連載小説
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終章 そうして二人は絵の中に
 あの二人が芸術学校を卒業して十年。
 彼らの絵は『印象派』とよばれ、巷で一大旋風を巻き起こしていた。
 二人は卒業した学校で教員となり、この印象派の後進を育てる傍ら、アルフェリドとアーリィに師事を求めに来た何人かを、直接二人で指導していた。
 そして画家として円熟期を向かえた二人の始めての個展が、フッフェンボッド芸術学校を有する大国――フェルエルで開かれていた。
「印象派か何か知りませんけど、何で私達がこんな所に来なければいけないんですかね、バフォメットさま」
「仕様が無いじゃろ、魔王様が御所望なのじゃから……」
 そしてその国に、バフォメットと魔女という取り合わせの二人が着ていた。
 彼女らは芸術系の商品を売買した資金で運営されている、魔界のサバトの代表とその右腕である。
 魔王様がちょっとだけ濃厚に旦那様と逢瀬を繰り返してみれば、知らない技法の絵画がこの世に生まれていたということで、一目本物を見てみたいと仰せになったのだ。
 しかし魔王様が、この国が親魔物国とはいえ人間界に来るのは色々な意味で危ないので、絵の買い付けの白羽の矢が立ったのが例のサバトであり、更に的にされたのが目利きに自信のあるトップ二人がこの街に来たのだった。
「……うわー、目茶苦茶並んでますよ」
「まあ今日が最終日じゃからなぁ……」
 とりあえず窓口でチケットを買い、列に並んでおく。
 やがてもぎりの小僧にこの個展の主催者を尋ね、その小僧が答えたのは、満面の笑みで揉み手しているぶくぶく太った中年の男性だった。
「おい、貴様」 
「はい!……なんで御座いましょうか?」
 勢いよくその男性が振り返った後に、声をかけたバフォメットとお供の魔女を見て、素人目には判らない程度に落胆したような笑顔でバフォメットに尋ね返した。
「貴様が主催者か?」
「いえいえ、主催者はこの絵を描かれたお二方で御座います。私はこの絵の売買を代理でやらせて頂いている画商でして」
「それならば貴様でよい。わらわ達はこういうものじゃ」
 隠す場所のない懐から、何処に入っていたのだと思わせる大きいカードの様な物を取り出すと、その画商に見せた。
「こ、これは申し訳ありません、まさかお二方が魔界のあの、」
「それ以上口に出したのならば、貴様の首が宙を舞う事になるぞ。もしくは消し炭がお望みか?」
「めめめ、滅相も無い。今回は絵を買われに?」
「無論じゃ。それで、『貴様が』わらわ達を案内してくれるのう?」
「も、もちろんで御座います。売約済みの絵画でも、方々手を尽くして確保しますので」
 頭をぺこぺこ、顔をにこにこ、手をもみもみさせてバフォメットに媚び諂う画商の男。
「ささ、此方で御座います」
 人を押しのけるようにして、画商が通り道をこじ開けるというその行為に、バフォメットは気分を害したのか、すこーしだけ眉を寄せた。
「あまり観ている人を邪魔するでない。ここは公共の場じゃぞ」
「はは、これは気が付きませんで。手前の落ち度で御座います」
 ぺこぺこと頭を下げて、バフォメットと魔女を先へ進ませると、丁稚小僧のように二人の後ろをついて回る。
 画商の事などどうでもいいと感じながら、周りの絵を見ていく。
 このとき身長が低いと、人の足の間を通って絵の真ん前に出られるから便利だ。
「確かにいい絵じゃな」
「お値段も相場以内ですね。人気の分を差し引いたらお買い得かもしれません」
「いやいや、ここからあの画商が幾らか持っていくと考えると、価格破壊じゃな」
 人ごみで画商と離れていることを良いことに、誇張無い評価を下していく。
 そしてこれならばサバトの流通に乗せても良い――いや画家に専属契約を申し込んでも良いとすら二人は考えていた。
「しかし風景画と宗教画ばかりですね」
「そうじゃな。普通の奴らならばこれで十分じゃが、こと魔王様に献上するのならば人物絵――欲を言えばドロドロでギトギトなエロい絵の方が良いんじゃがな……」
「エロい絵を御所望ですか〜?」
 いつの間にやら背後に来ていた画商が、より一層ニヤついた顔を二人に近づけていた。
「貴様、あまりわらわ達の会話を盗み聞きしておると」
「フッて命の蝋燭消しちゃいますよ〜♪」
 バフォメットが凄みをきかせ、魔女がにっこりと愛らしい表情を浮かべて怖い事を言う。
「いえいえいえいえいえ、聞こえたのはエロい絵という部分だけですよぅ。もう、あまり怖い事いわないで下さい……」
 びっしりと顔中に脂汗と冷や汗を浮かべて、引きつった笑顔の画商は二人を伴って、区分けされた区画に案内する。
「魔物のお客様には大変好評なんですよ」
 そして案内された場所には一枚につき一つの種族の魔物が、濃厚にくんずほぐれつしている絵が、そこかしこに何十枚と所狭しと並べられていた。
「こんな所に隠してあるなんて、もう画商さんてば、商売上手!」
「いえいえ。魔物のお二方に言うのは憚られますが、この個展を見に色々な方がいらっしゃるもので……」
「教団所属の教会に飾る絵を求める者や、反魔物国の画商が居るから、あまりおおっぴらには見せられぬと」
「ご理解がお早くて助かります。一応、魔物のお客様にはお声掛けはしておりますので」
「ほんに貴様は商売上手じゃな。それじゃあのぅ……うむ、買い手が決まっておらぬ物全て寄越せ」
「へ?」
 唐突に放たれたバフォメットの強盗が使うような言葉に、画商の脳内が凍りついた。
「二度は言わんぞ」
「は、はい、ただいま!お、おい早く売約済みの札もってこい。全部に貼れ全部!」
 バフォメットの言葉を受けて、ばたばたと走り回る画商と近くにいたスタッフ。
「いいんですかバフォメット様?一応お金に余裕はありますけど……」
「値段と絵の出来とを比べたら、全買い一択じゃよ。それに魔王様が気に入らないものは、サバトで流通させればいい話じゃし」
「じゃあ何で売約済みを横取りしないんですか?」
「教団の馬鹿連中ならいざ知らず、この絵はこの街に来た魔物に回るようじゃしな。流石にその魔物達を泣かせてまではいらんじゃろ。しかし問題なのは……」
「なにか絵に問題が?」
「魔女の絵が四枚もあるのに、バフォメットの絵が一枚も無いとはどういうことじゃ!これは直接作者に文句を言わねば!」
「まぁ、バフォメット様は人の世間ではレアな魔物ですからね」
 何だそんな事かと溜息を吐く魔女に、作者はどこだと会場を練り歩くバフォメット。
「ああ、居たよかった……」
「良くないわ、たわけ!作者は何処じゃ!貴様が代理なら、主催者がこの会場に何処に居るか知ってるはずじゃろう!」
「バフォメット様、あまり大きなお声を出されると周りに迷惑ですよ」
「おや、まだお会いになっておられなかったのですか?」
 そして画商に案内されるままに二人が到達したのは、壁一面を覆い尽くすような一枚の大きな絵。
 絵の具で厚塗りされて表現された一人の男性と一人のリャナンシーが、部屋の中で共に寛いでいる絵だった。
「こちらが主催者夫婦です」
「……貴様、わらわを馬鹿にしているのか?」
「まあまあバフォメット様、この絵もいい絵ですよ。丁度あれのあの場所も空いてますしこの絵も買いま、ひいぃいいい!」
 絵を見ていた魔女が飛び上がると、バフォメットの後ろに隠れてしまった。
「何じゃいきなり」
「ばばば、バフォメットさま、絵が、絵が動きましたよぅ……」
「絵が動くはず無かろうに……」
 本当に困った奴だと言いたげに、バフォメットは件の絵を観察する。
 たしかに魔女が動くと思っても仕方が無いほどに、これは良く出来た絵だとバフォメットは思った。
 机も本も実際にそこにあるかのような雰囲気を、絵の具を厚塗りしている事で再現されている。
 そして二人寄り添っているのを観ると、『何時かわらわも未来の兄上と』と思ってしまうほどの存在感があった。
「何じゃ、ただの普通の絵、じゃろ……」
 リャナンシーに向き合っていた筈の男の目と、バフォメットの目が合った。
「いや、気のせいじゃ。じゃって、絵が動くはず」
 しかし今度のは気のせいでは済まされない。
 男性が腰を椅子から上げて、こちらに乗り出して来たのだ。
 そして絵から這い出ようとするかのように、絵画の額縁に男性の手がかかる。
「う、うそじゃ、うそじゃ……」
「はわわわわ、ば、ばふぉめっとさまぁ……」
 この奇怪な現象に、高位の魔物という立場も忘れ、二人とも抱き合って涙目になっていた。
 やがて男性は絵から抜け出して涙目の二人の目の前にその顔を近づけると、男はただの絵の筈なのにその顔からは呼吸音と生気が感じられた。
 そして男性の絵の具まみれの手が、己の頭上に振り上げられる。
「ぎやあああああ!」
「い、いや……に、にいさまああああ!」
 しかしその手は抱き合って震える二人に下ろされるのではなく、頭の上に被っていたつば付き帽子を取ると、男は二人に深々と例をした。
「お初にお目にかかります。私がこの個展の主催者の一人であり、この個展に飾られている作品の作者の一人でもあります。画家のアルフェリド・ダーキンで御座います。そしてこちらが」
 絵に居たリャナンシーが絵から飛び出して、男――アルフェリドの肩に止まった。
「あたしが妻で絵の相方のアーリィ・ダーキンです。驚いた?」
 悪戯が成功したピクシーのよう、二人にニコニコと笑いかけるリャナンシーのアーリィ。
「??……お主ら、絵ではないのか?」
「ちゃんと生きている人間ですよ。絵の具まみれですが」
「あたしも普通のリャナンシーだよ。絵の具まみれだけどね」
 何が起きたのか理解できていない様子のバフォメットに、種明かしをするようにそう告げる二人の画家。
 この絵の周りにいた人たちが、『ああ、俺らも騙されたよな』『むしろちびりかけたっけ』と言いたげな温かい目つきで、バフォメットと魔女を見つめているのに気が付いたバフォメットは、ようやくこの二人の画家に担がれた事を理解した。
 よく良く観れば、絵だと思っていたのは全て絵の具まみれの家具の数々。
 それらを絵の腕前で観ている者たちに、これらを現実味溢れる絵だと錯覚させたのだ。
 もしかしたらこの会場に入って、客が二人の『印象派の絵』というものを見せられた時から、この悪戯の仕掛けが発動していたのかもしれない。
「お、お主らぁ……」
 しかしこうも見事に騙されて激昂したのでは、サバトを預かるバフォメットの名折れ。
 そしてその怒りが向かった先は、バフォメットと魔女の後ろで嬉しそうにニコニコしている画商の股間に向けられた。
「ぐおぉぉぉおおぉお、な、なぜ、私がぁああぁあ……」
「ふんっ。教えなかった貴様が一番悪いのじゃ」
 どっとその場に居た全員の客が笑い出す。
 つられてバフォメットも画家の二人も笑い出した。
「ば、バフォメット様、どういうことなんですか?」
 その中でいまだに理解していない魔女が、一人だけぽかんとしていた。





 閉館になり誰も居なくなった個展。その中にある例の絵の中にアルフェリドとアーリィが、絵の具まみれのソファーの上で寄り添っていた。
「あー、今日は面白かったね。特にあのバフォメットと魔女なんて泣きそうになっちゃってたし」
「確かに楽しかった。でも、おかげで宿題を貰っちゃったけどね」
 アルフェリドの視線の先には、あのバフォメットの住所と連絡方法が白い字でかかれた真っ黒な彼女の名刺。
 どういうことかというと、なんでもバフォメットを謀った罪とやらで、あのバフォメットを満足させるような絵を描かないといけないらしい。
 そして描かれている住所に自腹で送れといわれたのだ。
 さすが強かで有名なバフォメット。転んでもただでは起きない。
 そんな事をしたら客全員に絵を描かなければならないと断ろうとして、あの画商に上得意様だからどうかどうかと拝み倒されたのだ。
 しょうがないので描けたら送るからとアルフェリドが了承し、その代わりそちらも報酬に何か寄越せとアーリィが要求した。
「気に入ったら『賢者の石』くれるって言ってたっけ?」
「言ってたね。それじゃあ頑張って、あのバフォメットがケチ付けられない絵を描かないとね」
 そのアルフェリドの言葉を聞いて、思わずしゅんとするアーリィ。
「学校の講師でやる事は全て終えて、弟子も全員一人立ちしたから、ようやく妖精の国へ行けると思ったのに……」
 アーリィが言ったように、この個展は二人の最初で最後の個展だったのだ。
 だからこそ次の客入りを考えないほどの大量の絵を展示し、賛否両論巻き起こさせるだろう『飛び出す絵画』を二人は出した。
 こういう芸術もあるのだと、妖精の国へ行く前に世間に知らしめるために。
「いや妖精の国へは明日にでも行くよ」
「でも、バフォメットの絵が……」
「妖精の国でも絵は描けるさ。それによく観てごらん、バフォメットの住所」
「……これって、今は滅亡している国だよね?」
「正確に言えば、魔界に沈んでいる国だね」
「ということは」
「魔界に属している妖精の為に設けてある、妖精の国への固定ゲートがあるってことだね」
「じゃあ本当に……」
「何も問題は無いってこと。アーリィ、明日二人で一緒に妖精の国へ行こう」
「やったー!!」
 アルフェリドの首っ玉に抱き縋り、全身で喜びを噛み締めるアーリィ。
 ようやく妖精の国で二人で誰にも邪魔される事無く暮らせるのだと思うと、アーリィは嬉しくて嬉しくて仕方が無かった。
「でも一つだけやり残した事があるよね」
「そうだね一つだけあったね」
 示し合わせるように二人は言い合うと、絵の具で重く硬くなった服を脱ぎ始めた。
「まさか昨日アーリィから、個展が終わったらこの絵の中で犯して欲しいと言われるなんて思わなかったよ」
「だってあたしがアルフェリドの作品の一部になれただけでも最高なのに、さらにアルフェリドと一体になったらどれだけ気持ちいいのか試してみたくなっちゃったんだもん」
 拗ねるようにそう言って全裸になったアーリィを、こちらも全裸になったアルフェリドは胸に招き抱く。
「本当にアーリィはえっちな子になっちゃったね」
「それじゃあアルフェリドは、こんな小さな子を犯しても何も思わない鬼畜になっちゃったじゃない」
「何も思ってないって失礼だなぁ」
「じゃあ何か思ってるの?」
「君が愛しくてたまらない。君を抱きたい。君は気持ち良くなっているのだろうか。君に俺を気持ち良くして欲しい。君で……」
「もう、恥ずかしい台詞禁止」
 アルフェリドの口から出てくる言葉を、アーリィは自分の唇で塞き止める。
 妖精の小さな口ではアルフェリドの口全部を塞ぐ事は出来ないのだが、アルフェリドは言葉を口から出そうとはしなかった。
 しかしアルフェリドは代わりに唇と舌で、アルフェリドがどれほどアーリィを思っているのかを、アーリィの舌に刻み付けていく。
 大きい舌をノミで小さなものに細かに彫刻するかのように、アーリィの舌の上を動き回るアルフェリドの愛行為。
 アーリィは逆にその小さな舌で彼女が感じている想いを、アルフェリドの舌という大きいカンバスに大胆に絵を描くような動きで塗り付けていく。
 やがて二人が十分にその行為を堪能すると、やがてぐちぐちぬるぬると二人の舌が絡み合い、ぴちゃくちゃねちねちと二人の口中の粘液が混ざり合う。
 混ざり合った液体がアーリィの小さい口腔内を占領しきる前に、アーリィはアルフェリドへそれを送り、アルフェリドは大きな口一杯になるまで溜め込む。
 やがて二人の口に何処にも入る余地がなくなったとき、二人ともその液体をゴクリと嚥下した。
「はふぅ……アルフェリドとの唾液カクテル最高」
「はぁ、はぁ……アーリィのも甘くて美味しいよ」
 お互いに感想を言い合うと、アルフェリドは絵の具が塗られたソファーの上に寝転がり、アーリィを自分の腹の上に座らせた。
「まずは、こっちの姿でね」
 アーリィが魔法を紡ぐと、するするとアーリィの身長が伸びていき、十代前半の人間の少女のような姿に変わった。
「もうアルフェリドのおちんちんギンギンだね♪」
 張り裂けそうな程に膨らんで硬くなったアルフェリドの陰茎を、ぷっくりと肉付きの良い子供まんこ挟み込むと、アーリィはゆっくりと腰を前後に動かして、秘所を陰茎にこすり付ける愛撫――騎乗位の素股をし始めた。
「どうアルフェリド。これ気持ち良くて好きだったでしょ」
 アルフェリドの陰茎には、柔らかい掌で包まれながらに扱かれているような感触が生まれ。そこに時折コリコリとしたアーリィの勃起クリトリスの感触がアクセントになって、ものすごく心地よい快楽がアルフェリドの腰に染み渡る。
「アーリィの肉厚人間すじまんこに挟まれて、直ぐにでも出しちゃいそうだよ」
「こっちが気持ち、よくなるまで我慢して……そうしたら、直ぐに膣内に、入れるから」
 こすり付けているうちに性的快楽を得てきたのか、それとも擬似的に繋がっているために、リャナンシーの肉体がこの場所で繋がる二人を芸術品と認識したためなのか、アーリィの脳内に幸福感と満足感が液体となって注がれていく。
 やがて注がれたそれが、アーリィの頭蓋からあふれ出ると首筋と胸元を通り、それより下へと徐々に浸していく。
「もう既に気持ち良さそうだけど?」
 アルフェリドの陰茎に秘所を擦り付ける感触を、眼を瞑って感じていたアーリィの胸へアルフェリドの腕が伸びると、人間変化してもなだらかで控えめに盛り上がったアーリィの乳房を掌で押し包むと、触るような強さでもみはじめる。
「あんっ――もう、あたしが奉仕してるの、アルフェリドはまだ」
「そうは言っているけど、こうやってゆっくりと揉んで上げると……ほらアーリィのお股から出てくるいやらしい液体の量が、目に見えて増えてるよ」
「だって、アルフェリドの手だもん、気持ち良くなっちゃうよぅ……」
「嬉しい事を言ってくれたご褒美に、軽く胸でイかせてあげようかな」
 意地悪そうな笑みを浮かべたアルフェリドは、上体を起こすとアーリィの胸に吸い付いた。
「はぃんっ! そんなに強く、おっぱい吸わないでぇ、気持ちよすぎちゃうぅう!!」
「ちゅう〜〜……アーリィ、腰が止まってるよ」
 アーリィに注意しつつも、アルフェリドの左手は胸を軽く揉み続け、起立させたアーリィの乳首に軽く甘噛みする。
「ず、ずゅるい。弱点ばっかりぃ……」
 段々と堪らなくなって来たのだろう、アーリィの腰つきが愛撫からアルフェリドの陰茎を膣内に入れようと試みるものへ変化する。
「こりこり……ちろちろ―――」
 アーリィの乳首の根元を噛んだまま、アルフェリドは顎を左右に動かし続けて刺激を与えると、さらにそのまま乳首の頂上部分を舌先で舐める。
 そして左手を胸から離してアーリィの腰に据えると、ゆーっくりとアーリィの膣口の位置を竿の根元から亀頭へとずらしていく。
「くぁん……ふひゅっ……んっ――」
 しかしアーリィは、アルフェリドが腰の位置を動かしている事に気が付かないのか、アルフェリドの頭を掻き抱き、アルフェリドの愛撫を声を押し殺して受け入れていた。
(……もうそろそろかな)
 腰に据えられていた手でアーリィの背中を撫でると、蕩けた痺れを感じているアーリィの背中がぴくぴくと程よく反応したのを感じて、アルフェリドは乳首から口を離す。
 そしてアーリィに見えるように大口を開けた。
 アーリィはアルフェリドのその行動が何を意味しているのか知っているのか、期待する眼差しをアルフェリドに送っていた。
 そのアーリィの視線に応えるように、木に生る果物をかじり取るかのように、アーリィの胸にアルフェリドは齧りついた。
「痛ぁああいんっ♪」
 アルフェリドは齧り付き、さらに膣口にぴったりとくっ付けていた亀頭部分を、腰の動きと左手の補助で強引にアーリィの膣内へと侵入させた。
 すると胸に感じる愛しい人が噛みついた痛みと、膣内に突如現れた熱を伴う硬い棒の感触に、高まっていたアーリィは絶頂に達してしまう。
「ぅんあひぃ、いくぅううう!」
「夜明けまでには終わらせないといけないんだから、休憩している暇はないよ」
 口の端から涎を垂らして絶頂感を楽しもうとしているアーリィの腰を掴むと、ビクビクと震え始めたばかりの膣内の襞を、アルフェリドは遠慮無しに雁首でこそぎ落としていく。
「イッたばっかりの膣内は、ビンカンなのぉ!」
「だから、強く、擦って欲しいんでしょ。まったく、アーリィは、どマゾだね」
「そ、そんなこと、いってないよぉお――!」
 アルフェリドの陰茎が突き入れられ子宮口に無遠慮に叩きつけられると、子宮口に感じる痛気持良さと膣内を蹂躙される快感から、アーリィは休み無くオーガズムへと追い込まれて、そして果て続ける。
 それでもアルフェリドは手加減しようとはせず、むしろ更に力強く腰を振っていく。
「だめぇええ゛え゛え゛、ぎも゛ぢよずぎる゛ぅうぅううう!!!」
 そのままたっぷり五分間も、こんなレイプ同然の行為を楽しむアルフェリド。
 その間もアーリィはアルフェリドが動くたびに、時に大きく時に小さく絶頂し続けていた。
「あんまり、苛めすぎても可哀想だし。もう、そろそろ、俺も我慢、出来そうも無いから、奥で出すよ」
 やがて射精感が高まったアルフェリドは、騎乗位でイキ続けているアーリィの腰を両手で確り掴むと、無理やり陰茎をアーリィの膣内の更に奥へと押し込んでいく。
 力強く子宮口に押し付けられたアルフェリドの亀頭は、その場で更に力強さを増すと、終にはめりめりと音を立ててアーリィの子宮口を拡張していく。
「も゛う、そごが行止りだがらぁああ゛あ゛!!!」
「何言ってるの。何時もは赤ちゃんのお部屋に直接入れないと、絶対満足しないのに」
「だっでぇ!ごの絵画セックス!ぎもぢよずぎるのお!!!」
「聞く耳を持ちません」 
「はい゛っでぎだあ゛あ゛あ゛あ゛!」
 ごぼんと音を立てて支えていた子宮口から亀頭が外れると、アーリィの本気汁満杯の子宮内を直進して子宮の奥壁を叩く。
 さらにアルフェリドは、鈴口をその場に擦り付けることで射精の頂へと上りつめる。
「出すよ、堪能してねッ!!!」
「ぎぐぅうぅううぅうう!!!」
 アルフェリドがビックリするぐらいの、それもアーリィと繋がってきた中で一番大量の精液を、そのまま子宮に叩き込んだ。
 びゅくびゅくとアルフェリドの鈴口から白い迸りが走るたびに、アーリィの子宮は膨らんでいき、やがて逃げ場を求めて精液は子宮から卵管へと進み、そこも一杯になってしまうと、唯一の出口である子宮口へと向かう。
 しかしそこはアルフェリドが亀頭で栓をしていて出る事が出来ない。
 すると逃げ場を失った精子は半狂乱になり、ここから出せとアーリィの子宮を乱暴に殴り始める。
「まっで、すぐにだじてあげるから、子宮だだかないでぇ!!」 
 リャナンシーの感受性の高さで、精液の暴動を感じ取ったアーリィは、その所為で最高潮の場から降りる事が出来なくなり、アーリィも半狂乱になってしまい、訳も分からずにアルフェリドの腰から逃げ出す。
「だ、だめだよ、急に抜いたら……」
 きゅぽんとワインコルクが抜けるような音がして、アルフェリドの一物が子宮から引き抜かれると、突如現れた出口に子宮内に閉じ込められた精液は殺到する。
「あたし女性なのに、メスなのに射精しちゃううぅうぅ!!」
 子宮の内圧に押し出された精液が、開きっぱなしの膣内を素通りし、そのままアーリィの対外へ押し出されてしまう。
 アーチを描くように放出された精液は、まずは遠くの床に降り立つと、そこから段々と勢いを失っていき、最終的には一本の白い線が絵の具と汗と愛液にまみれたアーリィの子宮からその場所まで一直線に引かれているという、何ともエロティックな前衛芸術作品が出来上がっていた。
「こんなに零して……駄目じゃないか」
 床に落ちて絵の具と混ざり合った精液をアルフェリドは掬い取ると、放心しているアーリィの身体全体に塗りつけていく。
「はぁん……駄目だよ、身体の絵の具が落ちちゃうぅンッ」
「むしろ身体の絵の具と混ざって、いい色合いになってるよ。この場に鏡が無いのが残念だ」
 そのままエステティシャンのような指使いで、アーリィの肢体に塗り込んでいたアルフェリドは、やがて満足したのか手を止めた。
「アルフェリドの、おちんぽみるくの匂いする絵の具で、孕んじゃいそうだよぅ」
 さっきまでの死にそうになる程の性感と、いま感じるむせ返る程の愛しい雄の精液が発する匂いに溺れ、アーリィの思考はもう愛する人のためだけのメス奴隷に成り下がっていた。
「次はどうしたい?」
 そのアルフェリドの言葉に、アーリィは人間化の魔法を解き本来の姿へ戻ると、絵の具まみれのソファーの上に両手両足を着け、アルフェリドに見えるようにお尻を高々と上げる。
「妖精の姿でしたいですぅ。愛メス奴隷リャナンシーの、人間の小指も入らない小さな淫乱まんこに、アルフェリドの極太灼熱おちんぽを突っ込まれて、涙と鼻水に涎まみれのアヘ顔晒してイキ狂いたいですぅ」
「つっこまれてイキ狂うだけで良いんだね」
「いやだぁ、アルフェリドのこくまろ特濃ちんぽミルクで、あたしの身体の中も外もどろどろにしてぇ」
 もう耐えられない早く早くと、アーリィはアルフェリドを誘惑するように左右に腰をくねらせて、秘所をアルフェリドに見せ続ける。
「要望通りにしてあげる。俺の愛しいメス妖精さん」
 両手で包み込むようにアーリィを持ったアルフェリドは、ソファーから立ち上がると真っ赤でパンパンに膨れた亀頭にアーリィの秘所をつけた。
「ああ、ああああ……」
 人間の姿の時に感じた灼熱の棒とは感触が違い、熱せられた大玉の上に座らされているかのような感触に、アーリィは此れから訪れるであろう暴力的な快感への期待と恐怖に、軽く達しながら待ちわびる。
「一気に奥までまで突っ込むよ!!」
「ぐぶう゛ぅあ゛あぁあ!!」
 膣口を無理やり広げアーリィの奥へと進むアルフェリドの陰茎は、アーリィの小さな骨盤から『め゛ぎぃ!』と古板を踏んだような音を発生させ、お腹は妊婦も真っ青なぐらいに迫り出るぐらいに大きくし、人間姿の時に広げられた子宮口を難なく突破し子宮内壁へと到達して、更にはその奥にある心臓などの内蔵も犯そうかというように子宮内から叩き上げる。
 アーリィは口から空気を押し出されつつも激しい性感を感じ、突き入れられただけで人間姿のときよりも更に高い場所で絶頂を迎えた。
 しかしアルフェリドはアーリィの腰を掴むと、激しい腰の動きで陰茎の雁首で子宮内、子宮口、膣内を擦り通り、膣口ぎりぎりまで抜くと、今度は逆順に進ませ蹂躙させる。
「ほら、どうなのアーリィ。お望み通りに、絵画の中で小さな妖精の姿のまま、無理やり犯される気持ちはッ!」
「あ゛あぁあ――――!! おお゛おぉうぅう゛ぅ――――!!!」
「口も利けないほど気持ち良いってことだね!」
 いまアーリィは彼女自身が望んだように、涙と鼻水に涎まみれでベタベタのアヘ顔を晒して忘我の境地を楽しんでいる事だろう。
 だがガンガンと腰を動かし言葉で苛めながらも、アルフェリドの目は中空を見つめて、手に包んだアーリィのそのイキ狂う姿を見る事は無い。
 アルフェリドとアーリィが突き合って十年も経っているため、この様な激しい行いにアルフェリドは多少は慣れたものの、いまだにアーリィのこの姿を見ると如何しても気後れしてしまうのだ。
 しかしアーリィは持ち前の感の良さで、アルフェリドのそんな気持ちを理解してしまう。
 そうなればアーリィは我慢してしまうのだ、アルフェリドが気持ちよくなれないのならば、自分が必要以上に気持ちよくなる必要は無いと。
 だがアルフェリドはそれではだめなのだ。彼には愛しい人を満足に愛せないなど、耐えられないのだ。
 だからこそアルフェリドは自身を奮い立たせるように、アーリィを必要以上に言葉でなじり、問答無用で手加減無しの行いをして、アーリィの膣内を蹂躙する。
「どうだい子宮内の、卵管の側を、嬲られるのはッ!」
「ううぅうぅう――、えぇぇあぁあぁ―――……」
 とうとうアーリィの身体は快楽の許容量を超えたのか、一擦り一突き毎に段々と反応が鈍くなってくる。
 ビクビクと動いていた手足はだらりと垂れ下がり、顔も顔中判別不能な汁で汚れているものの表情筋は溶けきり白目をむいている。
 アーリィは既に気絶していて刺激にただ反応しているのではないかと疑ってしまう状況の中、アーリィの膣内と腰周りの筋肉だけは意思を持ち、必死にアルフェリドの子種を搾り取ろうとしている。
「アーリィ、もうそろそろ出るよ!」
「でぅるぅ……?」
 アルフェリドのその言葉にアーリィの何かが反応したのだろう、蕩けきって意思を解していないようなうめき声のようなモノがアーリィの口から出てきた。
「そうだよ、アーリィの大好きな、ぷりぷりゼリー状の、黄みがかかった白濁のチンポ汁が――」

「ちんぽ、じる?……おちんぽみるく、あるふぇりどのみるくぅ! おちんぽみるくちょうらいぃ!!」
 この世で一番大好きなもののフレーズが耳に入った瞬間、アーリィは自意識を取り戻したかのように『ちんぽみるく』と言葉を繰り返し、腰と膣内の筋肉も収縮してアルフェリドの陰茎を絞り始める。
「は、は、はっ、出すよっ!!!」
「みるく! みるくぅうういい!!!!!」
 子宮の一番奥で放たれたアルフェリドの精液は、瞬く間に子宮と輸卵管を侵しつくし、緩々になってしまった子宮口から飛び出し、アルフェリドの陰茎でぴっちりと閉じられているはずの膣内を、こじ開けるかのようにして膣口から外へと零れ逃げていく。
「―――ッッッ―――-!!!!!」
 高音すぎて人間には聞こえないのか、アーリィは喉を震わせて必死なまでに絶頂の絶叫を上げているものの、何を言っているのかは聞き取る事が出来ない。
 射精行為を終えたアルフェリドは、叫び疲れと逝き疲れでぐったりとしたアーリィの腹から一物を出そうとし、急に収縮して来た子宮口に亀頭部分をギッチリと掴まれると、亀頭の形にそって撫でながらアルフェリドのを押し出していく。
「!! うあ、また、出る!!」
 油断していた所に強烈な刺激を与えられたアルフェリドは、一気にアーリィの膣内から抜き出したものの、逆にそれが止めとなり、アーリィの身体に陰嚢の中に残っていた精を全て吐き出してしまう。
 ぼたぼたとアーリィの身体に降り注いだそれは、アーリィの身体を粘液で撫でながら、床へと落ちていった。
「ぜー、ぜー……」
「……」
 意図しない射精によって、残りの体力を全て使い果たしたアルフェリドはソファーに座り込むと、その横に内も外も犯し尽しされて気絶したアーリィをそっと置く。
 アーリィの姿を見ると、その身体には絵の具は無くなり、その代わりのように黄色い白濁液が埋め尽くすかのように覆っていた。
 アルフェリドの方も似たようなもので、噴出した汗に全ての絵の具が洗い落とされ、完全に真っ裸な姿になっていた。
 床には零れ落ちた愛液と精液の混ざった液体が湖のように広がり、その中に絵の具が溶かし混ぜられて、生臭いような油臭いような言い様の無い匂いを放っていた。
 こんな様子では明日絵を撤去に来るスタッフにどやされやしないかと冷や冷やしながら、疲れに身を任せてアルフェリドはソファーの上でアーリィと共に寝てしまった。
 そして明くる次の日、撤去スタッフがこの個展に来ると。
 情事の匂いの染み付いた例の絵しかなく、そこに居るはずの二人の姿は無かった。





 有名な画家の夫婦の突然の失踪に世間が慌てふためいてから数ヵ月後。
 ここはとある魔界の片隅。そしてバフォメットの部屋。
 バフォメットはゆったりとした椅子に座り、四角い板状の物に掛かっていた布を取り去ると、それをまじまじと見つめていた。
 しかし突如、その部屋の扉が力任せに開かれた。
「ば、バフォメット様! た、大変です、宝物庫に賊が入り込んだ様で!」
「『賢者の石』が無くなっておったんじゃろ。わらわがやったんじゃ、放って置け」
 手に絵画を持ち、嬉しそうに笑いながらバフォメットはそう告げると、追い払うような手つきを入ってきた魔女にする。
「け、賢者の石をですか!?」
「ええい、煩いわ!あんな物また作ってやるのじゃ!じゃからさっさとここから出て、喧しくバタバタ走る奴らを止めに行くのじゃ!!」
「ひゃい、判りましたッ!!」
 バフォメットの視線に射竦められ、慌ててサバト式敬礼をした魔女はその場を走り去っていく。
「まったく……それにしても、ふふふっ、良い絵じゃのう」
 その絵画には、顔の見えない男性の頼りがいのある胸元に飛び込み、甘えるように眼を細めるバフォメットの姿。
 そしてそこには『アルフェリド&アーリィ・ダーキン』の文字が書かれていた。
 これがその夫婦のこの世界に残した最後の絵であり、この夫婦がもうこの世界に接点は持たないとする意思表示。
 その意思どおりに、もう二度とこの世界の住人はその二人を見る事は無かった。




 そうして二人は絵の中に住処を移したかのように、この世から消え去った。
 そしてこの物語も名残惜しいが終わりにしなければならない。
 妖精の国にいる二人の様子など、この世の者にはわからないのだから。
 様々な行き違いや思い違いですれ違いながらも、結ばれた二人。
 その二人が仲良く絵を描きつつ交わり暮らしていることを、ここに切に願う。
 


11/08/17 17:14更新 / 中文字
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■作者メッセージ

「ホブゴブリンが出てくると思ったか! わらわじゃよ!」

汚い、バフォメット。
流石バフォメット、汚い。


というわけでお楽しみいただけましたでしょうか。
終章の通りに、これでこのお話はおしまいです。


ちなみにこの章のコンセプトは。

なんか甘エロばっかり書き続けて、飽きてきたな……
と思っていた脳内にひらめく一つの言葉。
「ぷろでゅーさーさん、ガチエロですよ、ガ・チ・エ・ロ」
なるほど、そういう考えもありか!

ちなみにプロデューサーが何の事かは知りません。ええ知りませんとも。


(ちなみに唐突に出てきたあのバフォメットと魔女は、一応ネタばれにならない程度にぼかしてはいるので大丈夫だとは思いますが、クロビネガ様の夏コミ新刊に設定が出てきた、魔界のアレで生まれたキャラです)

それはそれとして。
それでは、今度こそ本当に、また次の作品でお会いしましょう。





絶賛人気急上昇なマールさんのお話は、ほんとどうしよう……

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