が、思わず本題をそっちのけで惚気てしまっていた。まだ、あの男を完全に手中に収めているわけではないのに、すっかり浮かれてしまっていた。尤も、あの男が私の物になるのは、もはや既に決まった事であるが。
「……その働きにも関わらず、男をモノにする機会に長らく恵まれなかった事は、私もよく知っている。故に今回は……お前だけを先に連れて行く。つまり、選り取り見取り……という奴だな。迷惑料代わりだと思ってくれ」
「本当ですか……!?ありがとうございます……!あぁ、これできっと私にも、素敵な出会いが……いつもは統率を取っている間に、小悪魔の皆に先を越されてしまっていましたから……」
「隠蔽についても、可能ならば他の者に任せ、愉しみに専念させてやりたかったのだが……今夜となると、お前に頼むしか無くてな。あの男が幸福を願った以上……屋敷ごと、家族ごと堕とす事を諦めるのも不本意なのだ。だから"迷惑料"なのだよ」
今夜未明に決行される駆け落ちに先んじて、貴族の屋敷を堕とす。それ自体は容易い事であるが、魔物となった事を社会に隠し通し、溶け込ませる事は、それなりに手間だ。普段は私が面倒を見ている部分ではあるが、今回だけは、私が掛かりきりというわけにはいかない。明日の夜にあの男を抱いてやる事は、揺るぎない決定事項だ。
件の二人だけを堕とす分には、そう手間も掛からないのだが……幸福を願われたからには、家族も一緒に堕としてやりたい。そのためなら、妹分の手を借りる事も辞さない自分が居た。
「あらあら……すっかり、"あの男"に甘々ですね」
「ああ……母上も、父上に対してはこんな気持ちだったのだろうな……
明日の夜に抱いてやる事になっているのだが、今から身体が疼いて仕方が無い……対価は一夜の服従とは言ったが、目覚めるなり押し倒してしまおうか……とさえ思っているよ」
妹分の指摘を否定する気は微塵も起きない。あの男に甘くなってしまっているのは、どうしようもない事実だからだ。まるで、父上に対する母上のように。まだ、身体を重ねてもいないというのに。簡単な口約束しか交わしていないというのに。庇護欲が身を焦がす。身も心も堕とし、契りを交わす瞬間が待ち遠しく、もどかしささえも心地良い。
「ふふふ……私とは比べ物にならない程、行き遅れてらしたのでしょう?長年つのらせた欲望、思う存分に解き放ってきてくださいな、お姉様」
「ふふ、行き遅れと言われるのは不服なのだがな……そうさせて貰うぞ、ソフィ」
愛しあう両親への憧れを抱きながら育ち、私は生きてきた。
行き遅れと言われるのは不服だが……快楽と幸福に満ちた世界に身を置き、数多の女を魔物へと堕とし、男を襲わせてきたにも関わらず、私自身は生娘のままだ。女としての真の悦びを知らなかった。自ら堕としてやった者達は……私の知らぬ悦びを、幸福を手にしていった。それが羨ましかったのは、否定しようのない事実だ。
羨望を糧に、長きに渡り、欲望をつのりにつのらせていた事も、自覚していた。
ああ、だが……注ぐべき相手を見つけた欲望が、これほどまでに狂おしく、愛おしいとは。
あの男に出逢った事で……私は真に、魔に堕ちる。そう思わずにはいられなかった。
「くふふ……ようやく目覚めたな。良い夢は見られたか……?」
「おはよう、ございます……二人は……?」
すっきりとした目覚め。目を開ければ、悪魔が僕を覗き込んでいた。随分と長く眠っていたような気がする。
そして、目覚めてすぐに頭に浮かぶのは、悪魔への願いの、その結末。二人は、無事に駆け落ちする事が出来たのだろうか。それが気掛かりで仕方が無い。
「貴様の願い通り、幸せにしているぞ……?気になるというのならば、今からでも会わせてやろう……くふふ」
「っ……本当、ですか……?」
「ああ、本当だ。貴様には、見届ける権利がある」
「……お願い、します」
幸せを断言するその言葉と、自信に満ちた笑みに安堵する。きっと、滞りなく成功したのだろう。
さらに悪魔は、僕を二人に会わせてくれるという。二人が駆け落ちしてしまえば、もう会えない物だと思っていたのに。既に別れを済ませてある以上、それが無粋であるとも考えたが……二人の無事を、幸せを、確かめたかった。
「此処、は……」
悪魔に連れられ、魔法陣を潜ったその先は……見覚えのある場所だった。そう、親友の、あの人の住まっていた屋敷の中だ。
「これ、は……どう、いう……?駆け落ち……したんじゃ……」
そして……まだ日が昇っているというのに、目の前の扉からは、男女の声が漏れ聞こえている。人の物とは思えない程に艶かしい、女の感じ入った声。うわ言のような、夢見心地のような、男の声。
二つとも、僕の親友の声。僕がよく知っているはずの声なのに、僕の知っている名前を呼びあっているのに、今の今まで聞いた事が無い程に、幸福に満ちていて。
それ以上はもう、何が起きているのか、僕の頭がついてこなかった。
「くふふ……どうした?貴様の願いを叶えてやったのだぞ?もっと喜べ……あんなに幸せそうな声が聞こえてくるではないか……」
「なんですか、これ……っ」
愉悦に満ちた、悪魔の笑い声。絡め取るように、後ろから抱きすくめられる。後頭部に押し当てられる、魅惑の柔らかさ。でも、今はそれどころではなかった。
二人の声は、確かに喜悦に満ちている。確かに、二人は幸せそうにしている。それは、僕が望んだ事だ。しかし、それ以外の何もかもが予想外だった。あまりにも幸せそうで、異常であるとさえ思ってしまった。
「何か、だと……?女を魔物に変えてやったのだ。その男の事を愛し求めて止まない淫魔であり……この私と同じ、悪魔に。
ほら……二人とも、人の身では想像もつかない快楽と幸福を貪っているぞ……?」
「魔物……そんな……冗談……」
そして、悪魔に囁かれた言葉は……信じ難かった。信じたくなかった。親友が、魔物になってしまっただなんて。もう一人の親友が、それに襲われているだなんて。
しかし……聞こえてくる嬌声が、その変化を物語っていた。淫魔になってしまったとしか思えない程に、淫らな声だった。
魔物が人を喰らう事は無い、と知っていても、それは受け入れ難かった。人をさらい、欲望のままに慰み者にする存在。魔物となれば最後、人には戻れない。
「ほら……冗談だと思うのなら、その目で確かめてみろ。貴様にはその権利がある」
「っ…………それは……ふたりの、邪魔に……」
悪魔にそそのかされ、ドアノブに手をかける。しかし、そこで手が止まる。ドアノブを回せない。
確かめるのが怖いわけでは無い。確かめなければいけないと思っている。
ただ……こんな状況だというのに、二人の邪魔をしてはいけないと、そう、思ってしまった。
扉から漏れる二人の声は、二人だけの世界を形作っていた。それが幸福に満ちているのは、否定しようの無い事実だった。
「くふふ、そうか、そうか……あぁ、貴様という男は、ここまで遠慮がちなのか……ますます気に入ったぞ……?」
悪魔の言葉通り、この期に及んで僕は……いつものように、二人に遠慮してしまっていた。
「ならば……邪魔をしないように、確かめさせてやろう。あぁ……この魔術で透明に見えるのはこちらからのみだ、気付かれはしない」
悪魔が何か呪文を呟くと、扉の色彩が、霧が晴れるかのように、ゆっくりと薄れていく。
「っ……」
透明となった扉の向こうでは、僕のよく知る二人が、身体を重ねていた。
騎乗位で腰を跳ねさせる女性の、青い肌、漆黒の翼と尻尾。彼女は、邪悪な悪魔の姿に変わり果てていた。より淫靡に、より美しく。人外の美貌と魔性を備えた、僕をそそのかした悪魔と同じ姿に。
「くふふ……素晴らしい光景だとは思わぬか?」
「ぁ……」
支配的な女性上位の交わり。魔物が男を貪り尽くす、背徳の体位。しかし……それから受ける印象は、僕が想像していた魔物との交わりと掛け離れていた。決して、慰み者にされているようには見えなかったのだ。
二人は指を絡めて両手を繋ぎ、深く、深く見つめ合っている。時折、情熱的に唇を重ねている。お互いがお互いを受け入れて、求めあって、満ち足りた表情をしている。二人の表情に、苦悶や悩み、後悔といった感情は全く見受けられなかった。思いを遂げた幸せに染まっていた。
一見すれば、淫魔の捕食のようにも見えるこの交わりは、まさしく愛の営みで。淫らさとともに、美しささえ感じてしまう光景だった。
僕は、二人の交わりに魅入ってしまっていた。
「これが、魔物による支配。快楽による支配。そう、悦びに満ちた支配だ……」
悪魔と化した彼女は、欲望にぎらついた瞳で恋人を見下ろしていた。
繰り返し紡がれる、"私のモノ"という言葉。その声に滲むのは、貪欲な支配欲。
主導権を完全に握り、望むがままに、欲しいがままに恋人を貪り尽くし、邪悪な笑みを浮かべている。そこに貴族の抑圧はなかった。
これは愛の営みでもあったが、確かに"魔物による支配"でもあって。
しかし、その邪悪さに相反して……精を啜り取られている僕の親友もまた、曇りない恍惚の表情を浮かべていた。貪られる事を望んでいるかのように、それを嬉々として受け入れていた。悪魔となった恋人の支配を、悦んで受け入れていた。まさに、悪魔の虜となっていた。
「っ……でも……こんなことっ……」
悦びに満ちた支配。魔への堕落。親友の片割れは淫らな悪魔へと変貌してしまい、もう片方もまた、その虜に。こうなってはもう、人の営みには戻れない。
僕は取り返しのつかない事をしてしまった。僕の願いが、二人を変えてしまった。その重みを受け入れられなかった。
「何を気に病む必要がある……貴様の願いが、二人を幸せにしたのだぞ……?
貴様が願い、私が叶えた。貴様が願ったからこそ、二人は真に結ばれたのだ。
後の事が心配か?案ずるな……それも既に手を回してある。二人はこの先も、永遠の幸福を貪り続けるのだ……」
「ぁ……僕が……二人を……」
僕が自責の念に駆られるよりも先に、悪魔は囁いてくる。
僕の願いが、二人を幸せにした。それもまた事実だと、悪魔は言ってくれる。
「くふふ……二人同時に果てる姿の、なんと幸せそうな事か……これも、貴様のおかげだ」
「僕の……おかげ……」
目の前で繰り広げられる、愛と堕落の果て。絶頂に次ぐ絶頂。それが幸福に満ちている、もはや疑いようがなかった。理性の外で受け入れざるを得なかった。これが幸福なのだと、感じずにはいられなかった。
そして、その幸福と僕を結びつけ、肯定してくれる悪魔の言葉は、あまりにも甘美で。
「そうだ。堕ちたあの子達も、貴様と私に感謝していたぞ……貴様が気に病む事など、何一つない。目の前の幸せがその証拠だ。分かったな……?」
「はぃ……」
二人が、感謝してくれている。それは、僕の望んだ言葉だった。悪魔はその囁きで、憂いを拭い取ってくれる。疑問を、抵抗を、優しく溶かしてくれる。
そのおかげで僕は……目の前の光景を受け入れる事が出来た。
「ふふ……良い子だ……そう、あの二人の願いは叶った。そして、貴様の願いも果たされたのだ……」
「ありがとう、ございます……願いを、叶えてくれて……」
魔に堕ちる事で、二人は幸せになれた。僕の願いは、叶ったのだ。それも、想像すらしていなかった程に幸せな形で、この悪魔が叶えてくれた。
僕の願いを叶えてくれた悪魔には、心からの感謝を捧げずにはいられない。
「くふふ……礼も良いが、対価を忘れたとは言わせぬぞ……?」
「はい……ど、どうぞ……すきな、ように……」
そして……願いを叶えてくれた悪魔には、対価を払わなければならない。いや、対価を払いたかった。言葉だけのお礼ではなく、しっかりと、悪魔に報いたかった。一夜の服従……それが、正当な報酬だ。
それでも、身を捧げる事に対する不安と羞恥はどうしようもなく、声が震える。
だが、それと同時に僕は……期待に胸を膨らませていた。悪魔に身を捧げる事の、禁忌の味が如何に甘美なものか……目の前の光景に、それを想像しない事など出来なかった。
「あぁ、どうしてやろうか……こんなに滾らせて、いやらしい奴め……」
「ぁ……っ……」
悪魔は僕を後ろから抱きすくめたまま、ねっとりと絡みつくような手つきで、身体をまさぐってくる。
そして、悪魔の視線は、欲望に抗えない僕の股間へと注がれていた。隠しきれない程に硬くなったモノを、服越しにそっと撫でられてしまう。たったそれだけで、腰が震えてしまう。気持ち良い。
「くふふ……あんな風に、犯されて、貪られて……気持ちよくして欲しいのだろう……?」
「……そ、そんな……ぁっ……」
魔に堕ちた二人の交わる光景を前に、湧き上がる欲望と期待、そして羨望。それを見透かした悪魔は、意地悪く問いかけてくる。
恥ずかしくて、とても肯定する事など出来ない問い掛け。しかし、否定も出来ない。
「沈黙は許さぬぞ……?欲望に正直に答えろ……」
「ぁ、うぅ……」
しかし悪魔は、重ねて僕に"命令"する。僕は、それに抗ってはいけない。服従が僕の支払う対価。正直に答える事を求められたなら、逆らえない。
なんとか、正直に肯定しようと思うが……それは、あまりにも恥ずかしい事で。女性の前で、浅ましい欲望を口にするなど、そう簡単にできなかった。
「恥ずかしがらずともよいのだぞ……?くふふ……」
「っ……ぁ……」
僕が羞恥に震えて躊躇っている隙に、悪魔は僕の正面へと、するりと回り込んできて。顎に手を添えられ、くい、と上を向かされてしまう。
恥ずかしがっている僕の顔を覗き込み、悪魔は邪悪な笑みを浮かべる。僕に意地悪をして愉しむ、その表情もまた美しく魅力的で、どうしようもなく見惚れてしまう。
「私の目を見て……素直に答えろ……」
「っ……きもち、よく……して……ほしい……です……」
欲望に爛れた悪魔の眼差しが、さらなる期待を湧き上がらせる。見つめられるとぞくぞくして、恥ずかしくて、気持ち良い。気持ち良いけど、恥ずかしい。
羞恥で頭の中を真っ白にしながらも、僕はついに、悪魔の命令に応えてしまう。悪魔に欲情しているのだと、認めてしまう。
欲望を打ち明け、快楽をねだるその行為は、格別の羞恥と高揚感、そして解放感を伴っていて。癖になってしまいそうな悦楽を孕んでいた。
「くふふ……良い子だ……」
「ぁ…………」
そんな僕の欲望を聞き出した悪魔は、愉悦に満ちた表情を浮かべてくれる。そこに失望や軽蔑、嫌悪はなく、浅ましく穢らわしいはずの僕の欲望を、肯定して、褒めてくれてまでいる。それが堪らなく嬉しく、喜ばしく……邪悪なはずのその表情が、まるで聖母の微笑みのようにさえ思えてしまって。悪魔に心を奪われてしまいそうだった。
「私の城で、たぁっぷりと可愛がってやろう……さあ、私に抱きつけ。一緒に転移するぞ」
「え、あ……抱きつ……こう、ですか……?」
眼を合わせたまま、悪魔はさらなる命令を僕に下す。その命令もまた、嬉しくも恥ずかしい。小柄な僕に対し、悪魔は長身。その豊満な胸は、僕の頭と同じ高さにあるのだ。
命令だからと自分に言い聞かせ、おずおずと悪魔の肢体に抱きつけば、眼前には魅惑の谷間。
女性の身体に触れるのは……特に、胸に顔をうずめるのは、あまりにも恐れ多く。出来るだけ控えめに抱きつくが……それでも、甘い香りが漂ってきて、くらりとしてしまう。
「くふふ、初心な奴め。もっとくっつけ……離れないようにしっかりと……腰も、頭も」
「ぁっ……はぃ……」
勿論、悪魔がそのようなやり方で満足するわけはなく。無慈悲に、意地悪に、密着する事を要求してくる。
悪魔に命じられるがまま、ぎゅっと抱きつき、胸の谷間に頬を押し付ける。そこにあったのは、この世のものとは思えない至福の感触。何処までも沈み込むような柔らかさと、瑞々しくぷるんとした弾力。絹も比較にならないほど滑らかなのに、すべすべと吸い付いて離れない。相反する感触を併せ持ち、たわわに実った悪魔の胸は、まさに禁断の果実。一度その感触を味わってしまえば、もはや虜。頬擦りをして、その感触を堪能せずにはいられない。恍惚となってしまう。
「どうだ、私の身体は……心地良いだろう?」
「はぁ……きもちいいです……」
悪魔の身体の素晴らしさは、その胸だけに留まらなかった。むっちりと肉付きの良い肢体は、深い包容力をもって、僕を柔らかく受け止めてくれる。きゅっとくびれた腰周りは、僕の腕を歓迎してくれているかのようで、まさに極上の抱きつき心地。
不意に手が触れた大きなお尻は、もう一つの魅惑の果実。触れた手を、離せない。ぎゅっと鷲掴みしてしまえば、むにむにと、みっちりと柔肉の詰まった、濃密な揉み心地。
言われたとおりに、目一杯身体を密着させれば当然、滾りきった僕のモノを、悪魔のお腹に押し当ててしまっていて。その羞恥心に思考を灼かれながらも、僕は、抱きつく事をやめられなかった。
「可愛い奴め……さ、此処が私の部屋だ。もう、離れてもよいぞ」
「はぃ……」
視界が光で白く染まり、そして光が消えていく。横目でぼんやりと視界に収めた光景は、確かに見慣れぬ寝室。どうやら、本当に転移してしまったらしい。
そして悪魔は……僕に与えた命令を解く。もう、抱きつかなくていいのだと。
「くふふ……どうした、離れないのか……?」
「ぁ……ぅぅ……」
命令は解かれた。僕が悪魔に抱きついている理由はもはや無い。そう分かっていても、僕は悪魔に抱きついたまま、離れられなかった。
離れたくなかったのだ。悪魔の気持ち良い身体を、もっと、もっと、味わっていたい。羞恥心を上回る欲望。それが、僕が悪魔に抱きついている理由。
僕は、僕の意思で、悪魔に抱きついてしまっている。抱きつきたくて、抱きついてしまっている。その事実を突きつけるかのように、悪魔は意地悪く笑う。邪な自分を自覚させられ、羞恥心が膨れ上がる。それでも、悪魔から離れられない。そんな自分が恥ずかしい。でも抱きついていたい。気持ち良さを手放したくない。感情がせめぎ合って、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまいそうだった。
「そうか、そんなに私の身体が気に入ったか……欲望に素直なのは良いことだぞ……?」
「っ……むぅ…………」
そして、またもや悪魔は、僕の欲望を肯定してくれる。甘い囁き、熱烈な抱擁。
その胸にぎゅっと抱きこむようにして、魅惑の谷間に、僕の顔をうずめさせてくれる。その上で、しっとりとした手つきで、頭を優しく撫でてくれる。悪魔の翼に包まれてしまえば、安心感さえ湧き上がってくる。
悪魔に甘やかされるのは、心がどろどろに蕩けてしまいそうな程に気持ち良く……それでいて、とても興奮した。
「くふふ……この甘えん坊め……」
「んむ……んぅ……」
むにゅむにゅと、顔に押し付けられる禁断の果実。至福の柔らかさに包まれて、挟まれて、もみくちゃにされて。悪魔のおっぱいの感触を、これでもかと味わわされてしまう。それはもう、愛撫と言ってもよい程に気持ち良かった。
そんな中、谷間に詰まった、甘い女体の香りをめいっぱい堪能する。濃密な堕落の香りに、頭の中が染め上げられていく。
生まれて初めての、夢のような甘い体験。これもまた、悪魔の思惑通りだと分かっていても、その甘美さには、もはや抗う気さえ起きなかった。
「ほら、じっくりと甘えさせてやるぞ……?ベッドの上で、な……」
不意に、ふわりと僕達の身体が浮き上がる。そして、軟着陸。抱き合ったまま、ふかふかのベッドに身体を横たえる。
「さあ、私の胸に溺れて、堕ちてしまえ……」
「はぃ……」
悪魔の豊満な肢体は、極上の肉布団となって、僕の身体を受け止めてくれて。そのはち切れんばかりの豊乳もまた、僕の枕になってくれる。まるで恋人のように、脚を絡めて、擦り合わせてくれる。愛でるように、頭と背を撫で回してくれる。
堕落へと誘おうとする言葉は、甘える事を受け入れる赦しの言葉。
そんな悪魔の囁きに従い、心地良さに身を任せれば、もはや夢見心地。僕は夢中になって、悪魔の胸に甘え、甘美な抱擁に身も心も委ねていくのだった。
「はぁ……ぁ…………」
悪魔の胸に抱かれ、たっぷりと甘やかされて、頭の中はもはや、とろとろに蕩けきってしまっていて。刷り込むように何度も囁かれる堕落の囁きに、思考はすっかり陥落済み。
悪魔の抱擁に、その胸に心を囚われてしまったのだと自覚しながら、その事実に言い知れない悦びさえ覚えていた。
そして……気がつけば僕は、悪魔の胸に甘えながらも、腰を擦り付け始めてしまっていた。
「ん……ふふ……甘えるだけでは満足出来なくなってきたようだな?」
「はぃ……」
甘美な抱擁の最中でも、快楽への欲望は、確かに掻き立てられていて。それがついに、甘やかされる心地良さを上回り始めていた。
もっと気持ち良くなりたい。気持ち良くして貰いたい。快楽が欲しい。
気が付いた時には既に、辛抱堪らず。このまま、服越しに腰を擦り付けているだけで、呆気なく果ててしまいそう。
しかし僕は目の前の悪魔に、これ以上無い期待を寄せていた。きっと、想像もつかない程に、僕の事を気持ちよくしてくれるのだと。
僕は、甘えた声で悪魔に応え、張り詰めた肉棒を押し付けて快楽をねだってしまっていた。
「くふふ……ならば、さらなる快楽を教えてやろう……」
「ぁっ……むぅっ……」
悪魔に抱かれたまま、体勢は上下逆転。今度は、悪魔が上で、僕はその下敷き。悪魔の身体は、その重みさえも心地良く。受け止められるのと、覆い被さられるのでは、その柔らかさもまた違って感じられる。
特に、息も出来ない程に押し付けられる母性の象徴は、また格別。先程まで身も心も預けきっていたおっぱいが、今度は一転、その柔らかさで僕を甘く責め立てて来るのだから、もう堪らない。
「窮屈なのは嫌だろう……?今、外に出してやるぞ……」
「ぷはっ……ぁ……」
僕が息苦しさを感じる前に、悪魔は身体をどけてくれる。そして、僕のズボンと下着を、あっという間に脱がしてしまう。
「あぁ……こんなに滾らせて……くふふ、ふふふ……実に美味そうだ……どう味わい尽くしてくれようか……」
「ぁぅ、ぁぁ……」
自分のモノとは思えない程に、硬く張り詰めてしまった僕の肉棒。それがついに、露わにされてしまう。
悪魔はそれを見下ろして、にたぁ、と口角を吊り上げる。そして、じっくりと舐め回すように視線を注ぎながら、舌舐めずり。
硬くはなったものの、恐らく人並みより小さめで、皮まで被ってしまっている肉棒を、じろじろと視姦されてしまって。
悪魔の抱擁にとろけた頭でも、やはり羞恥心は拭いきれず、情けない声をあげてしまう。
「此の期に及んで恥ずかしいか?まったく、可愛い奴め……くふふ、上も脱がせてやろう。じっとしているのだぞ」
「は、はぃ……ぁっ……」
悪魔の手によって、服が脱がされていく。強引に剥ぎ取るのではなく、服の内側に潜り込んだ指が素肌を撫で、僕を丸裸に剥いていく。
「っ……あまり、みないでください……」
男らしさとは掛け離れた僕の身体。背は低く、痩せ細っていて、弱々しい。僕は、僕の身体があまり好きではない。
それをまじまじと見られるのは、単なる羞恥に留まらず、劣等感を刺激されるものであるはずだった。
「何を言っているのだ……あぁ、なんと華奢で、なんといやらしい身体か……まったく、堪らぬな……」
「ひゃっ……ぁっ……」
しかし、僕を見下ろす悪魔の表情は、うっとりと囁かれる言葉は、喜悦に満ちていて。
そして、その爪先で、つぅ……と身体中をなぞられる。喉元、肋骨の間、へそ、足の付け根……どこをなぞられても、ぞくぞくとした快楽が身体を走り抜ける。
「少し撫でてやっただけでこれか……まるで生娘だな……?」
「っ……ぁ……」
ねっとりと肌を這い回り、執拗に撫で回すような、悪魔の愛撫。悪魔の手の、吸い付くような肌触りが、僕の身体を責め立てる。それが、うっとりとしてしまうほど気持ち良い。
そして、悪魔は吐息がかかる程の距離まで、その顔を近づけてきて。
「くふふ……さあ、女を知らぬその身体、心ゆくまで貪ってやるぞ……」
「はぃ……どうぞ……」
眼前で見せつけられるのは、底無しの欲望を湛えた、とびきりの邪悪な笑顔。それが、僕の劣等感を悦びに塗り替えてくれる。
悪魔が僕に向ける激しい欲望。それは、悪魔が僕を求めてくれている……どんな形であれ、僕に価値を認めてくれている事に他ならなかった。
畏怖を覚える程の美しさと、肯定の悦び。悪魔の笑顔に見惚れて、恭順と期待の声を漏らさずにはいられなかった。
「あぁ、まずは……その唇の純潔を奪ってやろう……徹底的に、な」
「ぁ……き、キス……」
青く艶めき、潤いに満ちた悪魔の唇。その隙間から紡がれる、甘い宣告。
僕の初めての口づけは、悪魔に奪われてしまう。願わくば未来の妻に捧げたかった純潔を、悪魔に捧げる事になってしまう。それは、本来なら忌避すべき事だ。
けれども、それ以上に……目の前の光景に、悪魔の言葉に、期待を抱いてしまう。
ぷるぷるの唇の間から這い出る、唾液にぬらついた青い舌。これ見よがしな舌舐めずり。唾液を塗られたその唇は、より一層つやめいて。
あの柔らかそうな唇の、舌の感触を、徹底的に味わわされてしまう。そんな甘美な想像で、頭がいっぱいになってしまっていた。
「ほぅら、捕まえたぞ……?」
「ぁ……」
悪魔の手が、僕の頬に添えられる。キスから逃れる事のできないよう、しっかりと捕らえられてしまう。
「私の味を、しっかりと覚えろ…………ん…………」
そして、悪魔の唇が、ゆっくりと近づいてきて。そっと、唇が重ねられる。
貪るという言葉とは程遠い、優しい口付け。触れ合った唇は、愛おしさが込み上げてきそうな程、ふんわりぷるぷると柔らかい。
初めてのキスは、まるで恋人同士のようで。悪魔との交わりが禁忌である事を忘れさせてくれる。僕は目をつむり、さらなる口づけを心待ちにしていた。
「んふ……ん……む…………」
少し間をおいて、軽く押し付けられ始める、愛しい唇の感触。成熟しながらも瑞々しく、僕の唇を包み込んでくれるような、至福の柔らかさ。軽く触れ合っているだけでも気持ち良く、心が満たされる。
まるで、悪魔の唇の感触が、僕の唇に染み込んでいくかのよう。じっくりと、穏やかな心地良さに浸されていく。そんな、長い長い口づけ。
このままずっと唇を重ねていたいとさえ思ってしまう。
「ぁむ……んむ……」
そっと唇を押し当てるだけのキスから、ねっとりと絡みつくようなキスへと、緩やかに移り変わっていく。
決して唇同士を離すことなく、ついばむように、食むように。何度も、何度も、緩急をつけて、少しずつ違ったやり方で、丹念に繰り返し、余すことなく。悪魔の唇を、執拗に味わわされていく。そして、僕の唇もまた、悪魔に味わわれてしまう。
徐々に高まっていく性感、敏感になる唇。垣間見える邪悪さとは裏腹に、ただひたすらに心地良く、とろけるように甘美な快楽。心を、奪われていく。
「んむっ……ぁむ……んっ……ちゅぅぅ……」
悪魔のキスは、どんどん激しくなっていく。熱烈に吸い付かれて、唇を押し付けられて。まるで、悪魔の唇に、僕の唇を食べられてしまっているかのよう。
貪るという言葉が相応しい、捕食めいた唇の重ね合わせ。気がつけば僕は、それを心から受け入れ、キスの甘美さに夢中になってしまっていた。
「んふ、ちゅっ……れる、んむぅ……」
愛撫に愛撫を重ねられ、もはや融け落ちてしまいそうな僕の唇。そこに襲いかかってくるのは、艶めかしくぬめった悪魔の舌。唇とはまた違う、みっちりと肉の詰まった、しっかりとした形を持った柔らかさ。すっかり出来上がった僕の唇を、キスの最中、器用に撫で回して、舐め上げて、なぞって、つつきまわして。
悪魔の舌がもたらしてくれる、唇よりも遥かに濃密な快楽に、僕は容易く心を奪われてしまう。
「んむっ……んっ、れろ……」
そしてついに、悪魔の舌が、僕の口内へと侵入してくる。甘い唾液に塗れたそれは、まるで包み込むかのように、僕の舌へと絡みついてくる。舌同士が擦れ合うのは、想像よりも遥かに心地良く、気持ち良い。悪魔の舌を拒む事など、考えさえもつかなかった。
「んむ……んんっ……ふぅっ……ちゅぅぅ……」
隙間ない吸い付きの最中、悪魔の舌は、緩慢ながらも複雑な動きで、僕の舌を責め立てる。念入りに舌を絡めて、擦り合わせてきて、その動作一つ一つが、まるで快楽を刷り込むかのよう。舌の芯まで、夢のような甘美さに犯されていく。
舌伝いには、とろりとした悪魔の唾液が、とめどなく流れ込んでくる。決して飽きる事なく、味わえば味わう程に病み付きになってしまうそれは、堕落の甘み。それもまた、念入りに味わわされてしまう。
「んぅ、ん、んく……」
悪魔にされるがままになりながらも、与えられた甘露を飲み込む。
悪魔の体液をこの身に受け入れる行為は、確かな背徳感を孕んでいるけれども、今はその背徳感さえも心地良い。
悪魔の雫に、喉の奥が熱く火照って。融け落ちてしまいそうな熱が、身体中に沁み渡っていく。ぬるま湯のような心地良さと、熱い快楽が同居している。
その熱の甘美さに魅入られた僕は、悪魔の唾液をも受け入れ、悦んで飲み干し続けていた。
「んむ……んっ……んふふ……」
悪魔の舌が弄ぶのは、僕の唇や舌だけにとどまらない。探るように、艶かしく舌先が這い回っていく。舌の付け根、頬の内側、歯茎の裏側。執拗に、入念に、僕の口内をくまなく味わい尽くすかのよう。
悪魔の舌がもたらす魔性の快楽に、僕の口内は隅々まで征服されてしまう。そこまでされてなお、悪魔のもたらす快楽は、深い心地良さの塊だった。
そして、征服者はキスの最中、愉しそうな音色を漏らしていた。それが、嬉しい。
「ん……む……」
僕の口内を征服し尽くしてようやく満足したのか、悪魔の舌はゆっくりと這い戻っていく。夢のような心地良さをもたらしてくれた悪魔の舌が、帰っていってしまう。それが、名残惜しくて仕方が無い。
僕はたまらず、己の舌を差し出してしまっていた。
「んちゅるっ、じゅるっ……ふぅっ……」
こうなる事を予期していたかのように、悪魔は、僕の舌先をその唇で捕まえてきて。そして、その唇の吸い付きによって、舌を突き出す格好を強制されてしまう。
そして、そのまま悪魔の唇が、ゆっくりと前後しはじめて……
悪魔の唇に、舌をすっぽり包まれたまま、吸い付かれて、囚われて。ちゅるちゅると、何度も何度も、その柔らかな唇で、舌をしごきあげられてしまう。
「ふぁ、ぁ、ぁ…………」
激しくも倒錯的な舌責めとは裏腹に、その心地良さは、あまりにも深く。往復の最中、時折自由となった唇の隙間からは、自分のものとは思えないほどに蕩けきった、感じた声が漏れだしていた。
心が弛緩して、どんどんと深みへと嵌っていく。堕ちていくという言葉が相応しかった。
「じゅる、じゅるるっ、ちゅぅぅっ……んくっ、んふふ……ずちゅっ……」
再び重ねられた唇、熱烈な吸い付き。舌を、唾液を、根こそぎ吸い上げられてしまう。吸い上げた僕の唾液を、悪魔は美味しそうに喉を鳴らし、飲み下して。一度だけでは足りないと、執拗に、じゅるじゅると唾液を啜り取られてしまう。
捕食めいた激しいキスがもたらしてくれるのは、魂を啜り取られてしまうかのような、うっとりとした心地。深く甘美な恍惚に、心が呑み込まれていく。
「んっ、ちゅぅぅ、じゅるっ、ふぅっ、ずちゅ、れろぉ、あむっ、んふふ、ふふふっ……」
たっぷりと唾液を啜りとっても、悪魔はまだまだ満足しない様子で。これからが始まりだと言わんばかりに、舌を絡め直してきて。先ほどよりもさらに執拗に、執念深く、欲深く、徹底的に。悪魔は、思うがままに僕を貪って、溺れそうな程に甘い唾液を流し込んできて、止まらない。
好き放題されているというのに、その行為はどうしようもなく心地良い。底無しの甘美さが唇を蝕み、舌を融かし、頭の中を染め上げて、心を犯して、満たしてくれる。至福のあまり、永遠に貪り続けて欲しいとさえ思ってしまう。そうしてくれたら、もっと、もっと、心地良く、気持ち良くなれてしまいそう。
終わりの見えない、初めてのキス。どこまでも深く堕ちていくような快楽は、まさに堕落へのいざないだった。
「あぁ……実に美味だったぞ……?」
「はぁぁ…………」
あまりにも徹底的な初めてのキスを終えて、悪魔は恍惚の声をあげる。どれだけの間、好き勝手に貪り尽くされたのか、もう分からない。一瞬たりとも途切れない、一続きのキスだったという事はわかる。
頭の中も、口の中も、身体の中も、底無しの甘美さで、どろどろに蕩かされて、堕とされてしまった。
抗えなかった、拒めなかった。そんな考えを抱く事さえも出来なかった。
悪魔は、最初から最後まで、忌避感も恐れも、悪い感情を一片たりとも抱かせる事なく、ただただ甘美に、僕を貪り尽くしてくれた。
キスだけで足腰が立たない。長い時間を掛けて、徹底的に刷り込まれた快楽。その余韻は、染み付いて離れない。消える気配を見せない余韻にどっぷりと浸り、心を囚われて。僕は完全に、無防備にされていた。
「どうだ?初めての味は……」
「はぁ……ぁ……」
「くふふ……すっかり出来上がったな……たっぷりと啜ってやった甲斐がある」
快楽の余韻が身体を支配して、くったりと力が抜けたまま。意識は甘くもやが掛かって、夢見心地。そんな状態でも、悪魔の言葉は、するりと頭に入ってくる。
僕の初めてのキスは、決して忘れられない、あまりにも気持ちいいものだった。何もかもを塗り変えて、一番の思い出になってしまう程。
そんな僕の様子を見下ろす悪魔は、とても上機嫌。
「さて、次は……もーっと気持ち良い事をしてやろう……」
「ぁっ……」
あの夢のようなキスよりも、もっと気持ち良い事。悪魔の囁きに導かれて、とろけた思考がさらなる期待に染めあげられていく。
「はぁん……こんなにも物欲しそうに、食べて欲しそうにして……あぁ、なんと美味しそうな匂いか……」
「ぁ、ひぁ……」
悪魔の視線が注がれるのは、もはやはち切れんばかりにそそり立った僕の肉棒。あまりの心地良さに今まで気づかなかったが、キスの快楽だけで暴発寸前にまで追い込まれてしまっていた。
僕の肉棒は、未だに皮を半分被ったまま。けれども、キスの興奮のあまり、ほんの少しでも悪魔に触れられてしまえば、そのまま果ててしまうに違いない。
そんな僕のモノに、悪魔は顔を近づけ、うっとりと吐息を漏らす。その吐息でさえ感じてしまって、思わず情けない声が漏れる。
「んふふ……私のために、たぁっぷりと精を溜め込んでいるのも分かるぞ……?この私の糧となるために……くふふ……」
「ひぅ……ぁぁ……」
悪魔の手が伸びた先は、肉棒ではなく、狂おしい程の熱が渦巻く玉袋。その滑らかな掌で、愛おしげに包み込んで、優しく揉みしだいてくれる。
その快楽は射精には繋がらないものの、これから僕は悪魔にイかされてしまうのだと、精液を搾り取られてしまうのだという事を、とろけた頭に教えこんで、興奮と期待を大いに煽り立ててくれる。
「さぁ……いま味わってやろう…………ん……ちゅぅ……」
「ぁ、ぁぁっ……」
皮に包まれたままの肉棒の、亀頭が露出したその先端。
悪魔は、僕の心を奪ったその唇で、敏感な先っぽを咥えて、吸いついてきて。それは、肉棒への甘いキス。優しい快感に導かれて、溜まりに溜まっていた僕の高まりが、解き放たれた。
「ちゅぅ、ちゅ……ちゅぅぅ、ぢゅぅぅ……」
「はぁぁ…………」
悪魔の唇がもたらしてくれる快感は、無理矢理に精液を吸い出すようなものではなく、射精を導き促してくれるような、格別に甘い吸引感。
どぷん、どぷん、と、熱く滾った精液が肉棒を通り抜けて、悪魔の唇に一滴残らず吸い上げられていく。肉棒は壊れたように大きく脈動しているというのに、どこかゆったりとした、とろけるような大量射精。
夢見心地な未知の快楽に、僕は恍惚の息を漏らして、なるがまま。
「んくっ、ちゅぅっ、ぢゅるっ、んっ……」
「ぁ……はぅ……」
確かな粘りと密度を持った特濃の精液を、悪魔はまるで飲み物であるかのように、こくりこくりと飲み下し、喉を鳴らす。
溢れ出す精液を全て、悪魔に直飲みされてしまう。その光景に僕は、言い知れない興奮と悦びを感じて、それがまた、快楽を後押しする。
絶頂が、脈動が、精液が、気持ち良さが、止まらない。いつもならばすぐに終わってしまうはずの快楽が、途絶えない。玉袋の中が空っぽになってしまいそう。
玉袋に添えられた手もまた、脈動に合わせ、やんわりと射精を後押ししてくれて。極上の放出感に、いつまでも浸っていたい。そんな僕の欲望を、叶えてくれようとしているかのようだった。
「ちゅぅぅぅぅっ……んっ……」
「ぁぅ……」
長い長い射精の最後を彩ってくれるのは、尿道口への執拗な吸い付き。悪魔の唇は、正真正銘一滴残らず、僕の放った精液を吸い取ってくれて。最後の最後まで、あまりにも幸せな射精感。
「っ……んくっ、んっ、んん……ちゅぱ……はぁぁ……ぁん……んふふ……すばらしい……」
僕の精を飲み干してようやく、悪魔は僕の肉棒を解放し、うっとりと息を吐く。
「はぁ……月並みな言葉だがな……これほどの美味は、生まれて初めてだ……あぁ、まだ、こんなに喉に絡みついて……なんと心地良いのだ……」
恍惚を滲ませた悪魔の言葉。僕の精を美味だと言うその言葉は、真に迫っていた。それは、僕の用意したご馳走を食べた時とは、比べ物にならない。
これが悪魔にとっての"食事"なのだと、言外に示していた。
「これが、貴様の味……舌も、喉も、身体の内まで融けてしまいそうだ……くふふ、実に良かったぞ……ますます気に入った……」
「ぁ……」
上目遣いに僕を見据える悪魔は、まさに御満悦というべき表情。すっと細めたその目の奥の眼光は、さらなる欲望を湛えていて。
視線を交わせば、背筋がぞわぞわと震えて、先にもまして力が抜けていく。僕は"食べられる側"なのだと、身体が理解する。
「あぁ、だからこそ……これで終わりなど、枯れ果てるなど、絶対に許さぬぞぉ……?」
「ひぁ、ぁ…………?」
そして、あまりにも甘美な射精の、その余韻に浸っていた所に、突如襲いかかる快楽。空になった玉袋を労うように、まるでマッサージするかのように、悪魔の手が蠢いて。
それだけではなく……悪魔の手を通して、どろりと熱い何かが、玉袋の中に染み込んでくる。
侵食されるような、未だかつてない快楽に、戸惑いの声が漏れる。
「ほぅら……どうだ?貴様の精の源に、私の魔力を注ぎ込んでやっているのだ……
気持ち良いだろう……?融けてしまいそうだろう……?」
「はぃ……きもちいいです…………」
男の尤も弱い部分であるからこそ、優しく弄ばれるのが、堪らなく気持ち良い。悪魔の魔力を直に注ぎ込まれている。そんな事をされてしまえば、僕の身体はどうなってしまうのか……その答えは明白だった。熱くなって、気持ち良くなってしまうのだ。
「んふふ……早速、精が満ちてきたな……私のために、こんなに一生懸命になって……なんといじらしい……
さぁ、もう一度果てさせてやるぞ……んっ……」
「ぁっ……」
精魂尽き果てる程の射精を経たにも関わらず、僕のモノは萎えるどころか、より硬く張り詰めていて。玉袋で、急速に精液が作られていくのも感じる。これもまた、悪魔の仕業に違いなく。
そして悪魔は、そんな僕のモノの先っぽに、舌を伸ばす。
「れるっ……んっ……ふふ……」
「ぁ、はぁぁ……」
包皮の間に、尖らせた舌先が滑り込む。そのまま、包皮の中をも味わい尽くすように、じっくりねっとりと舌でかき回してきて。
悪魔はその舌で、じわじわと巧みに包皮を剥いていく。
普段皮に包まれてる上に、射精直後の肉棒は、敏感なことこの上なく。皮を剥かれるだけで、またもや腰砕けになってしまう程の心地良さ。
「くふふ……随分嬉しそうだな……?」
悪魔は、ただ食事のために精液を搾り取ろうとするのではなく、僕との行為そのものを、余す事なく愉しもうとしてくれている。そんな風に思えてならず、それが、嬉しくて仕方なかった。そして、その気持ちもまた、悪魔に見透かされてしまっていた。きっとこれも、悪魔の思惑通り。
「はむっ……じゅるっ……んふふ……」
「ぁっ、はぁぁ……そんな……」
皮を剥き終えた僕のモノを、ぱっくりと咥え込み、美味しそうにしゃぶりついてくる。
キスだけで僕の心を奪い尽くした、悪魔の口。それが、敏感なことこの上ない、剥き出しの亀頭に襲いかかってくる。その心地良さは、もはや想像を絶するものだった。
「ちゅぅぅ……ふぅ……じゅるるっ」
「ぁ、ぁ、また……ぁぁっ」
極上の柔らかさをもった肉厚の唇が、カリ首に吸い付いて離れない。ふんわりぷるぷると、弱点を包まれて、締め付けられて、吸い付かれて。それだけでも至福だというのに、咥え込まれた亀頭を、魔性の舌が這い回ってくる。亀頭を余す事なく味わい尽くすように、自由自在に舌が絡みついてくる。
その口淫はゆったりとしながらも、奉仕ではなく、捕食と言うべき代物で。それなのに、その快楽は、捕食と呼ぶにはあまりにも甘美。まるで、口の中で優しく甘やかされているかのよう。
心までも弛緩してしまうような心地良さの中、欲望のほとばしりは、みるみるうちに膨れ上がって行って。
僕はあっという間に、二回目の絶頂へと導かれてしまう。
「んっ……じゅるっ……んふふ……」
「ぁぁぁ……」
肉棒がとろけ落ちてしまいそうな放出感。漏らした精は全て、悪魔の舌に絡め取られて。立て続けの射精にも関わらず、その勢いは衰えないどころか、より激しく。人の身体ではありえない大量射精。極上の快楽が、戸惑いさえも洗い流す。
そして悪魔は、精を啜りながらも、僕の顔を上目遣いで見上げてくる。だらしなく緩んだ僕の表情を、じっとりと見つめてきて、肉棒に吸い付いたまま、くぐもった笑い声をあげる。あられもない姿を晒すその羞恥が、背徳が、僕をさらなる深みに誘う。
「ちゅぷ……ぁーん……」
「そんな……こんなに……いっぱい……」
そして悪魔は、いやらしく舌を突き出しながら、その口を開く。僕の吐き出した精をすぐには飲み込まず、口の中に溜めて……それを、これ見よがしに見せつけてくる。
悪魔の口内は、人間の精力では有り得ない、おびただしい量の白濁で満たされていた。
悪魔の手によって、僕の身体は変わりつつある。魔に引きずり込まれつつある。人の道を踏み外しつつある。
それを本能的に理解してなお……目の前の淫らな光景から、目が離せない。
「んっ……んく……」
「ぁぅ……」
高圧的な眼差しが、とろんと緩む。頬に手を当て、陶酔の表情を浮かべて、悪魔は僕の精を飲み干していく。こくり、こくりと、ゆっくりと、大事に味わうように。そして、僕に見せつけるように。心底美味しそうに。
喜悦を湛えたその表情は、魔性の美。あまりにも妖艶で、僕の心を惹きつけてやまない。
「はぁぁ……ますます美味になって……それに、こんなにたぁっぷりと……実に素晴らしい……育て甲斐があるではないか……」
精を飲み干して、うっとりとため息をつく悪魔。射精を終えた僕の肉棒を、まるで宝物に触れるように、優しく愛おしげに撫でてくれる。
「ほぅら……次は、この私の手で搾り取ってやろう……」
「貴女の……手で……」
悪魔の手が、僕のモノを柔らかく握り込んでくる。すべすべとした掌が肉棒を包み込み、しなやかな指先が絡み付いてきて、それだけで心地良い。
己の手とは比べようもない感触に、期待が膨らむ。
「くふふ……期待が顔に出ているぞ?まったく、愛い奴め……」
僕を一瞥し、悪魔は耳元でねっとりと囁く。そして、その手で包んだ僕のモノを、緩やかに、しかし丁寧にしごき上げてくる。
「よいぞ、快楽に心を委ねて、堕ちてしまえ……
案ずることはない……この私が、貴様を愛で尽くしてやるのだから……」
「はぁ……ぁ……愛でて……くれるだなんて……」
「あぁ……たぁっぷりと愛でて、貪って……どこまでも堕としてくれよう……勿論、我慢などさせぬぞ……
どうだ、私の手は、指先は……?自分でするのとは比べものにならぬだろう……?」
「は、はぃ……やさしくて……きもちよくて……ぁ、ぁ……」
その手淫は、搾り取るというにはあまりにも優しいもので。肉棒を可愛がられている、そんな風に形容出来る、甘くゆったりとした快楽。その快楽と、母性さえ感じさせる悪魔の囁きが、堕落すること、戻れなくなることへの不安を拭い去ってくれる。
そして、その優しさとは裏腹に、悪魔の指先は、僕の弱点を的確に責め立てていた。
「くふふ……そんなにだらしのないカオをして……可愛い奴め……
そぅら……また果ててしまえ……」
「ぁ、ぁぁぁ……」
悪魔はにやにやと邪悪な笑みを浮かべ、僕の顔を覗き込んできて。一度視線が重なれば、悪魔の瞳に魅入られ、顔を背ける事は許されない。
すべすべの掌で亀頭を包まれ、すりすりと撫で回されて、あえなく再度の絶頂。肉棒を愛玩される法悦にどぷどぷと漏らした精は、悪魔の掌に受け止められていく。
そして悪魔は、情けなく果てる僕を視姦しながらも、優しく見守ってくれていた。
「んふふ……達してしまったなぁ……?快楽に緩みきった、はしたないカオだ……あぁ、実にそそられる……」
「ぁ、はぁ……」
くったりと余韻に浸る中、視姦され、羞恥にぞくぞくと震えた心、がぐずりと溶けていく。見苦しい痴態でさえも、悪魔は受容し、褒めてくれる。それが嬉しいのだ。
悪魔の甘く優しい辱めに、僕は恭順の念を抱かずにいられなかった。
「れろぉ……ん……はあぁ……なんたる美味か……
貴様の精は一滴残らず私のモノだ……有難く思うのだな……」
「ぁ……あなたの……もの……」
そして悪魔は、その掌で受け止めた精液を、これ見よがしに僕の目の前で舐め取り、味わい始める。その身をくねらせ、熱っぽい吐息を漏らし、極上のご馳走だと言わんばかりの蕩けた表情。絶世の美女が白濁にまみれた掌に舌を這わせる光景はあまりにも淫らで、刺激を受けずにいてなお、僕のモノは硬さを失わずにいた。
「そうだ、一滴たりとも無駄にはせぬぞ……しっかりと貴様を味わってやる……」
精に汚れた肉棒を見下ろす悪魔は、昂りを隠さずに舌舐めずりをする。
「そして……貴様にも、この私を味わわせてやろうではないか……」
「っ……ぁ……」
そして……悪魔は、僕の顔を跨いで、膝立ちの姿勢を取る。僕の視界を埋め尽くすのは、悪魔の魅惑の下半身だった。
むっちりと肉づき、はち切れんばかりの太股。それが、目の前にそびえ立っている。
大きく丸みを帯び、柔らかさをみっちりと詰め込んだ、安産型の桃尻もまた、目の前に。汗ばんで瑞々しく、青く艶めいた肌のその彩りは、まさに男を堕落に誘う果実だった。
そして、唯一最小限に隠された秘所には、淫らな筋がくっきりと浮き出てしまうほどに、革の下着が食い込んでいた。
「ほぅら……ココが貴様を搾り尽くす場所だ……しっかりと目に焼き付けろ……」
「ぁ……き……きれい……です……」
悪魔が、下着を留めていた帯を外せば、秘密の花園が僕の目の前に。
ふっくらと肉厚な淫唇が、ぴっちりと閉じて一本の筋を形作っている。成熟した女性の佇まいでありながらも、まるで生娘のように貞淑。その割れ目からは、とろとろと透明な蜜が溢れ出していた。青い肌に滴る粘液は灯りに照らされて、淫靡にぬらつく。
あまりにも淫らで美しく、本能を掌握される光景に、僕はただただ、見惚れてしまう。
「くふふ……そうか、そうか……思う存分、むしゃぶりつくが良いぞぉ……?」
「っ、んむ……っ……ふぅっ……」
そして、悪魔はおもむろにその腰を下ろし、蜜の滴る秘所を、僕の口へと押し付けてくる。僕は、嬉々としてそれを受け止めて、舌を這わせる。
蒸れに蒸れた女陰の纏う、甘酸っぱく濃厚な色香を、肺いっぱいに吸い込めば……その甘美さにくらくらする、などというものでは済まなかった。思考が、意識が、悪魔の色香に征服されていく。理性をどろどろに融かされて、もはや、考えることさえおぼつかない。
「んっ……ふふ……無我夢中だな……可愛い奴め……
良いぞ、このまま私に溺れてしまえ……私の味を忘れられなくなってしまえ……」
逃げる事など考えられない。極上の柔肉に挟んで、包んでもらって、太ももの感触にお尻の重み、立ち込める熱気に、淫らな香り。至福の蜜が染み出してきて、いくら味わえども飽きることはない。
魔性の女体がもたらしてくれる、たまらない心地良さ。顔に跨られてしまっているのに、そこに苦しさはなく……むしろ、堕落してしまいそうなほどに、居心地の良い空間だった。このままいつまでも、こうして尻に敷いていてもらいたい。そんな想いに支配される。
「あぁっ……こんなに滾らせて……健気なものだな、んふふ……
さて……まずはさっきの精からだ……れろぉ……んっ……ちゅっ……」
深みへ堕ちていく心とは裏腹に、興奮の丈は、滾る熱量は、これ以上ないモノとなっていて。もはや、触れられずとも勝手に果ててしまいそうな程に、僕のモノは張り詰めて仕方がない。
そして再び、悪魔の舌が、そんな僕のモノを這い回り、肉棒にまとわりついたままの精液を丹念に舐めとっていく。一滴残らず、という悪魔の言葉に嘘はなかった。
「んふふ……私の下は心地良いだろう……?征服される悦び……たっぷりと刻みつけてやろう……」
僕の悦びを見透かして、悪魔はさらに激しく、僕を責め立てる。そのお尻で僕を遠慮無しに押し潰し、太股で僕の頭をぎゅうぎゅうと締め付けて、腰を前後に動かし、秘裂をぐいぐいと擦り付ける。
もはや僕の顔は悪魔の女体で揉みくちゃで、それでも、魔性の柔らかさを備えた悪魔の身体は、ただひたすらに心地良さで僕を蹂躙し、征服する。
「んっ……じゅるっ、んっ、ふぅっ……ん……」
そして悪魔は、遠慮無しに僕の肉棒にしゃぶりついてくる。望むがままに舌を這わせ、肉棒を咥え込んで、根元まで呑み込んで。
たっぷりと唾液でぬらつき、隙間無く肉棒に吸い付いてくる悪魔の口内は、とろけてしまいそうな程に熱く、心地いい。まるで別の生き物のように蠢く舌は、根元から先端までの全てを使って、僕の肉棒を絡め取り、丹念に舐め回してくれる。その執拗さはまさに、肉棒を隅々まで味わい尽くされてしまうかのよう。
「んっ、じゅぷっ、んふ……んぐっ……んぅっ……」
悪魔の喉奥は肉棒を容易く受け入れるどころか、奥へ奥へと引きずり込もうと、より深く咥え込もうと、狂おしいまでの蠕動で、敏感な先端を受け入れ、責め尽くしてくれる。
所有権を主張するかのような、あまりにも支配的で、激しい口淫。しかし、悪魔の底無しの欲望を一身に受け、どれだけ激しく跨られても、しゃぶり尽くされても、悪魔の与えてくれる快楽は、ただただ甘美で、心地良く、僕の心を捕らえてやまない。
「んぐ、んっ、んくっ、んっ……んふっ……」
そして、僕は瞬く間に、射精へと導かれてしまう。僕の肉棒を咥え込んだ悪魔の口に、ぐつぐつと煮え滾った欲望を、根元から吸い出されて、搾り取られて、飲み干されていく。悪魔の口淫に促されるがまま、タガが外れたように恭順の証を吐き出す。あまりにも甘美な射精快楽に、意識さえも陶酔に堕ちていく。
そこに追いうちを掛けるように、口元に押し当てられた秘裂からは、一際濃い淫蜜がどろりと湧き出てきて……舌にまとわりつくその味わいの濃密さ、芳しさに、味覚、嗅覚を犯され、もはや、僕の身と心は、どろどろにされてしまっていた。
「んっ……じゅるっ、ぷは……はぁぁ……ますます濃くなって……喉に絡みつくこの甘美さ……堪らぬな……」
一滴残らず精を飲み干し、悪魔は僕の肉棒を解放する。甘美さに染め上げられた意識の中、名残惜しさをはっきりと感じる自分がいた。
その反面、恍惚に満ちた悪魔の呟きがもたらしてくれるのは、悪魔に糧を捧げ、人理から外れていく事に対する背徳感。それは、危うさを孕んだ充足感でもあった。
「んふふ……さて、次は……貴様の大好きなこの胸で弄んでやろう……
ほぅら……挿入っていくぞぉ……?」
唾液に塗れた肉棒を包み込んでいくのは、僕を魅了し尽くした母性の象徴。左右からぎゅうぎゅうに襲いかかってくる、ふわふわでむにむにの、至福の乳圧。魔の谷間へと、肉棒がゆっくりと飲み込まれていく。そして、腰の上に、たぷん、と悪魔の豊乳が押し付けられて……僕のモノは先っぽだけを露出して、カリ首の隙間さえ残さずに、堕落の柔肉で包み込まれてしまった。
悪魔の乳肉は、底無しの優しさで僕を受け入れてくれて。あまりの心地良さに、僕の心身は徹底的に無防備へと導かれてしまう。
「んふ……挟んでやっただけで、先走りをだらだらと……
おねだりが上手だなぁ……?この甘えん坊め……」
悪魔が上位者として紡ぐ、妖しくも優しい言葉。悪魔の魔性の乳の前では、僕はどうしようもなく甘えん坊にされてしまって……そんな僕の心を見透かし、悪魔はまさに優しく甘やかすように、ゆっくりとその胸を上下させ、僕のモノを扱きあげてくる。
もっとも敏感な場所で味わう、もっとも優しい感触。カリ首に絡みつき、吸い付いてくる魔乳の心地良さは、もはや法悦を極めていた。
「あぁっ、びくびくと震えて……なんといじらしい……
案ずるな……貴様の精は一滴残らず味わってやるのだから……貴様は……この私に気持ち良くしてもらう事だけ考えていろ……
んっ……じゅるっ……んふ、んくっ……んっ……」
緩やかな抽送の中、あっという間に膨れ上がっていく迸り。溢れんばかりの母性を備えた悪魔の胸は、精を搾り取るための場所でもあって。たっぷりと甘やかされながらも、僕はあっという間に果ててしまう。どこか穏やかに、しかし、膨大な量で肉棒の中を通り抜けていく精液。
その出口、肉棒の先端に優しく覆い被さってくれるのは、悪魔の唇。
悪魔の胸でゆったりと甘く扱かれながら、先っぽを吸い上げられて、精を啜り取られて、最後の一滴まで甘美な射精感に浸る。甘やかされる快楽の前に、もはや気持ち良くしてもらう事しか考えられなかった。
「ちゅぷ……はぁぁ……こんなにもどぷどぷと、精を漏らして……良い子だな、貴様は……」
一滴残らず精を吸い出した悪魔は、そのまま追い打ちをかけるように、どこか労うように、その魅惑の果実で、僕のモノを弄び続ける。
上下にしごくのではなく、互い違いにむにゅむにゅと擦り合わせられる乳房。肉棒を甘く撫で回すかのような動きは、まさに僕を愛玩してくれているようで、さらなる深みへと僕の心を導いてくれる。ただ心地良く、悦びに浸るのではなく……そこには、確かな嬉しさがあった。
「んふふ……嬉しそうにびくびくと……良いぞ、また果ててしまえ……この私に、たぁっぷりと精を捧げるのだ……
ちゅぅぅ……れろっ、んふ……んくっ……」
さらに悪魔は、その胸だけでなく、僕の頭を挟み込んだ太ももまでもを擦り合わせてくる。頭も、肉棒も、悪魔のもたらす至福の柔らかさで揉みくちゃに愛でられてしまいながら、再度の射精。
肉棒の先端はぱっくりと咥えられ……今度は鈴口をちろちろと、撫でるように優しく、しかし執拗に舐めまわされて、精液を舐め取られて。射精中の肉棒の、最も敏感な尿道口を愛で尽くされるその快楽は、筆舌に尽くし難く。
どうしようもなく溢れ出た精を、悪魔は一滴たりとも残さずに舐め取ってくれる。
「んっ……くふふ……また量が増えたな……?まったく、尽くしてくれるではないか……
さぁて、仕上げだ……この私の胸の心地、二度と忘れられぬようにしてくれよう……」
仕上げと謳った悪魔は、おっぱいを腕で抱え込み、肉棒をぎゅうぎゅうに挟み込んで、労うように柔らかく包み込んでくれる。
魔性と母性がたぷんと詰め込まれた悪魔の果実。それによる、優しくも熱烈な、至福の抱擁。
「ほぅら……心地良いだろう……?」
抽送も愛撫もなく、悪魔はただただ、その胸で僕のモノを抱き締めてくれる。その抱擁がもたらしてくれるのは、身も心もとろけるような、あまりにも穏やかな快楽。魅惑の果実の柔らかさが、肌触りが、まるで肉棒に染み込んでいくかのように心地良い。
「さ、じっくりと味わわせてやろう……くふふ」
しかし、母性に満ち溢れながらも、その胸は確かに魔性を兼ね備えていて。抱擁の乳圧、たったそれだけで、僕のモノを絶頂へと緩やかに導いていく。
悪魔の胸は、確かに母性と安らぎの塊でありつつも、快楽をもたらし、精を搾り取るためのモノだったのだ。そして、魔性と母性、その両面ともが……底の無い堕落へと、僕を導いていく。
「そうだ……身も心も全て、この私に委ねてしまえ……
そうすれば、もっと心地良くなる……私の胸に、堕ちてしまえ……」
ゆったりとした責めであるからこそ、それはただただ、心地良く。最も鋭敏な場所で味わう悪魔のおっぱいの、心蕩かす優しさと甘美さ。すぐに果ててしまわないからこそ、至福の果実の感触そのものへと、意識が吸い込まれていく。
慈愛さえ感じる中、ずっと、ずっと、こうしていたい。永遠を望んでしまう。僕はただただ、悪魔の胸の虜。快楽を受け入れる事で、恭順を示す。
「んふふ、良い子だ……ほぅら、ご褒美だぞぉ……?
貴様の大好きなおっぱいで……ぎゅぅ、ぎゅぅ……」
何度も何度も断続的に繰り返される、甘く熱烈な締め付け。僕のモノは、悪魔の胸にむぎゅむぎゅと抱かれてしまう。
緩急をつけて味わわされるのは、母性に溢れた至福の乳圧。
その抱擁はきっと、精を搾り取るためだけの行為ではなくて……相手の邪悪さも忘れて僕は、愛される悦びを感じてしまう。その悦びはあまりにも甘美で忘れがたく、心に染み込んでいく。
「くふふ……今の貴様は、さぞかしとろけきった顔をしているのであろうなぁ……?
さ……このまま、抱擁の中で果てさせてやろう……もう一つ、ご褒美だ……ん……ちゅ……」
そして、胸に抱かれた僕のモノ、その先端へと、悪魔は口付けてくる。
その吸い付きは、容赦無く精を吸い尽くすようなものではなく、まるで恋人同士の行為であるかのよう。胸の抱擁に合わせ、まるで僕を甘やかすように優しく唇を押し当て、愛でるように甘く吸い付いてくれる。それが、心にまで口付けをされているかのように、あまりにも心地良い。
「はぁ、びくびく震えて……先走りも美味だぞ……」
ゆっくり、じっくり、時間を掛けて、絶頂へと導かれていく。甘やかされて満ちていく心。悪魔の行為には、深い母性と愛情を見出さずにはいられなくて。その幸福に溺れて、悪魔に心奪われていく。安らぎさえ感じながら、さらなる堕落へと沈みこんでいく。
「んふふ……とどめだ……ちゅぅぅっ……んくっ、んっ……んぅっ……んふっ、ちゅるっ、んんっ……」
そして、ついに僕は、僕は深い絶頂を迎える。一際強く抱かれて、吸われて、締め付けられて。溜め込まれた欲望にトドメを刺すその愛撫もまた、底無しに甘く。
たっぷりと甘やかされたその時間に比例するように、おびただしいほどの射精感。その脈動を優しく後押しするように、リズミカルに、悪魔はその胸で僕のモノを抱き締めてくれる。唇もまた、ねっとりと愛おしげな吸い付き。
長い長い射精の最初から、最後の一滴まで……悪魔にされるがまま、どこまでも甘く、精を搾り取られてしまう。
「んくっ……くふぅぅ……はぁん……んふふ……堪らぬなぁ……身体の内側が、ぐつぐつと煮えたぎるようだ……
量も、濃さも、また増して……随分と気に入ったようだなぁ……?もはや、この私の胸の心地を忘れる事など出来まい……」
悪魔の与えてくれる底無しの甘美さ。甘やかされ、愛でられる悦びもまた、僕の心にしっかりと刻み込まれてしまっていた。悪魔の言葉通り、あの至福を忘れる事など出来そうにない。果てさせられたばかりだというのに、悪魔の胸が、その抱擁が恋しくて仕方ないのだから。
「くふふ……折角だ、念入りに、忘れられなくしてやろう……
ほぅら……ぎゅーぅっ……
もっと、もっと、甘えん坊になってしまえ……心ゆくまで、この私に溺れるのだぞ……」
その恋しさを見透かすように、悪魔は再び、その胸で僕のモノを挟み込んだまま、包み込んだまま、抱き締める動きでゆったりと責め立ててくれる。
そんな中、悪魔は、その胸の抱擁に合わせて、柔らかな太ももで、僕の顔を締め付けてくれる。それもまた、愛情を感じさせるもう一つの抱擁に他ならず。
口元に押し付けられる秘裂からは、溢れんばかりの淫蜜。舌の芯まで、堕落の味が染み込んで。呼吸のたびには、脳髄までを恍惚で犯すような、あまりにも濃密な雌の香り。
熱のこもった悪魔の囁きは、耳を通り抜けて、心に直接入り込んでくるかのよう。
五感全てが、悪魔によって甘く、心地良くどろどろに融かされていく。全てが、悪魔に染め上げられていく。
そして僕は、悪魔がもたらすその支配へと、甘やかされるがままに溺れていくのだった。
「んふふ、くふふ……あぁっ……そろそろ、頃合いだな……」
「ぁ……はぁ……」
長く徹底的な抱擁の末に、悪魔はついに、僕を解放する。
甘い心地、甘い香りに浸され続けた僕はもはや、心身ともにどろどろに蕩かされて、深い恍惚の内。悪魔への恭順と好感は募り募って、嫌悪感などはすべて洗い流されてしまっていた。
「あぁっ……すっかり出来上がって……どろどろの、ぐちゃぐちゃではないか……
んふ……実にはしたなく、いやらしく、可愛いカオだ……実にそそられる……
やはり貴様は……この私のモノとなるに相応しい……」
悪魔が、僕を見下ろす。
幾度となくその口に精を捧げたにも関わらず、悪魔の瞳が宿す情欲は、さらに深く研ぎ澄まされていて。その美貌に浮かぶのは、昂りを露わにした、とびきりの邪悪な笑み。先刻までの甘い時間はあくまでも前戯であり……下ごしらえだと言わんばかり。
しかし、その邪悪さを前にしても、欠片ほどの恐れを感じることはなく。むしろ、蕩けきった僕の心にとっては、その邪悪で支配的な振る舞いでさえも、魅力的で、心地良くて仕方がない。
「くふふ……その物欲しそうなカオ……この私に純潔を捧げたいのだろう……?犯して欲しいのだろう……?」
「ぁ……はぃ……っ」
甘く蕩ける陶酔の中、滾りに滾った、僕の欲望。
悪魔と、交わりたい。もっともっと、気持ち良くなりたい。あまりにも邪で、剥き出しの感情。
悪魔の問いに応える事は……はしたなく、あさましく快楽を求める自分自身を認める事でもあった。
「んふふ……よいのか……?ひとたび交われば最期……心地良さのあまり、二度と元に戻れなくなってしまうやも知れぬぞ……?この私なしでは、生きられないようにな……
それでも、この私に食べられてしまいたいというのか……?くふふ……」
そして悪魔は、にたぁ、と口角を吊り上げ、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
屈服を確かめる言葉は、あまりにも甘美に、この先の快楽を想起させる。破滅的な響きでさえも、悪魔の口から紡がれるならば、心を惹きつけられてしまう。
「ぁぅ……はぃ……たべ……て……」
悪魔の囁きに誘われるがまま、導かれるがまま……僕は、快楽をねだってしまう。
身体が、本能が、心が、目の前の悪魔を求めて。目の前にあるのは、ただただ、堕落へと進む道のみ。その道を選んだのは、他ならない僕自身。その事実に、もはや言い逃れの余地はなかった。
そして何よりも、頭の中を埋め尽くすのは……悪魔と、悪魔のもたらしてくれる快楽への期待。
悪魔に純潔を捧げ、決して消えない堕落の烙印を押されるその瞬間が、心待ちでならなかった。
「んふふ、ふふ……可愛い奴めぇっ……!
ならば、貴様の純潔……この私が奪い取ってやろうではないか……
尤も……たとえ拒まれようと、そのつもりだったがな……くふふふふ……」
もはや、僕の身も心も悪魔の手中。それを、他ならぬ僕が認めてしまった。
その屈服を見届け、悪魔の美貌はより一層、邪悪に歪んでいく。欲望の言葉が、どうしようもなく心地良い。
目の前の女性は、あまりにも嬉しそうで、愉しそうで。その邪悪な笑みは、まさに悦びに溢れていた。邪悪ながらも、幸せの絶頂とも言えるそのカオは、これ以上なく魅力的。その眼差しが僕を見据えれば……僕は心を奪い尽くされる他なく、悪魔への愛おしささえ感じてしまう。
「さぁ……その眼にしっかりと焼きつけ……身体に刻み込むのだぞ……?
貴様の純潔が、この私の物となる瞬間を……んふふ、ふふ……くふふふふ……」
「ぁぁっ……うぁ……はぃ……」
ぴっちりと閉じた秘裂をその指で割り開き、悪魔は僕のモノへと狙いを定める。露わになった膣口は狭く閉ざされていて、生娘を思わせる。邪悪な素振りとは裏腹に、悪魔の身体は純潔そのもの。
僕だけが、悪魔に食べてもらえる。その事実に、悦びを隠せない。
その狭い入り口からは、愛蜜が溢れ出て。それが肉棒に降りかかり、まぶされれば、その絡みつくような熱に感じ入ってしまい、思わず声が漏れる。
愛液伝いに感じる、悪魔のナカの熱量は……肉棒が融かされてしまいそうな程の狂おしさ。ますます、挿入への期待は高まっていく。
「くふふ……貴様の初めて……貰ってやるぞ……っ」
蜜の滴る入り口が僕のモノにあてがわれる。くちゅり、と淫らな水音が響く。期待のあまり、肉棒はたぎり滾って暴発寸前。
そんな僕を見下ろす悪魔の眼差しは、欲望に煮えたぎりながらも、どこか優しく、慈愛を感じる事が出来て。
不安はやはり欠片も浮かばず、安心した心地で、ただただ期待のみが胸を埋め尽くす。
そしてついに、僕の高まりにトドメを刺すように、ゆっくりと見せつけるように、悪魔は腰を下ろし始める。
「っ……んふっ……はぁ……実に美味だ……
ほぅら……今まさに、貴様の童貞が食べられているのだぞ……?んふふふ……嬉しいか……?」
「ぁ、ぁ、ぁ…………」
潤みきった悪魔の膣へと、僕のモノが呑み込まれていく。欲望に負け、悪魔に純潔を捧げ自ら糧となってしまう、人の道を踏み外すその背徳に、眩暈のような高揚感。
悪魔のナカは、ぐつぐつと煮え滾るように程に熱く。しかし、それはただの熱ではなく、温もりの凝集とも言うべき、甘美な熱で。
咥え込まれた部分に襲いかかるのは、肉棒がとろけてしまうかのような、圧倒的な心地良さ。
肉棒の先端がほんの少し挿入った、たったそれだけで、瞬く間に腰砕け。亀頭を咥え込まれた時には既に、心地良さのあまり、身動きさえままならない。
悪魔がじっくりと腰を沈めていくごとに、甘美さが僕を征服していく。肉襞がねっとりと絡みついて、僕の初めてを奪い去っていく。
悪魔に食べられ、穢され、堕とされていく。その淫らな光景に魅入られて、目を離すことは出来ない。悦びが背筋を駆け巡るのを感じながら、その光景を目に焼き付けられるがままだった。
「はぁっ……んっ……」
「ぁ、ぁぁぁっ……」
そしてついに悪魔は、その腰を僕の上に降ろしきって……僕のモノは、根元までしっかりと捕食されてしまう。
同時に、深々と咥え込まれた肉棒の先端で感じるのは、悪魔の最奥。そこはまるで、招き入れるかのように、優しく僕のモノを受け止め、包み込んでくれて。それでいて貪欲に、絡みついて、吸い付いて。その甘美な感触に許しを得たように、挿入の最中につのりつのった快楽が、途端に堰を切って溢れ出す。
「くふぅぅっ……
はぁんっ……これが交わりの味っ……これほどまでに甘美だとはっ……あぁっ、病み付きになってしまうではないかっ……
はぁっ、よいぞっ、たぁっぷりとナカに出せっ……一滴残らず味わってやるぞ……」
「ぁぅ、ぁぁぁぁ……」
純潔を奪われ、精を啜られているというのに、悪魔に食べられてしまっているというのに、その行為とは裏腹に、充足さえ感じてしまう。
悪魔の極上の名器がもたらしてくれるのは、一切の抵抗を許さない甘美さ。全身が弛緩してしまい、されるがまま。まるで、頭のてっぺんから爪先まで、快楽に支配されてしまったかのよう。抗えない。抗うことさえ考えられない。
そして……僕に跨り、弓なりに背をそらしながら恍惚の表情を浮かべる悪魔のその姿は、今までになく淫靡で美しく。まさに淫魔そのものというべきその光景に、見惚れ尽くす。僕は、命じられるがままに精を捧げる他なかった。
「くふっ、んっ……くふふふっ……あぁっ……子宮に、どぷどぷと……
はぁんっ……なんたる美味か……身体中が蕩けてしまいそうだ……んふふふ……」
悪魔の最奥に精を捧げた事をきっかけに、魔性の肉壷は、さらに激しく蠢き始める。それだけでなく、悪魔は僕のモノを深々と咥え込んだまま、ぐいぐいと腰を捻り、押し付けてきて。
その歓待の末に待っているのは、魂ごと啜られてしまうかのような、あまりにも心地良く膨大な射精快楽。タガが外れてしまったかのように溢れ出る精液は、一滴残らず悪魔の胎内に啜り取られていく。
「くふぅぅっ……んっ……そうだ、ぜぇんぶ吐き出してしまえっ……
貴様の初めて……この私の子宮で、余すことなく糧にしてやろう……くふ、んふふ……」
貪られるがままに精を捧げれば、時折、悪魔はびくんと身体を跳ねさせて、艶に濡れた声を洩らす。僕を貪って、糧にして、悦んでくれている。それは、僕の価値を認めてくれる行為に他ならず。
悪魔のために精を捧げ、糧となる行為そのものに、僕は献身の悦びを感じてしまっていて……僕の心は、より深みへと引きずり込まれていく。
「んふ、くふふ……分かるか……?これが、この私に支配されるということだ……この私のモノになるということだ……素晴らしいだろう……幸せだろう……?」
「ぁ、はぁぁぁ……」
「くふふ、そうか、そうか、返事もできぬほど心地よいか……本当に愛い奴だなぁ、貴様は……
それでよいのだぞ……身も心も快楽に委ね、純潔を捧げるのに精一杯で、一生懸命で……くふふふふふ……
貴様はそうして、私の下で心地良くなっていればよいのだ……どこまでも快楽に溺れて……支配される悦びに浸って……どこまでも堕ちてしまえ……
はぁぁ……そのとろけきったカオ……まったく、実に可愛らしいぞ……んふふ、くふふぅっ……もっとだ……もっと堕ちてしまえ……」
純潔を捧げる射精の、その勢いはとどまることを知らず、終わる気配を見せず。どっぷりと浸る心地良さのあまり、どろどろに融けた思考。もはや言葉を紡ぐこともできない僕の頭の中に、悪魔の囁きはどこまでも甘美に染み込んで、思考を犯す。
悪魔に支配される。悪魔のモノになる。今味わっている甘美さが、心地良さこそが悪魔の支配なのだと、その意味が甘く書き換えられていく。
悪魔の紡ぐ欲望の言葉は、快楽にあえぐ僕の醜態さえも肯定してくれる。その深い肯定が、心を満たしてくれる。悪魔に身も心も委ね、捧げる事が僕の存在意義なのだと、そんな想いさえ込み上げる。
僕が心待ちにした悪魔との交わりは、人の身では味わえないほど、ただひたすらに甘美で心地良く。価値観さえも塗り替えられて、底の見えない堕落の淵へと引きずり込まれていく。それが、どうしようもなく幸せでならなかった。
「はぁぁ……んっ……んふふふ……たぁっぷりと出したなぁ……?実に……実に美味だったぞ……食べ頃まで待った甲斐があるというものだ……
あぁ、胎内を満たすこの熱、甘美さ、心地良さ……他の何にも代え難い……」
「はぁ、ぁ…………」
永遠のような、一瞬のような、この世の物とは思えない時間。それが過ぎ去って……甘美な初体験に、終わりが訪れていた。
とめどなく溢れ続けた精も、最後の一滴まで搾り尽くされて、味わい尽くされて。精を捧げきった僕を労うように、悪魔のナカは一際優しく肉棒を包み込んでくれている。射精を終えてなお、僕の意識は甘美な余韻の中に囚われてしまっていた。
「あぁ、そして……くふふ、んふふ……これで貴様の初めては、私のモノだ……この私が、貴様の初めての女というわけだ……
くふふ……純潔を捧げた感想はどうだぁ……?貴様の望んだ通り、食べてやったのだぞ……?穢してやったのだぞ……?」
僕を見下ろす悪魔は、淫蕩な笑みを浮かべて、自身のお腹をうっとりとさする。その下にあるのは、たっぷりと精を捧げた悪魔の子宮。
僕の純潔は、初めては悪魔のモノとなってしまった。その事実を、しっかりと実感する。
目の前の悪魔が、僕の初めての人。特別な人。それは、とても素敵なことだった。取り返しがつかなくなってしまった事、その被支配感もまた、甘美でならなかった。
「ぁ……すごく……きもちよくて……ぁぁ、しあわせで……はじめてで……うれしくて……」
「くふふふふ……そうか、そうか……うれしかったか、くふふふふ……」
悪魔との初めての交わり。それは、今まで味わったどんな快楽よりも、ただただ心地良く、幸せなもので。快楽に融けた頭で、その素晴らしさを目一杯伝えようとするが、ただただ、言葉が漏れるのみ。今もなお、心地良さと幸福の最中なのだから。
そんな僕を前に、初めての人は、優しげに僕を見つめてくれて。そして、嬉しそうに僕の言葉に耳を傾けてくれる。
「きもちいいのがとまらなくて……とけちゃいそうで……
きもちよくて……しあわせで……ぁ、ぁ、きもちいいです……ゆめみたいで……」
「くふふ、ふふふっ……そうだろう……?心地良いだろう……?幸せだろう……?忘れられないだろう……?」
「わすれられない……です……すごく、しあわせで……」
「んふふ、そうだろう……」
思い返せば思い返すほどに、初めての交わりは、ただただ心地良かったと、幸せだった言うほかなく。
慈愛さえ感じる悪魔の眼差し。高圧的な態度の中に、確かな母性。
甘えるように心の内をさらけ出せば……悪魔は、初めての人はそれを受け容れてくれて。その事実に、僕の心はさらにとろけていく。
「分かるか……?これが、支配される悦びだ……
こうして、この私に身も心も委ねる事こそが、全てを捧げる事こそが、貴様の幸せなのだぞ……」
「はぃ……うれしくて……しあわせで……」
甘ったるく囁かれる声に、今味わっているこの快楽、幸福。それこそが、悪魔の言葉が真実である確かな証明。否定の余地のない事実。
思考を手放し、悪魔の言葉に頷けば、とても軽やかな心地。
支配される悦び。全てを捧げる幸福。それが悪魔の教えてくれる真実。
「んふ、ふふふ……すっかり物分かりがよくなったな……くふふ、良い子だ……
さて、貴様にはさらなる幸福を与えてやろうではないか……
あぁ、まずは……貴様のモノをじっくり、ねっとり、味わい尽くしてくれよう……」
「は、ぁぁ……」
そして、穏やかだった悪魔の膣内が、またもや、うねり、くねりはじめる。それは緩やかな蠕動であったが、悪魔の宣言通りに僕のモノを味わい尽くすような、執拗な蠢きでもあって。たちまち、快楽に息が漏れる。
「くふふふ、ありがたく思え……余すことなく、隅々まで丁寧に味わってやるぞぉ……?
あぁ……この甘美さ……やはり、他の何にも代え難い美味だ……」
「ぁ、ぁぁ……ありがとう、ござぃます……」
隙間無く絡みつき、ひしめく無数の肉襞。それが、まるで小さな舌のように、僕のモノをねっとりと舐め上げてくる。
自由自在に蠢く悪魔の魔膣は、ゆったりと僕のモノを咀嚼するかのよう。
捕食と呼ぶには穏やかな交わり。まるできっと、極上のデザートを口にするその時よりもずっと丁寧に、愛情さえ感じるほど大事そうにに、僕のモノがしゃぶり尽くされ、味わい尽くされていく。
僕という存在を食べてもらう上で、これ程までにありがたく、嬉しい事はなく。ただ身体的な快楽だけでは無く、悪魔に身を捧げる悦びに、幸福に、心が染め上げられていく。
「あぁ……貴様も、この私のカラダを、しっかりと覚え込むのだぞ……」
「は、はぃぃ……」
悪魔に味わわれるという事は、悪魔を味わわされる事でもあって。
なまじ快楽そのものが緩やかであるからこそ、悪魔の魔膣の感触は、あまりにも鮮明。
狭くうねりくねる道に、絡みつく肉襞の感触は、あまりにも艶かしく。蜜に潤んだその場所は、あまりにも滑らかに僕のモノを咥え込んで離さない。
そこで生まれるあらゆる動きが、刺激が、ただただ甘美な心地良さへとつながって。
それはさながら、人を堕とすためだけに存在しているかのような、魔性の名器。底の見えない堕落の淵へと、果てなき深みへと、僕を誘って、逃さない。
その心地良さを味わえば味わうほどに、心が堕ちて、囚われていく。
「ほぅら、これが私のナカだ……貴様をしゃぶり尽くし、搾り尽くして、幸せにしてやる場所だ……
この吸い付き……うねり、くねり……肉襞のわななき……堪らないだろう……?
あぁっ……そして、此処が……子宮の入り口だぞぉ……?貴様が精を捧げる場所だ……くふふふふ……」
「ぁ、はぅ……ぁ、すごぃ……」
「くふふ、そうか……こうして貴様を堕としてやれるのは、他ならぬこの私だけなのだぞ……?」
「あなた……だけ……」
「あぁ……そうだ……この私だけだ……んふふふ……」
悪魔の囁きが、僕の意識を至福の感触へと導いてくれる。そのおかげで、蕩けきった意識の中でも、はっきりと悪魔のカラダを味わう事が出来て。法悦を極める心地良さとともに、悪魔のナカの感触が、僕のモノへと刻み込まれていく。誰が支配者なのか、誰の所有物であるかが教え込まれていく。
そして、この心地良さをもたらしてくれるのは、目の前の悪魔だけ。ますます、悪魔が特別な存在になっていく。
「はぁ……んっ……私のナカで、先走りをだらだらと…… おねだりの味もまた格別だなぁ……?くふふふ、ふふ……
おまけに、びくびくと震えて、跳ねて……物欲しそうに……」
「ぁ、はぁぁ……」
「んふふふ……余裕がなくなってきたなぁ……?あぁ……よいぞ、そのカオだ……どれだけ見ても飽きぬというものだ、くふふふふ……実に愛らしい……」
執拗に、執念深く、肉棒に刷り込まれていく魔性の快楽。焦らすわけでは無く、ただただ時間をかけて丁寧に、そしてじわじわと僕を追い詰める、悪魔の性技。ゆっけりと、しかし確実に近づく絶頂。だんだんと快楽に蝕まれ、喋る事さえままならなくなっていく。
「んふふ……じっくりと辿り着く絶頂はまた格別だぞぉ……?たぁっぷりと時間をかけて、快楽を溜めこませてやって……果てたその時は筆舌に尽くしがたいというものだ……
楽しみにしておくのだな、くふふふ……」
「ぁ、ぁっ……はぃぃ……」
「そうだ……そうして、快楽を心待ちにするがよい……楽しみにしたその分だけ、もーっと気持ち良くなれるのだからな……」
心地良さの中、ぐつぐつと煮えたぎり、際限無く蓄積していく熱量。悪魔の言葉通り、それは今までに味わったものとは比べ物にならない、膨大で狂おしい代物で。
この先に待ち受けているさらなる快楽を意識させられ、夢想させられ、僕の心はただただ期待に染まる。
早く果ててしまいたい。そんな気持ちも、期待の前に塗り潰される。
切なさや焦れったさを感じる事はなく、ただひたすらに、悪魔のもたらしてくれる快楽が楽しみでならなかった。
「んふふ……よだれをこぼして……実にはしたなく、いやらしいなぁ……?貴様は……」
快楽のあまり半開きになったままの口。期待に溢れ、こぼれていく唾液。それを、悪魔の指先がすくいとってくれる。
はしたなく、いやらしい。それは、悪魔なりの褒め言葉。そして、甲斐甲斐しげな響き。
どれだけあられもない姿を晒しても、悪魔は嬉々としてそれを受け入れてくれる。人を堕落に導く邪悪な包容力を前に、僕は抗えない。
「ん……ちゅ……くふふ、貴様の全ては私のモノなのだからな……唾液の一滴も例外ではない……」
指先ですくいとった唾液をこれ見よがしに、そして大切そうに舐め取って、悪魔は笑う。
「もちろん、貴様の精も……一滴残らず私のモノだ、くふふ…」
「ぁ、はぁ、ぁ、ぁ……」
「あぁっ……ナカで、また膨らんで……くふ、ふふふふ、んふふ……こうして繋がっているのだ、貴様の事はよぉく分かるぞ……もうすぐ限界なのだろう……?精を捧げたくて堪らないのだろう……?絶頂に導いてほしいのだろう……?
あぁっ……そんなに可愛いカオをして……どこまで、私の欲望を掻き立てるつもりなのだ……」
欲望にぎらついた瞳が、僕の心を見透かす。感じ入る快楽も、悪魔に筒抜け。僕の限界も、敏感さも、弱点も全て、重ねたカラダに探り当てられて、隅々まで知り尽くされてしまっている。
たとえ僕のモノが絶頂寸前だとしても、悪魔はそれを暴発させずに可愛がってくれる。それは、あまりにも巧みな性技。悪魔がその気になれば、僕を呆気なく絶頂させる事はもちろん、生殺しで嬲り続ける事さえも容易くて。その事実を前に、僕は完全に悪魔の支配下に置かれてしまったのだと、身にも心にも教え込まれてしまっていた。
「くふふ……もうすぐだ……もうすぐこの私が、共に果ててやるぞぉ……?んふ、ふふふ……ありがたく思うのだな……
ただ同時に果てるだけではない……じっくりねっとりと蓄えたこの快楽を、共に交わし合うのだ……くふふふ……
互いの絶頂が絶頂を押し上げあって……あぁ……想像しただけで、堕ちてしまいそうではないか……?どこまでも、どこまでも……果てのない堕落が貴様を待っているぞぉ……?」
そして、悪魔の支配の先にあるのは、無慈悲な蹂躙でもなく、嗜虐的な遊戯でもなく。一緒に絶頂を迎えるという、あまりにも甘く心に響く行為。
悪魔はその支配を以って、ただただ、僕を快楽の淵へと導こうとしてくれる。
弄ぶための支配ではなく、悦ばせるための支配。そして、その悦楽もまた、僕を支配するために。
悪魔のもたらしてくれる、終わりの見えない支配の連鎖は、その途方もない甘美さで、僕をどこまでも支配する。
快楽が僕を支配する。その支配が、僕に快楽をもたらし、幸せへと導いてくれる。支配と幸福が絡み合って混ざりあって。悪魔による支配と幸福が、分かつことのできないものとなっていく。
「くふ、んふふっ……貴様は私のモノだ……あぁ……私だけのモノっ……」
「ぁっ……んむ……んぅ……」
僕を捕らえる悪魔の腕。繋がったまま、優しく抱き起こされて、抱き締められて。
悪魔はその胸で、僕を抱いてくれて。そして、その大きな翼で、僕を包み込んでくれる。
その抱擁は、愛しむようでありながらも、絡め捕らえるかのよう。揺籠でもあって、檻でもあって。
胸の谷間に顔をうずめれば、甘酸っぱく淫らな女の匂いと、母性を感じる穏やかな香り。魅惑の乳肉に口元をむにゅりと塞がれてしまえば、僕が吸い込むのは、谷間の空気だけ。胸の香りが頭の芯まで染み込んで、興奮が、幸福が、後押しされていく。
「はぁ……んっ……くふふ……ほぅら、トドメだっ……んふ……貴様のだぁいすきなおっぱいを味わいながら、果ててしまえっ……」
「んむっ、ん、ふぅっ……っ……―――っ」
「あぁっ、果てるのだなぁっ……?私も一緒だぞっ……ぁ、っ、あはぁっ❤︎」
そして悪魔は、僕の頭を抱いたまま、その胸を押し付け、擦り付け、挟み込んできて、僕の顔をむにゅむにゅと弄ぶ。
丹念に味わわされる、至福の柔肉。母性による征服。夢のように甘い愛撫をきっかけに、僕の昂りは限界へと上り詰めて。僕のモノを咥え込んだ悪魔のナカも、ひくひくと蠢いて……二人同時、溜まり溜まった快楽が、堰を切って流れ出した。
「ふぅぅぅ…………」
丹念に時間をかけ、じっくりと導かれた絶頂は、あまりにも深く。まるで精を漏らしてしまうかのように、心地良さに緩みきってしまいながらの、膨大な射精感。
悪魔の胸に囚われ、声も出せないまま、ただただ、心地良さに息が抜けていく。
「くふぅぅっ❤︎そうだぁ、たぁっぷり出せっ……❤︎」
肉襞が、肉棒を優しく、執拗に撫で回す。きゅぅきゅうと熱烈な締め付けは、まるで僕の所有権を主張しているかのよう。しかしそれは、愛おしげな抱擁でもあって、どこまでも心地よく、僕のモノを包み込んでくれて、安心感さえもたらしてくれる。
僕の絶頂、脈動と重なりあった、うねり、くねり。そして、尿道口を捉えて離さない、子宮口の吸い付き。まるで、キスされているかのよう。
僕と同時、深い絶頂を迎えた悪魔のナカは……その全てが、僕の精を啜りとり、心地良さの果てに導くためだけに蠢いていた。
「はぁっ……❤︎とくと味わおうではないかっ……堕ちていく悦びをっ……❤︎」
そして、導かれるがまま、悪魔の子宮に精を漏らせば……悪魔のナカの、その締め付けは、吸い付きは、蠢きは、一際甘い快楽をもたらしてくれて。さらなる深みへと導かれるがままに、より多くの精を捧げれば、悪魔の身体はまた、さらなる快楽、心地良さをもって応えてくれて……
二人同時に絶頂へと登りつめた、その先に待っていたのは、終わりの見えない快楽の連鎖だった。
「んふ、くふふふ……❤︎幸せだろう……病み付きだろう……?何も案ずることはないぞ……❤︎」
ただひたすらに、甘美で、心地良い瞬間。それはまさに、堕落させるための底無しの快楽。永遠に続く事を望んでしまう程の、至福の時。
僕だけが気持ち良いのではなく、悪魔もまた、共に悦んでくれているその事実が、どうしようもなく愛おしい。悪魔の快楽が僕の快楽になり、僕の快楽が悪魔の快楽に。互いの悦びを感じあい、心までもが通じあって、繋がりあって、満たされていくような心地。
どこまでも心を蕩かされ、悪魔に惹き寄せられて。堕ちていく。魔に染まっていく。戻れなくなることさえ、悦びに他ならない。
「はぁん……❤︎離さぬぞ……逃さぬぞっ……❤︎」
快楽に艶めいた悪魔の呼び声。悪魔は僕を優しく包み込みながらも、決して離そうと、逃がそうとしない。もはや僕は快楽に身も心も支配され、逃げる事など出来ないというのに。悪魔の虜だというのに。
絶頂の最中、悪魔が露わにする飽くなき支配欲。それに抱かれ……僕は安堵していた。悪魔は、僕を不条理なまでに求めてくれて、決して独りにしようとはせず、一緒に堕ちてくれる。だからこそ、心の底まで安心し、快楽に浸る事が出来て。悪魔の枷こそが、僕を不安から解き放ってくれるのだった。
「あはぁっ……❤︎なんと濃厚な……そんなに私を孕ませたいか、くふふふふぅ……っ❤︎
よいぞぉ、貴様の欲望も、ぜぇんぶ私のモノだっ……ぜぇんぶ捧げるのだぞぉ……❤︎」
もはや、悪魔と交わる事はおろか、子を成す事にさえ、一切の忌避も恐れもなかった。それらは全て、神聖な行為である子作りを、悪魔と行う背徳の悦びに。ぞくぞくとした転落感が、どうしようもなく心地良い。
悪魔の言葉に本能を刺激され、欲望の丈はますます膨れ上がっていく。悪魔に、僕の子を孕んで貰いたい。そんな身勝手な欲望でさえも悪魔の思い通り。それは、悪魔が僕を受け入れてくれているということに他ならない。そのあまりにも深い受容に、包容に、溺れていく。
「くふぅぅっ……❤︎ああっ、なんと美味なのだ、なんと心地よいのだ、貴様はぁっ……❤︎
まったく、愛い奴めっ……どこまでも、どこまでも、共に堕ちてやろうではないか……❤︎貴様はもう、私のモノなのだからなぁ……❤︎」
共に堕ちる。その言葉が、あまりにも甘美に響く。堕ちる事にさえ、安堵を感じずにはいられない。戻れなくなっていく事にさえ、安心してしまう。
僕はもはや、身も心の悪魔のモノ。底なしの心地良さは、幸福感は、まさに悪魔のもたらす刻印だった。
「くふふ、ふふっ……❤︎貴様の悦びは手に取るように分かるぞ……❤︎
私のモノになるのが嬉しいのだろう……?この私に堕ちたいのだろう……?くふふ……答えずとも分かっているぞ……❤︎
貴様は、この私に抱かれて、悦んでいればよいのだっ……❤︎この私を、愉しませていればよいのだっ……❤︎
何も案ずることはないのだぞ……❤︎この先もずぅっと、ずっと、な……❤︎」
止まらない射精。終わらない快楽。どろどろに蕩けた頭に、悪魔は執拗に、僕の望む言葉を囁いてくれる。悪魔は、僕の悦ぶ言葉を知っている。知っていて、惜しげもなく繰り返してくれる。たった一言でさえも甘い猛毒なのに、流れるように言葉は紡がれて。
骨の髄まで、心の芯まで、魂までもが、悪魔のもたらす幸福に征服されていく。全ては悪魔の意のまま。
悪魔の意のままに、僕はこれ以上ない幸せを感じていた。
この幸せな瞬間が、二人一緒の絶頂が、いつまでも、いつまでも、続いて欲しい。
永遠を求めながら、僕は悪魔に導かれ……終わりの見えない深みへと堕ちていく。
「はぁぁぁ……くふ、ふふ、ふふふぅ……❤︎これほどまでに、たぁっぷりと……❤︎素晴らしいものだなぁ……?共に堕ちるという事は……❤︎まさに至福のひと時であったぞ……❤︎」
「ぁ……はぁ……ぁぅ……」
永遠と思えた甘美な時間にも、ついに終わりが来て。長い長いひと続きの射精の余韻に、僕は浸っていた。
身も心も全てどろどろに蕩け堕ちてしまう、禁断の快楽と幸福。僕と同じ時間を、悦びを共有してなお、悪魔は喜悦と慈愛に満ちた表情で、僕を覗き込んでくれる。
その支配者たる余裕が、甘い囁きが、僕にさらなる安堵をもたらしてくれる。
「んふふ……くったりとして、とろんとして……あぁ、なんと……か弱いのだ……❤︎疲れ果てた姿も実にいやらしく、可愛らしいぞ……❤︎」
「ぁぁ………っ」
悪魔の言葉通り、あまりにも深く甘美な絶頂の末に、僕は疲れ果ててしまっていた。
無尽蔵の精力を与えられても、体力には限りがあって。もはやろくに身動きも取れず、悪魔に抱かれるがまま。喋ることさえ叶わず、交わるには限界。
僕は悪魔に、男としてあまりにも恥ずかしい姿を晒していた。
しかし悪魔は……この痴態ですらも満足気に褒め称えてくれた。
そんな悪魔の囁きを受けた僕は……この身を支配する疲労感にさえ悦びを感じてしまっていた。情けなさでさえ、心地良い充足に置き換えられてしまっていた。
悪魔がもたらしてくれるものは、ただ一つの例外もなく、幸福に結びついていた。
「さぁ……貴様のだぁいすきなおっぱいだぞぉ……❤︎」
「……ん……ぁむ……ちゅ……」
揺籠のようにゆったりとした抱擁。口元に差し出された母性の象徴。僕は、誘われるがままに、禁断の果実を口に含んでいた。
ぷっくりと淫らに膨れ勃った乳首は、僕の唇を虜にする。本能に訴えかける、魅惑の感触。吸い付いて、舐って、甘噛みして、甘えずにはいられなかった。甘えさせられてしまっていた。
「ぁん……くふ、ふふふ……甘えん坊め……まるで赤子だな……❤︎よしよし……いい子だ……❤︎私のために、一生懸命どぷどぷと、よぉく頑張ったな……❤︎
今はゆっくりと休むがよい……そう、今はな……❤︎」
赤子のようだと言いながらも、悪魔は嬉々として、僕の頭を優しく撫でてくれる。ご満悦といった様子で、僕を労ってくれる。
理不尽なまでに注がれる愛情は、まさに溺愛。しかし、愛に溺れているのは、僕に他ならない。
意識さえも、悪魔の愛の中に蕩けていく。欲深な母性に抱かれ、身も心も幸福に染め上げられて……僕は深い眠りに落ちていくのだった。
「ん……ぅ……」
まどろみの中。人肌のぬくもり、柔らかさ。ぼんやりとした心地良さが、だんだんと鮮明になっていく。
もぞりと身体を動かせば、僕の身体を優しく包み、受け止めてくれる存在に気づく。
「くふふ……起きたか?」
僕が枕にしているのは、悪魔の胸だった。僕が身体を預けているのは、悪魔の肢体。その豊満さは、まさに極上のベッド。
悪魔は妖しく笑いながらも、まるで聖母のように、僕を抱いてくれていた。
「ぁぅ……んぅ……」
「んふふ……まだまだ、おねむか……」
からっぽの頭のまま、悪魔の抱擁に甘える。僕をいざなう、一対の果実。すりすりと頰を擦り付ければ、吸い付くような肌触り。谷間にぎゅっと顔を押し付ければ、むにゅりと顔を包み込んでくれる。そのまま深呼吸すれば、甘い香りに包まれて、目覚めたばかりなのに、夢見心地。
甘えれば甘えた分だけ、悪魔は僕を撫でてくれる。ぎゅっと抱きしめてくれる。意識がはっきりとしたぶんだけ、悪魔の与えてくれる幸福が、頭の中に染み込んでいく。
とろけるような心地良さの中で僕は、目覚めを迎えていた。
「あぁ……仕方のない奴め……よしよし、心ゆくまで惰眠を貪るがよいぞ……」
しかし、目が覚めてなお、悪魔の肉布団は、僕を捕らえて離さない。ただのベッドでさえも、人の心を引き止めるのだ。それが悪魔の抱擁であれば、僕の心は為す術もなく囚われてしまう。
そして、それに抗う理由は見当たらない。他ならぬ悪魔が、それを良しとしてくれているのだから。
甘えるだけで、時間が過ぎていく。怠惰を犯す背徳はまさに蜜の味で。至福の時間は、穏やかに過ぎていった。
「……ぁ……あの……」
飽きる事のない怠惰。二度寝、三度寝まで繰り返し、思うがままに睡眠欲を満たして。
もはや眠気などなくなってしまっても、悪魔の抱擁から逃れる気はしない。僕は逃れたくなかった。離れたくなかった。
悪魔との取引は、あの夢のように幸福な一夜をもって完了してしまった。その事実に気づいてしまっていた。
僕がここにいる理由は無い。悪魔に抱いてもらえる理由は、もうないのだ。一度離れてしまえば、それで終わりかもしれない。
一夜の服従。たった一夜を終えてしまった僕は、どうすればいいのだろうか。せめて、あと一夜だけでも……
いつしか僕は、縋るように悪魔へと身を擦り寄せ、ねだるように声をあげていた。
「くふふ、どうしたというのだ……?そんなに可愛い声をあげて……望みがあるなら言ってみるがよい」
「あ……あの……その……」
一夜の服従。それは、少し前の僕にとっては温情に他ならなかった。しかし、今となっては別だ。たった一夜で終わってしまうならばいっそ、僕の全てを要求して欲しかった。
人智を越えた快楽。心を犯す心地良さ。僕は、悪魔に抱かれる悦びを知ってしまった。
他の何にも代え難い、悪魔のもたらす幸福。僕の全てを対価に捧げても、釣り合いは取れない。本来、人間の味わえる幸福ではないのだ。
それでも僕は、どうにかして、悪魔との繋がりを保っていたかった。
「もし、よろしければ……もっと、お礼が……したいのです……一夜だけ、ではなく……」
「くふふ……礼をしたい、だと……?嘘ではないようだが……」
あさましく悪魔の寵愛を求めることは、僕には出来なかった。羞恥が邪魔をした。縋り付くような真似をしては迷惑だろうし、悪魔の気に障ってしまうかも知れない。
そんな、遠慮がちな事を考えてしまうのは、きっと僕に染み付いた性でもあるのだろう。
「それだけが望みではあるまい……?この私に抱かれたいのだろう……?犯されたいのだろう……?そう、昨夜のように……」
「ぁ……ぅ……はぃ……あと一度だけで、構いませんから……」
しかし……悪魔を前にしては、僕の遠慮などは全くの無意味だった。
心に染み込む、悪魔の囁き。その甘い声は、僕の欲望を掻き立てる。抑え込むことなど、出来ないほどに。
「くふ、ふふふ…………一夜だけでよいのか?本当にそれで満足なのかぁ……?
ほぅら、欲望を曝け出せ……」
「っ…………た、たくさん……して欲しい、です」
悪魔に唆され、欲望は際限なく膨れ上がっていく。己の物とは思えない程の、人の身には余る深い欲望。しかし、それは確かに、僕の内側から溢れるモノで。
「沢山……?それではいつか、終わってしまうなぁ……?」
「ぁ……ぅ……ず、ずっと……ずっと一緒が……いい、です……
ずっと、永遠に、一緒で……気持ちよくして、幸せにして欲しいです……っ」
悪魔の言葉が、僕の心の枷を、タガを、外していく。僕の心を、丸裸にしていく。
いつか終わってしまう、それではダメだった。
終わりのない快楽、幸福。そんな物がこの世にあるかどうか、悪魔が実際にそれを叶えてくれるかどうかなんて事は、もはや考えの外。
「くふ、ふふふふふっ……そうだろう……?終わりなど要らぬ……
貴様の望む物……それは"永遠の快楽"だ……」
「永遠の……快楽……」
永遠の快楽。それはまさに、僕の望む物だった。悪魔の言葉は、破滅的な妖しさを孕みながらも、諭すように優しくて。僕の中に渦巻く欲望を、自覚させられてしまっていた。
心の中を、夢のように甘美な響きが埋め尽くしていく。悦楽と至福に満ちた日々を夢想してしまう。
「そうだ……この私による、決して終わる事のない、永遠の快楽……それが欲しいのだろう……?」
「は、はぃ……ほしいですっ……」
欲しい。永遠の快楽が欲しい。もはや僕は、その事で頭がいっぱいだった。欲望をさらけ出し、悪魔にぎゅっと縋り付いて、甘えた声をあげずにはいられなかった。
「くふ、ふふふ……ならば……契約を交わそうではないか……?魔術によって縛られた、決して破る事のできない契約を……」
「ぁ、あぁっ……はぃっ、契約します……しますからっ……」
「んふふ……そう焦らずとも、私は逃げたりせぬ……まったく、愛い奴め……」
「ぁ……うん……」
「くふふ……はやる気持ちは分かるが……大事な契約だ。話はしっかりと聞くのだぞ……?」
悪魔の囁く契約。その対価が何であるかは重要ではなかった。
悪魔が僕に、永遠の快楽を与えてくれる。夢想した光景が現実になるのであれば、それこそ、僕の全てと引き換えであろうとも、惜しくはない。
それほどまでに、悪魔の囁く永遠の快楽は魅力的だった。僕の思い描く事のできる、理想そのもの。いいや、きっと、理想さえも越えてしまうのだろう。
そんなものが手に入ると言われたら……戸惑いながらも、後も先もなく飛びつく他なく。
そんな僕の焦りを、悪魔は優しく受け止め、安心させてくれる。
「貴様の支払う対価は、永遠の服従……その身も、魂までも……貴様の全てを私に捧げると誓うのだ……
さすれば、貴様に永遠の快楽を約束してやろう……」
僕の全てを求める囁き。とびきり甘く、あまりにも魅力的な提案。
「捧げますっ……全て、捧げますっ……だからっ……」
永遠の服従。全てを捧げる誓い。
ただ、僕にとって重要なのは……悪魔の示す対価が、僕に支払える物であるか否か、だった。
"永遠の快楽"に手が届くと分かった瞬間、僕の心は歓喜に染まっていた。嬉々として、悪魔に全てを差し出そうとしていた。
「くふふ、ふふふっ……そうか、私に全てを捧げるか……私のモノになるか……
だが……これはただの"対価"ではない……
貴様はもう、悦びを知っている……そうだろう?」
「ぁ……」
悪魔に囁かれ、導かれ、僕はようやく対価の意味を理解する。
心身に刻み込まれた、昨夜の快楽、幸福。僕は知っている。悪魔に服従し、身を捧げるその悦びを。全てを捧げる価値のある、至福の心地よさを。
「貴様は、その精の一滴から毛の一本まで、私の所有物になるのだ……
くふふ……肌身離さず傍に置いてやろうではないか……勿論、離れる事など許さぬ……」
恍惚に浸る僕に追い打ちをかけるように、悪魔はねっとりと囁き続けてくれる。
この"対価"が、悪魔の支配がもたらしてくれる幸福を、否が応にも夢想させてくれる。
途絶える事のない温もり。孤独からの解放。あまりにも愛しい不自由。
「そして、この私が、欲望のままに貴様を貪り尽くしてやろう……どこまでも堕として、愛で尽くしてやろう……」
未曾有の快楽。貪られる悦び。注がれる欲望こそが、僕の価値を認めてくれている証。
悪魔の所有物となってしまえば最後……拒む事は許されない。貪欲な寵愛を受け入れるしかない。幸福へと堕とされてしまう他ない。それは、選択肢の剥奪であるにも関わらず……甘美さと安堵を覚えてしまうものだった。
「くふ、ふふふっ……この私のモノになりたいのだろう……?この私に支配されたいのだろう……?」
「ぁぁ……っ」
甘い抱擁から一転、悪魔は僕に覆い被さってきて。とびきり邪悪な笑みの下に、組み敷かれてしまう。
悪魔が上で、僕が下。ぞくぞくと、背筋が震える。媚びた声が漏れる。身体中が、甘く疼く。
疑いようはなく、言い逃れることも出来ない。己の欲望を突きつけられてしまった。
悪魔のモノになりたい。悪魔に支配して欲しい。貪り尽くして、愛で尽くして欲しい。堕落の淵へと引きずりこんで欲しい。
「この私が貴様に与えてやろう……支配されるという特権を……❤︎」
支配されるという特権。そう、僕は、悪魔に"支配してもらえる"のだ。支配される悦びを享受することができるのだ。それは、まさに特権と言うべき代物で。
どこまでも高圧的で、独善的で、邪悪なはずのその言葉がもたらしてくれるのは……あまりにも倒錯的で、甘美な響き。僕は、すっかりと悪魔の囁きに酔いしれてしまっていた。
「さぁ……この私に永遠の服従を誓え……永遠の支配を望め……他の誰のためでもなく、貴様自身の幸福のために……❤︎
さすれば、この私が永遠の快楽を約束してやろう……❤︎」
「はぃ……あなたのモノになりますっ……あなたのモノにしてくださぃ……っ」
もはや、契約を躊躇う理由は無かった。対価さえもが、己の望みなのだから。この契約において僕はただ、望みを、願いを叶えてもらえる。
僕は、悪魔に全てを捧げ、委ね、支配してもらう事を心の底から望んでいた。僕はその対価までもを望み、契約をねだっていた。
自ら望む……最も確たる合意の上で、僕は悪魔と契約を交わそうとしていた。
「くふふ……契約成立、だな……❤︎」
僕を組み敷いていた悪魔の手は、いつしか頰に添えられていて。ねっとりと絡みつくように僕を捕まえ、その指先で、くい、と顔を上向かせてくれる。
そして、ゆっくりと迫ってくるのは、青を下地に朱の差した、幻想的で艶やかな、魅惑の唇。
それはどこか、新郎新婦の誓いのキスを思わせて。僕は、悦びに心を震わせながら、目を閉じ、静かに口づけをねだらずにはいられなかった。
「ん……ちゅ……んむっ……❤︎」
唇が、悪魔に奪われる。濃密に重ね合わされて、隙間なく塞がれてしまう。執念深くも情熱的なキス。そして、触れ合う唇から流れ込む熱が、これがただの口づけではない事を教えてくれる。
キスと共に、悪魔によって紡がれる魔術。交わした契約の言霊、その意味が、唇へと封じ込められ、甘い疼きが織り込まれていく。悪魔の魔力が注がれ、満ちていく。
僕は期待に心を躍らせ、契約の魔法を受け入れていた。唇同士が融け合ってしまうかのような心地良さに、身を委ねていた。
「んふ……❤︎」
ついに、合わさった唇が離れていく。名残惜しさとともに唇に残されたのは、狂おしいほどに甘美な熱。
そして悪魔は妖しく微笑みながら、契約の魔法を封じたその唇を、僕の喉元へと寄せてきて……
「ん……❤︎」
「ぁ──っ」
それはまるで、烙印のようなキスだった。
唇が触れた瞬間、魔法が弾け、爛れるような快楽が首に絡みつく。じくじくと、肌に焼きついていく。
鎖を象った禍々しい紋様。その形が刻み込まれて行くのを、はっきりと感じ取ることができて。
それは、身体に直に刻まれた、外す事のできない首輪。悪魔の所有物である証。支配と寵愛を約束してくれる、愛しい鎖。
「くふふ……さぁ、次は貴様の番だぞぉ……?」
「ぁ……ぅ……はぃ……」
口づけを終えた悪魔は、僕を抱き起こしてくれて。くすぐるように、僕の唇へ吐息を吹きかけてくる。そこには未だ、狂おしい程の甘い熱が渦巻いている。
次は、僕の番。悪魔が支配の証を刻み込んでくれたように、情欲に熱されたこの唇で、僕は服従を誓うのだ。きっと、そうして、契約の儀式は完了する。
「ほぅら……こちらだ……❤︎」
「ぁ……」
そして悪魔は、ベッドの上でしゃがみ、これ見よがしに、その美しい脚を開いていく。
曝け出される肉感的な内ももに、貪欲な秘所。情欲を煽る、あまりにも淫らな姿勢。
漆黒の翼は、僕を迎え入れてくれるかのように、大きく広げられていく。興奮に融かされていく思考。僕は誘われるがまま、悪魔の元へと跪いていた。
「んふふ……ココだ……❤︎ココに、この下に……子宮があるのだぞ……❤︎」
肌の上を滑る悪魔の指先が、僕の視線を誘導する。その指がたどり着く先は、艶かしい下腹部。
指先でとんとん、と指し示す、その奥にあるのは、子宮なのだと悪魔は言う。
「ココが……貴様が精を捧げ、子を孕ませる場所だ……❤︎」
「ぁ……ぁぁっ……」
悪魔の子宮。そこは、僕の精を啜り尽くす、貪欲と快楽の象徴。この先に待っているめくるめく従属の日々を、甘美な交わりを、否応なく夢想させてくれる。それは、ただ糧として貪られるのではなく、子を成すための愛の営みでもあるのだと、狂おしい程に期待させてくれる。
「さぁ、その唇で……今一度、この私に服従を誓うのだ……❤︎」
「はぃ……っ……」
そして悪魔は、僕にキスを促す。
それは、身も心も魂さえも、悪魔に捧げる事を誓うキス。全てを塗り替えるであろう、愛おしい瞬間。
ただ服従を誓うだけでなく、悦びと期待に満ちたこの胸の内を、熱烈な恭順の想いを示すべく。僕は、悪魔の指し示したその場所へ、ゆっくりと唇を寄せて……
「はぁん……❤︎」
「……ぁ……」
服従の口づけを捧げた瞬間、紫の淡い光が花開く。淫らな紋様が、悪魔の肌に描かれていく。契約紋が象るのは、悪魔の翼と子宮。隠されるべき秘部を強調するその画は、まさに退廃と背徳の極みでありつつ、僕の精を貪り尽くすその場所を、桁外れの欲望を、いやらしく魅せつけるものだった。そしてそれは勿論、僕が悪魔に服従を誓った証でもあって。
描かれていく契約の淫紋を前にして僕は、堕ちていく悦びを感じていた。これが完成した時、契約は確かなモノとなる。その時が、訪れようとしていた。
「くふぅっ……❤︎あぁっ……これで、契約は結ばれた……❤︎」
「───っ」
契約紋が描かれ終えた、その瞬間。僕は悪魔と深い結びつきを感じていた。僕という存在が、悪魔の手中に収められていく。決して逃れる事のできないように、逃れる気さえ起こせないように、甘く優しく抱擁され、居心地よく囚われてしまうかのよう。
僕は今まさに、悪魔に魂を売ったのだ。もう、戻れない。抗うことはできない。比類のない被支配感。全てを投げ出して、堕ちていく。背筋を駆け抜けるぞくぞくとした感覚が止まらない。目眩さえするほどに甘美な堕落感に、溺れていく。自由を剥奪され、囚われの身に堕ちたにも関わらず……心は逆に、枷を外され、解き放たれたような心地でもあった。人の世の理やしがらみに縛られる事もなく、僕はただ、悪魔の命に従えばいい。そして、永遠の快楽が、幸福が約束されているのだ。もはや、不安などは全て、融け堕ちていた。
「くふ、くふふふふ……❤︎さぁて……お前は誰のモノだ……?答えろ、フラクト……❤︎」
「ぁ……あぁっ……」
妖艶に囁かれる、最初の命令。それは、僕が悪魔のモノになった事を、改めて自覚させるためのもの。
そして悪魔は……僕を、"貴様"ではなく"お前"と呼んでくれる。初めて、僕を名前で呼んでくれる。それが、"所有物"という立場でありながら、支配されるという関係でありながら、まるで恋人のような特別さを感じさせてくれて。それが、その場に崩れ落ちてしまいそうなほど、悦ばしい。
「はぃっ……ディサディアさまのモノですっ……」
僕は……いつの間にか、悪魔の名前を知っていた。契約が、その名を僕の心に刻み込んでいた。
ディサディア。それが、僕を支配してくれる愛しい名前。
目一杯の悦びを込め、恥ずかしげもなく媚びきった声で、その名前を呼ばずにはいられなかった。僕を選んでくれた事に心からの感謝を捧げ、命じられるまでもなく、ディサディア様、と。
「くふふ、そうだ……お前はもう私のモノだ……❤︎
私がお前を欲せば、お前はそれに応える他ない……感じるだろう?この私の欲望を……❤︎」
「ぁ、ぁっ……こんなに……」
そして、僕は、契約の向こうに、ディサディア様の情欲をひしひしと感じ取ることが出来た。まるで、心を触れ合わせるかのように、鮮烈に、欲望の丈が伝わってくる。そこにあるのは、深く求められる至上の悦び。
それだけでなく、僕の身体は、心は、契約に従うかのように、彼女の情欲に呼応していた。人の身には余る程の熱情が、呼び起こされていく。昂りのあまり、それだけで暴発してしまいそう。堪らず、快楽をねだる甘えた声をあげてしまう。
「くふふ……愛い奴め……もはや何も、案ずることはない……たぁっぷりと可愛がってやるぞ……❤︎そう……心ゆくまで、たぁっぷりとな……❤︎」
ディサディア様は、跪いたままの僕を、甲斐甲斐しくベッドに横たえさせてくれる。まるで赤子にそうするかのように、頭を撫でてくれる。今までにも増して、壊れ物を扱うかのように、過保護なまでに柔らかな手つき。それが、堪らなく心地よい。
優しく紡がれるその言葉は、さらなる堕落へのいざない。背筋がざわめくほどに、愛おしげな響き。
爛れきった慈愛と庇護欲を露わにした彼女の眼差しは、背徳的なまでの母性と、苛烈な愛欲を同時に湛えていた。
その瞳の奥にあるのは、溺愛という言葉ではとても言い表す事のできない……想像を絶する程の、邪悪なまでに深い愛情。それこそが……彼女の本性だった。
「ぁ……ぁ……っ」
契約を交わしてしまえばこちらのものと、その本性を露わにする。それは、まさに悪魔の所業だというのに。そこにあるのは、想像も期待も越える程の、契約外の愛情だった。
決して嘘はついていない。契約を違えてもいない。しかし、騙し討ちのように注がれる愛情は、不意打ちだからこその甘美さで、溢れかえりそうなほどに心を満たしてくれる。幸せの絶頂へと、僕をいざなってくれる。
──あぁ……こんなに愛してくれるなんて、幸せにしてくれるなんて、話が違いますっ……
「くふ、ふふふ……❤︎」
心の底から悦び悶える僕を、ディサディア様は恍惚の表情で見守ってくれる。ら
彼女は、僕を騙してなお、幸福に導いてくれる。たとえ彼女に騙されたとしても、その先に待っているのは破滅ではなく、想像さえ出来ない幸福なのだ。
そんな、邪悪な愛情を知った今、彼女への信頼は、より強固なものとなっていた。騙される事への不安さえも……さらなる幸福の期待へと塗り替えられてしまったのだから。
「さぁ……私にその身も、心も、全てを委ねるのだ……❤︎」
「ぁぅ……はぃ……ディサディアさまぁ……❤︎」
そしてついに、ディサディア様は、僕に覆い被さってきて。僕の抵抗を封じながらも、まるで恋人のように、両手が握り締められていく。
尻尾は器用に僕のモノを捉え……ゆっくりと、その先端を在るべき場所へと導いていく。
深淵を思わせる黒と紅の眼に覗き込まれたなら、その美しさに魅入られ、目を逸らす事は出来ない。眼差しに込められた、狂おしい程の欲望と愛おしさ。触れる身体から、吐息から伝わるのは、一夜ではとても静まらない程の火照り。どれだけの間、貪り尽くされてしまうのか、想像さえつかない。
途方も無い欲望をひしひしと感じながらも、そこに不安はなかった。この先に約束されているのは、永遠の幸福なのだから。
僕は、心酔するがままに愛しい名を呼び……その愛に全てを捧げ、全てを委ね、どこまでも堕ちていくのだった。
「くふふ……今日はこれを着てやるとしよう……」
「あぁ……ありがとうございますっ……」
一糸纏わぬディサディア様がその手に握っているのは、純白のエプロン。レース生地が透けて見えるそれは、彼女に頼んで買ってもらった、僕のお気に入りの一つ。今となっては、彼女がそれを着て、朝食を作ってくれる事が恒例となっていた。僕の望んだ装いは、契約外の甘い寵愛の証。
その日その日で違うエプロンを身につけてくれるのだけれど、どれを選ぶかは、ディサディア様の気分次第。数多あるコレクションはどれも僕好みのデザインで、それを着た彼女の姿もまた、甲乙付けがたい魅力を持っている。だからこそ僕にはとても即断など出来ず……しかし、ディサディア様はすっぱりと決断を下してくれる。おかげで僕は、選択という悩みとは無縁でいられるのだ。
「ほぅら……しっかりと目に焼き付けるのだぞ……」
「はぃ、ディサディア様……」
「くふふ、どうだ……?」
「あぁっ、今日も素敵です……」
ゆっくりと見せつけながら、ディサディア様はエプロンを身につけていく。後ろ手にエプロンの紐を結ぶその仕草は手馴れていて、とても家庭的で、母性的。
白いレース越しに透けて見える身体の、青い肌色がくっきりと映えて、艶めかしい。そのデザインは彼女の豊満な肢体を引き立て、僕の情欲を煽り立てる。
邪悪な風貌の悪魔に、愛情たっぷりのエプロン姿。いつ見ても夢のような光景であり、そのシチュエーションのギャップは、破滅的な魅力を醸し出していた。しかし、エプロン姿そのものが似合っていないかといえば、むしろ、愛情と欲望の塊とも言える彼女に、これ以上なく似合っていた。
そして、如何にも新妻風といった装いを誇らしげな表情で纏い、魅せつけてくれるディサディア様が、あまりにも愛おしく、幸せでならない。
幾度となく見せてもらった裸エプロン姿だが、どれだけ眺めても見飽きる事はなく、僕はただ、うっとりと見惚れるのみだった。
「くふふ……」
上機嫌に揺れる尻尾、惜しげもなく曝け出された、安産型の瑞々しい桃尻。台所に向かうその後ろ姿を隠すのは、エプロンの紐、ただそれだけ。ディサディア様は朝食を作りながらも、いやらしくお尻を突き出してきて。
弾力に満ちながらも柔肉がたっぷりと詰まったそのお尻が、僕の視線を釘付けにする。ふとももとの境目がくっきりと分かれ、美しく引き締まっていながらも、彼女が誘うように腰をくねらせば……ぷるん、と尻肉が揺れてしまうのだ。均整の美が保たれる限界まで大きく実った、その堕落の果実は、まさに僕の理想そのもの。ディサディア様の身体はいまや、どこまでも僕好みで、僕にとっての絶対の美を体現していた。
「ふふ……愛い奴め……」
「ぁ……」
ディサディア様がこちらを振り向けば、たわわに実った果実が、その側面をエプロンから覗かせてくれる。白いフリルに彩られた横乳もまた、裸エプロンの醍醐味で。ぷっくりと膨らんだ乳輪がちらりと見え隠れして、僕の興奮をさらに煽り立てる。僕を見つめる彼女の眼差しは声色は、支配者でありながら保護者のそれだった。その眼差しが、僕を堕落へと導いてくれる。
彼女の肢体に見惚れ、心奪われる中、その優しい声に促されるがままに、僕はディサディア様へと欲情していた。その丈は、彼女へと筒抜けだった。
「んふふ……見惚れるだけでは物足りぬだろう……?さぁ……その欲望を、精を、私に捧げるのだ……❤︎」
ディサディア様は僕を誘い、欲望を掻き立てて……そして、甘く、艶やかな声で献精を命じてくれる。
ディサディア様の命令……それは、僕の欲望に対するこれ以上ない"赦し"でもあった。僕の欲望を受け容れるだけでなく、命ずるだけの価値を認めてくれる、深い愛情の発露なのだ。だからこそ、命令を受けた僕は、悦びだけでなく安堵を感じていた。 ディサディア様は、その命令を以って僕を肯定し、甘やかしてくれるのだ。
「あぁ……はぃ、ディサディアさまぁぁ……」
僕が自らディサディア様を求めても、彼女は嬉々として僕を受け入れてくれるだろう。それでも僕は、ディサディア様の命令を待ち望み、甘え尽くすようになってしまった。従属しているその実感が、僕に悦びと情欲と安堵をもたらしてくれる。
彼女に一言命じられるだけで、僕のモノはたちまち膨れ、すっかりとそそり勃ってしまって。ディサディア様に後ろから抱きつき、甘く命じられるがままに、蜜の滴る秘所へと肉棒を突き挿れずにはいられなかった。
「んっ……くふ、ふふっ……❤︎やはり、こうでなくてはな……❤︎」
「ぁ、ぁ、ぁぅ……ありがとう、ございますぅ……」
ディサディア様のナカは、最奥へと引きずりこもうと、貪欲に僕のモノを迎え入れてくれる。先端を包み込まれるだけで、あまりの快楽に腰砕けになってしまう。だというのに、肉棒を奥へと突き挿れずにはいられない。ディサディア様に精を捧げようと、身体が勝手に動いてしまう。
「はぁん……ほぅら、捕まえたぞぉ……❤︎」
「ぁ、ふぁ、ぁぅぅ……」
堕落を誘う悪魔の名器が、僕のモノを最奥まで呑み込んでくれる。
幾度となく僕の精を搾り取ってきたディサディア様の魔膣は、僕の弱点を隅々まで知り尽くしていて。最奥まで招かれてしまえば、何もかもが僕のモノとぴったりで、底無しの心地よさと抱擁感をもたらしてくれる。
そしてディサディア様は、その尻尾を僕の腰に絡め、離れられないように縛り付けてくれて。僕を、一番気持ち良い場所から逃してくれない。
「んふ……どれ、じっくりと可愛がってやろう……❤︎」
「はぁ、ぁぁぁ……」
甘い締め付けに、ゆったりとした、うねり、くねり。無数の肉襞が、肉棒を優しく撫で回してきて。ディサディア様の膣内は、徹底的なまでに僕を甘やかしてくれる。穏やかながらも底抜けに甘美な快楽に、どっぷりと浸されてしまう。ただ快楽に耽るだけでなく、この愛おしい朝のひと時を余すことなく愉しめるように、あえて、じっくりと僕のモノを可愛がってくれるのだ。
「ぁ、ぁ……きもちぃぃ……」
裸エプロンの、無防備な側面。露出した横乳に誘われるがまま、手を滑り込ませて、貪欲に実った母性の象徴を下から持ち上げる。掌にのしかかる、ずっしりと圧倒的な存在感。彼女の深い愛情と欲望が詰まっているかのよう。自ずと指先が沈み込んでいく、至福の柔らかさ。きゅっと力を込めれば、甘く優しい弾力を以って、僕の指を包み込んでくれるのだ。
魔性と母性に溢れたその感触は、僕を容易く虜にしてくれる。心を、どろどろに蕩けさせてくれる。胸に甘える指先が、半ば勝手に動いて止まらない。
「んっ……❤︎甘えん坊め……よいぞ、心ゆくまで溺れてしまえ……❤︎」
「はぃ、ディサディアさまぁ……」
ディサディア様の背に身を預けながら、さらさらの長髪に顔をうずめる。ふわりと香る、甘い匂い。愛おしさ、恋しさを呼び起こして僕を絡め取る、堕落の芳香。命じられるがまま、胸を高鳴らせ、愛しい人へと溺れていく。
「ふふ……今日はフレンチトーストだぞ……❤︎もちろん、ザラメをたぁっぷりかけて、カリカリに焼き上げてやるからな……❤︎」
「ぁぁ……そんなぁ……まちきれません……っ」
ディサディア様が作ってくれているのは、僕の大好物。魔界の食材をふんだんに使った、とろけるように甘い特製のフレンチトースト。
ディサディア様が僕に好物を振舞ってくれるのは、今日に限ったことではない。契約外ながらも、毎日毎日、愛情をたっぷりと込めて、僕の好物を、美味しい料理を作ってくれるのだ。
そしてそれは、ディサディア様による支配を、更に確固たる物にしていた。性欲だけでなく食欲までも、ディサディア様の掌の上。漂ってくる美味しそうな匂いに、否が応にもお腹は空いて、期待に胸を膨らませ、ねだるような声をあげずにはいられない。
「あぁ、愛い奴め……腕の振るい甲斐があるというものだ……❤︎」
「んぅ……はぁ、ぁぅぅ……」
すっかり甘えん坊に堕ちてしまった僕を、ディサディア様は嬉々として受け止め、たっぷりと可愛がってくれる。また、僕を甘やかしながらも、料理を疎かにすることはなく、逆に僕が甘えれば甘えるほど、料理にも身が入るといった様子。
甘える僕は決して邪魔にはならないと、むしろ、甘えるべきなのだと示してくれる。そこにあるのは、上位者としての余裕に裏打ちされた、絶対的なまでの包容力と母性。だからこそ僕は、いついかなる時でも、ディサディア様に心置きなく甘え、溺れることが出来るのだ。
「くふふ……そろそろ限界だろう、果ててしまえ……❤︎」
「ぁ、ぁぅ……ぁ、ぁ……」
甘やかされるがまま、愛でられるがまま、僕は容易く限界を迎えてしまって。ディサディア様が導いてくれるのは、とろけるような絶頂。精を漏らす、と形容するに相応しい、底抜けの恍惚感、緩みきった至福の快楽。促されるがまま、導かれるがままに捧げた精は、一滴たりとも余すことなく、ディサディア様の子宮へと吸い上げられていく。
「くふ、んふふっ……はぁんっ……❤︎やはり、朝一番に味わうのは、お前の精でなくてはな……❤︎
あぁっ、実に美味だ……❤︎子宮がとろけてしまいそうだ……❤︎」
ディサディア様の唇から紡がれるのは、破滅的なまでの幸福を秘めた、魔性の音色。決して乱れず、余裕を崩さず、そのカリスマを保ちながらも……計り知れない悦びを感じてくれているのだ。
愛しい人の悦びは、僕の悦び。ディサディア様は、甘やかされる悦びと同時に、尽くす悦びさえも僕に与えてくれる。
「くふふ、ふふふ……❤︎今日もたぁっぷりと愛し尽くしてやろう……❤︎」
「ぁ、ぁぁ……でぃさでぃあさまぁぁ……」
愛しい人が朝食を作ってくれる……それだけでも、何物にも代え難い幸福だというのに。ディサディア様の装いは、男の夢と言うべき裸エプロン。その後ろ姿に誘われるがまま、交歓の悦びに酔いしれ、甘やかされながらも尽くして……それはもはや、妄想、幻想の域というべき生活だというのに。そんな僕の欲望を、ディサディア様は余すことなく叶えてくれるのだ。
愛の支配がもたらしてくれるのは、あまりに濃密な、幸せ過ぎるひととき。慎ましさとは程遠い、まさに耽溺と堕落の極み。こうして、僕とディサディア様の一日は始まるのだった。
「ふふ……今日も自信作だぞ……❤︎」
「ぁ…………」
目の前に置かれるのは、焼きたての特製フレンチトースト。たっぷりとザラメをまぶし、カラメル状になるまで表面をこんがりと焼いた逸品。融け残った粗い結晶は、白でなく琥珀色。アルラウネの蜜から精製された花蜜糖だ。本能に訴えかけてくるような、花蜜糖の濃密な甘い香り。そこに、カラメル特有の芳ばしさが加わって……その魅惑の芳香は、僕の心を期待でいっぱいにしてくれる。
「うむ……上出来だな……」
一人分の食器に、二人前の料理。それが、我が家の食卓。
ディサディア様は魔界銀製のナイフを手に取り、優美な手つきで、熱々のフレンチトーストを一口大に切り分けてくれる。しっかりと卵液の染み込んだ、ふわふわの断面が露わになる。
「ディサディアさまぁ……」
一目見るだけで確信できる、フレンチトーストの美味しさ。それを目の当たりにした僕は、ディサディア様の名を呼び、『あーん』をねだらずにはいられない。一刻も早く食べさせてもらいたい、その一心だった。
「くふふ……今、冷ましてやるからな……ふぅーっ……ふぅーっ……❤︎」
しなやかな指先が、フレンチトーストの一切れをつまみ上げる。ぷるぷるの唇が、艶めかしい息を吹きかける。猫舌の僕のため、これ見よがしに、丹念に熱を冷ましてくれる。
「んふふ……あーん……❤︎」
「ぁーん……」
甘く優しく艶めいて、底無しの愛情を孕んだ、悪魔の誘い。促されるがままに口を開けば、甲斐甲斐しげに手料理を運び込んでくれる。
ディサディア様の作った料理を、ディサディア様に食べさせてもらう。それは、食事という行為までもが、ディサディア様の手中にあるという事で。甘美なざわめきが、ぞくぞくと背筋を這い回る。甘やかされた分だけ、支配される悦楽を感じてしまう。
「ぁむ……ん…………おいひぃ……しあわせぇ……」
カリカリに焼いた表面の、サクサクとした感触。そこに散りばめられた花蜜糖の粒を噛み砕けば、より一層のアクセントが心地いい。
パン生地にたっぷりと吸い込まれた卵液もまた、ハンプティエッグゼリーと特濃ホルスタウロスミルクから作った特別製。アルラウネの花蜜糖と合わさったその味わいは、舌がとろけてしまいそうな程に甘く、濃厚で。しかし、名残惜しさを覚えてしまうまでにふわふわでとろとろな、その柔らかい食感が、しつこさを、飽きを感じさせない。
愛情たっぷりのフレンチトーストは、まさに絶品。人間の感覚で語るならば、家庭料理としては、朝食としては、あまりにも美味に、贅沢に過ぎるものだった。そして、魔界の食材を用いたこの朝食は交わりの準備でもあって、その在り方は、まさに退廃的とさえ形容できる。
けれども僕にとっては、愛情を感じ、居場所を確かめ、安らぎを抱くことの出来る、愛おしく幸福な味だった。ディサディア様の与えてくれるこの味こそが、まさに家庭の味なのだ。
「んふふ……そうか、そうか……❤︎
ぁむ……うむ、今日も確かに美味だな……ほぅら、あーん……❤︎」
「ぁーん……ぁむ……」
「くふふ……❤︎」
舌鼓を打つ僕を、ディサディア様は慈愛に満ちた眼差しで見守ってくれる。そして、僕が次を欲したその時を見逃さず、次の一切れを差し出してくれる。それにぱくりと食いついた時の、彼女の嬉しそうな、満足気な表情が、堪らなく僕を魅了してくれる。だからこそ僕は、ディサディア様に甘えずにはいられない。今まで幾度と無く繰り返されてきた甘美なやり取りに、自立心は根こそぎ奪われ尽くされてしまっていた。
「どれ……そろそろ飲み物が欲しいだろう……んむ…………んっ……❤︎」
「んっ……ん、んくっ……」
大きなコップを満たしているのは、堕落の果実と、とろけの野菜のミックスジュース。ディサディア様はそれを口に含み、僕の唇をそっと奪う。その柔らかさを堪能しつつ、舌伝いに流し込まれるジュースを飲み下す。ほのかな甘さが、すっきりと僕の喉を潤してくれる。
「んっ……ちゅ……れるぅ、んっ…………❤︎」
「んっ……ふぅっ……んんっ、ん、んくっ……」
幾度も繰り返される、甘い口移し。その度に、唇が触れ合い、舌が絡み合う。貪るのではなく優しく甘やかしてくれるような、ゆったりとしたキス。
ジュースに混じるディサディア様の味も、また甘美。互いを味わいながら、一口ずつ、ゆっくりと喉を潤していく。そこにあるのは、愛しい人に染め上げられていく、陶酔めいた悦楽。
「んっ……んふふ…………あーん……❤︎くふふ……お腹いっぱい食べて、たぁっぷりと精をつけるのだぞ……❤︎」
「ふぁ……ぁぅ……ぁーん……」
喉を潤し終えれば、離れた唇に名残惜しさを感じる間も無く、次の一切れが運ばれてきて。口づけに蕩かされた舌で味わえば、もはや夢見心地だった。
すっかり出来上がってしまった僕に、ディサディア様は舌なめずりを魅せつけてくれる。ディサディア様にとっての本当の朝食は、他ならぬ僕自身。
料理中のつまみ食いでは飽き足らず、今日も朝からディサディア様に食べられてしまうのだと、改めて意識させてくれる。手料理に込められた愛情は、保護者としてのモノでありながら、捕食者めいてもいて。魔界の食材の効能はまさに、僕を美味しく食べるための下ごしらえ。
交わりへの期待を胸に味わうのは、ディサディア様の愛と欲。その甘美さに溺れながら、朝のひと時は過ぎていく。
「んふふ……どれ、身体を洗ってやろうではないか……」
朝食の後に連れ込まれたのは、紅い魔力にぼんやりと照らされたお風呂場。魔法の品によって、交わりのために様々な趣向が凝らされたそこは、もはや第二の寝室であり……ディサディア様にとっては、第二の食卓とも言うべき場所だった。
床は軟質の素材で、身を横たえても痛くならないどころか、むしろ上質な寝心地を約束してくれる。目の前の壁一面は、曇ることのない鏡張り。浴槽には常に丁度いい湯加減のお湯が張られ、清潔な状態に保たれている。
石鹸やシャンプーも、魔界の素材に由来したものが何十種類も取り揃えてあり、連れ込み宿も顔負けの充実ぶりだ。
「ほぅら、そこに座れ……❤︎」
「はぃ……」
そう言ってディサディア様が選び取った石鹸は、堕落の果実の油脂から作られ、ハニービーの蜂蜜が練りこまれた逸品。彼女はそれを丹念に泡立て、その泡で肢体を覆っていく。
朝食として魔界の食材を摂るだけでは飽き足らず、身体の外側からもその効能を受けようという、貪欲で贅沢な選択。もちろん、彼女だけでなく、僕自身も……身体の内外から媚薬漬けにされてしまうのだ。期待に胸が高鳴り、身体が疼きだす。
「くふふ…………❤︎」
甘い芳香と白い泡を身に纏ったディサディア様。背後から、抱きすくめられてしまう。絡みつくように回される腕、翼。甘い抱擁は、獲物を逃さぬ構えに他ならない。
そして、背中に押し当てられるのは、決して抗うことのできない魅惑の感触だった。
「まずは背中から……んっ………❤︎」
「ぁぅ……ひぁ……ぁ……」
スポンジ代わりに擦り付けられる、ディサディア様の豊乳。隙間無く密着する柔らかさ、吸い付くような肌触り、それが、滑らかに往復していく。むにゅむにゅで、にゅるにゅるで、堪えがたく心地良い。そして、膨れ立ったその先端は、つつっ……と背筋を責め立ててきて。ぞわぞわと甘いざわめきに、思わず声が漏れる。朝食の効果が既に現れ始めていて、身体は火照り、敏感さを増していた。
「んふふ……そうだ、力を抜け……❤︎」
「はぁぁ……ぁぅ……」
胸板からお尻までを洗ってくれる指先は、まさぐるようないやらしい手つき。しかし同時に、まるで赤子の肌に対するような、優しい手つきでもあった。甘美な愛撫が、僕の力を奪い去っていく。鏡越しに見守られながら、僕は情けなく脱力し、ディサディア様に身体を預けずにはいられなかった。
「私の身体、とくと味わうがよい……❤︎それ、次は右腕だぞ……❤︎」
「ぁ、ぁ……おっぱい……きもちいぃ……」
ディサディア様は僕を優しく抱きとめ、柔らかな床に寝かせてくれて。僕の右腕を取り……その胸の谷間へと挟み込んでくれる。そしてそのまま腕ごと抱きかかえるようにして、指先から根本までを、泡まみれのおっぱいで扱き上げてくれる。長いストロークが繰り返されるたび、ディサディア様の底無しの母性が刷り込まれていくかのよう。
「くふふ……次は左腕……❤︎」
「ぁぅ……だめになっちゃぅ……」
「よいぞ……だめになってしまえ……❤︎」
左腕も同様に、むにゅりと谷間に抱き込まれ、根元から指先まで。緩急をつけて、愛で尽くすように。魔性の乳圧に、なけなしの理性は搾り取られていってしまう。堕落を促す声に、抗いようなどなかった。
「んふふ……右脚は、こうしてくれよう……❤︎」
両腕を洗い終えたディサディア様は、翼を広げてふわりと浮かび上がる。そして、僕の右脚を抱え上げると、むちむちの太ももで挟み込んでくれて。翼をはためかせ、脚を絡めたまま、上へ、下へ。その魅惑の太ももで、僕の脚を扱き上げてくれる。
それはさながら、僕の脚を肉棒に見立てた素股のよう。しかし、肉棒よりも大きなモノを挟んでもらっている分、その退廃的な肉付きがもたらす、抱擁にも似た至福の圧力を、余すことなく堪能することができて、腰砕けになってしまうほどに心地良い。
「んっ……ぁん……くふふ……この脚も、私のものだ……❤︎」
石鹸の滑りに混じる、絡みつくようなぬめり。擦りつけられる淫唇から、溢れ出る愛の蜜。それを気にも留めず、ディサディア様は腰を動かす。身体を洗ってもらいながらも、所有物である印をつけられてしまっているのだ。それもまた、愛されている実感をもたらしてくれる。
「……んふふ……もうじき食べ頃だな……❤︎最高の瞬間を約束してやろう……❤︎」
「ぁ、ぁぁっ……」
僕の左脚を泡で弄びながら、ディサディア様は、僕のモノへと目を落とす。ねっとりと絡みつく、熱い視線。契約紋を通じて伝わる欲望が、僕のモノを更に昂らせる。
人を堕落させるためにある、悪魔の肢体。それを丹念に味わわされてしまえば、たとえ直接触れられずとも、暴発寸前だった。
今すぐ食べられてしまいたい。けれどもそれ以上に、もっと、もっと、気持ちよくなる準備をしてもらいたい。そして、ディサディア様に美味しく食べてもらいたい。その果てにある至福の時を、ただただ期待せずにはいられなかった。
「あぁ……そんなに物欲しげなカオをして……❤︎ほんとうに愛い奴め……もうすぐ、もうすぐだからなぁ……❤︎」
「ひぅ、ぁ……ぁはぁ……」
洗い残した場所は、もはや股の間だけ。両脚を蛙のように開かされ、あられもなく肉棒を晒け出す格好にされてしまっていた。
そんな情けない姿を晒してもなお、ディサディア様は慈愛に爛れた眼差しで、僕を見下ろしてくれる。
未だに僕を絶頂へと導いてくれないのは、ただただ、僕を気持ちよくしようと世話を焼いて、入念に準備をしてくれているだけに他ならない。焦らしと呼ぶには、あまりにも甲斐甲斐しく、愛おしく。しかし焦らされた時のように、性感は高められてしまっていた。
「んふ……んふふ……こんなに、たぁっぷり精を溜め込んで……いい子だ……❤︎」
「はぁ、ぁ、ぁ…………」
そして、泡をたっぷりと纏った両手が、僕の股間へと伸びてきて……まずは、玉袋を優しく包み込んでくれる。
何種類もの魔界の食材を一緒に摂った、その造精作用は凄まじく……果てずとも、今にも精がどろりと溢れ出てしまいそうな程。そんな僕の玉袋を揉み解して、可愛がるように洗ってくれるのだ。ぱんぱんに膨れた表面を撫で回されるのは、法悦を極めた心地良さで……全身の力を根こそぎ抜かれて、もはや完全にされるがまま。
「さ……仕上げにしてやろう……❤︎」
「ぁ……ぁぁ……でぃさでぃあ、さまぁ……」
すべすべの掌が、僕のモノを包み込む。慈しむように丁寧に、汚れを拭ってくれる。そして、泡に混じった媚薬を、じっくりねっとりと擦り込んでくれる。
つのりつのった快楽で、もはや僕のモノは触れただけで果ててしまいそう。まさに絶頂寸前。だというのに、僕の全てを知り尽くしたその指先は、僕を果てさせる事なく、快楽の先へ先へと、甘く優しく導いてくれるのだ。本来ならば果ててしまうはずなのに、我慢をしているわけでもないのに、気持ち良さだけがじくじくと蓄積して、際限なく性感を高められてしまう。それは、寸止めと呼ぶにはあまりに甘美な状態。絶頂の瞬間で留められてしまうような、ディサディア様の妙技だった。
「ほぅら……隅々まで洗ってやるぞ……❤︎」
「ぁひ、ぁぁ……」
胸にこみ上げるのは、この先に約束された絶頂への、純粋な期待。ディサディア様は、僕に切ない想いなどさせてくれない。僕をどこまでも気持ちよくして、どこまでも幸せにしてくれる。身にも心にも魂にも刻み込まれた、絶対的な信頼。そこに切なさはなく、むしろ安堵さえ感じさせてくれる。これもまた、溺愛と過保護の一つの形なのだ。
僕は、さながらご馳走が運ばれてくるのを待つ子供のように、絶頂の時を、ディサディア様に食べてもらえる時を心待ちにしていた。
「んふふ……さて、泡を流して……よしよし……綺麗になったな……❤︎」
丹念な洗浄を終えると、優しく抱き起こして、そっとぬるま湯をかけて、身体中の泡を洗い流してくれる。
カリ首から裏筋の隙間まで、ぴかぴかになるまで磨かれてしまった僕のモノを、ディサディア様はうっとりと眺めてくれる。そして彼女もまた、その身に纏った泡を脱ぎ落とし、一糸纏わぬ裸体を晒け出してくれる。
「あぁ……すっかり出来上がって……❤︎実に美味しそうだなぁ、お前は……❤︎」
「ぁぅ……」
そして、僕の身体はもはや、完全に"出来上がって"しまっていた。くったりと弛緩しきった身体は、全くの無防備状態。朝食の効能は身体中に回りきっていて、全身が火照り蕩けてしまいそうな程。特製石鹸の効果もあいまって、身体の内側からも外側からも媚薬漬け。理不尽なまでに高められた精力は、今にも精を漏らしてしまいそうな程。そして今や、僕はディサディア様の手によって、絶頂の境界線上に導かれてしまっていて……もはや、感度は比類なきまでに高められてしまっていた。こうなってしまえば最後、僕に許されているのは、ディサディア様の与えてくれる快楽に溺れることだけ。全てがディサディア様の手の内で……めくるめく服従は、目眩がするほどに甘美。
美味しそう、と褒められてしまえば、それだけで僕は、さらなる恍惚へと誘われてしまう。ディサディア様に美味しく食べてもらうこともまた、僕の望みなのだから。
「くふ、んふふふ……❤︎ほぅら……お前のだぁいすきなおっぱいだぞ……❤︎よしよし、おっぱいで食べてほしいのだな……甘えん坊め……❤︎」
ディサディア様は、両手でその魅惑の果実を弄びながら、僕のモノへと近づけてくる。水の滴る洗いたての青肌はいつにも増して艶やかで、情欲でほんのりと朱に染まっていた。
とろけの野菜によって増幅された、堕落の果実の効能。それは、肌からの精吸収の劇的な促進。身体の内外からその効能を得た、今のディサディア様の肌は、僕の精を一滴たりとも無駄にせず、味わい尽くしてくれるだろう。今のディサディア様の胸は母性の象徴であるだけでなく……僕を貪り尽くしてくれるもう一つの性器であると言っても過言ではなかった。
ディサディア様のおっぱいに食べられてしまいたい。精を捧げて、ディサディア様の糧にしてもらいたい。そんな僕の欲望を、彼女は当然のように見透かしてくれる。期待は、最高潮まで高まっていた。
「さぁ……食べてやろうではないか……❤︎」
「ぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁ────……」
そしてついに……ディサディア様は、そのたわわに実った欲望の果実を、一息に僕の腰へと降ろしてきて。まるで、僕のモノを一口で頬張るかのような、大胆な挿入。人並みより小さな僕のモノは、根元から先端まで丸ごと、瞬く間に至福の柔肉に包まれて、埋もれてしまって。挿入の最中に味わわされてしまったのは、洗いたての豊乳の、生の肌触り。しっとりと吸い付いて離れず、優しく迎え入れてくれる。甘美ながらも執念深い乳圧が、谷間に僕のモノを捕まえて離さない。
それはまさに、ディサディア様のおっぱいにぱっくりと食べられてしまったかのよう。
至福の感触に……僕はついに、果ての果てへと導かれてしまった。溜まりに溜まった快楽が、堰を切ったように溢れ出す。
「くふぅぅっ…………❤︎」
「はぁぁぁ…………」
全身が弛緩しきった中、肉棒だけが、まるで心臓のように脈動して、止まらない。どぷんっ……どぷんっ……と、穏やかなリズムながらも、その射精感はおびただしく、底抜けに甘美。身体が快楽に屈服して、精を捧げる事だけに、気持ちよくなる事だけに専念させられてしまう。
「ほぅら、おっぱいに、たぁっぷり出せ……❤︎一滴残らず精を捧げるのだ……❤︎」
吐精の脈動に合わせ、たぷんっ、たぷんっ、と寄せ上げられる魅惑の果実。むにぃ……と高まる乳圧が甲斐甲斐しく射精を促してくれて、まさに至れり尽くせりの心地良さ。そして、谷間に僕のモノを捕らえたまま、その母性の象徴を、むにゅむにゅと擦り合わせてくれる。
ディサディア様のおっぱいに、ぎゅっとされて、なでなでされて。その胸に詰まった母性をたっぷりと味わわされながら、とびきり甘い声で乳内射精を命じられて。ディサディア様はその契約の効力を、支配を以って、さらなる絶頂の深みへと僕を導いてくれる。
「よしよし……❤︎んふふ……くふふ、んぅっ……❤︎はぁん……まるでゼリーのようだ……実に美味だぞぉ……❤︎あぁっ……おっぱいがとろけてしまいそうだ……❤︎」
「ぁぅぅ…………」
そしてディサディア様はその胸の狭間で、しっかりと僕の精を受け止めてくれて。その上で僕の精を味わい、喜悦に満ちた姿を魅せてくれる。吐精の脈動のたびに、ディサディア様もまた、身体を震わせて。背を反らすように目一杯に広げた翼は、絶え間ない絶頂の証。しかし、快楽の奔流の中にあっても、支配者としての、保護者としての振る舞いは揺るがない。しっかりと僕のモノを愛で尽くしながら、恍惚の嬌声を以って、淫靡に僕の射精を労い、褒めてくれるのだ。
そこにあるのは、ただ胸で果てる快楽だけでなく、膣内射精に匹敵する手応え。ディサディア様と交わっているのだという実感、そして性交の悦びだった。
「んふふ……そうだ……その調子だ……❤︎ほぅら……どぷんっ……どぷんっ……❤︎思う存分、お漏らししてしまえ……❤︎」
絶頂でありながらも、登りつめるのではなく、深みへと堕ちていく快楽。
身も心も緩みきって甘えきった、至福の吐精。母性に包まれるがままに果て続け、精を漏らし続け、ただひたすらに堕ちていく。どれだけ精を放とうとも、その勢いは衰えず、永遠さえ想起させてくれる。永遠を求めてしまう程に、心地良い。
「くふ、んふふっ……❤︎あぁっ……まるで赤子だな……愛い奴め……❤︎ほぅら……もっと、もっと、可愛くなってしまえ……❤︎」
「ぁぁぁ…………」
だらしなく、情けなく快楽に溺れ、一際ダメになってしまった僕を、ディサディア様は優しく肯定してくれる。惜しみなく注がれる、無償で有償の愛情。欲望に裏打ちされた母性が、僕を安らぎに浸してくれる。
「はぁん……っ……あぁっ……おっぱいから溢れてきてしまったなぁ……❤︎こんなに、たぁっぷり……❤︎
んふ、ふふふ……❤︎もっとだ……❤︎もーっと気持ちよくなってしまえ……❤︎この私が見ていてやろう……❤︎」
とめどない吐精。肉棒を呑み込んだ谷間から、白濁が湧き出すように溢れ出ていく。愛しい人の、愛しい場所を穢す背徳。それを受けたディサディア様の眼差しは、より一層の悦びと慈愛に満ちていて。底無しの母性に包まれた背徳感は僕を決して苛まず、ディサディア様の情愛を、より深く感じさせてくれる。
「ほぅら……お前の精は、一滴たりとも無駄にはせぬ……❤︎全身で味わってやろう……❤︎」
ディサディア様は、溢れた白濁を尻尾ですくい取り、これ見よがしに、その肢体へと精を塗り込み、擦り込み、馴染ませていく。その青く瑞々しい肌を、黒く艶やかな翼を自ら汚し、恍惚に蕩けていく。僕の精を、一滴残らず味わい尽くしてくれる。
その身を白濁に染めながらも微笑む姿は、あまりにも淫靡で……そこあるのは、比類ない肯定感。
「くふ、んふふっ……もはや声も出ぬか……❤︎うん、うん……❤︎そうだ……そのカオだ……❤︎
お前はただ、きもちよくなって、しあわせになっていればよいのだぞ……❤︎ほぅら……どぷんっ……どぷんっ……❤︎」
己がモノをおっぱいに抱かれ、包まれ、愛で尽くされて。惜しみなく注がれる甘い母性が骨の髄まで染み込んで、僕を支配してくれる。
愛しい人に求められるがまま、命じられるがまま、赦されるがまま。それは、僕の欲望のままでもあった。
果て続けてしまうほどに昂りながらも、うたた寝してしまいそうな程に安らかな心地。そして、身も心もとろとろに蕩けてしまう、甘い快楽。僕は、赤子よりも無防備で無力な存在へと堕とされてしまっていた。そして、ディサディア様は、そんな僕を愛でて、愛でて、愛で尽くしてくれて……僕はただただ、幸福を享受するのだった。
「くふぅ……んぅっ……❤︎よしよし……たぁっぷり出したなぁ……❤︎あぁっ……おっぱいが孕んでしまいそうだ……❤︎」
「ぁぅ…………」
「くふふ……よぉく頑張ったな……褒めてやろう……❤︎」
長い、長い射精がついに終わりを迎える。最後の一滴までもを逃さぬように、貪欲な抱擁。愛しのおっぱいに甘く優しく搾り出されて、果ての果てまで、母性たっぷりの快楽漬け。最後の一滴を搾り取ってもなお、ディサディア様は愛おしげに僕のモノを抱き込んで、離してくれないまま。赤子を抱くように、優しく、丁寧に、慈しむように。聖母のような乳圧の中で味わう射精の余韻は、一際、恍惚と充足に満ちていた。
「れろぉ……ちゅぷっ……はぁん……やはり、格別だな……❤︎」
そして、ディサディア様は、全身に浴びた精を一滴たりとも無駄にしないように、巧みに尻尾を蠢かせ続けていた。こぼれてしまわないように、大切に精をすくいとって、口元へ。白く覆われた尻尾を、これ見よがしに咥え込み、ざくろのように紅くぬらついた舌先を這わせて、どんなものよりも美味しそうに、こくりと飲み干していく。
また、粘ついた音を立てながら翼同士を擦り合わせれば、その狭間にあった精液は、まるで吸い込まれるように消えていき、そこには艶を増した黒の皮膜が。
青い肌にもまた、僕の精が擦り込まれては馴染んでいく。
やがて、僕の捧げた膨大な量の精液は、ディサディア様の全身を以って美味しく平らげられていって……彼女は幾度となく、甘く満足気な吐息を漏らしてくれるのだった。
「んふ……お前のモノも……ほぅら、おっぱいでキレイにしてやろう……❤︎好きだろう……?」
「ぁ、ぁ……すきぃ……」
「んふふ、好きか……❤︎そうかそうか……❤︎もーっと、もーっと、好きになったかぁ……?」
「はぃぃ……すき……」
「くふ、くふふふ……愛い奴めぇ……❤︎」
仕上げは、堕落の果実の効能を活かしたお掃除パイズリ。精液で汚れた僕のモノをその胸で拭い取るように、甲斐甲斐しげに弄んでくれる。大量射精直後の肉棒を労わるような、ゆったりとした快楽。最後の後始末まで、徹底的に母性で包みこまれて、世話を焼かれて、まさに至福。毎日のようにこうやって愛でてもらっているのに、決して飽きる事はなかった。
「ほぅら……キレイになった……❤︎」
「ぁ……」
仕上げを終え、名残惜しくも僕のモノは解放される。僕のモノを汚していたはずの精液は全部、ディサディア様のおっぱいに吸いこまれてしまっていた。
その光景を目の当たりにして、ディサディアのおっぱいに精を注いでいたのだと、おっぱいに食べられて、おっぱいに直接糧を捧げていたのだと、改めて実感させられてしまう。
「くふふ……❤︎たっぷり堪能したことだ、そろそろ身を清め直すか……
少々名残惜しいが……このままではお前を抱いてやれぬし、な……❤︎」
そしてディサディア様は、 その身に再び白い泡を纏い、白濁を洗い流していく。名残惜しげでありながらも、次なる愉悦へと心を躍らせる、そんな表情。全身で精を味わってなお、ディサディア様は求める事をやめない。
契約紋が僕のモノに伝えてくれるのは、ディサディア様の子宮の、狂おしいまでの疼きの丈。あれだけの精を捧げてなお、ディサディア様にとっては前菜のようなものだった。ひとたび火がついてしまえば……その子宮を精で満たすまで、決して満足しないのだ。
「これでよし、と……」
穢れを綺麗さっぱりと洗い流したその下には、水を弾く玉の肌。糧を得たその青肌は、精を啜ったその果実は、いつもより艶かしく。まるで熟すように朱が差して。捧げた欲望を糧にして、より美しく、より魅力的に、より淫らに。その肢体は瑞々しく、溢れんばかりの生気に満ちていた。
その姿もまた、僕にとっては褒賞に等しく……奉仕の悦びと達成感をもたらしてくれる。
「んふふ……くったりとして……仕方のない奴め……❤︎」
「ぁう……」
ディサディア様は、すっかり快楽に屈服してしまった僕を、すっと抱き上げて、湯船へと連れて行ってくれる。まるで赤子にそうするかのように、優しく、柔らかく……無力な僕を慈しんでくれる。
「どれ……熱くはないな……?」
「はぃ…………ぴったりです……」
は
そして、ディサディア様に手を取られるがまま、ゆっくりと、湯船に指先を浸す。そこには、ゆったりと浸かっていられそうな、心地良い温度のぬるま湯が張られていた。
「ならば良い……んっ……❤︎」
「はぁぁ……」
抱かれるがまま二人一緒に、湯船へと身体を沈めていく。ぬるま湯が、さらなる弛緩を促す。
特注のバスタブはとても広く、ディサディア様が翼を広げてゆったりとくつろぐ事が出来る程。もはや、浴槽というよりは小さなプールで、至れり尽くせり。
「くふぅ……❤︎お前の精をたぁっぷりと啜ったこの肌の……艶、張り、肌触り……とくと確かめてみるがよい……❤︎」
悠然と湯船に浸かりながら、ディサディア様は両腕を広げ、僕を迎え入れてくれる。
そして、その両腕の間では…青い果実が、たわわなおっぱいが、湯船に浮かんでいた。
「ぁ……はぃ……」
大きなおっぱいは、水に浮く。ディサディア様とお風呂に入るたびに僕は、その事実を目の当たりにしてきた。しかしそれでも、その光景は僕を完膚なきまでに魅了してくれる。
重力に決して負ける事のないその膨らみが、湯船の中でその重さから解き放たれている。そこには、重力に逆らういつものおっぱいとはまた違う趣があった。
湯船の中のおっぱいは、いつにも増して前へ張り出した、美しい釣鐘型を魅せてくれて。
おっぱいそのものが自ら湯船に浮かんで、ひとりでに自己主張しているのだから、堪らない。持ち上げられて強調されるのとは似て非なる、魅惑の光景。
「………」
「くふふ……❤︎おっぱいばかり見ろと言った覚えはないのだがなぁ……❤︎
まったく、乳離れが出来ぬ奴め……んふふ、実に愛い……❤︎」
しかも、ぷっくりと膨れ勃ったその先端が位置するのは、水面の境界。水面が波立つたびに、水面に潜っては、浮き上がってはの繰り返し。ちらちらと顔を見せるその突起が、あまりにも悩ましい。その姿を見せつけながらも、見え隠れするように誘われてしまえば、もはや視線は釘付け。水面に顔を近づけ、食い入るように見つめざるを得なかった。
「はぃ……おっぱい離れできません……したくないですぅ……」
「んっ……❤︎ふぅっ……❤︎もちろん、そうでなくてはな……❤︎それでこそ私のモノだ……❤︎」
愛しいおっぱいを何度も、何度も、指先でつつきまわす。つつきまわさずにはいられなかった。
触れるたびに、病みつきになる弾力が指を押し返す。乳肉がぷるんと揺れて、たわんで、元の形に戻っていく。瑞々しいその光景が、目を奪う。甘い嬌声が、僕を誘う。
乳離れが出来ない。情けなくも甘美な響きを肯定せずにはいられない。僕はもう、自分を止める事が出来なかった。夢中で、ディサディア様のおっぱいに手を伸ばしていた。
「はぁ……ディサディアさまの……おっぱい……あぁっ……」
たぷんと実った母性と魔性、その両方に魅入られてしまって。もはや、指が勝手に動いてしまう。そして、おっぱいをつついて揺らすその度に、下半身に狂おしい熱が滾っていく。それは僕自身の昂りであり、契約を通して伝わる、ディサディア様の疼きの丈でもあった。
このままでは、ただ興奮だけでも果てて、湯船の中に精を漏らしてしまいそう。僕の精は、一滴残らずディサディア様のモノなのに。無駄撃ちなどダメなのに。もっと、もっと気持ちよく果てたいのに。そう分かっていても、僕は目の前のおっぱいに夢中になってしまう。
「んふふ……❤︎無駄撃ちは許さぬぞ……❤︎」
「ぁっ……ぁ、ぁぁぁ……」
そんな、情けない僕を導くように、ディサディア様の尻尾が僕の腰へと絡みつく。尻尾に促されるがまま、腰を突き出せば……そこには、僕の求めていた快楽が待っていた。
全身に精を浴び、飢えに飢えていた、ディサディア様の蜜壺が、僕のモノを待ち構えていたのだ。
「くふふ……❤︎」
「ぁ、ぁぅぅ……」
すっかりと出来上がってしまったそのナカは、恐ろしく貪欲だった。
先端が入り口に触れたその瞬間、甘い吸い付き。甘美な歓迎の快楽に、堪らず腰が勝手に進んでいく。
肉壺の中で待ち受けていたのは、肉棒を味わい尽くそうとしながらも奥へ奥へと引き込んでいく、大きなうねり。食べられてしまう、どころではなく、心地良さの中に呑み込まれてしまうかのよう。
「ほぅら……まさに極楽だろう……❤︎思う存分、果ててしまえ……❤︎」
「はぁぁぁ……」
そして僕のモノは、あっという間にディサディア様の最奥へと導かれてしまう。
そこで待ち受けていたのは、ぬるま湯に浸かるような、ゆったりとした心地良さ。それはまさに、極楽とも言うべき至福の悦楽。己の意思では決して抜け出す事の出来ない、果てしない深みに囚われ……僕は、ついに果ててしまう。
「くふぅぅぅっ……❤︎よしよし、いい子だ……❤︎ぜぇんぶ、私に委ねるのだぞ……❤︎」
「ぁ、ぁはぁぁ……」
癒すような快楽に、漏れ出るような大量射精。甘くとろける放出感に、身も心も委ねずにはいられない。
そしてディサディア様は、腰砕けで骨抜きになった僕を、その胸に迎え入れ、優しく抱きしめてくれる。
僕の頭を受け止めてくれるのは、湯船にたぷんと浮かぶ愛しのおっぱい。僕の精をたっぷりと啜ったばかりのその場所は、いつにも増して艶やかに水を弾き、しっとりと吸い付くような肌触りを返してくれる。そこに、精液の残り香などは欠片もない。むしろ、身を洗い流した後にも関わらず、その谷間には、恍惚をもたらす色香が立ち込めていた。 精を捧げれば捧げるほど、美しく、淫らに実っていく魅惑の果実。愛しい人への献身が実を結ぶその様を、直に確かめる事が出来るのだから、堪らなかった。
「んっ……❤︎くふぅ……❤︎どれ……今日もじっくり、ゆったり、暖まるとしようではないか……❤︎身体の芯まで、な……❤︎」
「ぁは……ぁぅぅ……はぃ……でぃさでぃぁさまぁ……」
ぬるま湯に浸かり軽くなった身体。それを絡め取り、支えてくれるのは、至高の女体だった。自重からさえも解放され、身も心も緩みきって。脱力と弛緩の果てで、ただただ心地良さに全てを委ね、愛しい人へと精を捧げる。それもまた、このままずっと、永遠に浸っていたいとさえ思ってしまう程に甘美。そんな、幸せなひと時が過ぎていく。
「ふむ……」
魔界様式の調度品が備えられた執務室。魔法によって宙に並ぶ、数多の書類。その内容は、各地の教団国家に潜入させている部下からの定期報告や、水面下での活動を記した計画など。ディサディア様はソファに悠然と腰掛け、足を組みながら、それらを眺め、時折、指先を宙に走らせ、魔術によって返答や修正を書き込んでいく。その働きぶりは鮮やかで、僕のような凡人では束になっても敵わない速度で書類を片付けていく。
「はぁ……」
そして僕もまた、そんなディサディア様を眺め、その凛々しさに、麗しさに恍惚のため息を漏らしていた。
深い智慧と、邪悪なる慈愛を感じさせるその横顔。人間の支配、実質的には保護を目論む、過激派の筆頭としての姿もまた、僕にとっては愛おしく、魅力的だった。
「まったく、お前も飽きぬ奴だな……❤︎」
「どれだけ見ても、素敵なものは素敵……ですから……」
より多くの人々を幸福に導くべく、魔物を束ね、策謀を巡らせる。そんなディサディア様の素晴らしい行いが、僕に心からの敬愛を、憧憬を、恭順を抱かせてくれる。心酔させてくれる。
そして、ただディサディア様を愛おしく思うだけでなく、敬愛し、心酔しているからこそ……ディサディア様から注がれる愛情によって、破滅的なまでの悦びを感じる事ができる。過激派の筆頭としての振舞いもまた、僕を魅了し、堕落させてくれる。
「くふふ……それは悪くないが……お前の居場所は、私の傍なのだぞ……❤︎」
「はぁい……」
勿論、仕事の最中であったとしても、僕の居るべき場所はディサディア様の御傍だ。命じられるがまま、望まれるがまま、ディサディア様に寄り添い、しな垂れかかる。ほんの些細な命令で、僕の心は悦びで満たされる。ディサディア様に服従する事が、ディサディア様のために何か出来るという事が、嬉しくて仕方がない。そして、心身に刻み込まれた従属の快楽が、情欲を呼び起こす。命令の果てに待っているものを、どうしようもなく期待してしまう。
「ん……よい子だ……」
そのまま、ディサディア様は、当たり前のように、我が物顔で、その片翼で僕の肩を抱き寄せてくれる。僕を"所有物"として扱うその所作は、強引ながらも、壊れ物を扱うかのように繊細。愛しい人に、これ以上なく大切にしてもらえている……そう、実感させられてくれるからこそ、服従心が止まらない。
「んふふ……さぁ、頭を差し出せ……たぁっぷりと可愛がってやろう……」
「はぃ……いっぱい可愛がってください……」
ディサディア様が身にまとっているのは、僕の好みを元にデザインされた、特注の悪魔装束。お腹と下乳を惜しみなくなく露出させた上半身に、極小面積のボンデージと網タイツを組み合わせた下半身。
仰向けにおっぱいを見上げても、腰にぎゅっと抱きついても、むちむちの太ももに頬ずりしても、極上の体験が約束される、僕のお気に入りの衣装。
そして、ディサディア様は足組みを解いて、ぽんぽん、とその膝を叩いてみせる。
抗うことのできない、膝枕の合図。命じられるがまま、ソファに身体を横たえ、頭を差し出す。
「んふ……よしよし……❤︎」
「はぅぅ……」
甘い色香の漂う、むちむちの太もも。それは、間違いなく極上の枕だった。
そして、頭をさわさわと撫でてくれる、ディサディア様の指先。慈しむような手つきの、あまりの心地良さにため息が漏れてしまう。何度もなんども撫でられてしまえば、あっという間に、頭の中はとろとろに。しかし、ただ心地良いだけでなく、まるで、心までもを撫でられているような悦楽も孕んでいた。
緩みきったため息が、自然と漏れてしまう。あっという間に、耽溺してしまう。
執務の邪魔になっていないか、いう考えなど、もはや浮かぶはずもなかった。
ディサディア様に愛でてもらうこと、可愛がってもらうこと。瞬く間に、僕の頭の中は、それでいっぱいになってしまっていた。
「あぁ、こうでなくてはな……やはりお前は、こうしているのがお似合いだ……❤︎」
「はぁぁ……ぁっ……ひざまくら……すき……」
アラクネの糸で織られた網タイツの、網目は粗く、サイズはタイト。むちむちの太ももに網目が食い込んで、ぱつんぱつん。滑らかだった肌に、数多の食い込みが起伏を作り出して……ただでさえ圧倒的な肉感が、もはや破滅的なまでに強調されてしまっていた。
張り詰めた網タイツの光沢質な感触もまた、豊満を極めたふとももの柔らかさ、吸い付くような肌触りへのアクセント。
そして、食い込みによって出来た起伏がもたらすのは、むにゅりとした"引っかかり"。それは、柔肉の心地よさをより一層に味わわせてくれて……頭を預けてしまったが最後、あまりにも愛おしい膝枕に、僕は頬ずりを止められない。
「うむ、うむ……たんと甘えてしまえ……❤︎それが、お前の役目でもあるのだからな……❤︎そうだろう……?」
「はぁい……ディサディア様ぁ……」
「くふふ……よい返事だ……」
ディサディア様に心ゆくまで甘え、可愛がってもらい、その寵愛を一身に受け、溢れんばかりの愛情に溺れる。それこそが、他ならぬディサディア様に命じられ、たっぷりと時間をかけて心身ともに教え込まれた、僕だけの役目。
「はぁぁ……だめです……だめ……すきぃ……つかまっちゃいましたぁ……」
「んふふ……よいぞ、もっともっとダメになってしまえ……逃がさぬぞ……❤︎」
ディサディア様曰く、こうして僕を可愛がっていると、非常に仕事が捗るらしい。尤も、ディサディア様は常に僕を肌身離さず可愛がってくれているので、そうでない状態を知らないのだけれど……ディサディア様の言葉を信じない理由はない。それに、部下の方々から聞いた話によれば、僕を手中に収めて以来、ディサディア様の働きぶりは精彩を欠くどころか、むしろその辣腕ぶりは留まることを知らない程だと言う。
つまり、僕はディサディア様の重荷になるどころか、可愛がっていただく事によって彼女の働きに貢献していて……そういった理屈の下で、僕の行いは徹底的に正当化されてしまっていた。堕ちる事を肯定され、求められ……そこに背徳の悦びこそあれど、自己嫌悪に陥る事は決してなかった。
「はぁぁ……ふぅぅ……んぅ……」
「くふふ……なんだ……❤︎」
魅惑の膝枕に頭を預けながら、身体を丸めてごろごろ、すりすり。
僕が甘え媚びるたびに、ディサディア様がその子宮を疼かせているのが、精への渇望をたぎらせているのが契約紋から伝わり、僕のモノをびくりと跳ねさせる。
自分の行いに愛しい人が欲望を膨らませてくれる、その事実が堪らなく悦ばしい。
「ディサディアさまぁ……」
そして僕は期待を胸に、妖しく揺らめく尻尾へと手を伸ばす。手繰り寄せて、抱きついて、脚を絡めて、股の間の硬く隆起したモノを擦り付けながら、甘えた声をあげる。愛しい人の名を呼べば、自然と媚びきった声色。
「んふふ……まったく、おねだりが上手だな……❤︎よいぞ……そろそろ”おやつ”の頃合いだ……❤︎
ほぅら……ちゃんと脚を開け……❤︎堪え性のないカワイイおちんちんを差し出して、準備をしろ……❤︎後はぜぇんぶ、私に委ねて……私を愉しませるのだ……❤︎」
「はぃ……っ」
あまりにもだらしなく、情けないおねだりを、ディサディア様は嬉々として受け入れてくれる。褒めてくれる。そして、愛おしげにその先を命じてくれる。その命令は、あまりにも甘美。支配者たるディサディア様が、望まぬ事を命じるはずはなく、それはこれ以上ない受容、赦しに他ならない。
そして、執務のお供にお茶やお茶菓子をお出しする代わりに、僕はこの身をディサディア様に捧げるのだ。そこには確かに、愛しい人に奉仕する悦びがあった。
「あぁ……こんなにして……❤︎くふふ……実に美味しそうだ……❤︎」
ディサディア様に命じられるがまま、仰向けになってカエルのように脚を開けば、尻尾の先端がするりと服の下に潜り込んできて。ぐい、とズボンを引き下げられて、僕のモノはディサディア様の視線に晒されてしまう。
「んふ……❤︎ほぅら……おっぱいも堪能するがよい……❤︎」
「んっ……むぅ……」
そして、仰向けになって見上げた先、青い果実の下半球が、眼前に迫って来て……たぷん、と視界を塞がれてしまう。
頭を抱き込むように膝枕をされて、おっぱいと太ももの間に挟み込まれてしまったのだ。
顔面を心地よく圧迫する、母性の愛おしい重み。身を清めたばかりのおっぱいの、純粋な色香は、ミルクのような甘さをほんのりと湛えていて、僕をたちまち恍惚へと導いてくれる。心が緩んだ分だけ、下半身に集まる熱は昂りを増していく。あまりにも幸せなサンドイッチ。
「くふふ……どうしようもなく甘えん坊だな、お前のモノは……びくびく震えて、実に愛らしい……❤︎」
「んぅ……ぅぅぅ……」
肉棒に、そっと尻尾が絡みついてくる。滑らかですべすべな皮膜の肌触りと、ぎゅっと身が詰まったような、ぷにぷにとした弾力。
角、翼に並ぶ悪魔の象徴であるその部位が持つのは、背徳感を掻き立てる、妖しい柔らかさだった。
それは、僕のモノを優しく包み込み、愛しい人が邪悪で強大な悪魔である事を直に感じさせてくれる。その感触が、被支配欲を満たしてくれる。そして、被支配感の行き着く先は……底無しに甘美な悦楽と、安堵に他ならなかった。
「さ、撫で撫でしてやろう……❤︎ふふ……堪らないだろう……?」
「ぁぁぅ………」
悪魔の尻尾の、その先端が、敏感な亀頭に覆い被さってくる。しなやかな指先が、僕の頭に添えられる。そして……その両方を、慈しむように優しく撫で回してくれる。
一撫でごとに、肉棒が、腰が、とろけてしまいそうになる。頭の中がふわふわして、ふにゃふにゃで。
太ももとおっぱいに挟まれ、可愛がられて、甘やかされて、底無しの多幸感。身体だけでなく心までもが、どこまでも心地良い。
「よし、よし……❤︎まずは濃いのをご馳走してもらおうか……❤︎んふふ……じっくりと育ててやるぞ……❤︎」
ゆっくり、じっくり、丹念な愛撫。射精衝動を、欲望を、興奮を、大事に大事に育んでくれるかのよう。
とびきり濃い精を吐き出すように、ディサディア様が望む形に、僕のモノが育てられていく。支配的な母性がもたらしてくれる、甘い倒錯。その先には、約束された極上の快楽が待っているのだ。
「ほぅら、尻尾で抱いてやろう……❤︎んふふ……」
肉棒を包み込む、緩やかな尻尾の締め付け。それはまさに、肉棒を優しく抱きしめられているかのよう。甘い抱擁の快楽が、じくじくと肉棒に染み込んでいく。
「こういうのはどうだ……?ぎゅっ……ぎゅっ……❤︎んふ……そうだ、何も考えずともよい……すべて私に任せるのだ……❤︎」
赤子の背を叩くような間隔で、きゅぅ、きゅぅ、と甘い締め付け。本能に訴えかける、心地よいリズム。身も心も、どうしようもなく弛緩していく。緩んだ分だけ、快楽が浸透していく。
「あぁ……こんなに、感じて……❤︎くふふ……おっぱいの下で、さぞかしだらしのないカオをしているのだろうなぁ……❤︎」
ゆっくりと、しかし着実に、狂おしいまでの熱量が育て上げられて、肉棒の根元にどろどろと溜まっていく。
「今すぐ果てたいか……?もっと撫で撫でして欲しいか……?
んふふふ……知っているぞ……❤︎この私の好きなようにシてほしいのだろう……愛い奴め……❤︎」
絶頂が待ち遠しくも、それに至る過程もまた愛おしい。今すぐ果ててしまいたい、けれども、このまま愛撫に浸り続けて、さらに快楽を蓄えてしまいたい。しかし何よりも、ディサディア様の望む形で果ててしまいたい。ディサディア様の望むがままに、精を捧げてしまいたい。そんな僕の望みを、ディサディア様は見透かしてくれる。
「くふふ……どうしてくれようか……❤︎もう少し溜め込んでもらうのも悪くない、が……❤︎」
意地悪くも慈愛に満ちた声とともに、尻尾の先端が、裏筋をつぅっ……となぞっていく。弱点の裏筋の、その中でも一際弱い部分を、甘く、優しく、しかし、好き勝手に。支配者として、愛おしげに僕のモノを弄んでくれる。ぞわぞわと満たされていく、被支配欲求。
ディサディア様がその気になれば、僕はたちまち絶頂へと導かれてしまう。その事実をありありと突きつけられて……それだけで、快楽が爆ぜてしまいそう。
「んふ……今すぐ果ててしまえ……❤︎この私に、精を捧げるのだ……❤︎」
「んっ……っ……ぅぅぅ……」
そしてディサディア様は、ついに、愛おしげに吐精を命じてくれる。
愛玩し、甘やかすような尻尾の蠢きは、ゆったりと、しかし確実に僕の弱点を責め立てて。溜まりに溜まった快楽を、絶頂へと導いてくれる。
ディサディア様の所有物である僕は、その命令に決して抗えない。ただひたすらに甘美で心地良い、極上の快楽の中、甘い命令が快楽を後押しして。僕はたちまち果ててしまい、命じられるがままに、精を漏らしてしまっていた。
「んふ、ふふふ……❤︎心ゆくまで精を漏らしてしまえ……❤︎」
巻きついた尻尾は、射精の脈動を促し、優しく搾り出すように蠕動して。腰回りがどろどろに融けてしまったかのような、まるでおもらしをするかのような、緩みきった甘い射精感。
吐き出した精を逃さないよう、しっかりと尻尾の先端が覆い被さって、精を受け止めてくれる。一滴残らず味わい、糧とするために。
そこにあるのは、愛しい人に精を捧げる悦び。奉仕の悦びが、射精快楽をより素晴らしい物にしてくれる。
「よし、よし……どぷどぷ出して、良い子だ…………❤︎」
「っ……っ、ぅむ……っ」
「んふ……ほぅら、むにゅむにゅ……❤︎勢いが増したぞ、この甘えん坊め……❤︎
そんなにおっぱいが好きか……❤︎本当に愛い奴め……❤︎」
そして、果てる僕を労うように、僕の顔を深く谷間にうずめさせてきて。まるで顔面をパイズリするかのようにおっぱいを寄せて、擦り合わせてきて、むにゅむにゅと揉みくちゃにされてしまう。溢れんばかりの母性を味わわされ、愛でられ、溺れていく悦びもまた、僕を幸福に染め上げてくれるのだった。
「んふふ……❤︎たっぷり出して……よぉく頑張ったな……❤︎」
「ぁ……はぁぁ……」
長い射精を終え、おっぱいからも解放された僕の視界に映るのは、肉棒に巻きついたまま白濁塗れになった、悪魔の尻尾。
「あぁ……こんなに、へばりついてきて……んふふ……まるでゼリーのようだ……❤︎これは期待ができるな……❤︎」
「ぁ……」
肉棒を解放してなお、その尻尾には、僕の放った精が、べっとりと付着していて。
そして、ディサディア様はその尻尾を、口元へと運んでいく。
「あむ……ちゅるっ……れろぉ……んぅぅ……❤︎実に美味だ……❤︎
んふ……❤︎やはり、これがなくては執務はできぬ……❤︎」
「ぁりがとう……ございますぅ……」
膝枕の上の僕を見下ろしながら、尻尾に舌を這わせ、精を舐め取り、啜り取っていく。見せつけるように、淫靡に、そして、他の何を味わっている時よりも美味しそうに、幸せに。
射精の余韻の中、僕はそんなディサディア様を見上げていた。
愛する人が、欲望の塊を受け入れてくれる。愛する人の、糧になる事が出来ている。愛する人の役に立つ事が出来ている。
捧げた精を、美味しそうに味わってくれる事が、褒め称えてくれる事が、どうしようもなく嬉しくて仕方がない。
「んふふ……まだ残っているな……❤︎一滴残らず味わってやるぞ……❤︎」
「ぁっ、ぁぅ……」
「ん……ちゅぷ……んむ……❤︎」
もちろん、ディサディア様が汚れた肉棒をそのままにするわけがなく。尻尾の先端を使って、精液を丁寧に拭い取ってくれる。
射精直後の肉棒を労わるように、最後に一撫で。そして、集めた精を舐め取って……
「はぁ……❤︎喉が蕩け落ちてしまいそうだ……❤︎んふふ……だが、まだまだ欲しいな……❤︎」
「ぁ、ぁっ……」
「お前も……まだまだ可愛がって欲しいのだろう……❤︎」
「はぃ……もっと、シてください……っ……あたまも、おちんちんも、なでなでしてぇ……」
「んふ……❤︎よいぞ、たぁっぷりと撫でてやろう……❤︎そして、私にもっともっと精を捧げるのだ……❤︎」
再び、尻尾が僕のモノを絡め取り、甘く責め立ててくる。
たった一度の射精で、ディサディア様の欲が満たされるわけもなく……こうなるのは、当然の帰結だった。契約紋から伝わる欲望は膨れ上がっていき……僕のモノも、それに応えていく。
欲望のままに甘え、快楽をねだりながらも、愛しい人の役に立つ事ができる。母性に溺れながらも、奉仕に陶酔し、身を捧げる事ができる。
甘やかされ、愛で尽くされる悦びと、奉仕し、貪り尽くされる悦び。本来ならば相反するその悦びを、ディサディア様の支配は同時に与えてくれるのだった。
「ふふ……これで今日の執務は終いだな……❤︎」
「ぁ……おつかれさま、でしたぁぁ……」
「うむ……お前もご苦労……❤︎今日も実に愛らしく、実に美味だったぞ……❤︎これでこそ執務も捗るというものだ……❤︎」
「ぇへ……おやくにたてて……うれしいです……」
今日もまたディサディア様は、僕を愛で尽くしながらも、過激派としての執務をこなし終えていた。あまりにも手際良く、非の打ち所がない仕事ぶり。そしてディサディア様は、それが僕のおかげでもあると言ってくれる。
一人の女性としてのディサディア様に愛してもらうだけでなく……過激派の筆頭としてのディサディア様の役に立つ事ができている。それが、どうしようもなく嬉しく、喜ばしい。
たとえ、欲望のままに甘え、数え切れないほどの射精を経て精を捧げ、快楽にゆるんで蕩けきった、情けない姿を晒しても……ディサディア様の役に立てるのであれば、むしろ誇らしくさえ思えてしまう。
「んふふ……まったく、いじらしい奴め……❤︎そんなに嬉しいか……?」
「はぃぃ……」
そんな僕の心境を見透かしたように、ディサディア様は妖しく微笑む。
ディサディア様はライフワークとしてだけでなく、僕を愛する一環として、過激派の活動を続けてくれているのだろう。
「ならば、執務も終わった事だ……ベッドの上で労ってもらおうか……❤︎」
「ぁっ……」
膝枕から一転、抱き上げられて、お姫様抱っこの姿勢。ディサディア様の顔は、目の前に。欲望にぎらついた瞳と、優しくも意地悪げな微笑み。愛でられ続けて蕩けきった頭の中が、ぞくぞくとした感覚にかき乱される。
「分かるだろう……?この私の疼きが……❤︎やはり、仕事の後は格別に……お前が欲しくなる❤︎」
「っ……ぁぅ……はぃ……っ」
執務の最中、その喉で精を飲み干すたび、ディサディア様の子宮は満足するどころか疼いて、飢えて、欲望を蓄えて。それはつまり、さっきまで行なっていたのは、執務と言う名の長い前戯に他ならないという事で。そして、執務明けの解放感が、尚更に欲望を掻き立てるらしく。つのりつのった欲望が、疼きが、契約紋を通して伝わってきて……僕のモノを狂おしいまでに昂ぶらせる。
さっきまでたっぷりと尻尾で可愛がって貰っていたにも関わらず、張り詰めて、今すぐ食べて欲しくて仕方がなく、自然と声が上ずってしまう。
「あぁ……分かるぞ……お前も私が欲しいのだろう……❤︎んふふ……少しの辛抱だ……たっぷりと愛してやるぞ……❤︎」
「はぃ……たべて、くださぃっ……」
こうなってしまったディサディア様は、子宮に精を捧げる事でしか満足してくれないのだ。そして僕もまた、ディサディア様の子宮に精を放つ事でしか、この昂りを鎮められない。何につけても最後に待っているのは、約束されているのは、ディサディア様との甘い交わり。それが、ディサディア様との契約。
身も心も、全てを愛しい人に捧げて、委ねて、甘やかされて、貪り尽くされて。今日も僕は、支配されるという特権を享受し、終わりなき幸福に溺れていくのだった。
「さ……夕飯は何が食べたい?」
「うーん……ディサディア様が作ってくれるなら、なんでも」
「ふふ……まったくお前は、いつもそうだな」
「だって……どれも美味しいのに……簡単に決められません。それに……ディサディア様に、決めて欲しいです」
「んふふ……仕方のない奴め……」
紅い月が辺りを照らす、夜の魔界の商店街。
ディサディア様に抱き寄せられ、身を委ねながらの買い出しデート。
優しく腰を抱かれ、絡みつくように尻尾を巻き付けられて、翼で包み込まれて。甘い色香と優しいぬくもりに、もはや僕は骨抜きだった。抱き寄せられる、ただそれだけの事が……一人で立てなくなってしまうほどに、心地良く、幸せで。
すっかりダメになってしまった僕を、ディサディア様は嬉々として受け止めて……絶え間ない堕落に浸してくれる。僕の居場所は、常にディサディア様のお傍だ。
「……おや、魔界鮭ではないか。この時期に珍しい。ふふ……好きだろう?」
「あ、いいですねっ……確か季節外れの鮭はたっぷり脂が乗って……ムニエルもいいけど、やっぱり塩焼きが食べたいです……ジパング風がいいなぁ」
「んふふ……腕によりをかけて作ってやろう。楽しみにしておくのだな……」
「はぃっ……」
ディサディア様が指差したのは、魔界魚の一種、魔界鮭だった。魔界動物の例に漏れず、見た目こそ厳ついものの、一度味を知ってしまえば、やはり美味しそうに目に映るモノで。なんでも良いとは言ったが、実際に食材を目にすると、それが食べたくなってしまうのが人の性だった。ディサディア様の作ってくれる魔界鮭の塩焼きは、表面は香ばしくも身はふっくらと容易くほぐれて、思い出すだけでもよだれが出てしまいそうな絶品なのだから。それが季節外れに食べられるのであれば、逃す手はない。
おっぱいに頭を預けて甘えながら、晩御飯のリクエスト。ディサディア様は、最初からそのつもりだったように笑ってくれて。僕もつい、口元が緩んでしまう。
ディサディア様がたっぷりと甘やかしてくれるおかげで、僕は食べたいモノを食べたいと言えるようになって……すっかりとおねだり癖が身についてしまっていた。
「それで……魔界鮭といえば、前に話してくれた、最近の学説……でしたっけ」
「うむ……“魔界鮭の脂は良質な精液の源となり、妊娠確率の向上が期待される”……まぁ、この手の話は検証が困難であるが故に、往々にして仮説の域を出ないわけだが――」
「くふふ……よく覚えていたな……❤︎そんなに私に子を孕んでほしいのか……❤︎」
「っ……ディ、ディサディアさまぁ……」
そして、献立を考えるにあたって、その味だけでなく、効能についても期待を寄せずはいられない。
魔界鮭は妊娠に良い――僕がこんな話を覚えていた理由は当然、ディサディア様との子宝が欲しいからに他ならなかった。
それはもう隠すことのない事実なのだが、商店街の真っ只中でそれを”孕んでもらいたい”という形で、しかも聞こえよがしに嬉々として暴露されてしまう。
いくらディサディア様に心酔していても、普段からべったりと甘え通しで堕落の淵に沈んでいても、服従する事に誇りさえ感じていても、公の場に出れば、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「んふふ……顔が赤いぞ……❤︎」
「外でそういうのは、恥ずか――」
「孕んでほしいのだろう……?」
ディサディア様は、羞恥に悶える僕の顔を覗き込み、有無を言わさず、ねっとりと問い詰めてきて。惚気の延長にある、愛情たっぷりの意地悪さが、被支配欲求をぞくぞくと刺激してくれる。僕を甘く弄ぶ、悪魔らしい愛情表現が、羞恥さえも愛おしくさせてくれる。
「さ……正直に答えろ❤︎」
「ぼ、僕の子を……は、孕んで……ほしい……です……っ」
「くふ……くふふ……恥ずかしがるコトなどないというのに……❤︎あぁ、しかし、”孕んでほしい”とは……何度聞いてもそそられてしまうなぁ……❤︎」
そして僕は、決して抗えぬ命令によって、欲望を暴き出されてしまう。”孕ませたい”ではなく”孕んでほしい”、服従と従属の悦びに染まりきった、僕の欲望。そんなものを人前で白状させられてしまい、羞恥で頭の中は真っ白。
「ぅぅ……いじわるぅぅぅぅ……」
「んふふ……意地悪されるのも好きなくせに❤︎」
「ぅ、ぅぅ……すき、ですけどぉ……」
「んふふ……そうかそうか、よしよし……❤︎」
「ぁぅ……ディサディアさまぁ……」
「くふふ……甘えん坊め……❤︎」
恥ずかしいのに、幸せで、心地良くて、愛おしくて。弄ばれる悦びは、理不尽なまでに甘美。
堪らず逃げ込む先は、他ならぬディサディア様の胸の中。羞恥と悦びに歪む、はしたない表情を隠すため、降参の意を示すため、その谷間に顔を埋めずにはいられない。
そして、意地悪をするのがディサディア様なら、それを優しく慰めてくれるのもディサディア様。すがりつく僕をあやすように、愛しむような手つきで頭を撫でてくれる。意地悪との落差に、羞恥はすっかりと蕩け堕ち、母性に呑み込まれてしまって……僕は、どうしようもない甘えん坊に仕立て上げられてしまう。
「さ、夕飯の献立が決まったぞ……ジパング風が良いのだろう?まずは魔界鮭の塩焼きと刺身だな……❤︎あとはお前の好きな豚汁も作ってやろう……❤︎」
「ん……いいですね、豚汁……美味しいですし……その……」
ディサディア様は、僕がお願いすれば、どんな料理だって作ってくれる。ジパング料理はもはやお手の物で、きっと今日も、割烹着を着ながら夕飯を作ってくれるに違いない。そんな、邪悪な出で立ちとは裏腹な良妻ぶりがあまりに愛おしく、割烹着姿を想像するだけで惚れ直してしまうぐらいだ。
しかし、献立を告げるディサディア様の声は、悪魔の囁きに他ならなかった。
魔界の食材につきものなのは、交わりに向けた効能。献立を告げられるだけで、否応無しにその効能を……そして、その先に待ち受けている食後の交わりを、ディサディア様に”食べて”いただくことを想起してしまう。
精の質を高め妊娠を促すらしい魔界鮭に、三日三晩も交わり続けることができるほどの栄養価を持つ魔界豚。今夜は寝かさないと、そう宣言されてしまっているに等しく……ぞくりと、背筋が悦びに震えてしまう。ディサディア様は、良妻でありながらも、やはり悪魔であり支配者なのだ。
「んふふ……そうだな……魔界豚にまかいも、まといの野菜、そしてネバリダケも入れて……具沢山の栄養満点にしてやろう……❤︎」
「ぁっ……ネバリダケ……だなんて……」
「デザートは、まといの野菜の芯を使って……とろけの野菜を添えてやろう❤︎」
「とろけの野菜まで……そんなの……もう……待ちきれません……っ」
精に強い粘りを出し、子宮に残りやすくする事から、妊娠しやすくなると期待されているネバリダケ。魔界鮭に加えてネバリダケとくれば、ディサディア様が望んでいるのは、間違いなく子作りだった。
極め付けは、魔界の食材の効能を効能を飛躍的に高めるとろけの野菜。まといの野菜と一緒に食べれば、ディサディア様は、火照りとむず痒さに服を脱ぎ捨て、身体を密着させずにはいられなくなってしまう。そして、ネバリダケの効能も高まり、捧げた精は一週間以上も残り続けることになるだろう。ディサディア様の愛液も粘性を増して、交わりはより、ねばっこく濃密なモノに。
肌を重ね合わせ、身体を密着させながらの、ねばりついて絡みついて離さない、子作りのための、愛情たっぷりの交わり。三日三晩かそれ以上もの間、子宮へと一滴残らず精を捧げることになってしまうに違いない。
そんな想像に欲望は掻き立てられ、愉しみで、待ちきれなくて、仕方なく。堪らずディサディア様に腰を擦り付け、硬くなったモノを押し当てずにはいられなかった。早く食べさせてくださいと、早く食べてくださいと、おねだりせずにはいられなかった。
「くふ、んふふふふ……❤︎そうかそうか……そんなに愉しみか、待ちきれぬか……❤︎ならば、早く買い物を済ませなければ、な……❤︎ほら、ゆくぞ……❤︎」
「は、はぃっ……ディサディアさまぁ……」
ディサディア様は、買い物を急ごうにも上手く歩けない僕を、お姫様抱っこの形で抱き上げてくれる。おねだりの効果はてきめんで、僕を覗き込むその瞳は、情欲に妖しく輝いていて、契約紋から熱い衝動が流れ込んでくる。ディサディア様もまた、子宮を疼かせ、僕を求めてくれている。重なり合う欲望が、愛おしく、悦ばしく、嬉しくて仕方ない。決して破れぬ契約によって約束された、逃れ得ない快楽と幸福が、僕を待ち受けている。
溺愛とも過保護とも言える深い愛情と、底無しの欲望に服従し、決して抗えないまま堕落の淵へと堕ちていくのは、まさに、支配されるという特権。人の身に余る快楽に、甘美さに、心地良さに浸されながら、貪り尽くされ愛で尽くされるその時を夢想し、期待に身も心も染め上げられて。今日も僕は、支配者であり伴侶でもある最愛の人に身も心も全てを委ね、その名を呼ぶのだった。
18/01/17 22:26更新 / REID