リノの繭
西の森が消えた。半月前、そんな不可解な報告が詰所に入ってきた。曰く、青々としていた筈の森が一面立ち枯れになっている。曰く、気味の悪い白い塊が至る所に散らばっている。曰く、調査に入った人間が一人も戻ってこない。曰く、よって原因の調査を命ずる──未知の危険に備え十分に注意すること。
「だりいなぁ、こんなおつかいみてぇなしょっぺえ仕事」
「ウドさん、ずんずん進みすぎですよ…な、なんか気味悪いですよここ…もっと慎重に行きましょうって」
薄く靄がかった立ち枯れの森を進む人影が二つ。先を行くのはウドと呼ばれた中肉中背の男で、後をついて行くのは小柄で細身な男だ。
「リノよぉ、びびりすぎなんだよおめぇは。いい年こいて魔物がこわいでちゅか〜?」
「う…で、でも…入った人が帰ってこないって…」
小枝をぱきぱきと踏みしだきながら無造作に歩き続ける前の中年とは対照的に、歩幅も狭く臆病そうにおどおどと歩く少年。その身を包む制服の左胸にはL.アーレンスと小さく刺繍されている。少年の名はリーンハルト。ただこの長い名前を呼ぶ人は少ない──少なくともウドは一度もこの少年を本名で呼んだことはなかった。
ばき、と一際大きい枝を踏み折って立ち止まり、ウドはくるりと振り返る。
「はぁ…そんなに怖えなら帰ってもいいぜ?その分給料は出ねえし上には報告するし、来た道を独りで戻ることになるが」
ただでさえ白いリノの顔がさらに白くなった。
「…い、行きます、行きますから…置いてかないでくださいっ」
「ったくよぉ、俺はさっさと終わらせてぇのに…」
(どうしてこんなことになったんだろう…)
王国の暮らしに憧れて、リーンハルト・アーレンス──もといリノが半ば家出のように故郷を飛び出したのが15歳…今から三年前。三年間働きながら必死に勉強して軍の調査班と研究班に志願したのだ。結果見事に入隊できたはいいものの、配属されたのは王国から遙か西の辺境…ドが付くほどの田舎だった。
(これじゃあ実家にいたときと何も変わらない…それに)
リノが配属されたバルト郡の支部にはなんと調査班も研究班もなかったのだ。小さな詰所にあるのは警備班のみ。直属の上司であるウドが言うには、この郡は仕事が少なすぎるため警備班が全業務を一手に担っているとのことだった。
「いつも何をしてんのか?ん〜…適当に仕事こなして…適当に報告書書いて…その繰り返しだな。文句あっか?」
ウドは怠惰で傲慢な男だった。とかく仕事は雑だし机は汚い。いつも酒の匂いがする。自らのことを棚に上げて、農民や商人を馬鹿にしている。この男の下で働くこと自体リノには受け入れがたいことだった。
そして不幸は重なるとでも言うように、今回の依頼。依頼書を読むに、詰め所近くの森でただ事ではない事態が発生しているようだった。ウドはその依頼書をろくに読みもしなかった──彼が確認するのはいつも目的地だけだ。
(こんな…危なそうな現地調査するなんて聞いてないよ…)
かくしてリノの──配属2ヶ月目にしてまだ5つ目の──業務が幕を開けたのだった。
・
・
・
森の光景は概ね依頼書どおりだった。本来なら青々と葉を茂らせているはずの木々にはほとんど緑が残っていない。黒い樹皮が露わになった幾本もの木がそびえ立つ様子はどことなく不気味で、さらに辺りには霧が掛かっており見通しが悪い。折しも天気は小雨で太陽は雲に隠れ、辺りは薄暗かった。気味の悪い風景だ。さっさと終わらせたい、ということに関してだけはリノもウドと全く同意見だった。
「何があったんでしょう…」
「あ?んなもんどーでもいいだろ…こんなもんどうせわかるわけねーんだから『調査結果:不明』でいいんだよ」
一体あなたは何をしに来たんですか、そう言いたい気持ちをぐっと抑えて、リノはウドの背中を追いかけた。
森をしばらく進むと、奇妙な白い塊がちらほらと現れ始めた。
「なんだこりゃ」
「依頼書にあったものですね…大きな…繭、みたいに見えますが」
しかしそれは繭と呼ぶには余りにも巨大だった。大の大人が二、三人ほどはすっぽり入れそうな大きさの白い繊維質の塊が、地面にべったりと張り付いている。
「けったくそわりぃな」
ウドはそう言い放つと巨大な繭を無造作に蹴りつけた。
「ちょ…大丈夫なんですか?魔物のねぐらとか、卵とかだったら……ひぃっ!?」
「うっせーなぁ…びびりすぎって言ってん……おい、なんだよ?」
突如、情けない悲鳴がリノの喉から漏れた。不安と言うより怯えを孕んだ彼の声と様子に、ウドは怪訝そうな顔をする。
「いっ今…それ、動きましたよ…それになんか、その中から人の声が…」
間違いない。ウドに蹴られた瞬間、繭が不自然に震えた。それと同時に繭から女のようでいて男のような声が聞こえたのだ。
「お、おいやめろよ…からかってんのか」
後退りするリノにつられてか、ウドも繭に向き直って距離を取った。
「も、もう行きましょう?…これだけ見て回れば十分ですって──」
リノがそう言いかけた瞬間だった。繭が再びもぞもぞと動き、その白い塊の中から──ぶちゅ、という奇妙な音を立てて毒々しい橙色の何かが飛び出した。
「ひっ」
思わずリノは尻餅をついて、後ろ手で後退りした。だが隣のウドは虚勢からか、はたまた反応できなかったのか、突如出現した橙色のそれを呆けたように見つめている。しかして異変はすぐに現れた。
「ぁ…が…」
ずりずりと情けなく後退するリノとは対照的に、ウドは棒立ちのまま動こうとしない。しかし彼の喉から漏れる呻き声は明らかに恐怖と苦悶を孕んでいた。
「う、ウドさん…!?何突っ立ってるんですかっ!逃げましょうってば……えっ!?」
リノが後ろから必死に声を掛けるも、ウドは後退りさえしないどころか──膝から崩れ落ちてしまった。まるで糸が切れたかのようにその場に倒れ込んでしまったのだ。受け身も取れず倒れ込んだウドと、尻餅をついたままのリノの目が合った。
「…か、らだ…うご…か……」
ウドは力の抜けた表情に目つきだけを険しくして、掠れた声でこちらに何事かを訴えかけてくる。余りに異様で恐ろしい状況にリノの全身はがたがたと震え、心臓はばくばくと高鳴りはじめた。
「ひ、ひぃっ…」
何かわからないが恐ろしいことが始まっている。そう直感で判断し、リノは立ち上がった。
(逃げなきゃ…ひ、ひとりでも…っ)
だが時既に遅し。立ち上がり、走り出そうとしたその瞬間──がくりと膝が折れ、気づけば目の前に地面が迫っていた。
「うぐっ」
最初は震えの余り転倒したかと思ったが、すぐにそうではないと気づく。
(立ち上がれない…!?)
腕が持ち上がらない。脚も曲がらない。全身にほとんど力が入らないのだ。どうやらウドと同じ状態のようだった。気づけば辺りには酸っぱいような苦いような奇妙な臭いが充満していた。
(多分、あのオレンジ色の触手みたいなのが…)
恐らくはあの得体の知れない橙色の塊から放たれたこの臭いが体の自由を奪っているのだ。ウドは至近距離でこれを嗅いでしまったに違いない。リノは僅かながら距離を取れたからか、少しならば──四つん這いになるくらいならば、まだ体に力が入る。
「う、うう…」
思いきり腕を突っ張って起き上がろうとする。しかし逆にバランスを崩してうつぶせから仰向けになってしまった。ひっくり返った亀のように緩慢に手足を動かすが、もはや起き上がれそうにない。それどころか仰向けになったことでリノは恐ろしい事実に気づいてしまう。
頭上に広がる立ち枯れの木の枝々をよく見ると、所々こぶのように膨れている部分がある。不意にそれと目が合った。
(え…?)
意味がわからない事に、枝のこぶに目があるのだ。上からこちらをじっと見つめてくる、二つの瞳。そしてそれは視界を広げてみれば──。
「…ひ………っ」
無数のこぶ達が、リノをじっと見下ろしていた。
・
・
・
ぼと、という鈍い音と共にリノの下腹部に衝撃が加わった。喉からは呻き声は出ず、息の漏れる音だけが鳴る。
「ひぃっ」
パニックになりながら目だけを動かして腹に落ちてきたものを見ると、それは巨大な芋虫であった。体色はくすんだ灰褐色で、木々のよい保護色になっている。こぶだと思っていたのはこの芋虫であったようだ。
(つまり…あの繭は)
これは恐らく、グリーンワーム。教本で読んだ事がある。脱力する臭いで人を捕らえ、養分として成長する。繭の中で獲物を食らいながら成長し、成体となるのを待つ──だったろうか。つまり繭から聞こえてきたあの人の声は哀れな獲物の断末魔に違いない。しかもそれは他人事ではなく、これから自分も──。
気づけば目尻から涙がこぼれ落ちていた。こんなところでこんな死に方をするために故郷を飛び出したわけじゃないのに。悔しさと恐怖とで心がごちゃ混ぜになって、情けないことに涙が一向に止まらない。
「ニンゲン、かなしい?」
芋虫が喋った。
・
・
・
「へ?」
「かなしいのは、よくない。ニンゲン…なみだ、かなしいしるし」
涙でぐずぐずになった視界の中央から、カタコトの声が聞こえてくる。かわいらしい女の子の声だ。
「え…ぇ?」
基本的には魔物とは話は通じない、会話ができるのは上位種かつ人型の妖魔だけ──少なくとも王国公認の教本にはそう記載されていた。まして相手は芋虫である。リノは目を白黒させる。
「しゃべ………ひ、ひゃっ!?」
動けないまままごつくリノの上で芋虫の魔物はもぞもぞと動く。その体はむにむにとしていて温かく、ずっしりとした重みが不思議と心地よい。魔物は小さな脚を使ってずりずりとリノの体に乗り上げ、顔と顔とを近づけてきた。その過程で軟体がリノの股間を柔らかく包んだまま擦り上げる。思わず変な声が漏れた。
「よい…しょっ」
やがて魔物は完全にリノの上に乗っかった。両者の顔は目と鼻の先で、お互いの息が掛かるほどに近づいている。
(………あれ…かわいいな…?)
芋虫の魔物は近くで見ると恐ろしいどころか幼くかわいらしい顔立ちをしていた。確かに肌の色はクリーム色だが輪郭も目鼻口も人間の幼子のそれと全く相違ない。くりっとした黄土色の瞳には毒気はなく、どちらかというと好奇心のようなものが感じられる。
本当にこんなかわいらしい生き物が人を食うんだろうか?
「…あっ」
数秒して、じっと見つめ合っていたことに気づく。思わず芋虫の少女からさっと目を逸らした。顔が少し熱い、気がする。
「ん?…げんきなった?げんき、いいこと…げんきなら…イイ、こと…♪」
「……っ!」
無邪気な少女のようだったグリーンワームの顔に、不意に違う色が映る。細めた目は垂れ、頬は薄く赤に染まり、口角の上がった白い唇を鮮やかな桃色の舌がぺろりと舐めた。目の前に突然現れた妖艶な表情は先ほどまでの幼さとはまるで不釣り合いで、奇妙な背徳感にリノの心拍は速くなっていく。
「げんきなら、におい…嗅いで?」
「え?…あっ!…あ、あぁー…っ」
一瞬の出来事だった。頭の上から聞こえてきたぷちゅ、という音には聞き覚えがあったし、視界の端でゆらゆら揺れ始めた橙色の何かにも見覚えがあった。しかしそこから放たれる匂いは先ほどとは似ても似つかぬ──甘ったるい匂い。嗅いでいるだけで幸せになるような、一度嗅いだらずっと嗅いでいたくなるような、甘美な匂いだった。
一気に思考が曇る。曇ったことすらわからない速さで考えるのが億劫になっていく。
「えへへ…このにおい、すき?」
「あ、好き…すきっ…」
自分でも何を言っているのかわからない。こんなに蕩けた声を出したのも初めてだったが、リノにはもうそれすら認識できなかった。
「そんなにすきなら…おはなの前でふってあげる」
「…っ!……ふー…っ!」
そう言うとグリーンワームはぐっと身をかがめ、頭をリノの顔の前に持ってきた。橙色でゼリーのように透き通った触覚がリノの鼻先でゆらゆらと揺れる。
まだ一片だけは心に残っていたはずの逃げなければという危機感も溶かされ、リノは何度も深呼吸を繰り返してしまう。男を引き寄せ糧とするための匂いである事も認識できないまま、少女に嗅がされるがままに甘ったるいそれを体に取り込んでいく。そんな彼の下半身に変化が訪れるまで長くはかからなかった。
「…おちんちん、おっきくなってきた」
匂いに夢中になる余り、少女に言われてようやく気づいた。リノの制服の下で大きく膨らんだ陰茎が苦しそうに脈打って、芋虫の柔らかい腹を押し上げている。心臓はいつの間にか早鐘のように打ち、頭の中はいつから滾りだしたのかもわからない劣情でいっぱいだ。甘い匂いは羞恥心さえも溶かしてしまうようで、リノは恥ずかしがることもなく自分の怒張を少女の腹に押しつけ、あまつさえかくかくと腰を振っている。少年の瞳にはもう理知的な輝きはない──そしてその向かいの少女の瞳にも。
「えへ、へ…コレ、したいってこと、だよね?したい、したい…する、するっ…♪」
グリーンワームはリノに負けず劣らず蕩けた表情でそう呟くと、短い脚を使ってリノの制服を剥ぎにかかった。芋虫の体が波打つように動いて器用に服を脱がしていくと同時に、リノの細い肢体の柔肌をみっちりと軟らかな肉で覆っていく。やがて着ていた制服は上も下も肌着ごと脱がされ、リノの体躯の前面はすべてグリーンワームのすべすべとして柔らかい腹に埋もれてしまった。
「は、ぅ…きもちいい…っ」
それだけでリノの口からは感嘆の吐息が漏れる。肩も脚もすっかり落ちてしまって、腰だけが力なく浮き上がり、いきり立った竿を少女のクリーム色の腹に浅ましくも擦りつけている。
「あ、おなかに出しちゃだめ、だよ?…出すなら、こっち…」
「…ひ、ぁあっ…!?」
少女が少しだけ腰を浮かすと、すっかり膨れた亀頭とまだ機能しない生殖孔とが触れあった。亀頭も生殖孔も互いの粘液でぬるぬるになっており、すこし擦れ合っただけでリノはうわずった悲鳴を上げてしまう。
「えへ…ニンゲン、かわいい…♪」
少女は余裕のないリノの表情を見てか悪戯っぽい笑みを浮かべ、小刻みに腰を揺すり出した。ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てて亀頭が孔入口の肉襞に舐め回される。夢見心地の中で敏感な部分を虐められ、リノは情けない声を漏らした。体は本能からか弱々しく抵抗を試みるが、ずっしりと全身にのしかかっているグリーンワームの軟体から逃れられる術はない。
「あひっ…う、うあぁ…」
「ふふ、へんな声…おもしろーい♪」
興が乗ったのか、少女は執拗に腰を揺すってリノの亀頭を虐める。自分より大きな獲物に短い脚でがっしりとしがみつきじわじわとなぶるその様はもはや蛇の狩りのようでさえあった。
「あ、あ…だめ、でそう…ぅ…っ」
当然、リノに限界が訪れる。芋虫の体の下で腰が細かく震え、脱力していた脚はぴんと伸び、竿と亀頭がびくびくと律動を始めた。
「あ、まって…中にださないとだめ…!」
少女は慌てた様子で呟くやいなや、浮かせていた腰を一気にリノに押しつけた。
「ひ…ぎ…っ!?」
「あ、おぉ…っ!」
ぐぷぷっ。重い水音と共に、何の抵抗もなく少女の生殖孔が竿を根本まで飲み込んだ。直後、一際大きくリノの竿が膨らむ。直前に強烈な快感をたたき込まれ、熱く蕩けた襞に抱きしめられながらの射精。リノの視界はちかちかと明滅し、前後も上下もわからなくなる。
「っ………はっ…はぁー…っ♪」
どろどろとした精液が尿道を擦りながら外へ押し出され、生殖孔の中に放たれる。大量の襞が備わったぬめる孔は狭いのに柔らかく、窮屈さを感じない。竿にみっちりと隙間無く抱きつかれる感触は、まるで芋虫の軟体に包み込まれたかのようだ。少しして射精が止まってもリノの頭にはまだびりびりとしたしびれが残っていた。まるで立ちくらみのように自分が寝ているのか立っているのかもわからず、ふわふわとした感覚に身を任せるしかない。
「ちょっと−、リュカちゃんいつまでぼーっとしてんの?ほら代わった代わった〜」
「…へ…ぁ…?」
ぼんやりした頭に聞き覚えのない声が響く。努めて意識を取り戻そうと頭を振ってピントを合わせるとそこには──。
「おーいおにーさーん、聞こえてる−?次はあたしだよ〜」
また別の、少し大人びたグリーンワームが蕩けた少女を押しのけながら、リノの体にのしかからんとしていた。
・
・
・
あれから幾時、いや幾日経ったろうか。リノの周りには人だかりならぬ芋虫だかりができていた。一匹に射精させられる度にまた新たなグリーンワームがぼとりと落ちてきて、いつまで経っても解放される兆しは見えない。それどころかいつの間にか周囲には繭が張られてしまった──もっとも繭がなくてもリノに逃亡する気力は残っていないが。
外の時間は大体の明るさでしかわからない。熱気と湿気の籠った狭い薄暗闇の中、大量のグリーンワームから代わる代わるに犯され、精を搾り取られる。どうやら同種のグリーンワームだけは繭を通り抜けられるようで、中の人数と繭の大きさは増える一方だ。交わっていない者も芋虫の体全体でリノの肢体に絡みつき、今や少年の肌でグリーンワームと触れていない場所は顔くらいのものだった。
射精の勢いが弱ってくればグリーンワームの分泌液を飲み込まされ、ぷにぷにとした白い腹で全身をゆったりと揉みくちゃにされる。それだけでリノは腰の力が抜けてしまい──彼の幾日も乾かぬままの陰茎は、壊れた蛇口のように大量の精液を幼い生殖孔に捧げてしまうのだ。今では常に口移しで分泌液を流し込まれ、寝ている間も休み無く射精している始末。
「はひ…ぃっ……は…はいはい…こーたいでしょ?わかってるってばぁ…あ、溢れちゃう…」
一匹が腰を上げると、こぽっという粘液質な音と共に竿で蓋をされていた生殖孔から大量の精液が溢れ出す。すぐさま周りのグリーンワーム達が竿に群がり、こぼれた精液を舐め取り始めた。
「んん…!ん、んんんー…!」
頭側から覆い被さられ甘い露を口移しされている最中のリノからくぐもった呻き声が響く。繭の中でこれでもかと濃縮されたグリーンワームの芳香だけを数日間も吸い込み続け、まして腹を満たすことのない彼女らにみっちりと巻き付かれ、もはやリノの肢体はぴくりとも動かない。グリーンワーム達はそんな少年の事情はお構いなしに、射精直後の一番敏感な竿と亀頭に小さな舌を這い回らせる。やがて輪姦じみた口淫をされるがまま、先刻射精したばかりの竿がびくびくと跳ね始め──。
「わ…でたでた…♪」
「すごい匂い…こっちがおかしくなりそう…♪」
「早くふたしないと…また出ちゃうよ♪」
噴水のように白濁が飛び出した。ただでさえ湿気が籠っていた繭の中に、一際重い湿気とむわりとした精液の匂いが立ちこめる。少女らは淫らな笑みを浮かべ、互いの顔を汚した大量の精液を舐め取り始めた。
「うー…つ、つぎ、わたし…!おつゆも、わたしの、飲ませるから…っ!」
淫靡な「食事」をしているグリーンワーム達をよそに、腰をうずうずと揺らす少女がリノにのしかかる。最初にリノを姦通したグリーンワーム、リュカであった。出会った最初は無邪気できらきらとしていた黄土色の瞳は情欲で蕩けて涙で潤み、ひどく扇情的な輝きを放っている。それもそのはず、彼女は最初の射精以降ずっと律儀に他のグリーンワームに順番を譲り続けている。時折口淫には参加していたものの、交接という点では数日ぶりの姦通だ。彼女に気圧されたのか、分泌液の世話をしていたグリーンワームも素直に退いた。
「ぷ、はっ…はぁっ………ん、むぅ…!?」
空気に触れたのも束の間、すぐにリノの口はリュカに塞がれてしまう。お互いの口が繋がるや否や、先ほどよりもどろりとして甘い分泌液が口内に流れ込んできた。リノは抵抗するどころか自ら夢中になってそれを飲み下していく。
そうこうしているうちにリュカの生殖孔にリノの怒張が押し当てられた。散々お預けを食らっていた少女の股は粘稠度の高い愛液でどろどろに濡れ、熱い湿気を纏っている。
「ん、んっ…♪」
お互いの喉は絡み合う舌と舌を介して繋がり、繭の中に響いたのがどちらの嬌声かなどもうわからない。
リュカの表情から、出会った時のように入口で遊ぶ余裕などないことは明らかだった。彼女は鼻息を荒げたまま、浮かせていた腰を一気に沈める。
「ん、んんん…っ♪」
一際大きく、力の抜けた嬌声が二人から漏れる。ずっと焦らされ続けていた軟らかい肉壺は余裕無く竿を抱きしめ、肉壁とそこに備わった襞は腰を動かしてもいないのに激しい咀嚼を始める。射精が始まってもなおリュカのそれは咀嚼や蠕動をやめず、貪欲に精液を搾り取っていく。リノの尿道口からはまるで放尿のような勢いで精液が途切れなく溢れだしていた。快楽が閾値を超えてしまったのか、リュカの瞳がくるりと上に滑る。ほとんど失神してなお彼女の生殖孔はぐちゅぐちゅと蠢き続け、番たるオスの陰茎を甘やかし、精液を搾り取っている。分泌液の分泌ペースさえもたがが外れ、リノが飲み込みきれない分の橙色の露が唇同士の間からだらだらとこぼれた。
傍から見れば微動だにしていない二人の間で、どくどくと体液が交換されているその様子の余りの淫気に中てられたのか、周りのグリーンワーム達もうずうずと体を蠢かし始めた。繭の外からはまた、ぼとり、ぼとりと重たい落下音が響いてくる。リノの繭が立ち枯れの森一の大きさになるまで、そう長い時間はかからなかった。
「だりいなぁ、こんなおつかいみてぇなしょっぺえ仕事」
「ウドさん、ずんずん進みすぎですよ…な、なんか気味悪いですよここ…もっと慎重に行きましょうって」
薄く靄がかった立ち枯れの森を進む人影が二つ。先を行くのはウドと呼ばれた中肉中背の男で、後をついて行くのは小柄で細身な男だ。
「リノよぉ、びびりすぎなんだよおめぇは。いい年こいて魔物がこわいでちゅか〜?」
「う…で、でも…入った人が帰ってこないって…」
小枝をぱきぱきと踏みしだきながら無造作に歩き続ける前の中年とは対照的に、歩幅も狭く臆病そうにおどおどと歩く少年。その身を包む制服の左胸にはL.アーレンスと小さく刺繍されている。少年の名はリーンハルト。ただこの長い名前を呼ぶ人は少ない──少なくともウドは一度もこの少年を本名で呼んだことはなかった。
ばき、と一際大きい枝を踏み折って立ち止まり、ウドはくるりと振り返る。
「はぁ…そんなに怖えなら帰ってもいいぜ?その分給料は出ねえし上には報告するし、来た道を独りで戻ることになるが」
ただでさえ白いリノの顔がさらに白くなった。
「…い、行きます、行きますから…置いてかないでくださいっ」
「ったくよぉ、俺はさっさと終わらせてぇのに…」
(どうしてこんなことになったんだろう…)
王国の暮らしに憧れて、リーンハルト・アーレンス──もといリノが半ば家出のように故郷を飛び出したのが15歳…今から三年前。三年間働きながら必死に勉強して軍の調査班と研究班に志願したのだ。結果見事に入隊できたはいいものの、配属されたのは王国から遙か西の辺境…ドが付くほどの田舎だった。
(これじゃあ実家にいたときと何も変わらない…それに)
リノが配属されたバルト郡の支部にはなんと調査班も研究班もなかったのだ。小さな詰所にあるのは警備班のみ。直属の上司であるウドが言うには、この郡は仕事が少なすぎるため警備班が全業務を一手に担っているとのことだった。
「いつも何をしてんのか?ん〜…適当に仕事こなして…適当に報告書書いて…その繰り返しだな。文句あっか?」
ウドは怠惰で傲慢な男だった。とかく仕事は雑だし机は汚い。いつも酒の匂いがする。自らのことを棚に上げて、農民や商人を馬鹿にしている。この男の下で働くこと自体リノには受け入れがたいことだった。
そして不幸は重なるとでも言うように、今回の依頼。依頼書を読むに、詰め所近くの森でただ事ではない事態が発生しているようだった。ウドはその依頼書をろくに読みもしなかった──彼が確認するのはいつも目的地だけだ。
(こんな…危なそうな現地調査するなんて聞いてないよ…)
かくしてリノの──配属2ヶ月目にしてまだ5つ目の──業務が幕を開けたのだった。
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森の光景は概ね依頼書どおりだった。本来なら青々と葉を茂らせているはずの木々にはほとんど緑が残っていない。黒い樹皮が露わになった幾本もの木がそびえ立つ様子はどことなく不気味で、さらに辺りには霧が掛かっており見通しが悪い。折しも天気は小雨で太陽は雲に隠れ、辺りは薄暗かった。気味の悪い風景だ。さっさと終わらせたい、ということに関してだけはリノもウドと全く同意見だった。
「何があったんでしょう…」
「あ?んなもんどーでもいいだろ…こんなもんどうせわかるわけねーんだから『調査結果:不明』でいいんだよ」
一体あなたは何をしに来たんですか、そう言いたい気持ちをぐっと抑えて、リノはウドの背中を追いかけた。
森をしばらく進むと、奇妙な白い塊がちらほらと現れ始めた。
「なんだこりゃ」
「依頼書にあったものですね…大きな…繭、みたいに見えますが」
しかしそれは繭と呼ぶには余りにも巨大だった。大の大人が二、三人ほどはすっぽり入れそうな大きさの白い繊維質の塊が、地面にべったりと張り付いている。
「けったくそわりぃな」
ウドはそう言い放つと巨大な繭を無造作に蹴りつけた。
「ちょ…大丈夫なんですか?魔物のねぐらとか、卵とかだったら……ひぃっ!?」
「うっせーなぁ…びびりすぎって言ってん……おい、なんだよ?」
突如、情けない悲鳴がリノの喉から漏れた。不安と言うより怯えを孕んだ彼の声と様子に、ウドは怪訝そうな顔をする。
「いっ今…それ、動きましたよ…それになんか、その中から人の声が…」
間違いない。ウドに蹴られた瞬間、繭が不自然に震えた。それと同時に繭から女のようでいて男のような声が聞こえたのだ。
「お、おいやめろよ…からかってんのか」
後退りするリノにつられてか、ウドも繭に向き直って距離を取った。
「も、もう行きましょう?…これだけ見て回れば十分ですって──」
リノがそう言いかけた瞬間だった。繭が再びもぞもぞと動き、その白い塊の中から──ぶちゅ、という奇妙な音を立てて毒々しい橙色の何かが飛び出した。
「ひっ」
思わずリノは尻餅をついて、後ろ手で後退りした。だが隣のウドは虚勢からか、はたまた反応できなかったのか、突如出現した橙色のそれを呆けたように見つめている。しかして異変はすぐに現れた。
「ぁ…が…」
ずりずりと情けなく後退するリノとは対照的に、ウドは棒立ちのまま動こうとしない。しかし彼の喉から漏れる呻き声は明らかに恐怖と苦悶を孕んでいた。
「う、ウドさん…!?何突っ立ってるんですかっ!逃げましょうってば……えっ!?」
リノが後ろから必死に声を掛けるも、ウドは後退りさえしないどころか──膝から崩れ落ちてしまった。まるで糸が切れたかのようにその場に倒れ込んでしまったのだ。受け身も取れず倒れ込んだウドと、尻餅をついたままのリノの目が合った。
「…か、らだ…うご…か……」
ウドは力の抜けた表情に目つきだけを険しくして、掠れた声でこちらに何事かを訴えかけてくる。余りに異様で恐ろしい状況にリノの全身はがたがたと震え、心臓はばくばくと高鳴りはじめた。
「ひ、ひぃっ…」
何かわからないが恐ろしいことが始まっている。そう直感で判断し、リノは立ち上がった。
(逃げなきゃ…ひ、ひとりでも…っ)
だが時既に遅し。立ち上がり、走り出そうとしたその瞬間──がくりと膝が折れ、気づけば目の前に地面が迫っていた。
「うぐっ」
最初は震えの余り転倒したかと思ったが、すぐにそうではないと気づく。
(立ち上がれない…!?)
腕が持ち上がらない。脚も曲がらない。全身にほとんど力が入らないのだ。どうやらウドと同じ状態のようだった。気づけば辺りには酸っぱいような苦いような奇妙な臭いが充満していた。
(多分、あのオレンジ色の触手みたいなのが…)
恐らくはあの得体の知れない橙色の塊から放たれたこの臭いが体の自由を奪っているのだ。ウドは至近距離でこれを嗅いでしまったに違いない。リノは僅かながら距離を取れたからか、少しならば──四つん這いになるくらいならば、まだ体に力が入る。
「う、うう…」
思いきり腕を突っ張って起き上がろうとする。しかし逆にバランスを崩してうつぶせから仰向けになってしまった。ひっくり返った亀のように緩慢に手足を動かすが、もはや起き上がれそうにない。それどころか仰向けになったことでリノは恐ろしい事実に気づいてしまう。
頭上に広がる立ち枯れの木の枝々をよく見ると、所々こぶのように膨れている部分がある。不意にそれと目が合った。
(え…?)
意味がわからない事に、枝のこぶに目があるのだ。上からこちらをじっと見つめてくる、二つの瞳。そしてそれは視界を広げてみれば──。
「…ひ………っ」
無数のこぶ達が、リノをじっと見下ろしていた。
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ぼと、という鈍い音と共にリノの下腹部に衝撃が加わった。喉からは呻き声は出ず、息の漏れる音だけが鳴る。
「ひぃっ」
パニックになりながら目だけを動かして腹に落ちてきたものを見ると、それは巨大な芋虫であった。体色はくすんだ灰褐色で、木々のよい保護色になっている。こぶだと思っていたのはこの芋虫であったようだ。
(つまり…あの繭は)
これは恐らく、グリーンワーム。教本で読んだ事がある。脱力する臭いで人を捕らえ、養分として成長する。繭の中で獲物を食らいながら成長し、成体となるのを待つ──だったろうか。つまり繭から聞こえてきたあの人の声は哀れな獲物の断末魔に違いない。しかもそれは他人事ではなく、これから自分も──。
気づけば目尻から涙がこぼれ落ちていた。こんなところでこんな死に方をするために故郷を飛び出したわけじゃないのに。悔しさと恐怖とで心がごちゃ混ぜになって、情けないことに涙が一向に止まらない。
「ニンゲン、かなしい?」
芋虫が喋った。
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「へ?」
「かなしいのは、よくない。ニンゲン…なみだ、かなしいしるし」
涙でぐずぐずになった視界の中央から、カタコトの声が聞こえてくる。かわいらしい女の子の声だ。
「え…ぇ?」
基本的には魔物とは話は通じない、会話ができるのは上位種かつ人型の妖魔だけ──少なくとも王国公認の教本にはそう記載されていた。まして相手は芋虫である。リノは目を白黒させる。
「しゃべ………ひ、ひゃっ!?」
動けないまままごつくリノの上で芋虫の魔物はもぞもぞと動く。その体はむにむにとしていて温かく、ずっしりとした重みが不思議と心地よい。魔物は小さな脚を使ってずりずりとリノの体に乗り上げ、顔と顔とを近づけてきた。その過程で軟体がリノの股間を柔らかく包んだまま擦り上げる。思わず変な声が漏れた。
「よい…しょっ」
やがて魔物は完全にリノの上に乗っかった。両者の顔は目と鼻の先で、お互いの息が掛かるほどに近づいている。
(………あれ…かわいいな…?)
芋虫の魔物は近くで見ると恐ろしいどころか幼くかわいらしい顔立ちをしていた。確かに肌の色はクリーム色だが輪郭も目鼻口も人間の幼子のそれと全く相違ない。くりっとした黄土色の瞳には毒気はなく、どちらかというと好奇心のようなものが感じられる。
本当にこんなかわいらしい生き物が人を食うんだろうか?
「…あっ」
数秒して、じっと見つめ合っていたことに気づく。思わず芋虫の少女からさっと目を逸らした。顔が少し熱い、気がする。
「ん?…げんきなった?げんき、いいこと…げんきなら…イイ、こと…♪」
「……っ!」
無邪気な少女のようだったグリーンワームの顔に、不意に違う色が映る。細めた目は垂れ、頬は薄く赤に染まり、口角の上がった白い唇を鮮やかな桃色の舌がぺろりと舐めた。目の前に突然現れた妖艶な表情は先ほどまでの幼さとはまるで不釣り合いで、奇妙な背徳感にリノの心拍は速くなっていく。
「げんきなら、におい…嗅いで?」
「え?…あっ!…あ、あぁー…っ」
一瞬の出来事だった。頭の上から聞こえてきたぷちゅ、という音には聞き覚えがあったし、視界の端でゆらゆら揺れ始めた橙色の何かにも見覚えがあった。しかしそこから放たれる匂いは先ほどとは似ても似つかぬ──甘ったるい匂い。嗅いでいるだけで幸せになるような、一度嗅いだらずっと嗅いでいたくなるような、甘美な匂いだった。
一気に思考が曇る。曇ったことすらわからない速さで考えるのが億劫になっていく。
「えへへ…このにおい、すき?」
「あ、好き…すきっ…」
自分でも何を言っているのかわからない。こんなに蕩けた声を出したのも初めてだったが、リノにはもうそれすら認識できなかった。
「そんなにすきなら…おはなの前でふってあげる」
「…っ!……ふー…っ!」
そう言うとグリーンワームはぐっと身をかがめ、頭をリノの顔の前に持ってきた。橙色でゼリーのように透き通った触覚がリノの鼻先でゆらゆらと揺れる。
まだ一片だけは心に残っていたはずの逃げなければという危機感も溶かされ、リノは何度も深呼吸を繰り返してしまう。男を引き寄せ糧とするための匂いである事も認識できないまま、少女に嗅がされるがままに甘ったるいそれを体に取り込んでいく。そんな彼の下半身に変化が訪れるまで長くはかからなかった。
「…おちんちん、おっきくなってきた」
匂いに夢中になる余り、少女に言われてようやく気づいた。リノの制服の下で大きく膨らんだ陰茎が苦しそうに脈打って、芋虫の柔らかい腹を押し上げている。心臓はいつの間にか早鐘のように打ち、頭の中はいつから滾りだしたのかもわからない劣情でいっぱいだ。甘い匂いは羞恥心さえも溶かしてしまうようで、リノは恥ずかしがることもなく自分の怒張を少女の腹に押しつけ、あまつさえかくかくと腰を振っている。少年の瞳にはもう理知的な輝きはない──そしてその向かいの少女の瞳にも。
「えへ、へ…コレ、したいってこと、だよね?したい、したい…する、するっ…♪」
グリーンワームはリノに負けず劣らず蕩けた表情でそう呟くと、短い脚を使ってリノの制服を剥ぎにかかった。芋虫の体が波打つように動いて器用に服を脱がしていくと同時に、リノの細い肢体の柔肌をみっちりと軟らかな肉で覆っていく。やがて着ていた制服は上も下も肌着ごと脱がされ、リノの体躯の前面はすべてグリーンワームのすべすべとして柔らかい腹に埋もれてしまった。
「は、ぅ…きもちいい…っ」
それだけでリノの口からは感嘆の吐息が漏れる。肩も脚もすっかり落ちてしまって、腰だけが力なく浮き上がり、いきり立った竿を少女のクリーム色の腹に浅ましくも擦りつけている。
「あ、おなかに出しちゃだめ、だよ?…出すなら、こっち…」
「…ひ、ぁあっ…!?」
少女が少しだけ腰を浮かすと、すっかり膨れた亀頭とまだ機能しない生殖孔とが触れあった。亀頭も生殖孔も互いの粘液でぬるぬるになっており、すこし擦れ合っただけでリノはうわずった悲鳴を上げてしまう。
「えへ…ニンゲン、かわいい…♪」
少女は余裕のないリノの表情を見てか悪戯っぽい笑みを浮かべ、小刻みに腰を揺すり出した。ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てて亀頭が孔入口の肉襞に舐め回される。夢見心地の中で敏感な部分を虐められ、リノは情けない声を漏らした。体は本能からか弱々しく抵抗を試みるが、ずっしりと全身にのしかかっているグリーンワームの軟体から逃れられる術はない。
「あひっ…う、うあぁ…」
「ふふ、へんな声…おもしろーい♪」
興が乗ったのか、少女は執拗に腰を揺すってリノの亀頭を虐める。自分より大きな獲物に短い脚でがっしりとしがみつきじわじわとなぶるその様はもはや蛇の狩りのようでさえあった。
「あ、あ…だめ、でそう…ぅ…っ」
当然、リノに限界が訪れる。芋虫の体の下で腰が細かく震え、脱力していた脚はぴんと伸び、竿と亀頭がびくびくと律動を始めた。
「あ、まって…中にださないとだめ…!」
少女は慌てた様子で呟くやいなや、浮かせていた腰を一気にリノに押しつけた。
「ひ…ぎ…っ!?」
「あ、おぉ…っ!」
ぐぷぷっ。重い水音と共に、何の抵抗もなく少女の生殖孔が竿を根本まで飲み込んだ。直後、一際大きくリノの竿が膨らむ。直前に強烈な快感をたたき込まれ、熱く蕩けた襞に抱きしめられながらの射精。リノの視界はちかちかと明滅し、前後も上下もわからなくなる。
「っ………はっ…はぁー…っ♪」
どろどろとした精液が尿道を擦りながら外へ押し出され、生殖孔の中に放たれる。大量の襞が備わったぬめる孔は狭いのに柔らかく、窮屈さを感じない。竿にみっちりと隙間無く抱きつかれる感触は、まるで芋虫の軟体に包み込まれたかのようだ。少しして射精が止まってもリノの頭にはまだびりびりとしたしびれが残っていた。まるで立ちくらみのように自分が寝ているのか立っているのかもわからず、ふわふわとした感覚に身を任せるしかない。
「ちょっと−、リュカちゃんいつまでぼーっとしてんの?ほら代わった代わった〜」
「…へ…ぁ…?」
ぼんやりした頭に聞き覚えのない声が響く。努めて意識を取り戻そうと頭を振ってピントを合わせるとそこには──。
「おーいおにーさーん、聞こえてる−?次はあたしだよ〜」
また別の、少し大人びたグリーンワームが蕩けた少女を押しのけながら、リノの体にのしかからんとしていた。
・
・
・
あれから幾時、いや幾日経ったろうか。リノの周りには人だかりならぬ芋虫だかりができていた。一匹に射精させられる度にまた新たなグリーンワームがぼとりと落ちてきて、いつまで経っても解放される兆しは見えない。それどころかいつの間にか周囲には繭が張られてしまった──もっとも繭がなくてもリノに逃亡する気力は残っていないが。
外の時間は大体の明るさでしかわからない。熱気と湿気の籠った狭い薄暗闇の中、大量のグリーンワームから代わる代わるに犯され、精を搾り取られる。どうやら同種のグリーンワームだけは繭を通り抜けられるようで、中の人数と繭の大きさは増える一方だ。交わっていない者も芋虫の体全体でリノの肢体に絡みつき、今や少年の肌でグリーンワームと触れていない場所は顔くらいのものだった。
射精の勢いが弱ってくればグリーンワームの分泌液を飲み込まされ、ぷにぷにとした白い腹で全身をゆったりと揉みくちゃにされる。それだけでリノは腰の力が抜けてしまい──彼の幾日も乾かぬままの陰茎は、壊れた蛇口のように大量の精液を幼い生殖孔に捧げてしまうのだ。今では常に口移しで分泌液を流し込まれ、寝ている間も休み無く射精している始末。
「はひ…ぃっ……は…はいはい…こーたいでしょ?わかってるってばぁ…あ、溢れちゃう…」
一匹が腰を上げると、こぽっという粘液質な音と共に竿で蓋をされていた生殖孔から大量の精液が溢れ出す。すぐさま周りのグリーンワーム達が竿に群がり、こぼれた精液を舐め取り始めた。
「んん…!ん、んんんー…!」
頭側から覆い被さられ甘い露を口移しされている最中のリノからくぐもった呻き声が響く。繭の中でこれでもかと濃縮されたグリーンワームの芳香だけを数日間も吸い込み続け、まして腹を満たすことのない彼女らにみっちりと巻き付かれ、もはやリノの肢体はぴくりとも動かない。グリーンワーム達はそんな少年の事情はお構いなしに、射精直後の一番敏感な竿と亀頭に小さな舌を這い回らせる。やがて輪姦じみた口淫をされるがまま、先刻射精したばかりの竿がびくびくと跳ね始め──。
「わ…でたでた…♪」
「すごい匂い…こっちがおかしくなりそう…♪」
「早くふたしないと…また出ちゃうよ♪」
噴水のように白濁が飛び出した。ただでさえ湿気が籠っていた繭の中に、一際重い湿気とむわりとした精液の匂いが立ちこめる。少女らは淫らな笑みを浮かべ、互いの顔を汚した大量の精液を舐め取り始めた。
「うー…つ、つぎ、わたし…!おつゆも、わたしの、飲ませるから…っ!」
淫靡な「食事」をしているグリーンワーム達をよそに、腰をうずうずと揺らす少女がリノにのしかかる。最初にリノを姦通したグリーンワーム、リュカであった。出会った最初は無邪気できらきらとしていた黄土色の瞳は情欲で蕩けて涙で潤み、ひどく扇情的な輝きを放っている。それもそのはず、彼女は最初の射精以降ずっと律儀に他のグリーンワームに順番を譲り続けている。時折口淫には参加していたものの、交接という点では数日ぶりの姦通だ。彼女に気圧されたのか、分泌液の世話をしていたグリーンワームも素直に退いた。
「ぷ、はっ…はぁっ………ん、むぅ…!?」
空気に触れたのも束の間、すぐにリノの口はリュカに塞がれてしまう。お互いの口が繋がるや否や、先ほどよりもどろりとして甘い分泌液が口内に流れ込んできた。リノは抵抗するどころか自ら夢中になってそれを飲み下していく。
そうこうしているうちにリュカの生殖孔にリノの怒張が押し当てられた。散々お預けを食らっていた少女の股は粘稠度の高い愛液でどろどろに濡れ、熱い湿気を纏っている。
「ん、んっ…♪」
お互いの喉は絡み合う舌と舌を介して繋がり、繭の中に響いたのがどちらの嬌声かなどもうわからない。
リュカの表情から、出会った時のように入口で遊ぶ余裕などないことは明らかだった。彼女は鼻息を荒げたまま、浮かせていた腰を一気に沈める。
「ん、んんん…っ♪」
一際大きく、力の抜けた嬌声が二人から漏れる。ずっと焦らされ続けていた軟らかい肉壺は余裕無く竿を抱きしめ、肉壁とそこに備わった襞は腰を動かしてもいないのに激しい咀嚼を始める。射精が始まってもなおリュカのそれは咀嚼や蠕動をやめず、貪欲に精液を搾り取っていく。リノの尿道口からはまるで放尿のような勢いで精液が途切れなく溢れだしていた。快楽が閾値を超えてしまったのか、リュカの瞳がくるりと上に滑る。ほとんど失神してなお彼女の生殖孔はぐちゅぐちゅと蠢き続け、番たるオスの陰茎を甘やかし、精液を搾り取っている。分泌液の分泌ペースさえもたがが外れ、リノが飲み込みきれない分の橙色の露が唇同士の間からだらだらとこぼれた。
傍から見れば微動だにしていない二人の間で、どくどくと体液が交換されているその様子の余りの淫気に中てられたのか、周りのグリーンワーム達もうずうずと体を蠢かし始めた。繭の外からはまた、ぼとり、ぼとりと重たい落下音が響いてくる。リノの繭が立ち枯れの森一の大きさになるまで、そう長い時間はかからなかった。
20/08/19 01:24更新 / キルシュ