前編
東の大陸。深く白い霧に覆われたその地の奥深く、連なる山々を覆う木々の隙間にぽつんと建った一軒家があった。軒先の物干し竿に掛けられた二人分の着物を、白く小さい手が手際よく取り込んでいく。
ロショウは捨て子であった。山奥にうち捨てられていたところをたまたま通りかかったトウキに拾われたのだ。往診医の白澤として生計を立てている彼女と二人、今は毎日を慎ましく──幾分か色に爛れているものの──暮らしている。
傾いた日が差し込む床に座り、ロショウは取り込んだ着物を丁寧に畳んでいく。流れるようなその手つきとは裏腹に、幼い彼の顔は心なしか曇っていた。
「お師匠さま…遅いな…」
トウキは職業柄家を空けることが多い。そしてまだ幼いロショウはいつも留守番を命じられている。トウキが帰ってくるまでにあらかたの家事を済ませておくのがロショウの仕事だった。朝は洗濯、昼は掃除や草摘み、空いた時間に書物を学び、夕に乾いた洗濯物を取り込んで畳み、トウキが帰ってくるまでに夕飯を完成させる。
（いつもなら今頃とっくに帰ってきてるのに）
トウキはその健脚を活かして飛ぶように山々を越えてしまう。僻地もいいところのこの山奥で、一日に多いときは五軒も回ってそれでなお大抵夕方までには帰ってくるのだ。そうして日の差す縁側に二人並んで座って着物を畳み、台所に二人並んで立って夕飯を作るのがロショウの何よりの幸せであった。そのトウキが今日はなかなか帰ってこない。
聡明で頑強な彼女の身自体は正直あまり心配していない。今までもこのくらいならば遅い帰りはあった。ロショウの表情を曇らせる理由は他にある。
（ちんちんが…治らない…）
ロショウの身を包む着物の股の部分。そこが今、控えめに押し上げられていた。座った姿勢でもなお服の下から主張するその膨らみの正体が、幼いながらに硬く怒張した陰茎であることは言うまでもない。
ロショウは数ヶ月前に精通を迎えてからというもの、毎晩のようにトウキに抱かれている。精通を迎える前にも幾度か性的なちょっかいを出されたことはあったが──それは置いておこう。ともかく、女を孕ませられるようになってから数ヶ月という短い期間で、少年の体はすっかり盛んな性欲を常に滾らせるようになってしまっていた。聖獣と語られる白澤とはいえ魔物は魔物である。その彼女と毎晩体を重ねていればそうなるのも仕方のないことではあろう。
問題はその溢れんばかりの性欲を留守番中にどうするかである。数日前、見かねたトウキはロショウに性処理──要は自慰の手ほどきを与えたが、正直なところそれは余り意味を成していなかった。トウキの魅力的な肉体とそこから浴びせられる快楽に、一人間の少年の右手が勝てるわけもなかったのだ。小さな竿を小さな手でしばらく扱いていても何か物足りない。自分に跨がってなまめかしく腰を揺するトウキを努めて思い浮かべても、さして心地よくもない自分の手との対比がかえってはっきりと感ぜられてしまうだけだった。
そんなわけでロショウの最近は昼間に家事をしながら性欲を溜め込んで、夜にトウキに跨がられて思い切り発散するという流れが常になっていた。そしてトウキはそんな弟子のことをわかった上で楽しんでさえいるようだった。ここ数日はトウキが帰れば夕飯もそこそこに交わり始めてしまう。しかもそうするようせがむのはトウキではなく、他ならぬロショウの方なのである。顔を真っ赤に染めてか細い声で行為をねだってくるロショウを彼女はたしなめることもなく、悪戯っぽく微笑んで抱え上げ風呂場やら寝床やらで優しく「甘やかす」のみであった。
今すぐ抱かれたい。あの柔らかく温かい肢体に後ろから抱きすくめられ、しっとりとした細い指でこの張り詰めた怒張を弄ばれたい。日を浴びて温かく乾いた着物を畳みながらも、淫らな想像は一向に止まらなかった。トウキの山羊の乳のように白い肌が、綿のように手触りのいい尻尾が脳裏を掠め、その度に息が荒くなっていく。この下着の色と同じ、彼女の朱色の瞳と見つめ合いながらその美しい手を精液で汚したい。べったりと指先や甲に張り付いた精液を、妄想の中のトウキはぴちゃぴちゃと淫猥な音を立てて舐め取っていく。
「……」
ロショウの手に握られているのは赤い下着だった。西や極東ではあまり見ない珍しい形の下着である。一枚の大きな布が体の前面を胸から腹まで隙間なく覆い、そのまま下に垂れて股を隠す。布の端から伸びた三対の紐を首、背中と腰で結んで固定する形のものだ。いうまでもなくトウキの下着であるそれを、ロショウはここのところ毎晩のように見ている、というか見せつけられている。朱色を好むトウキはその赤い下着だけを数着持っているからだ。
毎晩見ているからと言って一向に見慣れることはない。背中の紐は乳より少し下の端から伸びていて、それを結ぶといわゆる乳袋ができあがる。それだけでも初心なロショウには目に毒なのだが、布は体の前面しか隠さないので、横から見ると背中と脇から乳房までの白く柔らかい肌が惜しげもなく露出されるのだ。真っ赤な下着と白磁のような乳白色の肌とのコントラストはロショウの視線を毎夜釘付けにしていた。
ロショウは少し震える手で真っ赤な布地を畳んでいく。洗ってもなお落ちないトウキの甘い体臭が、布を持ち上げると微かに漂ってくる。思わず止まってしまいそうな手を努めて動かし、畳んだ布の上に六本の紐を揃えて整えた。
（……昨日はこの紐を…）
昨晩は帰ってきたトウキに、軒先だというのに我慢できず抱きついてしまったのだった。正面から抱きつくと彼女の柔らかい腹が顔にあたった。汗をかいていたのか、少し甘酸っぱい匂いがしたことを覚えている。
（「ほどいてごらん」って…）
着脱式の蹄鉄を外さぬままにトウキは身をかがめると、ロショウの手を自身の背中に導いて服の下に潜り込ませ、赤い下着の紐を引っ張らせた。結び目がほどけるときの、紐と紐との僅かな抵抗。その瞬間耐えがたいほどの背徳感に支配されたロショウはそれっきり何もできなくなってしまった。そのあとは優しく微笑むトウキに抱き上げられて風呂場に運ばれ最後までされるがまま、要はいつも通りではあったのだが。
（今なら）
普段だとそんな恥ずかしいことはできない。恐らく昨日のトウキはこの歪んだ欲望に気づいていたのだろうが、基本的に彼女は口に出して乞うたことしか許してくれないのだ──意地悪なことに。だが今ならば、憧れの師が身につけたこの布を好きにできる。昨日は紐をつまむので精一杯だったこの下着を、嗅いだり擦ったり、好きに──。
「…い…いけない……御夕飯の準備もしなきゃいけないんだから」
ロショウはぶんぶんと頭を振る。残りの上着を手早く畳み赤い下着に重ねて隠すと、少々気持ちが落ち着いた。それでも未だに勃起は収まらない。畳んだ着物を持って立ち上がると、より一層股間の盛り上がりがはっきりとしてしまう。自制の効かない怒張をなるべく意識しないようにしながら、ロショウは前屈みで箪笥のある寝室に向かった。
寝室は家の奥にある。窓は小さく、加えて日が傾いている今はほとんど室内に明かりが入らない。
「……」
しかし室内に進むのをロショウが少し躊躇ったのは何もその薄暗闇が怖いからではなかった。
（良い匂い…）
二つ並んだ布団。向かって右の少し小さいそれがロショウのもので、左がトウキのものだ。ロショウの躊躇の原因はその後者から放たれる、甘い芳香だった。先ほど下着から漂ってきたあの匂いである。
性欲をもてあますようになってから、家事途中のロショウを悩ませる最大の要因がこれだった。香水を付けてもいないのにトウキからはほのかに甘い香りがする。劣情を誘う魔性の匂いだ。夜の交わりで無意識下にそれを嗅いで、昼に悶々とし、夕方取り込んだ下着にその匂いを思い出させられる。そうして畳んだ着物を仕舞いに寝床を訪れれば、とどめとばかりに浴びせられる濃いトウキの匂い。いやがおうにも体が──もとい下半身が反応してしまうのだ。
（しまって終わり、しまって終わり…）
箪笥を開き、積まれた着物を床に置いて自分のものとトウキのものに分ける。丁寧に畳まれたそれらを、丁寧に箪笥に詰めていく。既に心臓がどきどきと加速していた。怒張はぐいぐいと股を押し上げ、服の抵抗が少々苦しい。いうまでもなく、やがて手に取る順番が来てしまうあの下着のせいだ。
（そうだ、見ないようにすればいいんだ）
そしてその時が来た。視線を泳がせ、手探りで下着を掴む。それが良くなかった。今まで恐る恐るつまむだけではわからなかった絹のなめらかな手触りを、掌全体で感じ取ってしまう。このなめらかな布地が普段トウキのすべすべした腹に、ふくよかな胸に密着しているのだと悟ると、瞬時に言いしれぬ興奮が頭を支配した。
「あ……っ」
ロショウの心に今あるのは半ば諦観であった。やってしまったというか失敗したというか、それを飛び越して、ああ自分はお師匠さまの下着をじっくり見てしまうなということを考えていた。きっと見るだけでは済まないだろうなというところまで、その幼くも利発な頭は悟ってしまっていた。
スローモーションのように首が動いて、目線がその一枚の布地に向かう。空いていた左手がゆっくりと動き、下着に添えられた。ロショウは正座のまま書物でも読むかのように両手で下着を掴み、穴が開くほどに見つめる。薄暗闇の中でもはっきりとわかる鮮やかな赤色をしたそれは柔らかく手触りの良い絹でできていて、工夫された編み方なのか引っ張ると柔軟に伸び縮みした。
（これを着けたお師匠さま…）
たわわに実った乳の肉が窮屈そうに内側から布地を押し広げる。ぴんと張った一枚の布が乳房をこれでもかと強調して見せつける。一方で腹は柔らかくもすらりと引き締まっていて、微かに浮かび上がるのは腹直筋の陰影と、柔らかな布地のしわ。妄想の中のものとは思えないほどに鮮明かつ扇情的なトウキの姿で、ロショウの頭はいっぱいになる。
「お、お師匠さまっ…」
ぼそりと独言が漏れる。色欲と恋慕がこれでもかと込められた声が一人きりの寝室に小さく響いた。
両手を、両手に握りしめられた下着を、ゆっくりと顔に近づける。ロショウは肺の中の空気を空にするつもりで大きく息を吐いた。そうしてトウキが昨晩まで身につけていた下着を顔に、鼻に押し当てる。
「──……っ」
思い切り息を吸い込んだ。瞬間、甘い香りで肺がいっぱいになって、頭が真っ白になる。酸欠になったかのように意識がくらくらとして、股関節の力が抜けて両踵にのっていた尻がぺたんと床に付く。
「はぁ……ふーっ……すーっ…」
変態じみたことをしているという罪悪感はどこかへいってしまった。何度も何度も深呼吸を繰り返して、愛して止まない師の匂いを味わい、自分の体の中に染みこませていく。触れてもいない陰茎が今にも射精してしまいそうなほどにびくびくと震えて、会陰に力を込める度にじんとした快感が腰から背筋へ走った。
「…は、ふ…ぅ……」
やがて視界がふらつき、体から力が抜けていく。立ちくらみのようにごうごうと血流の音が聞こえて、それが鳴り止む頃には両腕がだらんと垂れ、下着も落としてしまっていた。意識は未だにぼんやりしているものの次第に五感は冴え始め、トウキの甘い匂いが、そして自分の怒張を満たす熱い脈がはっきりと感じられる。
（さいいん…催淫、効果…魔物の…におい、の…）
以前読んだ書物に記されていた知識を思い返す。そして思い返したからといってそれに抗えるわけもない。少年の顔は今や熱に浮かされたように真っ赤に染まり、その瞳はピントが合わずふらふらと揺れていた。ロショウはもたもたとした手つきで今着ている着物を脱ぎ始める。帯を解き、胸をはだけ、その白い柔肌を薄暗闇に曝け出していく。次いでゆったりとした袴を降ろすと、張り詰めた陰茎が勢いよく飛び出して腹を打った。ぺちりと間の抜けた音がする。そのまま最後まで降ろして裸になろうとするも、動きやすいように裾を縛った紐がひっかかって上手く足首を通らない。
（…もう、このままでいいや）
ロショウは服を脱ぎきらないままにゆっくりと後ろを振り向き、どさりと両手をついた。同時に、はふ、と息が漏れる。両手をついた先はトウキの布団だ。衝撃で舞い上げられた彼女の匂いが鼻腔をくすぐる。下着のそれよりも濃い、もはや甘ったるいとさえ思える匂い。それを一番強く放っているのは──。
「ま、枕…お師匠さまの、まくら…」
もう見つめる時間さえも惜しかった。ロショウはトウキの布団にうつぶせに倒れ込み、柔らかな枕に顔を埋める。
「は、ぅ……」
嘆息のような、小さなため息が枕越しに漏れた。
枕は少しだけひんやりとしていて、火照った顔に心地よかった。そして何よりも、質量が伴いそうなほどに濃いトウキの甘い匂い。それに真っ暗な視界、そして柔らかな布団の感触が加わって、まるで彼女本人に優しく抱きしめられているかのような錯覚に陥ってしまう。
「お師匠さまぁ…すき、すきっ」
甘ったるい呟きが、枕に吸い込まれていく。本当にこの場にいるトウキに抱きついて愛を囁いているかのような、幸せな気分だ。
ロショウはやがて下半身をもぞもぞと動かしてトウキの掛け布団をまとめ、その上に跨がった。少しずつ腰がへこへこと揺れ出す。
意識はまだはっきりとしている。自分が布団に腰を振っていることがわからないほどに前後不覚ではない。それでも体が止まらなかった。大量の先走りが布団を汚し、ぬるぬるになった布地と裏筋が擦れてじんじんとした快感を生む。薄暗い部屋に、少年のくぐもった吐息と規則的な衣擦れの音だけが響いていた。
（手でするより…ずっと気持ちいい…っ）
事実、右手で扱いてもどうともならなかったロショウの陰茎は布団に擦りつけられているだけなのにびくびくと震え、亀頭を膨らませて射精の準備を始めている。
「あ…でそう…」
間もなく訪れる、熱い液体がせり上がってくる感覚。
このまま布団に射精してしまえばまず間違いなく取り除ききれない染みになってしまうだろう。先走りだけでも正直手遅れな感はあるが、急いで火に当てて乾かせば或いはなんとかなるかもしれない。しかし射精してしまえば確実に取れない汚れになる。トウキに気づかれれば──というか間違いなくそうだ──きっと叱られるだろうし、なんといっても恥ずかしい。どう言い訳すれば良い？ 良い匂いだったのでお布団に射精してしまいました、なんて台詞は想像するだけでもばつが悪いどころか顔から火が出そうだ。
（だめ、止めなきゃ、いけないのに…）
そんな思いとは裏腹に腰の動きは速くなっていく。部屋に響くのはもはや衣擦れではなく、腰が布団に打ち付けられて鳴る破裂音だ。まるで本物の性行為のようである。両脚は布団を、両腕は枕を、それぞれ離したくないというようにがっちりと抱きしめていた。必死の自戒を肉体が嘲笑っているかのようであった。脳味噌は快楽で上手く回らず、やめなければ、と出したい、との二つの選択肢をぐるぐると往復することしかできない。
「あ…うぅ、お師匠さま、だいすきっ…ご、ごめんなさいっ…」
免罪符のような呟きと謝罪が枕越しに漏れ、同時にロショウの亀頭が大きく膨れた。
「ふぁ、あ…あぁ…っ」
陰茎の律動に伴って、大量の白濁が布団に吐き出されていく。ロショウは蕩けた顔を枕に押しつけたまま、腰をゆさゆさと揺すって射精を続けている。既に吐き出されて布団をべったりと汚す精液が、上から擦りつけられる陰茎でかき混ぜられてぬちゃぬちゃと淫猥な音を立てた。
熱くぬめる感覚と布団の布地の感触が同時に腰の肌から伝わると、してはいけないことをしてしまったという実感が湧いてくる。それでも一日分溜め込んだ性欲が軽い射精で解消されるはずもなく、ロショウは情けなく布団にしがみついたままどぷどぷと精液を吐き出し続けた。
「は、ふ…ふぅ、ふーっ…」
数十秒してようやく射精が一段落付いた。未だに頭が快楽でぼんやりとしている。息苦しさから自分が枕に顔を埋めていたことに気づいた。顔を上げて、次いで上体を起こして、股間に目を落としたロショウはびくりと身を固くする。
「…へ？…こ、これ…こんなに！？…ど、どうしよう…！」
布団の上に水溜まりができていた。白く濁り、どろどろした半液状の何かでできた水溜まりだ。もちろん、精液以外にその何かがあるわけもない。ロショウの小さな手を両方広げた程の大きさのそれからは青臭い匂いと熱気が漂っている。深さもそれなりにありそうだ。量にして半升ほどだろうか。見たことがない景色だった。
実際ロショウは毎晩これ以上の量の精液を出してはいるのだが、そのほぼ全てはトウキの腹の中に収まっていた。よって彼自身はその人間離れした射精量を目にすることはなかったのだ。衝撃的な光景を前にして、色欲で満たされていたロショウの頭が一気に冷える。
「…何かで拭き取る…い、いや…」
到底布か何かで拭き取れる量ではない。いっそ大皿か杯をあてがって移し替えた方がまだ現実的かもしれない。
「は、早くしないと…」
ゼリーのようにぷるぷると揺れる精液から布団の布地へ、水分がじんわりと染み出す。さらに身じろぎしたせいで傾いた掛け布団から精液がこぼれ、敷き布団にまでどろりと垂れた。狼狽えている内に染みはどんどんと広がっていく。
「どうすれば…」
どうすればも何も完全に自業自得であった。ロショウはトウキのどろどろに汚れた布団の上、膝をついたまま呆けている。さらに悪いことは重なるものだ。
「ロショウ…何をしているのかな」
「あっ…」
聞こえてきたのは聞き慣れた、ゆったりとした低い声。漂ってきたのは昨日と同じ、甘酸っぱい香り。気づけば寝室の外には明かりが灯されていたようで、それを背に立つ誰かの影がほぼ全裸のロショウに伸びていた。
「あ、あの…あの、その…」
ふるふると震える体をゆっくりと振り向かせ、影の主をうかがい見る。逆光で顔まではわからないものの、その特徴的な角、尻尾、蹄のシルエットは間違いなく──。
「お、お師匠、さ…ま…」
部屋の入口に白澤と呼ばれる魔物が立ち、自分の布団の上で震える小動物を見下ろしていた。
ロショウは捨て子であった。山奥にうち捨てられていたところをたまたま通りかかったトウキに拾われたのだ。往診医の白澤として生計を立てている彼女と二人、今は毎日を慎ましく──幾分か色に爛れているものの──暮らしている。
傾いた日が差し込む床に座り、ロショウは取り込んだ着物を丁寧に畳んでいく。流れるようなその手つきとは裏腹に、幼い彼の顔は心なしか曇っていた。
「お師匠さま…遅いな…」
トウキは職業柄家を空けることが多い。そしてまだ幼いロショウはいつも留守番を命じられている。トウキが帰ってくるまでにあらかたの家事を済ませておくのがロショウの仕事だった。朝は洗濯、昼は掃除や草摘み、空いた時間に書物を学び、夕に乾いた洗濯物を取り込んで畳み、トウキが帰ってくるまでに夕飯を完成させる。
（いつもなら今頃とっくに帰ってきてるのに）
トウキはその健脚を活かして飛ぶように山々を越えてしまう。僻地もいいところのこの山奥で、一日に多いときは五軒も回ってそれでなお大抵夕方までには帰ってくるのだ。そうして日の差す縁側に二人並んで座って着物を畳み、台所に二人並んで立って夕飯を作るのがロショウの何よりの幸せであった。そのトウキが今日はなかなか帰ってこない。
聡明で頑強な彼女の身自体は正直あまり心配していない。今までもこのくらいならば遅い帰りはあった。ロショウの表情を曇らせる理由は他にある。
（ちんちんが…治らない…）
ロショウの身を包む着物の股の部分。そこが今、控えめに押し上げられていた。座った姿勢でもなお服の下から主張するその膨らみの正体が、幼いながらに硬く怒張した陰茎であることは言うまでもない。
ロショウは数ヶ月前に精通を迎えてからというもの、毎晩のようにトウキに抱かれている。精通を迎える前にも幾度か性的なちょっかいを出されたことはあったが──それは置いておこう。ともかく、女を孕ませられるようになってから数ヶ月という短い期間で、少年の体はすっかり盛んな性欲を常に滾らせるようになってしまっていた。聖獣と語られる白澤とはいえ魔物は魔物である。その彼女と毎晩体を重ねていればそうなるのも仕方のないことではあろう。
問題はその溢れんばかりの性欲を留守番中にどうするかである。数日前、見かねたトウキはロショウに性処理──要は自慰の手ほどきを与えたが、正直なところそれは余り意味を成していなかった。トウキの魅力的な肉体とそこから浴びせられる快楽に、一人間の少年の右手が勝てるわけもなかったのだ。小さな竿を小さな手でしばらく扱いていても何か物足りない。自分に跨がってなまめかしく腰を揺するトウキを努めて思い浮かべても、さして心地よくもない自分の手との対比がかえってはっきりと感ぜられてしまうだけだった。
そんなわけでロショウの最近は昼間に家事をしながら性欲を溜め込んで、夜にトウキに跨がられて思い切り発散するという流れが常になっていた。そしてトウキはそんな弟子のことをわかった上で楽しんでさえいるようだった。ここ数日はトウキが帰れば夕飯もそこそこに交わり始めてしまう。しかもそうするようせがむのはトウキではなく、他ならぬロショウの方なのである。顔を真っ赤に染めてか細い声で行為をねだってくるロショウを彼女はたしなめることもなく、悪戯っぽく微笑んで抱え上げ風呂場やら寝床やらで優しく「甘やかす」のみであった。
今すぐ抱かれたい。あの柔らかく温かい肢体に後ろから抱きすくめられ、しっとりとした細い指でこの張り詰めた怒張を弄ばれたい。日を浴びて温かく乾いた着物を畳みながらも、淫らな想像は一向に止まらなかった。トウキの山羊の乳のように白い肌が、綿のように手触りのいい尻尾が脳裏を掠め、その度に息が荒くなっていく。この下着の色と同じ、彼女の朱色の瞳と見つめ合いながらその美しい手を精液で汚したい。べったりと指先や甲に張り付いた精液を、妄想の中のトウキはぴちゃぴちゃと淫猥な音を立てて舐め取っていく。
「……」
ロショウの手に握られているのは赤い下着だった。西や極東ではあまり見ない珍しい形の下着である。一枚の大きな布が体の前面を胸から腹まで隙間なく覆い、そのまま下に垂れて股を隠す。布の端から伸びた三対の紐を首、背中と腰で結んで固定する形のものだ。いうまでもなくトウキの下着であるそれを、ロショウはここのところ毎晩のように見ている、というか見せつけられている。朱色を好むトウキはその赤い下着だけを数着持っているからだ。
毎晩見ているからと言って一向に見慣れることはない。背中の紐は乳より少し下の端から伸びていて、それを結ぶといわゆる乳袋ができあがる。それだけでも初心なロショウには目に毒なのだが、布は体の前面しか隠さないので、横から見ると背中と脇から乳房までの白く柔らかい肌が惜しげもなく露出されるのだ。真っ赤な下着と白磁のような乳白色の肌とのコントラストはロショウの視線を毎夜釘付けにしていた。
ロショウは少し震える手で真っ赤な布地を畳んでいく。洗ってもなお落ちないトウキの甘い体臭が、布を持ち上げると微かに漂ってくる。思わず止まってしまいそうな手を努めて動かし、畳んだ布の上に六本の紐を揃えて整えた。
（……昨日はこの紐を…）
昨晩は帰ってきたトウキに、軒先だというのに我慢できず抱きついてしまったのだった。正面から抱きつくと彼女の柔らかい腹が顔にあたった。汗をかいていたのか、少し甘酸っぱい匂いがしたことを覚えている。
（「ほどいてごらん」って…）
着脱式の蹄鉄を外さぬままにトウキは身をかがめると、ロショウの手を自身の背中に導いて服の下に潜り込ませ、赤い下着の紐を引っ張らせた。結び目がほどけるときの、紐と紐との僅かな抵抗。その瞬間耐えがたいほどの背徳感に支配されたロショウはそれっきり何もできなくなってしまった。そのあとは優しく微笑むトウキに抱き上げられて風呂場に運ばれ最後までされるがまま、要はいつも通りではあったのだが。
（今なら）
普段だとそんな恥ずかしいことはできない。恐らく昨日のトウキはこの歪んだ欲望に気づいていたのだろうが、基本的に彼女は口に出して乞うたことしか許してくれないのだ──意地悪なことに。だが今ならば、憧れの師が身につけたこの布を好きにできる。昨日は紐をつまむので精一杯だったこの下着を、嗅いだり擦ったり、好きに──。
「…い…いけない……御夕飯の準備もしなきゃいけないんだから」
ロショウはぶんぶんと頭を振る。残りの上着を手早く畳み赤い下着に重ねて隠すと、少々気持ちが落ち着いた。それでも未だに勃起は収まらない。畳んだ着物を持って立ち上がると、より一層股間の盛り上がりがはっきりとしてしまう。自制の効かない怒張をなるべく意識しないようにしながら、ロショウは前屈みで箪笥のある寝室に向かった。
寝室は家の奥にある。窓は小さく、加えて日が傾いている今はほとんど室内に明かりが入らない。
「……」
しかし室内に進むのをロショウが少し躊躇ったのは何もその薄暗闇が怖いからではなかった。
（良い匂い…）
二つ並んだ布団。向かって右の少し小さいそれがロショウのもので、左がトウキのものだ。ロショウの躊躇の原因はその後者から放たれる、甘い芳香だった。先ほど下着から漂ってきたあの匂いである。
性欲をもてあますようになってから、家事途中のロショウを悩ませる最大の要因がこれだった。香水を付けてもいないのにトウキからはほのかに甘い香りがする。劣情を誘う魔性の匂いだ。夜の交わりで無意識下にそれを嗅いで、昼に悶々とし、夕方取り込んだ下着にその匂いを思い出させられる。そうして畳んだ着物を仕舞いに寝床を訪れれば、とどめとばかりに浴びせられる濃いトウキの匂い。いやがおうにも体が──もとい下半身が反応してしまうのだ。
（しまって終わり、しまって終わり…）
箪笥を開き、積まれた着物を床に置いて自分のものとトウキのものに分ける。丁寧に畳まれたそれらを、丁寧に箪笥に詰めていく。既に心臓がどきどきと加速していた。怒張はぐいぐいと股を押し上げ、服の抵抗が少々苦しい。いうまでもなく、やがて手に取る順番が来てしまうあの下着のせいだ。
（そうだ、見ないようにすればいいんだ）
そしてその時が来た。視線を泳がせ、手探りで下着を掴む。それが良くなかった。今まで恐る恐るつまむだけではわからなかった絹のなめらかな手触りを、掌全体で感じ取ってしまう。このなめらかな布地が普段トウキのすべすべした腹に、ふくよかな胸に密着しているのだと悟ると、瞬時に言いしれぬ興奮が頭を支配した。
「あ……っ」
ロショウの心に今あるのは半ば諦観であった。やってしまったというか失敗したというか、それを飛び越して、ああ自分はお師匠さまの下着をじっくり見てしまうなということを考えていた。きっと見るだけでは済まないだろうなというところまで、その幼くも利発な頭は悟ってしまっていた。
スローモーションのように首が動いて、目線がその一枚の布地に向かう。空いていた左手がゆっくりと動き、下着に添えられた。ロショウは正座のまま書物でも読むかのように両手で下着を掴み、穴が開くほどに見つめる。薄暗闇の中でもはっきりとわかる鮮やかな赤色をしたそれは柔らかく手触りの良い絹でできていて、工夫された編み方なのか引っ張ると柔軟に伸び縮みした。
（これを着けたお師匠さま…）
たわわに実った乳の肉が窮屈そうに内側から布地を押し広げる。ぴんと張った一枚の布が乳房をこれでもかと強調して見せつける。一方で腹は柔らかくもすらりと引き締まっていて、微かに浮かび上がるのは腹直筋の陰影と、柔らかな布地のしわ。妄想の中のものとは思えないほどに鮮明かつ扇情的なトウキの姿で、ロショウの頭はいっぱいになる。
「お、お師匠さまっ…」
ぼそりと独言が漏れる。色欲と恋慕がこれでもかと込められた声が一人きりの寝室に小さく響いた。
両手を、両手に握りしめられた下着を、ゆっくりと顔に近づける。ロショウは肺の中の空気を空にするつもりで大きく息を吐いた。そうしてトウキが昨晩まで身につけていた下着を顔に、鼻に押し当てる。
「──……っ」
思い切り息を吸い込んだ。瞬間、甘い香りで肺がいっぱいになって、頭が真っ白になる。酸欠になったかのように意識がくらくらとして、股関節の力が抜けて両踵にのっていた尻がぺたんと床に付く。
「はぁ……ふーっ……すーっ…」
変態じみたことをしているという罪悪感はどこかへいってしまった。何度も何度も深呼吸を繰り返して、愛して止まない師の匂いを味わい、自分の体の中に染みこませていく。触れてもいない陰茎が今にも射精してしまいそうなほどにびくびくと震えて、会陰に力を込める度にじんとした快感が腰から背筋へ走った。
「…は、ふ…ぅ……」
やがて視界がふらつき、体から力が抜けていく。立ちくらみのようにごうごうと血流の音が聞こえて、それが鳴り止む頃には両腕がだらんと垂れ、下着も落としてしまっていた。意識は未だにぼんやりしているものの次第に五感は冴え始め、トウキの甘い匂いが、そして自分の怒張を満たす熱い脈がはっきりと感じられる。
（さいいん…催淫、効果…魔物の…におい、の…）
以前読んだ書物に記されていた知識を思い返す。そして思い返したからといってそれに抗えるわけもない。少年の顔は今や熱に浮かされたように真っ赤に染まり、その瞳はピントが合わずふらふらと揺れていた。ロショウはもたもたとした手つきで今着ている着物を脱ぎ始める。帯を解き、胸をはだけ、その白い柔肌を薄暗闇に曝け出していく。次いでゆったりとした袴を降ろすと、張り詰めた陰茎が勢いよく飛び出して腹を打った。ぺちりと間の抜けた音がする。そのまま最後まで降ろして裸になろうとするも、動きやすいように裾を縛った紐がひっかかって上手く足首を通らない。
（…もう、このままでいいや）
ロショウは服を脱ぎきらないままにゆっくりと後ろを振り向き、どさりと両手をついた。同時に、はふ、と息が漏れる。両手をついた先はトウキの布団だ。衝撃で舞い上げられた彼女の匂いが鼻腔をくすぐる。下着のそれよりも濃い、もはや甘ったるいとさえ思える匂い。それを一番強く放っているのは──。
「ま、枕…お師匠さまの、まくら…」
もう見つめる時間さえも惜しかった。ロショウはトウキの布団にうつぶせに倒れ込み、柔らかな枕に顔を埋める。
「は、ぅ……」
嘆息のような、小さなため息が枕越しに漏れた。
枕は少しだけひんやりとしていて、火照った顔に心地よかった。そして何よりも、質量が伴いそうなほどに濃いトウキの甘い匂い。それに真っ暗な視界、そして柔らかな布団の感触が加わって、まるで彼女本人に優しく抱きしめられているかのような錯覚に陥ってしまう。
「お師匠さまぁ…すき、すきっ」
甘ったるい呟きが、枕に吸い込まれていく。本当にこの場にいるトウキに抱きついて愛を囁いているかのような、幸せな気分だ。
ロショウはやがて下半身をもぞもぞと動かしてトウキの掛け布団をまとめ、その上に跨がった。少しずつ腰がへこへこと揺れ出す。
意識はまだはっきりとしている。自分が布団に腰を振っていることがわからないほどに前後不覚ではない。それでも体が止まらなかった。大量の先走りが布団を汚し、ぬるぬるになった布地と裏筋が擦れてじんじんとした快感を生む。薄暗い部屋に、少年のくぐもった吐息と規則的な衣擦れの音だけが響いていた。
（手でするより…ずっと気持ちいい…っ）
事実、右手で扱いてもどうともならなかったロショウの陰茎は布団に擦りつけられているだけなのにびくびくと震え、亀頭を膨らませて射精の準備を始めている。
「あ…でそう…」
間もなく訪れる、熱い液体がせり上がってくる感覚。
このまま布団に射精してしまえばまず間違いなく取り除ききれない染みになってしまうだろう。先走りだけでも正直手遅れな感はあるが、急いで火に当てて乾かせば或いはなんとかなるかもしれない。しかし射精してしまえば確実に取れない汚れになる。トウキに気づかれれば──というか間違いなくそうだ──きっと叱られるだろうし、なんといっても恥ずかしい。どう言い訳すれば良い？ 良い匂いだったのでお布団に射精してしまいました、なんて台詞は想像するだけでもばつが悪いどころか顔から火が出そうだ。
（だめ、止めなきゃ、いけないのに…）
そんな思いとは裏腹に腰の動きは速くなっていく。部屋に響くのはもはや衣擦れではなく、腰が布団に打ち付けられて鳴る破裂音だ。まるで本物の性行為のようである。両脚は布団を、両腕は枕を、それぞれ離したくないというようにがっちりと抱きしめていた。必死の自戒を肉体が嘲笑っているかのようであった。脳味噌は快楽で上手く回らず、やめなければ、と出したい、との二つの選択肢をぐるぐると往復することしかできない。
「あ…うぅ、お師匠さま、だいすきっ…ご、ごめんなさいっ…」
免罪符のような呟きと謝罪が枕越しに漏れ、同時にロショウの亀頭が大きく膨れた。
「ふぁ、あ…あぁ…っ」
陰茎の律動に伴って、大量の白濁が布団に吐き出されていく。ロショウは蕩けた顔を枕に押しつけたまま、腰をゆさゆさと揺すって射精を続けている。既に吐き出されて布団をべったりと汚す精液が、上から擦りつけられる陰茎でかき混ぜられてぬちゃぬちゃと淫猥な音を立てた。
熱くぬめる感覚と布団の布地の感触が同時に腰の肌から伝わると、してはいけないことをしてしまったという実感が湧いてくる。それでも一日分溜め込んだ性欲が軽い射精で解消されるはずもなく、ロショウは情けなく布団にしがみついたままどぷどぷと精液を吐き出し続けた。
「は、ふ…ふぅ、ふーっ…」
数十秒してようやく射精が一段落付いた。未だに頭が快楽でぼんやりとしている。息苦しさから自分が枕に顔を埋めていたことに気づいた。顔を上げて、次いで上体を起こして、股間に目を落としたロショウはびくりと身を固くする。
「…へ？…こ、これ…こんなに！？…ど、どうしよう…！」
布団の上に水溜まりができていた。白く濁り、どろどろした半液状の何かでできた水溜まりだ。もちろん、精液以外にその何かがあるわけもない。ロショウの小さな手を両方広げた程の大きさのそれからは青臭い匂いと熱気が漂っている。深さもそれなりにありそうだ。量にして半升ほどだろうか。見たことがない景色だった。
実際ロショウは毎晩これ以上の量の精液を出してはいるのだが、そのほぼ全てはトウキの腹の中に収まっていた。よって彼自身はその人間離れした射精量を目にすることはなかったのだ。衝撃的な光景を前にして、色欲で満たされていたロショウの頭が一気に冷える。
「…何かで拭き取る…い、いや…」
到底布か何かで拭き取れる量ではない。いっそ大皿か杯をあてがって移し替えた方がまだ現実的かもしれない。
「は、早くしないと…」
ゼリーのようにぷるぷると揺れる精液から布団の布地へ、水分がじんわりと染み出す。さらに身じろぎしたせいで傾いた掛け布団から精液がこぼれ、敷き布団にまでどろりと垂れた。狼狽えている内に染みはどんどんと広がっていく。
「どうすれば…」
どうすればも何も完全に自業自得であった。ロショウはトウキのどろどろに汚れた布団の上、膝をついたまま呆けている。さらに悪いことは重なるものだ。
「ロショウ…何をしているのかな」
「あっ…」
聞こえてきたのは聞き慣れた、ゆったりとした低い声。漂ってきたのは昨日と同じ、甘酸っぱい香り。気づけば寝室の外には明かりが灯されていたようで、それを背に立つ誰かの影がほぼ全裸のロショウに伸びていた。
「あ、あの…あの、その…」
ふるふると震える体をゆっくりと振り向かせ、影の主をうかがい見る。逆光で顔まではわからないものの、その特徴的な角、尻尾、蹄のシルエットは間違いなく──。
「お、お師匠、さ…ま…」
部屋の入口に白澤と呼ばれる魔物が立ち、自分の布団の上で震える小動物を見下ろしていた。
20/03/14 16:58更新 / キルシュ
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