投げいる先は。
「のう、そこのお前様よ。」
「おん?なんだよバフォのばっちゃん。」
「ばっちゃんなどとぬかすな!わしはまだ250歳じゃ!」
フリーマーケットと言うと心が躍るのは俺だけだろうか。
多分のほほんとしたゲーム、アニマルフォレスト(要和訳)の影響だと思う。
定価120円のスズキを500円くらいで売ったっけなぁ。
「250は俺ら人間の中じゃもうばっちゃんなんだよ。」
「ほーん、相変わらずもろい種族じゃのう。して、お主、骨董に興味はあるかえ?」
「骨董?織田信長の剣とか?」
「残念ながらそんなものは置いとらんが…まぁ、少しでも興味があるというのなら覗いてみんかのう?」
品定めというか、値段と実物を見て鼻で笑うのもフリーマーケットの醍醐味だと思う。そのせいで出禁になったこと何度かあるけど。
「よっし、暇だから見てくぜ、バフォのお、ね、え、さ、ん。」
「ふん、機嫌取りが巧い小僧じゃのう、のんびり見ていくがよいわ」
「おーう、しばし見物させてもらうぜー。」
フリーマーケットとはいえこんな城下町、かなり大規模である。
出店は1つずつ商品を置ける棚と仮設の建物が貸し出される。
いわば一つの普通のお店が集っている感じなのだ。
ふろしきにモノを並べるのとは訳が違う。
「…へーぇ、骨董っつーと剣とか巻物のイメージしかなかったけど、皿とかもあんのな。」
俺の頭の中はなんでも鑑定団のイメージしかなかった。
しかもなんでも鑑定団も毎回見てるわけじゃないから知識が偏っている。最悪。
「…お?」
こんな割れ物が多い場所だ、結構注意深く歩いていたはずだが足にこつんという軽い衝撃が走った。
「…お主、今売り物を蹴ったな?」
「うぉっ、ご、誤解だって、つい当たっちまったっつーか!」
「責任もって養って…んん、責任もって買ってもらわんといかんのう。」
「嘘だろ!?俺冷やかしに来ただけだから金とかねーぞ!?」
「…最低じゃの。」
年齢250の幼女に下から睨まれた。ナニコレなんか目覚めそう。
「…ふむ、まぁよいわ、わしはお姉さんと呼ばれて機嫌が良い。譲ってやる。」
「えっ、マジで!?」
ククッ、と嘲笑うかのように微笑んだあと、そのバフォメットは手のひらを出して来た。
「代わりにお前様の巻いてるスカーフを寄越せ。」
ーーーーー
「…壺なぁ…」
譲ってもらったのは抱きかかえると丁度いいサイズの壺だった。
「…まぁ、どっか適当においておけばいいか。」
家に帰ったあと適当に眺めると、桜模様の綺麗な柄をしていた。
「…あーん、花瓶がわりにしたら綺麗かもなぁ。」
明日花でも買ってこよう、ついでに今水も入れてしまおう。そしたら重しにもなって倒れて割るなんてことはなくなるだろ。
近くにあったバケツに水を汲み、零さないように壺に注いでいく。
「…あっれ」
おかしい。
「……ぜんっぜん溜まんねーぞ?」
どうなってんだ、バフォメット製の壺の体積は無限大なのか。
「も、もう一回だけ注いでみるか…」
一人バケツリレー。
「……うん、やっぱおかしい、全然たまんねぇ。」
流石におかしかったのでそっと覗いてみると…
「ひぃぃっ、水責めにする気ですかっ!!」
「うがっ!?」
中から硬い何かが叫びながら出てきて俺の額を吹っ飛ばした。
ーーーーー
「いってぇ…」
額を抑えつつ出てきたモノを見やる。
…モノ?
「………………人?」
「ひっ…」
叫んだのが嘘みたいな勢いで今は棚の後ろに隠れてしまった。
「…お、おい、俺はお前に危害は加えねぇよ、出て来いって。」
「…さっき水をこれでもかと流して来たじゃないですか。」
「そ、それは普通の壺だと思ったから…」
危害加えてた。手遅れでした、無念。
「だ、大体壺を花瓶にする人なんて異端ですよ…」
「あぁ?異端?」
「ひっ、す、すいませんっ…」
…気弱だなぁ…
俺がつい最近イメチェン代わりにと髪を金髪に染めたのも相まって多分超怖い人に見えてるんだと思う。
いや俺でも怯えるよ、見知らぬ人にいきなり水責めにされたら。
「……お前、服びっしょびしょだろ?」
「……はい。」
「…なんか貸してやるから着替えろよ、風邪引くぞ。」
「…だ、大丈夫です。」
強情だった。
うむむ、しかしなぁ、風邪引くししかも色々透けてんだよなぁ。
別に興奮したりはしないが衛生上やっぱりよくない。CEROにも引っかかってしまう。
「……服、出して置いとくから。」
「…」
「俺コンビニでも行ってくるよ、その間に壺に戻るなり出てくなりしとけ。」
「……」
はぁ、こりゃあ骨が折れそうだ。骨董品だけに。
ーーーーー
がちゃりと扉を開けて部屋に戻る。
「…お。」
「…あっ」
出てくと思っていたが俺の予想は外れたらしい。
俺の服に着替えてちょこんと座っていた。
予想以上にだぼだぼだな、これまたチラリズムみたいになってる。興奮したりはしないが
「…服、借り、ました。」
「おう、そんなんしかなくてすまんな。」
「いえ…」
だぼだぼの肌着を引っ張ったり嗅いだりしている彼女。
「…んだよ、珍しいのか?」
「…ぅっ、いや、その…わたし…外に出たことがなかったので…ごめんなさい。」
「あ、謝るなよ」
外に出たことがない?まさかずっと壺の中にいたって事か?
「…お前、種族は?」
「つ、つぼまじんといいます…」
「なんでバフォのとこに売られてたんだよ。」
「えっ、私売られてたんですか…?」
誘拐じゃねぇかあの幼女!警察沙汰だぞこれ!
「…か、買ったんですか?」
「まぁ、買ったというか、一応な。」
「…お兄さんが?」
「なんだよ、その訝しげな目は。」
「…い、いえ、あんまり壺とか興味無さそうなのになって…。」
未だに意見するのも怯えたような震えた声で話す
いや確かに金髪のにいちゃんが壺買うとかハニートラップくらいだよな。
「…これからよろしくお願いします。」
「…えっ?」
「…えっ、だ、旦那様になってくれるんじゃないんですか…?」
は?
「ち、ちがっ、ちがったんですかっ、わ、わたし、なんてこと…を…ぅぅ」
顔を真っ赤にして俯く彼女。
なにこれ可愛い。
違う、そうじゃない。
「ど、どういうことだってばよ?」
「…お、お母さんが、初めて見た殿方はきっと貴方の旦那様となる人だからって…言ってて…その…」
「…本来つぼまじんってどういう捕食すんだ?」
「ほっ、ほほっ、捕食なんて、そんなっっ」
「…言い方変えるわ、どうやって男性と出会うんだ?」
「…えっと、壺を覗き込んだ人を壺に吸い込むんです。」
「…つまり?」
「…今回はイレギュラーでした。」
「…だよな。」
イレギュラー、本来多分魅惑の魔法とかかかって一気にうっふんあっはんなのだろうが、俺が無石井の水責めを決行してしまったせいでこのややこしい状況が生まれたわけだ。
「…も、貰ってくれませんか?」
「…積極的なのか内気なのかわかんねーなお前。」
「…ご、ごめんなさい。」
やばいなんか涙目になってきたぞこいつ、あぁもう女の子の扱いとかほとんど覚えてねーよ、ましてこんな小さい子…
「…くしゅっ」
付き合い方を考えていたら彼女が小さくくしゃみをした。
「…お、おい、やっぱ風邪引いたんじゃ」
「い、いえ…大丈夫ですから…くしっ」
ちょっと顔を火照らせているだろうか、完全に風邪である。
「ま、待ってろ、直ぐ薬買ってきてやるからな」
近くにあった上着を彼女に被せてから靴下を履き、靴を履いて外に出ようとした瞬間、
「ま、待ってくださ…ぃ」
「…お、おう?」
「…ひとりに…しないでください…」
投げた上着をギュッと掴みながらこちらを見てくる。
風邪になると色々不安になるってあれだろうか?
「…分かった、無理はすんなよ。」
戻ってから、試しに彼女の傍に寄ってみる
「………」
チラリとこちらを見やるだけで特に何もしてこない、魔物娘って積極的なんじゃなかったっけか、この種族だけなんだろうか。
ちょっといたずら心が湧いたので抱き締めてみよう。
いや、やけに可愛く見えたとかそんなんじゃなく、ほんとに、そこ、疑うなよ!
「…ッ!?」
そっと抱き締めたら肩をびくんと震わせてこちらに驚きの目線を投げてくる。
「ぁっ、ぁの…っ!?」
「…風邪引かないように温めないと。」
「だいじょうぶですっ、だいじょうぶですからぁ…っ」
「…気にすんな。安心して寝ろ。」
「寝れるわけないじゃないですか…ぁぅ…」
プシュゥという音が聞こえるほど顔を真っ赤にしてしまった、照れ屋なんだなこいつ、いじめがいがありそうだ。
「…ぅぅー……」
顔を隠すためだろうか、胸に顔を埋めてきた。
あったかい、やっぱ熱は高そうだなぁ。
もとはといえば水責めでビシャビシャにしてしまったせいなので一応お詫びの気持ちを込めてる。
やましい気持ちはない。
断じてない。
少しでも安らぐように少し撫でてみる。
「…ぅんっ…」
ぴくんと身震いしたが拒否反応はない、うん、撫でとこう。
しばらく撫でていると少しずつ「すぅ…」という寝息が聞こてきた。
うん、寝れたみたいだ、良かった。
ーーーーー
「元気になったみたいだな。」
「…はい、おかげさまで。」
結局その日は抱きしめあったまま寝てしまった。
それだけで治ったらしい、魔物ってすげぇな。
「わ、わたし、一回壺に帰りますね。」
「え、お、うん。」
すっと立ち上がって置いて、脱いで?あった壺に入っていった。
吸引みたいだ、この壺どうなってんだろう。
当時の俺はバカだったと、今の俺は思う。
つぼまじんの捕食方法聞いたのにかんっぜんに忘れていたのだ。
何の迷いもなく壺を除き込み…
「うっ!?」
吸い込まれた。
ーーーーー
「えへ…来てくれると思いましたよ…」
壺に入って頭を打ち、目を覚ましたら俺の体はぎゅぅと彼女に抱きしめられていた。
「お、おい、これ、戻り道は、」
「私が作らないと出来ません」
「スカーフ買いたいんだけどなー…?」
「…ここなら新しく作り出せますよ。」
彼女は右手をくるりと回し、俺が望んでいたようなかっこいいスカーフを作り出した
いや、違う、やばい、本能かやばいと告げてるんだ。
「…えへへ、離しませんから…ぎゅってされて…すっごく気持ちよかったんです…」
「わ、わかった、上に戻っても抱き締めてやるから、な?」
「戻る意味がありませんもん…」
あ。これ、逃げられないかも。
「…えへへへへ、ずーっと一緒ですよ…」
「う、嘘だろ!?ヤンデレ落ちかよ、うぉっ!?」
抱きつかれたまま押し倒され、鎖骨へ、耳へ、首筋へ、彼女の舌が這う。
…このあとめちゃくちゃ絞られましたとさ。
「おん?なんだよバフォのばっちゃん。」
「ばっちゃんなどとぬかすな!わしはまだ250歳じゃ!」
フリーマーケットと言うと心が躍るのは俺だけだろうか。
多分のほほんとしたゲーム、アニマルフォレスト(要和訳)の影響だと思う。
定価120円のスズキを500円くらいで売ったっけなぁ。
「250は俺ら人間の中じゃもうばっちゃんなんだよ。」
「ほーん、相変わらずもろい種族じゃのう。して、お主、骨董に興味はあるかえ?」
「骨董?織田信長の剣とか?」
「残念ながらそんなものは置いとらんが…まぁ、少しでも興味があるというのなら覗いてみんかのう?」
品定めというか、値段と実物を見て鼻で笑うのもフリーマーケットの醍醐味だと思う。そのせいで出禁になったこと何度かあるけど。
「よっし、暇だから見てくぜ、バフォのお、ね、え、さ、ん。」
「ふん、機嫌取りが巧い小僧じゃのう、のんびり見ていくがよいわ」
「おーう、しばし見物させてもらうぜー。」
フリーマーケットとはいえこんな城下町、かなり大規模である。
出店は1つずつ商品を置ける棚と仮設の建物が貸し出される。
いわば一つの普通のお店が集っている感じなのだ。
ふろしきにモノを並べるのとは訳が違う。
「…へーぇ、骨董っつーと剣とか巻物のイメージしかなかったけど、皿とかもあんのな。」
俺の頭の中はなんでも鑑定団のイメージしかなかった。
しかもなんでも鑑定団も毎回見てるわけじゃないから知識が偏っている。最悪。
「…お?」
こんな割れ物が多い場所だ、結構注意深く歩いていたはずだが足にこつんという軽い衝撃が走った。
「…お主、今売り物を蹴ったな?」
「うぉっ、ご、誤解だって、つい当たっちまったっつーか!」
「責任もって養って…んん、責任もって買ってもらわんといかんのう。」
「嘘だろ!?俺冷やかしに来ただけだから金とかねーぞ!?」
「…最低じゃの。」
年齢250の幼女に下から睨まれた。ナニコレなんか目覚めそう。
「…ふむ、まぁよいわ、わしはお姉さんと呼ばれて機嫌が良い。譲ってやる。」
「えっ、マジで!?」
ククッ、と嘲笑うかのように微笑んだあと、そのバフォメットは手のひらを出して来た。
「代わりにお前様の巻いてるスカーフを寄越せ。」
ーーーーー
「…壺なぁ…」
譲ってもらったのは抱きかかえると丁度いいサイズの壺だった。
「…まぁ、どっか適当においておけばいいか。」
家に帰ったあと適当に眺めると、桜模様の綺麗な柄をしていた。
「…あーん、花瓶がわりにしたら綺麗かもなぁ。」
明日花でも買ってこよう、ついでに今水も入れてしまおう。そしたら重しにもなって倒れて割るなんてことはなくなるだろ。
近くにあったバケツに水を汲み、零さないように壺に注いでいく。
「…あっれ」
おかしい。
「……ぜんっぜん溜まんねーぞ?」
どうなってんだ、バフォメット製の壺の体積は無限大なのか。
「も、もう一回だけ注いでみるか…」
一人バケツリレー。
「……うん、やっぱおかしい、全然たまんねぇ。」
流石におかしかったのでそっと覗いてみると…
「ひぃぃっ、水責めにする気ですかっ!!」
「うがっ!?」
中から硬い何かが叫びながら出てきて俺の額を吹っ飛ばした。
ーーーーー
「いってぇ…」
額を抑えつつ出てきたモノを見やる。
…モノ?
「………………人?」
「ひっ…」
叫んだのが嘘みたいな勢いで今は棚の後ろに隠れてしまった。
「…お、おい、俺はお前に危害は加えねぇよ、出て来いって。」
「…さっき水をこれでもかと流して来たじゃないですか。」
「そ、それは普通の壺だと思ったから…」
危害加えてた。手遅れでした、無念。
「だ、大体壺を花瓶にする人なんて異端ですよ…」
「あぁ?異端?」
「ひっ、す、すいませんっ…」
…気弱だなぁ…
俺がつい最近イメチェン代わりにと髪を金髪に染めたのも相まって多分超怖い人に見えてるんだと思う。
いや俺でも怯えるよ、見知らぬ人にいきなり水責めにされたら。
「……お前、服びっしょびしょだろ?」
「……はい。」
「…なんか貸してやるから着替えろよ、風邪引くぞ。」
「…だ、大丈夫です。」
強情だった。
うむむ、しかしなぁ、風邪引くししかも色々透けてんだよなぁ。
別に興奮したりはしないが衛生上やっぱりよくない。CEROにも引っかかってしまう。
「……服、出して置いとくから。」
「…」
「俺コンビニでも行ってくるよ、その間に壺に戻るなり出てくなりしとけ。」
「……」
はぁ、こりゃあ骨が折れそうだ。骨董品だけに。
ーーーーー
がちゃりと扉を開けて部屋に戻る。
「…お。」
「…あっ」
出てくと思っていたが俺の予想は外れたらしい。
俺の服に着替えてちょこんと座っていた。
予想以上にだぼだぼだな、これまたチラリズムみたいになってる。興奮したりはしないが
「…服、借り、ました。」
「おう、そんなんしかなくてすまんな。」
「いえ…」
だぼだぼの肌着を引っ張ったり嗅いだりしている彼女。
「…んだよ、珍しいのか?」
「…ぅっ、いや、その…わたし…外に出たことがなかったので…ごめんなさい。」
「あ、謝るなよ」
外に出たことがない?まさかずっと壺の中にいたって事か?
「…お前、種族は?」
「つ、つぼまじんといいます…」
「なんでバフォのとこに売られてたんだよ。」
「えっ、私売られてたんですか…?」
誘拐じゃねぇかあの幼女!警察沙汰だぞこれ!
「…か、買ったんですか?」
「まぁ、買ったというか、一応な。」
「…お兄さんが?」
「なんだよ、その訝しげな目は。」
「…い、いえ、あんまり壺とか興味無さそうなのになって…。」
未だに意見するのも怯えたような震えた声で話す
いや確かに金髪のにいちゃんが壺買うとかハニートラップくらいだよな。
「…これからよろしくお願いします。」
「…えっ?」
「…えっ、だ、旦那様になってくれるんじゃないんですか…?」
は?
「ち、ちがっ、ちがったんですかっ、わ、わたし、なんてこと…を…ぅぅ」
顔を真っ赤にして俯く彼女。
なにこれ可愛い。
違う、そうじゃない。
「ど、どういうことだってばよ?」
「…お、お母さんが、初めて見た殿方はきっと貴方の旦那様となる人だからって…言ってて…その…」
「…本来つぼまじんってどういう捕食すんだ?」
「ほっ、ほほっ、捕食なんて、そんなっっ」
「…言い方変えるわ、どうやって男性と出会うんだ?」
「…えっと、壺を覗き込んだ人を壺に吸い込むんです。」
「…つまり?」
「…今回はイレギュラーでした。」
「…だよな。」
イレギュラー、本来多分魅惑の魔法とかかかって一気にうっふんあっはんなのだろうが、俺が無石井の水責めを決行してしまったせいでこのややこしい状況が生まれたわけだ。
「…も、貰ってくれませんか?」
「…積極的なのか内気なのかわかんねーなお前。」
「…ご、ごめんなさい。」
やばいなんか涙目になってきたぞこいつ、あぁもう女の子の扱いとかほとんど覚えてねーよ、ましてこんな小さい子…
「…くしゅっ」
付き合い方を考えていたら彼女が小さくくしゃみをした。
「…お、おい、やっぱ風邪引いたんじゃ」
「い、いえ…大丈夫ですから…くしっ」
ちょっと顔を火照らせているだろうか、完全に風邪である。
「ま、待ってろ、直ぐ薬買ってきてやるからな」
近くにあった上着を彼女に被せてから靴下を履き、靴を履いて外に出ようとした瞬間、
「ま、待ってくださ…ぃ」
「…お、おう?」
「…ひとりに…しないでください…」
投げた上着をギュッと掴みながらこちらを見てくる。
風邪になると色々不安になるってあれだろうか?
「…分かった、無理はすんなよ。」
戻ってから、試しに彼女の傍に寄ってみる
「………」
チラリとこちらを見やるだけで特に何もしてこない、魔物娘って積極的なんじゃなかったっけか、この種族だけなんだろうか。
ちょっといたずら心が湧いたので抱き締めてみよう。
いや、やけに可愛く見えたとかそんなんじゃなく、ほんとに、そこ、疑うなよ!
「…ッ!?」
そっと抱き締めたら肩をびくんと震わせてこちらに驚きの目線を投げてくる。
「ぁっ、ぁの…っ!?」
「…風邪引かないように温めないと。」
「だいじょうぶですっ、だいじょうぶですからぁ…っ」
「…気にすんな。安心して寝ろ。」
「寝れるわけないじゃないですか…ぁぅ…」
プシュゥという音が聞こえるほど顔を真っ赤にしてしまった、照れ屋なんだなこいつ、いじめがいがありそうだ。
「…ぅぅー……」
顔を隠すためだろうか、胸に顔を埋めてきた。
あったかい、やっぱ熱は高そうだなぁ。
もとはといえば水責めでビシャビシャにしてしまったせいなので一応お詫びの気持ちを込めてる。
やましい気持ちはない。
断じてない。
少しでも安らぐように少し撫でてみる。
「…ぅんっ…」
ぴくんと身震いしたが拒否反応はない、うん、撫でとこう。
しばらく撫でていると少しずつ「すぅ…」という寝息が聞こてきた。
うん、寝れたみたいだ、良かった。
ーーーーー
「元気になったみたいだな。」
「…はい、おかげさまで。」
結局その日は抱きしめあったまま寝てしまった。
それだけで治ったらしい、魔物ってすげぇな。
「わ、わたし、一回壺に帰りますね。」
「え、お、うん。」
すっと立ち上がって置いて、脱いで?あった壺に入っていった。
吸引みたいだ、この壺どうなってんだろう。
当時の俺はバカだったと、今の俺は思う。
つぼまじんの捕食方法聞いたのにかんっぜんに忘れていたのだ。
何の迷いもなく壺を除き込み…
「うっ!?」
吸い込まれた。
ーーーーー
「えへ…来てくれると思いましたよ…」
壺に入って頭を打ち、目を覚ましたら俺の体はぎゅぅと彼女に抱きしめられていた。
「お、おい、これ、戻り道は、」
「私が作らないと出来ません」
「スカーフ買いたいんだけどなー…?」
「…ここなら新しく作り出せますよ。」
彼女は右手をくるりと回し、俺が望んでいたようなかっこいいスカーフを作り出した
いや、違う、やばい、本能かやばいと告げてるんだ。
「…えへへ、離しませんから…ぎゅってされて…すっごく気持ちよかったんです…」
「わ、わかった、上に戻っても抱き締めてやるから、な?」
「戻る意味がありませんもん…」
あ。これ、逃げられないかも。
「…えへへへへ、ずーっと一緒ですよ…」
「う、嘘だろ!?ヤンデレ落ちかよ、うぉっ!?」
抱きつかれたまま押し倒され、鎖骨へ、耳へ、首筋へ、彼女の舌が這う。
…このあとめちゃくちゃ絞られましたとさ。
15/09/13 11:03更新 / みゅぅん