古びた道具には何が住む?
見廻り同心である兜持忠敬(かぶともち ただたか)は、今日上司に言われた事を反芻していた。
『最近古い道具が妖怪化する事案が発生しているとの事。ついては無用の混乱を避けるため、古い道具を一新する事となった。各々も古い道具を処分して欲しい』
その上司の言葉に昨今倹約が叫ばれている中で豪気なことだと一応は頭を下げて返礼はしたものの、兜持は古い道具――懐中提灯を収めていた懐へ知らず知らずのうちに手を伸ばしていた。
この懐中提灯には思い入れがあった。
同心となって初めての給金で一目惚れして買い求めた品だったのだ。以来十年間肌身離さず持ち歩き、苦楽を共にした相棒とも呼べる品だったのだ。
(しかし上役殿の仰せには従わなければならぬ)
手放すのは惜しいが見回り同心というお役目上、隠し持っていていざ盗賊との戦いという中で提灯が妖怪変化し現場を混乱させれば、切腹すらありうる状況では致し方のないことだった。
せめて今宵はこの懐中提灯を弔ってやろうと思い立ち、弔いに必要な品――といっても酒とそのあてだが――を求めてまず酒屋へと足を踏み入れた。
「いらっしゃい。おや旦那」
「久しいな」
手に持った大徳利に酒を入れてくれるよう頼む。何時もは安酒で済ます兜持だが、今日ばかりは上方流れの上物をつめてもらった。
「何かのお祝いで?」
「むしろ悪い事だ。上物の酒でももらわねばやり切れぬ」
冗談交じりでそう答えつつ礼を言って立ち去ろうとした兜持の目の端に、酒屋に似つかわしくないものが目に入った。
「おい、なぜ絵蝋燭を売っておるのだ?」
「い、いや別に怪しいものじゃ御座いませんよ」
ついつい役目柄で詰問口調になってしまった兜持に、慌てたように弁解をする番頭。
番頭が言うには財布を忘れた酒好きの蝋燭売りが、安酒の代金代わりに置いていったそうだ。
詐欺ではないかといぶかしむ兜持に、番頭は顔見知りなのでそれはないと答えた。
「それにしても、見事な絵付けだな……幾らだ」
蝋燭の白い下地に名も知らぬ綺麗な薄紫色の花弁の付いた一輪の花の絵が描かれていた。
この際、提灯の弔いに灯す蝋燭も新しい方がいいだろうと思い立ち、兜持はこの蝋燭を買う事を決意した。
「一匁(もんめ)です」
「安いな。この見事さならば、一朱(しゅ)してもいいぐらいだろう」
一匁というのは掛け蕎麦を五杯食べられる程度の代金であり、一朱というのはその三・四倍の値段の事である。
「かと言って高値で酒屋に置いておいても腐らせるだけ。それに酒の代金以上には貰おうとは思えませんので」
「そうか、では貰おう」
「これはどうも有難う御座います。今後もご贔屓に」
兜持は匁銀貨を一枚手渡して蝋燭を受け取ると店を後にし、道端で酒のあてになりそうな乾き物や佃煮などを買ってから家に帰った。
兜持が住んでいるのは同心長屋の一室。兜持は刀の腕を見込まれて同心となった兜持家の三男であるゆえに、この家には口煩い母親はいない。
さらには愛しい奥方や懸想する恋人もおらず、かと言って女中を雇うほど給金に余裕のない兜持は一人でこの家に暮らしていた。
お陰で侍ながらに料理の腕は上がり、懐具合の厳しい給料前には同心仲間が食料をもちより、兜持が手料理を振舞ったりしていた事から、奥方要らずだなどと言われている。
それはさておき、寝巻きに着替え終わった兜持は一通りの肴を膳の上に用意して部屋へ置くと、懐から懐中提灯と絵蝋燭を取り出した。
蝋燭に行灯からの火を移しそれを提灯の中へ入れ、縮んでいた提灯を蛇腹を引き伸ばすと、提灯の薄茶けた和紙に描かれた色あせた菫の花があわられた。
その提灯を膳の向かい側に置き、行灯の火を息を吹きかけて消すと、部屋の中には提灯の明かりだけになる。
すると日ごろでは味わえない寂の趣きがあった。
「まずは一献」
膳の自分の方にはぐい飲みを提灯の方には小さなお猪口を置き、その二つに上質の酒を並々と注ぐ。
兜持はぐい飲みを握ると、それを提灯に向かって掲げた後に全て飲み干した。
「しかしお前とはずいぶん長く一緒にいたな」
飲み干した杯に酒を入れつつ、甘辛い貝の佃煮に箸を伸ばしながらそう溢す様に口に出した兜持。
「余り使っておらなかったとはいえ、十年も持つとはな」
提灯の寿命は他の道具に比べてはるかに短い。
大店の提灯は広告の意味合いもあり絶えず新しいものへと入れ替えられ、祭り提灯は祭りの間だけの命。普通の提灯でさえ乱暴に扱えば、紙に蝋燭の火が当たりあっという間に燃え尽きてしまう。
携帯性を重視し耐久性を二の次にした懐中提灯など言わずもがなである。
「初めての月番休みの時につい遠出をしに行き、その夜道でお前を使ったな。あの時は真っ白な紙に青々とした菫が美しかった」
あまり飲み慣れない高級な酒に酔ったのか、当時の事を思い出すように茶けた提灯の紙を見つめながら兜持は独白する。
「盗人と大立ち回りを演じたときは、腹にお前があったお陰で大怪我をせずに済んだ」
提灯の鉄で出来た蓋には、そのときに付いたであろう刃物傷が刻まれていた。
「あの時だってそうだ……」
本格的に酒に当てられたのか、そこからは十年分の思い出を吐露するかのように口に出していく。
どんなにこの提灯が自分の役に立ったのか、それを提灯に言って聞かせるかのように。
「むっ、肴が切れたか。追加を持ってくるとするか」
酒に酔いつつもそこは武芸を修めた侍。確りとした足取りで土間へ向かい、残りの肴を皿に載せて部屋に戻ってきた。
「さて話の続きを……だれだお主は」
訝しげに眉根を寄せた兜持の視線の先には、少し背丈の小さい女子が膳にあったお猪口で酒を飲んでいた。
「見かけぬ顔だが何処の子だ?いや、子供が酒を飲むでない」
「いやですわ忠敬様。つい今しがた差し向かいで酒を飲んでいたではありませんか」
少し高めの鈴をころころと転がすような声色でくすくすと笑う少女だが、その姿に似つかわしくない程、どこか年を経た年増女のような妖艶さがちらりと笑みの向こう側に覗いていた。
「これは異な事を。自分が一緒に飲んでいたのは……」
そこで酒で回りの悪かった頭が何かにはまり、いまの状況がするすると兜持の頭の中で整理されていく。
「お前、あの提灯か」
「はいな、その提灯です」
唖然とする兜持の様子がおかしいのか、口元を和服の裾で押さえながらくすくすと笑う提灯娘。
「まさか上役殿の言っていた事が本当とはな……」
「まあまあ、そんなことは良いではありませんか。まだ酒はたんまり残っているのですから、ささ座って下さいな」
手招きして対面へと兜持を座らせると、提灯娘は兜持にぐい飲みを握らせてその中に酒を入れていく。
注がれた酒に口を付けつつ、妖怪変化をした自分の提灯を眺める兜持。
顔は綺麗というよりかは可愛らしいと表現した方が良さそうな、どこかまだ幼さの残る形をしている。しかし目元や口元から隠す事の出来ない妖怪ながらの艶やかさが見て取れた。
黄色主体の着物の胸元には名も知らぬ紫の花をあしらい、袖には菫がちりばめられている。その着物越しに見た彼女の体系は、胸も尻も大人の女というには不足に過ぎる帰来があり、背丈も寺子屋へ通っているのが似合っているような、そんな少女然としているものだった。
「そう言えば名を聞いてなかったな」
「在りませんわよ、忠敬様がつけて下さいませんでしたもの」
どこか拗ねた様に猪口に入った酒に口を付ける。
それもそうかと呼び名を決めようと頭を捻るが、あまり良いのが思い浮かばない。
「安直ですまぬが、『すみれ』では駄目か」
「もう少し捻って頂きたい所ですが、忠敬様が付けてくださったのなら不満は御座いません」
くいっと猪口を飲み干すと、すみれは兜持へとすすっと畳を擦って近づきその肩に頭を乗せた。
「こらあまり近づくでない」
「どうせ今日で最初で最後ですもの、甘えさせてくださいまし」
兜持の身体から発する臭いと、頬に伝わってくる温かみを記憶するかのように眼を瞑って堪能するすみれ。
「最初は判るが最後とはどういう意味だ?」
「それをワタクシの口から言わせるおつもりですか……」
いけずですねと小声で追加しつつも、その意味をすみれが言葉に出す事はなかった。
はて今日で最後になる様な事があったかと首を捻っていた兜持だったが、一つだけ思い至った部分があった。
「もしや捨てられやしないかと思っておるのか」
「……さっきまでお捨てになる算段をなさっていたではありませんか」
「それはあの古びた提灯の時の話だ。上役殿もまさか妖怪変化したものを捨てろとは言わぬだろう」
酒で喉を潤しつつそう告げた兜持の瞳を、すみれは縋るような目つきでまっすぐに見つめる。
「それは本当ですか?」
「いま嘘を言ってどうなる。むしろこの状況で嘘を妖怪についたら後が怖い」
その言葉を聴いた途端にすみれは兜持の唇に吸い付き、兜持の口内へ舌を滑り込ませた。
「ちゅっ、れろぅ……ぐちゅぅ」
驚愕で固まった兜持の心境を無視するかのように、兜持の動かない舌の下にすみれの舌が滑り込み、兜持の舌の裏筋を舌先で舐め上げていく。
それでも兜持の舌に反応はなく、そんなつれない態度に我慢が出来なくなったのか、無理やり舌を絡ませて恋人同士がするかのように激しい接吻を交わす。
やがて肺の中にあった空気が尽きたのか、すみれは渋々といった様子で口を放した。
「ぷはぁ……はぁ、はぁ……」
「……行き成りなにをする?」
少女姿の提灯に襲われるという状況に、どこか憮然とした態度でそう尋ねずにはいられぬ兜持だった。
「だって、捨てられるのならば、忠敬様の臭いと体温だけを胸に刻んで別れようと思っておりましたのに、あのように優しい言葉をかけて下さったら我慢など出来ようはずが御座いません」
「しかし行き成り接吻とは……」
「いやで御座いましたか?」
兜持に叱責されるのを恐れているのか、どこかすみれの瞳は心配そうに揺れていた。
「少し見た目が若すぎるが、お前のような目麗しい女性に口を吸われて嫌なわけはなかろう。ただ少し行き成りすぎただけで、驚愕しただけだ」
「それでは続きをしてくださいまし」
顔を寄せるすみれに対し、今度は自分から口を吸いに行く兜持。
二人の唇の境界という真ん中で、二人の口から伸びた舌がお互いを求めるかのように絡ませ合い、そして相手の舌の根を引っこ抜こうとするかのように自分の口の中へと引っ張る。
その攻防の間に二人の手は相手の衣服を脱がそうと蠢き出し、お互いに着物の帯を解くと、着物の裾から手を入れて愛撫するかのような手つきでゆっくりと着物を脱がしていく。
やがて二人の身を包むものが着物が下着だけになると、二人は漸くといった風に口を離した。
「しかし何故かお前と口づけすると、やけに喉が渇くな」
「物の怪は口の唾液からでも精を食べるのですよ。そうだ良いことを思いつきました」
一先ず兜持の腕から逃れたすみれは下着を外して一糸纏わぬ姿になると、正座をして足を間をぴっちりと閉じると、玉肌の足とつるりとした無毛の股の間に出来た窪みに酒を注いでいく。
「ほら忠敬様。わかめ酒で御座います」
「こら、その酒は高かったのだぞ」
しかし兜持はその酒の注がれた窪みに顔を近づけると、思いっきり音を立てて吸い込み始める。
「ずぞぞぞぞ〜〜〜」
「まだまだお代わりはありますからね」
兜持が吸い込んで減った分を、すみれは徳利の中身を自分の下腹を滑らせて注ぎ込む。
ごくごくと飲み干していく兜持の顔は段々と赤く染まり始め、徳利の中身を全て飲み干す頃には、アカオニかと思わせるように真っ赤になってしまった。
「ほら忠敬様、徳利の中身は空ですよ。わかめ酒はもうありません」
「何を言っておるか。最初からわかめなどないではないか」
全て飲み終えてそう告げた兜持ちは、すみれのもち肌でぷっくりと土手が盛られた割れ目の直ぐ上を舐める。
「ひゃん、忠敬様行き成り何を」
「ほらみろ、わかめなど在りはしない。あるのは貝だけだ」
軽くすみれを突き飛ばした兜持は、露になった割れ目に顔を埋めると味を確かめるように舌を奥へと侵入させた。
「あんっ、忠敬様、いけませんそれ以上、うっん」
「そんな事を言っておいて、ここからは貝の出汁があふれ出てくるぞ」
舌で兜持の小指ほどの小さな膣穴を穿り回して、奥から流れ出てくる汁を舐め取っていく。
当初は湿らす程の量と感じられぬほどの塩味しか出てこなかった穴も、舌が中でうごめくたびに段々とその量と味を増していき、ついには舐めとっても舐めとっても溢れ出て来るようになった。
「酒の次は貝の吸い物か、美味そうだ……ずぞぞぞぞ〜」
「そんなぁん、破廉恥な音を立てて吸わないで下さ、あひんっ!」
兜持が吸い込みごくごくと飲み干しても、あふれ出る膣液は口から零れ落ちて兜持の口周りと顎舌を濡らしてから畳に染みを作る。
舌先で穿られて膣内を犯され、耳から脳内にかけても兜持の汁をすすり上げる音で侵さたすみれは、淫行が大好きな妖怪の本性を出して段々と恍惚の表情へと変わっていく。
「はっぁ……はぁぅ……もう、忠敬様ったらぁ……」
必死に顔を股に埋めて啜っている兜持の頭を、愛し子のように愛情を込めて撫でて行く。
くすぐったいのか兜持が身じろぎすると、兜持の舌の先がすみれの膣内の浅い場所にある敏感な場所を舐め上げた。
「ひゃぁああん!」
思わず兜持の頭を股間に押し付けるようにして嬌声を上げたすみれは、はっとなって誤魔化すように慌てて力を緩めた。
しかしすみれの弱い部分を見つけた兜持は、その場所を丁寧に舌先でほぐすように弄くり始める。
「あひゅっ、だめ、そこはぁ、強すぎますっん……忠敬さま、お願いですから、そこばっかり、いじめないでくださいま、あはぁん!」
そんな頼みは聞けないとばかりに時に強く時に弱くを繰り返していくと、すみれの幼い外見の下腹には甘い痺れが溜まっていった。
やがてその溜まるものが一定量を越えて溢れ始め、腰を揺るがすほどの強さになると、たまらずすみれは頭の上にある畳の目に指を突き立てて、兜持の下から逃れようとする。
「だめです、ふひゃぁん、それ以上したら果てぇ、果ててしまいます!後生ですから、ごしょうですからぁあん!!」
逃がさないと腰を両手で掴むと、兜持はより一層執拗に同じ場所を責めを続ける。
「は、はっ、もう無理です、ふ、ふぅ、達しちゃいます、むり、我慢できない! むりぃ、むり、むりい゛い゛い゛いい゛!!―――」
足をピンと伸ばして下腹をぶるぶると震わせ、喉を伸ばして背を海老反らせながら絶頂したすみれは、膣の奥から大量の陰液を兜持の顔にぶちまけ、さらに子宮の奥からは白濁した汁が膣内を通って外にでてきていた。
「美味しかったぞ、そなたの吸い物は」
顔に掛かった液体を舌で舐め取りながら、ぐったりとしたすみれに口づけする。
「も、もうっ、そんな、汁まみれの顔で、接吻、しないでくださいまし」
息も絶え絶えにすみれはそういうと、腹の中にある炎を若干強めに燃え上がらせた。
すると兜持の頭の中に巣くっていた酒精がその炎にあぶられて逃げ出し、兜持の頭に掛かっていた酒靄が晴れていく。
「すこしは、頭がすっきり、なさいましたか」
「ああ……少し調子に乗りすぎたな。すみれ大事無いか?」
畳の上で四肢を投げ出して恥も外聞も無い様子で横たわるすみれに、兜持自身がした事とはいえ思わず心配してしまう。
「とても気持ちよかったです……でも」
「でも?」
「ここに忠敬様のお情けを頂きたいのですが」
膝を腹につけるように腰を曲げて兜持の視線の先にすみれの割れ目を晒すようにすると、左右の手の一指し指で左右に広げて見せた。
くぱりと貝の口が開くかのように晒されたその場所は、早く兜持の一物を咥え込みたいとパクパクと穴が大きくなったり小さくなったりしていた。
しかし兜持は少し鼻白んでしまう。
「このような小さな場所に、本当に魔羅が入るのか?」
たしかにすみれの小さな体格に似合った小さなその穴は、兜持の人差し指ほどの大きさしかないため、兜持の人差し指と中指をあわせたものよりも若干横幅のある男根が入れるとは思えない。
「それが女体の神秘というものです。それに先ほど忠敬様が解して下さったので、すんなり入ると思います」
「そのようなものなのか?」
ためしに指を二本そろえて膣内に侵入させてみると、確かに締め付けで多少きつい感じもするが、指の半ばで処女膜で押し留められるまですんなり入った。
「はぁああッ!」
「確かにすんなり入るものだ」
中の感触を確かめるように、指を出し入れしたり中で曲げて擦ってみたりしても、多少余裕があるようだ。これなら兜持の一物を入れても問題はなさそうだった。
「忠敬様、指ではなく……」
「おおっ、済まぬ」
「ひゅぅん!」
慌てて指を引き抜き、指に纏わりついていた白濁してねっとりとした粘液を自分の亀頭と陰茎にこすりつけ、挿入の準備を終えた。
「いくぞ、すみれ」
「はい、来てくださいませ」
正常位の体勢で一物をあてがった後、ずぶずぶと泥沼に足を踏み入れたかのような手ごたえを一物から感じつつ、兜持はゆっくりとすみれの中へと挿入していく。
「はぁっ、くうぅぅっ!」
ゆっくりと亀のような歩みで中を進んでいく熱い棒に膣内を焼かれて、すみれは思わず声を上げた。
その声を聞きつつも、さらに押し進めていき亀頭が全て飲み込まれたあたりで処女膜とぶつかった。
「すみれ、一気にいくぞ。気を確り持てよ」
「すー、はー……良う御座います」
兜持が腰を思いっきり突き込むと、糸束を引き千切ったような感触がすみれの膣内から発せられ、兜持の男根が残り三分の一を膣外に出したまま子宮の口へ到達すると、すみれの膣からは押し出された愛液と共に、乙女ではなくなった証である赤い液体が流れ出てきた。
「うぅぅうぅッ……」
「すみれ、余りにも痛むのならば、しばらくこのままで……」
「いいのです。すみれは忠敬様の道具なのですから、お気になさらず思う存分に動いてお使いくださいませ」
目じりに涙を浮かべつつもそう健気に言うすみれの言葉を信じて、腰を動かして膣内を陰茎で擦り上げていく。しかし出来るだけ優しく。
ゆっくりと引き処女膜が存在していた所よりも手前側を二度三度と雁首で擦り上げたあと、ゆっくりと奥へと入れ込んでいく。
「もっと、激しくして下さっても、よいのですよ」
「なにしっかりと具合を確かめておるのだ」
「嘘が下手な、お人ですね」
そんな兜持の優しさに触れてすみれの心が温かくなると、膣内に感じていた痛みもいくぶん柔らかくなり、少しだけ兜持の一物の感触を確かめる余裕が生まれた。
引き抜くたびに雁首で膣の上壁を撫で上げられてぴくりと身体が反応し、膣の浅い場所にある数の子のような粒々を擦られて思わず喉から空気が漏れた。愛しい珍宝を手前に引き抜かれてそのまま数秒焦らされた子宮口は、膣内を推し進めて近づくそれを待ちわびて白濁した粘液をだらだらとたらし、いざ鈴口が当てられるや否や恋人に抱きつくかのように吸い付いて離れないでとせがむ。
「っふ……はふぅ……」
(段々と慣れてきたか?)
腰の動きは止めずに、兜持は腰を掴んでいた手を放してすみれのまっ平らな胸にそっと添えた。
「ひゃぁんっ!」
指先が乳首を擦ったのか、すみれは身体を捩じらせて兜持の手から逃れようとする。
「こら、逃げるでない」
暴れる身体を刺し貫くように一物ですみれの子宮を持ち上げてやると、その痛気持ち良さにすみれは腰砕けになり、くったりと畳に身体を預けて抵抗を止めた。
そんなすみれの起伏のない胸をそっと撫でるが、どうも快感が強すぎるのかすみれは余り気持ちよいとは思っていないようで、さらにはすみれが敏感な胸に集中する余りに、解れ始めた膣内の感触にはすみれの意識が向かないようだった。
それでは困ると胸から手を放した兜持は、そのまま手で撫で下ろしていき、炎の点った腹のふちを撫でてから下腹へと手を伸ばして、下腹の恥骨をコリコリと揉んでやる。
しかしそれより先には自身が挿入している穴があるだけの行き止まりだった。
(いや待て。たしか貝柱が……)
恥骨を撫でていた手を更に下へと進めると、包皮に包まれた小さな陰核がほんの少しだけ勃起して存在感を示していた。
それを腰の動きを阻害しないように親指の腹でぞろりと撫で上げてみる。
「くきゅぅん!」
子犬が鳴くかのような声をすみれが上げたのを見て、どうやら胸よりこちらの方がすみれにとっては良さそうだと兜持は判断した。
陰核をくりくりと弄繰り回しながら、解れてきた膣内を陰茎で掻き分け、雁首のくびれを使って襞の内側を掻き出して行く。
面白いようにビクビクとすみれの身体から反応が得られた事に味を占めた兜持は、更に弱い場所を探し腰を動かす速度を上げて責め立てる。
「はっ、はっ、忠敬様、忠敬様ぁ……」
漸く痛みも消えたのだろう、すみれの目の焦点が狂いだすとうわ言の様に兜持の名を口に出し、自身を攻め立てる一物の動きに身体を任せている。
「なんだ、もう果てそうなのか?」
そう額に汗を浮かべて尋ねる兜持にも余裕は無い。いままで散々すみれの――妖怪の人間とは比べ物にならない名器を擦り上げ続けたのだ、余裕などあるはずが無い。
「忠敬様、お慕い申し上げております。すみれは、すみれは……」
絶頂が近いのか、すみれは小さな身体全体を使って兜持の身体にすがり付き、兜持の吐息も汗も鼓動ですらも逃がさないと言わんばかりに抱きしめる。
「すみれ、一番奥に出すぞ!!」
「忠敬さまぁああああ゛あ゛!!」
男根の全てを無理やりすみれの中へと押し込んだ兜持は、そこで溜まりに溜まった精を吐き出してすみれの膣内を白一色に染め上げる。
すみれも両手足でがっちりと兜持を抱きしめたまま最高到達点で果て、身体全体が快楽の波に翻弄されて痙攣し、愛しい男性の子種を子宮で受け止める。
そのまま数分間は兜持の射精がすみれに搾り取られるかのように続き、すみれの方も精を受け取るたびに妖怪の身体が嬉しさに悲鳴を上げて細かな絶頂を繰り返していた。
やがて射精が終わりを告げ、ずるりとまだ半勃ちのままの兜持の陰茎が引き抜かれると、すみれの小さな身体に収まりきれなかった精液がこぼりと音を立てて吐き出された。
「……忠敬様の子種が、勿体無い」
零れてしまった精液をすみれは手で掬い取るとそれを口元へと運ぶ。
「じゅるじゅる……はむぅ、ぺろぺろ、れろぅ〜……はふぅ、ちゅぱちゅぱ」
甘露であるかのように手にあった全ての精液を舐め取ったが、すみれはそれでも足りないのか手に残った精の残滓を吸い取っていく。
そんなすみれの淫靡な様子を見た兜持の陰茎も、すみれの淫気に当てられたかのように力を取り戻し、兜持はすみれの背後へ回り込んで腰を掴むと尻を持ち上げてすみれを後背位の体制にさせる。
「忠敬様!?」
「お前のような良い女、たった一度で満足するわけが無かろう。今夜は寝かさぬ」
「ただたかさまぁああああん!」
陰茎を膣内に埋めると、そのまま尻を掴んで乱暴に腰を振るい始め、すみれもこの犬のように犯されるのが気に入ったのか、甘い声を上げて兜持の気分を高ぶらせていく。
腰を打ち付けるたびに拍手のような音と水あめを混ぜ合わせているかのような粘ついた音が室内に響き、それが二人を更に興奮させていく。
「ここが良いのかすみれ!」
「そこです、そこをもっと強くしてくださいませ!すみれのなかを目茶目茶にしてください!」
すみれの指定した場所をすみれが言うとおりに強く執拗に嬲っていく。
「あん、あん、すごいです、ただたかさまぁ、もうすみれはすみれは――」
「まだ果てるなよすみれ。こっちはまだまだ遠いのだ」
「そ、そんな、あうんっ。もう駄目ですもう限界ですぅうううう!」
背中を丸めて絶頂感に酔いしれるすみれだったが、しかし兜持はそんな事は許さんとばかりに激しく腰を振っていく。
「あっ、くぅはぁん!そんなただたかさまぁあん、すみれは達したのです、そんな激しくせめないで下さいませ。そんなにしたらまた、またぁああ!」
「主人を放って置いて勝手に果てる道具の事など知らん」
「すみれが悪う御座いました。ひゃふ、ふぅうん――だから、どうかどうか」
「お前など勝手に果てろ。こっちも勝手にする」
「そんなぁん。ただたかさま、すみれは今度は確り耐えてみせます。どうかそんな見捨てるような事をいわないでぇええッ――」
すみれは腰を震わせ続け、その膣内も絶頂に伴った射精を促すような独特の動きを一瞬たりとも止めようとしていない。明らかに兜持の激しい責めで連続して達し続けているのにもかかわらず、道具の性で主人に見捨てられるのが怖いのか、すみれの口からいじらしい嘘が出てしまう。
「そうか、ならもうそろそろだ。それまで耐えてくれるな」
すみれの嘘など見破ってはいたが、兜持はすみれに覆いかぶさるようにして身体をくっ付けると、耳元に口を寄せてそう呟いた。
その兜持の言葉に、すみれは脅えた表情から一瞬にして花開いたものになった。
「耐えますから、だから早く早くぅううう――」
兜持の腰の動きに合わせる様に腰を振るってすみれは兜持を早く早くと急かす。
兜持のほうもやおら高まってきた射精感を堪えようとはせずに、睾丸から道を駆け上がる精液もそのまま通してやり、やがて陰茎の根元から競り上がってきたものをそのまますみれの中へと吐き出す。
「くうぅ!」
「きたぁああああ!!」
口を引き絞って射精の快感に打ち震える兜持。
すみれは再度の大きな絶頂感に畳を引っかきつつ、身体の至る場所が雷が走っているのかと思うようなビクビクと跳ね跳び、さらにはガクガクと震えて達する。
やがて兜持は精を吐き終えたのだが、すみれの身体は相変わらず逝きっ放しだった。
(しかしこれでもう……)
ようやく兜持が満足してくれたと思いすみれがほっとしたのもつかの間、兜持はすみれに挿入したまま腰を持ったままその場に寝転がった。
「へひゃぁ!?」
膣内をぐりっと兜持の男根が抉った衝撃で思わずすみれが身体を起こすと、すみれが兜持の上にまたがる体位――背面騎乗位で二人は繋がっていた。
「今宵は寝かさぬといったであろう」
「そんな、少しは休憩をおおぉおお!!」
問答無用とばかりにすみれを責め始める兜持。
今宵は空が薄白くなるまですみれの嬌声はとどまる事は無かった。
すみれが眼を覚ますと、微かに鰹節の効いた味噌汁の臭い。
「はっ!」
飛び起きたすみれがまず見たのは、自分の身体に着させられている男物のぶかぶかの寝巻き。
そして視線を上げたその先に、土間から上がってきた二つの膳をもった兜持の姿。
「起こしたか?」
「忠敬様。そのような事すみれが致しますのに」
「一晩情を交わして疲れ果てて眠る女子をたたき起こせるほど、神経は太くないものでな」
ほれ食えと膳を渡した兜持は、同心特有の早飯でささっと食べ終えると、そのまま膳を持って洗い場まで持っていってしまった。
慌ててすみれも食べ終えると、せめてこれ位はと兜持の着付けを手伝い、自身も脱ぎ捨てたままになっていた着物をきっちり着ると、兜持の見送りに玄関へ急いで向かう。
「いってくるぞ、すみれ」
「はい、いってらっしゃいませ忠敬様」
門の前まで歩を進めた兜持だったが、何かを思い出したようにくるりと踵を返すと玄関まで戻ってきた。
「忘れ物ですか?」
ふふっと笑った兜持は、すみれの耳に内緒話であるかのように顔を近づけた。
「今度の月番休みの時、同心仲間を呼んで祝言を挙げよう」
それだけ言うと、兜持はいってくると告げてそのまま出て行ってしまった。
突然の求婚に天にも昇る程の心持になったすみれは、今宵も昨晩のように可愛がってもらえるのだろうかと期待して、人知れずすみれの股には涎が出てしまうであった。
『最近古い道具が妖怪化する事案が発生しているとの事。ついては無用の混乱を避けるため、古い道具を一新する事となった。各々も古い道具を処分して欲しい』
その上司の言葉に昨今倹約が叫ばれている中で豪気なことだと一応は頭を下げて返礼はしたものの、兜持は古い道具――懐中提灯を収めていた懐へ知らず知らずのうちに手を伸ばしていた。
この懐中提灯には思い入れがあった。
同心となって初めての給金で一目惚れして買い求めた品だったのだ。以来十年間肌身離さず持ち歩き、苦楽を共にした相棒とも呼べる品だったのだ。
(しかし上役殿の仰せには従わなければならぬ)
手放すのは惜しいが見回り同心というお役目上、隠し持っていていざ盗賊との戦いという中で提灯が妖怪変化し現場を混乱させれば、切腹すらありうる状況では致し方のないことだった。
せめて今宵はこの懐中提灯を弔ってやろうと思い立ち、弔いに必要な品――といっても酒とそのあてだが――を求めてまず酒屋へと足を踏み入れた。
「いらっしゃい。おや旦那」
「久しいな」
手に持った大徳利に酒を入れてくれるよう頼む。何時もは安酒で済ます兜持だが、今日ばかりは上方流れの上物をつめてもらった。
「何かのお祝いで?」
「むしろ悪い事だ。上物の酒でももらわねばやり切れぬ」
冗談交じりでそう答えつつ礼を言って立ち去ろうとした兜持の目の端に、酒屋に似つかわしくないものが目に入った。
「おい、なぜ絵蝋燭を売っておるのだ?」
「い、いや別に怪しいものじゃ御座いませんよ」
ついつい役目柄で詰問口調になってしまった兜持に、慌てたように弁解をする番頭。
番頭が言うには財布を忘れた酒好きの蝋燭売りが、安酒の代金代わりに置いていったそうだ。
詐欺ではないかといぶかしむ兜持に、番頭は顔見知りなのでそれはないと答えた。
「それにしても、見事な絵付けだな……幾らだ」
蝋燭の白い下地に名も知らぬ綺麗な薄紫色の花弁の付いた一輪の花の絵が描かれていた。
この際、提灯の弔いに灯す蝋燭も新しい方がいいだろうと思い立ち、兜持はこの蝋燭を買う事を決意した。
「一匁(もんめ)です」
「安いな。この見事さならば、一朱(しゅ)してもいいぐらいだろう」
一匁というのは掛け蕎麦を五杯食べられる程度の代金であり、一朱というのはその三・四倍の値段の事である。
「かと言って高値で酒屋に置いておいても腐らせるだけ。それに酒の代金以上には貰おうとは思えませんので」
「そうか、では貰おう」
「これはどうも有難う御座います。今後もご贔屓に」
兜持は匁銀貨を一枚手渡して蝋燭を受け取ると店を後にし、道端で酒のあてになりそうな乾き物や佃煮などを買ってから家に帰った。
兜持が住んでいるのは同心長屋の一室。兜持は刀の腕を見込まれて同心となった兜持家の三男であるゆえに、この家には口煩い母親はいない。
さらには愛しい奥方や懸想する恋人もおらず、かと言って女中を雇うほど給金に余裕のない兜持は一人でこの家に暮らしていた。
お陰で侍ながらに料理の腕は上がり、懐具合の厳しい給料前には同心仲間が食料をもちより、兜持が手料理を振舞ったりしていた事から、奥方要らずだなどと言われている。
それはさておき、寝巻きに着替え終わった兜持は一通りの肴を膳の上に用意して部屋へ置くと、懐から懐中提灯と絵蝋燭を取り出した。
蝋燭に行灯からの火を移しそれを提灯の中へ入れ、縮んでいた提灯を蛇腹を引き伸ばすと、提灯の薄茶けた和紙に描かれた色あせた菫の花があわられた。
その提灯を膳の向かい側に置き、行灯の火を息を吹きかけて消すと、部屋の中には提灯の明かりだけになる。
すると日ごろでは味わえない寂の趣きがあった。
「まずは一献」
膳の自分の方にはぐい飲みを提灯の方には小さなお猪口を置き、その二つに上質の酒を並々と注ぐ。
兜持はぐい飲みを握ると、それを提灯に向かって掲げた後に全て飲み干した。
「しかしお前とはずいぶん長く一緒にいたな」
飲み干した杯に酒を入れつつ、甘辛い貝の佃煮に箸を伸ばしながらそう溢す様に口に出した兜持。
「余り使っておらなかったとはいえ、十年も持つとはな」
提灯の寿命は他の道具に比べてはるかに短い。
大店の提灯は広告の意味合いもあり絶えず新しいものへと入れ替えられ、祭り提灯は祭りの間だけの命。普通の提灯でさえ乱暴に扱えば、紙に蝋燭の火が当たりあっという間に燃え尽きてしまう。
携帯性を重視し耐久性を二の次にした懐中提灯など言わずもがなである。
「初めての月番休みの時につい遠出をしに行き、その夜道でお前を使ったな。あの時は真っ白な紙に青々とした菫が美しかった」
あまり飲み慣れない高級な酒に酔ったのか、当時の事を思い出すように茶けた提灯の紙を見つめながら兜持は独白する。
「盗人と大立ち回りを演じたときは、腹にお前があったお陰で大怪我をせずに済んだ」
提灯の鉄で出来た蓋には、そのときに付いたであろう刃物傷が刻まれていた。
「あの時だってそうだ……」
本格的に酒に当てられたのか、そこからは十年分の思い出を吐露するかのように口に出していく。
どんなにこの提灯が自分の役に立ったのか、それを提灯に言って聞かせるかのように。
「むっ、肴が切れたか。追加を持ってくるとするか」
酒に酔いつつもそこは武芸を修めた侍。確りとした足取りで土間へ向かい、残りの肴を皿に載せて部屋に戻ってきた。
「さて話の続きを……だれだお主は」
訝しげに眉根を寄せた兜持の視線の先には、少し背丈の小さい女子が膳にあったお猪口で酒を飲んでいた。
「見かけぬ顔だが何処の子だ?いや、子供が酒を飲むでない」
「いやですわ忠敬様。つい今しがた差し向かいで酒を飲んでいたではありませんか」
少し高めの鈴をころころと転がすような声色でくすくすと笑う少女だが、その姿に似つかわしくない程、どこか年を経た年増女のような妖艶さがちらりと笑みの向こう側に覗いていた。
「これは異な事を。自分が一緒に飲んでいたのは……」
そこで酒で回りの悪かった頭が何かにはまり、いまの状況がするすると兜持の頭の中で整理されていく。
「お前、あの提灯か」
「はいな、その提灯です」
唖然とする兜持の様子がおかしいのか、口元を和服の裾で押さえながらくすくすと笑う提灯娘。
「まさか上役殿の言っていた事が本当とはな……」
「まあまあ、そんなことは良いではありませんか。まだ酒はたんまり残っているのですから、ささ座って下さいな」
手招きして対面へと兜持を座らせると、提灯娘は兜持にぐい飲みを握らせてその中に酒を入れていく。
注がれた酒に口を付けつつ、妖怪変化をした自分の提灯を眺める兜持。
顔は綺麗というよりかは可愛らしいと表現した方が良さそうな、どこかまだ幼さの残る形をしている。しかし目元や口元から隠す事の出来ない妖怪ながらの艶やかさが見て取れた。
黄色主体の着物の胸元には名も知らぬ紫の花をあしらい、袖には菫がちりばめられている。その着物越しに見た彼女の体系は、胸も尻も大人の女というには不足に過ぎる帰来があり、背丈も寺子屋へ通っているのが似合っているような、そんな少女然としているものだった。
「そう言えば名を聞いてなかったな」
「在りませんわよ、忠敬様がつけて下さいませんでしたもの」
どこか拗ねた様に猪口に入った酒に口を付ける。
それもそうかと呼び名を決めようと頭を捻るが、あまり良いのが思い浮かばない。
「安直ですまぬが、『すみれ』では駄目か」
「もう少し捻って頂きたい所ですが、忠敬様が付けてくださったのなら不満は御座いません」
くいっと猪口を飲み干すと、すみれは兜持へとすすっと畳を擦って近づきその肩に頭を乗せた。
「こらあまり近づくでない」
「どうせ今日で最初で最後ですもの、甘えさせてくださいまし」
兜持の身体から発する臭いと、頬に伝わってくる温かみを記憶するかのように眼を瞑って堪能するすみれ。
「最初は判るが最後とはどういう意味だ?」
「それをワタクシの口から言わせるおつもりですか……」
いけずですねと小声で追加しつつも、その意味をすみれが言葉に出す事はなかった。
はて今日で最後になる様な事があったかと首を捻っていた兜持だったが、一つだけ思い至った部分があった。
「もしや捨てられやしないかと思っておるのか」
「……さっきまでお捨てになる算段をなさっていたではありませんか」
「それはあの古びた提灯の時の話だ。上役殿もまさか妖怪変化したものを捨てろとは言わぬだろう」
酒で喉を潤しつつそう告げた兜持の瞳を、すみれは縋るような目つきでまっすぐに見つめる。
「それは本当ですか?」
「いま嘘を言ってどうなる。むしろこの状況で嘘を妖怪についたら後が怖い」
その言葉を聴いた途端にすみれは兜持の唇に吸い付き、兜持の口内へ舌を滑り込ませた。
「ちゅっ、れろぅ……ぐちゅぅ」
驚愕で固まった兜持の心境を無視するかのように、兜持の動かない舌の下にすみれの舌が滑り込み、兜持の舌の裏筋を舌先で舐め上げていく。
それでも兜持の舌に反応はなく、そんなつれない態度に我慢が出来なくなったのか、無理やり舌を絡ませて恋人同士がするかのように激しい接吻を交わす。
やがて肺の中にあった空気が尽きたのか、すみれは渋々といった様子で口を放した。
「ぷはぁ……はぁ、はぁ……」
「……行き成りなにをする?」
少女姿の提灯に襲われるという状況に、どこか憮然とした態度でそう尋ねずにはいられぬ兜持だった。
「だって、捨てられるのならば、忠敬様の臭いと体温だけを胸に刻んで別れようと思っておりましたのに、あのように優しい言葉をかけて下さったら我慢など出来ようはずが御座いません」
「しかし行き成り接吻とは……」
「いやで御座いましたか?」
兜持に叱責されるのを恐れているのか、どこかすみれの瞳は心配そうに揺れていた。
「少し見た目が若すぎるが、お前のような目麗しい女性に口を吸われて嫌なわけはなかろう。ただ少し行き成りすぎただけで、驚愕しただけだ」
「それでは続きをしてくださいまし」
顔を寄せるすみれに対し、今度は自分から口を吸いに行く兜持。
二人の唇の境界という真ん中で、二人の口から伸びた舌がお互いを求めるかのように絡ませ合い、そして相手の舌の根を引っこ抜こうとするかのように自分の口の中へと引っ張る。
その攻防の間に二人の手は相手の衣服を脱がそうと蠢き出し、お互いに着物の帯を解くと、着物の裾から手を入れて愛撫するかのような手つきでゆっくりと着物を脱がしていく。
やがて二人の身を包むものが着物が下着だけになると、二人は漸くといった風に口を離した。
「しかし何故かお前と口づけすると、やけに喉が渇くな」
「物の怪は口の唾液からでも精を食べるのですよ。そうだ良いことを思いつきました」
一先ず兜持の腕から逃れたすみれは下着を外して一糸纏わぬ姿になると、正座をして足を間をぴっちりと閉じると、玉肌の足とつるりとした無毛の股の間に出来た窪みに酒を注いでいく。
「ほら忠敬様。わかめ酒で御座います」
「こら、その酒は高かったのだぞ」
しかし兜持はその酒の注がれた窪みに顔を近づけると、思いっきり音を立てて吸い込み始める。
「ずぞぞぞぞ〜〜〜」
「まだまだお代わりはありますからね」
兜持が吸い込んで減った分を、すみれは徳利の中身を自分の下腹を滑らせて注ぎ込む。
ごくごくと飲み干していく兜持の顔は段々と赤く染まり始め、徳利の中身を全て飲み干す頃には、アカオニかと思わせるように真っ赤になってしまった。
「ほら忠敬様、徳利の中身は空ですよ。わかめ酒はもうありません」
「何を言っておるか。最初からわかめなどないではないか」
全て飲み終えてそう告げた兜持ちは、すみれのもち肌でぷっくりと土手が盛られた割れ目の直ぐ上を舐める。
「ひゃん、忠敬様行き成り何を」
「ほらみろ、わかめなど在りはしない。あるのは貝だけだ」
軽くすみれを突き飛ばした兜持は、露になった割れ目に顔を埋めると味を確かめるように舌を奥へと侵入させた。
「あんっ、忠敬様、いけませんそれ以上、うっん」
「そんな事を言っておいて、ここからは貝の出汁があふれ出てくるぞ」
舌で兜持の小指ほどの小さな膣穴を穿り回して、奥から流れ出てくる汁を舐め取っていく。
当初は湿らす程の量と感じられぬほどの塩味しか出てこなかった穴も、舌が中でうごめくたびに段々とその量と味を増していき、ついには舐めとっても舐めとっても溢れ出て来るようになった。
「酒の次は貝の吸い物か、美味そうだ……ずぞぞぞぞ〜」
「そんなぁん、破廉恥な音を立てて吸わないで下さ、あひんっ!」
兜持が吸い込みごくごくと飲み干しても、あふれ出る膣液は口から零れ落ちて兜持の口周りと顎舌を濡らしてから畳に染みを作る。
舌先で穿られて膣内を犯され、耳から脳内にかけても兜持の汁をすすり上げる音で侵さたすみれは、淫行が大好きな妖怪の本性を出して段々と恍惚の表情へと変わっていく。
「はっぁ……はぁぅ……もう、忠敬様ったらぁ……」
必死に顔を股に埋めて啜っている兜持の頭を、愛し子のように愛情を込めて撫でて行く。
くすぐったいのか兜持が身じろぎすると、兜持の舌の先がすみれの膣内の浅い場所にある敏感な場所を舐め上げた。
「ひゃぁああん!」
思わず兜持の頭を股間に押し付けるようにして嬌声を上げたすみれは、はっとなって誤魔化すように慌てて力を緩めた。
しかしすみれの弱い部分を見つけた兜持は、その場所を丁寧に舌先でほぐすように弄くり始める。
「あひゅっ、だめ、そこはぁ、強すぎますっん……忠敬さま、お願いですから、そこばっかり、いじめないでくださいま、あはぁん!」
そんな頼みは聞けないとばかりに時に強く時に弱くを繰り返していくと、すみれの幼い外見の下腹には甘い痺れが溜まっていった。
やがてその溜まるものが一定量を越えて溢れ始め、腰を揺るがすほどの強さになると、たまらずすみれは頭の上にある畳の目に指を突き立てて、兜持の下から逃れようとする。
「だめです、ふひゃぁん、それ以上したら果てぇ、果ててしまいます!後生ですから、ごしょうですからぁあん!!」
逃がさないと腰を両手で掴むと、兜持はより一層執拗に同じ場所を責めを続ける。
「は、はっ、もう無理です、ふ、ふぅ、達しちゃいます、むり、我慢できない! むりぃ、むり、むりい゛い゛い゛いい゛!!―――」
足をピンと伸ばして下腹をぶるぶると震わせ、喉を伸ばして背を海老反らせながら絶頂したすみれは、膣の奥から大量の陰液を兜持の顔にぶちまけ、さらに子宮の奥からは白濁した汁が膣内を通って外にでてきていた。
「美味しかったぞ、そなたの吸い物は」
顔に掛かった液体を舌で舐め取りながら、ぐったりとしたすみれに口づけする。
「も、もうっ、そんな、汁まみれの顔で、接吻、しないでくださいまし」
息も絶え絶えにすみれはそういうと、腹の中にある炎を若干強めに燃え上がらせた。
すると兜持の頭の中に巣くっていた酒精がその炎にあぶられて逃げ出し、兜持の頭に掛かっていた酒靄が晴れていく。
「すこしは、頭がすっきり、なさいましたか」
「ああ……少し調子に乗りすぎたな。すみれ大事無いか?」
畳の上で四肢を投げ出して恥も外聞も無い様子で横たわるすみれに、兜持自身がした事とはいえ思わず心配してしまう。
「とても気持ちよかったです……でも」
「でも?」
「ここに忠敬様のお情けを頂きたいのですが」
膝を腹につけるように腰を曲げて兜持の視線の先にすみれの割れ目を晒すようにすると、左右の手の一指し指で左右に広げて見せた。
くぱりと貝の口が開くかのように晒されたその場所は、早く兜持の一物を咥え込みたいとパクパクと穴が大きくなったり小さくなったりしていた。
しかし兜持は少し鼻白んでしまう。
「このような小さな場所に、本当に魔羅が入るのか?」
たしかにすみれの小さな体格に似合った小さなその穴は、兜持の人差し指ほどの大きさしかないため、兜持の人差し指と中指をあわせたものよりも若干横幅のある男根が入れるとは思えない。
「それが女体の神秘というものです。それに先ほど忠敬様が解して下さったので、すんなり入ると思います」
「そのようなものなのか?」
ためしに指を二本そろえて膣内に侵入させてみると、確かに締め付けで多少きつい感じもするが、指の半ばで処女膜で押し留められるまですんなり入った。
「はぁああッ!」
「確かにすんなり入るものだ」
中の感触を確かめるように、指を出し入れしたり中で曲げて擦ってみたりしても、多少余裕があるようだ。これなら兜持の一物を入れても問題はなさそうだった。
「忠敬様、指ではなく……」
「おおっ、済まぬ」
「ひゅぅん!」
慌てて指を引き抜き、指に纏わりついていた白濁してねっとりとした粘液を自分の亀頭と陰茎にこすりつけ、挿入の準備を終えた。
「いくぞ、すみれ」
「はい、来てくださいませ」
正常位の体勢で一物をあてがった後、ずぶずぶと泥沼に足を踏み入れたかのような手ごたえを一物から感じつつ、兜持はゆっくりとすみれの中へと挿入していく。
「はぁっ、くうぅぅっ!」
ゆっくりと亀のような歩みで中を進んでいく熱い棒に膣内を焼かれて、すみれは思わず声を上げた。
その声を聞きつつも、さらに押し進めていき亀頭が全て飲み込まれたあたりで処女膜とぶつかった。
「すみれ、一気にいくぞ。気を確り持てよ」
「すー、はー……良う御座います」
兜持が腰を思いっきり突き込むと、糸束を引き千切ったような感触がすみれの膣内から発せられ、兜持の男根が残り三分の一を膣外に出したまま子宮の口へ到達すると、すみれの膣からは押し出された愛液と共に、乙女ではなくなった証である赤い液体が流れ出てきた。
「うぅぅうぅッ……」
「すみれ、余りにも痛むのならば、しばらくこのままで……」
「いいのです。すみれは忠敬様の道具なのですから、お気になさらず思う存分に動いてお使いくださいませ」
目じりに涙を浮かべつつもそう健気に言うすみれの言葉を信じて、腰を動かして膣内を陰茎で擦り上げていく。しかし出来るだけ優しく。
ゆっくりと引き処女膜が存在していた所よりも手前側を二度三度と雁首で擦り上げたあと、ゆっくりと奥へと入れ込んでいく。
「もっと、激しくして下さっても、よいのですよ」
「なにしっかりと具合を確かめておるのだ」
「嘘が下手な、お人ですね」
そんな兜持の優しさに触れてすみれの心が温かくなると、膣内に感じていた痛みもいくぶん柔らかくなり、少しだけ兜持の一物の感触を確かめる余裕が生まれた。
引き抜くたびに雁首で膣の上壁を撫で上げられてぴくりと身体が反応し、膣の浅い場所にある数の子のような粒々を擦られて思わず喉から空気が漏れた。愛しい珍宝を手前に引き抜かれてそのまま数秒焦らされた子宮口は、膣内を推し進めて近づくそれを待ちわびて白濁した粘液をだらだらとたらし、いざ鈴口が当てられるや否や恋人に抱きつくかのように吸い付いて離れないでとせがむ。
「っふ……はふぅ……」
(段々と慣れてきたか?)
腰の動きは止めずに、兜持は腰を掴んでいた手を放してすみれのまっ平らな胸にそっと添えた。
「ひゃぁんっ!」
指先が乳首を擦ったのか、すみれは身体を捩じらせて兜持の手から逃れようとする。
「こら、逃げるでない」
暴れる身体を刺し貫くように一物ですみれの子宮を持ち上げてやると、その痛気持ち良さにすみれは腰砕けになり、くったりと畳に身体を預けて抵抗を止めた。
そんなすみれの起伏のない胸をそっと撫でるが、どうも快感が強すぎるのかすみれは余り気持ちよいとは思っていないようで、さらにはすみれが敏感な胸に集中する余りに、解れ始めた膣内の感触にはすみれの意識が向かないようだった。
それでは困ると胸から手を放した兜持は、そのまま手で撫で下ろしていき、炎の点った腹のふちを撫でてから下腹へと手を伸ばして、下腹の恥骨をコリコリと揉んでやる。
しかしそれより先には自身が挿入している穴があるだけの行き止まりだった。
(いや待て。たしか貝柱が……)
恥骨を撫でていた手を更に下へと進めると、包皮に包まれた小さな陰核がほんの少しだけ勃起して存在感を示していた。
それを腰の動きを阻害しないように親指の腹でぞろりと撫で上げてみる。
「くきゅぅん!」
子犬が鳴くかのような声をすみれが上げたのを見て、どうやら胸よりこちらの方がすみれにとっては良さそうだと兜持は判断した。
陰核をくりくりと弄繰り回しながら、解れてきた膣内を陰茎で掻き分け、雁首のくびれを使って襞の内側を掻き出して行く。
面白いようにビクビクとすみれの身体から反応が得られた事に味を占めた兜持は、更に弱い場所を探し腰を動かす速度を上げて責め立てる。
「はっ、はっ、忠敬様、忠敬様ぁ……」
漸く痛みも消えたのだろう、すみれの目の焦点が狂いだすとうわ言の様に兜持の名を口に出し、自身を攻め立てる一物の動きに身体を任せている。
「なんだ、もう果てそうなのか?」
そう額に汗を浮かべて尋ねる兜持にも余裕は無い。いままで散々すみれの――妖怪の人間とは比べ物にならない名器を擦り上げ続けたのだ、余裕などあるはずが無い。
「忠敬様、お慕い申し上げております。すみれは、すみれは……」
絶頂が近いのか、すみれは小さな身体全体を使って兜持の身体にすがり付き、兜持の吐息も汗も鼓動ですらも逃がさないと言わんばかりに抱きしめる。
「すみれ、一番奥に出すぞ!!」
「忠敬さまぁああああ゛あ゛!!」
男根の全てを無理やりすみれの中へと押し込んだ兜持は、そこで溜まりに溜まった精を吐き出してすみれの膣内を白一色に染め上げる。
すみれも両手足でがっちりと兜持を抱きしめたまま最高到達点で果て、身体全体が快楽の波に翻弄されて痙攣し、愛しい男性の子種を子宮で受け止める。
そのまま数分間は兜持の射精がすみれに搾り取られるかのように続き、すみれの方も精を受け取るたびに妖怪の身体が嬉しさに悲鳴を上げて細かな絶頂を繰り返していた。
やがて射精が終わりを告げ、ずるりとまだ半勃ちのままの兜持の陰茎が引き抜かれると、すみれの小さな身体に収まりきれなかった精液がこぼりと音を立てて吐き出された。
「……忠敬様の子種が、勿体無い」
零れてしまった精液をすみれは手で掬い取るとそれを口元へと運ぶ。
「じゅるじゅる……はむぅ、ぺろぺろ、れろぅ〜……はふぅ、ちゅぱちゅぱ」
甘露であるかのように手にあった全ての精液を舐め取ったが、すみれはそれでも足りないのか手に残った精の残滓を吸い取っていく。
そんなすみれの淫靡な様子を見た兜持の陰茎も、すみれの淫気に当てられたかのように力を取り戻し、兜持はすみれの背後へ回り込んで腰を掴むと尻を持ち上げてすみれを後背位の体制にさせる。
「忠敬様!?」
「お前のような良い女、たった一度で満足するわけが無かろう。今夜は寝かさぬ」
「ただたかさまぁああああん!」
陰茎を膣内に埋めると、そのまま尻を掴んで乱暴に腰を振るい始め、すみれもこの犬のように犯されるのが気に入ったのか、甘い声を上げて兜持の気分を高ぶらせていく。
腰を打ち付けるたびに拍手のような音と水あめを混ぜ合わせているかのような粘ついた音が室内に響き、それが二人を更に興奮させていく。
「ここが良いのかすみれ!」
「そこです、そこをもっと強くしてくださいませ!すみれのなかを目茶目茶にしてください!」
すみれの指定した場所をすみれが言うとおりに強く執拗に嬲っていく。
「あん、あん、すごいです、ただたかさまぁ、もうすみれはすみれは――」
「まだ果てるなよすみれ。こっちはまだまだ遠いのだ」
「そ、そんな、あうんっ。もう駄目ですもう限界ですぅうううう!」
背中を丸めて絶頂感に酔いしれるすみれだったが、しかし兜持はそんな事は許さんとばかりに激しく腰を振っていく。
「あっ、くぅはぁん!そんなただたかさまぁあん、すみれは達したのです、そんな激しくせめないで下さいませ。そんなにしたらまた、またぁああ!」
「主人を放って置いて勝手に果てる道具の事など知らん」
「すみれが悪う御座いました。ひゃふ、ふぅうん――だから、どうかどうか」
「お前など勝手に果てろ。こっちも勝手にする」
「そんなぁん。ただたかさま、すみれは今度は確り耐えてみせます。どうかそんな見捨てるような事をいわないでぇええッ――」
すみれは腰を震わせ続け、その膣内も絶頂に伴った射精を促すような独特の動きを一瞬たりとも止めようとしていない。明らかに兜持の激しい責めで連続して達し続けているのにもかかわらず、道具の性で主人に見捨てられるのが怖いのか、すみれの口からいじらしい嘘が出てしまう。
「そうか、ならもうそろそろだ。それまで耐えてくれるな」
すみれの嘘など見破ってはいたが、兜持はすみれに覆いかぶさるようにして身体をくっ付けると、耳元に口を寄せてそう呟いた。
その兜持の言葉に、すみれは脅えた表情から一瞬にして花開いたものになった。
「耐えますから、だから早く早くぅううう――」
兜持の腰の動きに合わせる様に腰を振るってすみれは兜持を早く早くと急かす。
兜持のほうもやおら高まってきた射精感を堪えようとはせずに、睾丸から道を駆け上がる精液もそのまま通してやり、やがて陰茎の根元から競り上がってきたものをそのまますみれの中へと吐き出す。
「くうぅ!」
「きたぁああああ!!」
口を引き絞って射精の快感に打ち震える兜持。
すみれは再度の大きな絶頂感に畳を引っかきつつ、身体の至る場所が雷が走っているのかと思うようなビクビクと跳ね跳び、さらにはガクガクと震えて達する。
やがて兜持は精を吐き終えたのだが、すみれの身体は相変わらず逝きっ放しだった。
(しかしこれでもう……)
ようやく兜持が満足してくれたと思いすみれがほっとしたのもつかの間、兜持はすみれに挿入したまま腰を持ったままその場に寝転がった。
「へひゃぁ!?」
膣内をぐりっと兜持の男根が抉った衝撃で思わずすみれが身体を起こすと、すみれが兜持の上にまたがる体位――背面騎乗位で二人は繋がっていた。
「今宵は寝かさぬといったであろう」
「そんな、少しは休憩をおおぉおお!!」
問答無用とばかりにすみれを責め始める兜持。
今宵は空が薄白くなるまですみれの嬌声はとどまる事は無かった。
すみれが眼を覚ますと、微かに鰹節の効いた味噌汁の臭い。
「はっ!」
飛び起きたすみれがまず見たのは、自分の身体に着させられている男物のぶかぶかの寝巻き。
そして視線を上げたその先に、土間から上がってきた二つの膳をもった兜持の姿。
「起こしたか?」
「忠敬様。そのような事すみれが致しますのに」
「一晩情を交わして疲れ果てて眠る女子をたたき起こせるほど、神経は太くないものでな」
ほれ食えと膳を渡した兜持は、同心特有の早飯でささっと食べ終えると、そのまま膳を持って洗い場まで持っていってしまった。
慌ててすみれも食べ終えると、せめてこれ位はと兜持の着付けを手伝い、自身も脱ぎ捨てたままになっていた着物をきっちり着ると、兜持の見送りに玄関へ急いで向かう。
「いってくるぞ、すみれ」
「はい、いってらっしゃいませ忠敬様」
門の前まで歩を進めた兜持だったが、何かを思い出したようにくるりと踵を返すと玄関まで戻ってきた。
「忘れ物ですか?」
ふふっと笑った兜持は、すみれの耳に内緒話であるかのように顔を近づけた。
「今度の月番休みの時、同心仲間を呼んで祝言を挙げよう」
それだけ言うと、兜持はいってくると告げてそのまま出て行ってしまった。
突然の求婚に天にも昇る程の心持になったすみれは、今宵も昨晩のように可愛がってもらえるのだろうかと期待して、人知れずすみれの股には涎が出てしまうであった。
11/08/09 13:19更新 / 中文字