ジョロウグモに吸い付きたい
俺はジパングに住むしがないかんざし作りの職人だ。
俺の作品はちょっと手は込んでいるが、お武家の奥方に愛されるような豪奢なモノではないし、豪商が望む小人(ドワーフ)達の作るような精巧なものじゃなく、町の小娘でも少ない小遣いで遣り繰りさえすれば手の出せるような安いもの。
それについて俺に不満は無い。茶屋で団子を食っているときや町をふらついているときに、町娘の髪にこっそりと差し込まれた俺の品が刺さっていれば、それで俺は幸せなのだ。
お蔭様で取引先の店の方には俺の作を持ってってくれる女性がたびたび来るそうで、ありがたい。だからといって生活は裕福とは言いがたいし、贅沢なんて茶屋の団子が精々だ。
そんな生活に不満を漏らすことなく、ついてきてくれる俺の女房には普段から頭が上がらない。
俺の女房は俺にもったいない位の器量よしで、美人で可愛らしいジョロウグモと呼ばれる妖怪(魔物娘)だ。
女房は俺に裕福になってもらいたいらしく、時折俺に自分が反物作りをすればもっといい生活が出来るなんて言ってくれたりもするが、俺はそれを頑として聞いてやらない。
飯が食えるぐらいには稼げているのに、さらに女房に働かせてまで贅沢なものなんぞ食いたくも無い。それに女房には内緒にしているが、何より他の男に俺の女房の糸で作られた服を着られるなんて我慢ならん。
まあそんなこんなで俺は幸せに暮らしているわけなのだが、その件の女房には困った癖があるのだ。
それは俺が品を店に納めるときに、必ず店までくっ付いてくること。
仲のよろしいことでと笑ってくれる店の旦那方には常々申し訳なく思うのだが、その旦那方にこれはうちの女房が女性――それこそ他の洒落の分かる妖怪が集まる店に俺を一人で向かわせて、誰かに横取りされはしないかと変な気を回しているからだとは言えるわけがない。
そして店で俺が店の常連客や女中と楽しく話しなんぞすれば、その時は顔は笑っているが夜が来るとその時のことを蒸し返し、朝まで俺と繋がることになるのだ。
最初は面食らっていたが、夫婦になって三年もたてば妻の堪忍袋の緒の強さは把握できるようになり、女性と話をしても蛇女(ラミア種)のように嫉妬に狂わせるようにはならなくなった。
……と思っていたのだがなあ。
「本当にお前さんは、しょうの無い人だこと」
いま俺は帳の下りた俺の家――職人長屋の一室で女房に糸でぐるぐる巻きにされていた。
「まて俺には心当たりが無いぞ。今日は店に品を納めて、談笑なんぞせずに家に帰ってきたじゃないか」
「あらそうだったかしら?でも、店の娘に股間を撫でられて嬉しそうだったじゃない」
いやそれは店の番頭(男)と次の仕事について伺っているとき、緊張した面持ちの新入りの女中が持ってきた茶を俺の股間にぶちまけて、それを拭いてくれただけだ。それに嬉しそうなんて言ってくれているが、彼女が涙目になって何度も謝るものだから、気の毒になって半笑いして許してやっただけのことで下心はまったく無い。
「いやだからそれは、ムグゥ……」
「私というのがありながら、他の女に色目使うなんて……私は怒っているんですよ?」
誤解を解こうと口を開いた瞬間に口に糸で猿轡をされ、そのまま俺は女房に押し倒された。
そして女房は擦り寄るように俺に身体を預け、蜘蛛の足で器用に俺の股間の布を肌蹴ていく。
「やっぱり他の娘に眼が行かない様に、定期的にちゃんと躾けないといけないのかしら?」
「ふうぅ!」
そう言葉を残して俺の一物に舌を伸ばしゆっくりと舐め上げていく。たまらず鼻から空気が抜け、体が快楽に反応して反ってしまう。
俺のその反応に気を良くしたのか、竿の部分に唇で吸い付いた後に、亀頭の傘の部分を丁寧に舌で舐め取りっていく。やがてそんな妻の様子に反応して出てきた先走り汁を、ぬらぬらと光る舌の先で味わうように鈴口をこねくり回すように愛撫をし、やがて汁の量が多くなってきたのを感じたのか、俺の珍宝を彼女は全て口の中に納めると尺八を始めた。
「ん、ふぅ……じゅるじゅる……」
「ふー、ふー!!」
唾液でヌルヌルと滑る口内で舌を亀頭部分に絡ませて攻めつつ、竿を彼女の艶やかな唇を窄ませて根元から傘が引っかかるまでしごき上げ、尿道から出て来る先走りを吸い抜こうとする。そしてそれが上下する度、腰を引き抜かれるような快楽が俺の腰を震わせた後、背骨を通って脳髄に到達し、理性や道徳をがりがりと鑢がけをしていく。
何時もより激しいその攻めに長々と耐えられるはずもなく、俺はたまらず口の中に精を放ってしまう。
「うぅうう!!」
「じゅるるぅん……うんぁ……こっひのお前さんは、わらひにぞっひょんだと言うれに、お前さんのおめめは何で他の娘に向かってしまうらの」
精を吐き出しぐったりとする俺を妻は抱き起こすと、俺の目の前で口を半開きにして中に出した精液を舌で唾液と混ぜ合わせるのを見せ付ける。
妻の赤い舌が黄みがかかった白濁液から飛び出しそして帰るたびに、ぐちゅりぐちゅりと淫靡な響きが妻の口の中から生まれる。そんな光景を見せられた俺は、妻の口から視線を外すことが出来なくなってしまった。
それを確りと見せつけて満足したのか、妻はいったん口を閉じてゴクリと口にあるものを嚥下する。そして唇を一舐めした後、再度俺に口の中を見せる。
並々と注がれていた精は全て無くなっており、その存在を示すのは妻の口腔内に漂う青臭い匂いと、妻の唇の上に引かれた俺の精と妻の唾液が合わさったてらてらとした光だけだった。
(俺の妻の唇はこうも旨そうだったろうか……)
猿轡をされているのも忘れて、思わずふらふらと妻の唇に吸い付こうとしたが、妻は俺の肩を掴むと畳へと押し付けた。
離れてしまった妻の唇をせがむ様に俺は身体を捩ろうとするが、妖怪である妻の膂力に敵うはずも無く、腰を左右に振るだけに止まってしまう。
「なに?私の中に入れたくてしょうがないの?そんなに催促しなくてもちゃんとヌいてあげるわ」
「ふむぅう!」
違うと叫びたくても猿轡がそれを邪魔をする。それがもどかしくてしょうがない。
(ああ、いま妻の幸せに歪むその唇に吸い付けたら死んでもいいとすら思っているのに、どうしてこの邪魔な糸は噛み千切れないのだ!)
顎に力を入れて噛み切ろうとしてもビクともしない事に怒りを感じ、その怒りは向かう先を求めて縛られて自由の無い身体を反ったり戻したりを繰り返えさせる。
「今日のお前さんは何時に無く積極的ねぇ」
そんな俺の様子を妻は活きの良い獲物を見つけた捕食者のような嗜虐的な笑みで見つめると、服を脱ぎ捨てて騎乗位の体制を取ると、横たわる俺の一物を自身の膣の中へと押し込むと、膣と子宮口の全体で味わうかのように腰をひねって感触を確かめている。
「あぁん、いつ受け入れても、お前さんのちんぽは良いわ」
嬉しそうに快楽にまみれて頬を緩ませた妻の様子とは裏腹に、嗜虐的に歪んだ唇に口付けることも、だらしなく緩んだ口を塞ぐこともお預けを食らわせられた俺は堪らない。
「ふふせ!ふぬへ!」
「動いて欲しいって?もう、お前さんは可愛いしんだから」
猿轡を外せと喚く俺の言葉を無視して、妻は俺の胸に両手を置き、身体を蜘蛛の足で抱え込むと、ゆっくりと腰を上下させ始める。
「あんっ、はうぅん……あひゅん、くぅうん……ねえ、おまえさん、あふぅん、気持ち良い?」
自分の気持ちよい部分を俺の傘で擦る度に出る嬌声を押し殺しながら、そう俺に健気に尋ねてくれる妻。
普段なら俺の目の前で揺れる乳房や、ひねりを加えて俺に奉仕する腰と、玉の汗が浮かんだ顔に眼が向くのだが、いまの俺にとって妻が上下するたびに近づき離れる唇意外に興味は湧かない。
さらに言えば何時もならばとっくに果ててしまっているだろう下半身に与え続けられている刺激も、妻の口を吸えないもどかしさに負け、射精する程の快楽は得られない。
口にも珍宝にもお預けを食らい続ける形になった俺は、妻の押さえつけている手を跳ね除けて、そのだらしなく緩んだ口から零れたよだれを舐め取り口の中に戻してやる光景や、糸を力任せに破り妻を逆に押さえつけ腰を振りつつ朱色に魅力的に濡れた口を、俺の気が済むまで舐め回し蹂躙する事を妄想することで慰める。
その魅惑的魅力に俺の下半身は如実に反応し、今まではなんでもなかった刺激が唐突に我慢できるものではないものへと変わり、腰の筋肉が精液を精管から搾り出そうと蠢きだす。
俺は慌てて堪えようとするが、精子が押しとどめようとする俺の尿道しめる筋肉を、無理やりこじ開け妻の子宮へと向かう。
「あ゛ぁあ゛ああ゛ああ!!」
「あはぁ、きたああああああーーー!!熱い子種がびしゃびしゃ子宮を叩いてる!!」
妻の中にドクドクと音を立てるように注ぎ込みながら、半固形化した精子が俺の分身の気持ち良い部分を次々にゴリゴリと削る快感は俺の腰だけではなく腹と腿を震わせた。
やがて俺の腰の上で注がれた精の熱さにうっとりとしいた妻だったが、俺の視線が相変わらず妻を通して違う妻の光景を見ていることに気が付いたのか、俺の胸に置いていた両手を俺の頬へ添えるように移動させ、力を込めて俺の頭を掴んで俺の視線を想像上の妻から引き剥がして妻へと戻す。
「私以外の女を想像するなんて、随分余裕じゃない?」
ずいっと俺の顔を至近距離で覗き込む妻に、何時もなら首を振って否定する事だろうが、いまの俺は近づいた妻を見てしめたと唇を伸ばしす。しかし妻の口には爪の厚さ分の距離が足りない。
(どうしてだ!なんでだ!)
もう我慢の限界なんだ、お願いだからという思いを乗せて、首よ折れろとばかりに力を入れても、その距離は縮まらない。
「どうしたの?……ああ、もしかしてお前さん、私の唇を吸いたいの?」
俺のそんな異常な様子に首を傾げていた妻だったが、考えに思い至ったのか俺にそう尋ねてきた。
ようやく俺の気持ちが通じたと、首が動かないものの上下に動かすように力を入れるが、その俺の力の動きを感じた妻の嗜虐者の笑みが一層深くなるのを見て、今度は俺が首を傾げる番だった。
「でも、お・あ・ず・け・よ」
そう呟くと妻はいまだ硬い俺の一物を咥え込んだまま腰の動きを再開しつつ、妻の顔が近づいて俺の額に口をつける。
次に頬、顎下、首筋、耳たぶ、鎖骨と続いていく。そして俺の上半身のありとあらゆる所に、妻の形の良い朱色の二枚貝のような唇が降るが、俺の口には一度たりとも来ない。
すがるように視線で妻におねがいしてみても、猿轡越しに必死に訴えてもそれは変わらない。
「むがぁ!!」
何でだと問いかけると、妻は意地の悪い笑みを浮かべて顔を俺の耳元に寄せると、俺の耳を愛撫し始める。
「あむっ、ぺろ、ぬちゅ」
耳の縁を唇かのように啄ばみ、耳たぶを下唇のように優しく噛んで、耳の穴に舌を入れ込んで口の中でそうするように舐めまわす。
それを俺の口でやって欲しいのに何でだ如何してと行き場を失った感情が、だんだんと眼に涙が溜まりやがて一筋零れ落ち、えぐえぐと喉が嗚咽でなり始める。
「泣くほど私の口吸いたかったの?」
恥も外聞も無く俺は涙を振り落としながらブンブンと首を縦に振る。
「もうしょうがないひとだこと。それじゃあ、一緒にイッてくれたら思う存分口を吸わせてあげるわ」
俺はその妻の言葉にすがりつく様に、糸に巻かれて動けない身体を必死に動かして妻を攻め立てる。
「あんっ!そ、そんな、急にぃ動かさないでぇ!」
散々俺のことをなぶっていたから敏感になっていたのか、俺のぎこちない動きでも妻は確りと感じている。
それならこっちは妻の弱いところなど三年の間に知り尽くしているんだ、この動かない身体でもどうにか出来る。いやどうにかする。妻の唇を味わうことが出来るのならば。
「ら、らめぇ、子宮の入り口はびんかんっなのぉ!そんなにコツコツ当てたらぁ、だめなの、いっちゅうのぉ!!」
可愛らしい唇からそう声が漏れるのを利いた俺は、なら我慢せずに果てろとばかりに執拗に弱い場所を攻め続ける。
やがて妻の腰がぷるぷると震え始める。妻の絶頂する兆候だ。俺は更に攻め立てながら、三回目で遅くなった射精を促すように俺も努める。
「だめ、だめ、イく、イッちゃう。だめ、らめなの、らめ、らめええええぇええ!!!」
妻が俺に縋り付き全身を振るわせながら果てるのと同時に、俺は出来る限り妻の奥で精を解き放つ。
びゅくびゅくと鈴口から吐き出された精液は、最初は子宮の中に入り、子宮口を汚し、やがて硬さを失って吐き出される分が膣内を白く染め上げる。
やがて硬さを失った珍宝がにゅるりと妻の膣から零れ出ると、それを追うように妻の愛液と本気汁と俺の精液の混じった形容しがたい液体がどろりと零れ落ち、俺の腹の上を濡らしていく。
快楽で震えていた妻はゆらりと俺の上から退くと、俺の汁まみれの分身と腹を舐め始める。
そんなことはしなくて良いから早く唇を味わいたいと俺が思うと、それを察したのか妻の蜘蛛の足が俺を拘束していた蜘蛛の糸を切っていく。やがて猿轡まで切ってもらい、ようやく妻へ口付けることが出来ると妻へ眼を向ける。
妻は俺の一物から口を離し、焦れる俺の目の前で口を開く。そこには俺を汚していたものに妻の唾液が混じったもので溢れていた。
どういうつもりなのかと妻の眼を見ると、これでも私に口を付けることが出来るかと挑発した目つき。
何だそんなことかと、どこか箍が外れていた俺は遠慮なく待ちに待った妻に口を付ける。懐かしささえ感じる妻の柔らかい唇といやらしく動き回る舌を味わう。
一瞬驚いた表情をする妻だったが、直ぐに蕩けた表情になる。どうやら口付けを我慢していたのは俺だけではなかったらしい。
お互いに納得するまでぐちゅぐちゅと口内の液体を二人で舌を使って泡立て、口の中の液体が口端から零れ落ちる前に二人で等分して飲み込む。
「「ぷはぁ」」
空気を肺に取り込もうと大きく息を吐いて、それでも荒く呼吸を繰り返しながら妻を見つめる。
妻の瞳の中には夜の彼女特有の狩猟者の目つきと、それに隠れるように俺に酷いことをしていたと気が付いている良妻の慈愛の光が浮かんでいる。
「俺が愛しているのは君だけだよ」
そう呟き再度口を合わせる。さっきのように自分本位のものではなく、相手を気遣う唇を啄ばむだけの優しい口付け。
「そんなことを言って、私の唇が吸いたいだけではないの」
どうやら昼の店の出来事は妻にはもう関係ないようだ。
こうなればあとは仕置きや躾けではなく、夫婦の――いや、愛し合う男と女の時間だ。
「君の唇が魅力的過ぎるのが悪い」
「もうっ……じゃあもう一回」
「なんどでも」
そうお互いに口に言の葉を出すと、お互いの口を絡めて幸せをかみ締め、ほぼ同じ調子でお互いの股間に手が伸びる。
俺は何とはなしに、明日はお互いに足腰が立たないだろうなと未来予想図を描きつつ、淫楽へと興じていった。
俺の作品はちょっと手は込んでいるが、お武家の奥方に愛されるような豪奢なモノではないし、豪商が望む小人(ドワーフ)達の作るような精巧なものじゃなく、町の小娘でも少ない小遣いで遣り繰りさえすれば手の出せるような安いもの。
それについて俺に不満は無い。茶屋で団子を食っているときや町をふらついているときに、町娘の髪にこっそりと差し込まれた俺の品が刺さっていれば、それで俺は幸せなのだ。
お蔭様で取引先の店の方には俺の作を持ってってくれる女性がたびたび来るそうで、ありがたい。だからといって生活は裕福とは言いがたいし、贅沢なんて茶屋の団子が精々だ。
そんな生活に不満を漏らすことなく、ついてきてくれる俺の女房には普段から頭が上がらない。
俺の女房は俺にもったいない位の器量よしで、美人で可愛らしいジョロウグモと呼ばれる妖怪(魔物娘)だ。
女房は俺に裕福になってもらいたいらしく、時折俺に自分が反物作りをすればもっといい生活が出来るなんて言ってくれたりもするが、俺はそれを頑として聞いてやらない。
飯が食えるぐらいには稼げているのに、さらに女房に働かせてまで贅沢なものなんぞ食いたくも無い。それに女房には内緒にしているが、何より他の男に俺の女房の糸で作られた服を着られるなんて我慢ならん。
まあそんなこんなで俺は幸せに暮らしているわけなのだが、その件の女房には困った癖があるのだ。
それは俺が品を店に納めるときに、必ず店までくっ付いてくること。
仲のよろしいことでと笑ってくれる店の旦那方には常々申し訳なく思うのだが、その旦那方にこれはうちの女房が女性――それこそ他の洒落の分かる妖怪が集まる店に俺を一人で向かわせて、誰かに横取りされはしないかと変な気を回しているからだとは言えるわけがない。
そして店で俺が店の常連客や女中と楽しく話しなんぞすれば、その時は顔は笑っているが夜が来るとその時のことを蒸し返し、朝まで俺と繋がることになるのだ。
最初は面食らっていたが、夫婦になって三年もたてば妻の堪忍袋の緒の強さは把握できるようになり、女性と話をしても蛇女(ラミア種)のように嫉妬に狂わせるようにはならなくなった。
……と思っていたのだがなあ。
「本当にお前さんは、しょうの無い人だこと」
いま俺は帳の下りた俺の家――職人長屋の一室で女房に糸でぐるぐる巻きにされていた。
「まて俺には心当たりが無いぞ。今日は店に品を納めて、談笑なんぞせずに家に帰ってきたじゃないか」
「あらそうだったかしら?でも、店の娘に股間を撫でられて嬉しそうだったじゃない」
いやそれは店の番頭(男)と次の仕事について伺っているとき、緊張した面持ちの新入りの女中が持ってきた茶を俺の股間にぶちまけて、それを拭いてくれただけだ。それに嬉しそうなんて言ってくれているが、彼女が涙目になって何度も謝るものだから、気の毒になって半笑いして許してやっただけのことで下心はまったく無い。
「いやだからそれは、ムグゥ……」
「私というのがありながら、他の女に色目使うなんて……私は怒っているんですよ?」
誤解を解こうと口を開いた瞬間に口に糸で猿轡をされ、そのまま俺は女房に押し倒された。
そして女房は擦り寄るように俺に身体を預け、蜘蛛の足で器用に俺の股間の布を肌蹴ていく。
「やっぱり他の娘に眼が行かない様に、定期的にちゃんと躾けないといけないのかしら?」
「ふうぅ!」
そう言葉を残して俺の一物に舌を伸ばしゆっくりと舐め上げていく。たまらず鼻から空気が抜け、体が快楽に反応して反ってしまう。
俺のその反応に気を良くしたのか、竿の部分に唇で吸い付いた後に、亀頭の傘の部分を丁寧に舌で舐め取りっていく。やがてそんな妻の様子に反応して出てきた先走り汁を、ぬらぬらと光る舌の先で味わうように鈴口をこねくり回すように愛撫をし、やがて汁の量が多くなってきたのを感じたのか、俺の珍宝を彼女は全て口の中に納めると尺八を始めた。
「ん、ふぅ……じゅるじゅる……」
「ふー、ふー!!」
唾液でヌルヌルと滑る口内で舌を亀頭部分に絡ませて攻めつつ、竿を彼女の艶やかな唇を窄ませて根元から傘が引っかかるまでしごき上げ、尿道から出て来る先走りを吸い抜こうとする。そしてそれが上下する度、腰を引き抜かれるような快楽が俺の腰を震わせた後、背骨を通って脳髄に到達し、理性や道徳をがりがりと鑢がけをしていく。
何時もより激しいその攻めに長々と耐えられるはずもなく、俺はたまらず口の中に精を放ってしまう。
「うぅうう!!」
「じゅるるぅん……うんぁ……こっひのお前さんは、わらひにぞっひょんだと言うれに、お前さんのおめめは何で他の娘に向かってしまうらの」
精を吐き出しぐったりとする俺を妻は抱き起こすと、俺の目の前で口を半開きにして中に出した精液を舌で唾液と混ぜ合わせるのを見せ付ける。
妻の赤い舌が黄みがかかった白濁液から飛び出しそして帰るたびに、ぐちゅりぐちゅりと淫靡な響きが妻の口の中から生まれる。そんな光景を見せられた俺は、妻の口から視線を外すことが出来なくなってしまった。
それを確りと見せつけて満足したのか、妻はいったん口を閉じてゴクリと口にあるものを嚥下する。そして唇を一舐めした後、再度俺に口の中を見せる。
並々と注がれていた精は全て無くなっており、その存在を示すのは妻の口腔内に漂う青臭い匂いと、妻の唇の上に引かれた俺の精と妻の唾液が合わさったてらてらとした光だけだった。
(俺の妻の唇はこうも旨そうだったろうか……)
猿轡をされているのも忘れて、思わずふらふらと妻の唇に吸い付こうとしたが、妻は俺の肩を掴むと畳へと押し付けた。
離れてしまった妻の唇をせがむ様に俺は身体を捩ろうとするが、妖怪である妻の膂力に敵うはずも無く、腰を左右に振るだけに止まってしまう。
「なに?私の中に入れたくてしょうがないの?そんなに催促しなくてもちゃんとヌいてあげるわ」
「ふむぅう!」
違うと叫びたくても猿轡がそれを邪魔をする。それがもどかしくてしょうがない。
(ああ、いま妻の幸せに歪むその唇に吸い付けたら死んでもいいとすら思っているのに、どうしてこの邪魔な糸は噛み千切れないのだ!)
顎に力を入れて噛み切ろうとしてもビクともしない事に怒りを感じ、その怒りは向かう先を求めて縛られて自由の無い身体を反ったり戻したりを繰り返えさせる。
「今日のお前さんは何時に無く積極的ねぇ」
そんな俺の様子を妻は活きの良い獲物を見つけた捕食者のような嗜虐的な笑みで見つめると、服を脱ぎ捨てて騎乗位の体制を取ると、横たわる俺の一物を自身の膣の中へと押し込むと、膣と子宮口の全体で味わうかのように腰をひねって感触を確かめている。
「あぁん、いつ受け入れても、お前さんのちんぽは良いわ」
嬉しそうに快楽にまみれて頬を緩ませた妻の様子とは裏腹に、嗜虐的に歪んだ唇に口付けることも、だらしなく緩んだ口を塞ぐこともお預けを食らわせられた俺は堪らない。
「ふふせ!ふぬへ!」
「動いて欲しいって?もう、お前さんは可愛いしんだから」
猿轡を外せと喚く俺の言葉を無視して、妻は俺の胸に両手を置き、身体を蜘蛛の足で抱え込むと、ゆっくりと腰を上下させ始める。
「あんっ、はうぅん……あひゅん、くぅうん……ねえ、おまえさん、あふぅん、気持ち良い?」
自分の気持ちよい部分を俺の傘で擦る度に出る嬌声を押し殺しながら、そう俺に健気に尋ねてくれる妻。
普段なら俺の目の前で揺れる乳房や、ひねりを加えて俺に奉仕する腰と、玉の汗が浮かんだ顔に眼が向くのだが、いまの俺にとって妻が上下するたびに近づき離れる唇意外に興味は湧かない。
さらに言えば何時もならばとっくに果ててしまっているだろう下半身に与え続けられている刺激も、妻の口を吸えないもどかしさに負け、射精する程の快楽は得られない。
口にも珍宝にもお預けを食らい続ける形になった俺は、妻の押さえつけている手を跳ね除けて、そのだらしなく緩んだ口から零れたよだれを舐め取り口の中に戻してやる光景や、糸を力任せに破り妻を逆に押さえつけ腰を振りつつ朱色に魅力的に濡れた口を、俺の気が済むまで舐め回し蹂躙する事を妄想することで慰める。
その魅惑的魅力に俺の下半身は如実に反応し、今まではなんでもなかった刺激が唐突に我慢できるものではないものへと変わり、腰の筋肉が精液を精管から搾り出そうと蠢きだす。
俺は慌てて堪えようとするが、精子が押しとどめようとする俺の尿道しめる筋肉を、無理やりこじ開け妻の子宮へと向かう。
「あ゛ぁあ゛ああ゛ああ!!」
「あはぁ、きたああああああーーー!!熱い子種がびしゃびしゃ子宮を叩いてる!!」
妻の中にドクドクと音を立てるように注ぎ込みながら、半固形化した精子が俺の分身の気持ち良い部分を次々にゴリゴリと削る快感は俺の腰だけではなく腹と腿を震わせた。
やがて俺の腰の上で注がれた精の熱さにうっとりとしいた妻だったが、俺の視線が相変わらず妻を通して違う妻の光景を見ていることに気が付いたのか、俺の胸に置いていた両手を俺の頬へ添えるように移動させ、力を込めて俺の頭を掴んで俺の視線を想像上の妻から引き剥がして妻へと戻す。
「私以外の女を想像するなんて、随分余裕じゃない?」
ずいっと俺の顔を至近距離で覗き込む妻に、何時もなら首を振って否定する事だろうが、いまの俺は近づいた妻を見てしめたと唇を伸ばしす。しかし妻の口には爪の厚さ分の距離が足りない。
(どうしてだ!なんでだ!)
もう我慢の限界なんだ、お願いだからという思いを乗せて、首よ折れろとばかりに力を入れても、その距離は縮まらない。
「どうしたの?……ああ、もしかしてお前さん、私の唇を吸いたいの?」
俺のそんな異常な様子に首を傾げていた妻だったが、考えに思い至ったのか俺にそう尋ねてきた。
ようやく俺の気持ちが通じたと、首が動かないものの上下に動かすように力を入れるが、その俺の力の動きを感じた妻の嗜虐者の笑みが一層深くなるのを見て、今度は俺が首を傾げる番だった。
「でも、お・あ・ず・け・よ」
そう呟くと妻はいまだ硬い俺の一物を咥え込んだまま腰の動きを再開しつつ、妻の顔が近づいて俺の額に口をつける。
次に頬、顎下、首筋、耳たぶ、鎖骨と続いていく。そして俺の上半身のありとあらゆる所に、妻の形の良い朱色の二枚貝のような唇が降るが、俺の口には一度たりとも来ない。
すがるように視線で妻におねがいしてみても、猿轡越しに必死に訴えてもそれは変わらない。
「むがぁ!!」
何でだと問いかけると、妻は意地の悪い笑みを浮かべて顔を俺の耳元に寄せると、俺の耳を愛撫し始める。
「あむっ、ぺろ、ぬちゅ」
耳の縁を唇かのように啄ばみ、耳たぶを下唇のように優しく噛んで、耳の穴に舌を入れ込んで口の中でそうするように舐めまわす。
それを俺の口でやって欲しいのに何でだ如何してと行き場を失った感情が、だんだんと眼に涙が溜まりやがて一筋零れ落ち、えぐえぐと喉が嗚咽でなり始める。
「泣くほど私の口吸いたかったの?」
恥も外聞も無く俺は涙を振り落としながらブンブンと首を縦に振る。
「もうしょうがないひとだこと。それじゃあ、一緒にイッてくれたら思う存分口を吸わせてあげるわ」
俺はその妻の言葉にすがりつく様に、糸に巻かれて動けない身体を必死に動かして妻を攻め立てる。
「あんっ!そ、そんな、急にぃ動かさないでぇ!」
散々俺のことをなぶっていたから敏感になっていたのか、俺のぎこちない動きでも妻は確りと感じている。
それならこっちは妻の弱いところなど三年の間に知り尽くしているんだ、この動かない身体でもどうにか出来る。いやどうにかする。妻の唇を味わうことが出来るのならば。
「ら、らめぇ、子宮の入り口はびんかんっなのぉ!そんなにコツコツ当てたらぁ、だめなの、いっちゅうのぉ!!」
可愛らしい唇からそう声が漏れるのを利いた俺は、なら我慢せずに果てろとばかりに執拗に弱い場所を攻め続ける。
やがて妻の腰がぷるぷると震え始める。妻の絶頂する兆候だ。俺は更に攻め立てながら、三回目で遅くなった射精を促すように俺も努める。
「だめ、だめ、イく、イッちゃう。だめ、らめなの、らめ、らめええええぇええ!!!」
妻が俺に縋り付き全身を振るわせながら果てるのと同時に、俺は出来る限り妻の奥で精を解き放つ。
びゅくびゅくと鈴口から吐き出された精液は、最初は子宮の中に入り、子宮口を汚し、やがて硬さを失って吐き出される分が膣内を白く染め上げる。
やがて硬さを失った珍宝がにゅるりと妻の膣から零れ出ると、それを追うように妻の愛液と本気汁と俺の精液の混じった形容しがたい液体がどろりと零れ落ち、俺の腹の上を濡らしていく。
快楽で震えていた妻はゆらりと俺の上から退くと、俺の汁まみれの分身と腹を舐め始める。
そんなことはしなくて良いから早く唇を味わいたいと俺が思うと、それを察したのか妻の蜘蛛の足が俺を拘束していた蜘蛛の糸を切っていく。やがて猿轡まで切ってもらい、ようやく妻へ口付けることが出来ると妻へ眼を向ける。
妻は俺の一物から口を離し、焦れる俺の目の前で口を開く。そこには俺を汚していたものに妻の唾液が混じったもので溢れていた。
どういうつもりなのかと妻の眼を見ると、これでも私に口を付けることが出来るかと挑発した目つき。
何だそんなことかと、どこか箍が外れていた俺は遠慮なく待ちに待った妻に口を付ける。懐かしささえ感じる妻の柔らかい唇といやらしく動き回る舌を味わう。
一瞬驚いた表情をする妻だったが、直ぐに蕩けた表情になる。どうやら口付けを我慢していたのは俺だけではなかったらしい。
お互いに納得するまでぐちゅぐちゅと口内の液体を二人で舌を使って泡立て、口の中の液体が口端から零れ落ちる前に二人で等分して飲み込む。
「「ぷはぁ」」
空気を肺に取り込もうと大きく息を吐いて、それでも荒く呼吸を繰り返しながら妻を見つめる。
妻の瞳の中には夜の彼女特有の狩猟者の目つきと、それに隠れるように俺に酷いことをしていたと気が付いている良妻の慈愛の光が浮かんでいる。
「俺が愛しているのは君だけだよ」
そう呟き再度口を合わせる。さっきのように自分本位のものではなく、相手を気遣う唇を啄ばむだけの優しい口付け。
「そんなことを言って、私の唇が吸いたいだけではないの」
どうやら昼の店の出来事は妻にはもう関係ないようだ。
こうなればあとは仕置きや躾けではなく、夫婦の――いや、愛し合う男と女の時間だ。
「君の唇が魅力的過ぎるのが悪い」
「もうっ……じゃあもう一回」
「なんどでも」
そうお互いに口に言の葉を出すと、お互いの口を絡めて幸せをかみ締め、ほぼ同じ調子でお互いの股間に手が伸びる。
俺は何とはなしに、明日はお互いに足腰が立たないだろうなと未来予想図を描きつつ、淫楽へと興じていった。
11/07/27 15:54更新 / 中文字
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