『モフっ娘☆天国 vol.3 今日の気分は妖狐さん』
この世には知らない方が幸せな事が沢山ある。
知ってしまったが故に、人は悩まなければならない。
そういまアパートの一室で頭を抱えている一人の男――名を岬太一というこの青年もまた、知ってしまったが故の苦悩を抱えていた。
「はろろ〜ん。たいち〜、遊びに来たよ〜♪」
そんな太一の苦悩など知る由もない一人の妖狐――太一の付き合っている彼女である揚貴は、右に涙黒子がある顔に満面の笑顔をたたえ、妖狐らしく胸元が大きく開かれたトップスと、脚線美を誇るかのようなぴっちりと体型に合ったボトムスを合わせた服装に、三本ある金色の尻尾を誇らしく振り、無駄に元気良く扉を開けて入ってきた。
普段の太一ならば、ため息をつくなり軽口を叩くなりして揚貴に反応を返すのだが、今日この時においてはその余裕すらもない様子だ。
「ねぇねぇ〜、どうしたの〜?彼女のようちゃんが来たのに、反応皆無なの〜?」
自分のことを恥ずかしげもなく愛称で呼んだ揚貴は、玄関に靴を脱ぎ捨てたかと思えば、そのままの勢いで太一の首っ玉に腕を回してしなだれかかってきた。
ここまですれば、なにか太一が反応を返してくれると期待しているように見える揚貴だが、しかし太一の反応は鈍く表情も暗い。
まったく何でこんなにも暗いのかと、揚貴が原因を探ろうと部屋を見渡してみると、机の上に一冊の雑誌があった。
表紙にデカデカと『モフっ娘☆天国 vol.3 今日の気分は妖狐さん』という文字を見た揚貴は、驚いたように目を見開いてそれを見ていた。
そして独占欲が強い種族の魔物娘がそうするように、彼氏の不貞をなじるのかと思ったのだが、しかし揚貴は腕の中にいる太一を優しい力加減で抱きしめる。
「もしかして、こんな本を買ったのを私が怒るとでも思ったの?心配しなくても、こんなので怒ったりはしないわよ」
暗い表情の太一の耳元でそうつぶやいた揚貴だったが、太一の反応は安心するどころか、むしろその言葉と抱擁が癇に障ったようで、少し力を腕に込めて揚貴の抱擁を解いてしまった。
いくら痴話喧嘩で怒っていても、いったん揚貴抱擁を受ければ、それを拒否したことがない太一だったのにと、揚貴は驚いた様子で太一の顔を覗き込んだ。
「普通に謝ってくれるなら、君を許そうと思っていたのに。裏切られた気分だよ……」
太一が『君』と揚貴を呼ぶのは、彼が心底怒っている時だと知っていた揚貴は、身に覚えのない『裏切り』というキーワードと太一の怒気に、今度は逆に揚貴の表情が曇る。
「ねぇ、どうしちゃったの?私、たいちの気に障ること何かした?」
つい先日デートした時には、別れ際にあんなに熱いベーゼを交わしたのにと言葉を継ぎ足しながら、揚貴は恐る恐る原因を聞きだそうとした。
そんな揚貴の様子に、太一は体にたまった怒気を吐き出すように深々とため息を吐き出すと、『モフっ娘☆天国 vol.3 今日の気分は妖狐さん』のドックイヤーのついた場所を開いた。
そこにはタイトルに違わず、目に黒い線を入れられた数々の妖狐の写真が貼り付けられていた。
しかしそのどれも服を肌蹴て乳房を出していたり、スカートを捲り上げてパンツを見せ付けていたり、パンツを脱いでお尻を丸出しにしながら数本の尻尾をピンと立てていたりと、男性の劣情を煽るようなポーズをとっていた。
AVやグラビアなどで見かけたことがない彼女らは、おそらく一般人――つまりはこの本は、素人の裸の写真の投稿で成り立っている雑誌ということだろう。
「まさか他の妖狐のことで私を詰っているわけじゃないわよね?」
しかしながらその本と自分とを繋ぐ接点が判らないのか、揚貴は伺うように太一の表情を見た。
太一はそんな揚貴の様子に、少し意外そうな表情を浮かべた後、苛立たしげに一枚の写真を指差す。
そこには真っ裸の妖狐が肩幅に足を開き、恥ずかしげもなく肌色を曝しながらダブルピースをしている写真だった。
「これが、何?」
「……これ君だろ、揚貴?」
その言葉に再度その写真に写った人物に目を移す揚貴。
目に黒線が大きめに入っているので顔は良くわからないが、確かに顔立ちや髪型は良く似ているし、尻尾の数も三本ある。
投稿者の名前にはHNで『YOKI』と書いてあり、揚貴を連想させるものだった。
「まさか髪型や尻尾の数が同じだからってだけで私のことを疑うの?」
「俺だってそれだけだったら、君の事を疑ったりしないさ。でも、妖狐マイスターの噦里(しゃっくり)のやつが『これ前に写真で見せてもらった太一の彼女じゃない?毛並みそっくりだし』って言ってきたんだぞ。あいつが妖狐の毛並みを見間違うなんてありえない」
出てきた噦里という名前に、すこし揚貴は驚いた。
妖狐と稲荷を娶り、さらには数体の狐火と取り付かれた狐憑きを侍らし、噂では他の獣系の魔物娘も手篭めにしていると言われている、妖狐の間で噂になっている大物人物である。
「そんな超大物となぜ知り合いなの?」
「前にあった妖狐婿の会のOFFで知り合って意気投合して、時折ネット上でチャットする仲だよ?」
世間は狭いというが、噂の人物と自分の彼氏が友人だなどと思わなかった揚貴は目眩を覚えた。
噂の狐マイスターがそういうのなら、この写真の人物と揚貴の毛並みが似ている――言い換えれば、ほぼ同一人物であると言っているのだ。
しかし揚貴には覚えがない。
太一と付き合う以前の時代ならばこういうことをしても可笑しくはないと、揚貴自身も思ってはいたが、太一と恋人関係を結んでからは彼一筋なのだ。
誰とも知らない男においそれと肌色を曝すのは彼女の意に反する。今日来ている胸の開いた服も、太一の視線を集めるためというのもあるが、彼と連れ立って歩くとき他人が胸元に視線を向けると、太一がいやな顔をして剥れるのも計算に入れた服装なのだ。
だからこんな痴女紛いの格好を雑誌に投稿するなんて――と考えがいたったところで、揚貴はひとつの可能性を思いついた。
「もしかして……ちょっと待ってね」
憮然とする太一を尻目にどこかに電話をかけ始める揚貴。
「あ、もしもし私。私の彼氏見たいって言ってたじゃない?うんそう、その彼がねあんたに会ってみたいって。それで場所だけど――」
揚貴から出てきた言葉に驚く太一。
それもそうだろう、太一は一言も誰かに会いたいなどと言ったことはないのだ。
そもそもこの雑誌の件さえ解決すれば、明日の朝日が昇るまで揚貴とくんずほぐれつするつもりだったのだ。
だからこの場に第三者を呼ぼうとしている揚貴へ、やめるように口を開こうとしたのだが、一瞬早く揚貴の電話が終わってしまった。
「もうちょっと待ってて、そうしたらそれが誰か判るから」
もう揚貴の中では雑誌の事は解決したことなのか、太一に甘えるように体を擦り付けてきた。
揚貴の様子にどうやら電話の相手が、この雑誌と何らかの関係が有り、この写真の人物は揚貴ではないと踏んだ太一は、ため息を吐いたあとで揚貴をぎゅっと抱き寄せて、疑った侘びをするように口にキスをした。
程なくして扉を開けて現れたのは、揚貴と瓜二つの妖狐。
「こんちわー!揚貴の姉の躍貴でーす」
「なにしれっと嘘を吐いているのよ。姉は私で、あんたは双子の妹でしょうに」
揚貴の隣に鏡があるかのように、二人はとても似ていた。
顔立ちから身長髪型に加え、体型も尻尾の数も型にはめた様にまったくの同じ。
太一には判別できないが、おそらく二人の毛並みも、写真越しでは判別できないほどにほぼ同じことだろう。
唯一違うのは二人の涙黒子の位置。
揚貴は右目の目尻の下にそれがあり、一方の躍貴は左の目尻の横にあった。
「双子?妹がいたなんて初めて聞いたけど?」
いまだに状況がうまく飲み込めないのか、太一は目を白黒させつつ、思いつた事を口に出している様子。
そんな太一の言葉に、一瞬揚貴は言葉を詰まらせた。
「なになに〜?揚貴たら私の事を内緒にしていたの〜?」
躍貴の弄り口調もほぼ揚貴と同じだった。
「うっさい!あんたがいっつも私がいいな〜と思った男を横取りしてきたじゃない!無闇にたいちに教えて、あんたに寝取られてたまりますか!」
きーきーと良く響く声で騒ぐ揚貴に、やれやれといった感じで首を横に振る躍貴。
そしてそんな様子の躍貴に揚貴は、『モフっ娘☆天国 vol.3 今日の気分は妖狐さん』の例のページを突きつけて、この写真に写っているのは躍貴だろうと問い詰めた。
少しは言いよどむかと思いきや、躍貴はあっさりとそれが自分であると認めた。
「なになに?彼氏さん、この写真見ておちんぽおっきおっきしちゃったの?うれしい! お礼に舐め舐めしてあげようか?」
何をどう勘違いしたのか、躍貴は口の中で舌を蠢かせる様子を太一に見せ始める。
「というか、あんた彼氏居るでしょ!あいつどうしたのよ!!」
「いやー。なんかこう、おちんぽのあたり具合が気に入らなくて、一回ずっぽずっぽしたら飽きちゃったから別れちゃった。あ、でも大丈夫よ。ちゃんと他の魔物娘を紹介して、今ではその娘と仲良く暮らしているから」
証拠というわけでもないだろうが、携帯のメモリーからその彼と思しき人物が、眼鏡を掛けたアオオニと仲良くピースをしている写真を取り出し、それを揚貴に見せた。
揚貴はあまりにも妖狐らしい妹の行動に、頭が痛くなる思いがした。
「もしかしてこの写真の男って……」
「言わないで……」
写真を横から除きこんだ太一がそう呟くのを、揚貴は途中で遮る。
その太一の予想通りに、写真の男を揚貴は一時期だが良いなと思っていたのは事実である。
「はぁ……もう用は終わったから、帰って良いわよ」
「え〜、なにそれ。お姉ちゃんの彼氏をもっと紹介してよ〜」
「これからたいちとイチャラブするんだから、あんたは邪魔なの!というか、調子のいいときだけ私を姉扱いしないの!」
二人の関係をこの短い間で理解していた太一が、余計な事を言うなと顔を覆う。
そして太一の嫌な予感は的中し、イチャラブと聞いた躍貴は、獲物を見つけた狐の様に目を爛々と輝かせていた。
「じゃあ3Pしよ3P」
「やるわけないでしょう!さっさと帰りなさい!」
「良いじゃん。ちょっとだけ味見させてよ〜」
二人の喧々とした言い合いを尻目に、置いてけぼりを食らう羽目になった太一は、あの写真が揚貴ではなかったことを真に理解し安堵するとともに、少しだけもやもやを胸に感じていた。
それは躍貴が男の事をただの性欲の道具にしか思っていない節があることと、そんな考えを持っているのが揚貴と同じ顔をしているのに、漫然とした怒りが生まれていた。
しかしその怒りをただぶつけてもするりと受け流しそうな躍貴の様子を見て、太一はなにか一計を案じたようだった。
「え、どうしたのたいち?」
ぐいっと言い合いをしている揚貴の方を引っ張った太一は、見上げる愛しい彼女に視線で自分に考えがあると伝える。
その視線の意味に恋人である揚貴は感じ取ったようだが、躍貴には通じはしなかった様で、それだけの二人の違いでも太一は少しだけ心がすっとした思いを感じていた。
しかし当初に思いついた通りに、躍貴に近づいた太一は彼女の金髪の髪を乱暴に引っつかむと、後ろに引っ張り無理やり上を向けさせる。
「いい加減にしろよ。お前みたいな糞ビッチの相手なんぞ誰がするかボケ」
太一はそう躍貴を上から睨み据えながら、ドスの利いた声で言い放った。
その太一の意外性のある一面のあまりの迫力に、これはさすがの躍貴も幻滅しただろうなと揚貴は考え、太一もその心算で演技をしたのだが、しかし相手は二人の予想の上を行く人物だった。
「あぁん、その蔑んだ瞳と迫力ある声、なんかすごくイイ!今まで何か違うと思っていたけど、私っていじめるよりいじめられるのが好きだったのね!!」
新しい境地というか、自分の本当の性欲に目覚めたかの様に、躍貴は背筋をゾクゾクと震わせていた。
「踏んでぇ〜♪ その瞳で卑しいメス狐の私の頭を踏みつけてぇ〜ん♪」
そして何を思ったのか、その場に蹲り太一の足元にすり付く躍貴。
彼女の突如の変化に、太一はどうしたらいいのかと揚貴に視線を向けるが、揚貴も揚貴で自分と血のつながった妹がこんな変態だとは思いたくないのか、太一に返す視線に謝罪の色が浮かんでいた。
「お願いします太一さん、いえ太一様。踏んで詰って、罵って〜♪」
ああもうどうにでもなれと、太一は求めに応じて躍貴の後頭部を踏み、そして床に押し付けるように力を込めた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
床に頬を押し付けられながら、歓喜と性欲に染まった赤い顔で太一へお礼を言う躍貴。
そんな彼女の様子をみて、どうしてこうなったと太一と揚貴は頭を抱えてしまう。
「ああん、止めないで下さい〜。頭の踏み心地が悪いのなら、背中でもお尻でも尾っぽでも良いですから、もっと力強く踏んでください〜♪」
太一が軽く足を浮かそうとしたのを察知したのか、躍貴は逆にその足に押し付けるように頭を上げて、さらにはおねだりにも似た調子で太一に甘えた口調でお伺いを立てている。
太一は視線を揚貴にちらりと向けると、揚貴は手を犬を追い立てるように振って、暗に躍貴の気が済むようにしてくれと合図する。
実の姉がそう言うならと、太一は後頭部を踏んでいた足を躍貴から浮かせることなく、首から背中へ掛けてを何度か力を込めて踏みながら移動し、そして背中からお尻へと踏む場所を移していく。
「イイ〜ッ!あんッ、もっと強くして、息が出来ないくらいに踏んで下さい。あんっ、もっと背中を、いえ、お尻で、いいですぅ〜んッ♪」
なんか段々とマッサージしているような気分になった太一は、ふとなんで躍貴のお願いを聞いているのかと疑問に思ったようだ。
太一は揚貴の彼氏なので揚貴のお願いを聞いて上げるのは分かるが、今日会ったばかりの躍貴の言う事を聞く理由はないと気が付いたようだった。
「ふん。女狐に情けをやる義理は無かったな。もう用は終わったから帰って良いぞ」
「太一様、いえご主人様。もっとこの女狐を苛めてください。ああん、でも、冷たくあしらわれるのもイイ!」
何をどうやっても駄目だと判断したのか、太一と揚貴は顔を見合わせてため息を吐いた。しかしその間も躍貴は飼い犬が主人に甘えるかのように、太一の足元に体を擦り付けている。
どうしたものかと目と目を合わせて太一と揚貴は言葉無く話し合い、無視することに決めたようだ。
そうなるとちょろちょろされると邪魔だからと、太一は大きめのバスタオルを取り出して部屋の床の一角に敷き、そこを犬を呼ぶようにぽんぽんと叩く。
すると太一の言いたい事が分かったのか、躍貴はすぐさまそのバスタオルの上へ犬のように這って進み、そこでお座りした体勢で太一の事を見上げるという、なんとまあ立派な犬になっていた。狐なのに。
「じゃあ今からお前をいないものと扱うから、そこでオナニーでも何でもしてていい。だがそこから一歩も出るなよ」
「わんわん!」
「お前は狐だろう」
「こんこん!」
その頭を二度撫でたあと、太一はその発言通りに無視し始め、揚貴の方も妹の奇行に疲れたようなため息を吐いた後で無視して、太一との甘い時間をすごそうとし始める。
「たいち〜。そういえば、あの雑誌の事で私にちゃんと謝ってなかったわよね」
「疑ってごめん。揚貴があんなことするわけないって、信じきれなくて」
「じゃぁ、どうしたらぁ、私が太一の事を許すか、わかるわよね?」
「何時もの事で許してくれるなら、よろこんで」
ゆっくりと二人の顔が合わさり、ぐちゃりと濡れた舌が絡み合う。
そして二人はお互いを貪りあうかのように、お互いの髪に手を絡ませて引き寄せながら、顔の角度を何度と変えながら、唇を合わせあい舌を溶け合うほどに絡ませる。
二人のそんな熱い情事の光景を間近に見せられて、マゾ狐と化した躍貴は放置プレイと合わせてたまらなくなったのか、犬のお座りの格好のまま片手で自分の股間をまさぐり始める。
しかし二人はそんな躍貴が目に入っていないかのように激しいキスを繰り返し、時折太一が揚貴の耳や尻尾を愛撫し、揚貴は太一の背筋に指を這わせながら、階段を上るかのようにお互いを高めていく。
やがて太一の片手が揚貴の胸と股間へ伸び、そして服の中を弄って何かに気が付いたかのように、唇を揚貴から放した。
そしてキスを拒否されてムッとする揚貴の耳元へ口を寄せながらも、躍貴にも聞こえるような音量で言葉を紡ぐ。
「もしかして揚貴って見られて感じる変態だったの?」
そう言いながら股間に伸ばしていた手を揚貴の服の下から取り出すと、もうすでにべっとりと手に愛液が付着していた。
よく見ればもう股間部の布は水分を吸って色が変わっていた。
「ち、違うわよ。これは太一だからで」
「何時もより濡れている気がするけど。妹が妹だから、姉も姉と言うことかな?」
「ムッ……私は妹みたいなドエムじゃない。不快だわ」
太一の発言が本当に癇に障ったのか、ぎりぎりと太一の頬をつねる揚貴。
そんな揚貴に悪戯がすぎたと、頬を捻られながら笑って反省した様子の太一。
「ごめんごめん。揚貴は甘エロ派だったよな」
「そうよ。だからもぉっと、キスしよ♪」
痛む頬をさすりながらも、その要求に応えて。今度は見ている方が胸焼けを起こしそうな、蜂蜜のような愛情たっぷりのねっとりとしたキスをする二人。
一方そんな二人の仲睦まじい様子に、たまらなくなった様子の躍貴は、器用にバスタオルからはみ出す事無く全裸になると、きっちりとバスタオルの上で服を畳み、そして外気に曝された股間と胸をこねくり回し始めた。
「ふーん、躍貴は揚貴よりほんの少しだけ胸が控え目なんだね」
「だーめ。私の方だけ見ているの〜」
「見ているだけでいいの。弄っちゃ駄目?」
「たいちなら、許可してあげる。だけど乱暴に扱っちゃ駄目よ」
「分かっているって」
ゆっくりと服の下に手を差し込み、そしてブラを上にずらした太一は、ゆっくりと形を確かめるような円を描く動きで、揚貴の胸の根元を揉んでいく。
ブラがずれ露になった乳首が服に擦れて気持ちが良いのか、それともただ揉んでいるだけなのに、それが愛しい雄によるものだからか、体に感じる性感からゆっくりと揚貴の喉が伸びていく。
その伸びた喉を、太一は鎖骨の辺りから顎先まで舐め上げてあげる。
「あひゅぅ!」
「相変わらず喉元弱いね。猫みたいで可愛いよ」
「私は、狐だからぁんッ。猫って云われても嬉しく、無い……」
ぺろぺろと喉元を舐める太一の舌から逃れようと背筋を反らせる揚貴に、それを舐め続けて倒れる寸前で抱き寄せた太一は、そのまま揚貴をベッドの上へ横たえる。
そして喉元を舐め続けつつ、揚貴のボトムスを最初に取り払ってしまう。そして下着も脱がせて股間を撫で回しながら、もう一方の手で器用に上を脱がしてついでにブラまで取り払ってしまう。
「じゃあ今度は私の番ね」
股間を弄らせながら、太一の上着を腹から撫で上げるようにして脱がした揚貴は、今度は太一の尻を撫でるようにズボンを脱がしていく。
「あんッ、こんなすごぉぃ……」
こんなじっとりとした愛し方をした事が無かったのか、躍貴はしきりに太一が揚貴にする様子を真似て、自分の喉元を手で撫でつつ股間をゆっくりとなじる様に愛撫して、思わず喉から声が漏れてしまう。
しかしもう二人の世界に入っているのか、太一と揚貴はそんな躍貴の痴態に目を配る事無く、お互いをお互いに高めようとお互いの股間に顔を付けていた。
「んっ、じゅぶじゅぶ、んっんっ」
「ぺろぺろ、じゅるるる、ちゅぅうぅ」
揚貴は太一の陰茎を口に含んで頭を上下に動かし、太一は揚貴の膣を舐め、愛液を吸い取り、陰核を吸い付いて愛撫する。
躍貴も太一に自分が愛撫されていると妄想しているのか、喉を撫でていた指を二本口の中に入れ、それを吸い舐めながら股間を弄る手も太一の口の動きに合わせて動かしていく。
「揚貴。もうそろそろ」
「分かったわ、たいち」
揚貴の股間から顔を離した太一がそう声をかけると、揚貴の方も太一の股間から顔を離し、ベッドの上を移動していく。
やがて三本ある尻尾を広げて寝そべる揚貴に膝立ちの太一が向き合うと、揚貴がM字に開脚して自分の秘所を太一に見せ付けるかのように曝す。
しかもそれだけでは飽き足らず、自分の手指で左右から陰唇を開いて、愛液を垂れ流し愛しい雄の剛直を受け止めようと蠢く膣口をも広げる。
「ほぉら、たいちぃ。ここに頂戴」
「慌てない慌てない。キスしながらが好きだったよね」
「覚えていてくれて嬉しい♪」
揚貴自身が広げた膣口に亀頭を少しだけめり込ませた太一は、揚貴の頬を撫でるとキスをする。
うっとりと揚貴はキスを受け入れながら、股間から離した手を太一の首に回して引き寄せ、そしてゆっくりと舌を太一の口内へ侵入させた。
太一はその舌の下へ自分の舌を潜り込ませると、その根元から舐め上げつつ、腰をゆっくりと突き入れて膣内へ陰茎を進入させる。
「むぅ〜〜〜〜んッん!!」
ずりずりと進入していく陰茎と、舐め上げる舌の動きがシンクロし、やがて陰茎が子宮を持ち上げる時に太一の唇が揚貴の舌を挟み込む。
まるで膣内の状況を口内で再現したかのような太一の愛撫が御気に召したのか、揚貴は両手足で太一を抱き寄せ、子宮口も太一の陰茎の先を吸い付いて感謝の意を示していた。
そんな二人の様子をもっと近くで見たいのか、タオルからはみ出すギリギリまで近寄り、さらには首を伸ばしながらも股間を弄る手を止めない躍貴。
「今日はこのまま一回射精して」
「了解」
そして太一は揚貴に両手足で抱きつかれたまま、腰をゆっくりと振っていく。
ぞろぞろと雁首で膣内をゆっくりと撫で上げられ、ぎりぎりまで引かれた後でまた押し入ってくる太一の陰茎に、揚貴の体は快楽から背筋が伸びてしまう。
しかし太一はそんな揚貴を見慣れているのか、首元にキスを降らせながらも決して腰を止めようとはしない。
じゅくじゅくと二人の結合部が粘ついた音を上げる中、ちゅくちゅくと自分の股間を弄る躍貴の手から発せられる音が混じる。
「あんあん、たいち、たいち。私の中、気持ち良い?」
「何時も何時までも、最高に気持ちいよ」
じゅくじゅくと鳴く股間の音に消されないように、多少大きめの声で確認しあう二人。
全く同じ体勢でも飽きないようにか、時折太一がキスをする場所を変えたりしつつも、腰の動きは的確に揚貴の弱点を付いているのか、その腰が突き入れられるたびに、段々と揚貴の体が全体的に性感により朱色に染まり始める。
しかしそれをずっと続けていれば、やがて揚貴の体に限界が訪れる。
「たいち。たいち。もう射精して。もうすぐ、だからぁ」
「じゃあまず軽く一回目だね」
「いくよ、いくよ。ちゃんと、どうじだからね」
「大丈夫。タイミングは掴んでるよ」
「い、いぃぃいくぐぅうぅ!らしてぇだしてぇ!!」
「そんなに締め付けたら、子宮をたたけないだろ!」
「きたぁあぁ!!びゅるびゅるでてるぅ!!」
子宮の口を亀頭で叩きながら、子宮の中へと子種を注いでいく太一に、その子宮に充填される暖かい液体の感覚に、揚貴は体全体を縮こまらせながら体の各所を絶頂感に任せて震わせる。
「すっごい。びくびくしながら、揚貴に出してる」
それを目の当たりにしている躍貴も、それに合わせて陰核を自分で捻り上げて強制的に絶頂させて、疑似体験を続けている。
「じゃあ次は別の体位だね」
「やぁだぁ。抜いちゃ、やだぁ」
「揚貴はいつもイった途端に甘えん坊だね。大丈夫、君の一番好きな体位だし抜かないから」
「うん」
一度キスを交わした後、揚貴を抱え上げ繋がったまま一旦対面座位の形にし、そのままぐるりと背面座位にした後でベッドに体を下ろして後背位の体勢へ。そして片足を小脇に抱えた太一は、のしかかって揚貴を押し潰すようにし、そしてぴったりと揚貴の背中と自分の腹部をくっつけながら腰を降り始める。
今の体位を四十八手で表すならば、『窓の月』という随分とマニアックな体位である。
しかしこれは何も太一の趣味というわけでは無い。
「後ろから犯されるのが好きなくせに、ぴったりとくっ付きたいなんて、何時もながら我が侭な甘えん坊だね」
「だってぇ、イクと太一ともっとぴったりくっ付きたいけど、私が一番感じるのバックなんだもん」
「だからこの体勢が大好きなんでしょ。俺がぴったりと揚貴の背中にくっ付き、三本の尻尾でぎゅっと抱きしめながら、バックで小突かれるこの体位が」
「うん。すきぃ、だいすきぃ。だからもっとなぶってぇ〜♪」
そのまま嬉しそうに太一に小突かれ続ける揚貴。
そんな自分を無視し続ける二人の仲睦まじい様子を眺めながらも、しかし放置される喜びから一層股間を弄る手の動きが早くなっていく躍貴の姿は、本当にドエム妖狐だった。
高かった日も沈み、やがて部屋の中が真っ暗になる。
ベッドでの二人の睦み合いは、揚貴が達しすぎて疲れたのか眠ってしまいお開きになってしまっていた。
幸せそうに眠る揚貴の頭をなでていた太一だったが、ふと視線を感じて横を向くと、そこには自慰のし過ぎで腰をガクガクと震わせながらも、熱っぽい視線を向ける躍貴の姿。
さてどうしたものかと思案顔の太一だったが、ゆっくりと揚貴に入れっぱなしになっていた陰茎を抜いた。
「んッ……」
眠っていても確りと性感を感じているのか、揚貴がむずがるように声を漏らし、それをなだめるかのように太一が頭を撫でると、再度幸せそうな顔つきになり、ベッドの上で丸まって寝なおしてしまう。
それを確り見届けて太一はベッドから降り、躍貴の目の前まで歩いていく。
揚貴の愛液と太一の精液がべっとりとこびり付いた、太一の半萎えの陰茎を見た躍貴は、思わずごくりと生唾を飲み込んでしまう。
「あーあ、バスタオルがぐしょぐしょで、床にまで染みてるや。これどうするの」
「そ、それは」
「返事はどうするんだったっけ?」
「こ、こん……」
躍貴の視線が何処に向かっているのかを知っていながら、それを意図的に無視するかのように話し始めた太一の様子に、何かを感じ取った様子の躍貴の股間から愛液がとろりと流れ出て、またバスタオルを濡らす。
そんな期待に溢れている躍貴の様子に、しかし太一は焦らす事無く応えてあげる事にしたようだ。
「でも言いつけは守ったようだね」
「こんこん!」
確りとバスタオルの上に座り続けた躍貴を労う様に太一が優しく頭をなでると、躍貴は歓喜の鳴き声を上げつつぶんぶんと尻尾を振る。
そして太一はまだ半乾きの陰茎をずいっと躍貴に差し出す。
「じゃあご褒美だ。確り味わえよ」
「こん!じゅぷる、じゅじゅじゅ、じゅるるるぅ〜〜♪」
差し出された陰茎を嬉しそうにしゃぶりながら、太一に上目遣いで気持ち良いか視線で尋ねる躍貴。
どうやら躍貴はこの短い調教ともよべない行為で、もう太一無しではいられない体になってしまっているようだ。
「ちゃんとこれからも俺の言う事を聞くいい子でいたら、舐めさせるだけじゃなく、ご褒美に犯してやるからな」
「じゅるじゅるじゅじゅ〜〜♪♪」
現にこんな酷い扱いをされているのに、太一が頭をぞんざいに撫でるだけで三本の尻尾が、飼い主に褒められた飼い犬のようにブンブンと良きよいよく振り回してしまうのだから。
12/04/20 20:14更新 / 中文字