隠し事
「ねぇ、にーぃ、あの扉の向こうって何?」
「あー、今は使ってねぇ空き部屋だなぁ。」
「あそこの部屋が使えれば広間で寝ずに済むんだけどなーっ」
「わざとらしくちらちらこっちを見るな…んまぁ、使わせてやりたいのはやまやまだが…悪ぃ、そりゃ、ちょっと無理だ」
「えーっ…」
空き部屋。
俺のアパートはそれなりの広さである。
前記に狭いとは書いたものの、普通のマンションくらいはある。
まず俺の部屋が1つ。
で、トイレとキッチンと風呂。あ、繋がってるわけじゃねぇぞ。
そんで広間。つっても妹三人が雑魚寝できるくらいのスペースだが。
そして、もう一つ。
「ちなみに中には何があるの…?」
「あー…なんもねぇよ…」
「ふっ、わたしは知ってるよっ」
あそこだけには絶対に入って欲しくない。
「え、おい!」
「エロ本でしょ!!」
「……あー、うん、そう、そうね。」
「…張り合いがないなぁ。」
どの位入って欲しくないかというと、俺の部屋よりも優先して高位の魔法施錠を付けるくらい。
いや、別に?
別に俺の部屋に妹が来るのが若干嬉しくなったからかけてないわけじゃねぇけど?別に?
「ほら、まゆはあっち行って他の奴と遊んで来い」
「はーい…」
若干不服そうではあるが、なんやかんやちゃんと言う事を聞いてくれる。
根はいい子なのだ、多分。
いやまだ分かんないけど。
「…さて…」
俺は誰も見ていない事を確認し、その扉を開ける。
そして線香を取り、添える。
「……なんか、家族が増えたよ。はは、うっとしい奴らでさ。」
目をつむって、手を合わす。
「…でも、お前の変わりはいねぇよ。やっぱ。」
割と幽霊、とか、怪奇現象は信じる方である。
こーいう黙祷とか、祈りとかも、ついつい本気で願ったり祈ったりしてしまう。
いい事なのだろうが、きっとそれを周りに言ったらバカにされてしまうんだろうなぁ。
線香が燃え尽きたのを確認し、扉を開けて外に出る。
ついでに妹達を構ってやる事にする。
いや、別に?別に構いたいとかそーいうわけじゃぁなくて、無理に無反応にすると返って意識しているようだし?ここはむしろ大人の余裕?小さな子供に付き合ってやるとか?そーいう感じである。
うん。
「…あっ、にぃが来た!」
「あーもう鬱陶しい!!」
嬉しくなんてない。決して。
「あのね、お兄さん、今ババ抜きをしててね、もう一人欲しかったところなんだよ。」
「数合わせって感じか」
「そうよ…べっつにお兄ちゃんと遊びたいとか…誰も思ってないから…」
「ん、私はにぃと遊びたいよ!」
「私も…」
「……ぅ…」
この三人は平常運転である。
もう最近はあんま深く考えないように心掛けている。
そうしないと身が持たん。
あとどうでもいいけど結局枕は行方不明になった。
買いにいかねば。
「…さて、じゃあ本気で相手するぞ」
「ちなみに今はまでまゆが全敗…」
「あっ、ちょっ、言わないでよ!!」
「アンタ弱いもんねぇー」
「そんなことない!!にぃよりは強いよ!!きっと!!」
「あぁんなんだとおめぇ、やってみなきゃ分かんないだろ?」
あぁ、ちなみに今の状況を客観的に言うならば、休日の昼間っから女の子三人を相手に大人が本気でババ抜きをしている図、である。
後で客観視して死にたくなった。
ーーー
「いよっしゃぁ!!上がりぃ!!」
「あーっ!またっ!!」
「お兄さんとまゆ弱すぎ…」
「子供っぽ…バカみたい…」
5ループくらいしただろうか。
本気で相手をしたのに戦績はビリか三等だった。
全部まゆとの一騎打ち。
笑えない。
流石に全員飽きてきた所で、俺らはカードを片付け始めた。
「んじゃ、ちゃんと片付けとけよ?」
「はぁーい。」
指示をしたところで俺は夕飯を作ることにした。
ちなみにロールキャベツである。
俺は炒めた青菜って苦手なんだけど、茹でたのは割といける。
白菜のクリーム煮とか、スゲェ好き。
キャベツの葉を毟っていると、インターホンが鳴った。
「あっ、はーい!!今出ます!!」
「あ、お兄さん、私出る?」
「いや、大丈夫、サンキューな。」
「はーい。」
扉の前まで向かう
覗き窓?的なものは我が家にはないので妹達を出すのは危ないと思っての葉っぱ毟り中断である。
「はい…どなたで…」
「よぅ、元気にやってたか、坊主。」
「と、父さん!?」
扉の前にいたのは、サンダルに短パン、似合わないポロシャツを羽織った、紛れもない、我が父であった。
「はっはー、元気がいいこって。」
「なんで、急にっ」
「細けぇことはいいだろぉ?上がらせてもらうぜ。」
「お、おいっ」
父さんは俺の静止を身のこなしだけですり抜け、家に入って行く。
「あっ、パパじゃーん!!」
「お父さん…!?」
「えっ、嘘っ!?」
「おーう、元気にしてたかー、ガキどもー。」
意外にも仲は悪くないらしい…。
「はっは、あんま暴れんなよ、怪我しちゃあ危ねぇじゃねぇか」
「はーい…」
広間の椅子にひょいと座った父に、俺は話しかけた。
「…父さん」
「あー、言いたいことは分かるぜぇ、こいつらのことと、なんで帰ってきたんだってこったろ?」
「今までどこ行ってたんだよ。」
「おっとぉ、全ハズレかい…」
いや、本当は全アタリだったんだけど、オヤジにはどうも逆らいたくなってしまう。
「ちょっと、ひっさしぶりに話をしねぇか、二人でよ。」
「まぁ、いいけど…」
「おめぇのことだからあの部屋、まだ未練がましく残してんだろ?」
「…うるさいな。」
「わりぃ、冗談だよ。」
俺は父と前記に上げた、妹達には入って欲しくない部屋に入る。
「…どうだい、こいつらとは馴染めたかい。」
「…まぁ、それなり。」
「わりぃな、任せちまって。」
「ほんとに思ってんの?それ。」
「はっはー、ぜんっぜん。」
まぁ、予想通りである。
「むしろ嬉しいだろ?」
「はっ、別に…」
嬉しくなくはないが、別に。
正直に言っていいなら、複雑なのだ。
「…あいつらを死んだ妹の変わりだと思って…ぐっ!?」
親父の発した言葉を聞いたか否か、反射的に襟首を掴んでしまっていた。
「…ふざけんなよ、なんだよ、変わりって。あんたの娘は、あんたの娘だけだろうが。」
俺には昔、本当に血の繋がった妹が居た。
「あー、今は使ってねぇ空き部屋だなぁ。」
「あそこの部屋が使えれば広間で寝ずに済むんだけどなーっ」
「わざとらしくちらちらこっちを見るな…んまぁ、使わせてやりたいのはやまやまだが…悪ぃ、そりゃ、ちょっと無理だ」
「えーっ…」
空き部屋。
俺のアパートはそれなりの広さである。
前記に狭いとは書いたものの、普通のマンションくらいはある。
まず俺の部屋が1つ。
で、トイレとキッチンと風呂。あ、繋がってるわけじゃねぇぞ。
そんで広間。つっても妹三人が雑魚寝できるくらいのスペースだが。
そして、もう一つ。
「ちなみに中には何があるの…?」
「あー…なんもねぇよ…」
「ふっ、わたしは知ってるよっ」
あそこだけには絶対に入って欲しくない。
「え、おい!」
「エロ本でしょ!!」
「……あー、うん、そう、そうね。」
「…張り合いがないなぁ。」
どの位入って欲しくないかというと、俺の部屋よりも優先して高位の魔法施錠を付けるくらい。
いや、別に?
別に俺の部屋に妹が来るのが若干嬉しくなったからかけてないわけじゃねぇけど?別に?
「ほら、まゆはあっち行って他の奴と遊んで来い」
「はーい…」
若干不服そうではあるが、なんやかんやちゃんと言う事を聞いてくれる。
根はいい子なのだ、多分。
いやまだ分かんないけど。
「…さて…」
俺は誰も見ていない事を確認し、その扉を開ける。
そして線香を取り、添える。
「……なんか、家族が増えたよ。はは、うっとしい奴らでさ。」
目をつむって、手を合わす。
「…でも、お前の変わりはいねぇよ。やっぱ。」
割と幽霊、とか、怪奇現象は信じる方である。
こーいう黙祷とか、祈りとかも、ついつい本気で願ったり祈ったりしてしまう。
いい事なのだろうが、きっとそれを周りに言ったらバカにされてしまうんだろうなぁ。
線香が燃え尽きたのを確認し、扉を開けて外に出る。
ついでに妹達を構ってやる事にする。
いや、別に?別に構いたいとかそーいうわけじゃぁなくて、無理に無反応にすると返って意識しているようだし?ここはむしろ大人の余裕?小さな子供に付き合ってやるとか?そーいう感じである。
うん。
「…あっ、にぃが来た!」
「あーもう鬱陶しい!!」
嬉しくなんてない。決して。
「あのね、お兄さん、今ババ抜きをしててね、もう一人欲しかったところなんだよ。」
「数合わせって感じか」
「そうよ…べっつにお兄ちゃんと遊びたいとか…誰も思ってないから…」
「ん、私はにぃと遊びたいよ!」
「私も…」
「……ぅ…」
この三人は平常運転である。
もう最近はあんま深く考えないように心掛けている。
そうしないと身が持たん。
あとどうでもいいけど結局枕は行方不明になった。
買いにいかねば。
「…さて、じゃあ本気で相手するぞ」
「ちなみに今はまでまゆが全敗…」
「あっ、ちょっ、言わないでよ!!」
「アンタ弱いもんねぇー」
「そんなことない!!にぃよりは強いよ!!きっと!!」
「あぁんなんだとおめぇ、やってみなきゃ分かんないだろ?」
あぁ、ちなみに今の状況を客観的に言うならば、休日の昼間っから女の子三人を相手に大人が本気でババ抜きをしている図、である。
後で客観視して死にたくなった。
ーーー
「いよっしゃぁ!!上がりぃ!!」
「あーっ!またっ!!」
「お兄さんとまゆ弱すぎ…」
「子供っぽ…バカみたい…」
5ループくらいしただろうか。
本気で相手をしたのに戦績はビリか三等だった。
全部まゆとの一騎打ち。
笑えない。
流石に全員飽きてきた所で、俺らはカードを片付け始めた。
「んじゃ、ちゃんと片付けとけよ?」
「はぁーい。」
指示をしたところで俺は夕飯を作ることにした。
ちなみにロールキャベツである。
俺は炒めた青菜って苦手なんだけど、茹でたのは割といける。
白菜のクリーム煮とか、スゲェ好き。
キャベツの葉を毟っていると、インターホンが鳴った。
「あっ、はーい!!今出ます!!」
「あ、お兄さん、私出る?」
「いや、大丈夫、サンキューな。」
「はーい。」
扉の前まで向かう
覗き窓?的なものは我が家にはないので妹達を出すのは危ないと思っての葉っぱ毟り中断である。
「はい…どなたで…」
「よぅ、元気にやってたか、坊主。」
「と、父さん!?」
扉の前にいたのは、サンダルに短パン、似合わないポロシャツを羽織った、紛れもない、我が父であった。
「はっはー、元気がいいこって。」
「なんで、急にっ」
「細けぇことはいいだろぉ?上がらせてもらうぜ。」
「お、おいっ」
父さんは俺の静止を身のこなしだけですり抜け、家に入って行く。
「あっ、パパじゃーん!!」
「お父さん…!?」
「えっ、嘘っ!?」
「おーう、元気にしてたかー、ガキどもー。」
意外にも仲は悪くないらしい…。
「はっは、あんま暴れんなよ、怪我しちゃあ危ねぇじゃねぇか」
「はーい…」
広間の椅子にひょいと座った父に、俺は話しかけた。
「…父さん」
「あー、言いたいことは分かるぜぇ、こいつらのことと、なんで帰ってきたんだってこったろ?」
「今までどこ行ってたんだよ。」
「おっとぉ、全ハズレかい…」
いや、本当は全アタリだったんだけど、オヤジにはどうも逆らいたくなってしまう。
「ちょっと、ひっさしぶりに話をしねぇか、二人でよ。」
「まぁ、いいけど…」
「おめぇのことだからあの部屋、まだ未練がましく残してんだろ?」
「…うるさいな。」
「わりぃ、冗談だよ。」
俺は父と前記に上げた、妹達には入って欲しくない部屋に入る。
「…どうだい、こいつらとは馴染めたかい。」
「…まぁ、それなり。」
「わりぃな、任せちまって。」
「ほんとに思ってんの?それ。」
「はっはー、ぜんっぜん。」
まぁ、予想通りである。
「むしろ嬉しいだろ?」
「はっ、別に…」
嬉しくなくはないが、別に。
正直に言っていいなら、複雑なのだ。
「…あいつらを死んだ妹の変わりだと思って…ぐっ!?」
親父の発した言葉を聞いたか否か、反射的に襟首を掴んでしまっていた。
「…ふざけんなよ、なんだよ、変わりって。あんたの娘は、あんたの娘だけだろうが。」
俺には昔、本当に血の繋がった妹が居た。
15/06/21 00:00更新 / みゅぅん
戻る
次へ