難しいお年頃
さて。
毎度おなじみお兄さんだ。
お兄さんは普段から数十もの悩み(肩こりとか)と妹達とともに暮らしているのだが、その数十もの悩みの中で、今一番ホットでナウでヤングなのが…
「…………」
「お、おーい、なんか、して欲しい事とかないか?」
「…別にない…っ」
…この妹、アヤである。
マユは出会った当初から話すことな出来たし、シズクは最近物凄く懐かれた。
しかしこの狐の少女、アヤだけは…ほんっとうに気を許してくれないのである。
攻略難易度は某時計塔のローラ生存ルートくらい。
無視は流石にされないが、ほとんどが別に、や、いらない、などツーンとした言葉の一点張りで、そもそも近寄る突破口すら見当たず、ましてアヤから話しかけてくれることなんて…あ、この頃はおかえりは言ってくれるけど。
なので俺はこのアヤから若干逃げてきたのだが…
男レン。腹を括ってこのアヤ様の攻略にかかります。
まかせろ!某甘噛は七咲だけやって投げ捨てた男だ!!
「…アヤ?」
「…何。」
「あー、ちょっと、話さないか?」
「…なんでよ。」
負けるな俺。
ここでくじけてたらいつまでたっても攻略できないぞ。
「なんでーって…その、ほら、一緒に住んでるわけだし、こう、仲良くなっといた方が…」
「……」
「…な?俺だってお前の事知りたいし…」
「…他の子がデレデレしすぎなんだよ、私は絶対あんなになってやらないから」
oh…
「……」
「…お話、それだけ?」
「えっあっ…あぁ…それだけ…」
「…そ、じゃあもう一人にして…」
「…おう、すまんな。」
男レン。
撃沈。
レンは沈みません!なんて思ってたけど…こりゃ無理だ…予想以上に難航しそうだ…
「あー…どうすっかなぁ…」
一人にしてくれ、と言われたので渋々ではあるが自分の部屋に戻る。
「うーん、アヤちゃん決してにぃにのこと嫌いじゃないと思うんだけどね。」
「素直になれないだけ…きっかけさえあれば、多分。」
「ナチュラルに俺の部屋に来るのやめてくれない?」
本格的に鍵を買う検討をしなくてはならなそうだ。
モゾモゾと俺の布団から顔を出し、こちらを見つめているのがマユ、で、俺の枕を抱き締めてるのがシズク。
何やってんの?
「とりあえずベッドの上から降りろ。」
「「嫌です。」」
「…」
…もういいや、とりあえず今は藁にもすがりたい気分なので、こいつらに相談してみることにする。
「相談、してもいいか?」
「にぃにの枕を持ってっていいのなら。」
「じゃあお前ご飯ぬきな」
「ごめんなさい相談乗るから許して」
こいつの扱いはもう手馴れた物だ。
別に?冷たくしてるわけじゃないし?べっつに??
「私はご飯抜きでもいいから枕を持って行く…」
「…相談乗ってくれたら撫でてやるぞ。」
「相談乗る。枕なんていらない。」
「…おう。」
ふむ、シズクは撫でときゃいいらしい。
これはいい発見だ。
「待ってにぃに!私もご飯抜きよりナデナデがいい!!」
「魔物に二言は無いだろ。」
「やだ!!差別だよ!!えこひいきだよ!!にぃにはどうせシズクがお気に入りなんだね!!」
「あたりまえ…」
「わ、分かったよ、撫でてやる、撫でてやるから!!あとお気に入りとかないから!!」
「「えー…」」
こいつら息ばっちりである。
シンクロナイズドスイミングとかやらせたい。
後撫でる気はない。
言いくるめてなんとか逃げてやる。
「でもにぃにに撫でてもらえるのは嬉しいなぁ…」
「お気に入りないのは…ちょっと残念。」
「…で、本題だ、アヤとどうしたらもうちょい仲良くなれっかな。」
「アヤちゃん甘い物好きだし、釣ってみれば?」
「後は素直になれる状況を作ればいいだけ…」
釣るって。
結構えげつないこと言うよなこの子達。
流石魔物娘なのだろうか。
「甘い物、ね、クッキーでも焼いてやろうかな。」
「クッキー!ねぇにぃに、私の分も!」
「全員の分な。ただ、アヤには先に上げさせてくれ。」
「わーい!!それなら大歓迎だよ!!クッキーばっち来い!」
ふむ、久しぶりにお菓子なんて作るなぁ。
大丈夫かな、作れっかな。
「…私はチョコクッキー希望。」
「作れないからバタークッキーな。」
「…むぅ。」
チョコクッキーは作り方しらないし、難しそうだ。
というかまたシズクを甘やかすとマユが「ひいき反対!」とか言う気がしただけなんだけど。
「じゃあ、早速具材買ってくるよ、ありがとな!」
「…ねぇにぃに。」
「お、お?」
「…ナデナデは?」
「…………」
誤魔化せなかった。
「満足するまでナデナデしてくれるまで…お兄さんはここから逃さない…」
「…い、いや、早めに買いにいかないと…」
「…逃さない…っ」
「ふふふー、にぃにー、ナデナデー、ほらナデナデー。」
ジリジリと詰め寄ってくる2人。
壁際に追い詰められる俺。
蛇に睨まれたカエルのような気持ちだ…
「…分かったっ!お前ら2人そこに座れっ!!」
「はいっ!」
「ん…」
この後めちゃくちゃナデナデした。
(割愛)
「よし、後は焼くだけだ…」
時は具材を買って混ぜ合わせてこね、形をとって鉄板に並べたところまで飛ぶ。
「…んー、割と覚えてるもんだな。」
600wでタイマーをセットし、アヤの方へと向かう。
「なぁ、アヤ。」
「…ん…」
「クッキー焼いてるんだけどさ、焼けたら食うか?」
「く、クッキー?」
食いついた!
いや、まだクッキーには食いついてないけど!
「そう、バタークッキー。」
「た、食べる…っ」
「へへ、良かった。」
「…何よ、そんな嬉しそうにして…」
おっと、顔に出てしまっていたようだ。
いかんいかん。
「いや、また「食べない」とか、冷たく言われるんじゃないかってさ。」
「…ごめんなさい」
「え、えっ?」
謝られた?
「…冷たくする気はなかったの…でも、なんか、他の二人が「にぃににぃにー」って行くのが…なんか、むしゃくしゃしたっていうか…その。」
「あー…」
「…私はそんな子供っぽくなってたまるかって、思ったら…」
「…お前はまだ子供だろ、子供っぽくて良いんだよ。」
ポン、とアヤの頭に手を乗っけて、優しく撫でてやる。
「俺はお前のお兄ちゃんだ。
だから妹に面倒はかけられて当たり前だと思ってるし、むしろかけてくれなきゃ困る。」
「…お兄…ちゃん…」
「そうだ、お兄ちゃんだ。」
「…ごめんなさい…お兄ちゃん…」
このままいくと、クッキーの味がしょっぱくなってしまいそうだ。
「ほら、泣くな泣くな、もうすぐクッキー焼けるぞ。」
「うるさいバカ!泣いてるとか言わなくていいばか!」
「あっはは、俺はバカだよ、ほら、クッキーの焼けるところ見たことあるか?段々膨らんでくるんだぜ?」
「そ、そうなの…?」
「見てみるか?」
「…ひ、暇だし…しょうがないから見る…」
しょうがないから、ねぇ。
どうやら完全素直にはなってくれなかったらしい。
「ほら、抱き上げてやるから」
「そんなことしなくたって見れるもん…っ」
背伸びをして見ようとしている、爪先がプルプルしているのが可愛いのだが、もしも転んでしまったら危ない。
「…よっ、と、」
「うっ……」
「見やすいか?」
「……別に、変わんない…」
「ふふ、そうか。そりゃ残念。
あー、ほら、クッキー、膨らんできただろ?」
「…あっ、ほ、ほんとだ…」
目を輝かせて生地の焼け具合を見ているアヤ。
なんだ、他の二人と変わらないじゃないか…良かった。
「……お兄ちゃん、そろそろ、下ろして」
「えっ、おう?どうした?」
「恥ずかしいの…っ!」
「あっ、ご、ごめんっ」
ゆっくりと地面に下ろしてやる。
そりゃ、そうだよな、昨日まで全く話してなかったわけだし、しょうがないな。
「…クッキー、焼けたら呼んでよね。」
「おう。分かった。」
アヤはそう言うとパタパタと三人の寝室の方へ走って行ってしまった。
「…あー、良かったぁ……死ぬかと思っだぁ………」
そして俺も力を抜いて地面に崩れ落ちる。
正直怖かった、いや、マジで。嫌われてると思ってたし。
「…さて、皿でも出すか…もう一踏ん張りだ。」
うん。
クッキー味は、しょっぱくなくてすみそうだ。
毎度おなじみお兄さんだ。
お兄さんは普段から数十もの悩み(肩こりとか)と妹達とともに暮らしているのだが、その数十もの悩みの中で、今一番ホットでナウでヤングなのが…
「…………」
「お、おーい、なんか、して欲しい事とかないか?」
「…別にない…っ」
…この妹、アヤである。
マユは出会った当初から話すことな出来たし、シズクは最近物凄く懐かれた。
しかしこの狐の少女、アヤだけは…ほんっとうに気を許してくれないのである。
攻略難易度は某時計塔のローラ生存ルートくらい。
無視は流石にされないが、ほとんどが別に、や、いらない、などツーンとした言葉の一点張りで、そもそも近寄る突破口すら見当たず、ましてアヤから話しかけてくれることなんて…あ、この頃はおかえりは言ってくれるけど。
なので俺はこのアヤから若干逃げてきたのだが…
男レン。腹を括ってこのアヤ様の攻略にかかります。
まかせろ!某甘噛は七咲だけやって投げ捨てた男だ!!
「…アヤ?」
「…何。」
「あー、ちょっと、話さないか?」
「…なんでよ。」
負けるな俺。
ここでくじけてたらいつまでたっても攻略できないぞ。
「なんでーって…その、ほら、一緒に住んでるわけだし、こう、仲良くなっといた方が…」
「……」
「…な?俺だってお前の事知りたいし…」
「…他の子がデレデレしすぎなんだよ、私は絶対あんなになってやらないから」
oh…
「……」
「…お話、それだけ?」
「えっあっ…あぁ…それだけ…」
「…そ、じゃあもう一人にして…」
「…おう、すまんな。」
男レン。
撃沈。
レンは沈みません!なんて思ってたけど…こりゃ無理だ…予想以上に難航しそうだ…
「あー…どうすっかなぁ…」
一人にしてくれ、と言われたので渋々ではあるが自分の部屋に戻る。
「うーん、アヤちゃん決してにぃにのこと嫌いじゃないと思うんだけどね。」
「素直になれないだけ…きっかけさえあれば、多分。」
「ナチュラルに俺の部屋に来るのやめてくれない?」
本格的に鍵を買う検討をしなくてはならなそうだ。
モゾモゾと俺の布団から顔を出し、こちらを見つめているのがマユ、で、俺の枕を抱き締めてるのがシズク。
何やってんの?
「とりあえずベッドの上から降りろ。」
「「嫌です。」」
「…」
…もういいや、とりあえず今は藁にもすがりたい気分なので、こいつらに相談してみることにする。
「相談、してもいいか?」
「にぃにの枕を持ってっていいのなら。」
「じゃあお前ご飯ぬきな」
「ごめんなさい相談乗るから許して」
こいつの扱いはもう手馴れた物だ。
別に?冷たくしてるわけじゃないし?べっつに??
「私はご飯抜きでもいいから枕を持って行く…」
「…相談乗ってくれたら撫でてやるぞ。」
「相談乗る。枕なんていらない。」
「…おう。」
ふむ、シズクは撫でときゃいいらしい。
これはいい発見だ。
「待ってにぃに!私もご飯抜きよりナデナデがいい!!」
「魔物に二言は無いだろ。」
「やだ!!差別だよ!!えこひいきだよ!!にぃにはどうせシズクがお気に入りなんだね!!」
「あたりまえ…」
「わ、分かったよ、撫でてやる、撫でてやるから!!あとお気に入りとかないから!!」
「「えー…」」
こいつら息ばっちりである。
シンクロナイズドスイミングとかやらせたい。
後撫でる気はない。
言いくるめてなんとか逃げてやる。
「でもにぃにに撫でてもらえるのは嬉しいなぁ…」
「お気に入りないのは…ちょっと残念。」
「…で、本題だ、アヤとどうしたらもうちょい仲良くなれっかな。」
「アヤちゃん甘い物好きだし、釣ってみれば?」
「後は素直になれる状況を作ればいいだけ…」
釣るって。
結構えげつないこと言うよなこの子達。
流石魔物娘なのだろうか。
「甘い物、ね、クッキーでも焼いてやろうかな。」
「クッキー!ねぇにぃに、私の分も!」
「全員の分な。ただ、アヤには先に上げさせてくれ。」
「わーい!!それなら大歓迎だよ!!クッキーばっち来い!」
ふむ、久しぶりにお菓子なんて作るなぁ。
大丈夫かな、作れっかな。
「…私はチョコクッキー希望。」
「作れないからバタークッキーな。」
「…むぅ。」
チョコクッキーは作り方しらないし、難しそうだ。
というかまたシズクを甘やかすとマユが「ひいき反対!」とか言う気がしただけなんだけど。
「じゃあ、早速具材買ってくるよ、ありがとな!」
「…ねぇにぃに。」
「お、お?」
「…ナデナデは?」
「…………」
誤魔化せなかった。
「満足するまでナデナデしてくれるまで…お兄さんはここから逃さない…」
「…い、いや、早めに買いにいかないと…」
「…逃さない…っ」
「ふふふー、にぃにー、ナデナデー、ほらナデナデー。」
ジリジリと詰め寄ってくる2人。
壁際に追い詰められる俺。
蛇に睨まれたカエルのような気持ちだ…
「…分かったっ!お前ら2人そこに座れっ!!」
「はいっ!」
「ん…」
この後めちゃくちゃナデナデした。
(割愛)
「よし、後は焼くだけだ…」
時は具材を買って混ぜ合わせてこね、形をとって鉄板に並べたところまで飛ぶ。
「…んー、割と覚えてるもんだな。」
600wでタイマーをセットし、アヤの方へと向かう。
「なぁ、アヤ。」
「…ん…」
「クッキー焼いてるんだけどさ、焼けたら食うか?」
「く、クッキー?」
食いついた!
いや、まだクッキーには食いついてないけど!
「そう、バタークッキー。」
「た、食べる…っ」
「へへ、良かった。」
「…何よ、そんな嬉しそうにして…」
おっと、顔に出てしまっていたようだ。
いかんいかん。
「いや、また「食べない」とか、冷たく言われるんじゃないかってさ。」
「…ごめんなさい」
「え、えっ?」
謝られた?
「…冷たくする気はなかったの…でも、なんか、他の二人が「にぃににぃにー」って行くのが…なんか、むしゃくしゃしたっていうか…その。」
「あー…」
「…私はそんな子供っぽくなってたまるかって、思ったら…」
「…お前はまだ子供だろ、子供っぽくて良いんだよ。」
ポン、とアヤの頭に手を乗っけて、優しく撫でてやる。
「俺はお前のお兄ちゃんだ。
だから妹に面倒はかけられて当たり前だと思ってるし、むしろかけてくれなきゃ困る。」
「…お兄…ちゃん…」
「そうだ、お兄ちゃんだ。」
「…ごめんなさい…お兄ちゃん…」
このままいくと、クッキーの味がしょっぱくなってしまいそうだ。
「ほら、泣くな泣くな、もうすぐクッキー焼けるぞ。」
「うるさいバカ!泣いてるとか言わなくていいばか!」
「あっはは、俺はバカだよ、ほら、クッキーの焼けるところ見たことあるか?段々膨らんでくるんだぜ?」
「そ、そうなの…?」
「見てみるか?」
「…ひ、暇だし…しょうがないから見る…」
しょうがないから、ねぇ。
どうやら完全素直にはなってくれなかったらしい。
「ほら、抱き上げてやるから」
「そんなことしなくたって見れるもん…っ」
背伸びをして見ようとしている、爪先がプルプルしているのが可愛いのだが、もしも転んでしまったら危ない。
「…よっ、と、」
「うっ……」
「見やすいか?」
「……別に、変わんない…」
「ふふ、そうか。そりゃ残念。
あー、ほら、クッキー、膨らんできただろ?」
「…あっ、ほ、ほんとだ…」
目を輝かせて生地の焼け具合を見ているアヤ。
なんだ、他の二人と変わらないじゃないか…良かった。
「……お兄ちゃん、そろそろ、下ろして」
「えっ、おう?どうした?」
「恥ずかしいの…っ!」
「あっ、ご、ごめんっ」
ゆっくりと地面に下ろしてやる。
そりゃ、そうだよな、昨日まで全く話してなかったわけだし、しょうがないな。
「…クッキー、焼けたら呼んでよね。」
「おう。分かった。」
アヤはそう言うとパタパタと三人の寝室の方へ走って行ってしまった。
「…あー、良かったぁ……死ぬかと思っだぁ………」
そして俺も力を抜いて地面に崩れ落ちる。
正直怖かった、いや、マジで。嫌われてると思ってたし。
「…さて、皿でも出すか…もう一踏ん張りだ。」
うん。
クッキー味は、しょっぱくなくてすみそうだ。
15/06/19 00:00更新 / みゅぅん
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